耕耘爪
【課題】固い土壌の耕耘を可能にし、移動輪の取り付け無しで、路面を円滑に移動する。
【解決手段】爪部22A,22Bを平面基板20の外周各辺に配置する。爪部22A,22Bを、平面基板20に対して鈍角となるような折り曲げ角度で、折り曲げ方向を第1面20a側、及びこの第1面20aとは反対側の第2面20b側に交互に折り曲げる。爪部22A,22Bの回転方向先端を鋭角に形成する。回転軸心CL1を中心とする仮想円筒面27に、前記爪部22の円弧部外周縁29が接するように、前記爪部22の展開状態において該円弧部外周縁29が前記仮想円筒面27に対応する楕円弧31aとなるように形成する。耕耘機の片側回転軸に対し、2枚1組で回転方向に45°ずらして耕耘爪10を取り付ける。前記回転軸心CL1から見たときに、前記各爪部22の円弧部外周縁29によって円を形成する。
【解決手段】爪部22A,22Bを平面基板20の外周各辺に配置する。爪部22A,22Bを、平面基板20に対して鈍角となるような折り曲げ角度で、折り曲げ方向を第1面20a側、及びこの第1面20aとは反対側の第2面20b側に交互に折り曲げる。爪部22A,22Bの回転方向先端を鋭角に形成する。回転軸心CL1を中心とする仮想円筒面27に、前記爪部22の円弧部外周縁29が接するように、前記爪部22の展開状態において該円弧部外周縁29が前記仮想円筒面27に対応する楕円弧31aとなるように形成する。耕耘機の片側回転軸に対し、2枚1組で回転方向に45°ずらして耕耘爪10を取り付ける。前記回転軸心CL1から見たときに、前記各爪部22の円弧部外周縁29によって円を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌の耕耘に使用される耕耘爪に関する。
【背景技術】
【0002】
耕耘機は原動機から回転軸へ回転を伝達し、前記回転軸に取り付けられるロータリーの一つである例えば耕耘爪を回転させることで、土壌を耕耘する。一般に使用されている耕耘爪は、例えば特許文献1に記載されているように、その形状からナタ爪と普通爪の二種に大別されるが、多くはナタ爪が使用されている。
【0003】
図18に示すように、前記ナタ爪100は、回転軸101の回転方向R1に関して前方に位置する縦刀部102と、その先端部を側方に向けて屈曲させた横刀部103とからなり、縦刀部102によって土壌を進行方向と平行な方向に切断し、次に横刀部103によって進行方向と直交する方向に土壌を切断した後、これを後方に反転させるように作用する。
【0004】
前記ナタ爪100は、比較的柔軟な土壌に対しては効果的な耕耘作用を与える。しかし、線速度の小さい中央部100aから土壌に切り込み、しかも、この中央部100aから回転後方に向かって曲率半径が大きい湾曲した形状となっているため、土壌に与える衝撃力が小さく、比較的固い土壌の耕耘には適さない。さらに、ナタ爪100は、曲率半径が大きい湾曲した中央部100aに続いて先端の横刀部103が側方に曲がっているため、土壌中に石や木枝、その他の固形物、固い土壌があると、それ以上の切り込みが阻害され、耕耘機本体が上下に振動する。また、上下の振動のみならず、左右に振られる欠点があり、直進性が阻害される。このため、ロータリー取付軸の両端に円板状の側板を取り付けて、左右に振られることがないように直進安定性を確保している。さらに、ナタ爪100は帯板を折り曲げて形成されており、強度を保つために肉厚のものが使用されている。したがって、この肉厚部によって切り込み時の抵抗が大きいという問題もある。
【0005】
図19に示すように、普通爪105は回転軸101と直交する平面に対して起立する部分を有していない(左右に屈曲した横刃部を有していない)ために、土壌に反転作用を与えることができない。しかも、切断の過程において土壌は側方に移動されないので、先端部105aよりも遅れて土壌に切り込む中央部105bには、土壌の表面に存在する草などが巻きつき、切断性能の低下をもたらすという欠点を有する。しかし、普通爪105は、先端部105aが回転方向に関して最前端に位置するように湾曲しているので、固い土壌に対しても比較的小さい抵抗で切り込むことができる。
【0006】
これに対して、特許文献1には、図20に示すように、ナタ爪と普通爪を合体させた耕耘爪110が示されているが、爪の全長が長いため、耕耘時の負荷が過大になるという問題がある。しかも、先端110aが突起状になっているため、特に異物と衝突した場合には、爪の折損や変形が生じる。さらに、爪中央腕部110bが回転方向後方に懐状に湾曲しているため、草木や紐状物が引っ掛かり、作業を阻害する。
【0007】
特許文献2には、回転軸を中心とする点対称位置に2個のナタ爪を配置するとともに一体化し、爪先端部をナタ爪本体部に対し折り曲げた耕耘爪が示されている。この耕耘爪では、折り曲げた爪先端部を、回転軸を中心とする仮想円筒面に位置させている。この耕耘爪は1組のナタ爪から構成されるものの、それぞれは従来のナタ爪そのままの形状であり、ナタ爪の有する問題点は解決されていない。但し、回転軸周りの中心部が幅広に形成されているため、幅広となった分だけ、この部分の肉厚を薄くできる可能性はある。
【0008】
図21に示すように、特許文献3には、上記ナタ爪や普通爪の問題点である曲げ強度が小さいことに起因する耕耘時の土壌中の石などに衝突し屈曲しやすいという欠点を改良すべく、回転軸120への取付部121が形成された板状基体122の周縁から、複数の湾曲形状のへら123を両側方向に交互に突出させた耕耘刀124が示されている。
【0009】
しかし、この湾曲形状のへら123を板状基体122の周縁から突出させたものでは、曲げ強度を大きくするための工夫はなされているものの、回転方向の前側または後側に端縁が形成されているため、草木や紐状物がこの端縁に引っ掛かってしまうという問題がある。また、草木や紐状物がこの端縁で巻き込まれてしまうことがあり、この場合には耕耘機自体が転倒してしまうこともある。また、へら123は、全体に捩じられつつ湾曲しており、さらにへら123の凹面が回転軸方向に向いているため、この部分に載荷された土は遠心力と滞留により、持ち回りや抱き込みを生じ、放てき性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭48−6241号公報
【特許文献2】特公昭29−3203号公報
【特許文献3】特開昭57−99104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のように、従来のナタ爪では比較的固い土壌の耕耘に不適であり、しかも土中に石や木材などの固形物があるとそれ以上の入り込みが阻害されて上下に振動する他に、ナタ爪の変形や折損を招くという問題がある。また、普通爪では土壌に反転作用を与えることができない。また、単にへら状のものを折り曲げて形成するものでは、効率良く耕耘することができない他に、草木や紐状物が巻き込まれてしまい、耕耘機自体の転倒を招くという問題がある。しかも、これら各種のものは、耕耘途中での路面移動を行う際には移動輪を取り付ける必要があり、作業性が悪いなどの問題がある。
【0012】
そこで、本発明は従来の耕耘爪に対し、
(1)シャープな切れ味で、耕運機の原動機の所要出力を軽減させること、
(2)耕耘に有効な爪部の面積を大きくし、耕起、反転土量を増すこと、
(3)土が後方、側方に安定して良く飛ぶこと、
(4)固い土壌の耕耘も可能とすること、
(5)優れた放てき性により、付着による土の持ち回りや抱き込みをなくすこと、
(6)土の流れが円滑であり草木や紐状物が引っかかることがないようにすること、
(7)回転軸への取り付けが簡単で楽であること、
(8)軟弱な土壌でも耕運機自体の沈降を少なくすること、
(9)爪の磨耗による機能や能力の低下を少なくすること、
(10)移動輪(走行輪)の取り付け無しでそのまま円滑に路面を移動(走行)可能にすること、
(11)回転軸両端に側板を取り付けなくても、耕耘機の横振れがなく安定して直進すること
が可能な耕耘爪を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、耕耘機の回転軸に、複数枚1組で回転方向に角度をずらして取り付けられる耕耘爪であって、中心に前記回転軸への取付部が形成された多角形の平面基板と、前記平面基板の外周各辺に、前記平面基板に対する取り付け角度A2を鈍角として、第1面及びこの第1面とは反対側の第2面のいずれかに向けて取り付けられ、回転方向先端が鋭角に形成されている平面の爪部とを備え、前記回転軸の軸心を中心とする仮想円筒面に、前記爪部の円弧部外周縁が接するように、前記爪部の展開状態において該円弧部外周縁が前記仮想円筒面に対応する楕円弧で形成されており、前記回転軸の軸心から見たときに、前記各爪部の円弧部外周縁によって円が形成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記平面基板の第1角部を起点とし、前記回転軸を中心として前記起点から回転方向後方に向かって次の第2角部までの第1辺に、前記起点から該第1辺のほぼ中央部までの位置に、前記平面基板の第1面に対して前記取り付け角度A2で形成される第1爪部と、前記第2角部を起点とし、前記回転軸を中心として前記起点から回転方向後方に向かって次の第3角部までの第2辺に、前記起点から該第2辺のほぼ中央部までの位置に、前記第1面とは反対側の面である第2面に対して前記取り付け角度A2で形成される第2爪部と、以下、残りの各辺に対して、交互に形成され前記第1爪部と同じ形状の奇数順位爪部、及び前記第2爪部と同じ形状の偶数順位爪部とから、前記爪部が構成されていることを特徴とする。
【0015】
また前記爪部は、前記起点から前記円弧部外周縁が始まることを特徴とする。なお、前記各辺の長さをL1とし、前記平面基板及び前記爪部の境界線における前記爪部の長さをL2としたときに、L2は、0.5×L1≦L2≦0.7×L1であることが好ましい。
【0016】
前記平面基板は正多角形であることが好ましい。また、前記平面基板の各辺を中央に向けて三角形状に切り欠いた星形状であり、前記爪部は、星形状の平面基板であって外側に位置する起点から回転方向後方の各辺に形成してもよい。
【0017】
なお、前記取り付け角度A2が110°≦A2≦140°の範囲内であることが好ましい。また、前記爪部の回転方向先端及び前記回転軸の軸心を結ぶ放射線と、前記平面基板及び前記爪部の境界線とがなす交差角度をリード角度A3とし、該リード角度A3が30°≦A3≦60°の範囲内であることが好ましい。また、前記回転軸の軸心を中心として点対称位置に形成した1対の爪部を有する平面基板部品を複数枚形成し、これら複数枚の平面基板部品を重ね、且つ回転軸の軸心を中心として回転方向にずらして取り付けて、前記平面基板と前記爪部とを構成してもよい。前記平面基板は正方形を除く四辺形であり、前記四辺形の平面基板の各辺に前記爪部を形成してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来のナタ爪では不適であった比較的固い土壌を耕耘することができ、上下の振動や爪の変形・折損の発生を抑え、草木や紐状物の巻き込みを無くすことができる。また、切り込み特性を向上させ、シャープな切れ味で耕耘機の原動機の所要出力を低減させることができる。しかも、軟弱な土壌においては爪部によって機体の沈降を少なくすることができる。そして、移動輪の取り付け無しで、そのまま円滑に路面を移動することができる。また、耕耘に有効な爪部の面積を大きくすることが簡単に可能であり、耕起・反転土量を増し、耕耘効率を上げることができる。さらに、回転軸への取り付けが簡単で作業が楽であり、横振れが少ないので側板の取り付けが不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の耕耘爪を回転軸の片側に2枚1組で取り付け方向を45°ずらして取り付けた状態を示す正面図である。
【図2】同右側面図である。
【図3】本発明の耕耘爪の取り付け状態を示す分解斜視図である。
【図4】爪部の円弧部外周縁が楕円弧で形成され、仮想円筒面に接していることを示す説明図であり、(A)は耕耘爪の背面を、(B)は耕耘爪の左側面と仮想円筒面を、(C)は爪部の円弧部外周縁を構成する楕円を、(D)は耕耘爪を展開した状態をそれぞれ示している。
【図5】爪部の構成を説明する正面図である。
【図6】耕耘中に作用する力を説明する耕耘爪の正面図である。
【図7】耕耘中に作用する力を説明する耕耘爪の正面図である。
【図8】培土器を取り付けたうね立て作業や溝切り作業を行う場合の耕転爪の使用を説明するもので、耕耘作業とは左右逆にして回転軸に耕耘爪を取り付けたときの耕耘爪に作用する力を説明する耕耘爪の正面図である。
【図9】爪部の後半部分に延長部を設けた他の実施形態を示す耕耘爪の正面図である。
【図10】正方形の平面基板の各辺に全長にわたって爪を形成した他の実施形態の耕耘爪を示す正面図である。
【図11】正五角形の平面基板を用いた他の実施形態の耕耘爪を示す正面図である。
【図12】正六角形の平面基板を用いた他の実施形態の耕耘爪を示す正面図である。
【図13】長方形の平面基板を用いた他の実施形態の耕耘爪を示すもので、(A)は回転軸の軸心方向から見た正面図、(B)は同平面図、(C)は同左側面図である。
【図14】不等辺四角形の平面基板を用いた他の実施形態の耕耘爪を示す正面図である。
【図15】六角形の平面基板に1対の爪を構成した平面基板部品を示す正面図であり、(A)は爪部を外側に折り曲げたものであり、(B)は爪部を内側に折り曲げたものである。
【図16】同じく1組の平面基板部品の取り付け状態を分解して示す斜視図であり、爪部76aは内側に折り曲げられ、爪部77aを外側に折り曲げられている。
【図17】星型の平面基板を用いた他の実施形態の耕耘爪を示す正面図である。
【図18】従来のナタ爪を示す正面図である。
【図19】従来の普通爪を示す正面図である。
【図20】従来の改良型のナタ爪を示す正面図である。
【図21】板状基体に爪を折り曲げ形成した従来の耕耘爪を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜図3に示すように、本発明の耕耘爪10は、ロータリー耕耘機12の回転軸14に取り付けて使用される。回転軸14は動力伝達部16の両側板16aから垂直に突出し、動力伝達部16に水平方向で取り付けられている。本実施形態では、耕耘爪10は片側の回転軸14に対し、回転方向R1へのずらし角度A1を45度として2枚1組で取り付けられている。
【0021】
図2及び図3に示すように、耕耘爪10は、正方形状の平面基板20と、この平面基板20の4辺から延設した平面の爪部22とから構成されている。平面基板20の中心には取付部24が形成されている。取付部24は、取付孔26及び取付ネジ孔28から構成されている。取付孔26には前記動力伝達部16の回転軸14が入る。また、取付ネジ孔28は、回転軸14の取付フランジ14aの取付ネジ孔14bに対応した位置で、同心円上に形成されている。この取付ネジ孔14b,28に取付ネジ30を入れてナット32で締結することにより、回転軸14に耕耘爪10を取り付けることができる。なお、取付ネジ孔28の位置は取付ネジ孔14bの位置に対応していればよく、特に同心円上に限定されない。また、取付ネジ孔28を放射線方向(半径方向)に伸びた長孔とすることで、耕耘機12の取付フランジ14aの取付ネジ孔14bが配置される同心円の直径が機種に応じて異なっている場合でも、この長孔によって対応させることができる。
【0022】
図4(A)に示すように、前記爪部22A,22Bは、平面基板20の外周に一定ピッチで配置されている。図4(B)に示すように、この爪部22A,22Bは、前記平面基板20に対して鈍角となるように取り付け角度A2で、取り付け方向を第1面(内側面)20a及びこの第1面20aとは反対側の第2面(外側面)20bに交互に延設される。第1面20aに取り付け角度A2で延設される爪部を説明上、第1爪部22Aといい、第2面20bに取り付け角度A2で延設される爪部を第2爪部22Bというが、符号22の添字A,Bは、単に取り付け位置を明確にするために付したものであり、特に取り付け位置の説明に関係ない場合には、添字を省略し、爪部22と総称する。
【0023】
本実施形態では、図4(D)に示すような展開図の形状に鋼板を切り取って各爪部22A,22Bを例えばプレス成型により折り曲げて形成している。なお、プレス成型により爪部22A,22Bを平面基板20に一体的に形成する代わりに、溶接やネジ止めなどの他の固定手段で爪部22A,22Bを平面基板20に取り付けてもよい。しかし、加工工数や部品点数が増加したり、ネジなどの突起部分で耕耘時の土の流れを阻害したりすることがないように、爪部22A,22Bは折り曲げ形成することが好ましい。
【0024】
第1爪部22Aは、前記平面基板20の第1角部20cを起点Qとし、前記回転軸を中心として前記起点Qから回転方向R1後方に向かって次の第2角部20dまでの第1辺21aに、前記起点Qである第1角部20cから該第1辺21aのほぼ中央部までの位置に、前記平面基板20の第1面20aに対して取り付け角度A2(図4(B)参照)で延設されている。第2爪部22Bも、前記第2角部20dを起点とし、前記回転軸14を中心として前記起点である第2角部20dから回転方向R1後方に向かって次の第3角部20eまでの第2辺21bに、前記起点から該第2辺21bのほぼ中央部までの位置に、前記第1面20aとは反対側の面である第2面20bに対して前記取り付け角度A2で延設されている。以下、残りの各辺21c,21dに対して、交互に形成され前記第1爪部22Aと同じ形状の奇数順位爪部、及び前記第2爪部22Bと同じ形状の偶数順位爪部がそれぞれ形成される。本実施形態では、正方形の平面基板20を例にとって説明しているので、第1爪部が2枚、第2爪部が2枚となる。
【0025】
図5に示すように、前記平面基板20及び前記爪部22の境界線(折り曲げ線)23と、該境界線23に含まれる前記起点(例えば第1角部20c)Q及び前記回転軸心を結ぶ放射線25とがなす交差角度をリード角度A3という。このリード角度A3は、正方形の平面基板20では45°である。
【0026】
図4(B)に示すように、前記回転軸(図1参照)の軸心(回転軸心)CL1を中心とする仮想円筒面27に、前記爪部22の円弧部外周縁29がその全長にわたって接するように、爪部22の円弧部外周縁29を図4(D)の展開図の状態では楕円弧31aで形成している。なお、図4(A)は耕耘爪10の背面図であり、(B)は同左側面図であり、(C)は爪部の円弧部外周縁29を構成する楕円であり、(D)は耕耘爪の展開図である。
【0027】
W:爪部の耕耘幅
A2:取り付け角度(折り曲げ角度)
A3:リード角度
T:爪部の展開幅{T=W/cos (A2−90°)}
t:爪部の厚さ
D:爪部の円弧部外周縁29が接する仮想円筒面27の直径であり、この仮想円筒面27は回転軸心CL1を中心とする円筒の外周面である。
S:直径がDの仮想円筒面27における爪部22の円弧部外周縁29を共有する楕円31の長径で、以下の数式から求められる。なお、短径はDである。
S=D/sin (A2−90°)
【0028】
次に、図6及び図7を参照して、耕耘爪10の作用について説明する。図7は爪部22の境界線23上の点Pが回転軸心CL1の鉛直下方に位置したときの耕起力F1と突き刺し力F2とを示す説明図である。回転軸心CL1から地面GLに下ろした鉛直線L01と、爪部22の境界線23の交点をPとすると、回転軸14の回転により点Pには、鉛直線L01に垂直な力F0が生じる。この力F0は、境界線23に対し直角上方への分力F1と、境界線23に沿って爪先端方向への分力F2として、作用する。
【0029】
前記F1は土を上方へ耕起する力となり、F2は爪部22が形成されていない平面基板20の辺部21と爪部22とを土中に突き刺す力となる。力F0は、同一速度での回転では不変であるが、P点が境界線23上で爪部22の後端36に移動するにつれて、耕起力F1が次第に小さくなり、突き刺し力F2が次第に大きくなるように、その比率が変化する。そして、図7に示すように、境界線23が地面GLと平行になったときに、耕起力F1が「0」となり、突き刺し力F2が力F0(最大)となる。この耕起力F1が「0」になるということは、耕耘機の沈降は自重のみによるものとなり、且つ爪部が大面積であるため、沈降が阻止される。
【0030】
また、P点が爪部平面上にある場合には、爪部22が平面基板20に対して鈍角となるように側方に曲げられているため、F1は側方への力との合力F3(図示せず)、F2も側方への力との合力F4(図示せず)として作用し、側方への土の反転も効果的に行うことができる。
【0031】
F3、F4の反力として、爪の曲げ方向と反対側方に耕耘機を横に振る力が作用するが、平面基板20の一部が土中にあるため、耕耘機の横振れが防止される。
【0032】
平面基板20の角部と爪部22の回転方向先端との接点である起点Qは回転中心からの最大半径点であり、しかも、爪部の先端が鋭角となっている尖った形状のため、シャープな切れ味で土壌に入り込み、原動機の所要出力を軽減させることができる。しかも、耕耘に有効な爪部の面積を大きくしても原動機への負荷がそれほど増加しないため、耕起及び反転させる土量を多くすることができる。また、回転方向先端が鋭角に形成されている平面の爪部22によって土中に切り込むため、固い土壌の耕耘も可能になる。
【0033】
また、爪部22の取り付け角度A2やリード角度A3を上記で説明した適切な範囲内に設定することにより、土を後方及び側方に意図的に良く飛ばすことができる。
【0034】
図4(B)に示すように、回転軸心CL1を中心とする仮想円筒面27に、爪部22の円弧部外周縁29がその全長にわたって接するように、爪部22の円弧部外周縁29を図4(D)の展開図の状態では楕円弧31aで形成し、且つ耕耘爪10は片側の回転軸14に対し、回転方向R1へのずらし角度A1を45度として2枚1組で取り付けられているため、回転軸心CL1から見たときに、各爪部22の円弧部外周縁29によって円が形成される。これにより、移動輪の取り付け無しでそのまま円滑に路面を移動することができる。特に、爪部22は、起点Qから円弧部外周縁29が始まることにより、シャープな切れ味、耕起及び反転させる土量の増大、固い土壌の耕耘適性が得られるとともに、中耕、除草にも使用することができる。
【0035】
しかも、1枚の平面基板20に複数の爪部22を設けているので、回転軸14への取付が1枚の取付フランジ14a(図3参照)に対し1枚の平面基板20を取り付けるだけでよく、従来のナタ爪や普通爪のように、複数個の爪を取り付ける必要がないので、取り付けが簡単になる。爪部22の円弧部外周縁29は平面基板20の各辺21a〜21dに連続しているため、放てき性に優れ付着による土の持ち回りや、抱き込みが少なくなる。しかも、土の流れが円滑であり、草木や紐状物が引っかかることもない。また、回転軸14と各辺との距離を大きくすることができ、ナタ爪のように爪の取り付け部周辺に草木が巻きつくことがなくなる。
【0036】
また、多角形状の平面基板の外周各辺に、平面基板に対する取り付け角度A2を鈍角として、第1面及びこの第1面とは反対側の第2面のいずれかに向けて平面の爪部を取り付けているので、平面基板が従来の側板として機能する。このため、従来のように、回転軸両端に側板を取り付けなくても、耕耘機の横振れがなく安定して直進することが可能になる。
【0037】
また、図8に示すように、回転方向R1に対する爪部22の向きが上記実施形態とは逆になるように、本発明の耕耘爪10を耕耘機への耕耘作業時の取り付けと左右逆に取り付ける。これにより、前記分力F1,F2は回転外周方向前方に土を押し退ける力として作用する。したがって、耕耘機の沈降を防止し、強い走行駆動力Fsを得ることができる。これにより、自走機能のない小型の耕耘機の後部に培土器を取り付け、うね立て作業や溝切り作業を行う場合に、耕耘作業に通常使用されるナタ爪で牽引すると、培土器が抵抗になり、充分な牽引力が得られないという不都合があったが、これを解消することができる。すなわち、従来では、ナタ爪に変えてカルチ車輪や牽引車輪を取り付けて強い走行駆動力を得ているが、これらの車輪はアタッチメントとして別途購入しなければならない。しかし、これらアタッチメント類は比較的高価なため、小面積の畑作業を主とする人には負担が重い。本発明では、耕耘爪10の取り付けを、耕耘作業時と左右逆に取り付けることにより、充分な走行駆動力を得ることができ、従来のような別途アタッチメントを必要としない。
【0038】
図9は、爪部41の長さを各辺42の中央部を超えて長くした別の実施形態の耕耘爪40を示したものである。このように、爪部41には、ハッチングで示す延長部43を設けることで、使用する土壌が比較的に軟らかい場合に、この延長部43の長さL2を増やすことで、耕耘爪40の沈降を抑えることができ、軟弱土壌の耕耘に適した耕耘爪40を提供することができる。なお、上記第1実施形態と同一構成部材に同一符号を付して重複した説明を省略している。また、延長部43を設けることで、耕耘爪40を回転軸14に取り付けるときの回転方向における取り付けガタがある場合でも、これら延長部43によって、隣接する1対の耕転爪40の爪部41同士が一部オーバーラップする。このため、円弧部外周縁の円の連続性が保持されて、取り付けガタによる隙間が発生することがなく、円滑な路面走行が可能になる。
【0039】
前記各辺42の長さをL1とし、前記平面基板20及び前記爪部41の境界線23における前記爪部の長さをL3としたときに、L3は、0.5×L1≦L3≦0.7×L1の範囲内であることが好ましい。すなわち、爪部41は、各辺の半分までの爪長さに、長さL2の延長部43を延長して形成したもので、延長部長さL2は、L1の0.2倍以下であることが好ましい。
【0040】
図10は、例えば正方形の平面基板20の各辺21a〜21dに各辺21a〜21dと同じ長さで爪部45を折り曲げ形成した別の実施形態の耕耘爪46を示したものである。この実施形態の場合には、ハッチングで示す領域47は回転方向R1遅れ側となり、耕耘機を浮き上がらせる力が生じ、耕耘の観点からは有害な部分となる。しかし、爪前半部による耕耘力と、爪後半部(ハッチング領域47)による浮き上がり力とが同じになって両者がキャンセルされるので、軟弱地などの特殊用途で有効になる。この形態では、前記各辺の爪部45の円弧部外周縁が連続して形成されており、前記回転軸心CL1を中心とする仮想円筒面に前記円弧部外周縁が全て同時に接しているため、1枚の耕耘爪46で耕耘作業と円滑な移動とが可能である。
【0041】
上記各実施形態では、正方形の平面基板20を用いた耕耘爪10,40,46を説明したが、正方形の他に、他の多角形状の平面基板を用いても本発明を実施することができる。平面基板の形状としては、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形などの正多角形がある。図11は正五角形の平面基板50を有する耕耘爪51であり、図12は正六角形の平面基板52を有する耕耘爪53である。なお、爪部54,55の形状や形成方法は第1実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0042】
これら各実施形態においても、回転軸心を中心とする仮想円筒面27に、各爪部54,55の円弧部外周縁54a,55aが接している。そして、回転軸に取り付ける場合には、第1実施形態と同様であり、耕耘爪51,53を2枚一組で用いて、回転軸の軸方向から見て各爪部51,53の円弧部外周縁54a,55aが円状に連続する。これにより、移動輪等を用いることなく耕耘の合間などの路面走行を円滑に行うことができる。また、正五角形平面基板50の耕耘爪51ではリード角度A3は54°となり、正六角形平面基板52の耕耘爪53ではリード角度A3は60°となる。リード角度A3が大きくなっていくにつれて、耕起力F1と突き刺し力F2との変化幅が小さくなる。
【0043】
また、平面基板の形状は、正多角形の他に、不等辺多角形であってもよい。例えば、図13に示すような長方形の平面基板60を有する耕耘爪61や、図14に示すような不等辺四角形の平面基板70を有する耕耘爪75であってもよい。
【0044】
図13に示すように、長方形の平面基板60を有する耕耘爪61では、短辺60aに形成される短辺爪部65と、長辺60bに形成される長辺爪部66とは、それぞれ面積や取り付け角度A2、リード角度A3が違うため、土壌への食い込みよさや耕起力などを各爪部65,66に按分にして条件設定することができる。
【0045】
図14は、不等辺四角形の平面基板70の各辺70a〜70dに各爪部71〜74を形成した耕耘爪75を示したものである。この場合には、一番長い第1長辺70aの爪部71の面積が大きくなり、リード角度A3は小さく、取り付け角度A2は大きくなる。また、リード角度A3を各爪部71〜74で変えることができるので、土壌への食い込みよさや耕起力などを各爪部71〜74に按分して条件設定することできる。したがって、爪部71〜74の面積やリード角度A3、取り付け角度A2を各種設定することで、多様な土壌に対して最適な耕耘条件を設定することができるようになる。
【0046】
図15及び図16は、図1〜図3に示す第1実施形態の1枚の平面基板20の代わりに、2枚の平面基板部品76,77を重ね合わせて用いた他の実施形態の耕耘爪78を示しており、第1実施形態と同様な機能の耕耘爪を提供することができる。この平面基板部品76,77では、回転軸を中心として点対称位置に1対の爪部76a,77aが形成されている。これら1対の平面基板部品76,77は、爪部76a,77aの取り付け方向がそれぞれ平面基板面に対して反対向きになっている。なお、幅を狭くしてリード角度を変えることにより、5角形や6角形やその他の多角形状の耕耘爪も同様にして重ね合わせて形成することができる。
【0047】
図17は、星型の平面基板80の一つ置きの各辺80a〜80dに対し、爪部81を折り曲げ形成した耕耘爪82を示している。この実施形態では、リード角度A3や爪部81の長さL3の変更が容易であり、多種多様な土壌に対応してピンポイント的に効率の良い耕耘爪を提供することができる。もちろん、不等辺星形の平面基板とすることもできる。
【実施例】
【0048】
以下、図4を参照して第1実施形態における実施例について説明する。
各部の寸法を下記のようにして耕耘爪10を構成した。
仮想円筒面27の直径D:280mm
爪部の耕耘幅W:60mm
爪部の取り付け角度A2:125°
爪部のリード角度A3:45°
【0049】
取り付ける耕耘機の大小にもよるが、本発明の耕耘爪10が用いられる最適な耕耘機は、ロータリーが走行輪も兼ねる小型のものであり、この場合の仮想円筒面の直径Dは、280mm以下が多い。なお、仮想円筒面の直径Dは、ロータリーにより走行を可能にする小型耕耘機の場合に、250mm以上300mm以下の範囲内が好ましい。
【0050】
爪部22A,22Bの耕耘幅Wは、例えば耕耘機の耕耘幅を600mmとし、中央の動力伝達部の耕耘不可幅100mmとすると、500mmが耕耘負担幅となる。これを4個の耕耘爪で分担するから、耕耘爪1個当たりの耕耘幅は125mmとなる。これに取り付け隙間5mmを考慮に入れると、実際の爪部の耕耘幅Wは、W=(125−5)/2=60mmとなる。
【0051】
爪部22A,22Bの爪部高さRは、(D/2)−(D/2)・cos 45°≒140−99=41(mm)である。したがって、取り付け角度A2は、90°+arctan(41/60)≒125°となる。本願の耕耘爪10は、土をよく耕起(掘り起こし)させ、土を反転させ、土を後方・側方に安定して良く飛ばすことである。したがって、爪の取り付け角度A2は、110°≦A2≦140°の範囲が良く、より好ましくは115°≦A2≦135°の範囲である。
【0052】
なお、爪部22A,22Bの取り付け角度A2は、110°未満にすると、爪部22A,22Bの展開幅Tが小さくなる。すなわち、爪部22A,22Bの面積が小さくなり、耕起土量が減少し好ましくない。また、側方への反転土量も減少し、好ましくない。また、爪部22A,22Bの取り付け角度A2が140°を超えると、爪部22A,22Bの展開幅Tが大きくなり、爪部の面積は増すが、耕耘土量、反転土量(後方、側方)ともに減少する。なお、この爪部22A,22Bの取り付け角度A2は平面基板が5角形や六角形などの場合には、当然のことながら、変更される。
【0053】
爪部22A,22Bのリード角度A3は、本実施形態のように正方形の場合には、45°となる。この他に、五角形の場合には54°となり、六角形の場合には60°、三角形の場合には30°となる。このリード角度A3は大きくなると、例えば90°近くになると、単に土を力F0でならすだけであり、耕耘する作用が弱くなり好ましくない。逆に、リード角度A3が小さくなり、例えば0°近くになると、爪先を横に滑らす力F0は最大となるが、半径方向の力が「0」となり、やはり耕耘する作用が弱くなる。爪のリード角度A3は、基本設計によりほぼ決まってくる値であり、土質、目的などにより、条件範囲内で決定される。リード角度A3の好ましい範囲は30°≦A3≦60°である。なお、リード角度A3が30°未満であると、爪部が取付フランジと干渉して好ましくない。また、60°を超えると耕耘効率が低下して好ましくない。
【符号の説明】
【0054】
A1 ずらし角度
A2 取り付け角度(折り曲げ角度)
A3 リード角度
10 耕耘爪
12 ロータリー耕耘機
14 回転軸
14a 取付フランジ
14b 取付ネジ孔
16 動力伝達部
20 平面基板
20a 第1面
20b 第2面
20c,20d,20e,20f 角部
22 爪部
21a,21b,21c,21d 辺
22,22A,22B 爪部
23 境界線(折り曲げ線)
24 取付部
26 取付孔
27 仮想円筒面
28 取付ネジ孔
29 円弧部外周縁
30 取付ネジ
31 楕円
32 ナット
34 延長部
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌の耕耘に使用される耕耘爪に関する。
【背景技術】
【0002】
耕耘機は原動機から回転軸へ回転を伝達し、前記回転軸に取り付けられるロータリーの一つである例えば耕耘爪を回転させることで、土壌を耕耘する。一般に使用されている耕耘爪は、例えば特許文献1に記載されているように、その形状からナタ爪と普通爪の二種に大別されるが、多くはナタ爪が使用されている。
【0003】
図18に示すように、前記ナタ爪100は、回転軸101の回転方向R1に関して前方に位置する縦刀部102と、その先端部を側方に向けて屈曲させた横刀部103とからなり、縦刀部102によって土壌を進行方向と平行な方向に切断し、次に横刀部103によって進行方向と直交する方向に土壌を切断した後、これを後方に反転させるように作用する。
【0004】
前記ナタ爪100は、比較的柔軟な土壌に対しては効果的な耕耘作用を与える。しかし、線速度の小さい中央部100aから土壌に切り込み、しかも、この中央部100aから回転後方に向かって曲率半径が大きい湾曲した形状となっているため、土壌に与える衝撃力が小さく、比較的固い土壌の耕耘には適さない。さらに、ナタ爪100は、曲率半径が大きい湾曲した中央部100aに続いて先端の横刀部103が側方に曲がっているため、土壌中に石や木枝、その他の固形物、固い土壌があると、それ以上の切り込みが阻害され、耕耘機本体が上下に振動する。また、上下の振動のみならず、左右に振られる欠点があり、直進性が阻害される。このため、ロータリー取付軸の両端に円板状の側板を取り付けて、左右に振られることがないように直進安定性を確保している。さらに、ナタ爪100は帯板を折り曲げて形成されており、強度を保つために肉厚のものが使用されている。したがって、この肉厚部によって切り込み時の抵抗が大きいという問題もある。
【0005】
図19に示すように、普通爪105は回転軸101と直交する平面に対して起立する部分を有していない(左右に屈曲した横刃部を有していない)ために、土壌に反転作用を与えることができない。しかも、切断の過程において土壌は側方に移動されないので、先端部105aよりも遅れて土壌に切り込む中央部105bには、土壌の表面に存在する草などが巻きつき、切断性能の低下をもたらすという欠点を有する。しかし、普通爪105は、先端部105aが回転方向に関して最前端に位置するように湾曲しているので、固い土壌に対しても比較的小さい抵抗で切り込むことができる。
【0006】
これに対して、特許文献1には、図20に示すように、ナタ爪と普通爪を合体させた耕耘爪110が示されているが、爪の全長が長いため、耕耘時の負荷が過大になるという問題がある。しかも、先端110aが突起状になっているため、特に異物と衝突した場合には、爪の折損や変形が生じる。さらに、爪中央腕部110bが回転方向後方に懐状に湾曲しているため、草木や紐状物が引っ掛かり、作業を阻害する。
【0007】
特許文献2には、回転軸を中心とする点対称位置に2個のナタ爪を配置するとともに一体化し、爪先端部をナタ爪本体部に対し折り曲げた耕耘爪が示されている。この耕耘爪では、折り曲げた爪先端部を、回転軸を中心とする仮想円筒面に位置させている。この耕耘爪は1組のナタ爪から構成されるものの、それぞれは従来のナタ爪そのままの形状であり、ナタ爪の有する問題点は解決されていない。但し、回転軸周りの中心部が幅広に形成されているため、幅広となった分だけ、この部分の肉厚を薄くできる可能性はある。
【0008】
図21に示すように、特許文献3には、上記ナタ爪や普通爪の問題点である曲げ強度が小さいことに起因する耕耘時の土壌中の石などに衝突し屈曲しやすいという欠点を改良すべく、回転軸120への取付部121が形成された板状基体122の周縁から、複数の湾曲形状のへら123を両側方向に交互に突出させた耕耘刀124が示されている。
【0009】
しかし、この湾曲形状のへら123を板状基体122の周縁から突出させたものでは、曲げ強度を大きくするための工夫はなされているものの、回転方向の前側または後側に端縁が形成されているため、草木や紐状物がこの端縁に引っ掛かってしまうという問題がある。また、草木や紐状物がこの端縁で巻き込まれてしまうことがあり、この場合には耕耘機自体が転倒してしまうこともある。また、へら123は、全体に捩じられつつ湾曲しており、さらにへら123の凹面が回転軸方向に向いているため、この部分に載荷された土は遠心力と滞留により、持ち回りや抱き込みを生じ、放てき性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭48−6241号公報
【特許文献2】特公昭29−3203号公報
【特許文献3】特開昭57−99104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のように、従来のナタ爪では比較的固い土壌の耕耘に不適であり、しかも土中に石や木材などの固形物があるとそれ以上の入り込みが阻害されて上下に振動する他に、ナタ爪の変形や折損を招くという問題がある。また、普通爪では土壌に反転作用を与えることができない。また、単にへら状のものを折り曲げて形成するものでは、効率良く耕耘することができない他に、草木や紐状物が巻き込まれてしまい、耕耘機自体の転倒を招くという問題がある。しかも、これら各種のものは、耕耘途中での路面移動を行う際には移動輪を取り付ける必要があり、作業性が悪いなどの問題がある。
【0012】
そこで、本発明は従来の耕耘爪に対し、
(1)シャープな切れ味で、耕運機の原動機の所要出力を軽減させること、
(2)耕耘に有効な爪部の面積を大きくし、耕起、反転土量を増すこと、
(3)土が後方、側方に安定して良く飛ぶこと、
(4)固い土壌の耕耘も可能とすること、
(5)優れた放てき性により、付着による土の持ち回りや抱き込みをなくすこと、
(6)土の流れが円滑であり草木や紐状物が引っかかることがないようにすること、
(7)回転軸への取り付けが簡単で楽であること、
(8)軟弱な土壌でも耕運機自体の沈降を少なくすること、
(9)爪の磨耗による機能や能力の低下を少なくすること、
(10)移動輪(走行輪)の取り付け無しでそのまま円滑に路面を移動(走行)可能にすること、
(11)回転軸両端に側板を取り付けなくても、耕耘機の横振れがなく安定して直進すること
が可能な耕耘爪を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、耕耘機の回転軸に、複数枚1組で回転方向に角度をずらして取り付けられる耕耘爪であって、中心に前記回転軸への取付部が形成された多角形の平面基板と、前記平面基板の外周各辺に、前記平面基板に対する取り付け角度A2を鈍角として、第1面及びこの第1面とは反対側の第2面のいずれかに向けて取り付けられ、回転方向先端が鋭角に形成されている平面の爪部とを備え、前記回転軸の軸心を中心とする仮想円筒面に、前記爪部の円弧部外周縁が接するように、前記爪部の展開状態において該円弧部外周縁が前記仮想円筒面に対応する楕円弧で形成されており、前記回転軸の軸心から見たときに、前記各爪部の円弧部外周縁によって円が形成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記平面基板の第1角部を起点とし、前記回転軸を中心として前記起点から回転方向後方に向かって次の第2角部までの第1辺に、前記起点から該第1辺のほぼ中央部までの位置に、前記平面基板の第1面に対して前記取り付け角度A2で形成される第1爪部と、前記第2角部を起点とし、前記回転軸を中心として前記起点から回転方向後方に向かって次の第3角部までの第2辺に、前記起点から該第2辺のほぼ中央部までの位置に、前記第1面とは反対側の面である第2面に対して前記取り付け角度A2で形成される第2爪部と、以下、残りの各辺に対して、交互に形成され前記第1爪部と同じ形状の奇数順位爪部、及び前記第2爪部と同じ形状の偶数順位爪部とから、前記爪部が構成されていることを特徴とする。
【0015】
また前記爪部は、前記起点から前記円弧部外周縁が始まることを特徴とする。なお、前記各辺の長さをL1とし、前記平面基板及び前記爪部の境界線における前記爪部の長さをL2としたときに、L2は、0.5×L1≦L2≦0.7×L1であることが好ましい。
【0016】
前記平面基板は正多角形であることが好ましい。また、前記平面基板の各辺を中央に向けて三角形状に切り欠いた星形状であり、前記爪部は、星形状の平面基板であって外側に位置する起点から回転方向後方の各辺に形成してもよい。
【0017】
なお、前記取り付け角度A2が110°≦A2≦140°の範囲内であることが好ましい。また、前記爪部の回転方向先端及び前記回転軸の軸心を結ぶ放射線と、前記平面基板及び前記爪部の境界線とがなす交差角度をリード角度A3とし、該リード角度A3が30°≦A3≦60°の範囲内であることが好ましい。また、前記回転軸の軸心を中心として点対称位置に形成した1対の爪部を有する平面基板部品を複数枚形成し、これら複数枚の平面基板部品を重ね、且つ回転軸の軸心を中心として回転方向にずらして取り付けて、前記平面基板と前記爪部とを構成してもよい。前記平面基板は正方形を除く四辺形であり、前記四辺形の平面基板の各辺に前記爪部を形成してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来のナタ爪では不適であった比較的固い土壌を耕耘することができ、上下の振動や爪の変形・折損の発生を抑え、草木や紐状物の巻き込みを無くすことができる。また、切り込み特性を向上させ、シャープな切れ味で耕耘機の原動機の所要出力を低減させることができる。しかも、軟弱な土壌においては爪部によって機体の沈降を少なくすることができる。そして、移動輪の取り付け無しで、そのまま円滑に路面を移動することができる。また、耕耘に有効な爪部の面積を大きくすることが簡単に可能であり、耕起・反転土量を増し、耕耘効率を上げることができる。さらに、回転軸への取り付けが簡単で作業が楽であり、横振れが少ないので側板の取り付けが不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の耕耘爪を回転軸の片側に2枚1組で取り付け方向を45°ずらして取り付けた状態を示す正面図である。
【図2】同右側面図である。
【図3】本発明の耕耘爪の取り付け状態を示す分解斜視図である。
【図4】爪部の円弧部外周縁が楕円弧で形成され、仮想円筒面に接していることを示す説明図であり、(A)は耕耘爪の背面を、(B)は耕耘爪の左側面と仮想円筒面を、(C)は爪部の円弧部外周縁を構成する楕円を、(D)は耕耘爪を展開した状態をそれぞれ示している。
【図5】爪部の構成を説明する正面図である。
【図6】耕耘中に作用する力を説明する耕耘爪の正面図である。
【図7】耕耘中に作用する力を説明する耕耘爪の正面図である。
【図8】培土器を取り付けたうね立て作業や溝切り作業を行う場合の耕転爪の使用を説明するもので、耕耘作業とは左右逆にして回転軸に耕耘爪を取り付けたときの耕耘爪に作用する力を説明する耕耘爪の正面図である。
【図9】爪部の後半部分に延長部を設けた他の実施形態を示す耕耘爪の正面図である。
【図10】正方形の平面基板の各辺に全長にわたって爪を形成した他の実施形態の耕耘爪を示す正面図である。
【図11】正五角形の平面基板を用いた他の実施形態の耕耘爪を示す正面図である。
【図12】正六角形の平面基板を用いた他の実施形態の耕耘爪を示す正面図である。
【図13】長方形の平面基板を用いた他の実施形態の耕耘爪を示すもので、(A)は回転軸の軸心方向から見た正面図、(B)は同平面図、(C)は同左側面図である。
【図14】不等辺四角形の平面基板を用いた他の実施形態の耕耘爪を示す正面図である。
【図15】六角形の平面基板に1対の爪を構成した平面基板部品を示す正面図であり、(A)は爪部を外側に折り曲げたものであり、(B)は爪部を内側に折り曲げたものである。
【図16】同じく1組の平面基板部品の取り付け状態を分解して示す斜視図であり、爪部76aは内側に折り曲げられ、爪部77aを外側に折り曲げられている。
【図17】星型の平面基板を用いた他の実施形態の耕耘爪を示す正面図である。
【図18】従来のナタ爪を示す正面図である。
【図19】従来の普通爪を示す正面図である。
【図20】従来の改良型のナタ爪を示す正面図である。
【図21】板状基体に爪を折り曲げ形成した従来の耕耘爪を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜図3に示すように、本発明の耕耘爪10は、ロータリー耕耘機12の回転軸14に取り付けて使用される。回転軸14は動力伝達部16の両側板16aから垂直に突出し、動力伝達部16に水平方向で取り付けられている。本実施形態では、耕耘爪10は片側の回転軸14に対し、回転方向R1へのずらし角度A1を45度として2枚1組で取り付けられている。
【0021】
図2及び図3に示すように、耕耘爪10は、正方形状の平面基板20と、この平面基板20の4辺から延設した平面の爪部22とから構成されている。平面基板20の中心には取付部24が形成されている。取付部24は、取付孔26及び取付ネジ孔28から構成されている。取付孔26には前記動力伝達部16の回転軸14が入る。また、取付ネジ孔28は、回転軸14の取付フランジ14aの取付ネジ孔14bに対応した位置で、同心円上に形成されている。この取付ネジ孔14b,28に取付ネジ30を入れてナット32で締結することにより、回転軸14に耕耘爪10を取り付けることができる。なお、取付ネジ孔28の位置は取付ネジ孔14bの位置に対応していればよく、特に同心円上に限定されない。また、取付ネジ孔28を放射線方向(半径方向)に伸びた長孔とすることで、耕耘機12の取付フランジ14aの取付ネジ孔14bが配置される同心円の直径が機種に応じて異なっている場合でも、この長孔によって対応させることができる。
【0022】
図4(A)に示すように、前記爪部22A,22Bは、平面基板20の外周に一定ピッチで配置されている。図4(B)に示すように、この爪部22A,22Bは、前記平面基板20に対して鈍角となるように取り付け角度A2で、取り付け方向を第1面(内側面)20a及びこの第1面20aとは反対側の第2面(外側面)20bに交互に延設される。第1面20aに取り付け角度A2で延設される爪部を説明上、第1爪部22Aといい、第2面20bに取り付け角度A2で延設される爪部を第2爪部22Bというが、符号22の添字A,Bは、単に取り付け位置を明確にするために付したものであり、特に取り付け位置の説明に関係ない場合には、添字を省略し、爪部22と総称する。
【0023】
本実施形態では、図4(D)に示すような展開図の形状に鋼板を切り取って各爪部22A,22Bを例えばプレス成型により折り曲げて形成している。なお、プレス成型により爪部22A,22Bを平面基板20に一体的に形成する代わりに、溶接やネジ止めなどの他の固定手段で爪部22A,22Bを平面基板20に取り付けてもよい。しかし、加工工数や部品点数が増加したり、ネジなどの突起部分で耕耘時の土の流れを阻害したりすることがないように、爪部22A,22Bは折り曲げ形成することが好ましい。
【0024】
第1爪部22Aは、前記平面基板20の第1角部20cを起点Qとし、前記回転軸を中心として前記起点Qから回転方向R1後方に向かって次の第2角部20dまでの第1辺21aに、前記起点Qである第1角部20cから該第1辺21aのほぼ中央部までの位置に、前記平面基板20の第1面20aに対して取り付け角度A2(図4(B)参照)で延設されている。第2爪部22Bも、前記第2角部20dを起点とし、前記回転軸14を中心として前記起点である第2角部20dから回転方向R1後方に向かって次の第3角部20eまでの第2辺21bに、前記起点から該第2辺21bのほぼ中央部までの位置に、前記第1面20aとは反対側の面である第2面20bに対して前記取り付け角度A2で延設されている。以下、残りの各辺21c,21dに対して、交互に形成され前記第1爪部22Aと同じ形状の奇数順位爪部、及び前記第2爪部22Bと同じ形状の偶数順位爪部がそれぞれ形成される。本実施形態では、正方形の平面基板20を例にとって説明しているので、第1爪部が2枚、第2爪部が2枚となる。
【0025】
図5に示すように、前記平面基板20及び前記爪部22の境界線(折り曲げ線)23と、該境界線23に含まれる前記起点(例えば第1角部20c)Q及び前記回転軸心を結ぶ放射線25とがなす交差角度をリード角度A3という。このリード角度A3は、正方形の平面基板20では45°である。
【0026】
図4(B)に示すように、前記回転軸(図1参照)の軸心(回転軸心)CL1を中心とする仮想円筒面27に、前記爪部22の円弧部外周縁29がその全長にわたって接するように、爪部22の円弧部外周縁29を図4(D)の展開図の状態では楕円弧31aで形成している。なお、図4(A)は耕耘爪10の背面図であり、(B)は同左側面図であり、(C)は爪部の円弧部外周縁29を構成する楕円であり、(D)は耕耘爪の展開図である。
【0027】
W:爪部の耕耘幅
A2:取り付け角度(折り曲げ角度)
A3:リード角度
T:爪部の展開幅{T=W/cos (A2−90°)}
t:爪部の厚さ
D:爪部の円弧部外周縁29が接する仮想円筒面27の直径であり、この仮想円筒面27は回転軸心CL1を中心とする円筒の外周面である。
S:直径がDの仮想円筒面27における爪部22の円弧部外周縁29を共有する楕円31の長径で、以下の数式から求められる。なお、短径はDである。
S=D/sin (A2−90°)
【0028】
次に、図6及び図7を参照して、耕耘爪10の作用について説明する。図7は爪部22の境界線23上の点Pが回転軸心CL1の鉛直下方に位置したときの耕起力F1と突き刺し力F2とを示す説明図である。回転軸心CL1から地面GLに下ろした鉛直線L01と、爪部22の境界線23の交点をPとすると、回転軸14の回転により点Pには、鉛直線L01に垂直な力F0が生じる。この力F0は、境界線23に対し直角上方への分力F1と、境界線23に沿って爪先端方向への分力F2として、作用する。
【0029】
前記F1は土を上方へ耕起する力となり、F2は爪部22が形成されていない平面基板20の辺部21と爪部22とを土中に突き刺す力となる。力F0は、同一速度での回転では不変であるが、P点が境界線23上で爪部22の後端36に移動するにつれて、耕起力F1が次第に小さくなり、突き刺し力F2が次第に大きくなるように、その比率が変化する。そして、図7に示すように、境界線23が地面GLと平行になったときに、耕起力F1が「0」となり、突き刺し力F2が力F0(最大)となる。この耕起力F1が「0」になるということは、耕耘機の沈降は自重のみによるものとなり、且つ爪部が大面積であるため、沈降が阻止される。
【0030】
また、P点が爪部平面上にある場合には、爪部22が平面基板20に対して鈍角となるように側方に曲げられているため、F1は側方への力との合力F3(図示せず)、F2も側方への力との合力F4(図示せず)として作用し、側方への土の反転も効果的に行うことができる。
【0031】
F3、F4の反力として、爪の曲げ方向と反対側方に耕耘機を横に振る力が作用するが、平面基板20の一部が土中にあるため、耕耘機の横振れが防止される。
【0032】
平面基板20の角部と爪部22の回転方向先端との接点である起点Qは回転中心からの最大半径点であり、しかも、爪部の先端が鋭角となっている尖った形状のため、シャープな切れ味で土壌に入り込み、原動機の所要出力を軽減させることができる。しかも、耕耘に有効な爪部の面積を大きくしても原動機への負荷がそれほど増加しないため、耕起及び反転させる土量を多くすることができる。また、回転方向先端が鋭角に形成されている平面の爪部22によって土中に切り込むため、固い土壌の耕耘も可能になる。
【0033】
また、爪部22の取り付け角度A2やリード角度A3を上記で説明した適切な範囲内に設定することにより、土を後方及び側方に意図的に良く飛ばすことができる。
【0034】
図4(B)に示すように、回転軸心CL1を中心とする仮想円筒面27に、爪部22の円弧部外周縁29がその全長にわたって接するように、爪部22の円弧部外周縁29を図4(D)の展開図の状態では楕円弧31aで形成し、且つ耕耘爪10は片側の回転軸14に対し、回転方向R1へのずらし角度A1を45度として2枚1組で取り付けられているため、回転軸心CL1から見たときに、各爪部22の円弧部外周縁29によって円が形成される。これにより、移動輪の取り付け無しでそのまま円滑に路面を移動することができる。特に、爪部22は、起点Qから円弧部外周縁29が始まることにより、シャープな切れ味、耕起及び反転させる土量の増大、固い土壌の耕耘適性が得られるとともに、中耕、除草にも使用することができる。
【0035】
しかも、1枚の平面基板20に複数の爪部22を設けているので、回転軸14への取付が1枚の取付フランジ14a(図3参照)に対し1枚の平面基板20を取り付けるだけでよく、従来のナタ爪や普通爪のように、複数個の爪を取り付ける必要がないので、取り付けが簡単になる。爪部22の円弧部外周縁29は平面基板20の各辺21a〜21dに連続しているため、放てき性に優れ付着による土の持ち回りや、抱き込みが少なくなる。しかも、土の流れが円滑であり、草木や紐状物が引っかかることもない。また、回転軸14と各辺との距離を大きくすることができ、ナタ爪のように爪の取り付け部周辺に草木が巻きつくことがなくなる。
【0036】
また、多角形状の平面基板の外周各辺に、平面基板に対する取り付け角度A2を鈍角として、第1面及びこの第1面とは反対側の第2面のいずれかに向けて平面の爪部を取り付けているので、平面基板が従来の側板として機能する。このため、従来のように、回転軸両端に側板を取り付けなくても、耕耘機の横振れがなく安定して直進することが可能になる。
【0037】
また、図8に示すように、回転方向R1に対する爪部22の向きが上記実施形態とは逆になるように、本発明の耕耘爪10を耕耘機への耕耘作業時の取り付けと左右逆に取り付ける。これにより、前記分力F1,F2は回転外周方向前方に土を押し退ける力として作用する。したがって、耕耘機の沈降を防止し、強い走行駆動力Fsを得ることができる。これにより、自走機能のない小型の耕耘機の後部に培土器を取り付け、うね立て作業や溝切り作業を行う場合に、耕耘作業に通常使用されるナタ爪で牽引すると、培土器が抵抗になり、充分な牽引力が得られないという不都合があったが、これを解消することができる。すなわち、従来では、ナタ爪に変えてカルチ車輪や牽引車輪を取り付けて強い走行駆動力を得ているが、これらの車輪はアタッチメントとして別途購入しなければならない。しかし、これらアタッチメント類は比較的高価なため、小面積の畑作業を主とする人には負担が重い。本発明では、耕耘爪10の取り付けを、耕耘作業時と左右逆に取り付けることにより、充分な走行駆動力を得ることができ、従来のような別途アタッチメントを必要としない。
【0038】
図9は、爪部41の長さを各辺42の中央部を超えて長くした別の実施形態の耕耘爪40を示したものである。このように、爪部41には、ハッチングで示す延長部43を設けることで、使用する土壌が比較的に軟らかい場合に、この延長部43の長さL2を増やすことで、耕耘爪40の沈降を抑えることができ、軟弱土壌の耕耘に適した耕耘爪40を提供することができる。なお、上記第1実施形態と同一構成部材に同一符号を付して重複した説明を省略している。また、延長部43を設けることで、耕耘爪40を回転軸14に取り付けるときの回転方向における取り付けガタがある場合でも、これら延長部43によって、隣接する1対の耕転爪40の爪部41同士が一部オーバーラップする。このため、円弧部外周縁の円の連続性が保持されて、取り付けガタによる隙間が発生することがなく、円滑な路面走行が可能になる。
【0039】
前記各辺42の長さをL1とし、前記平面基板20及び前記爪部41の境界線23における前記爪部の長さをL3としたときに、L3は、0.5×L1≦L3≦0.7×L1の範囲内であることが好ましい。すなわち、爪部41は、各辺の半分までの爪長さに、長さL2の延長部43を延長して形成したもので、延長部長さL2は、L1の0.2倍以下であることが好ましい。
【0040】
図10は、例えば正方形の平面基板20の各辺21a〜21dに各辺21a〜21dと同じ長さで爪部45を折り曲げ形成した別の実施形態の耕耘爪46を示したものである。この実施形態の場合には、ハッチングで示す領域47は回転方向R1遅れ側となり、耕耘機を浮き上がらせる力が生じ、耕耘の観点からは有害な部分となる。しかし、爪前半部による耕耘力と、爪後半部(ハッチング領域47)による浮き上がり力とが同じになって両者がキャンセルされるので、軟弱地などの特殊用途で有効になる。この形態では、前記各辺の爪部45の円弧部外周縁が連続して形成されており、前記回転軸心CL1を中心とする仮想円筒面に前記円弧部外周縁が全て同時に接しているため、1枚の耕耘爪46で耕耘作業と円滑な移動とが可能である。
【0041】
上記各実施形態では、正方形の平面基板20を用いた耕耘爪10,40,46を説明したが、正方形の他に、他の多角形状の平面基板を用いても本発明を実施することができる。平面基板の形状としては、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形などの正多角形がある。図11は正五角形の平面基板50を有する耕耘爪51であり、図12は正六角形の平面基板52を有する耕耘爪53である。なお、爪部54,55の形状や形成方法は第1実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0042】
これら各実施形態においても、回転軸心を中心とする仮想円筒面27に、各爪部54,55の円弧部外周縁54a,55aが接している。そして、回転軸に取り付ける場合には、第1実施形態と同様であり、耕耘爪51,53を2枚一組で用いて、回転軸の軸方向から見て各爪部51,53の円弧部外周縁54a,55aが円状に連続する。これにより、移動輪等を用いることなく耕耘の合間などの路面走行を円滑に行うことができる。また、正五角形平面基板50の耕耘爪51ではリード角度A3は54°となり、正六角形平面基板52の耕耘爪53ではリード角度A3は60°となる。リード角度A3が大きくなっていくにつれて、耕起力F1と突き刺し力F2との変化幅が小さくなる。
【0043】
また、平面基板の形状は、正多角形の他に、不等辺多角形であってもよい。例えば、図13に示すような長方形の平面基板60を有する耕耘爪61や、図14に示すような不等辺四角形の平面基板70を有する耕耘爪75であってもよい。
【0044】
図13に示すように、長方形の平面基板60を有する耕耘爪61では、短辺60aに形成される短辺爪部65と、長辺60bに形成される長辺爪部66とは、それぞれ面積や取り付け角度A2、リード角度A3が違うため、土壌への食い込みよさや耕起力などを各爪部65,66に按分にして条件設定することができる。
【0045】
図14は、不等辺四角形の平面基板70の各辺70a〜70dに各爪部71〜74を形成した耕耘爪75を示したものである。この場合には、一番長い第1長辺70aの爪部71の面積が大きくなり、リード角度A3は小さく、取り付け角度A2は大きくなる。また、リード角度A3を各爪部71〜74で変えることができるので、土壌への食い込みよさや耕起力などを各爪部71〜74に按分して条件設定することできる。したがって、爪部71〜74の面積やリード角度A3、取り付け角度A2を各種設定することで、多様な土壌に対して最適な耕耘条件を設定することができるようになる。
【0046】
図15及び図16は、図1〜図3に示す第1実施形態の1枚の平面基板20の代わりに、2枚の平面基板部品76,77を重ね合わせて用いた他の実施形態の耕耘爪78を示しており、第1実施形態と同様な機能の耕耘爪を提供することができる。この平面基板部品76,77では、回転軸を中心として点対称位置に1対の爪部76a,77aが形成されている。これら1対の平面基板部品76,77は、爪部76a,77aの取り付け方向がそれぞれ平面基板面に対して反対向きになっている。なお、幅を狭くしてリード角度を変えることにより、5角形や6角形やその他の多角形状の耕耘爪も同様にして重ね合わせて形成することができる。
【0047】
図17は、星型の平面基板80の一つ置きの各辺80a〜80dに対し、爪部81を折り曲げ形成した耕耘爪82を示している。この実施形態では、リード角度A3や爪部81の長さL3の変更が容易であり、多種多様な土壌に対応してピンポイント的に効率の良い耕耘爪を提供することができる。もちろん、不等辺星形の平面基板とすることもできる。
【実施例】
【0048】
以下、図4を参照して第1実施形態における実施例について説明する。
各部の寸法を下記のようにして耕耘爪10を構成した。
仮想円筒面27の直径D:280mm
爪部の耕耘幅W:60mm
爪部の取り付け角度A2:125°
爪部のリード角度A3:45°
【0049】
取り付ける耕耘機の大小にもよるが、本発明の耕耘爪10が用いられる最適な耕耘機は、ロータリーが走行輪も兼ねる小型のものであり、この場合の仮想円筒面の直径Dは、280mm以下が多い。なお、仮想円筒面の直径Dは、ロータリーにより走行を可能にする小型耕耘機の場合に、250mm以上300mm以下の範囲内が好ましい。
【0050】
爪部22A,22Bの耕耘幅Wは、例えば耕耘機の耕耘幅を600mmとし、中央の動力伝達部の耕耘不可幅100mmとすると、500mmが耕耘負担幅となる。これを4個の耕耘爪で分担するから、耕耘爪1個当たりの耕耘幅は125mmとなる。これに取り付け隙間5mmを考慮に入れると、実際の爪部の耕耘幅Wは、W=(125−5)/2=60mmとなる。
【0051】
爪部22A,22Bの爪部高さRは、(D/2)−(D/2)・cos 45°≒140−99=41(mm)である。したがって、取り付け角度A2は、90°+arctan(41/60)≒125°となる。本願の耕耘爪10は、土をよく耕起(掘り起こし)させ、土を反転させ、土を後方・側方に安定して良く飛ばすことである。したがって、爪の取り付け角度A2は、110°≦A2≦140°の範囲が良く、より好ましくは115°≦A2≦135°の範囲である。
【0052】
なお、爪部22A,22Bの取り付け角度A2は、110°未満にすると、爪部22A,22Bの展開幅Tが小さくなる。すなわち、爪部22A,22Bの面積が小さくなり、耕起土量が減少し好ましくない。また、側方への反転土量も減少し、好ましくない。また、爪部22A,22Bの取り付け角度A2が140°を超えると、爪部22A,22Bの展開幅Tが大きくなり、爪部の面積は増すが、耕耘土量、反転土量(後方、側方)ともに減少する。なお、この爪部22A,22Bの取り付け角度A2は平面基板が5角形や六角形などの場合には、当然のことながら、変更される。
【0053】
爪部22A,22Bのリード角度A3は、本実施形態のように正方形の場合には、45°となる。この他に、五角形の場合には54°となり、六角形の場合には60°、三角形の場合には30°となる。このリード角度A3は大きくなると、例えば90°近くになると、単に土を力F0でならすだけであり、耕耘する作用が弱くなり好ましくない。逆に、リード角度A3が小さくなり、例えば0°近くになると、爪先を横に滑らす力F0は最大となるが、半径方向の力が「0」となり、やはり耕耘する作用が弱くなる。爪のリード角度A3は、基本設計によりほぼ決まってくる値であり、土質、目的などにより、条件範囲内で決定される。リード角度A3の好ましい範囲は30°≦A3≦60°である。なお、リード角度A3が30°未満であると、爪部が取付フランジと干渉して好ましくない。また、60°を超えると耕耘効率が低下して好ましくない。
【符号の説明】
【0054】
A1 ずらし角度
A2 取り付け角度(折り曲げ角度)
A3 リード角度
10 耕耘爪
12 ロータリー耕耘機
14 回転軸
14a 取付フランジ
14b 取付ネジ孔
16 動力伝達部
20 平面基板
20a 第1面
20b 第2面
20c,20d,20e,20f 角部
22 爪部
21a,21b,21c,21d 辺
22,22A,22B 爪部
23 境界線(折り曲げ線)
24 取付部
26 取付孔
27 仮想円筒面
28 取付ネジ孔
29 円弧部外周縁
30 取付ネジ
31 楕円
32 ナット
34 延長部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘機の回転軸に、複数枚1組で回転方向に角度をずらして取り付けられる耕耘爪であって、
中心に前記回転軸への取付部が形成された多角形の平面基板と、
前記平面基板の外周各辺に、前記平面基板に対する取り付け角度A2を鈍角として、第1面及びこの第1面とは反対側の第2面のいずれかに向けて取り付けられ、回転方向先端が鋭角に形成されている平面の爪部とを備え、
前記回転軸の軸心を中心とする仮想円筒面に、前記爪部の円弧部外周縁が接するように、前記爪部の展開状態において該円弧部外周縁が前記仮想円筒面に対応する楕円弧で形成されており、
前記回転軸の軸心から見たときに、前記各爪部の円弧部外周縁によって円が形成されることを特徴とする耕耘爪。
【請求項2】
前記平面基板の第1角部を起点とし、前記回転軸を中心として前記起点から回転方向後方に向かって次の第2角部までの第1辺に、前記起点から該第1辺のほぼ中央部までの位置に、前記平面基板の第1面に対して前記取り付け角度A2で形成される第1爪部と、
前記第2角部を起点とし、前記回転軸を中心として前記起点から回転方向後方に向かって次の第3角部までの第2辺に、前記起点から該第2辺のほぼ中央部までの位置に、前記第1面とは反対側の面である第2面に対して前記取り付け角度A2で形成される第2爪部と、
以下、残りの各辺に対して、交互に形成され前記第1爪部と同じ形状の奇数順位爪部、及び前記第2爪部と同じ形状の偶数順位爪部とから、前記爪部が構成されていることを特徴とする請求項1記載の耕耘爪。
【請求項3】
前記爪部は、前記起点から前記円弧部外周縁が始まることを特徴とする請求項2記載の耕耘爪。
【請求項1】
耕耘機の回転軸に、複数枚1組で回転方向に角度をずらして取り付けられる耕耘爪であって、
中心に前記回転軸への取付部が形成された多角形の平面基板と、
前記平面基板の外周各辺に、前記平面基板に対する取り付け角度A2を鈍角として、第1面及びこの第1面とは反対側の第2面のいずれかに向けて取り付けられ、回転方向先端が鋭角に形成されている平面の爪部とを備え、
前記回転軸の軸心を中心とする仮想円筒面に、前記爪部の円弧部外周縁が接するように、前記爪部の展開状態において該円弧部外周縁が前記仮想円筒面に対応する楕円弧で形成されており、
前記回転軸の軸心から見たときに、前記各爪部の円弧部外周縁によって円が形成されることを特徴とする耕耘爪。
【請求項2】
前記平面基板の第1角部を起点とし、前記回転軸を中心として前記起点から回転方向後方に向かって次の第2角部までの第1辺に、前記起点から該第1辺のほぼ中央部までの位置に、前記平面基板の第1面に対して前記取り付け角度A2で形成される第1爪部と、
前記第2角部を起点とし、前記回転軸を中心として前記起点から回転方向後方に向かって次の第3角部までの第2辺に、前記起点から該第2辺のほぼ中央部までの位置に、前記第1面とは反対側の面である第2面に対して前記取り付け角度A2で形成される第2爪部と、
以下、残りの各辺に対して、交互に形成され前記第1爪部と同じ形状の奇数順位爪部、及び前記第2爪部と同じ形状の偶数順位爪部とから、前記爪部が構成されていることを特徴とする請求項1記載の耕耘爪。
【請求項3】
前記爪部は、前記起点から前記円弧部外周縁が始まることを特徴とする請求項2記載の耕耘爪。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2012−5445(P2012−5445A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145711(P2010−145711)
【出願日】平成22年6月26日(2010.6.26)
【出願人】(595172698)株式会社発研 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月26日(2010.6.26)
【出願人】(595172698)株式会社発研 (2)
【Fターム(参考)】
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