説明

耳漏,鼻汁,その他分泌物の吸引及び検査用サンプル採取器具

【課題】 耳漏、鼻汁、痰等の分泌物の採取時において、採取動作中の医師の負担を軽減することができる耳漏,鼻汁,その他分泌物の吸引及び検査用サンプル採取器具を提供すること。
【解決手段】 耳漏、鼻汁、痰等の分泌物を検査するための耳漏,鼻汁,その他分泌物の吸引及び検査用サンプル採取器具1であって、前部開口2、吸気口である後部開口3、空気流入孔4及び検体容器接続口5を有する中空状の器具本体6と、前部開口2に連通連設されたノズル7と、前端部10が、耳孔、鼻孔、咽喉に挿入可能であり、中間部12が前記器具本体6内に挿入され、後端部13が検体容器接続口5に接続された検体容器14の内部に挿入される吸引チューブ8とを備え、前記吸気口3から吸引ポンプで吸気して前記検体容器14内に耳漏、鼻汁、痰等の分泌物を採取するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耳漏,鼻汁,その他分泌物の吸引及び検査用サンプル採取器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば鼻汁を吸引する吸引器として、下記特許文献1に示すように、空気流入孔が設けられている棒状のチューブを医師が右手で持ち、その空気流入孔を人さし指の指先で押さえながら棒状のチューブの前部開口に取り付けられた貫通孔を有する先端部を患者の鼻孔にあてがい、指先を離せば外気が前記空気流入孔から流れ込むようにし、鼻汁の採取時において吸引ポンプの吸引力をそのまま鼻孔内に作用させずに鼻孔に対する吸引力を緩和するようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実願昭61−101893号(実開昭63−8042号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記特許文献1のものは、先端部が棒状のチューブよりも大径であり、先端部を鼻孔にあてがい鼻汁を採取する際、その先端部が医師の目線を邪魔して鼻孔の中が見え難いという課題を有するだけではなく、人さし指の指先で空気流入孔を押さえながら、人さし指、親指、中指と、親指および人さし指間の四箇所で棒状のチューブを保持することから、医師にとっては不安定な採取動作が強いられるおそれがある。
【0005】
この発明は、上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、耳漏、鼻汁、痰等の分泌物の採取時において、採取動作中の医師の負担を軽減することができる耳漏,鼻汁,その他分泌物の吸引及び検査用サンプル採取器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の耳漏,鼻汁,その他分泌物の吸引及び検査用サンプル採取器具は、耳漏、鼻汁、痰等の分泌物を検査するための耳漏,鼻汁,その他分泌物の吸引及び検査用サンプル採取器具であって、
前部開口、吸気口である後部開口、空気流入孔及び検体容器接続口を有する中空状の器具本体と、
前部開口に連通連設されたノズルと、
前端部が、耳孔、鼻孔、咽喉に挿入可能であり、中間部が前記器具本体内に挿入され、後端部が検体容器接続口に接続された検体容器の内部に挿入される吸引チューブとを備え、
前記吸気口から吸引ポンプで吸気して前記検体容器内に耳漏、鼻汁、痰等の分泌物を採取するように構成したことを特徴としている(請求項1)。
【0007】
また、この発明において、器具本体は、溶着された二つ割り部分からなり、略ボールペン形状の外観を有するのが好ましく(請求項2)、
また、検体容器は、上方開口を有する有底筒状体であり、器具本体の下側に所定の傾斜角度を有して設けた筒状部の下端に位置する前記検体容器接続口に着脱自在に装着されるのが好ましく(請求項3)、
また、吸引チューブの前端部が直線状であり、この直線状の前端部を水平に維持したときには、前記検体容器接続口に接続された検体容器が上下方向に向くようノズルの湾曲角度および前記筒状部の傾斜角度が設定されているのが好ましく(請求項4)、
また、吸気口である後部開口とは別に、器具本体の下側に所定の傾斜角度を有して設けた筒部の下端に補助吸気口を有するとともに、検体容器の蓋が、吸気口である後部開口と補助吸気口のいずれの蓋にも兼用可能に構成されているのが好ましく(請求項5)、
また、吸気口である後部開口または補助吸気口に、吸引ポンプに連通するホースを接続するためのパイプを装着したときに後部開口のねじ部または補助吸気口のねじ部が破損するのを防止するための割れ止め用補強リングを設けてあるのが好ましく(請求項6)、
さらに、空気流入孔は器具本体の上側で、かつ、平面視ほぼダルマ形状の孔に形成されており、また、器具本体における空気流入孔の周囲に凹所が形成されている一方、使用時において検体容器接続口を有する前記筒状部のつけ根に人の指が当接するように凹所が形成されているとともに補助吸気口を有する前記筒部に掌が当接するように前記筒状部と前記筒部が前後に配置されているのが好ましく(請求項7)、
また、少なくとも前記ノズル、前記器具本体及び前記検体容器は透明な合成樹脂より形成されているのが好ましい(請求項8)。
【発明の効果】
【0008】
本願の請求項1に係る発明では、耳漏、鼻汁、痰等の分泌物を採取するにあたり、器具本体の前部開口に連通連設されたノズルを介して、中間部が器具本体内に挿入され前端が耳孔、鼻孔、咽喉に挿入される構成の吸引チューブを用いている。すなわち、前記ノズルから吸引チューブの前端部を突出させており、吸引チューブの前端が医師の目線を妨げることはないので、耳孔の中、鼻孔の中、咽喉の中を見易くでき、採取動作中の医師の負担を軽減することができる。
【0009】
例えば、器具本体が略ボールペン形状の外観を有し(請求項2)、吸引チューブの前端部が直線状である(請求項4)場合には、前記ノズルを介して、器具本体よりも細い吸引チューブの前端部が器具本体の前部開口側に位置するので、耳孔の中、鼻孔の中、咽喉の中を見易くすることができる。
【0010】
また、空気流入孔を医師の人さし指の指先で押さえながら、人さし指、親指、中指と、親指および人さし指間の四箇所で器具本体を保持する構成でありながら、本願の請求項1に係る発明では、器具本体に検体容器接続口を設け、この検体容器接続口に接続される検体容器を備えているので、従来例では器具本体の保持に関与していなかった少なくとも薬指を検体容器にあてがうことができ、検体容器を装着しない器具本体(例えば従来例の棒状のチューブ)に比べて、安定した保持状態を得ることができ、採取動作中の医師の負担をより軽減することができる。すなわち、本願の請求項1に係る発明は、空気流入孔を医師の人さし指の指先で押さえながら親指と中指と、親指および人さし指間とで器具本体を保持する構成を含む上に、少なくとも薬指と掌で検体容器を挟むことができ、結果として小指を除く4本の指と、掌と、親指および人さし指間とを利用できてその六箇所で器具本体を保持する構成を採用しており、採取動作中に微妙に振れることなく器具本体を確実に定位置に保持することができる。この効果は、検体容器は、上方開口を有する有底筒状体であり、器具本体の下側に所定の傾斜角度を有して設けた筒状部の下端に位置する前記検体容器接続口に着脱自在に装着される(請求項3)場合と、使用時において検体容器接続口を有する筒状部のつけ根に人の指が当接するように凹所が形成されている(請求項7)場合に特に有効である。この場合、中指が前記つけ根に載ることになり、中指と筒状部のフイット性を向上でき、ひいては、器具本体の保持性を向上させることができる。なお、この発明では、小指を絡ませることが可能なように検体容器の大きさおよびその形状を適宜設定することもできる。この場合、小指と薬指と右手の掌で検体容器を挟むことができる。
【0011】
また、この発明では、図1,2に示すように、検体容器14は、その上方開口14aが塞がれないまま上方開口14aを介して吸引チューブ8の後端部13が挿入されている。そして、患者の例えば中耳内に吸引チューブ8の前端部10を挿入して耳漏を検体容器14内に採取する場合を例にとると、検査するために必要な量S(図3参照)の耳漏を検体容器14内に溜める必要がある。そこで、できるだけ多くの量Sを溜めるため本願の請求項4に係る発明が有効である。すなわち、本願の請求項4に係る発明では、図3に示すように、吸引チューブ8の前端部10を水平に維持した状態で前記中耳内に挿入している限りは、検体容器接続口5に接続されている検体容器14が上下方向に向くことになる。これに対し、器具本体6を水平に維持したので検体容器14が上下方向から傾斜して位置している図1の状態においては耳漏をこぼさないで溜める最大量S’(図1に点線で示す)は、図3で示す必要量Sよりも少なくなる(S’<S)。すなわち、本願の請求項4に係る発明では、吸引チューブの前端部が直線状であり、直線状の前端部を水平に維持したときには、前記検体容器接続口に接続された検体容器が上下方向に向くようノズルの湾曲角度および筒状部の傾斜角度が設定されているので、検体容器内に溜まっていく耳漏、鼻汁、痰等の分泌物を検体容器外の器具本体内にこぼれ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施形態に係る耳漏,鼻汁,その他分泌物の吸引及び検査用サンプル採取器具を示す構成説明図である。
【図2】上記実施形態の構成部材を示す構成説明図である。
【図3】上記実施形態の使用状態を示す図である。
【図4】(A)は、上記実施形態における吸引チューブ取り付け前の状態を示す平面図である。(B)は、上記実施形態における器具本体の二つ割り部分の位置決めを行うための構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について説明する。図1〜図4は、ノズルを例えば溶着により器具本体に接続してあるこの発明の一実施形態を示す。図1は、二つ割りに構成した器具本体の一方に吸引チューブを設けた状態を示し、図2は、吸引チューブを除く各種構成部材を示し、図3は例えば耳漏の原因菌を検査して原因菌に応じた抗生物質を投与するため耳漏を採取している状態を示している。また、図4(A)は上記実施形態を上側から見ている。図4(B)は器具本体の前側から見た器具本体の二つ割り部分の位置決めを行うための構成を示している。図1〜図4において、耳漏,鼻汁,その他分泌物の吸引及び検査用サンプル採取器具1は、前部開口2、吸気口である後部開口3、空気流入孔4及び検体容器接続口5を有する中空状の器具本体6と、前部開口2に連通連設されたノズル7と、前端部10が、耳孔11に挿入可能であり、中間部12が前記器具本体6内に挿入され、後端部13が検体容器接続口5に接続された検体容器14の内部に挿入される吸引チューブ8とを主として備えており、前記吸気口3から吸引ポンプ(図示せず)で吸気して前記検体容器14内に耳漏を採取するように構成されている。前部開口2は、環状の内向きフランジLによって形成されている。そして、人指し指fで空気流入孔4の開度を調整することにより空気の吸入状態を変更することができる。さらに、器具本体6は、溶着された二つ割り部分6a,6bからなり、略ボールペン形状の外観を有している。図1に矢印Kで示す拡大部分におけるDは、二つ割り部分6a,6bの溶着部分を示している。検体容器14は、雄ねじ部Fによって形成されている上方開口14aを有する有底筒状体であり、器具本体6の下側に所定の傾斜角度θを有して設けた筒状部15の下端に位置する前記検体容器接続口5に着脱自在に装着される。この実施形態では、検体容器接続口5は、雄ねじ部Fに螺合する雌ねじ部によって形成されており、検体容器14の雄ねじ部Fの直下に形成された外向きフランジ14bの上面uが検体容器接続口5の下面5に当接した状態で検体容器14が検体容器接続口5にねじ結合される。また、吸引チューブ8の前端部10が直線状であり、図3に示すように、この直線状の前端部10を水平に維持したときには、前記検体容器接続口5に接続された検体容器14の中心線Qが上下方向に向くようノズル7の湾曲角度αおよび前記筒状部15の傾斜角度βが設定されている。図3において、両矢印Xで示す方向は水平方向であり、両矢印Zで示す方向はX方向に直角な上下方向である。そして、器具本体6よりも細い吸引チューブ8の前端部10をノズル7から突出させており、かつノズル7の湾曲角度αが所望の角度に設定されているので、吸引チューブ8の前端部10を水平に維持するよう患者を位置させるだけで、吸引チューブ8の前端部10が医師100の目線を妨げることはなく耳孔11の中を見易くできる状態を実現でき、採取動作中の医師100の負担を軽減することができる。
【0014】
吸引チューブ8の前端部10は、ノズル7内に形成されているチューブ挿入孔Hから外側に突出した状態で直線状に形成されている一方、ノズル7は、器具本体6の軸線P上に位置するノズル本体7aの背面側に設けた段部Gを介して器具本体6の前部開口2に溶着により取り付けられている。段部Gは、環状の内向きフランジLが嵌合する嵌合溝tと、ノズル本体7aの背面eとで内向きフランジLを挟む環状の外向きフランジL’とから構成されている。このように、器具本体6の内向きフランジLをノズル本体7aの背面側に設けた段部Gに形成されている嵌合溝tに嵌込み、かつ前部開口2と段部Gを溶着してノズル7を器具本体6の前部開口2にシール可能に固着したので、固着部分からの空気漏れを防ぐことができる。なお、ノズル7を前部開口2に連通連設する別の方法として、ノズル7と器具本体6を一体に形成してもよい。また、ノズル7は、ノズル本体7aから下向き外側に所定の湾曲角度αをなして湾曲して延設されたノズル先端部分7bを有し、さらに、ノズル本体7aおよびノズル先端部分7bは共に、少なくとも外周面M,Nがテーパに形成され、先端に向かうにつれて小径に形成されているとともに、チューブ挿入孔Hは、ノズル先端部分7bに形成され吸引チューブ8が嵌挿可能な小径の孔部分aと、その孔部分aよりも大径でテーパに形成され、前部開口2側に向かうにつれて大径に形成されている孔部分bとよりなる。
【0015】
図2に示すように、前記傾斜角度θは、器具本体6の軸線Pと検体容器14の中心線Qとのなす角度(鋭角)である。前記湾曲角度αは、器具本体6の軸線Pとノズル先端部分7bの中心線Rとのなす角度(鋭角)である。前記湾曲角度αは25〜35°が好ましく、30°がより好ましい。また、筒状部15の傾斜角度βは、器具本体6の軸線Pと筒状部15の中心線Tとのなす角度(鋭角)であり、この実施形態では、検体容器接続口5にねじ結合されている検体容器14の中心線Qと前記中心線Tが一致しており、傾斜角度βは傾斜角度θに等しい。
【0016】
また、器具本体6は、吸気口である後部開口3とは別に、器具本体6の下側に筒状部15の傾斜角度βと同じ傾斜角度βを有して設けた筒部20の下端に補助吸気口21を有している。そのため、吸引ポンプの位置やその他の種々の状況に合わせて吸気口を変更することができる。そして、図2に示すように、検体容器14の蓋22が、吸気口である後部開口3と補助吸気口21のいずれの蓋にも兼用可能に構成されている。この実施形態では、吸気口である後部開口3の外周面と補助吸気口21の外周面は雄ねじに形成されている一方、蓋22はこれら雄ねじに螺合する雌ねじを有する。さらに、吸気口である後部開口3の内周面と補助吸気口21の内周面には雌ねじが形成されている。さらに、吸気口である後部開口3または補助吸気口21に、吸引ポンプに連通するホースhを接続するためのパイプ25を装着したときに雄ねじ・雌ねじ部によって形成されている後部開口3または雄ねじ・雌ねじ部によって形成されている補助吸気口21が破損するのを防止するための割れ止め用補強リング26が設けられている。この実施形態では、図1に示すように、パイプ25を介して、吸気口である後部開口3にホースhが接続されている。なお、図4は割れ止め用補強リング26を設けていない状態を示している。
【0017】
前記パイプ25は、外向きフランジ25aと、そのフランジ25aの前後に後部開口3の雌ねじに螺合可能な雄ねじ部25bおよびホースh装着パイプ部25cをそれぞれ有している。外向きフランジ25aは、後部開口3の端面3aと同一の外径を有し、その端面3aに当接する。なお、Oリング付きの雄ねじ部25bを用いるのが空気漏れを確実に防止できる点で好ましい。また、検体容器14の雄ねじ部FにOリングを設けるのが好ましく、さらに、蓋22の雌ねじ部にもOリングを設けるのが好ましい。そして、異なる内径または外径を有するホースhにそれぞれ対応可能となるように、ホースh装着パイプ部25cは、径の異なるホース装着パイプ部分A,Bが外側ほど小径となるように多段に形成されている。この実施形態では、ホース装着パイプ部分Aの外周面にホースhが嵌め込まれており、このホースhよりも内径の小さなホースはホース装着パイプ部分Aよりも小径のホース装着パイプ部分Bに嵌め込まれる。また、ホースとして、パイプ25のパイプ孔Jに内嵌可能なものも適用できる。この場合は嵌め込まれるホースの先端に金具が取り付けられており、この金具を付けたままパイプ孔Jに嵌め込まれる。このように、ホースhの太さに応じて使い分けできるようにホースh装着パイプ部25cが構成されている。
【0018】
また、前記空気流入孔4は器具本体6の上側で、かつ、図4に示すように、平面視ほぼダルマ形状の孔に形成されている。器具本体6を前側から見た場合(矢印Eで示す方向から見た場合)、空気流入孔4は、手前の頭部4aとこれに連設された胴部4bとよりなる。さらに、器具本体6における空気流入孔4の周囲には凹所30が形成されている。そのため、人指し指fと器具本体6のフイット性を向上でき、ひいては、人指し指fでの空気流入孔4の開度調整操作をし易くできる。一方、検体容器接続口5を有する前記筒状部15のつけ根15aには使用時において中指mが当接するように凹所31が形成されている。また、補助吸気口21を有する前記筒部20に掌が当接するように前記筒状部15と前記筒部20が適宜間隔を有して前後に配置されている。そのため、医師はボールペンを持つような感じで器具本体6を持てば持ち易い。このとき、前記筒部20が掌の当たりになる。そして、この実施形態では、前記ノズル7、前記器具本体6、前記検体容器14およびパイプ25は透明な合成樹脂より形成されている。これらは有色透明であってもよく、また、無色透明であってもよい。そのため、内部の状態を目視で把握することができる。また、蓋22も透明な合成樹脂より形成されている。
【0019】
さらに、前記器具本体6の二つ割り部分6a,6bのうち、E方向における左側の部分6aは、その内面における吸引チューブ8の中間部12に対応する位置に中間部12を挟んでガイドする挟持用の2本のピン状突起40,41が上下に形成されているとともに、E方向における右側の部分6bの内面における2本のピン状突起40,41形成位置の間に対応する位置でピン状突起40,41によって挟まれている中間部12が外れるのを防止する吸引チューブ外れ止め用の1本のピン状突起42が形成されている。この実施形態では、器具本体6内における吸引チューブ8の中間部12のガイドおよび中間部12の外れ防止をより確実にするため、前記左側の部分6aは、ピン状突起40,41よりも下流側にピン状突起40,41と同様の機能をする一組のピン状突起43,44を有している。この場合、ピン状突起43,44は、E方向における左側の部分6aの内面で、筒状部15のつけ根15aに形成した凹所31の直上位置に形成されている。さらに、前記左側の部分6aは、ピン状突起43,44よりも下流側にピン状突起40,41と同様の機能をする一組のピン状突起43a,44aを筒状部15内に有している。この場合、ピン状突起43a,44aは、E方向における筒状部15左側の内面に形成されている。図1に矢印Kで示す拡大部分は、上下に位置する2本のピン状突起40,41間に吸引チューブ8の中間部12が器具本体6の軸線Pの方向に沿って嵌挿されているとともに、ピン状突起40,41間から中間部12が外れるのを防止するためピン状突起42の先端部がピン状突起40,41間に嵌込まれるとともに、ピン状突起40,41で挟まれている吸引チューブ8の中間部12にピン状突起42の先端が当接している状態を示している。また、E方向における右側の部分6bの内面における2本のピン状突起43,44形成位置の間に対応する位置でピン状突起43,44によって挟まれている中間部12が外れるのを防止する吸引チューブ外れ止め用の1本のピン状突起(図示せず)が形成されている。さらに、ピン状突起43a,44aによって挟まれている中間部12が外れるのを防止する吸引チューブ外れ止め用の1本のピン状突起(図示せず)が、E方向における筒状部15左側の内面に形成されている。
【0020】
また、器具本体の二つ割り部分6a,6bのうち、左側の部分6aの内面における器具本体6の軸線Pに沿う方向に内方側に内側係入孔51を有する1本のピン状突起52が形成され、このピン状突起52に対応する右側の部分6bの内面には、内側係入孔51に係入して二つ割り部分6a,6bの位置決めを行う1本のピン状突起53が形成されている。これらピン状突起52,53は筒状部15の直上に位置している。そして、二つ割り部分6a,6bの位置決めをより確実に行うためピン状突起52,53と同様の機能を有するピン状突起52,53が筒部20および後部開口3間に設けられている。
【0021】
なお、採取後、耳漏を溜めた検体容器14に蓋22をし、検査に付されその後検体容器14と蓋22は廃棄処理される。また、ノズル7、器具本体6、パイプ25、蓋22も一回限りで廃棄処分される。
【0022】
また、蓋22として、雄ねじのものを使用してもよい。この場合、検体容器14は、雄ねじ部Fの内周面に雌ねじを有する。そして、この発明は、耳漏に限らず、鼻孔や咽喉に吸引チューブを挿入して鼻汁や痰等の分泌物を吸引する器具にも適用できる。
【符号の説明】
【0023】
1 耳漏,鼻汁,その他分泌物の吸引及び検査用サンプル採取器具
2 前部開口
3 後部開口(吸気口)
4 空気流入孔
5 検体容器接続口
6 中空状の器具本体
7 ノズル
8 吸引チューブ
10 前端部
11 耳孔
12 中間部
13 後端部
14 検体容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耳漏、鼻汁、痰等の分泌物を検査するための耳漏,鼻汁,その他分泌物の吸引及び検査用サンプル採取器具であって、
前部開口、吸気口である後部開口、空気流入孔及び検体容器接続口を有する中空状の器具本体と、
前部開口に連通連設されたノズルと、
前端部が、耳孔、鼻孔、咽喉に挿入可能であり、中間部が前記器具本体内に挿入され、後端部が検体容器接続口に接続された検体容器の内部に挿入される吸引チューブとを備え、
前記吸気口から吸引ポンプで吸気して前記検体容器内に耳漏、鼻汁、痰等の分泌物を採取するように構成したことを特徴とする耳漏,鼻汁,その他分泌物の吸引及び検査用サンプル採取器具。
【請求項2】
器具本体は、溶着された二つ割り部分からなり、略ボールペン形状の外観を有する請求項1に記載の耳漏,鼻汁,その他分泌物の吸引及び検査用サンプル採取器具。
【請求項3】
検体容器は、上方開口を有する有底筒状体であり、器具本体の下側に所定の傾斜角度を有して設けた筒状部の下端に位置する前記検体容器接続口に着脱自在に装着される請求項1または2に記載の耳漏,鼻汁,その他分泌物の吸引及び検査用サンプル採取器具。
【請求項4】
吸引チューブの前端部が直線状であり、この直線状の前端部を水平に維持したときには、前記検体容器接続口に接続された検体容器が上下方向に向くようノズルの湾曲角度および前記筒状部の傾斜角度が設定されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の耳漏,鼻汁,その他分泌物の吸引及び検査用サンプル採取器具。
【請求項5】
吸気口である後部開口とは別に、器具本体の下側に所定の傾斜角度を有して設けた筒部の下端に補助吸気口を有するとともに、検体容器の蓋が、吸気口である後部開口と補助吸気口のいずれの蓋にも兼用可能に構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の耳漏,鼻汁,その他分泌物の吸引及び検査用サンプル採取器具。
【請求項6】
吸気口である後部開口または補助吸気口に、吸引ポンプに連通するホースを接続するためのパイプを装着したときに後部開口のねじ部または補助吸気口のねじ部が破損するのを防止するための割れ止め用補強リングを設けてある請求項1〜5のいずれか1項に記載の耳漏,鼻汁,その他分泌物の吸引及び検査用サンプル採取器具。
【請求項7】
空気流入孔は器具本体の上側で、かつ、平面視ほぼダルマ形状の孔に形成されており、 また、器具本体における空気流入孔の周囲に凹所が形成されている一方、
使用時において検体容器接続口を有する前記筒状部のつけ根に人の指が当接するように凹所が形成されているとともに補助吸気口を有する前記筒部に掌が当接するように前記筒状部と前記筒部が前後に配置されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の耳漏,鼻汁,その他分泌物の吸引及び検査用サンプル採取器具。
【請求項8】
少なくとも前記ノズル、前記器具本体及び前記検体容器は透明な合成樹脂より形成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の耳漏,鼻汁,その他分泌物の吸引及び検査用サンプル採取器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−229806(P2011−229806A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104825(P2010−104825)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000167842)広陵化学工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】