説明

耕耘爪取り付け構造

【課題】耕耘爪に異常な負荷が加わった場合においても、ネジ締結体に変形、損傷を起こすことなく、より取り扱い容易な耕耘爪取り付け構造を提供すること。
【解決手段】この発明の耕耘爪取り付け構造は、耕耘軸1に固着されるフランジ2に耕耘爪3を取り付けるための耕耘爪取り付け構造であって、フランジ2と耕耘爪3にそれぞれ設けたボルト挿通孔にボルト6を通してナット7を螺着させることにより、フランジ2に耕耘爪3を取り付けるようにしており、さらに、フランジ2は、その耕耘爪取り付け面8上において、ボルト挿通孔4よりも外周縁寄りの位置に耕耘爪3に当接する第1ストッパー9aを有するとともに、ボルト挿通孔4よりも耕耘軸1寄りの位置に耕耘爪3に当接する第2ストッパー9bを有するものとして、耕耘爪3に加わる負荷を吸収するようにしたものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耕耘用作業機の耕耘軸における耕耘爪取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータリ耕耘機の耕耘軸における耕耘爪取り付け構造として、特許文献1に記載のような、耕耘軸の周囲に設けたフランジに、複数の耕耘爪をそれぞれボルトとナットにより締め付け固定するようにしたフランジ方式がある。
【0003】
フランジ方式では、耕耘爪を一枚の平鋼板であるフランジに直接締結するため製造が容易であるが、耕耘爪は、整地作業中にときどき極めて異常な負荷を受けることがあり、これによって耕耘爪の変形、損傷やフランジの変形、ボルトの変形、損傷等、作業中に様々な不具合や構成部材の損傷が発生している。
【0004】
異常な負荷が発生する場合としては、圃場が粘土質で乾燥して固くなっていたとき、圃場中に存在する砂礫や木根等に耕耘爪が衝突したときが考えられる。実際に、開墾圃場や改良圃場においてこのような現象は度々見られる。
【0005】
このような異常負荷は、通常の負荷に比して過大であるばかりでなく、時として衝撃的であり、常識的には考えられない損傷を与えることもある。
【0006】
また、ネジ締結体において最も問題であるゆるみの原因として、この異常負荷が大きく関係していることが最近明らかになってきた。特に、初期のゆるみについては、自動車業界においては対策がとられているが、耕耘爪の取り付け構造に関しては特に対策がとられていなかった。
【0007】
初期ゆるみは、ネジ締結体の接合面間において微動磨耗を生じた場合、接合面間の距離に僅少な変化が生じ、へたり、なじみ等の塑性変形を生じ、締め付け力が急激に低下しゆるむ現象をいうのであるが、現象としては、ナットは全然回転を起こしていないので、目視では発見できない。しかし、実態としては、ネジ締結体としてゆるんでいるから、ナットの回転するゆるみへ進行する。一般には、未だゆるみ止めと称してナットの回転を防止する方法がとられたり、また、ゆるんでいるか否かをIマーク等の目印をつけて目視でゆるみ点検を行っているのが現状であり、初期ゆるみ、すなわち非回転ゆるみの対策がとられていないのは、耕耘爪の取り付けにおいても同じである。
【特許文献1】実開昭63−181203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、耕耘爪に異常な負荷が加わった場合においても、力学上合理的に対応できる構造とし、ネジ締結体に変形、損傷を起こすことなく、より取り扱い容易な耕耘爪取り付け構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、この発明は次のような技術的手段を講じている。
【0010】
この発明の耕耘爪取り付け構造は、耕耘軸1に固着されるフランジ2に耕耘爪3を取り付けるための耕耘爪取り付け構造であって、フランジ2と耕耘爪3にそれぞれ設けたボルト挿通孔4,5にボルト6を通してナット7を螺着させることにより、フランジ2に耕耘爪3を取り付けるようにしており、さらに、フランジ2は、その耕耘爪取り付け面8上において、ボルト挿通孔4よりも外周縁寄りの位置に耕耘爪3に当接する第1ストッパー9aを有するとともに、ボルト挿通孔4よりも耕耘軸1寄りの位置に耕耘爪3に当接する第2ストッパー9bを有するものとして、耕耘爪3に加わる負荷を吸収するようにしたものとしている。
【0011】
さらに、ボルト挿通孔4,5付近においてフランジ2と耕耘爪3との間に空隙13が生じる部分を有するとともに、その外側においてフランジ2と耕耘爪3との接触部14を有するものとし、さらに、フランジ2又は耕耘爪3が弾性変形してボルト6の軸力の低下を補償するものとすることができる(請求項2)。
【0012】
また、フランジ2の耕耘軸貫通孔10の周囲に、耕耘軸1に外嵌する筒状部11を設け、耕耘爪3の基部3aに第2ストッパー9b及び筒状部11が当接するようにしたものとすることができる(請求項3)。
【発明の効果】
【0013】
この発明の耕耘爪取り付け構造は、上述のような構成を有しており、耕耘爪3にかかる負荷を、ボルト挿通孔4より外側及び内側にそれぞれ位置する第1ストッパー9aと第2ストッパー9bで受けることにより、ボルト6に直接外力が加わらないようにしているため、ボルト6や、フランジ2と耕耘爪3との締結箇所の変形、損傷等が防止される。
【0014】
さらに、ボルト挿通孔4,5付近においてフランジ2と耕耘爪3との間に空隙13が生じる部分を有するとともに、その外側においてフランジ2と耕耘爪3との接触部14を有するものとし、さらに、フランジ2又は耕耘爪3が弾性変形してボルト6の軸力の低下を補償するものとすれば(請求項2)、前記接触部14によりフランジ2と耕耘爪3との間にはたらく摩擦力が確保されつつ、前記接触部14がボルト挿通孔4,5から離れた位置にあるため所定の抵抗トルクが得られ、しかも、ボルト6の軸力の低下が補償されることにより、フランジ2と耕耘爪3との接合状態を維持できるようになっている。
【0015】
また、フランジ2の耕耘軸貫通孔10の周囲に、耕耘軸1に外嵌する筒状部11を設け、耕耘爪3の基部3aに第2ストッパー9b及び筒状部11が当接するようにすれば(請求項3)、耕耘爪3は所定位置で安定した取り付け状態が得られる。さらに、筒状部11は、耕耘軸1の軸方向に延びてフランジ2を支えるので、フランジ2は耕耘軸1に対する安定した取り付け状態が得られ、取り付け作業が容易かつ正確に行えるようになり、取り付け費の低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の好適な実施形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
図1はこの発明の実施形態の耕耘爪取り付け構造の正面図(耕耘爪取り付け面8側)、図2はその背面図、図3はその右側面図(耕耘爪3は省略)、図4はフランジ2と耕耘爪3との接合部分の断面図、図5はフランジ2の斜視図である。
【0018】
〔基本構成〕
この耕耘爪取り付け構造は、耕耘軸1に固着されるフランジ2に耕耘爪3を取り付けるための耕耘爪取り付け構造であって、フランジ2と耕耘爪3にそれぞれ設けたボルト挿通孔4,5にボルト6を通してナット7を螺着させることにより、フランジ2に耕耘爪3を取り付けるようにしており、さらに、フランジ2は、その耕耘爪取り付け面8上において、ボルト挿通孔4よりも外周縁寄りの位置に耕耘爪3に当接する第1ストッパー9aを有するとともに、ボルト挿通孔4よりも耕耘軸1寄りの位置に耕耘爪3に当接する第2ストッパー9bを有するものとして、耕耘爪3に加わる負荷を吸収するようにしたものとしている。
【0019】
図1,2では、フランジ2に耕耘爪3を1つのみ取り付けた状態を示しているが、実際には、複数の耕耘爪3が取り付けられる。また、耕耘爪取り付け面8は、フランジ2の片面だけでなく、両面に設けることもできる。
【0020】
各耕耘爪3は、それぞれボルト6とナット7によりフランジ2に締め付け固定され、先端側がフランジ2の外側に突出して、放射状となる。また、耕耘軸1には、その軸方向に適宜間隔をおいて複数のフランジ2を設けたものとすることができる。
【0021】
フランジ2は、耕耘軸1の周囲に設けた円板状のものであり、耕耘軸1と外周縁との中間位置に複数のボルト挿通孔4と、各ボルト挿通孔4に付随して、耕耘爪取り付け面8上に後述のストッパー9a、9bを設けている。各ボルト挿通孔4は、耕耘軸1を中心として周方向に等間隔で設けられている。
【0022】
フランジ2は、適材に熱処理を施して高強度の弾性体に仕上げられたものとすることができる。フランジ2の形状は、円板状に限らず、多角形でもよく、ボルト挿通孔4及びそれを利用して取り付けられる耕耘爪3の数も適宜とすることができる。
【0023】
また、フランジ2には、その中央に位置する耕耘軸貫通孔10の周囲に、耕耘軸1に外嵌する筒状部11を設けている。筒状部11は、フランジ2の耕耘爪取り付け面8及びその裏面と垂直、すなわち耕耘軸1の軸方向に延びるように形成され、その断面を模式的に示した説明図である図6に示したように、フランジ2とで略T字状の断面形状を構成するようになっている。筒状部11は、塑性加工によりフランジ2本体と一体に形成されたものとするとよい。また、図7のように、フランジ2を複数枚の板2a,2bを接合させてなるものとし、両側の各板2a,2bの各耕耘軸貫通孔10の周囲を互いの外方に直角に曲げて形成した部分を筒状部11とすることもできる。
【0024】
なお、筒状部11は、フランジ2の一方の面側にのみ延びるように形成してもよい。例えば、前記図7に示した構成においては、板2a,2bのいずれか一方をストレートな板状とすることにより、このような構成とすることができる。耕耘軸1の端部付近に取り付けるフランジ2については、筒状部11が耕耘軸1の軸受けの邪魔とならないように、前記端部と反対側にのみ筒状部11が延びるようにするとよい。
【0025】
耕耘爪3は、従来公知のものと同様に製造されたものとすることができる。具体的には、耕耘爪3は、適材に熱処理を施して高強度の弾性体に仕上げられており、基部3aと刃部3bとから構成され、基部3aの中央部にはボルト挿通孔5が設けられたものとすることができる。
【0026】
また、この実施形態における耕耘爪3は、刃部3bが図1中左側にカーブしているのに対し、基部3aは刃部3bと反対側に緩やかにカーブした略S字状ないし直線状とすることができる。さらに、基部3aは、前記フランジ2の筒状部11の当接する箇所が、筒状部11の外周面に沿うようにカーブした形状とすることができる。
【0027】
この実施形態の耕耘爪取り付け構造においては、フランジ2には、第1ストッパー9a及び第2ストッパー9bを設けている。各ストッパー9a、9bは、フランジ2の耕耘爪取り付け面8上に形成された凸部であり、耕耘爪3に当接するようにしている。
【0028】
フランジ2が回転し、耕耘爪3に土や砂礫等への衝突による負荷がかかると、第1ストッパー9aが耕耘爪3の左側縁の一部に当接して受圧し、第2ストッパー9bが耕耘爪3の右側縁の一部に当接して受圧することとなる。
【0029】
第1ストッパー9aは、フランジ2の耕耘爪取り付け面8の外周縁部に設けられた、外周縁に沿う一定幅の凸部であり、その裏側は凹部となっている。第1ストッパー9aは、その端部12で耕耘爪3の基部3aの刃部3b寄りの位置の、図1中の左側縁に当接するようにしている。
【0030】
第2ストッパー9bは、フランジ2の耕耘爪取り付け面8の耕耘軸1に近い箇所に設けられた略長方形の凸部となっている。第2ストッパー9bは、直近のボルト挿通孔4を利用して取り付けられる耕耘爪3の基部3aの端部付近の、図1中の右側縁、すなわち、第1ストッパー9aが当接する側と反対側の耕耘爪3の側縁に当接するように設けられている。
【0031】
さらに、この実施形態の耕耘爪取り付け構造においては、耕耘爪3の基部3aにおいて前記フランジ2の筒状部11が当接する箇所は、端部付近の、図1中の左側縁、すなわち、第1ストッパー9aが当接する側と同じ側の耕耘爪3の側縁としている。
【0032】
第1ストッパー9aと第2ストッパー9bとの間隔は、なるべく長い距離をとることが望ましい。また、各ストッパー9a、9bは、耕耘爪3の形状や、作業時における耕耘爪3の変位に対応できるように、耕耘爪3に適する形状とする。 ストッパー9a、9bは、取り付ける耕耘爪3の本数、種類、設置位置等に応じて、フランジ2板の両面に任意の位置に必要数量設置することができる。
【0033】
この耕耘爪取り付け構造では、耕耘爪3にかかる主な負荷をフランジ2に設けたストッパー9a、9bで受圧し、質量の大きいフランジ2本体が、異常負荷のみならず負荷の大半を吸収する。また、衝撃力や過大な負荷よってストッパー9a、9bの受圧面及び耕耘爪3の一部に塑性変形を起こすことがあるが、これは衝突エネルギーを吸収する作用を果たしたものであり、局部的であって実用上支障はない。
【0034】
この耕耘爪取り付け構造の主な特徴は、作業時に耕耘爪3が受ける負荷に対して従来のボルト・ナットによるフランジ・耕耘爪間の摩擦力とボルトの強度にのみ依存する方式ではなく、衝撃負荷を想定した異常な負荷に対応できるよう、ストッパー9a、9bで負荷の大半を直接圧縮応力で受圧し、質量の大きなフランジ2本体に圧縮エネルギーを拡散し、さらに、フランジ2と耕耘爪3接合面の抵抗トルクを最大限活用するようにしたところである。
【0035】
このストッパー9a、9bによる負荷対策によって、ボルト6は1本で十分足りるだけでなく、当該ボルト6は、その本来の抗張力によるネジ締結の目的にのみ専用できる極めて重要な意義をもつ。
【0036】
しかも、フランジ2の筒状部11が、耕耘軸1と耕耘爪3との直接接触を防ぐプロテクターともなり、耕耘軸1の損傷が防止される。さらに、筒状部11は、耕耘軸1の軸方向に延びて、その内周面が耕耘軸1の外周面に接触した状態でフランジ2を支えるので、フランジ2は耕耘軸1に対する安定した取り付け状態が得られる。よって、耕耘軸1へのフランジ2の取り付け作業が容易かつ正確に行えるようになり、取り付け費の低減が可能となる。
【0037】
〔空隙について〕
また、この実施形態の耕耘爪取り付け構造においては、図3に示したように、フランジ2の内面(耕耘爪3と接触する側)に、ボルト挿通孔4を中心に湾曲した凹部を形成しており、通常の状態ではこの凹部を形成した部分によってフランジ2との間に空隙13が存在している。また、前記凹部の外側は、耕耘爪3と接触する接触部14となっている。なお、空隙13は、耕耘爪3の側に凹部を設けることにより形成することもできる。あるいは、フランジ2と耕耘爪3の双方に凹部を設けることにより形成することもできる。
【0038】
この耕耘爪取り付け構造は、前記空隙13を設けたことにより、以下に説明するように、(1)フランジ2と耕耘爪3との間にはたらく摩擦力の確保ができ、所定の抵抗トルクも得られ、(2)フランジ2又は耕耘爪3の弾性変形によってボルト6弾性変形量の不足を補完することができる。
【0039】
(1)摩擦力、抵抗トルクの確保
空隙13がボルト挿通孔4,5の付近に存在し、その外側においてフランジ2と耕耘爪3とが接触していることにより発生する摩擦力を、以下に説明するように、負荷トルクに対抗する抵抗トルクとして可能な限り最大にすることができる。
【0040】
耕耘爪3の先端部に外力がかかると、その力点と回転中心(ボルト挿通孔5)までの距離との積が負荷のトルクになるが、これに対抗するのは、第1に前記ストッパー9a、9bであり、第2に、両者間に発生する摩擦トルクである。摩擦トルクは、両者の多数箇所の接触面の摩擦力と回転中心までの距離の積の総和である。
【0041】
ここで注意すべきことは発生する摩擦力が同じ場合には、回転中心までの距離(以下、アームと言う)によってトルクの値が大きく変わることである。回転中心付近で発生した摩擦力はトルク値としてはゼロに近くなるが、アームが最長になる位置ではトルクの値が最も大きく、この位置に摩擦面が集中する場合は効率としては最もよい条件になる。そのため、この耕耘爪取り付け構造においては、フランジ2と耕耘爪3との接合箇所におけるボルト挿通孔4,5付近の中間部分を空隙13とし、その外側のストッパー9a、9bの近くの領域を接触部14として、ボルト挿通孔4,5から離れた位置に摩擦部位を集約するようにしているのである。
【0042】
そして、このことによって、フランジ2又は耕耘爪3における両者の摩擦部位の領域が特定できるので、摩擦係数を大きくする表面加工が可能になる。なお、従来のフランジ方式では、ボルト6の締結力に頼るのみで、フランジ2と耕耘爪3との間に発生する摩擦力を無視しており、フランジ2と耕耘爪3との接触部位は偶発的であるため、ボルト6の締めを強くしても摩擦トルクを確実に得ることができない。
【0043】
(2)ボルトの弾性変形量の不足の補完
耕耘用作業機の使用時においては、耕耘爪3に作用する外力等により、耕耘爪3の基部3aが傾いたり位置がずれたりし、ボルト6の軸力を低下させるような作用が働く。また、ボルト6の軸力が低下する原因としては、耕耘爪3に直接的に働く外力の他に、二次的に発生する反動的な力等が関与していることが考えられる。
【0044】
外力としては、耕耘爪3にかかる耕耘抵抗が主なものである。耕耘抵抗とは、土壌への打ち込み、土壌の反転や粉砕、放てき時に受ける抵抗力のことである。そして、この力に強い影響を与えるのは、作業機の進行速度、牽引力、耕耘軸1の重量、回転速度、耕耘爪3の形状や取付本数等の作業機全体の条件や、その他、耕耘する圃場の条件、すなわち土壌の土質、土性、含水率等である。
【0045】
二次的に発生する反動的な力としては、耕耘軸1に取り付けられた耕耘爪3が、他の耕耘爪3に与えるものが考えられる。耕耘爪3は、1つのフランジ2に多数本取り付けられており、各耕耘爪3は負荷の変動を受けながらも、一見、等速回転しているように見える。しかし、作業中において、いずれかの耕耘爪3が土壌中に埋没している障害物(石礫、木根等)に衝突した場合には、急激な負の加速が他の耕耘爪3に働くことになる。
【0046】
このように、耕耘爪3は、他の耕耘爪3の影響によって、二次的に慣性や反動を絶えず繰り返し受けていることになり、これによってフランジ2と耕耘爪3との間に微小なずれが起こり、両者間の距離が減少し、ボルト6の軸力が低下する可能性がある。
【0047】
その他、同じような現象で、ボルト6の軸力を低下させる原因として考えられるのは、耕耘軸1に発生する前後、上下、左右の振動、さらにこれに加えて回転ムラによる回転振動である。また、回転する耕耘軸1を中心とする耕耘爪3の遠心力が考えられるが、その影響力は弱い。
【0048】
ボルト6の軸力は、ボルト6の長手方向の弾性変形量によって定まる。したがって、ボルト6の長さが短いと、初期ゆるみが発生した場合、これを復元し、なお締め付け力を保つ余剰のエネルギー(弾性変形量)が不足するので、残存する締め付け力は低下し、本格的なゆるみに進展する。ボルト6の長さは構造上制限があり、一定以上に長くすることはできないが、この実施形態においては、フランジ2又は耕耘爪3(いずれか一方のみ、あるいは双方でもよい)が弾性変形することにより、ボルト6の軸力の低下が補償され、フランジ2と耕耘爪3との摩擦力を維持できるようになっている。
【0049】
つまり、ボルト6の弾性変形量と耕耘爪3、フランジ2の弾性変形量とを合わせた締結体の総弾性変形量を大きくし、外力によって耕耘爪3が変位する量を利用する構造にして、フランジ2と耕耘爪3との摩擦力の減少を補うようになっている。
【0050】
上述のように、この耕耘爪取り付け構造は、耕耘爪3にかかる負荷を、フランジ2のボルト挿通孔4より外側及び内側にそれぞれ位置するストッパー9a、9bで受けることにより、ボルト6・ナット7に直接外力が加わらないようにしているため、フランジ2と耕耘爪3との締結箇所の変形、損傷等が防止され、寿命を長くすることができる。
【0051】
しかも、構造が簡単であり、フランジ2と耕耘爪3との締結に使用するボルト6・ナット7は1組のみでよいので、複数組のボルト・ナットを使用する場合に比べて取り付け作業にかける労力を少なくすることができる。
【0052】
そして、フランジ2の耕耘爪取り付け面8において、ボルト6・ナット7の締結のために占有する面積は極めて小さくて済むので、より多くの耕耘爪3を取り付けることが可能となる。また、フランジ2の耕耘爪取り付け面8に重なる耕耘爪3の基部3aの幅を広くすることもできる。
【0053】
さらに、フランジ2と耕耘爪3との締結は、ボルト6の軸力によるフランジ2と耕耘爪3との間にはたらく摩擦力、抵抗トルクを最高に利用し、フランジ2、耕耘爪3の弾性変形によってボルト6の弾性変形量の不足を補完するようになっているため、異常負荷によってボルト6による締結に初期ゆるみ(非回転ゆるみ)が発生しても、フランジと耕耘爪3フランジ2と耕耘爪3との接合状態が強固に維持されることになる。
【0054】
以上がこの発明の一実施形態であるが、この発明は、前述の実施形態の構成に限定されるものではなく、素材、形状、寸法等を適宜変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の実施形態の耕耘爪取り付け構造の正面図である。
【図2】この発明の実施形態の耕耘爪取り付け構造の背面図である。
【図3】この発明の実施形態の耕耘爪取り付け構造の右側面図(耕耘爪は省略)である。
【図4】この発明の他の実施形態の耕耘爪取り付け構造におけるフランジと耕耘爪との接合部分の断面図である。
【図5】この発明の実施形態の耕耘爪取り付け構造におけるフランジの斜視図である。
【図6】この発明の実施形態の耕耘爪取り付け構造の説明図である。
【図7】この発明の他の実施形態の耕耘爪取り付け構造の説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 耕耘軸
2 フランジ
3 耕耘爪
4 フランジのボルト挿通孔
5 耕耘爪のボルト挿通孔
6 ボルト
7 ナット
8 耕耘爪取り付け面
9a 第1ストッパー
9b 第2ストッパー
10 耕耘軸貫通孔
11 フランジの筒状部
13 空隙
14 接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘軸(1)に固着されるフランジ(2)に耕耘爪(3)を取り付けるための耕耘爪取り付け構造であって、フランジ(2)と耕耘爪(3)にそれぞれ設けたボルト挿通孔(4)(5)にボルト(6)を通してナット(7)を螺着させることにより、フランジ(2)に耕耘爪(3)を取り付けるようにしており、
さらに、フランジ(2)は、その耕耘爪取り付け面(8)上において、ボルト挿通孔(4)よりも外周縁寄りの位置に耕耘爪(3)に当接する第1ストッパー(9a)を有するとともに、ボルト挿通孔(4)よりも耕耘軸(1)寄りの位置に耕耘爪(3)に当接する第2ストッパー(9b)を有するものとして、耕耘爪(3)に加わる負荷を吸収するようにしていることを特徴とする耕耘爪取り付け構造。
【請求項2】
ボルト挿通孔(4)(5)付近においてフランジ(2)と耕耘爪(3)との間に空隙(13)が生じる部分を有するとともに、その外側においてフランジ(2)と耕耘爪(3)との接触部(14)を有するものとし、さらに、フランジ(2)又は耕耘爪(3)が弾性変形してボルト(6)の軸力の低下を補償するものとしている請求項1記載の耕耘爪取り付け構造。
【請求項3】
フランジ(2)の耕耘軸貫通孔(10)の周囲に、耕耘軸(1)に外嵌する筒状部(11)を設け、耕耘爪(3)の基部(3a)に第2ストッパー(9b)及び筒状部(11)が当接するようにしている請求項1又は2記載の耕耘爪取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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