説明

耕耘作業体及び耕耘刃用プレス装置

【課題】 成形が容易で少ない工数で製造でき、硬さと耐衝撃性と機械的強度とを兼ね備えた耕耘作業体及び該耕耘作業体における耕耘刃を成形する耕耘刃用プレス装置を提供する。
【解決手段】 耕耘筒体と、上記耕耘筒体に着脱可能に取り付けられる耕耘刃と、を具備してなる耕耘作業体において、上記耕耘刃は耕耘筒体に着脱される取付基部と、上記取付基部とは別途製造され取付基部に溶着・固定された耕耘刃部と、から構成されているもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば農業用の耕耘機やトラクタ等に装着され、耕耘筒体と耕耘刃とを具備するロータリー式の耕耘作業体と該耕耘作業体に使用される耕耘刃を成形する耕耘刃用プレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1に示すように農業用の耕耘機やトラクタ等には耕耘筒体と耕耘刃とを具備するロータリー式の耕耘作業体が装着されている。上記耕耘刃は耕耘筒体に対して設けられている角筒状或いはコの字形断面のホルダ部に挿嵌されて、ボルト・ナット等を使用して上記ホルダ部に固定されている。又、上記耕耘刃は上記ホルダ部に着脱自在に挿嵌される取付基部と、直接土壌に作用し耕耘作業を実行する耕耘刃部とから構成されている。
【0003】
そして上記取付基部と耕耘刃部は平板状の出発素材をプレス成形することによって所定の形状に一体成形されている。従って一般に取付基部と耕耘刃部の幅寸法と板厚は同じであり、耕耘刃部に合わせて板厚を薄くすれば取付基部での機械的強度が弱くなる。逆に取付基部の機械的強度を強くするため板厚を厚くすれば耕耘刃部の耕耘抵抗が増大して良好な耕耘作業が実行できなくなってしまう。又、板厚の厚い材料を使用してプレス成形後、耕耘刃部の肉厚を薄くする研摩や鍛造等の加工を施すことも可能であるが、このような加工に掛かる手間やコスト等のことを考えると必ずしも好ましい成形の形態とは言えない。
【0004】
又、このようにして成形された上記耕耘刃はそのままでは使用できず、別途行われる熱処理工程において焼入れを施され金属組織がより硬質のものへと状態変化される。そして耕耘刃が硬くなると土壌への進入が円滑になるため耕耘刃部の耕耘効率が向上する。しかしその反面において脆くなり、弾性力を有さなくなるため、例えば土壌中に存在していた石等に衝突した衝撃等によって簡単に耕耘刃部が破損してしまう。又、上記焼入れによって取付基部の機械的強度が低下してしまうことも考えられる。
【0005】
【特許文献1】特開平10−66401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景技術及び背景技術が抱えていた問題点を踏まえて本発明が解決しようとする課題を整理すると、耕耘刃の構成部材である取付基部と耕耘刃部は夫々異なる機能及び役割を有するにも拘らず、同一の材料で同じ板厚と幅寸法の出発素材によって形成されている。従って何れか一方の機能及び役割を優先すれば、他方の機能及び役割が充分ではなくなり、これを補うために上述のように別加工が必要となっていた。
又、単一の出発素材から同時に取付基部と耕耘刃部をプレス成形によって成形するということは、プレス型の形状を複雑にし、成形時の負荷を増大させる要因ともなり得る。更に耕耘刃の性質を改善するための熱処理がプレス成形後の別工程において行われていたため、工数の増大を招いていた。又、同一条件での単調な焼入れでは熱処理後の耕耘刃の性状が一様になってしまうため、硬さと適度な粘り気を兼ね備えたような複合的な性質を有する耕耘刃の成形や金属組織の状態変化を生み出すことはできなかった。
【0007】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、取付基部と耕耘刃部の双方の機能と役割を充分に発揮でき、成形が容易で少ない工数で製造でき、硬さと、耐衝撃性と、機械的強度とを兼ね備えた耕耘作業体及び該耕耘作業体における耕耘刃を成形する耕耘刃用プレス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するべく本願発明の請求項1による耕耘作業体は、耕耘筒体と、上記耕耘筒体に着脱可能に取り付けられる耕耘刃と、を具備してなる耕耘作業体において、上記耕耘刃は上記耕耘筒体に着脱される取付基部と、上記取付基部とは別途製造され取付基部に溶着・固定された耕耘刃部と、から構成されていることを特徴とするものである。
又、請求項2による耕耘作業体は、請求項1記載の耕耘作業体において、上記取付基部は上記耕耘刃部に対して幅狭に形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項3による耕耘作業体は、請求項1記載の耕耘作業体において、上記取付基部は上記耕耘刃部に対してより肉厚に形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項4による耕耘作業体は、請求項1記載の耕耘作業体において、上記取付基部は上記耕耘刃部の基部を挟み込むような形状をなしていることを特徴とするものである。
又、請求項5による耕耘作業体は、請求項1記載の耕耘作業体において、上記取付基部と耕耘刃部の一方には割りが形成され、上記取付基部と耕耘刃部の他方には上記割りに係合する楔が形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項6による耕耘作業体は、請求項1〜請求項4の何れかに記載の耕耘作業体において、上記耕耘刃は板材をプレス加工することにより所定形状に屈曲・形成されるものであることを特徴とするものである。
又、請求項7による耕耘作業体は、請求項6に記載の耕耘作業体において、上記耕耘刃は表裏面を夫々異なる温度でプレス加工されるものであることを特徴とするものである。
又、請求項8による耕耘作業体は、請求項6に記載の耕耘作業体において、上記耕耘刃は表裏面を同じ温度でプレス加工されるものであることを特徴とするものである。
又、請求項9による耕耘作業体は、請求項1〜請求項8の何れかに記載の耕耘作業体において、上記耕耘刃部は基端側から中間位置を過ぎた所定位置まで略真っ直ぐに延長され、そこから先端に向けて緩やかな螺旋状に延長・形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項10による耕耘作業体は、請求項1〜請求項9の何れかに記載の耕耘作業体において、上記耕耘刃部は基端部から中間部にかけて横断面において山形に湾曲されていることを特徴とするものである。
又、請求項11による耕耘刃用プレス装置は、第1プレス型と、上記第1プレス型に対して対向・配置された第2プレス型と、上記第1プレス型に設けられた第1温度調節手段と、上記第2プレス型に設けられた第2温度調節手段と、を具備したことを特徴とするものである。
又、請求項12による耕耘刃用プレス装置は、請求項11に記載の耕耘刃用プレス装置において、上記第1温度調節手段は、上記第1プレス型に接続され冷媒が供給・排出される接続チューブと、上記第1プレス型の内部に形成され冷媒が供給・排出される搬送経路とを備えており、又、上記第2温度調節手段は、上記第2プレス型に接続され冷媒が供給・排出される接続チューブと、上記第2プレス型の内部に形成され冷媒が供給・排出される搬送経路とを備えており、上記第1温度調節手段及び第2温度調節手段における夫々の冷媒は独立して温度設定できるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
したがって、本発明による耕耘作業体によると、耕耘筒体と、上記耕耘筒体に着脱可能に取り付けられる耕耘刃と、を具備してなる耕耘作業体において、上記耕耘刃は、上記耕耘筒体に着脱される取付基部と、上記取付基部とは別途製造され取付基部に溶着・固定された耕耘刃部と、から構成されているので、単一の出発素材から取付基部と耕耘刃部を同時に一体成形する場合問題となるプレス型の形状の複雑化と、成形時の負荷の増大とが防止される。又、取付基部と耕耘刃部の双方の機能と役割が互いの構成に制約を受けることなく十分に発揮できるようになり、研摩や鍛造等の付随的な加工が不要となって工数及び加工コストの削減が図られる。
又、上記取付基部を上記耕耘刃部に対して幅狭に形成した場合には耕耘刃部の幅寸法を維持した状態で取付基部の幅寸法を耕耘筒体のホルダ部の寸法に合わせて小さくすることができ、これに対応して上記取付基部を上記耕耘刃部に対して肉厚に形成することも可能である。
又、上記取付基部を上記耕耘刃部に対してより肉厚に形成した場合には取付基部の耐衝撃性と、機械的強度が向上し、大きな耕耘抵抗にも耐えられるようになる。
又、上記取付基部を上記耕耘刃部の基部を挟み込むような形状に形成した場合には取付基部と耕耘刃部の溶着面積が増大するから取付基部と耕耘刃部の接合が一層強固になり大きな耕耘抵抗にも耐えられるようになる。
又、上記取付基部と耕耘刃部の一方に割りを形成し、上記取付基部と耕耘刃部の他方に上記割りに係合する楔を形成した場合には取付基部と耕耘刃部の溶着面積が増大するから取付基部と耕耘刃部の接合が一層強固になる。また割りと楔の係合作用も加わって更に大きな耕耘抵抗にも耐えられるようになる。
又、上記耕耘刃は板材をプレス加工することにより所定形状に屈曲・形成されるものとした場合には、複雑な形状の耕耘刃の製造を容易に行うことができ、従来別工程として行われていた耕耘刃部の熱処理の為の前処理を耕耘刃部の成形と同時に行うことができ、工数の削減を図ることができる。
又、上記耕耘刃の表裏面を夫々異なる温度に設定した場合には、単一の耕耘刃に対して例えば硬さと粘り気といった異なる性質を同時に持たせることが可能となる。したがって、耕耘作業の作業効率の向上と、耐衝撃性及び機械的強度の向上とを図ることができる。
又、上記耕耘刃の表裏面を同じ温度に設定した場合には、別途熱処理工程を設けることなく、従来と同様の熱処理を行うことが可能となる。又、取付基部については焼入れを省略し機械的強度の増大を図ることができる。
又、上記耕運刃部を基端側から中間位置を過ぎた所定位置まで略真っ直ぐに延長され、そこから先端に向けて緩やかな螺旋状に延長・形成されているものとして構成した場合には、耕運時の耕運抵抗を大幅に低減させて耕運効率を向上させることが可能になる。
又、上記耕耘刃部を基端部から中間部にかけて横断面において山形に湾曲されている構成にした場合には、それによって、機械的強度を大幅に向上させることができるものである。
又、本発明による耕耘刃用プレス装置によると、第1プレス型と、上記第1プレス型に対して対向・配置された第2プレス型と、上記第1プレス型に設けられた第1温度調節手段と、上記第2プレス型に設けられた第2温度調節手段と、を具備しているので、第1プレス型と第2プレス型をそれぞれ異なる温度で、或いは同一の温度で処理することが可能となる。したがって、その後の焼入れによる耕耘刃の焼入れの具合を微調整することができ、単一の耕耘刃に硬さと粘り気、そして機械的強度を備えた複合的な性質を持たせることが可能となる。
又、上記第1温度調節手段は、上記第1プレス型に接続され冷媒が供給・排出される搬送経路とを備えており、又、上記第2温度調節手段は、上記第2プレス型に接続され冷媒が供給・排出される接続チューブと、上記第2プレス型の内部に形成され冷媒が供給・排出される搬送経路とを備えており、上記第1温度調節手段及び第2温度調節手段における夫々の冷媒は独立して温度設定できるように構成されている場合には、比較的簡単な構成によって第1温度調節手段と第2温度調節手段を構成でき、第1プレス型と第2プレス型とを別々に温度調整できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図1乃至図4を参照して本発明の第1の実施の形態を説明する。本発明の耕耘作業体1は、例えば、図1及び図2に示すような耕耘機201に対して装着されて使用される。耕耘作業体1の説明に先立って、上記耕耘機201の構成の概略について説明する。
【0011】
耕耘機201は比較的小規模な田畑や家庭菜園等の耕耘作業を行う場合に使用される手押し自走式の小型の耕耘作業機械である。具体的には図1及び図2に示すように、耕耘機201は、エンジン203を搭載した車体205と、該車体205の下部に設けられる2つの走行駆動輪207、207と、上記車体205の後部寄り上方に設けられる操作アーム215と、上記車体205の後方下部に取り付けられるロータリー式の本発明の耕耘作業体1とを備えることによって構成されている。
【0012】
又、車体205にはエンジン203の動力を走行駆動輪207、207に伝達する図示しない走行駆動伝達機構と、エンジン203の動力を耕耘作業体1に伝達する図示しない耕耘駆動伝達機構とが設けられている。
又、操作アーム215の先端には操作グリップ213、213と、ブレーキレバー219、219が設けられており、車体205の後部から操作アーム215の先端側に向けて操作レバー217が設けられている。この他操作アーム215の適宜の個所には図示しない各種のスイッチ類や操作アーム215の角度を調節する場合等に使用する調節ノブ221等が設けられている。
【0013】
又、耕耘作業体1の上部には耕耘作業時に掻き上げた土の飛散を防止すると共に耕した土壌の整地作用をするカバー223が設けられており、該カバー223の後方には耕耘作業時と耕耘非作業時とで耕耘作業体1の土壌に対する作用高さを変えたり、耕耘深さの微調整を行う場合に使用される補助従動輪225が設けられている。
【0014】
このような耕耘機201に適用される本実施の形態に係る耕耘作業体1は、図3に示すように耕耘筒体3と、上記耕耘筒体3に着脱可能に取り付けられている耕耘刃5とを具備することによって構成されている。
耕耘筒体3は図3では一例として断面形状が六角形状をした筒状の部材であり、車体205の幅方向に水平に延びるように設けられている。又、上述した耕耘駆動伝達機構を介してエンジン203の動力が伝達され、耕耘筒体3は所定の方向に所定の回転数で回転する。
【0015】
又、耕耘筒体3の外周面には、円周方向に角度を異ならせながら長手方向に沿って適宜の間隔を開けて耕耘筒体3の略全長に亘って複数個のホルダ部7が設けられている。
該ホルダ部7は、角筒状或いは断面コの字形をした平板状部材によって構成されており、耕耘筒体3の外周面に一例として溶接によって溶着されている。
又、ホルダ部7には耕耘刃5をホルダ部7に取り付ける場合に使用される取付穴9が設けられていて、図示のようにボルト11、ナット13を使用してホルダ部7に挿嵌された耕耘刃5がホルダ部7に固定され耕耘筒体3と一体となって回転できるようになっている。
【0016】
耕耘刃5は上記耕耘筒体3のホルダ部7に対して着脱自在に挿嵌される取付基部15と、上記取付基部15とは別途製造される耕耘刃部17とを備えている。取付基部15は一例として図示のようにへの字状をしており、耕耘刃部17より幾分肉厚で略同一の幅寸法を有する平板状部材である。
又、取付基部15には穴部19が設けられており、ホルダ部7に挿嵌後、ボルト11がホルダ部7の上記取付穴9と該穴部19を貫通し、ボルト11と螺合するナット13によって固定できるようになっている。
【0017】
取付基部15の先端側の部位は耕耘刃部17の基部21と一例として溶接によって溶着・固定される溶着基部22となっている。
又、耕耘刃5は取付基部15より肉薄の平板状部材であり円弧状に湾曲した形状を有しており、更に先端部にかけて幾分捩られた形状となっている。
又、耕耘刃5の外周縁は片刃状に形成されており、耕耘刃5の土壌への進入を容易にしている。
【0018】
次に図3に示す耕耘刃5を例にとって、該耕耘刃5の製造の手順と併せて、耕耘刃部17の成形の際に使用される本発明の耕耘刃用プレス装置23の構成について説明する。
取付基部15は肉厚の平板状の出発素材を使用して図示のようなへの字状の形状に切断された後、穴部19を形成し、コーナー部の面取り加工等を行うことによって成形される。
【0019】
これに対し耕耘刃部17は肉薄の平板状の出発素材を使用して図示のような円弧状に湾曲した形状に切断し、外周面に片刃状の刃を付けた後、位置決め用のピン孔25を穿設して図4に示すような耕耘刃用プレス装置23にかけられる。
即ち、基盤上に設置される下型を一例として第1プレス型27とし、第1プレス型27上の隅部から立ち上げられている位置決めピン29に上記ピン孔25を合わせて挿嵌し、第1プレス型27上の所定の位置に耕耘刃部17を設置する。
【0020】
又、上記第1プレス型27の上方に対向・配置されている上型を一例として第2プレス型31とし、上方から第2プレス型31を下方に押し下げ、或いは上記第1プレス型27を下方から上方に押し上げることによって上記耕耘刃部17のプレス成形を行う。
又、上記第1プレス型27には第1温度調節手段33が設けられており、上記第2プレス型31には第2温度調節手段35が設けられているから、これら第1温度調節手段33と第2温度調節手段35とを使用することによって、耕耘刃部17の捩り成形とその後の焼入れのための熱処理が同時に実行される。
【0021】
第1温度調節手段33及び第2温度調節手段35は上記第1プレス型27乃至第2プレス型31に接続される接続チューブ37、39と、上記第1プレス型27乃至第2プレス型31の内部に形成される搬送流路41、43と、上記接続チューブ37及び上記搬送流路41中を流れる冷媒Aと、上記接続チューブ39及び上記搬送流路43中を流れる冷媒Bとを備えることによって構成されている。
又、冷媒Aと冷媒Bは夫々独立して温度設定できるように構成されており、例えば第1プレス型27内を流れる冷媒Aを水(又は油等)を所定の温度に加熱した加熱水とし、第2プレス型31内を流れる冷媒Bを常温の水(又は油等)とするように温度を変えることも可能であり、このようにすればその後の焼入れの具合を耕耘刃部17の表側と裏側とで異ならせることが可能となる。
【0022】
具体的に説明すると、上記第1プレス型27側を上記第2プレス型31側に対してより高温に設定することにより、その後の焼入れによって耕耘刃部17の背面側に対してはしっかりとした焼が入り、逆に、内側面に対しては緩やかな焼が入ることになる。
逆に、上記第2プレス型31側を上記第1プレス型27に対してより高温に設定することにより、その後の焼入れによって耕耘刃部17の内側面に対してはしっかりとした焼が入り、逆に、背面側に対しては緩やかな焼が入ることになる。
又、上記第1プレス型27側を上記第2プレス型31を共に低温に設定することにより、その後の焼入れによって中心部は硬く両側は柔らかな焼入れとなる。
【0023】
そしてこのようにして所定の形状に成形され、熱処理が施された耕耘刃部17の基部21と取付基部15の溶着基部22を重ね合わせ、その隅部或いは耕耘刃部17に形成されているピン孔25等を利用して溶接し、バリ取り等の仕上げ加工を施すことによって本実施の形態に係る耕耘作業体1は製造される。
【0024】
以上本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
即ち、第1に単一の出発素材から取付基部15と耕耘刃部17を同時に一体成形する場合問題となるプレス型の形状の複雑化と、成形時の負荷の増大とが防止される。
又、取付基部15と耕耘刃部17の双方の機能と役割が互いの構成に制約を受けることなく充分に発揮できるようになり、研摩や鍛造等の付随的加工が不要になって工数及び加工コストの削減が図られる。
又、複雑な形状の耕耘刃5の製造を容易に行うことができ、従来別工程として行われていた耕耘刃部17の焼入れのための熱処理を耕耘刃部17の成形と同時に行うことができ、工数の削減を図ることができる。
又、耕耘刃部17の表裏面を夫々異なる温度で焼入れした場合には、単一の耕耘刃5に対して例えば硬さと粘り気といった異なる性質を同時に持たせることが可能となる。したがって、耕耘作業の作業効率の向上と、耐衝撃性及び機械的強度の向上とを図ることができるようになる。
又、取付基部15は比較的厚肉とし、一方、耕耘刃部17は薄肉となっているので、例えば、取付基部15と耕耘刃部17を一本化させた状態で焼入れした場合には、耕耘刃部17に関してはしっかりとした焼きが短時間のうちに入り高い硬度を得ることになり、一方、取付基部15に関しては瞬時に焼が入ることはなく、その結果、徐々に焼き戻しが入って高い強靭性を備えることとなる。そして理想的な耕耘刃5を得ることができるものである。
【0025】
次に図5を参照して本発明の第2の実施の形態に係る耕耘作業体51について説明する。基本的な構成は上記第1の実施の形態と同様であるので、該基本的な構成については説明を省略し、図中の符号も上記第1の実施の形態において使用した符号をそのまま使用する。
即ち、本実施の形態に係る耕耘作業体51にあっては、取付基部53を耕耘刃部17に対して幅狭に形成し、上記第1の実施の形態に係る取付基部15よりも更に厚肉に形成している。
そして、このような第2の実施の形態の場合にも上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することができ、加えて耕耘刃部17の幅寸法を維持した状態で取付基部53の幅寸法を耕耘刃部17のホルダ部7の寸法に合わせて小さくすることができる。また取付基部15を厚肉にすることで所望の機械的強度が維持乃至増強されている。
【0026】
次に図6を参照して本発明の第3の実施の形態に係る耕耘作業体61について説明する。基本的な構成は上記第1の実施の形態と同様であるので、該基本的な構成については説明を省略し、図中の符号も上記第1の実施の形態において使用した符号をそのまま使用する。
即ち、本実施の形態に係る耕耘作業体61にあっては、取付基部63を2枚の挟持片65によって形成し、該2枚の挟持片65によって耕耘刃部17の基部21を挟み込むようにしている。
尚、2枚の挟持片65は同形状であり、平板状の部材を中央付近で段差状に折り曲げた形状を有している。又、このような形状の2枚の挟持片65には共に穴部19が形成されており、該穴部19を一致させた状態で図示のように拝み合わせるように重ね合わせることによって取付基部63は構成されている。
そしてこのような第3の実施の形態の場合にも上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することができ、加えて取付基部63と耕耘刃部17の溶着面積が増大するから取付基部63と耕耘刃部17の接合が一層強固になり大きな耕耘抵抗にも耐えられるようになる。
【0027】
次に図7を参照して本発明の第4の実施の形態に係る耕耘作業体71について説明する。基本的な構成は上記第1の実施の形態と同様であるので、該基本的な構成については説明を省略し、図中の符号も上記第1の実施の形態において使用した符号をそのまま使用する。
即ち、本実施の形態に係る耕耘作業体71にあっては、取付基部73の全体を耕耘刃部17に重ね合わせるようにしている。又、本実施の形態の場合にはピン孔25の直径を穴部19の直径と略等しくなるようにし、ピン孔25と穴部19を一致させた状態で取付基部73と耕耘刃部17を溶接する。
そして、このような第4の実施の形態の場合にも上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することができ、加えて取付基部73と耕耘刃部17の溶着面積が増大するから両者の接合が一層強固となる。また取付基部73の板厚に耕耘刃部17の板厚が加わって厚肉になるから、取付基部73の機械的強度も大きくなる。
【0028】
次に図8を参照して本発明の第5の実施の形態に係る耕耘作業体81について説明する。基本的な構成は上記第1の実施の形態と同様であるので、該基本的な構成については説明を省略し、図中の符号も上記第1の実施の形態において使用した符号をそのまま使用する。
即ち、本実施の形態に係る耕耘作業体81にあっては、耕耘刃部85の形状を基部87側で幅広、先端部89側で幅狭になるように形成すると共に、取付基部83と耕耘刃部85との間に隙間Gが形成されるようにして取付基部83と耕耘刃部85を溶接によって接合している。
そして、このような第5の実施の形態の場合にも上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することができ、加えて従来の耕耘作業体では採用できなかったような複雑な形状の耕耘作業体81を製造できるようになる。
【0029】
次に図9を参照して本発明の第6の実施の形態に係る耕耘作業体91について説明する。基本的な構成は上記第1の実施の形態と同様であるので、該基本的な構成については説明を省略し、図中の符号も上記第1の実施の形態において使用した符号をそのまま使用する。
即ち、本実施の形態に係る耕耘作業体91にあっては、取付基部93に対して一例としてV字状の楔95が形成され、耕耘刃部97に対して上記楔95に係合する同じくV字状の割り99が形成されている。
そして、このような第6の実施の形態の場合にも上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することができ、加えて係合する楔95と割り99の分だけ取付基部93と耕耘刃部97の溶着面積が増大するから取付基部93と耕耘刃部97の接合が一層強固になる。また楔95と割り99の係合作用も加わって更に大きな耕耘抵抗にも耐えられるようになる。
【0030】
又、この第6の実施の形態の場合には、上記耕耘刃部97に次のような特徴がある。すなわち、この実施の形態における耕耘刃部97は、基端側97aから中間位置を過ぎた所定位置97bまで略真っ直ぐに延長され、そこから先端97cに向けて三次元的に緩やかな螺旋状に延長・形成されている。このような形状とすることにより、耕耘時の抵抗を軽減させて耕耘効率の向上を図ることができる。
因みに、従来の耕耘刃部は、基端側から中間位置を過ぎた所定位置まで略真っ直ぐに延長され、そこから先端に向けて二次元的に湾曲した状態で延長・形成されている。このような形状の場合には、掘り起こされた土が後方に飛散するような状態の耕耘となるとともに、耕耘作業体とカバーとの間に土が溜ってしまうことになり、大きな耕耘抵抗が発生してしまって、耕耘効率が低下してしまうものである。
【0031】
又、上記耕耘刃部97は基端部から中間部にかけて横断面において山形に湾曲・形成されている。それによって、機械的強度を大幅に向上させることができるものである。
【0032】
次に図10を参照して本発明の第7の実施の形態に係る耕耘作業体101について説明する。基本的な構成は上記第1の実施の形態と同様であるので、該基本的な構成については説明を省略し、図中の符号も上記第1の実施の形態において使用した符号をそのまま使用する。
即ち、本実施の形態に係る耕耘作業体101にあっては、取付基部103に対して一例としてV字状の割り105が形成され、耕耘刃部107に対して上記割り105に係合する同じくV字状の楔109が形成されている。又、取付基部103には2つの穴部111、111が設けられており、ホルダ部113の取付板115に重ね合わせた後、ボルト11、11がホルダ部113の取付板115に形成されている2つの取付穴117、117と上記穴部111、111とを貫通し、ボルト11、11と螺合するナット13、13とによってホルダ部113に固定できるようになっている。
そして、このような第7の実施の形態の場合にも上記第1の実施の形態と同様の効果を奏することができ、加えて係合する割り105と楔109の分だけ取付基部103と耕耘刃部107の溶着面積が増大するから取付基部103と耕耘刃部107の接合が一層強固になる。また割り105と楔109の係合作用も加わって更に大きな耕耘抵抗にも耐えられるようになる。
【0033】
次に図11及び図12を参照して本発明の第8の実施の形態について説明する。本発明の第8の実施の形態は図3に示す上記第1の実施の形態に係る耕耘作業体1をトラクタ301に適用した実施の形態である。
トラクタ301は中規模或いは比較的大規模な田畑や園芸施設等の耕耘作業を行う場合に使用される乗用自走式の大型の耕耘作業機械である。具体的には図11、12に示すようにトラクタ301は、エンジン303を搭載した車体305と、該車体305の下部に設けられる4つの走行駆動輪307、307、307、307と、上記車体305の後方寄り上方に設けられる運転席309と、上記車体305の後方に取り付けられるロータリー式の耕耘ユニット311とを備えることによって構成されている。
又、車体305にはエンジン303の動力を走行駆動輪307、307、307、307に伝達する図示しない走行駆動伝達機構と、エンジン303の動力を耕耘ユニット311に伝達する図示しない耕耘駆動伝達機構とが設けられている。
【0034】
又、運転席309には、ドライバーが着座する座席313と、操作ハンドル315と、操作レバー317と、図示しない各種のスイッチ類及び表示パネル等が設けられている。
又、耕耘ユニット311は図示しない油圧昇降機構を介して車体305に対して上下方向に揺動自在に吊持状態で接続されており、耕耘作業時と道路走行時とで耕耘ユニット311の吊持高さを変えたり、耕耘深さの微調整ができるようになっている。
耕耘ユニット311は耕耘作業時に掻き上げた土の飛散を防止すると共に耕した土壌の整地作用をするカバー319と、直接土壌に作用して耕耘作業を行う第1の実施の形態に係る耕耘作業体1とを備えることによって構成されている。尚、耕耘作業体1についての説明はここでは省略し、上記耕耘機201に適用した第1の実施の形態中の説明を参照されたい。
【0035】
尚、本発明は上述した第1〜第8の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、取付基部15と耕耘刃部17を別々に成形するようにしたことに伴って、これら2部材を別々の材料によって形成することも可能である。また取付基部15自体は単一の部材であるが取付基部15の端面に耕耘刃部17の基部21を受け入れることができるスリットを形成しておくことで、耕耘刃部17を取付基部15によって挟持し得るように構成することも可能である。
この他、第1プレス型27と第2プレス型31は耕耘刃部17の成形と熱処理のためだけに使用するのではなく組み合わせた状態或いは溶接した状態の耕耘刃部17と取付基部15を第1プレス型27上に設置し、耕耘刃部17と取付基部15の双方の成形と熱処理を同時に行うようにすることも可能である。
又、前記第2〜第7の実施の形態に係る耕耘作業体21、31、41、51、61、71、81、91、101は耕耘機201だけでなく、トラクタ301においても同様に適用可能である。
又、耕耘刃部の先端部が経年使用によって磨耗したような場合には、その部分をV字状の切断線にて切断・除去し、新たな先端部をそこに係合させて溶着・固定することが考えられる。その場合には取付基部のリサイクルが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、例えば農業用の耕耘機やトラクタ等に装着され、耕耘筒体と耕耘刃とを具備するロータリー式の耕耘作業体に関するものであって、特に上記耕耘刃の構造・組成と、上記耕耘刃を成形するプレス装置の構造を工夫することによって成形が容易で少ない工数で硬さと、耐衝撃性と、機械的強度とを兼ね備えた耕耘作業体と該耕耘作業体における耕耘刃を成形する耕耘刃用プレス装置の製造分野等において広く利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、本実施の形態の耕耘作業体をトラクタに装着した状態を示すトラクタ全体の斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、本実施の形態の耕耘作業体をトラクタに装着した状態を示す耕耘ユニット周辺の斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で、耕耘作業体を一部分解して示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態を示す図で、耕耘刃用プレス装置を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態を示す図で、耕耘作業体を示す斜視図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態を示す図で、耕耘作業体を示す斜視図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態を示す図で、耕耘作業体を示す斜視図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態を示す図で、図8(a)は耕耘作業体を示す斜視図、図8(b)は図8(a)のA−A断面図である。
【図9】本発明の第6の実施の形態を示す図で、図9(a)は耕耘作業体を表側から視て示す斜視図、図9(b)は耕耘作業体を裏側から視て示す斜視図である。
【図10】本発明の第7の実施の形態を示す図で、耕耘作業体を示す斜視図である。
【図11】本発明の第8の実施の形態を示す図で、本発明の第1の実施の形態に係る耕耘作業体をトラクタに装着した状態を示すトラクタ全体の斜視図である。
【図12】本発明の第8の実施の形態を示す図で、本発明の第1の実施の形態に係る耕耘作業体をトラクタに装着した状態を示す耕耘ユニット周辺の斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 耕耘作業体
3 耕耘筒体
5 耕耘刃
7 ホルダ部
15 取付基部
17 耕耘刃部
21 基部
22 溶着基部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘筒体と、上記耕耘筒体に着脱可能に取り付けられる耕耘刃と、を具備してなる耕耘作業体において、
上記耕耘刃は上記耕耘筒体に着脱される取付基部と、上記取付基部とは別途製造され取付基部に溶着・固定された耕耘刃部と、から構成されていることを特徴とする耕耘作業体。
【請求項2】
請求項1記載の耕耘作業体において、
上記取付基部は上記耕耘刃部に対して幅狭に形成されていることを特徴とする耕耘作業体。
【請求項3】
請求項1記載の耕耘作業体において、
上記取付基部は上記耕耘刃部に対してより肉厚に形成されていることを特徴とする耕耘作業体。
【請求項4】
請求項1記載の耕耘作業体において、
上記取付基部は上記耕耘刃部の基部を挟み込むような形状をなしていることを特徴とする耕耘作業体。
【請求項5】
請求項1記載の耕耘作業体において、
上記取付基部と耕耘刃部の一方には割りが形成され、上記取付基部と耕耘刃部の他方には上記割りに係合する楔が形成されていることを特徴とする耕耘作業体。
【請求項6】
請求項1〜請求項4の何れかに記載の耕耘作業体において、
上記耕耘刃は板材をプレス加工することにより所定形状に屈曲・形成されるものであることを特徴とする耕耘作業体。
【請求項7】
請求項6に記載の耕耘作業体において、
上記耕耘刃は表裏面を夫々異なる温度でプレス加工されるものであることを特徴とする耕耘作業体。
【請求項8】
請求項6に記載の耕耘作業体において、
上記耕耘刃は表裏面を同じ温度でプレス加工されるものであることを特徴とする耕耘作業体。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れかに記載の耕耘作業体において、
上記耕耘刃部は基端側から中間位置を過ぎた所定位置まで略真っ直ぐに延長され、そこから先端に向けて緩やかな螺旋状に延長・形成されていることを特徴とする耕耘作業体。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れかに記載の耕耘作業体において、
上記耕耘刃部は基端部から中間部にかけて横断面において山形に湾曲されていることを特徴とする耕耘作業体。
【請求項11】
第1プレス型と、上記第1プレス型に対して対向・配置された第2プレス型と、上記第1プレス型に設けられた第1温度調節手段と、上記第2プレス型に設けられた第2温度調節手段と、を具備したことを特徴とする耕耘刃用プレス装置。
【請求項12】
請求項11に記載の耕耘刃用プレス装置において、
上記第1温度調節手段は、上記第1プレス型に接続され冷媒が供給・排出される接続チューブと、上記第1プレス型の内部に形成され冷媒が供給・排出される搬送経路とを備えており、
又、上記第2温度調節手段は、上記第2プレス型に接続され冷媒が供給・排出される接続チューブと、上記第2プレス型の内部に形成され冷媒が供給・排出される搬送経路とを備えており、
上記第1温度調節手段及び第2温度調節手段における夫々の冷媒は独立して温度設定できるように構成されていることを特徴とする耕耘刃用プレス装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−288386(P2006−288386A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70096(P2006−70096)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(594037198)
【Fターム(参考)】