説明

耳式体温計

【課題】測温対象者の体温を長時間期間中連続測定でき、安価で使い捨て可能であり、測温対象者の外耳道に確実かつ安定して装着でき、大幅に簡略化された校正(較正)を可能にした耳式体温計を得ること。
【解決手段】プローブは、ケーブルを介して測定装置と測温部とに結合されるほぼL字形円筒体のプローブボディ、プローブボディに結合される測温部を含む。測温部は、プローブボディに結合するフランジ部分、フランジ部分から延び、その内部にセンサミラーを嵌め込まれた先端部分を含む。センサミラーは、内部に凹形状反射面を有する円筒体ホルダ、円筒体ホルダから延びる連結軸、円筒体ホルダの前面空間にリード線で支持された測温用の第1センサおよび補正用の第2センサ、円筒体ホルダの前面を覆う保護カバーを含む。第1および第2センサを支持する各リード線は測温部およびプローブボディを貫通してケーブルに電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、測温対象者の体温を測定する温度計に関し、特に測温部を耳孔に挿入して鼓膜の温度を測る耳式体温計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の耳式体温計の代表例について、説明の便宜上、図17および図18を参照して説明する。図17は従来の耳式体温計の動作原理を示す概略構成図であり、図18は従来の耳式体温計の測温部の縦断面図である。図17に示すように、従来の代表的耳式体温計のプローブ10は、サーモパイル11を用いている。一般に、サーモパイルは、冷接点と温接点との間の温度差により電位差を生じる(ゼーベック効果)。サーモパイルを温度測定用プローブとして用いるためには、熱電対と同様に室温(環境温度)補償が必要となる。そのために、従来の耳式体温計では、サーミスタ12が用いられている。
【0003】
測温対象者の体温がサーモパイル11の冷接点温度と等しいとき、プローブ10の出力はゼロ(ゼロ点)となる。一方、測温対象者の体温がサーモパイル11の冷接点温度よりも高いとき、プローブ10の出力は非線形的に大きくなる。
【0004】
プローブ10を用いて体温を測定する場合、プローブ10の出力は微弱である。そのために、プローブ10の出力を信号増幅器13によって信号処理が可能なレベルまで増幅する。リニアライザ14aによって非線形出力を線形化する。一方、サーミスタ12の出力も非線形であるため、リニアライザ14bによって線形化する。
【0005】
環境温度が安定した状態では、サーミスタ12の温度とサーモパイル11の冷接点温度とは等しい。プローブ10からの出力を線形化した信号は、サーミスタ12の温度と測温対象者の体温との差となる。したがって、プローブ10の出力を線形化した信号を放射率補正器15によって補正し、その補正信号とサーミスタ12の出力を線形化した信号とを加算器16で室温補償または冷接点温度補償した後、温度換算器17で環境温度補正を行えば、測温対象者の体温が求められる。これを表示器18に表示する。
【0006】
サーモパイルは、個体差の感度のバラツキが大きいため、一定の温度差であっても出力電圧にバラツキを生じる。そのために、サーモパイルを用いたプローブに対する感度調整(校正作業)が個々に必要となる。サーモパイルの赤外線吸収膜(赤外線吸収膜と温接点とが一体となった部分、図18の116参照)は、測温対象者からの赤外線を吸収して温度が上昇するが、サーモパイルのパッケージからも赤外線吸収膜に対して赤外線は放射されている。通常の使用法では、パッケージはサーモパイルのヒートシンク(吸熱部)と同一の温度とみなせるが、外部からの要因により急激な温度変化が与えられると、パッケージの頭部とサーモパイルのヒートシンクとの間に温度差が生じ、プローブの出力は過渡的に不安定になる。
【0007】
そこで、図18に示すように、プローブ10に温度変化が均一で緩やかに加わるようにするために、サーモパイル110を熱伝導度がよい金属(例えば、アルミニウム)ホルダ111内に設置し、さらに断熱材として空気層112と樹脂113とで囲むようにカバー114を設けている。サーモパイル110の前面に金属管115を設け、測温対象者からの熱放射の影響を小さくする。金属管115は、赤外線の放射率を小さくするように金メッキが施され、導波管の働きを持たされている。冷接点温度補償用のセンサとして半導体、サーミスタ等が用いられる。しかし、サーミスタは、生産コストが安く、精度がよいために広く用いられている。
【0008】
サーモパイル冷接点部とサーミスタとの熱結合が悪いと、温度差を生じ、正確な計測ができなくなる。サーミスタ(図示せず)をサーモパイル110と同一パッケージ内に取り付け、サーモパイル冷接点部ヒートシンクとサーミスタとの熱結合度を高める。同一規格のサーミスタでもB常数(抵抗温度特性で任意の2点の温度から求めた抵抗値変化の大きさを表す定数)にバラツキがあるため、広い環境温度範囲で精度を保つのは困難である。例えば、電子体温計のサーミスタで人体の測定温度範囲を34−42℃とすると、サーミスタ精度は8℃の範囲内で精度を保つだけでよい。しかし、サーモパイルの環境温度範囲を5−40℃とした場合、サーミスタ精度は35℃(40−5=35)の範囲内で精度を保たなければならない。
【0009】
図18に示すプローブ10の構造では、環境温度上昇中にサーモパイル110とプローブ10の先端部間に温度差を生じ、測温部はサーモパイル110よりも温度が高くなるため、正方向の誤差を生じる。環境温度下降中では、サーモパイル110とセンサ先端部間に温度差を生じ、測温部はサーモパイル110よりも温度が低くなるため、負方向の誤差を生じる。この誤差を少なくするため、サーモパイル110をカバー114で囲み温度変化の影響を少なくしているが、金属ホルダ111の大型化は測温対象者との関係から限界がある。環境温度変化に対する誤差対策として、サーモパイル・パッケージ内のサーミスタの単位時間当たりの変化率を計算してプローブ出力を補正し、誤差を少なくしている。
そこで、本出願人は、先の特許出願(特願2005−071350号)において、短時間の環境温度変化による影響を排除し、環境温度変化による誤差を生じない耳式体温計を提案した。
【0010】
前記特許出願に係る耳式体温計は、樹脂製の第1断熱部材と、第1断熱部材の先端に接続された樹脂製の第2高断熱部材と、第1断熱部材および第2高断熱部材を覆う保護カバーと、第1断熱部材および第2高断熱部材内に埋め込まれたサーミスタリード細線と、ならびにサーミスタリード細線の先端折返し部分のほぼ中央に装着された超高速応答サーミスタとを含むプローブを備えている。
【0011】
前記特許出願に係る発明によれば、サーミスタが精度を保つ温度範囲は、測温対象者の体温範囲のみでよく、従来のサーモパイルを用いた耳式体温計のように、測定環境温度範囲全域においてサーミスタの測定精度を保つ必要がない。その結果、この特許出願に係る発明のプローブは環境温度の変化(短時間の温度変化)の影響を受けない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
耳式体温計においてサーモパイルセンサは小型化が難しいいためセンサ自身を外耳道に挿入する構造をとりにくいこと、センサとプローブ間に距離をおく方式の場合サフレームが大型となりプローブが大型化(図18)して連続測定方式のプローブに向かないなどの問題がある。
【0013】
慣用の耳式体温計は、短時間期間中の1回体温測定には適しているが、長時間期間中の連続体温測定には適していない。特殊な使用条件、例えば、手術中の被施術者の体温測定等においては、手術前の準備段階において十分な時間が取れるので、ある程度の立ち上がり時間(約10分程度)を無視できること、大きな相対温度および早い温度変化を無視できること(最大で10分間に1℃の温度変化を感知できればよい)、連続して測定する必要があること、環境温度が比較的安定していることなどの使用条件においては、現在普及している耳式体温計は高価で適切ではない。
【0014】
そこで、本発明の第1の課題は、測温対象者の体温を長時間期間中連続測定でき、しかも安価で使い捨て可能な耳式体温計を得ることにある。
【0015】
また、耳式体温計が測温対象者の外耳道に装着されたとき、接続コードからの外力によって装着位置が移動したり、外れたりすることがある。このような場合には、正確な体温測定ができない。
【0016】
本発明の第2の課題は、測温対象者の外耳道に確実かつ安定して装着できる耳式体温計を得ることにある。
【0017】
一般の耳式体温計では、校正作業が製品のコスト高をもたらしていた。本発明の第3の課題は、大幅に簡略化された校正を可能にした耳式体温計を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に基づく耳式体温計は、測定装置に連結されるプローブを備えている。プローブは、プローブボディ、プローブボディに結合された測温部を含む。プローブボディは、ほぼL字形円筒体に形成され、一端がケーブルを介して測定装置に接続され、他端が測温部に結合される。測温部は、プローブボディに結合するフランジ部分、フランジ部分から延びる先端部分を含み、先端部分の内部にセンサミラーが嵌め込まれる。センサミラーは、内部に凹形状反射面を有する円筒体ホルダ、円筒体ホルダの後方から延びる連結軸、円筒体ホルダの前面空間にリード線で支持された測温用の第1センサおよび補正用の第2センサ、円筒体ホルダの前面を覆う保護カバーを含む。第1センサおよび第2センサを支持する各リード線が測温部およびプローブボディを貫通してケーブルに電気的に接続される。プローブは単回使用の使い捨てでもよい。
【0019】
ここで、「前方」とは測温対象者側を言い、また、「後方」とは測定装置側を言う。以下、同様である。
【0020】
L字形円筒体に形成されたプローブボディは長辺部分と屈曲短辺部分とを有している。長辺部分が測温対象者の耳下方付近にそって延びかつ屈曲短辺部分が耳孔方向に向くようにプローブボディの輪郭が形成される。測温部の先端部分は測温対象者の外耳道にそうようにフランジ部分からほぼS字状に蛇行して延びている。この形状により、プローブを測温対象者に装着したとき、プローブが耳から脱落したり、ずれたりすることはない。プローブボディおよび測温部は断熱材料からなり、測温部の外面が抗アレルギ性材料で被覆されていることが好ましい。
【0021】
先端部分は、フランジ部分に対して中心からずれた位置でフランジ部分の中心線に関して所定の角度θ1で傾斜される。測温部のフランジ部分はプローブボディに結合する底面とおよび先端部分に連続する上面とを有する。上面は底面に関して所定の角度θ2で傾斜されている。
【0022】
第1センサミラーは、内部に凹形状反射面を有する比較的短尺の円筒体ホルダ、円筒体ホルダの後方から延びる連結軸、円筒体ホルダの前面に別個のリード線で支持された第1センサおよび第2センサ、円筒体ホルダの前面を覆う保護カバーを含む平行光集光型センサミラーである。
【0023】
第2センサミラーは、内部に凹形状反射面を有する比較的長尺の円筒体ホルダ、円筒体ホルダの後方から延びる連結軸、円筒体ホルダの前面に別個のリード線で支持された第1センサおよび第2センサ、円筒体ホルダの前面を覆う保護カバーを含む点光源集光型センサミラーである。円筒体ホルダの凹形状反射面は、素材表面のまま、鏡面仕上げ、金属箔貼付、または金属メッキのうちいずれかの処理が施されていることが好ましい。リード線を測温部前面からプローブボディ後方に案内するように、円筒体ホルダの前後端に切欠きが設けられ、連結軸に長手方向にそって複数のV溝が設けられることが好ましい。プローブボディの先端部分に連結基板が埋め込まれ、各センサからのリード線が連結基板の一端に接続され、ケーブルが連結基板の他端に接続されることが好ましい。円筒体ホルダの前面を覆う保護カバーは、ポリエチレン・フィルムであることが好ましい。
【0024】
第1センサおよび第2センサは、セラミック基板に堆積された薄膜サーミスタ、薄膜サーミスタの両側に付着された電極、電極に半田付けされたリード線、センサ上面全体に塗布された樹脂を含む。第1センサには赤外線の放射率が高く、赤外線を吸収し易い樹脂が塗布され、第2センサには赤外線を吸収し難い樹脂(例えば、2液硬化型エポキシ樹脂)が塗布されることが好ましい。このことにより第1センサおよび第2センサの示度差(温度差)がセンサの受けている赤外線の強さとしてとらえることができ、第1および第2センサと凹形状反射面の部分を赤外線センサと定義できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に基づく耳式体温計においては、プローブに使用されるサーミスタが精度を保つ温度範囲は、測温対象者の体温変化範囲のみでよく、従来のサーモパイルを用いた耳式体温計のように、測定環境温度範囲全域においてサーミスタの測定精度を保つ必要がない。比較的安定した環境温度の下では、長時間期間中の連続測定が可能となる。測温回路が単純化され、温度校正が簡略化され、プローブが小型化され、量産時の組立が容易になり、小型で安価な耳式体温計が得られる。従って、本発明に基づく耳式体温計は使い捨てが可能になり、測温対象者の耳への装着が安定確実になるので、特に手術中の被施術者の体温測定に最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1〜16を参照して、本発明に基づく耳式体温計の実施例について説明する。図1は本発明に基づく耳式体温計を備えた測定装置の概略説明図であり、図2は図1の測定装置の概略構成線図である。図1に示すように、本発明に基づく耳式体温計1は、プローブ2、ケーブル3、プローブコネクタ4、測定装置5、ケーブル6からなる。ケーブル3の一端はプローブ2のプローブボディ21(図3参照)に接続され、また、ケーブル3の他端はプローブコネクタ4に接続される。プローブコネクタ4は測定装置5に着脱自在に連結される。ケーブル6の一端は測定装置5に接続され、また、ケーブル6の他端は温度プラグ7に接続される。温度プラグ7は表示装置8に着脱自在に連結される。
【0027】
プローブ2の測温部22(図3参照)は、図15、16に示すように、測温対象者9の耳孔9aに装着される。
【0028】
図2を参照して、測定装置5の概略構成を説明する。測定装置5の主な構成要素は、AD変換器51、差動増幅器52、制御信号処理回路53、抵抗値出力回路54、スイッチ群55(スイッチS1、S2、S3)、スイッチング・ライン群56(SL1、SL2、SL3)、抵抗群57(R1、R2、R3、R4)を含む。
【0029】
プローブ2は、ケーブル3、プローブコネクタ4を介して測定装置5に連結される。プローブ2は、後述する第1センサ25、第2センサ26を備えている。センサ25、26は、後述するように、サーミスタからなる。抵抗R3、R4は図2ではプローブコネクタ4内に設けられているが、それらは測定装置5に設けられてもよい。プローブコネクタ4は、図示されていないが、慣用のカードエッジ式コネクタが好ましい。このカードに、後述する校正(較正)値等の個別情報が記録される。
【0030】
プローブ2の第1センサ25および第2センサ26の検出信号がAD変換器51および差動増幅器52に入力される。AD変換器51は制御信号処理回路53および差動増幅器52に接続され、制御信号処理回路53は抵抗値出力回路54に接続される。制御信号処理回路53からはデジタル信号が出力され、抵抗値出力回路54からはアナログ信号が出力される。制御信号処理回路53はスイッチング・ライン群56を介してスイッチ群55に接続される。スイッチ群55は差動増幅器52に接続される。
【0031】
第1センサ25および第2センサ26からの微少温度差信号を容易に検出できるようにするために、AD変換器51には高精度高分解能を持たせることが好ましい。抵抗R1、R2、R3、R4は高精度抵抗である。VrefはAD変換器51の基準電圧であって、AD変換値のフルスケール値である。
【0032】
測定装置5を用いて行う校正(較正)操作については、後述する実施例1において説明する。
【0033】
本発明に基づく耳式体温計1のプローブ2は、図3〜6に示すように、プローブボディ21、プローブボディ21に連結された測温部22、プローブボディ21の外側にそって設けられたタブ23を含む。プローブボディ21は、長辺部分211と屈曲短辺部分212からなるほぼL字形に屈曲した円筒体に形成される。長辺部分211が測温対象者9の耳孔9aの下方から顔面こめかみ付近にそって延び、屈曲短辺部分212が測温部22の後述するフランジ部分221に結合する。この概略L字形形状は、測温部22の先端部分222を測温対象者9の耳孔9a内で鼓膜9b側に向けると共に、装着時にプローブボディ21が耳介から脱落または耳介上で回転しないようにする(図15、16参照)。プローブボディ21の下端からは後述する第1センサ25および第2センサ26のリード線246とプローブコネクタ4とを接続するケーブル3が延びている。タブ23は、プローブ2を測温対象者9の耳孔9aに着脱する際に作業を容易にするために設けられている。
【0034】
測温部22は、プローブボディ21の屈曲短辺部分212に結合するフランジ部分221、フランジ部分221から延びる先端部分222を含む。図16に示すように、フランジ部分221は耳孔9aの入口を閉じるように形成され、また、先端部分222は外耳道の複雑な形状に合わせるように形成される。さらに詳細に言えば、先端部分222は、その長手方向に概略S字形状に蛇行して延び(図3、6)、また、フランジ部分221に対して中心からずれた位置でフランジ部分221の中心線221Cに関して所定の角度θ1(約15〜20度)で傾斜されている(図5)。さらに、図4に示すように、測温部22のフランジ部分221はプローブボディ21に結合する底面221aと、先端部分222に連続する上面221bとを有し、上面221bは底面221aに関して所定の角度θ2(約5〜10度)で傾斜されている。
【0035】
プローブ2を構成するプローブボディ21、測温部22、タブ23、センサミラー24a、24bは断熱性材料から作られる。測温部22は、測温対象者9のアレルギ体質を考慮して、エラストマまたはシリコンゴムで被覆することが好ましい。
【0036】
プローブ2の寸法関係は、一例として、次のとおりである。図4に示すように、測温部22の先端部分222の長さLを10mm、先端直径d3を6.5mm、根本直径d2を7.5mm、フランジ部分221の基部直径d1を16〜17mmとしている。外耳道入口から鼓膜までの距離は個人差が比較的に少ないが、安全を取って長さLを10mmにしている。プローブ先端から鼓膜までは7〜10mm程度となる。先端部分222の先端直径d3は、センサの性能向上の観点からは可能な限り大きい方がよい。しかし、外耳道が大きく変化する「第2カーブ」周辺に測温部22の先端部分222が位置する(図16参照)ことから、測温対象者9に苦痛を与えない範囲内でできるだけ大きく設定している。測温部22のフランジ部分221は装着時の安定性を決定する。そこで、外耳道入口に合わせて先端直径d3よりも大きな根本直径d2および基部直径d1としている。
【0037】
フランジ部分221は、外耳道入口周辺部分に相当する。この部分の大きさは装着時の安定性に大きく影響を及ぼす。そこで、耳介の比較的小さな人を考慮して、フランジ部分221の基部直径d1を16〜17mmとし、フランジ部分221の底面221aに関する上面221bの傾斜角度θ2を5〜10度としている。フランジ部分221の上面221bに対する先端部分222の取付け位置および傾斜角度θ1は、外耳道の複雑な形状に合わせた複雑な形状にすべきではあるが、加工が困難であるので、代表寸法を採用している。
【0038】
前述したように、本発明に基づく耳式体温計1のプローブ2は、プローブボディ21、測温部22、タブ23を含む。測温部22は、フランジ部分221、先端部分222を含む。図6、7に示すように、測温部22の先端部分222の内部に第1センサミラー24aまたは第2センサミラー24bが嵌め込まれる。第1センサミラー24aは、図8に示す平行光集光型センサミラーである。第2センサミラー24bは、図9に示す点光源集光型センサミラーである。各センサミラー24a、24bは、各センサ25、26の組付け作業を容易にするために、測温部22とは別部品としている。
【0039】
第1センサミラー(平行光集光型センサミラー)24aは、図8に示すように、内部に凹形状反射面241を有する比較的短尺の円筒体ホルダ242a、ホルダ242aの後方から延びる連結軸245、ホルダ242aの前面にリード線246で支持された後述する第1センサ25および第2センサ26、ホルダ前面を覆う保護カバー27を含む。第2センサミラー(点光源集光型センサミラー)24bは、図9に示すように、内部に凹形状反射面241を有する比較的長尺の円筒体ホルダ242b、ホルダ242bの後方から延びる連結軸245、ホルダ242bの前面にリード線246で支持された後述する第1センサ25および第2センサ26、ホルダ前面を覆う保護カバー27を含む。第2センサミラー24bは、第1センサミラー24aとほぼ同一の構造であるが、円筒体ホルダ242bが第1センサミラー24aの円筒体ホルダ242aよりも長く前方に伸長しかつ第1センサ25および第2センサ26がそれに伴って前方に配置されている点が相違している。
【0040】
各センサミラー24a、24bの反射面241は、素材の鏡面仕上げのままにするか、さらにその上に金属(例えば、アルミニウム)箔を貼り付けるか、ニッケルメッキを施すことが好ましい。
【0041】
第1センサミラー(平行光集光型センサミラー)24aは、円筒体ホルダ242aの前面の平行光をセンサ25、26に集光する。第2センサミラー(点光源集光型センサミラー)24bは、鼓膜想定位置の点光源からの光を集光する。保護カバー27は、放射エネルギ損失を抑え、センサ25、26を保護する材料であればよい。例えば、厚み0.015mmのポリエチレン・フィルムが好ましい。保護カバー27は、センサミラー24a(24b)の円筒体ホルダ242a(242b)の外周面と測温部22の先端部分222の穴内周面との間に一部が押し込まれて固定される。
【0042】
第2センサミラー(点光源集光型センサミラー)24bの具体的構造を図10に示す。円筒体ホルダ242bの前後端には切欠き242dが設けられ、また、連結軸245には長手方向にそってV溝245gが4本設けられている。各センサ25、26に接続しているリード線246は、切欠き242dおよびV溝245gを通り、後述するように、フランジ部分221内で、ケーブル3に電気的に接続される。第1センサミラー24aについても同様である。
【0043】
図6、7に示すように、各センサ25、26から延びるリード線246は、プローブボディ21の先端に埋め込まれた連結基板213に接続される。ケーブル3の一端が基板213に接続される。
【0044】
示度試験の結果、プローブ2の示度は外気温度によって影響を受けることがわかった。そこで、測温用のセンサ(第1センサ25)の外に別のセンサ(第2センサ26)を設けて、外気温度の影響を補正する。
【0045】
第1センサ25および第2センサ26には、小熱容量、高熱感受性、高赤外線反応温度上昇率等の特性を備えたサーミスタ素子が適している。例えば、東京都墨田区に所在する石塚電子株式会社から市販されている薄膜サーミスタが好適である。この薄膜サーミスタは、例えば、長さ0.4mm、幅0.1mm、厚み0.2mmの寸法である。この薄膜サーミスタ251は、図11−13に示すように、セラミック基板252(例えば、長さ0.6mm、幅0.3mm、厚み0.2mm)上に堆積される。セラミック基板252上で薄膜サーミスタ251の両側にある電極253にリード線246(図8、9参照)が半田付けされる(図13)。センサ上面全体に樹脂を塗布して薄膜サーミスタ251および電極253を絶縁保護することが好ましい。
【0046】
測温用の第1センサ25は、図14に示すように、センサミラー24a(24b)の反射面241の集光点に配置される。外気温度補正用の第2センサ26は、集光点から外れた位置に配置される。各センサ25、26は、リード線246によって反射面241の前方空間に片持ち式に支持される。第1センサ25には、赤外線の放射率が高く(赤外線を良く吸収し発熱する)、赤外線により発生した熱を発散し易い樹脂(例えば、黒色熱硬化性のエポキシ樹脂)が塗布される。第2センサ26には、赤外線を吸収し難い樹脂(例えば、2液硬化型エポキシ樹脂)が塗布される。
【0047】
第1センサ25のリード線246の直径(例えば、0.05mm)を第2センサ26のリード線246の直径(例えば、0.08mm)よりも細くし、第1センサ25のリード線246の熱抜けを第2センサ26のリード線246よりも低くし(保温性を高め)、両センサ間の示度差を大きく設定する。
【0048】
第1センサ25および第2センサ26を同時に温度校正(較正)する。この校正のさいには、赤外線による影響がない状態で校正をしなければならない。センサ25、26をセンサミラー24a(24b)に組み込んだときに赤外線の影響下で校正されていると示度差が小さくなる。最もよい校正方法は、液体中に埋没させて行うことであるが、しかし量産に適さないので、温度制御されたアルミニウム板でセンサ25、26を挟む方法を採用する。赤外線の影響を極力避けるために、アルミニウム板の表面に白アルマイト処理を施す。
【0049】
温度校正は、2点温度による校正とする。第1センサ25は未校正のままとし、第2センサ26は第1センサ25の示度に対する校正と温度に対する校正とする。両センサ間の示度差を取得するときに、校正の計算誤差が少なくなるように、一方に合わせることにした。
【実施例1】
【0050】
(1)測定装置の操作
前述した図2に示す測定装置5を用いて、測温対象者9の体温を測定する。まず、プローブコネクタ4を測定装置5に接続し、温度プラグ7を表示装置8に接続する。
【0051】
a)オフセット校正(較正)
スイッチ群55のスイッチS1をオン、スイッチS2およびS3をオフにする。AD変換を実行し、オフセット値を求める。抵抗R1、R2が既知であるから、AD入力値が既知となる。AD変換値とAD入力値との差は、差動増幅器52およびAD変換器51のオフセット誤差である。オフセット校正時のAD変換器入力V1は、R2/(R1+R2)×Vrefとなる。高精度AD変換器の場合、測定毎にセルフキャリブレーションが行われるため、AD変換器のオフセット誤差は無視してよい。従って、オフセット誤差は実質的に差動増幅器52に起因する。
【0052】
b)第1センサ25の測定
スイッチS2をオン、スイッチS1およびS3をオフにする。AD変換を実行し、AD変換値を求める。第1センサ25の測定時のAD変換入力V2は、R3/(R3+RTh1)×Vrefとなる。ただし、RTh1は、任意の温度における第1センサ25の抵抗値である。
【0053】
c)第2センサ26の測定
スイッチS3をオン、スイッチS1およびS2をオフにする。AD変換を実行し、AD変換値を求める。第2センサ26の測定時のAD変換入力V3は、R4/(R4+RTh2)×Vrefとなる。だだし、RTh2は任意の温度における第2センサ26の抵抗値である。
【0054】
d)第1センサ25と第2センサ26とのAD変換値差
第1センサ25のAD変換値からオフセット校正で求めたオフセット値を引く。この値と第1センサ25と第2センサ26とのAD変換値の差の関係から、測定しようとする目標点の温度を求める。測定された温度データは、信号処理回路53からデジタル信号として出力され、また、抵抗値出力回路54からアナログ信号が出力される。アナログ信号はセンサ(サーミスタ)入力の温度計や表示器に接続可能にするためである。ここで対象とするのは標準的サーミスタであって、広く普及した抵抗温度特性のサーミスタである。
【0055】
測定された温度データをMCU内部演算で温度をサーミスタ抵抗値に変換し抵抗値出力回路54に出力する。
【0056】
測定装置5は、測定対象温度を長時間期間中連続的に測定することを目的とし、その操作手順は、(1)校正、(2)第1センサ25の測定、(3)第2センサ26の測定、(4)測定温度計算、(5)温度データ出力となる。前記の操作手順(1)−(5)を連続的に繰り返す。
【0057】
(2)サーミスタ・センサの放射校正(較正)
一定温度に設定した黒体炉(模擬耳孔形状)にプローブ2を挿入し、示度差(赤外線)と相対温度とを取得した。
【0058】
示度差(X)と相対温度(Y)との関係をグラフに現すと、その曲線は非線形で4次の多項式によく合致する。これは、サーモパイルの出力特性によく合致する。相対温度(X)が1℃以内のとき、示度差(Y)0.001℃当たりの相対温度(X)は0.005〜0.01℃であった(個体差はある)。
【0059】
製品の誤差を±0.1℃、校正後の示度の誤差を±0.05℃と設定する。校正時の誤差として±0.03℃、分解能(ハードウエア)誤差として±0.02℃と設定すると、サーミスタ回路(AD変換能力を含む)の分解能は最低0.002℃が必要である。
従来の耳式体温計では、短時間期間中の1回測定を基本としているので、サーモパイルが計測しなければならない相対温度は25℃以上を必要とした。従って、校正値は、サーモパイルの非線形出力を直線化できる4次多項式またはテーブルを持たなければならなかった。しかし、本発明に基づく耳式体温計においては、示度安定後の連続測定(長時間期間中連続測定)を基本としており、密閉空間を作り出すので、センサ自体の温度は測定対象である鼓膜およびその周辺組織と非常に近くなり、相対温度としては最大2℃程度が正確に計測できればよいことになる。
【0060】
従って、赤外線による示度差は非線形出力の4次多項式となるが、示度安定後の精度を±0.1℃と設定した場合、相対温度の少ない部分の1℃程度までの直線式または最大2℃までの二次式によって校正することで、±0.05℃の精度内で校正することが可能である。
【0061】
(3)温度ドリフトの校正(較正)
1回測定(短時間期間中1回測定)を基本とする耳式体温計であれば、10−40℃程度の環境温度に対応するために、環境温度別の校正値として多項式またはテーブルを持つか、またはドリフトに対応する補正式を持つ必要があった。
【0062】
本発明に基づく耳式体温計においては、この温度ドリフトを起こす環境温度は、装着される耳内温度となり、最大30〜40℃の範囲である。測定の結果、環境温度1℃当たり±0.004℃であり、ドリフトに対応しなくとも、示度の誤差は±0.05℃以内である。
【0063】
示度が安定するまでの立ち上がり時間は、直線式で校正した場合(10分後の示度を最終到達示度として±0.1℃以内に到達する時間)、黒体炉では5分、人体では個人差はあるが5−10分となる。これを2次式の校正で行うと約半分の時間で到達する。
【0064】
このことは、製造時の校正時間に大きく影響を及ぼす。校正式が単純であるほど、時間が短くなり(測定点が少なくてすむ)、安定時の誤差も少なくできる。
【実施例2】
【0065】
センサミラーの示度特性
前述した2種類のセンサミラーについて示度特性を評価した。評価対象の1つは、平行第1センサミラー(平行光集光型センサミラー)24aであり、他の1つは第2センサミラー(点光源集光型センサミラー)24bである。
【0066】
約25℃、無風状態の良好環境において、本発明に係る耳式体温計を人体に使用した。第1センサミラー(平行光集光型センサミラー)24aは、他部位の体温との差に個人差が出難い。第2センサミラー(点光源集光型センサミラー)は、個人差が出易い。
【0067】
環境温度を下げたり、風を当てたりした状態で、同様の試験を行った。試験対象者の皮膚温度が下がり、それにつれて示度が低くなった。第1センサミラー24aでは示度低下が顕著に起きた。これは、雰囲気温度が皮膚温度に大きく影響されるためであろうと考えられる。第2センサミラー24bではこの傾向が少なく、測温対象者によってはまったく低下しない場合もあった。このことから、第1センサミラー24aは、耳孔のより深い位置の温度を検出できることがわかった。
【0068】
第1センサミラー24aよりも第2センサミラー24bにおいて低くなる測温対象者(センサを鼓膜方向に向けられないか、または鼓膜までの距離が長い人体特徴を有する者)の場合でも、第2センサミラー24bでは低くならずに測定できた。
【0069】
プローブの最適化または専用化ができる場合であれば、第2センサミラー24bが断然よいことがわかる。個人差が大きく、これを吸収できない場合であれば、第1センサミラー24aが好ましい。
【0070】
一般に、耳孔の構造は、年齢、性別、人種によって異なる。子供の耳孔は、大人の耳孔に比べて鼓膜までの距離が短く、比較的真直であるので、第2センサミラー24bが適している。大人の場合、白人系は耳孔が比較的真直であるので、第2センサミラー24bが適している。一方、日本人等のモンゴロイド系は耳孔の曲がりが大きく、個人差が出易いので、第1センサミラー24aが適している。第1センサミラー24aと第2センサミラー24bとの間に様々な中間型センサミラーを設けることによって、個人差に対応できると考えられる。
【実施例3】
【0071】
他製品との比較
本発明に係る耳式体温計を既存の鼓膜用温度プローブ(サーミスタ)と比較した。比較例は、下記のとおりである。
比較例1: 小さなセンサを鼓膜に直接接触させるプローブ(接触型)
比較例2: 緩衝材でセンサを包み、鼓膜に直接接触させるプローブ(接触型)
比較例3: 緩衝材でセンサを包み、鼓膜に接触させないプローブ(非接触型)
比較例4: サーモパイル使用の耳式体温計
【0072】
手術中の温度管理において、臨床的に中枢温度の絶対値がわからなければならない場合は少ない。手術中は、必ずしも絶対温度を監視しているのではなく、温度変化を捉えることが主体となっており、そのときの示度が中枢温度に近い。このことから考えると、比較例1が最も適しているが、鼓膜へのダメージが大きく、その対策を講じるのが容易ではない。従って、比較例1はほとんど使用されていない。比較例2は鼓膜へのダメージの危険性は依然として残っており、計測される示度は空洞内温度となってしまう。
【0073】
比較例3では、示度に1〜2℃の差が出る。これまでの実験から、単にセンサ直近の外耳道温度を計測しているに過ぎず、個人差、環境差に対応できないばかりではなく、中枢温度の変化を捉え難い。
【0074】
比較例4では、自己温度の変化を捉え難く、連続的に安定した示度を得られ難い。
【0075】
一方、本発明に係る耳式体温計では、比較例1〜3に比べて、鼓膜との接触はなく、鼓膜に与えるダメージの危険性は皆無である。耳道温度より先の鼓膜およびその周辺温度を計測でき、中枢温度の変化を追うことができる。また、比較例4に比べて、小型安価であり、様々な個人差の対象者に使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の耳式体温計は、人間のみならず、動物にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に基づく耳式体温計を備えた測定装置の概略説明図である。
【図2】図1の測定装置の概略構成線図である。
【図3】本発明に基づく耳式体温計の斜視図である。
【図4】本発明に基づく耳式体温計の側面図である。
【図5】図4のV−V線から見た耳式体温計の平面図である。
【図6】本発明に基づく耳式体温計を構成するプローブの一部破断側面図である。
【図7】図6と同様な図面の一部であって、プローブの別の実施例を示す。
【図8】本発明に基づくプローブを構成するセンサミラーの縦断面図である。
【図9】図8と同様な図面であって、センサミラーの別の実施例を示す。
【図10】図9に示すセンサミラーの各種図面であって、(A)図は斜視図、(B)図は側面図、(C)図は(B)図の右側正面図、(D)図は(B)図の左側背面図である。
【図11】本発明に基づくプローブを構成するセンサの平面図である。
【図12】図11の側面図である。
【図13】図11と同様な図面であって、センサにリード線を固定した状態を示す。
【図14】図8のXIV−XIV線から見たセンサミラーの正面図であって、各センサの取付け位置を示す。
【図15】本発明に基づく耳式体温計のプローブを測温対象者の耳に装着した状態を示す外観図である。
【図16】本発明に基づく耳式体温計のプローブを測温対象者の耳孔内部に装着した状態を示す説明図である。
【図17】従来の耳式体温計の動作原理を示す概略構成図である。
【図18】従来の耳式体温計の測温部の縦断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 耳式体温計 2 プローブ
3、6 ケーブル 4 プローブコネクタ
5 測定装置 7 温度プラグ
8 表示装置 9 測温対象者
9a 耳孔 21 プローブボディ
22 測温部 23 タブ
24a 第1センサミラー 24b 第2センサミラー
25 第1センサ 26 第2センサ
27 保護カバー 51 AD変換器
52 差動増幅器 53 制御信号処理回路
54 抵抗値出力回路 55 スイッチ群
56 スイッチング・ライン群 57 抵抗群
211 長辺部分 212 屈曲短辺部分
213 連結基板 221 フランジ部分
222 先端部分 221a 底面
221b 上面 221C 中心線
241 凹形状反射面 242a 円筒体ホルダ
242b 円筒体ホルダ 242d 切欠き
245 連結軸 245g V溝
246 リード線 251 薄膜サーミスタ
252 セラミック基板 253 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置に連結されるプローブを備えた耳式体温計において、
前記プローブは、プローブボディと、該プローブボディに結合された測温部とを含み、
前記プローブボディは、ほぼL字形円筒体に形成され、一端がケーブルを介して前記測定装置に接続され、他端が前記測温部に結合され、
前記測温部は、前記プローブボディに結合するフランジ部分、フランジ部分から延びる先端部分を含み、前記前記先端部分の内部にセンサミラーが嵌め込まれ、
前記センサミラーは、内部に凹形状反射面を有する円筒体ホルダ、該円筒体ホルダの後方から延びる連結軸、前記円筒体ホルダの前面空間にリード線で支持された測温用の第1センサおよび補正用の第2センサ、前記円筒体ホルダの前面を覆う保護カバーを含み、
前記第1および第2センサを支持する各リード線が前記測温部および前記プローブボディを貫通して前記ケーブルに電気的に接続されている、
耳式体温計。
【請求項2】
L字形円筒体に形成された前記プローブボディは長辺部分と屈曲短辺部分とを有し、前記長辺部分が測温対象者の耳下方付近にそって延びかつ前記屈曲短辺部分が耳孔方向に向くように前記プローブボディの輪郭が形成され、前記測温部の先端部分は測温対象者の外耳道にそうように前記フランジ部分からほぼS字状に蛇行して延びている、請求項1に記載の耳式体温計。
【請求項3】
前記プローブボディおよび測温部は断熱材料からなり、前記測温部の外面が抗アレルギ性材料で被覆されている、請求項1に記載の耳式体温計。
【請求項4】
前記先端部分は、前記フランジ部分に対して中心からずれた位置で該フランジ部分の中心線に関して所定の角度θ1で傾斜され、前記測温部の前記フランジ部分は前記プローブボディに結合する底面とおよび前記先端部分に連続する上面とを有し、該上面は前記底面に関して所定の角度θ2で傾斜されている、請求項2に記載の耳式体温計。
【請求項5】
前記センサミラーは、内部に凹形状反射面を有する比較的短尺の円筒体ホルダ、該円筒体ホルダの後方から延びる連結軸、前記円筒体ホルダの前面に別個のリード線で支持された第1センサおよび第2センサ、前記円筒体ホルダの前面を覆う保護カバーを含む平行光集光型センサミラーである、請求項1に記載の耳式体温計。
【請求項6】
前記センサミラーは、内部に凹形状反射面を有する比較的長尺の円筒体ホルダ、該円筒体ホルダの後方から延びる連結軸、前記円筒体ホルダの前面に別個のリード線で支持された第1センサおよび第2センサ、前記円筒体ホルダの前面を覆う保護カバーを含む点光源集光型センサミラーである、請求項1に記載の耳式体温計。
【請求項7】
前記円筒体ホルダの凹形状反射面は、素材表面のまま、鏡面仕上げ、金属箔貼付、または金属メッキのうちいずれかの処理が施されている、請求項5または6に記載の耳式体温計。
【請求項8】
前記各センサからのリード線を測温部前面からプローブボディ後方に案内するように、前記円筒体ホルダの前後端に切欠きが設けられ、前記連結軸に長手方向にそって複数のV溝が設けられた、請求項5または6に記載の耳式体温計。
【請求項9】
前記プローブボディの先端部分に連結基板が埋め込まれ、前記各センサからのリード線が前記連結基板の一端に接続され、前記ケーブルが前記連結基板の他端に接続された、請求項1に記載の耳式体温計。
【請求項10】
前記円筒体ホルダの前面を覆う保護カバーは、ポリエチレン・フィルムである、請求項5または6に記載の耳式体温計。
【請求項11】
前記センサは、セラミック基板に堆積された薄膜サーミスタ、該薄膜サーミスタの両側に付着された電極、該電極に半田付けされたリード線、センサ上面全体に塗布された樹脂を含み、前記第1センサには赤外線の放射率が高く、赤外線を吸収し易い樹脂が塗布され、前記第2センサには赤外線を吸収し難い樹脂が塗布される、請求項5または6に記載の耳式体温計。
【請求項12】
前記プローブは単回使用の使い捨てである、請求項1に記載の耳式体温計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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