説明

耐震化マンホール構造及びその製造法

【課題】地震などによって液状化を起こし易い地盤に設置されているか、或いは設置が予定されているマンホールを、地盤の液状化による被害から護るための、大幅に耐震化された簡素なマンホール構造を提供する。
【解決手段】本発明の耐震化マンホール構造は、地下埋設管の接続地に設置するマンホールにおいて、マンホール構造体の地下外壁面に荷重盤を付設すると共に、該荷重盤と地表面との間に、該荷重盤に支持された道路構造材を敷設してなるもので、該マンホール構造体の基本重量Wo(tf)と、該荷重盤並びに該道路構造材の負荷重量Wb(tf)との合計重量Ws(tf)を、該マンホール構造体の外形寸法より求めた基本体積Vo(m3)と該荷重盤並びに該道路構造材の負荷体積Vb(m3)との合計体積Vs(m3)に対する液状化泥水の合計浮力Wf(tf)より大となるように準備して、製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下埋設管の接続位置に設けられるマンホールを耐震化するための改良構造に関し、特に地震の発生に際して、地盤の液状化によりマンホールが浮上して、移動や転倒などの管路系の破壊事故を防止するための耐震化構造に関する。
【背景技術】
【0002】
道路などの地下には、上水道、下水道、或いは都市ガス、電力、通信等の種々の管路が埋設されていることが多く、これらの管路の接続位置に設けられるマンホールなどは、土圧に耐える強靱な材料で構築されているのが普通である。しかし、管路が埋設されている範囲内で、地盤の地質が一定且つ均一であることは期待し難く、また埋設構造物の周囲に充填される土砂の密度が不均一となり易いこともあって、特に地下水位が高い場所では地震の発生時に地盤の液状化が起こる危険がある。そうなると、その場に設けられていたマンホールが浮上し、移動し、或いは転倒するなどして管路の接続が外れる障害を起こし、ライフラインの機能の停止に繋がるばかりでなく、道路を破壊して救援活動の障害物となる恐れがある。
【0003】
そこで、上述の障害の発生を避けるために、地下の岩盤にまで届く長い杭を打ち込んでこれにマンホールを固定する、などの対策も考えられるが、下水管の中繼用などとして設けられるマンホールは、種々の管路などが埋設されている道路の地下に設置されることが多く、大がかりな改良工事は施工が難しいばかりでなく工期が長くなって、工費も嵩む上に、交通の障害による経済的損失が大きくなるという欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、地震などによって液状化を起こし易い地盤に設置されているか、或いは設置が予定されている地下埋設管を接続するマンホールを、地盤の液状化による被害から護るための、大幅に耐震化された簡素なマンホール構造を提案するものであり、更には、上記の耐震化マンホール構造を確実に製造するための方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の耐震化マンホール構造は、地下埋設管を接続するマンホールにおいて、マンホール構造体の地下外壁面に荷重盤を付設すると共に、該荷重盤と地表面との間に、該荷重盤に支持された道路構造材を敷設してなることを特徴とするものである。
【0006】
また、このような本発明の耐震化マンホール構造において、前記マンホール構造体の基本重量と、前記荷重盤並びに前記荷重盤に支持された前記道路構造材の負荷重量との合計重量が、前記マンホール設置地盤内の土砂が液状化泥水に変化したときに、前記マンホール構造体と前記荷重盤と前記道路構造材とが受けると予測される前記泥水による合計浮力より大きいことで、地震発生に際しても確実にマンホール機能の破壊を防止することができる。
【0007】
更に、本発明の耐震化マンホール構造において、前記道路構造材としては、土砂又は砕石等の高比重骨材を、セメントやアスファルトなどの土石結合剤を用いて安定化してなるものが好ましいが、これには予め煉瓦状やブロック状などの適宜の形状に成形したものを組み合わせて使用してもよく、或いは施工現場で骨材と結合剤とを混合して凝結性の道路構造材組成物を調製したうえ、敷設し結合させて、舗装材などを含む道路構造材とすることもできる。
【0008】
そして本発明の耐震化マンホール構造は、地下埋設管を接続するマンホールにおいて、マンホール構造体の地下外壁面に付設した荷重盤と地表面との間に、該荷重盤に支持された道路構造材を敷設するに当たり、該マンホール構造体の基本重量Wo(tf)と、該荷重盤並びに該道路構造材の負荷重量Wb(tf)との合計重量Ws(tf)を、該マンホール構造体の外形寸法より求めた基本体積Vo(m3)と該荷重盤並びに該道路構造材の負荷体積Vb(m3)との合計体積Vs(m3)に対する液状化泥水の合計浮力Wf(tf)より大とすることで、優れた性能を備えた耐震化マンホール構造体を実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の耐震化マンホール構造は、地下埋設管を接続するマンホールにおいて、マンホール構造体の地下外壁面に荷重盤を付設すると共に、該荷重盤と地表面との間に、該荷重盤に支持された道路構造材を敷設したものであるから、地震の発生により地盤全体が液状化しても、本発明の耐震化マンホールにおける、マンホール構造体の上部などに付設された荷重盤の重量と、道路構造材の重量とが、マンホール構造体自体の基本重量に加わって、マンホール構造体の安定化重量として作用することになり、液状化泥水の浮力によるマンホール構造体の浮上や移動、転倒などが、効果的に抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の耐震化マンホール構造とその製造方法を、図に基づいて説明する。
図3には、下水管2の中繼地点などに設けてある従来型の1号マンホール構造体を示すが、このマンホール構造体1は、例えば地表から地盤G内に矢板などを打ち込んで、マンホール設置用の縦孔を掘削し、その底に砕石層Baを敷き、更に必要に応じてコンクリート層Bbを設けた基礎Bなどを形成したうえ、底板1a、管取付壁筒1b、直壁筒1c、斜壁筒1d、調整環1eを順次に積み重ねて結合し、更に蓋取付枠1fを設けたうえ、蓋1gを着脱可能に嵌め込んでなるものである。
【0011】
こうした一般的な構造のマンホールでは、縦孔を掘削したときに得た土砂や山砂などを用いて埋め戻しをすることが多く、また蓋1gの上面が地面GLと略一致するように設けられていて土被りが少ないので、地下水位が高くなるとマンホール周囲に水が回り易く、地震が起こって水を含んだ土砂が液状化すると、生成した泥水の浮力によってマンホール全体が浮き上がり、下水管2との接続が破壊されるほか、場合によっては転倒するなどの危険があった。
【0012】
そこで耐震化マンホールを設置する計画があるときは、先ずマンホール設置予定地の地盤を調査し、地下水位の年間変動の状況を参考として、その計画の適否を審査するのがよい。そして、マンホール設置予定地について予備調査の結果、地下水位が高くなってマンホール設置位置に達することがあり、且つマンホール周囲の地盤が液状化し易いことが判明したときは、耐震化構造を備えたマンホールの設置を検討することが勧められる。しかし、上記の条件のいずれか一方が欠けるとき、即ち地下水位が十分に低いか、又は地盤が地震に対して安定であって液状化の心配がなければ、従来の一般的なマンホール構造体を設置することで、充分と考えられる。
【0013】
ところで、マンホール設置予定地の地質が液状化し易いかどうかの判定をするには、土質試験を含む地質の調査を行った上、その結果に基づいて、例えば道路橋示方書に記載されているように、以下の3つの条件について土質の評価を行う。そして、3つの条件の全てに該当している場合には、液状化し易い土質であるということができる。
(1) 沖積砂質土などであること。
(2) 粒径75μm以下の土粒子(細粒分)の含有率(FC)が35w%以下か、又は塑性指数(Ip)が15以下であること。
(3) 粒度分布で50w%位置における中心粒径が10mm以下であり、且つ10w%位置における粒径が1mm以下であること。
【0014】
従って、上記の判定基準に基づいて、設置予定地の地盤は液状化性が高いと判定されたときは、地下水位の位置がマンホール設置予定位置付近にある場合は勿論、地下10m以内にある場合は、従来構造のマンホールでは、地震等による地盤の液状化のために大きな影響を受ける可能性が高いと考えるべきである。こうして、マンホールを設置する予定の地盤が液状化し易いと判定された場合には、調査しておいた地下水位のデータと、土質の液状化性及びその土質の分布範囲のデータとを勘案して、所望の形態のマンホール構造体を選定すると共に、マンホール構造体の体積と重量との計算値に基づいて、地震の発生に際してマンホールの浮上が起こる危険性を判断する。
【0015】
そしてマンホールの浮上を防止するための、マンホールの周りに充填する埋め戻し土の流動化防止処理方法や、地盤自体の安定化処理方法などを検討し、マンホール構造体の重量増加手法との比較を行った結果として、本発明の耐震化マンホール構造を採用する方針が決定されたならば、マンホール構造体の地下外壁面に付設する荷重盤を選定し、該荷重盤の上に支持される道路構造材などの構造の設計を行い、更に必要な部品や材料などの準備に進むのがよい。こうして、予備調査と準備作業が終わった後に、本発明の耐震化マンホール構造を備えたマンホールの設置工事が可能となる。
【実施例1】
【0016】
以下に、本発明の耐震化マンホール構造を備えたマンホールの構成を、先に説明した既設の1号マンホールを耐震化する改造例によって説明する。しかし、別途にマンホールを新設する場合については、ここで開示される本発明の技術思想を利用して従来の建設工法の一部を変更し、本発明の耐震化マンホール構造を導入すれば、容易に耐震化マンホールを建設できるので、これ以上の説明は省略する。
【0017】
図1は、本発明の耐震化マンホール構造を備えたマンホールPを示すが、このマンホールPは、既存のマンホールpを改造したものである。そして、改造前のマンホールpは、図3に示した構造を有しているコンクリート製マンホールで、底板1aは外径が1.10m、厚さが0.15mであり、その上に設けられている管取付壁筒1bと直壁筒1cは、外径が1.05m、内径が0.90mの円筒で、高さは合計で1.20mである。また斜壁筒1dは、下端面の形状が直壁筒1cの上端面の形状と相補的であり、且つ上端面の形状が調整環1eの下端面の形状と相補的であって、高さが0.30mのものである。更に調整環1eは、斜壁筒1dと蓋取付枠1fとの間隔を調整するためのもので、外径が0.82m、内径が0.60mであり、高さが調整環1eと蓋取付枠1fとを合わせて0.20mとなっている。そして、蓋取付枠1fと蓋1gとは鋼製であって146kgf程度である。また、マンホール設置時に底板1aの上に生コンクリートなどを流し込んで、内底部を封止すると共に流路を調整する仕上げが施されているので、マンホールpの全高は略1.85m、基本体積Voは略1.49m3、基本重量Woは略1.50tfになる、と計算された。
【0018】
そこで、この構造を有するマンホールpの設置されている地盤が軟弱であって、地震発生の際に液状化を起こし、マンホールpが泥水中に囲まれた状態を想定すると、泥水の比重は一般に1.2〜2.0程度と考えられているが、ここでは仮に1.4であるとすると、マンホールpが受ける泥水の浮力は2.21tfに達する。そうすると、泥水の浮力がマンホールpの重量より0.71tf上回るから、マンホールpは泥水により浮上し、接続する下水管などと引き離されて転倒するなどの災害事故が起こり得る。そこで、このような災害の発生を防止するために、本発明ではマンホールpに対して、泥水の浮力による浮上を阻止するに十分な荷重を負荷することにした。
【0019】
本実施例では、斜壁筒1dの周囲に嵌合できる荷重盤3Pを、負荷として装着することとした。この荷重盤3Pは、例えば成形型に生コンクリートを注型して、図2に示したような孔空き円盤状に製造されたものが、好ましく用いられる。本例における斜壁筒1dは、前述のように高さが0.30mで、上端面は外径が0.82m、内径が0.60mの円環形、下端面は外径が1.05m、内径が0.90mの円環形の、斜円錐形状の環体であるので、本例における荷重盤3Pは、斜壁筒1dの外側面形状と相補的な内側面形状を持つ上下の通孔3aを備えた、外径が1.60m、厚さが0.30mの円盤体であって、通孔3aの上端は径が0.82mの円孔となっているものである。なお、この荷重盤3Pの負荷体積は0.39m3で、負荷重量は0.95tfである。
【0020】
次に、耐震化マンホール構造を設けるための従来のマンホールpの改造工事は、前記の荷重盤3Pの準備が整ったときに始まるが、先ずマンホールpの設置位置を中心として、荷重盤3Pの取付工事を進めるに必要な広さの作業空間を確保するために、地表の舗装などを除去して地盤Gに矢板などを打ち込み、マンホールpの上部、即ち地表から斜壁筒1dの下端周囲までの土砂を掘削除去する。この後に、斜壁筒1dの上に結合している調整環1eや蓋取付枠1fなどを取り外し、斜壁筒1dの下端位置まで土砂などを埋め戻して、好ましくは埋め戻し面を平坦に均す。そして、斜壁筒1dの外壁面を清掃してから必要に応じて接着剤などを塗布し、荷重盤3Pの通孔3aを斜壁筒1dの上部に嵌合させ、荷重盤3Pの上面が斜壁筒1dの上端と一致して略水平となる位置で結合させる。
【0021】
こうして荷重盤3Pの装着が終わった後に、調整環1eや蓋取付枠1fなどを元通りに取り付ける。その後に荷重盤3Pの外側の土砂除去した跡の空間を、元通りに、或いは道路などの路盤構造と同様の構造となるように埋め戻し、次いで荷重盤3Pの上面と上記の埋め戻し路盤面の上に、道路と同様にアスファルト舗装材などで構成した一体の舗装層4Pを敷いて、地表までの空間を充填し、道路面を修復することが好ましい。こうして、図1に示すような耐震化マンホール構造を有するマンホールPが完成したが、荷重盤3Pの上面と地表との間に形成された舗装層4Pの厚さは0.20mであって、荷重盤3Pに支持された舗装層4Pの負荷体積は0.30m3であり、その負荷重量は0.71tfと計算された。
【0022】
そこで本発明のマンホールPの耐震性について評価した。本発明のマンホールPは、改良前のマンホールpに荷重盤3Pを装着し、更に荷重盤3Pが舗装層4Pを支持している。従って、本発明の耐震性マンホールPの合計重量Wsは3.16tfとなり、合計体積Vsは2.18m3となるが、比重1.4の泥水による合計浮力Wfは3.05tfであり、重量Wsが泥水による浮力Wfを0.11tf程上回るので、本発明の耐震性マンホール構造は、地震による地盤の液状化には十分耐え得る性能を有することが分かった。
【実施例2】
【0023】
本発明の別な例として、実施例1において示した従来形のマンホールpより少し大型の、全高が略2.60mの1号マンホールqを耐震化する場合を説明する。本例におけるマンホールqは、図3に示したマンホールpと殆ど同じ基本的構造を有していて、底板1aの構造や調整環1e、蓋取付枠1f、及び蓋1gの組み合わせは同じ構造であり、管取付壁筒1bと直壁筒1cの合計高さは1.80mである。そして斜壁筒1dは、高さがマンホールpの斜壁筒1dより0.15m長くて、0.45mである以外、殆ど同様な構造と機能を有するものである。従ってマンホールqは、全高が略2.60m、基本体積Voは略2.14m3、基本重量Woは略1.93tfとなっている。
【0024】
そこで、このマンホールqの耐震性を検討してみると、体積が略2.14m3のマンホールqが、比重1.4の液状化泥水中で受ける浮力Wfは3.00tf弱であるから、マンホールqの基本重量Woが1.93tfに対して極めて危険であると言える。従って地盤の液状化対策としては、1.10tf程度以上の荷重を負荷することが望ましいと分かるが、マンホールqの耐震性を高めるために装着する荷重盤3Qは、実施例1で採用した荷重盤3Pより、少なくとも1.00tf以上大きな負荷重量が必要と予想される。そして、マンホールqに使用されている斜壁筒1dが、前記のマンホールpの斜壁筒1dより高さが高くてテーパー角度が緩いから、その形状に適合する荷重盤3Qを別途に準備しなければならない。
【0025】
ところでこの荷重盤3Qは、前記の荷重盤3Pと同様に外径が1.60m、厚さが0.30mの円盤体とすると、通孔3Q1の形状が異なっても、体積や重量は荷重盤3Pと大幅に変えることはできない。しかも、荷重盤3Q上に支持される舗装層4Qの体積は実施例1と同じ0.30m3となり、重量は0.71tfであるから、マンホールQに装着する荷重盤3Qだけで体積は0.80m3以上、重量は1.90tf以上でないと、泥水による浮力に耐えることが難しいと予想される。そこで荷重盤3Qを更に大型にする方策として、外径が1.80m、厚さが0.45mの、コンクリート製円盤の採用の適否を検討した。
【0026】
上記のように、本実施例のマンホールQの基体となるマンホールqでは、斜壁筒1dは高さが0.45mであるから、実施例1のマンホールPに較べて荷重盤3の厚さを0.45mに増加させることは容易である。しかし、荷重盤3の上面位置を上方に移動させることは、舗装層4の厚さを削ることになるから好ましくない。これに対して荷重盤3の外径を1.80mに広げることは、荷重盤3の取扱性は低下するが、荷重盤3によって支持できる舗装層4の広さを大幅に拡大できる利点がある。そして、厚さを0.45mとすれば高さが0.45mの斜壁筒1d部分に装着できるから、その装着用通孔の体積0.31m3を差し引いた負荷体積Vbは0.84m3となり、負荷重量Wbは2.00tfとなるから、泥水による浮力の増加分1.17tfを差し引いても負荷重量の増加分が0.83tf上回ると推測された。そこで荷重盤3Qは、厚さを0.45mとすると同時に、舗装層4の広さを拡大するために、径を1.80mに大きくすることで準備した。
【0027】
こうして、従来のマンホールqを改造する工事では、径が1.80mの荷重盤3Qを取り付けるために、実施例1の場合より広い範囲の土砂を掘削除去しなければならない。即ち、掘削作業の内容は実施例1の場合と同様であるが、掘削する範囲は半径で0.1mほど広く、深さは斜壁筒1dの下端まで、約0.15m程深くなる。しかし土砂の除去の後には、実施例1の場合と同様にして、荷重盤3Qを斜壁筒1dの上から嵌合すると、荷重盤3Qの上面が斜壁筒1dの上端と一致して、地下0.2mの位置で略水平の姿勢をとることができる。
【0028】
こうして荷重盤3Qの装着が終わった後に、実施例1の場合と同様に調整環1eや蓋取付枠1fなどを元通りに取り付け、更に荷重盤3Qの外側の土砂除去跡の空間を、道路の基盤構造と同様の構造となるように埋め戻し、次いで荷重盤3Qの上面と上記の埋め戻し面とに、道路と同様にアスファルト舗装材などで構成された舗装層4Qを敷設して、地表までの空間を充填した。このようにマンホールqに耐震化改良を加えて、図4に示すような構造のマンホールQが完成したが、荷重盤3Qの上面の負荷面積は2.01m2であり、荷重盤3Qと地表との間に形成された舗装層4Qの厚さは0.20mであるから、荷重盤3Qに支持された舗装層4Qの負荷体積Vbは0.40m3となり、その負荷重量Wbは0.97tfとなった。
【0029】
そこで本発明のマンホールQの耐震性について評価すると、本発明のマンホールQは、改良前のマンホールqに荷重盤3Q(2.00tf)を装着し、更に荷重盤3Qによって舗装層4Q(0.97tf)を負荷したために、合計重量Wsが4.90tfとなっている。そして、合計体積Vsは3.38m3となり、比重1.4の泥水による合計浮力Wfは4.72tfになるが、合計重量Wsの余裕が0.18tfあるので、本発明に基づいて改良したマンホールQは、十分な耐震性を備えていることが確かめられた。
【実施例3】
【0030】
本発明の更に大型なマンホールの例として、実施例1及び実施例2と同様な従来形で、全高が略3.05mのマンホールrを耐震化する場合を説明する。本例におけるマンホールrは、実施例1及び実施例2で説明したマンホールpやqと殆ど同じ基本的構造を有しており、底板1aの構造や調整環1e、蓋取付枠1f、及び蓋1gの組み合わせ構造は、何れも同じ構造である。そして、管取付壁筒1bと直壁筒1cは合計高さが2.10mと大きく、また斜壁筒1dは、高さが0.60mとより長く、斜壁部のテーパーもより緩くなっている以外、殆ど同様な構造と機能を有するものである。そしてマンホールrのその他の構造も前述と同様であるが、全高が略3.05m、基本体積Voは略2.48m3、基本重量Woは略2.20tfとなっている。
【0031】
ここで、このマンホールrの耐震性を検討してみると、体積が略2.48m3のマンホールrが、比重1.4の液状化泥水中で受ける浮力Wfは略3.47tfとなるが、マンホールrの重量Woは2.20tfで1.27tf不足するから、極めて危険であると言える。従って地盤の液状化対策としては、泥水による浮力の増加を超えて1.30tf程度以上の荷重をかけることが必要であり、またマンホールrの耐震性を高めるために装着する荷重盤3Rは、マンホールrに使用されている斜壁筒1dの高さやテーパー角度の緩さに合わせて、更に厚くし且つ、深い位置に装着できるように、別途に準備する必要がある。
【0032】
そこでこの荷重盤3Rを更に大型にするために、基体となるマンホールrの斜壁筒1dの高さ0.60mに合わせて、外径が1.80m、厚さが0.60mの、コンクリート製円盤の採用の適否を検討したところ、負荷体積Vbは1.11m3となり、負荷重量Wbは2.67tfとなるから、泥水による浮力Wfの増加分1.55tfを差し引いても負荷重量Wbが1.12tf上回り、舗装層4の体積と重量を勘案すれば安全の範囲に入るものと推測された。そこで、この大型の荷重盤3Rを用いることとした。
【0033】
こうして、本実施例のマンホールRの基体となるマンホールrに、荷重盤3Rを装着するするために、実施例2と同様にして、斜壁筒1dの下端まで土砂を深く掘削除去し、周囲の掘削面を平坦に均したうえ清掃し、その後に荷重盤3Rを斜壁筒1dの上から嵌合すると、荷重盤3Rの上面が斜壁筒1dの上端と一致して、地下0.2mの位置で略水平の姿勢をとることも、実施例2の場合と同様であった。
【0034】
こうして荷重盤3Rの装着が終わった後に、実施例2の場合と同様に調整環1eや蓋取付枠1fなどを元通りに取り付け、更に荷重盤3Rの外側の土砂除去跡の空間を、道路の基盤構造と同様の構造となるように埋め戻し、次いで荷重盤3Rの上面と上記の埋め戻し面との上に、道路と同様のアスファルト舗装材などの舗装層4Rを敷いて、地表までの空間を埋めた。このようにマンホールrに耐震化改良を加えて、図5に示すような構造のマンホールRが完成したが、荷重盤3Rの上面の負荷面積は2.01m2であり、荷重盤3Rと地表との間に形成された舗装層4Rの厚さは0.20mであって、荷重盤3Rに支持された舗装層4Rの負荷体積Vbは0.40m3であり、その負荷重量Wbは0.97tfであった。
【0035】
そこで本発明のマンホールRの耐震性について評価すると、本発明のマンホールRは、改良前のマンホールrに荷重盤3R(2.67tf)を装着し、更に荷重盤3Rによって舗装層4R(0.97tf)を負荷したために、合計重量Wsが5.84tfとなっている。そして、合計体積は3.99m3となり、比重1.4の泥水による合計浮力Wfは5.61tfになるが、合計重量Wsの余裕が0.23tfあるので、本発明に基づいて改良したマンホールRは、十分な耐震性を備えていることが分かった。
【0036】
以上詳細に説明したように、本発明の耐震化マンホール構造は、マンホール構造体全体に作用する液状化泥水による合計浮力よりも、マンホール構造体1自体の基本重量と、マンホール構造体1の外壁面に付設した荷重盤3の負荷重量と、該荷重盤3が支持する道路構造材の負荷重量との合計重量が大きくなるように、該荷重盤3の重量と、該道路構造材との重量とを設定することによって、その目的を達成することができるものである。
【0037】
しかしながら、マンホール設置箇所の地盤の構造、土質、地下水位の高さなどによって、地盤の耐震性や液状化性が異なることは、すでに述べたとおりであり、従ってまた土壌の液状化によって生成する泥水の比重なども、それぞれ異なると考えられるから、本発明を実施するに当たっては、上記の耐震化マンホール構造体の構成条件を最低限のものとして、余裕を持った設計を行うべきである。そして、該荷重盤3などの重量が不足であるときは、適宜な形態の荷重を追加することができ、このような仕様変更は、本発明の目的に反するものでない限り、何ら制限されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上詳述したような本発明の耐震化マンホール構造は、地下埋設管を接続するマンホールにおいて、マンホール構造体の地下外壁面に荷重盤を付設すると共に、該荷重盤と地表面との間に、該荷重盤に支持された道路構造材を敷設したものであって、マンホール設置位置の地盤が地震などの発生に伴って液状化し、マンホールが泥水に取り囲まれる事態となっても、荷重盤と道路構造材とが、マンホール構造体の浮上防止用の荷重として作用し、マンホールの転倒や移動を防止して、下水道などのライフラインを破壊から護り、且つ災害に対する援助活動への障害発生を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の耐震化マンホール構造の第1例を示す縦断面図である。
【図2】本発明の耐震化マンホール構造の第1例に使用される荷重盤の縦断面(A)及び底面(B)を示す図である。
【図3】従来の未対策マンホール構造体の設置状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の耐震化マンホール構造の第2例を示す縦断面図である。
【図5】本発明の耐震化マンホール構造の第3例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0040】
B 基礎
Ba 砕石層
Bb コンクリート層
G 地盤
GL 地表
1 マンホール構造体
1a 底板
1b 管取付壁筒
1c 直壁筒
1d 斜壁筒
1e 調整環
1f 蓋取付枠
1g 蓋
2 下水管
3 荷重盤
3a 通孔
4 舗装層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下埋設管の接続地に設置するマンホールにおいて、マンホール構造体の地下外壁面に荷重盤を付設すると共に、該荷重盤と地表面との間に、該荷重盤に支持された道路構造材を敷設してなることを特徴とする、耐震化マンホール構造。
【請求項2】
前記マンホール構造体の基本重量と、前記荷重盤並びに前記荷重盤に支持された前記道路構造材の負荷重量との合計重量が、前記マンホール設置地盤内の土砂が液状化泥水に変化したときに、前記マンホール構造体と前記荷重盤と前記道路構造材とが受けると予測される前記泥水による合計浮力より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の耐震化マンホール構造。
【請求項3】
地下埋設管を接続するマンホールにおいて、マンホール構造体の地下外壁面に付設した荷重盤と地表面との間に、該荷重盤に支持された道路構造材を敷設するに当たり、該マンホール構造体の基本重量Wo(tf)と、該荷重盤並びに該道路構造材の負荷重量Wb(tf)との合計重量Ws(tf)を、該マンホール構造体の外形寸法より求めた基本体積Vo(m3)と該荷重盤並びに該道路構造材の負荷体積Vb(m3)との合計体積Vs(m3)に対する液状化泥水の合計浮力Wf(tf)より大とすることを特徴とする、耐震化マンホール構造の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−57188(P2008−57188A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234480(P2006−234480)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(593116560)日工建設株式会社 (3)
【出願人】(593055317)有限会社タム・テック (5)
【Fターム(参考)】