説明

耕耘作業機及び土除去装置

【課題】耕耘軸や、耕耘爪を耕耘軸に固定するボルト、ナットへの土の付着を防止する。
【解決手段】耕耘作業機は、回転可能に支持された耕耘ロータ10を備える。耕耘ロータ10は、走行機体から動力を受けて回転する耕耘軸11と、この耕耘軸11に配設された耕耘爪15と、耕耘軸11の軸方向に隣接して設けられた耕耘爪15間の耕耘軸11が挿通される挿通孔を有すると共に、隣接する耕耘爪15間の距離よりも短い幅を有し、隣接する耕耘爪15間の耕耘軸11が挿通孔に挿通されて耕耘軸11に装着されるリング体20を有する。リング体20は、その幅方向端部に凹凸29が形成される。リング体20は、耕耘軸11の回転に伴い、耕耘軸11に対して遊転自在で且つ隣接する耕耘爪15間を移動自在である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体から動力を受けて耕耘軸を回転させ、該耕耘軸に配設された耕耘爪により圃場を耕耘する耕耘作業機及びこれに用いられる土除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような耕耘作業機は、回転する耕耘爪により耕耘、代掻き時に起こした耕土が隣接する耕耘爪間の耕耘軸に多量に付着して耕耘爪の耕土への打ち込みが悪くなって浅耕となり、また耕耘爪間の耕耘軸に多量の耕土が付着するに伴い、作業機側に供給される動力が増加して走行機体の走行速度が低下し、耕耘性能が低下するという欠点があった。また、従来の耕耘作業機は、耕耘爪を耕耘軸に取り付けるボルトやナットに多量の耕土が付着し、耕耘爪を交換する場合においてその付着した耕土を落とす作業が必要となり、そのための時間と手間を要し、交換作業の効率が低下し、労力の増加を招くという欠点もあった。
【0003】
そこで、このような問題を解決するため、特許文献1に記載されているように、隣接する耕耘爪間の耕耘軸に障碍物除去装置を設けた耕耘装置が提案されている。この障碍物除去装置70は、図8(側面図)に示すように、耕耘軸11に遊嵌されるパイプ71と、パイプ71の外周に周方向に所定間隔を有して配設されて放射状に延びる爪取付パイプ72(文献ではパイプ)と、爪取付パイプ72に挿着されて放射状に延びる杆73と、杆73の先端部に設けられた障碍物除去爪74とを有して構成されている。
【0004】
障碍物除去爪74は耕耘軸11の軸方向に隣接する耕耘爪76間の内側に配設され、障碍物除去爪74の先端側は杆73よりも一方側に隣接して設けられた耕耘爪76に接近するに従って漸次、耕耘軸側へ屈曲して杆73の中間位置まで延びて、障碍物除去爪74は杆73に対して耕耘軸11の軸方向に対称に設けられている。また障碍物除去爪74の先端部は、耕耘軸11に取り付けられた円板77の周端部に耕耘爪76を固定するボルト17,ナット18よりも外側に位置している。
【0005】
【特許文献1】実公昭39−27244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この障碍物除去爪を備えた障碍物除去装置は、耕耘軸に遊嵌されて耕耘軸に関わりなく隣接する耕耘爪間の空間に位置するので、耕耘爪が回転して障碍物除去爪に接近する毎に耕耘爪に付着した耕土は障碍物除去爪によって掻き取られる。
【0007】
しかしながら、隣接する耕耘爪間の耕耘軸に付着して障碍物除去爪よりも耕耘軸側で塊となった耕土は、耕耘爪の回転に拘わらずに障碍物除去爪と接触しないので、障碍物除去爪によって耕耘軸に付着した耕土を取り除くことができない。また障碍物除去爪の先端部は、耕耘爪を取り付けたボルトやナットの位置に届くように延びていないので、障碍物除去爪によってボルトやナットに付着した耕土を掻き取ることができない。従って、障碍物除去装置を備えた耕耘作業機は、耕耘性能が低下したり、耕耘爪を交換する場合において交換作業の効率が低下して労力の増加を招いたりするという問題が発生する。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、耕耘軸や、耕耘爪を耕耘軸に固定するボルト、ナットへの土の付着が防止可能な耕耘作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の耕耘作業機は、走行機体から動力を受けて耕耘軸を回転させ、該耕耘軸に配設された耕耘爪により圃場を耕耘する耕耘作業機において、耕耘軸の軸方向に隣接して設けられた耕耘爪間の耕耘軸が挿通される挿通孔を有すると共に、隣接する耕耘爪間の距離よりも短い幅を有し、隣接する耕耘爪間の耕耘軸が挿通孔に挿通されて耕耘軸に装着されるリング体を備え、リング体は、耕耘軸の回転に伴い、該耕耘軸に対して遊転自在で且つ隣接する耕耘爪間を移動自在であることを特徴とする。
【0010】
この特徴によれば、耕耘軸の軸方向に隣接して設けられた耕耘爪間の耕耘軸が挿通される挿通孔を有すると共に、隣接する耕耘爪間の距離よりも短い幅を有し、隣接する耕耘爪間の耕耘軸が挿通孔に挿通されて耕耘軸に装着されるリング体を備え、リング体は、耕耘軸の回転に伴い、該耕耘軸に対して遊転自在で且つ隣接する耕耘爪間を移動自在であることにより、リング体は耕耘軸の回転に関わりなく隣接する耕耘爪間の空間に耕耘軸から懸架した状態で位置する。即ち、リング体の内周面は常に耕耘軸の上部に接した位置にあるため、耕耘軸が回転するに伴い、耕耘軸に付着した耕土は、リング体の内周面が接触する耕耘軸の上部に移動する毎にリング体の内周面と接触して掻き取られる。このため、耕耘軸に付着した耕土を取り除くことができ、耕耘軸への耕土の付着を防止することができる。
【0011】
また、耕耘軸の外側にボルト,ナットを介して耕耘爪が取り付けられている場合、リング体が耕耘軸から垂れ下がることと、軸方向に移動自在であることから、リング体の軸方向両側がボルト,ナットに接触する状態にあるため、ボルト,ナットに付着した耕土は、耕耘爪が回転してボルト,ナットがリング体に接近する毎にリング体の幅方向端部と接触して掻き取られる。このため、ボルト,ナットへの耕土の付着を防止することができ、爪交換をする際の作業時間が短縮するとともに、爪交換作業の労力の軽減を図ることができる。またリング体は隣接する耕耘爪間を移動自在であるので、回転する耕耘爪やボルト,ナット等にリング体が接触すると、リング体は隣接する耕耘爪やボルト,ナット等から離反する側に移動可能である。このため、耕耘軸の回転時においてリング体が耕耘爪やボルト,ナット等と過度に接触する事態を防止することができ、リング体の寿命の低下を未然に防止することができる。
【0012】
また特徴の一つは、リング体は、その幅方向端部の少なくともいずれか一方の端部に凹凸が形成されていることを特徴とする。
【0013】
この特徴によれば、リング体の幅方向端部の少なくともいずれか一方の端部に凹凸を形成することで、リング体の幅方向端部に連設する多数の爪を形成した形になり、爪がボルト,ナットに接触する回数が増すため、ボルト,ナットに付着した耕土をリング体の幅方向端部によって確実に掻き取ることができる。
【0014】
また特徴の一つは、リング体は、耕耘軸に対して着脱自在であることを特徴とする。
【0015】
この特徴によれば、リング体を耕耘軸に対して着脱自在にすることで、リング体が破損等した場合に、これを容易に交換することができ、リング体の交換作業の作業性を向上することができる。
【0016】
また特徴の一つは、リング体は、弾性変形可能な材料で形成されていることを特徴とする。
【0017】
この特徴によれば、リング体を弾性変形可能な材料で形成することにより、耕耘軸やボルト,ナットに付着した耕土がリング体に接触した場合、リング体の内周面や幅方向端部が変形してこれらの耕土に力を作用させ、ボルト、ナットに接触した耕土を掻き落とした後に原形に復帰するので、耕土の掻き落としをより容易にすることができる。
【0018】
また特徴の一つは、リング体の内面に、凹凸が設けられていることを特徴とする。
【0019】
この特徴によれば、リング体の内面に凹凸を設けることで、リング体の内面に多数の凸部を形成した形になり、この凸部が耕耘軸に付着した耕土に接触する回数が増すため、耕耘軸に付着した耕土をリング体の内面によって掻き取る効果をより向上することができる。
【0020】
また特徴の一つは、リング体は、これを形成する帯体の両端部同士が重なり合う重なり部分を有してリング状に形成されていることを特徴とする。
【0021】
この特徴によれば、リング体は、これを形成する帯体の両端部同士が重なり合う重なり部分を有してリング状に形成されることで、リング体を耕耘軸に装着すると、重なり部分の自重により、リンク体は耕耘軸に対して回動して重なり部分がリンク体の下部に位置した姿勢となる。このため、耕耘軸の回転に拘わらず、重なり部分が常にリング体の下部に位置しようとするため、リング体の共回りが防止され、リング体の内周面による耕耘軸回りに付着した耕土の除去効果を得ることができる。また耕耘軸が回転すると、耕耘軸に遊転されたリング体は、重なり部分が錘となって揺動することができる。このため、耕耘軸が回転するに伴い、リング体は耕耘軸の回転方向前側及び後側に揺動し、耕耘軸に付着した耕土は、リング体が揺動しない場合と比較して、耕耘軸の上部に移動する毎に揺動するリング体の内周面と接触して掻き取られる。このため、耕耘軸に付着した土を効果的に取り除くことができる。
【0022】
また特徴の一つは、請求項1から6のいずれかに記載のリング体からなる耕耘作業機用の土除去装置であることを特徴とする。
【0023】
この特徴によれば、耕耘作業機用の土除去装置は請求項1から6のいずれかに記載のリング体からなることにより、この土除去装置を耕耘作業機の耕耘軸の隣接する耕耘爪間に装着すると、土除去装置によって耕耘軸に付着した耕土を掻き取ることができ、耕耘軸への耕土の付着を防止することができる。また土除去装置の幅方向端部が耕耘爪を取り付けるボルト,ナットに接触してこれらに付着した耕土を掻き取ることができる。またリング体の幅方向端部の少なくともいずれか一方の端部に凹凸を形成することで、ボルト,ナットに付着した耕土を確実に掻き取ることができる。さらにリング体を耕耘軸に対して着脱自在にすることで、リング体が破損等した場合に、これを容易に交換することができ、リング体の交換作業の作業性を向上することができる。また、リング体を弾性変形可能な材料で形成することにより、リング体は耕耘軸やボルト,ナットに付着した耕土を掻き落とした後に原形に復帰するので、耕土の掻き落としをより容易にすることができる。またリング体の内面に凹凸を設けることで、耕耘軸に付着した耕土をリング体の内面によって掻き取る効果をより向上することができる。さらに、リング体は、これを形成する帯体の両端部同士が重なり合う重なり部分を有してリング状に形成されることで、リング体は耕耘軸の回転に拘わらず、重なり部分が常にリング体の下部に位置しようとするため、リング体の共回りが防止され、リング体の内面による耕耘軸回りに付着した耕土の除去効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係わる耕耘作業機及び土除去装置によれば、上記特徴を有することによって、耕耘軸や、耕耘爪を耕耘軸に固定するボルト、ナットへの土の付着が防止可能な耕耘作業機及びこれに用いられる土除去装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図1〜図7に基づいて説明する。本実施の形態は、耕耘作業機のうち圃場の土壌を耕耘・砕土する耕耘作業機を例にして説明する。
【0026】
耕耘作業機1は、図2(側面図)に示すように、走行機体90の後部に装着されて走行機体90の走行とともに進行して耕耘作業を行うものであり、機体2の幅方向に延びる本体フレーム3の両側に配設された伝動ケース5及びサポートフレームの下側間に耕耘ロータ10が回転自在に備えられている。
【0027】
本体フレーム3の幅方向の中央部にはギアボックス4が設けられ、このギアボックス4には前側に延びる入力軸4aが備えられている。入力軸4aは、走行機体90のPTO軸(図示せず)から伝動軸(図示せず)を介して動力が伝達されるようになっている。入力軸4aに伝達された動力は本体フレーム3に内蔵された動力伝達機構(図示せず)及び伝動ケース5内の動力伝達機構(図示せず)を介して伝達されて、耕耘ロータ10をダウンカット方向に回転させるようになっている。
【0028】
耕耘ロータ10の上方には前後方向に延びて耕耘ロータ10の上部を覆う上部カバー7が設けられ、この上部カバー7の後端部に整地体50が上下方向に回動自在に取り付けられている。整地体50は、板状であり、先端側が斜め後方側に延びて先端部が圃場表面に接し、本体フレーム3と整地体50との間に取り付けられた上下調整機構8を介して上下位置調整が可能に構成されている。
【0029】
耕耘ロータ10は、図1(正面図)に示すように、図2に示す伝動ケース5とサポートフレームとの下側間に軸支された耕耘軸11と、耕耘軸11の軸方向に所定間隔をおいて複数箇所に設けられた円板状の爪取付フランジ13に周方向に所定の間隔を有して配設されて放射方向に延びる耕耘爪15と、耕耘軸11の軸方向に隣接する耕耘爪15間の耕耘軸11に装着されたリング体20とを有しなる。
【0030】
耕耘爪15は、爪取付フランジ13に取り付けられる取付基部15aの先端部から延びる縦刃部15bから横刃部15cにかけて図2に示す耕耘爪15の回転方向と逆向きに湾曲するとともに、横刃部15cが略一定の曲率半径で機体幅方向一方側に湾曲して湾曲側にすくい面を形成している。耕耘爪15は、この取付基部15aを爪取付フランジ13にボルト17,ナット18を介して取り付けられている。このため、耕耘爪15は、ボルト17,ナット18の締結状態を解除すると爪取付フランジ13から取り外すことができ、耕耘爪15の交換が可能である。
【0031】
リング体20は、弾性変形可能なゴムや樹脂等の材料で形成された図3(平面図)に示す厚さの薄い帯体21(例えば、肉厚約1mm)を丸めて両端部を重ね合わせて形成されたものである。帯体21は、図3(平面図)に示すように、長手方向に延びる平面視矩形状のリング本体部22と、リング本体部22の一方側端部から延びてリング本体部22の幅よりも小さな幅を有する平面視矩形状の延長部23とを有し、リング本体部22の延長部23寄りにリング本体部22の幅方向に延びるスリット25が形成され、リング本体部22の他方側端部に係止突出部27が形成されている。スリット25にはリング本体部22の外周側から係止突出部27の全体が差し込まれる。
【0032】
リング本体部22の幅方向両側には、リング本体部22の長手方向に一定の間隔を有して連続的に形成された凹凸29が設けられている。この凹凸29は、前述したボルト17やナット18に付着した耕土を容易に掻き取ることが可能であれば、いかなる形状のものでもよく、例えば、図3に示す半円状の凹部29aをリング本体部22の長手方向に一定間隔を有して設けて隣接する半円状の凹部29aの端部間を直線状に形成してこれを凸部29bとしたり、図4(a)(平面図)に示す円弧状の凹部29cを連続的に設けて隣接する円弧状の凹部29cの端部同士を針状に形成してこれを凸部29dとしたり、図4(b)(平面図)に示す円弧状の凹部29aを一定の間隔を有して連続的に設けて隣接する円弧状の凹部29aの端部同士を外側へ円弧状に突出してこれを凸部29eとしたり、図4(c)(平面図)に示す一定間隔を有して設けた矩形状の溝を凹部29fとし、隣接する溝の凹部29f間を直線状に形成してこれを凸部29gとしたりしてもよい。
【0033】
これら凸部29b等は、リング本体20が耕耘軸11の回りに装着された状態で耕耘爪15が回転するときに、ボルト17、ナット18に付着している耕土を掻き落とす働きをし、1本のボルト17に付き多数の凸部29b等が繰り返して当たることで、耕土を確実に落とすことを可能にしている。特に、図3に示す凹凸29の場合には、直線部分と円弧部分が断続的にボルト17、ナット18に付着した耕土に接触することによる付着土除去効果が得られ、図4(a)に示す凹凸29の場合には、針状に突出した凸部29dがボルト17等に付着した耕土に細かく接触することによる付着土除去効果が得られ、図4(b)に示す凹凸29の場合には、円弧状に形成された凹凸29がボルト17等に付着した耕土にやわらかく接触するため凹凸29の耐久性を向上する効果が得られ、図4(c)に示す凹凸29の場合には、隣接する凹部29f間のひだ状部分が大きな変形をしながらボルト17等に付着した耕土に接触することができるので、広範囲に付着土除去効果が得られる。
【0034】
図3に示すスリット25は、リング本体部22の幅方向両側部の内側に設けられてリング本体幅方向に延びる。リング本体部22の長手方向他方側の端部には先端側に進むに従って漸次リング本体部22の内側方向に傾斜する台形部22aが設けられている。この台形部22aの頂部22a1は、係止突出部27がスリット25に挿入されてリング本体部22に接続された状態でスリット25から容易に抜脱され難くするため、スリット25と略平行に配置されるとともに、リング本体部幅方向に対してスリット25と略同じ位置で且つ略同じ長さ有している。台形部22aの頂部22a1に前述した係止突出部27が延びている。
【0035】
係止突出部27は、リング本体部22の幅と略同一幅を有する平面視矩形状の係止部27aと、係止部27aの他方側端部からリング体20の長手方向一方側へ延びる挿入部27bとを有し、挿入部27bから係止部27aまでがスリット25内に差し込まれる。係止突出部27は、台形部22aの頂部22a1よりもリング本体部幅方向に延びて、スリット25に挿入された側と反対側のリング本体部22の周面に掛止された状態で係止される。このため、係止突出部27は、その幅が大きい方が好ましい。
【0036】
挿入部27bは、その幅方向の端部が台形部22aの頂部22a1の端部よりもリング本体部幅方向に延びて、係止突出部27の基端側の強度を増大している。
【0037】
このように構成された係止突出部27をリング本体部22に係止する場合には、係止突出部27の全体をスリット25に挿入する必要があるが、係止突出部27の幅はスリット25の幅よりも大きいので、スリット25への挿入時には、係止突出部27の幅方向両側を折り曲げた状態にしてから係止突出部27をスリット25に挿入する。そして、折り曲げられた係止突出部27がスリット25を通ると、折り曲げられた係止突出部27の部分を開いた状態にし、係止突出部27の幅方向端部側がスリット25に挿入された側と反対側のリング本体部22の内周面に掛止された状態となり、帯体21の長手方向一端側が他端側に接続されて内側に挿通孔20aを有した図5(斜視図)に示すリング体20が形成される。
【0038】
このリング体20の挿通孔20aは、図1に示す耕耘軸11の断面よりも大きな断面を有して耕耘軸11を挿通可能であり、耕耘軸11が挿通孔20aに挿通された状態で、リング体20は、耕耘軸11の回転に関わりなく隣接する耕耘爪15間の耕耘軸11に懸架した状態で遊転自在に位置する。挿通孔20aの形状は、円形の他、楕円形、円弧や直線を一部に含む長孔でもよい。また図1に示すリング体20の幅Bは、隣接する耕耘爪15間の距離Xよりも短い幅を有している。
【0039】
図5に示すリング体20は、係止突出部27がスリット25に挿入される際に、係止突出部27が延長部23の外側に沿って移動してスリット25外側から内側へ挿入されることにより形成される。係止突出部27がリング本体部22に係止されると、延長部23及び係止突出部27は、リング本体部22の内周面に沿って延びてリング本体部22の一部と重なる重なり部分31となる。リング体20の係止突出部27の係止状態を解除する場合には、係止突出部27の幅方向両側を幅方向内側に折り曲げ、この状態で係止突出部27をスリット25の内側から挿入してスリット外側に引き出す。
【0040】
なお、リング体20'は、図6(斜視図)に示すように、係止突出部27がスリット25に挿入される際に、係止突出部27が延長部23の内側に位置してスリット25内側から外側へ挿入されることにより形成されたものでもよい。このリング体20'は、係止突出部27がリング本体部22に係止された状態で、延長部23及び係止突出部27がリング本体部22の外周面に沿って延びてリング本体部22の一部と重なる重なり部分31となるように形成される。リング体20'の係止突出部27の係止状態を解除する場合には、係止突出部27の幅方向両側を幅方向内側に折り曲げ、この状態の係止突出部27をスリット25の外側から挿入してスリット内側に引き出す。
【0041】
このように構成された図5及び図6に示すリンク体20,20'は、その内周面に多数の凸部を形成した形にしてこの凸部が耕耘軸11に付着した耕土に接触する回数を増加させるための凹凸35を設けて形成されてもよい。この凹凸35は、例えば、エンボス加工によって形成されたものや、静電植毛によってリンク体20,20'の内面に植毛したものでもよい。またリング体20,20'の延長部23は錘の役目になるとともに、図5に示す場合は、延長部23が直接に耕耘軸11に接触することで、耕耘軸11に付着した耕土を除去する効果を発揮し、図6に示す場合は、耕耘軸11の回転による振動でリング体20'の外面からリング体20'を振動させる効果が得られる。
【0042】
次に、本発明の耕耘作業機1によって圃場の耕土を耕耘する場合の耕耘作業機1の動作について説明する。先ず、図2に示す走行機体90に耕耘作業機1を連結するとともに、走行機体90のPTO軸に図示しない動力伝達軸を介して入力軸4aを連結する。整地体50の上下位置調整が必要な場合には、上下調整機構8によって整地体50の上下位置を調整する。そして、走行機体90を前進させるとともに、走行機体90からの動力を耕耘作業機1に伝達させて、耕耘ロータ10をダウンカット方向に回転させる。耕耘作業時において、圃場の耕土は耕耘ロータ10の耕耘爪15によって耕耘され、整地板50によって均平に整地される。
【0043】
耕耘ロータ10の耕耘爪15によって耕耘された耕土の一部は、整地板側に放てきされたり、耕耘ロータ10の回転に伴って耕耘爪15の回転方向に沿って移動して上部カバー7の走行機体側端部と耕耘ロータ10との間の隙間から斜め下方へ放てきされたり、耕耘軸11に付着しようとしたり、耕耘爪15を爪取付フランジ13に取り付けている前述したボルト17やナット18に付着しようとしたりする。
【0044】
ここで、本願の発明に係る耕耘作業機1には、図7(正面図)に示すように、耕耘軸11に前述したリング体20が設けられている。このリング体20は、耕耘軸11が回転していない場合には、重なり部分31の自重により重なり部分31がリング体20の下部に位置する姿勢となる。このため、耕耘軸11の回転に拘わらず、重なり部分31は常にリング体20の下部に位置しようとするため、リング体20の共回りが防止され、リング体20の裏面によって耕耘軸回りに付着した耕土を掻き取ることができる。
【0045】
また耕耘軸11の回転時には、耕耘軸11の回転に伴って耕耘軸11と接触するリング体20の上部内周面が耕耘軸11の回転によって耕耘軸11の回転方向に引っ張られて移動してリング体20が整地板側へ傾動し、このリング体20の傾動時においてリング体20の上部内周面と耕耘軸11との間の摩擦は徐々に小さくなり、リング体20の揺動前の状態に対する揺動時のリング体20の傾動角度がある角度になると、リング体20は耕耘軸11に対してフリーな状態となって揺動前の元の位置側へ傾動する。つまり、リング体20は、耕耘軸11の回転時において整地板50に接近する方向及び離反する方向に揺動する。
【0046】
従って、耕耘軸11が回転するに伴い、耕耘軸11に付着した耕土は耕耘軸11の上部に移動する毎にリング体20の内周面と接触して掻き取られ、またリング体20は揺動しているので、耕耘軸11に付着した耕土が耕耘軸11の上部に移動したときに、リング体20の揺動が耕土の移動方向と逆方向であるときには、耕土はリング体20の揺動する内周面によって積極的に耕耘軸11から掻き取られる。このため、耕耘軸11への土の付着を確実に防止することができる。
【0047】
また耕耘爪15を爪取付フランジ13に取り付けたボルト17,ナット18に付着した耕土は、耕耘爪15が回転してリング体20に接近する毎にリング体20の幅方向端部の凹凸29と接触して掻き取られる。ここで、リング体20は弾性変形可能な材料で形成されている。このため、耕耘軸11の回転に伴ってボルト17,ナット18が回転してリンク体20の凹凸29と接触する毎に、凹凸29は接触する耕土の大きさに応じて弾性変形しながら耕土と接触し、ボルト17、ナット18に接触した耕土を掻き落とした後に原形に復帰する。このため、ボルト17,ナット18に付着した耕土は、弾性変形した凹凸29から力を受けるとともに、ボルト17,ナット18の回転と相まって効果的に掻き落とされる。このため、ボルト17,ナット18への耕土の付着を防止することができ、また耕耘爪15の交換をする際に、ボルト17,ナット18に付着した耕土の除去作業が容易となり、その結果、爪交換をする際の作業時間を短縮するとともに、爪交換作業の労力の軽減を図ることができる。
【0048】
またリング体20は耕耘軸11の軸方向に隣接する耕耘爪15間を移動自在であるので、リング体20が回転する耕耘爪15やボルト17,ナット18等に接触すると、リング体20は耕耘爪15から離反する側に移動することができる。このため、耕耘爪15の回転時においてリング体20が耕耘爪15やボルト17,ナット18等と過度に接触する事態を防止することができ、リング体20の寿命の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる耕耘作業機に設けられた耕耘ロータの部分正面図を示す。
【図2】本発明の一実施の形態に係わる耕耘作業機の側面図を示す。
【図3】本発明の一実施の形態に係わる耕耘作業機に設けられたリング体を形成する帯体の平面図を示す。
【図4】このリンク体の幅方向端部に設けられた凹凸の形状を説明するためのリング体の部分正面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係わる耕耘作業機に設けられたリング体の斜視図を示す。
【図6】本発明の一実施の形態に係わる耕耘作業機に設けられた他のリング体の斜視図を示す。
【図7】本発明の一実施の形態に係わるリング体の動作を説明するための耕耘ロータの部分正面図を示す。
【図8】従来の耕耘作業機の部分側面図を示す。
【符号の説明】
【0050】
1 耕耘作業機
11 耕耘軸
15 耕耘爪
20,20' リング体
20a 挿通孔
29 凹凸
31 重なり部分
90 走行機体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体から動力を受けて耕耘軸を回転させ、該耕耘軸に配設された耕耘爪により圃場を耕耘する耕耘作業機において、
前記耕耘軸の軸方向に隣接して設けられた耕耘爪間の耕耘軸が挿通される挿通孔を有すると共に、前記隣接する耕耘爪間の距離よりも短い幅を有し、前記隣接する耕耘爪間の耕耘軸が前記挿通孔に挿通されて前記耕耘軸に装着されるリング体を備え、
前記リング体は、前記耕耘軸の回転に伴い、該耕耘軸に対して遊転自在で且つ前記隣接する耕耘爪間を移動自在であることを特徴とする耕耘作業機。
【請求項2】
前記リング体は、その幅方向端部の少なくともいずれか一方の端部に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の耕耘作業機。
【請求項3】
前記リング体は、前記耕耘軸に対して着脱自在であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耕耘作業機。
【請求項4】
前記リング体は、弾性変形可能な材料で形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の耕耘作業機。
【請求項5】
前記リング体の内面に、凹凸が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の耕耘作業機。
【請求項6】
前記リング体は、これを形成する帯体の両端部同士が重なり合う重なり部分を有してリング状に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の耕耘作業機。
【請求項7】
前記請求項1から6のいずれかに記載の前記リング体からなることを特徴とする耕耘作業機用の土除去装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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