説明

耕耘爪

【課題】耕耘爪軸の逆回転による弾性体カバーの土除去作業を長期的に行うことが可能となる耕耘爪を提供する。
【解決手段】耕耘爪101は、縦刃部から横刃部にかけた回転方向と逆向きの湾曲の度合いを高くすることで、耕耘爪101の爪先である頂部Xと耕耘爪軸Oとの距離が近くなるように設計しており、度重なる耕耘作業を行った場合でも、爪先における摩耗の影響が低減されるようになることから、頭縁部160における曲線形状の部分を多く残す(維持する)ことが可能となる。このため、度重なる耕耘作業に伴い、耕耘爪101の摩耗が進行した状況であっても、耕耘爪軸の逆回転による弾性体カバーの土除去作業を長期的に行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ耕耘機の耕耘爪軸に装着される耕耘爪に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耕耘爪軸に装着された耕耘爪の回転動作により土を耕耘するロータリ耕耘機において、耕耘爪の回転動作が行われる耕耘部から飛散される土が、ロータリ耕耘機内部へ付着してしまうことの防止策として、土付着の抑止効果を有する弾性体カバーを耕耘部の上方を覆う上部カバーに配置した構成が知られている。
【0003】
そして、弾性体カバーに土が付着した場合に備え、弾性体カバーの上方にある上部カバーに予め切欠部を施しておき、その切欠部を介して、ユーザ自身が外側から弾性体カバーを叩くことで、弾性体カバーの内側(耕耘部側)に付着した土を落として除去することが可能な構成が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、ユーザ自身による土除去作業の手間を省くため、耕耘爪軸について、通常の耕耘作業を行う際の回転方向(以下、「正回転」という)とは異なる逆の方向への回転(以下、「逆回転」という)を行うことで、耕耘爪の爪先を弾性体カバーに意図的に接触させ、その接触に伴って弾性体カバーに発生する振動により、弾性体カバーに付着した土を落として除去することが可能な構成も提案されている(特許文献2)。
【0005】
この場合、耕耘爪には、一般的な耕耘性能としてのすき込み性を考慮して、耕耘爪軸に取り付けられる取付基部と、その取付基部から連続して延びる縦刃部及び横刃部とを有し、縦刃部から横刃部にかけて回転方向と逆向きに湾曲するとともに、横刃部が一方側に湾曲した形状のものが使用されており、横刃部の爪先を弾性体カバーに接触させることで、弾性体カバーに付着した土を落としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平2−12803号公報
【特許文献2】特願2011−52044号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、耕耘爪軸に装着された耕耘爪は、度重なる耕耘作業により摩耗し、特に、耕耘爪軸の正回転に伴って土面との接触が頻繁に行われる刃縁について、その刃縁全般に亘って、逐次減少を引き起こしてしまう。
【0008】
この結果、耕耘爪の爪先は、当初では土面に対向する刃縁部から土面に対向しない峰縁部に亘る曲線形状の部位(以下、「頭縁部」という)が滑らかに湾曲した形状となっているものの、刃縁部の摩耗が次第に進行すると、その摩耗の影響を受けて頭縁部の曲線形状の部分が徐々に少なくなり、加えて、刃縁部の摩耗によって形成されるライン(以下、「摩耗ライン」という)と頭縁部とによって角部が形成される。
【0009】
このため、弾性体カバーに付着した土を落とすために、耕耘爪軸の逆回転を行い、耕耘爪の爪先を弾性体カバーに意図的に接触させたときに、既に摩耗の影響を多大に受けて鋭くなった耕耘爪の爪先によって、弾性体カバーの表面にキズが付いてしまい、そのキズの部分を中心として土の付着を引き起こし、また、場合によっては、弾性体カバーの破損を招いてしまうといった問題があった。
【0010】
そこで本発明は、耕耘爪軸に装着された耕耘爪について、度重なる耕耘作業を経て摩耗が進行した場合であっても、爪先の形状が鋭くなることがなく、その結果、耕耘爪軸の逆回転による弾性体カバーの土除去作業を長期的に行うことが可能となる耕耘爪を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、正回転及び逆回転を行う耕耘爪軸に取付基部を取り付けられ、当該取付基部から連続して延びる縦刃部及び横刃部を有し、前記縦刃部から前記横刃部にかけて回転方向と逆向きに湾曲するとともに、前記横刃部が一方側に湾曲した耕耘爪において、前記縦刃部及び前記横刃部は、刃縁部と、前記刃縁部に対して略等間隔を維持しながら延びるとともに前記逆回転の方向側にある峰縁部と、を有しており、前記縦刃部における前記刃縁部の先端である縦刃縁先端位置を最下位置とするように、前記耕耘爪が前記耕耘爪軸に取り付けられた状態の側面視において、前記横刃部における前記峰縁部の先端である峰先端位置における接線は、略鉛直方向に延びていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の耕耘爪であって、前記横刃部は、前記耕耘爪の先端となる凸状の頂部を有するとともに前記刃縁部及び前記峰縁部を曲線状に滑らかに結ぶ頭縁部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耕耘作業が頻繁に行われ、耕耘爪の摩耗が進行した場合であっても、耕耘爪が折れ曲がる寸前まで、爪先の曲線形状を極力残す(維持する)ことができ、弾性体カバーに付着した土を除去することを目的として、耕耘爪軸により逆回転が行われた際にも、弾性体カバーにキズを付けることなく、効果的に土を落とし、除去することができる。
【0014】
このため、ユーザは、通常の耕耘作業を想定して耕耘爪の摩耗の状況を確認するだけでよく、爪先の形状を気にすること無く、耕耘爪軸の正回転及び逆回転に伴う作業を長期的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る耕耘爪が適用されるロータリ耕耘機を示す図である。
【図2】本発明に係る耕耘爪が適用されるロータリ耕耘機を示す図である。
【図3】本発明に係る耕耘爪が適用されるロータリ耕耘機を示す図である。
【図4】本発明に係る耕耘爪の形状を示す図である。
【図5】本発明に係る耕耘爪の形状を示す図である。
【図6】本発明に係る耕耘爪の摩耗の進行状態を示す図である。
【図7】本発明に係る耕耘爪の実際の形状について示す図である。
【図8】従来型の耕耘爪の実際の形状について示す図である。
【図9】本発明に係る耕耘爪と従来型の耕耘爪とを比較するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る耕耘爪が適用可能なロータリ耕耘機の実施の形態について、図1乃至図3を参照しながら説明する。
図1は、走行機体に牽引されるロータリ耕耘機について、走行機体の進行方向前方の斜め前方向から、ロータリ耕耘機を見た外観図である。
なお、ロータリ耕耘機10を牽引する走行機体の進行方向を「前方側」とし、走行機体の進行方向と反対側の方向を「後方側」と定義し、以下、説明していく。
【0017】
図1に示す通り、ロータリ耕耘機10は、トップマスト11と、2つのリンク連結部12とを備え、このトップマスト11及びリンク連結部12に対して、不図示の走行機体の3点リンクヒッチ機構(トップリンク及びロアリンク)が連結されて、昇降可能に走行機体に牽引される。
【0018】
そして、トップマスト11の下側には、ユニバーサルジョイント等(不図示)を介して、走行機体のPTO軸(動力伝達軸)から動力が伝達される入力軸18が備わっており、入力軸18は、ギアボックス13に連結されている。
さらに、ロータリ耕耘機10の幅方向に向けて、ギアボックス13から伝動フレーム14と支持フレーム15が架設されている。
【0019】
このため、走行機体のPTO軸から伝達された動力は、ユニバーサルジョイント等を介して入力軸18及びギアボックス13に伝達され、ギアボックス13において、動力の伝達方向及び回転速度が変化されて伝動フレーム14の内部を挿通する伝動シャフトに伝達される。
【0020】
また、伝動フレーム14の先端部にはチェーンケース16が垂下する形で固定され、支持フレーム15の先端にはチェーンケース16に対向するサポートアーム17が固定されている。
【0021】
そして、チェーンケース16とサポートアーム17との間に耕耘爪軸6が軸回りに回転自在に架設されるとともに、チェーンケース16の内部においては、伝動フレーム14の内部の伝動シャフトと耕耘爪軸6との間に亘ってチェーンが張架されているため、そのチェーンを通じて伝動フレーム14の内部の伝動シャフトの動力が耕耘爪軸6に伝達される。
【0022】
ここにおいて、耕耘爪7の回転により耕耘を行う耕耘部9の上方には、シールドカバー1を有しており、本実施形態においてシールドカバー1には、カバースリット2が施されている。
【0023】
次に、ロータリ耕耘機10について、走行機体の進行方向後方の斜め後方向から見た外観図である図2を参照して、実施の形態を更に説明する。
図2に示す通り、シールドカバー1の後側方向には、シールドカバー1に上下回動可能にエプロン3が連結されており、エプロン3を備えることで、耕耘部9の後方が覆われることとなり、加えて、エプロン3の後方の端部が耕耘地面と接触することで、耕耘地面の整地が可能となっている。
【0024】
そして、本実施形態において、エプロン3の後方の端部であって、耕耘地面と接触する部分には、土付着の防止効果を有する整地部材4が取り付けられており、この整地部材4が耕耘地面と直接接触することで、耕耘地面の整地が効果的に行える構成となっている。
【0025】
また、エプロン3にはエプロンスリット5が形成されており、そのエプロンスリット5を通して、エプロン3の後方の端部の下側に取り付けられている整地部材4を直視することができ、その整地部材4の露出によって外観性に優れた構成となっている。
【0026】
なお、本実施形態において整地部材4は、エプロン3の後方の端部の下側に取り付けられるとともに、後方末端部をエプロン3の後方の端部の上側に亘って回り込んで取り付けされており、この点においても外観性に優れた構成となっている。
そして、整地部材4の前方端部については、図示は省略するものの、ボルト等の締結部材により、エプロン3の内側面に接合される構成となっている。
【0027】
次に、本実施形態におけるシールドカバー1、エプロン3及び耕耘部9の詳細な構成について、ロータリ耕耘機10の側方断面図である図3を参照しながら説明する。
図3に示す通り、シールドカバー1と耕耘部9との間には、弾性体カバー20a〜20cが備えられ、いずれの弾性体カバーも、走行機体の進行方向の後方側の一端を締結部材(図中前方側から締結部材22a、締結部材22b、締結部材22c)によりシールドカバー1の内側に固定されるとともに、他端を進行方向の前方側に向かって自由に延在させて保持されている。
【0028】
また、エプロン3と耕耘部9との間には、弾性体カバー21a及び21bが備えられ、弾性体カバー21aについては、後方側の一端を締結部材(図中、締結部材23a)によりエプロン3の内側に固定されるとともに、他端を前方側に向かって自由に延在させて保持されている。
【0029】
そして、弾性体カバー21bについては、弾性体カバー21aをエプロン3の内側に固定している同一の締結部材(図中、締結部材23a)により、前方側の一端を固定され、他端を別の締結部材(図中、締結部材23b)によりエプロン3の内側に固定されている。
【0030】
さらに、本実施形態においては、図3に示す通り、弾性体カバー20bは締結部材22aを覆い、弾性体カバー20cは締結部材22bを覆う構成とされている。
そして、弾性体カバー21aは締結部材22cを覆い、弾性体カバー21bは締結部材23aから締結部材23bに亘ってエプロン3の内側を覆う構成としている。
【0031】
このことから、複数枚の弾性体カバーによって、シールドカバー1及びエプロン3の内側の大部分を覆うこととなり、耕耘作業時において、耕耘部9から飛散される土をシールドカバー1及びエプロン3に付着させてしまうことを大幅に抑制することができる。
【0032】
なお、耕耘作業時とは、エプロン3の後端部が土面に接触可能な位置であって、図中の下げ位置Dの位置にあるとともに、図中矢印Rの方向に向けて、耕耘爪7が回転(正回転)して耕耘作業を行っている最中のことを意味する。
【0033】
ここにおいて、耕耘部9に対して最も広く対向する弾性体カバー21aについては、耕耘作業を行うことで、他の弾性体カバーに比べて土付着が最も早く進行してしまい、加えて、弾性体カバーによって覆われていない締結部材23a及び締結部材23bについても、土付着が早く進行してしまう。
【0034】
ここで、本実施形態においては、シールドカバー1に対して、エプロン3が回転軸19を回転の中心として回転可能に連結されており、引上機構8によって、エプロン3をシールドカバー1に対して図中矢印Sの方向に向けて引き上げ、エプロン3の後端部を図中の上げ位置Uの位置に移動させることが可能となっている。
【0035】
そして、この場合、図3に示す通り、弾性体カバー21aの前方側の一端が、耕耘部9の内側であって耕耘爪7の回転半径Zの内側に侵入することとなる。
このため、エプロン3をシールドカバー1に対して引き上げた状態を維持したまま、図中矢印Fの方向に向けて耕耘爪7を回転(逆回転)させることで、耕耘爪7の爪先が弾性体カバー21aの一端に接触し、その接触に伴って弾性体カバー21aに発生する振動により、弾性体カバー21aに付着した土を落として除去することが可能となっている。
【0036】
さらに、弾性体カバー21aに振動が発生することにより、その振動が締結部材23a及び締結部材23bにも伝達され、締結部材23a及び締結部材23bに付着した土を落として除去する効果も奏する。
【0037】
次に、本発明に係る耕耘爪について、図4を参照しながら説明する。
図4(a)は、先述したロータリ耕耘機10の耕耘爪7として適用可能な本発明に係る耕耘爪101を示しており、その耕耘爪101の側面図を示すものである。
また、図4(b)は、図4(a)における耕耘爪101を下方向から見た部分底面図を示すものである。
【0038】
本発明に係る耕耘爪101は、図4(a)に示す通り、図面向かって横方向に、取付基部103、縦刃部105、横刃部107が順に形成されており、耕耘爪101の逆回転の方向である図中矢印Bの方向に向けて、緩やかに湾曲させた形状となっている。
【0039】
さらに、縦刃部105及び横刃部107は、曲線形状である刃縁部150と、刃縁部150に対して略等間隔を維持しながら延びる峰縁部170とを有し、加えて横刃部107は、刃縁部150と峰縁部170を曲線状に滑らかに結ぶとともに耕耘爪101の先端となる凸状の頂部Xを有する頭縁部160を有している。
【0040】
本発明に係る耕耘爪は、立ち上げ線Pから耕耘爪101の爪先に向けて、図面手前に向けて徐々に立ち上げて湾曲させた形状(以下、「立ち上げ形状」という)を有するものであって、図4(b)に示す通り、爪先に向けて略一定の曲率半径rで一側方に弯曲して、内側にすくい面109を形成しており、このすくい面109によって、土を耕耘するとともに土寄せも行うことが可能となっている。
【0041】
取付基部103には、取付孔104が長手方向に2箇所施されており、この取付孔104に締結部材を挿入して、先に図3にて示した通りに、耕耘爪軸6に装着されることとなる。
【0042】
そして、耕耘爪101は、耕耘爪軸6の中心位置(図中の点O)を中心として、最大回転半径Jを回転の半径として、図中矢印Aの方向に向けて正回転して、耕耘作業を行うこととなる。
【0043】
また、図4(a)において、二点鎖線で示す耕耘爪101の形状は、立ち上げ線Pによる立ち上げ形成した耕耘爪(3次元物体)を平面上に展開して2次元的に示した形状(以下、この形状を「仮想展開形状」という)であり、この仮想展開形状は、立上げ形成処理を行う前の耕耘爪材の形状である。
【0044】
上記仮想展開形状は、本発明に係る耕耘爪における特徴をより理解しやすくするために示すものであり、説明の便宜上、仮想展開形状における各縁部は、刃縁部150a、峰縁部170a、頭縁部160aとして示す。ここにおいて、仮想展開形状における刃縁部150aは、後述するように、公知の理想刃縁曲線(排絡曲線)に近似している。
【0045】
刃縁部150は、縦刃部105から横刃部107に亘って略一定の刃幅を有して形成されており、本実施形態においては片刃としているものの、両刃としてもよく、その場合、角度を異なるものにする構成や、等角とした構成でもよい。
【0046】
なお、耕耘作業時においては、耕耘爪101が図中矢印Aの方向に向けて正回転することで、縦刃部105側の刃縁部150から横刃部107側の刃縁部150にかけて、順に土面へ切り込みが行われることとなり、この耕耘作業を頻繁に行うことで、耕耘爪101の幅方向であって、刃縁部150から峰縁部170に向けて、耕耘爪101の摩耗が発生する。
【0047】
次に、本発明に係る耕耘爪の形状について、図5を参照しながら、より詳細に説明する。
一般的に、耕耘爪は、排絡曲線の排絡角α(耕耘爪の回転径方向と排絡曲線の接線とのなす角)が57.5度となる位置を縦刃部の先端部とし、取付基部の根元部で67.5度となるように極座標で求められた理想的な曲線を理想刃縁曲線として設計されるが、本発明に係る耕耘爪においても同様である。すなわち、図5(a)に示すように、本発明の耕耘爪101も、縦刃部105の縦刃縁先端位置Vの位置で排絡角が57.5度、取付基部103の根元部(図中VS)で排絡角(図中δ)が約67.5度となるような理想的な曲線に近似した形状の刃縁部150を有する。
なお、図5(a)は、縦刃縁先端位置Vが最下位置にあるときの取付状態側面図であるが、以下、この状態での側面図を単に取付状態側面図という。
【0048】
本発明に係る耕耘爪101は、立ち上げ線Pに基づいて立ち上げた形状としているのが特徴であり、このように構成することですきこみ作用を向上している。ここで、立ち上げ線Pは、縦刃縁先端位置V(すなわち、取付状態側面図における最下位置)における刃縁部150の接線Yに対する垂線(中心点Oを通る鉛直線Zと平行)に対して、角度βをもって傾斜させて設けられている。
この立ち上げ形状は、図5(b)に示すように、立ち上げ線Pを立ち上げ開始境界線として、半径rの円弧状になるようにして徐々に立ち上げられ、最終的に、立ち上げ角度θ、立ち上げ高さHLとなるように形成されている。
【0049】
本発明に係る耕耘爪101における刃先位置は、立ち上げ線Pを基準として任意の角度γ傾いた直線Uが、刃縁部150に接する位置を刃先位置Eとして設定している。
【0050】
刃縁部150の反対側には峰縁部170が形成されており、刃縁部150と峰縁部170はほぼ一定の間隔(刃幅)を維持しながら延びている。なお、このことは、二点鎖線で示す仮想展開形状における刃縁部150aと峰縁部170aとの形状関係から、より容易に判る。そして、刃縁部150と略等間隔を維持しながら延びる峰縁部170とは、複数の円弧を連続して形成した滑らかな曲線形状の頭縁部160(仮想展開形状では160a)により、連続している。この頭縁部160は、耕耘爪101の逆回転の方向である矢印Bの方向に向けて、凸状に形成されている。なお、ここで、刃縁部150と頭縁部160との結合位置は、通常、前述した刃先位置Eとほぼ同じ位置に設定するが、峰縁部170と頭縁部160との結合位置である峰先端位置Tは、諸条件を考慮して適宜決定される。
【0051】
図5(a)に示す通り、本発明に係る耕耘爪101は、峰先端位置Tにおける曲線状の峰縁部170の接線(図中Q)が、取付状態側面図において、略鉛直方向に延びた形状となっている。このように構成することにより、耕耘爪101の爪先である頂部Xと耕耘爪軸Oとの距離が近くなり、爪先における度重なる耕耘作業による摩耗の影響が低減されるようになっている。なお、頂部Xの位置と磨耗の影響の関係については後述する。
【0052】
さらに、本発明に係る耕耘爪においては、図5(a)に示すように、凸状に形成された曲線形状の頭縁部160の頂部Xを有するが、仮想展開形状におけるその頂部X及び回転中心点Oを結ぶ線分(以下「水平ラインW」という)は、縦刃縁先端位置Vにおける接線Yとは互いにほぼ平行な関係を有し、鉛直ラインZと水平ラインWとは、互いにほぼ垂直な関係を有するように構成することが好ましい。
【0053】
また、上記説明において、縦刃部の先端部である縦刃縁先端位置Vでの排絡曲線の排絡角α(耕耘爪の回転径方向と排絡曲線の接線とのなす角)が57.5度を理想としたが、本発明は、必ずしもこの角度に限定されるものではなく、排絡角αは55度〜60度の範囲であれば良く、取付基部の根元部(図中VS)における排絡角も67.5度に限定されず、若干の角度許容幅を有することは言うまでもない。
【0054】
次に、本発明に係る耕耘爪101を使用した場合における、摩耗の状況について、図6を参照しながら説明する。なお、図6は、説明の便宜上、立ち上げ形状のみを示した図である。
【0055】
先述した通り、耕耘爪101の摩耗は、刃縁部150から峰縁部170に向けて、耕耘爪101の幅方向に逐次減少を引き起こすこととなり、図6に示す摩耗ラインM1、M2、M3の順に進行することとなる。磨耗が進行するに従い、残存する爪の幅は元の幅W0の約3/4程度の幅であるW1、約半分程度のW2、約1/4程度のW3というように徐々に減少する。
【0056】
しかしながら、本発明に係る耕耘爪101においては、残存幅が約1/4程度になっても、頭縁部160には円弧状の縁部(図中WL)が形成されており、かつ、その頭縁部160の円弧状の縁部と摩耗ラインM3との交差する点に形成される角部は、鈍角であって鋭くない。このため、耕耘爪101を逆回転させて、爪先等でカバーを叩いて付着した泥土等をふるい落としても、カバーを傷つける恐れが無い。
【0057】
一般的に、爪幅が元の幅の15〜20%程度まで磨耗すると、爪が折損する恐れなどが生ずるため、前記程度になる前に爪は交換されるが、本発明による耕耘爪101を使用した場合には、爪が交換されるまで、逆回転による良好な泥落としが継続される。
【0058】
なお、図中の摩耗ラインM1〜M3は、仮想の曲線として数式等により算出されるものであり、トロコイド曲線に類似するとともに、耕耘爪の摩耗のシミュレーションとして、一般的に用いられているものである。
【0059】
次に、本発明に係る耕耘爪101の形状について、実際の寸法値等を参考に、図7(a)及び(b)を参照しながら説明する。
ここで、図7(a)にて実線及び二点鎖線で示す耕耘爪101は、図4(a)及び(b)にて示す耕耘爪101と同一のものである。
また、以下に説明する耕耘爪101に係る寸法値等は、実験値の一例であり、本発明に係る耕耘爪101の形状等の理解のために、参考情報として記載するものである。
【0060】
先ず、図7(a)に示す通り、本発明に係る耕耘爪101の刃縁部150と、耕耘爪軸6の中心位置(図中の点O)との距離は255mmであり、つまり、耕耘爪101の最大回転半径が255mmとなっている。
【0061】
さらに、図7(b)に示す通り、耕耘爪101の厚さは7mmであり、爪先に向けて立ち上げを開始する位置として、立ち上げ線Pを境に略一定の曲率半径(120mm)にて立ち上げ、最終的に立ち上げた角度(図中の傾斜ラインZL)が60°とされ、その立ち上げによる爪先の立ち上げの高さは115mmとなっている。
【0062】
なお、その他の寸法値として、図示は省略するものの、縦刃部105の先端部である縦刃縁先端位置Vにおける排絡角αは57.5度となっており、立ち上げ線Pについては、縦刃縁先端位置Vにおける刃縁部150の接線方向と垂直な方向から、19.9度傾斜させた形状となっている。
【0063】
次に、本発明に係る耕耘爪101との比較の対象として、従来の耕耘爪の一例である従来耕耘爪102の形状について、実際の寸法値等を参考に、図8(a)及び(b)を参照しながら説明する。
【0064】
ここで、図8(a)及び(b)にて実線及び二点鎖線で示す従来耕耘爪102は、図7(a)及び(b)にて示す本発明に係る耕耘爪101に対応して、その形状等を示すものである。
また、以下に説明する従来耕耘爪102に係る寸法値等についても、先述した耕耘爪101と同じく実験値の一例であり、従来耕耘爪102の形状等の理解のために、参考情報として記載するものである。
【0065】
先ず、図8(a)に示す通り、従来耕耘爪102の刃縁部150と、耕耘爪軸6の中心位置(図中の点O)との距離は255mmであり、従来耕耘爪102の最大回転半径が255mmとなっており、本発明に係る耕耘爪101と同じ寸法となっている。
【0066】
また、図8(b)に示す通り、従来耕耘爪102の厚さは7mmであり、爪先に向けて立ち上げを開始する位置として、立ち上げ線Pを境に略一定の曲率半径(120mm)にて徐々に立ち上げ、最終的に立ち上げた角度(図中の傾斜ラインZL)が60°とされ、その立ち上げによる爪先の立ち上げの高さは115mmとなっている点では、本願発明と同一である。
【0067】
なお、その他の寸法値として、図示は省略するものの、縦刃部105の先端部である縦刃縁先端位置Vにおける排絡角αは57.5度となっており、立ち上げ線Pについては、縦刃縁先端位置Vにおける刃縁部150の接線方向と垂直な方向から、19.9度傾斜させた形状となっている点でも、本願発明と同一である。
【0068】
次に、本発明に係る耕耘爪101及び従来耕耘爪102を用いて実際に摩耗が進行した状況について、寸法値等を参考に、図9(a)及び(b)を参照しながら説明する。
なお、図9(a)及び(b)においては、摩耗の進行状況の説明の便宜上、耕耘爪101及び従来耕耘爪102の立ち上げ形状を示して、各々説明する。
【0069】
また、摩耗の進行の状況については、耕耘爪101及び従来耕耘爪102の一般的な交換時期までの耕耘作業を行い、その実際の寸法値を測定し、参考としている。
この点について、当初の刃縁部150の位置から、峰縁部170に向けて、摩耗ラインM1、M2、M3の順に進行し、最も摩耗が進行した位置M3については、浸食が進行した距離が略30mmであり、この浸食の進行の距離30mmについて、一般的な交換時期の判断の基準とするものである。
【0070】
先ず、図9(a)及び(b)に示す通り、耕耘爪101及び従来耕耘爪102の摩耗は、耕耘爪101の幅方向であって、刃縁部150から峰縁部170に向けて進行することから、図7(a)及び図8(a)に示す当初の形状において、刃縁部150と峰縁部170との距離は50mmであったものが、摩耗が30mm進行して、刃縁部150と峰縁部170との距離が20mmとなったところがM3となる。
【0071】
ここで、図9(a)の本発明に係る耕耘爪101については、頭縁部160に対する摩耗ラインM3の位置は、図中の浸食点201となり、この浸食点201から峰先端位置Tまでの曲線形状(図中WL)が、従来と比べて多く残る(維持される)ことが確認できる。
【0072】
ここで、仮に、本発明に係る耕耘爪101の摩耗の状況に気付くことなく、交換作業を行うことなく耕耘作業を続けた場合であって、耕耘爪101が折れ曲がる寸前にまでなった状況についても、仮摩耗ラインKMを想定し、その仮摩耗ラインKMと峰縁部170との間隔を5mmと想定して説明する。
【0073】
この場合、頭縁部160に対する仮摩耗ラインKMの浸食の位置は、図中の浸食点202となり、この浸食点202から峰先端位置Tまでの曲線形状の部分が、従来と比べて多く残る(維持される)ことが確認できる。
【0074】
以上から、本発明に係る耕耘爪101は、実際に耕耘作業を頻繁に行い、一般的な耕耘爪101の交換が行われる時期まで摩耗を進行させた場合であっても、爪先の曲線形状を極力残す(維持する)ことができ、仮に、交換時期を過ぎてしまった場合であっても、爪が折れて曲がる寸前までについても爪先の曲線形状が維持されることが確認された。
【0075】
このため、耕耘作業を頻繁に行った場合であっても、爪が折れて曲がってしまう寸前まで、弾性体カバーに付着した土を除去することを目的として、耕耘爪軸6の逆回転により、弾性体カバーにキズを付けることなく、効果的に土を落とし、除去することができる。
【0076】
一方、従来耕耘爪102については、図9(b)に示す通り、頭縁部160に対する摩耗ラインM3の浸食の位置は、図中の浸食点301となり、この浸食点301から峰先端位置Tまでの曲線形状の部分(図中WL)が少なくなってしまうことに加え、浸食点301における形状が鋭くなってしまうことが確認できる。
【0077】
つまり、本発明に係る耕耘爪101と従来耕耘爪102とについて、耕耘爪の一般的な交換時期(摩耗刃縁からの浸食の距離が30mm)までの耕耘作業を行って比較したところ、従来耕耘爪102については、爪先における曲線形状が少なくなり、鋭い部分が発生してしまうものの、本発明に係る耕耘爪101については、爪先の曲線形状を極力残す(維持する)ことが確認できた。
【0078】
さらに、本発明に係る耕耘爪101においては、当初の刃縁部150の位置から峰縁部170までの摩耗の進行の距離であって、30mmの距離分浸食した後、さらに、耕耘作業を行った場合であっても、耕耘爪101が折れ曲がってしまう寸前まで、爪先の曲線形状を極力残す(維持する)ことが可能なことが確認できた。
【0079】
以上から、本発明に係る耕耘爪101は、耕耘作業が頻繁に行われ、耕耘爪101の摩耗が進行した場合であっても、耕耘爪101が折れる寸前まで、爪先の曲線形状を極力残す(維持する)ことができ、そのため、弾性体カバーに付着した土を除去することを目的として、耕耘爪軸6により逆回転が行われた際にも、弾性体カバーにキズを付けることなく、効果的に土を落とし、除去することができる。
【0080】
また、仮に、交換時期を過ぎてしまい、更に、耕耘作業を継続させてしまった状況においても、爪先の曲線形状を極力残す(維持する)ことができるため、爪が曲がって折れてしまう寸前まで、通常の耕耘作業、及び、耕耘爪軸6の逆回転に伴う土除去作業を行うことができる。
【0081】
つまり、ユーザは、通常の耕耘作業を想定して耕耘爪101の摩耗の状況を確認するだけでよく、爪先の形状を気にすることが無く、耕耘爪軸6の正回転及び逆回転に伴う作業を長期的に行うことができる。
【符号の説明】
【0082】
101 耕耘爪
103 取付基部
105 縦刃部
107 横刃部
150 刃縁部
160 頭縁部
170 峰縁部
M 摩耗ライン
J 最大回転半径
O 耕耘爪軸の中心点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
正回転及び逆回転を行う耕耘爪軸に取付基部を取り付けられ、当該取付基部から連続して延びる縦刃部及び横刃部を有し、前記縦刃部から前記横刃部にかけて回転方向と逆向きに湾曲するとともに、前記横刃部が一方側に湾曲した耕耘爪において、
前記縦刃部及び前記横刃部は、刃縁部と、前記刃縁部に対して略等間隔を維持しながら延びるとともに前記逆回転の方向側にある峰縁部と、を有しており、
前記縦刃部における前記刃縁部の先端である縦刃縁先端位置を最下位置とするように、前記耕耘爪が前記耕耘爪軸に取り付けられた状態の側面視において、前記横刃部における前記峰縁部の先端である峰先端位置における接線は、略鉛直方向に延びていることを特徴とする耕耘爪。
【請求項2】
前記横刃部は、前記耕耘爪の先端となる凸状の頂部を有するとともに前記刃縁部及び前記峰縁部を曲線状に滑らかに結ぶ頭縁部を有することを特徴とする請求項1に記載の耕耘爪。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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