説明

肉類の品質改良剤および肉類の品質改良方法

【課題】本発明が解決しようとする課題は、水産生物を由来とする魚介系肉類あるいは畜肉動物を由来とする畜肉系肉類など、各種肉類の加熱加工にあたり、食肉の歩留まりの低下を改善し、加熱加工による身質の縮みで生じる肉質の硬化を抑え、程よい柔らかさ維持し、食べた時の食感に優れ、食肉の味質に優れるなど、各種の好適な効果を奏し、かつリン酸塩を含有しない品質改良剤、該品質改良剤を用いた調理された肉類の品質改良方法、該品質改良剤を用いた処理後に加熱調理して得られる品質改良された肉類の調理物のぞれぞれを提供することにある。
【解決手段】クエン酸塩100重量部、炭酸塩0.01〜35重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.01〜10重量部、以上の配合割合で構成される肉類の品質改良製剤を用いることにより達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉類の品質改良剤、および該品質改良剤を用いた肉類の品質改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エビ、イカ、シャコ、甲殻類、貝類、魚肉などに代表される水産生物を由来とする魚介系肉類や、鶏肉、豚肉、牛肉などに代表される畜肉動物を由来とする畜肉系肉類は、刺身や生食などの用途を除くと、その大部分は加熱工程を経て様々な分野や用途に流通している。しかしながら一般的に肉類を加熱処理すると、タンパク質の変性や水分の放出などを伴うため、その弊害として肉類の歩留まりが減少するという問題がある。また、肉類の加熱処理により生じるタンパク質の変性や水分の放出は、肉質部の硬化や縮み、食べた時のパサつき感などをもたらすが、近年の消費者の多くは、加工後の肉質について柔らかい食感を好む傾向が強く示されており、加工後の肉質が極端に硬化しないような調理方法が望まれている。
【0003】
上述の背景を踏まえ、加熱処理による肉類の歩留まり減少の抑制や、調理された肉類の食感を柔らかくする目的で、様々な品質改良剤や品質改良方法が提案されており、代表的な品質改良剤としてリン酸塩が利用されてきた。しかしながら、リン酸塩については、過剰摂取によりカルシウムの吸収阻害やカルシウム不足を昂進するなど、健康上の問題点が指摘されるようになり、消費者や食品業者からは、リン酸塩を配合しない新たな品質改良剤が求められている。
【0004】
リン酸類を用いない品質改良剤として例えば、塩化ナトリウムに対しマグネシウムを0.025〜0.7重量%含む焼き塩1重量部に対し、糖アルコールを2.5〜5.5重量部、エステル化又は/及びエーテル化された澱粉誘導体を1.0〜2.5重量部、及び有機酸塩を0.3〜1.3重量部含有することを特徴とする食肉用改良剤が、特許文献1に開示されている。
【0005】
リン酸類を用いない品質改良剤として例えば、乳清蛋白質、増粘多糖類及びアルカリ性塩類を含むことを特徴とする食感の改善された食肉加工食品が、特許文献2に開示されている。
【0006】
水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムと、2クエン酸3ナトリウム及び/又はクエン酸3カリウムをモル比で1:1.5〜1:10の比率で含むことを特徴とする食肉単味品用製剤が、特許文献3に開示されている。
【0007】
ε−ポリ−L−リジン又はアスコルビン酸ナトリウム、若しくはε−ポリ−L−リジンとアスコルビン酸ナトリウムの二成分よりなる肉類の加熱調理時の歩留まり向上剤が、特許文献4に開示されている。
【0008】
【特許文献1】(特開2003−304836号公報)
【特許文献2】(特開2001−224336号公報)
【特許文献3】(特開2004−248661号公報)
【特許文献4】(特開平10−146168号公報)
【0009】
前述の通り、リン酸塩を配合しない品質改良剤も上述の通り開発され始めており、また同時に様々な研究もなされているが、食肉の加工形態は多岐に渡っており、常に、新しい品質改良剤が求められている。また、品質改良剤を添加しても肉本来の味質、食べた時の食感などについて、同時に満足できる結果をもたらす品質改良剤について、未だ十分なものは得られていないのが実状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、水産生物を由来とする魚介系肉類あるいは畜肉動物を由来とする畜肉系肉類など、各種肉類の加熱加工にあたり、食肉の歩留まりの低下を改善し、加熱加工による身質の縮みで生じる肉質の硬化を抑え、程よい柔らかさ維持し、食べた時の食感に優れ、食肉の味質に優れるなど、各種の好適な効果を奏し、かつリン酸塩を含有しない品質改良剤および該品質改良剤を用いて加熱加工された肉類の品質改良方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上述の目的を達成するため鋭意検討を行った結果、クエン酸塩、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、ヒドロキシプロピルセルロースを特定の配合割合とすることで、本発明に係る課題が解決され、品質改良剤としての効果を発揮することを見出した。また、好ましい形態として、前記の3種類の成分から構成される品質改良剤に、さらに、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトール、重合度が2以下の水素化糖類の含有量が固形物換算で60重量%以上の還元澱粉加水分解物、トレハロース、からなる群から選ばれる何れか一種又は二種以上の混合物である糖・糖アルコール類、および/または増粘剤を特定割合で配合した品質改良剤とすることで、品質改良剤としてさらに好ましい結果がもたらされることを見出し、本発明を開発するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の課題を解決するための手段は、下記のとおりである。
【0013】
第一に、クエン酸塩100重量部、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩0.01〜35重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.01〜10重量部、からなる肉類の品質改良剤である。
【0014】
第二に、さらに、増粘剤を0.001〜10重量部配合した第一に記載の肉類の品質改良剤である。
【0015】
第三に、さらに、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトール、重合度が2以下の水素化糖類の含有量が固形物換算で60重量%以上の還元澱粉加水分解物、トレハロース、からなる群から選ばれる何れか一種又は二種以上の混合物である糖・糖アルコール類を0.01〜50重量部配合した、第一又は第二に記載の肉類の品質改良剤である。
【0016】
第四に、加熱加工前の肉類を、固形分濃度が0.01〜20.0重量%である第一から第三の何れか一つに記載の品質改良剤水溶液中に浸漬し、次いで加熱加工する、肉類の品質改良方法である。
【0017】
本発明に係る品質改良剤は、クエン酸塩、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、ヒドロキシプロピルセルロース、糖・糖アルコール類、増粘剤の各成分の固形物換算重量による配合割合で定められ、具体的にはクエン酸塩を100重量部としたときの割合で定義される。
【0018】
本発明に係る品質改良剤で採用されるクエン酸塩について、その種類は、塩を形成し得る素材であれば特に制限は無く、カルシウム塩、ナトリウム塩などの塩類が採用できるが、この中で最も好ましいのはクエン酸三ナトリウムである。
【0019】
本発明に係る品質改良剤で採用される炭酸塩及び/又は炭酸水素塩について、その種類は、塩を形成し得る素材であれば特に制限は無く、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウムなどの各種塩類が採用できるが、この中でも好ましいのは、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムである。
【0020】
本発明に係る品質改良剤で採用される炭酸塩及び/又は炭酸水素塩の配合割合は、クエン酸塩100重量部に対して、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩が0.01〜35重量部の範囲であり、更に好ましい範囲は0.05〜10重量部の範囲であり、その中でも特に好ましくは0.1〜5重量部の範囲である。炭酸塩及び/又は炭酸水素塩の配合割合が前記の範囲を下回った場合、加熱加工した肉類の歩留まり、食べた時の食感について、改善効果が十分に発現しなくなる。また、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩の配合割合が前記の範囲を上回った場合、肉質の色落ち、肉質がもろくなり好ましい食感が得られないなど、好ましくない影響が生じやすくなる。
【0021】
本発明に係る品質改良剤で採用されるヒドロキシプロピルセルロースとは、セルロースにプロピレンオキサイド等のエーテル化剤を反応させて得られるセルロース誘導体の一種である。本発明では、ヒドロキシプロピルセルロースとして市販されている物の他、ヒドロキシプロピルセルロース製剤の形態で市販されている物も採用可能である。
【0022】
本発明に係る品質改良剤で採用されるヒドロキシプロピルセルロースの配合割合は、クエン酸塩100重量部に対して、ヒドロキシプロピルセルロースが0.01〜10重量部の範囲であり、更に好ましい範囲は0.1〜5重量部の範囲であり、その中でも特に好ましくは0.2〜1重量部の範囲である。ヒドロキシプロピルセルロースの配合割合が前記の範囲を下回った場合、加熱加工した肉類の歩留まり、食べた時の食感について、改善効果が十分に発現しなくなる。また、ヒドロキシプロピルセルロースの配合割合が前記の範囲を上回った場合、粘度が上昇し取り扱い性が低下する、添加量に応じた品質改良効果は少なく経済的でないなどの影響がある。
【0023】
本発明では、クエン酸塩、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、ヒドロキシプロピルセルロースの3成分で構成される品質改良剤に、さらに、好ましい形態として、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトール、重合度が2以下の水素化糖類の含有量が固形物換算で60重量%以上の還元澱粉加水分解物、トレハロースからなる群から選ばれる何れか一種又は二種以上の混合物である糖・糖アルコール類および/または増粘剤を適宜配合することができる。これらの成分を配合することで、加熱加工した食肉について、歩留り、食べた時の食感、味質について、さらに好ましい改善効果が得られる。
【0024】
本発明に係る品質改良剤に採用される糖・糖アルコール類とは、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトール、重合度が2以下の水素化糖類の含有量が固形物換算で60重量%以上の還元澱粉加水分解物、トレハロースからなる群から選ばれる何れか一種又は二種以上の混合物である。これらの中でも、味質における改善の点で、マルチトールが好ましい。なお、本発明で採用できるマルチトールについては、マルチトール含蜜結晶および結晶マルチトールの他、マルチトール純度が80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の粉末品や液状品であっても良い。前記の糖・糖アルコール類は、食品、食品添加物、医薬品などの各種用途で市販されている程度の品質であれば良く、それらの原料や製造方法、もしくは液状や固体といった形状などによって特に影響を受けることは無い。また、本発明の実施を妨げない限り、上記の糖・糖アルコール類は結晶品、含蜜結晶品、非晶質粉末品、液状品の何れであっても良く、結晶品については含水結晶もしくは無水結晶の何れであっても良い。
【0025】
本発明に係る品質改良剤で採用される糖・糖アルコール類の配合割合は、クエン酸塩100重量部に対して、糖・糖アルコール類が0.01〜50重量部の範囲であり、更に好ましい範囲は1〜30重量部の範囲であり、その中でも特に好ましくは10〜25重量部の範囲である。糖・糖アルコール類の配合割合が前記の範囲を下回ると、糖・糖アルコール類の添加によって期待される品質改良効果が十分に発現しない恐れがある。また、糖・糖アルコール類の配合割合が前記の範囲を上回った場合、添加量に応じた品質改良効果は少ないため経済的でないことや、対象となる肉類に甘さを付与する恐れがあるため、特に必要とされない。
【0026】
本発明では、クエン酸塩、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、ヒドロキシプロピルセルロースの3成分で構成される品質改良剤に、さらに、増粘剤を配合することで、加熱加工した食肉の歩留りや食べた時の食感が改善されるという好ましい効果が得られる。本発明で採用可能な増粘剤としては、グルコマンナン、グアガム、ペクチン、キサンタンガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、カラヤガム、アラビアガム、タマリンド、カードラン、ジェランガム、ペクチン、プルラン、アルギン酸、アルギン酸塩、寒天などが例示でき、これらは単独または2種以上を混合して使用することもできる。また、これらの中でも品質改良効果が高められる点で好ましい増粘剤として、グアガム、グルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ペクチンが例示できる。また、これらの中でも特に好ましい増粘剤として、グルコマンナン、キサンタンガムが例示できる。
【0027】
本発明に係る品質改良剤で採用される増粘剤の配合割合は、クエン酸塩100重量部に対して、増粘剤が0.01〜10重量部の範囲であり、更に好ましい範囲は0.1〜5重量部の範囲であり、その中でも特に好ましくは0.2〜1重量部の範囲である。増粘剤の配合割合が前記の範囲を下回ると、増粘剤の添加によって期待される品質改良効果が十分に発現しない恐れがある。また、増粘剤の配合割合が前記の範囲を上回った場合、添加量に応じた品質改良効果は少ないため経済的でないことや、品質改良剤を含有する水溶液を調製する際、溶解に時間が掛る、粘度が高くなりすぎるなど、品質改良剤の取扱性が低下する恐れがある。
【0028】
本発明に係る品質改良剤は、クエン酸塩、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、ヒドロキシプロピルセルロースからなる3成分での構成、クエン酸塩、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、ヒドロキシプロピルセルロースに、さらに糖・糖アルコール類あるいは増粘剤を配合した4成分での構成、クエン酸塩、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、ヒドロキシプロピルセルロース、糖・糖アルコール類、増粘剤からなる5成分での構成、以上のそれぞれの構成において、上述で示した配合割合が適用される。
【0029】
本発明に係る品質改良剤の具体例として、クエン酸塩、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、ヒドロキシプロピルセルロースの3成分で構成される場合、その配合割合として、クエン酸塩100重量部、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩0.01〜35重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.01〜10重量部の配合割合が例示できる。また、前期配合割合の中で、クエン酸塩100重量部、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩0.05〜10重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.1〜5重量部の配合割合を好ましい配合割合として例示できる。また、前期配合割合の中で、クエン酸塩100重量部、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩0.1〜5重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.2〜1重量部の配合割合を特に好ましい配合割合として例示できる。
【0030】
本発明に係る品質改良剤の具体例として、クエン酸塩、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、ヒドロキシプロピルセルロース、増粘剤の4成分で構成される場合、その配合割合として、クエン酸塩100重量部、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩0.01〜35重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.01〜10重量部、増粘剤0.01〜10重量部の配合割合が例示できる。また、前期配合割合の中で、クエン酸塩100重量部、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩0.05〜10重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.1〜5重量部、増粘剤0.1〜5重量部の配合割合を好ましい配合割合として例示できる。また、前期配合割合の中で、クエン酸塩100重量部、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩0.1〜5重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.2〜1重量部、増粘剤0.2〜1重量部の配合割合を特に好ましい配合割合として例示できる。
【0031】
本発明に係る品質改良剤の具体例として、クエン酸塩、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、ヒドロキシプロピルセルロース、糖・糖アルコール類の4成分で構成される場合、その配合割合として、クエン酸塩100重量部、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩0.01〜35重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.01〜10重量部、糖・糖アルコール類0.01〜50重量部の配合割合が例示できる。また、前期配合割合の中で、クエン酸塩100重量部、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩0.05〜10重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.1〜5重量部、糖・糖アルコール類1〜30重量部の配合割合を好ましい配合割合として例示できる。また、前期配合割合の中で、クエン酸塩100重量部、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩0.1〜5重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.2〜1重量部、糖・糖アルコール類10〜25重量部の配合割合を特に好ましい配合割合として例示できる。
【0032】
本発明に係る品質改良剤の具体例として、クエン酸塩、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩、ヒドロキシプロピルセルロース、増粘剤、糖・糖アルコール類の5成分で構成される場合、その配合割合として、クエン酸塩100重量部、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩0.01〜35重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.01〜10重量部、増粘剤0.01〜10重量部、糖・糖アルコール類0.01〜50重量部の配合割合が例示できる。また、前期配合割合の中で、クエン酸塩100重量部、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩0.05〜10重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.1〜5重量部、増粘剤0.1〜5重量部、糖・糖アルコール類1〜30重量部の配合割合を好ましい配合割合として例示できる。また、前期配合割合の中で、クエン酸塩100重量部、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩0.1〜5重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.2〜1重量部、増粘剤0.2〜1重量部、糖・糖アルコール類10〜25重量部の配合割合を特に好ましい配合割合として例示できる。
【0033】
本発明に係る品質改良剤には、本発明の実施を妨げない範囲であれば、醤油、魚醤、味噌、食塩、酢、黒酢、香酢、日本酒、ワイン、みりん、ソースなどの各種調味料類、唐辛子、コショウ、オレガノ、バジル、ローズマリー、ケッパー、タイム、クミンなどの各種香辛料類、ビーフエキス、ポークエキス、チキンエキスなどの各種畜肉エキス類、昆布エキス、かつおエキス、ホタテエキス、カキエキスなどの各種魚介・海藻エキス類、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸、グリシン、アラニンなどの各種アミノ酸類やその塩類、キャベツエキス、トマトエキス、ドライトマトエキス、ニンジンエキスなどの各種野菜エキス類、蛋白加水分解物、酵母エキスなど、前述の各種成分を副成分として添加しても良い。
【0034】
本発明に係る品質改良剤では、対象とされる肉質の種類に特に制限は無い。よって、アジ、イワシ、サバ、サンマ、サヨリ、コハダ、タイ、ハマチ、ブリ、タラ、スケトウダラ、ニシン、ホッケ、カレイ、ヒラメ、キンメダイ、カツオ、マグロ、サケ、アンコウ、フグ、スズキ、ウナギ、アナゴなど各種魚類、アサリ、ハマグリ、シジミ、ホタテ、カキ、サザエ、赤貝、ムール貝などの各種貝類、エビ、シャコ、カニ、イカ、タコなどの前述以外の魚介類、その他水産生物を由来とする各種魚介系肉類に対して適用可能である。他にも、鶏肉、アヒル肉、ガチョウ肉、七面鳥肉、エミュー肉、豚肉、牛肉、羊肉、山羊肉、馬肉、鹿肉、猪肉などに代表される各種家禽畜肉系の肉類に対しても、同様に適用可能である。これらの肉類は、加熱処理される前の状態であれば特に制限は無く、具体的には、加熱されていない生肉の状態であることが好ましいが、他に、冷凍肉、チルド肉であっても生肉の状態に解凍処理すれば、同様に適用することができる。
【0035】
本発明に係る品質改良剤は、上述の肉類に対して効果的に浸透する方法であれば、何れの処理方法を採用しても良いが、対象となる肉類への浸透が容易かつ均等に行い易いことから、品質改良剤を含有する水溶液中に肉類を漬け込む方法が好ましい。ここで、漬け込み液として使用する際の品質改良剤水溶液は、対象となる肉質に対して均等に品質改良剤成分が浸透しやすさを考慮すると、固形分濃度が0.01〜20.0重量%の範囲に調製されていることが好ましいといえる。また、更に好ましい条件としては、品質改良剤水溶液の固形分濃度が0.1〜10.0重量%である。また、特に好ましい条件としては、品質改良剤水溶液の固形分濃度が1.0〜7.0重量%である。そして、最も好ましい条件としては、品質改良剤水溶液の固形分濃度が3.0〜5.0重量%である。
【0036】
本発明に係る品質改良剤を含有した水溶液を肉類に浸漬する際、肉類と品質改良剤水溶液の配合比率に特に制限は無く、処理対象となる肉類の品種、由来、部位、大きさ、品質改良剤含有水溶液の固形分濃度、漬け込み時の温度、漬け込み時間などの各種条件に応じて適宜変更してよい。
【0037】
本発明では、肉類の加熱加工方法に制限は無く、焼く、炒める、蒸す、揚げる、茹でる、煮る、加圧加熱、電子レンジ加熱、電磁調理器加熱などの方法に代表される各種加熱加工方法あるいは各種加熱調理方法の何れの方法であっても良い。
【0038】
本発明に係る品質改良剤を採用することで、加熱加工された肉類は、品質改良剤を添加せずに同等の加熱加工を行って得られた肉類と比べて、歩留まりが向上するほか、加熱加工による縮みが少なく、食べた時の食感に優れ、味質についても従来の品質改良剤を使用したときに感じられるような不快な味は無いなど、優れた結果をもたらすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下に、本発明に係る品質改良剤の好ましい効果について、実施例を交えて詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の例に限定されるものではない。
【0040】
各実施例で使用される製剤として、クエン酸三ナトリウムは市販の試薬(食品添加物グレード、和光純薬工業株式会社製)を使用した。炭酸水素ナトリウムは市販の試薬(食品添加物グレード、和光純薬工業株式会社製)を使用した。炭酸ナトリウムは市販の試薬(食品添加物グレード、和光純薬工業株式会社製)を使用した。ヒドロキシプロピルセルロースは市販品(商品名:セルニーL、日本重曹株式会社製)を使用した。キサンタンガムは市販品(商品名:キサンタンガム、中央フーズマテリアル株式会社製)を使用した。グルコマンナン市販品(商品名:レオレックスRS、清水化学株式会社製)を使用した。カラギーナンは市販品(商品名:カラギーナン、中央フーズマテリアル株式会社製)を使用した。グアーガムは市販品(商品名:グアーガム、中央フーズマテリアル株式会社製)を使用した。ローカストビーンガムは市販品(商品名:ローカストビーンガム、中央フーズマテリアル株式会社製)を使用した。ペクチンは市販品(商品名:ペクチンSLENDIDtype200、CPKelcoJapan製)を使用した。マルチトールは、マルチトール純度が約95%の市販のマルチトール含蜜結晶品(商品名:アマルティMR50(登録商標)、東和化成工業株式会社製)を使用した。ソルビトールは、市販の結晶品(商品名:ソルビットDP、東和化成工業株式会社製)を使用した。還元澱粉加水分解物には、重合度2以下の水素化糖類の含有量が固形物換算で約70重量%の市販液状品(商品名:PO−60、固形分濃度70重量%、東和化成工業株式会社製)を使用した。トレハロースは、市販の結晶品(商品名:トレハ、株式会社林原生物化学研究所製)を使用した。
【0041】
加熱加工後の食品の品質改良効果では、肉質の柔らかさ、肉質のジューシー感、肉質を噛んだ時の歯切れの良さ、総合的な味質のよさ、以上の4項目について訓練されたパネリスト10人による官能検査を行い、それぞれの評価項目について表1に示す基準を用いて評価し、10人の評価点数の平均点を求めた。
【0042】
【表1】

【0043】
加熱加工後の食品の歩留り評価では、製剤による処理を行わずに加熱加工された食品の重量を100%とし、同様の条件を製剤で処理された食品についても実施し、その重量の相対値によって求められる値を歩留まりの評価基準とした。
【実施例】
【0044】
(製剤の調製例1)
クエン酸三ナトリウム100g、炭酸水素ナトリウム4g、ヒドロキシプロピルセルロース0.4g、を均質になるまで十分に混合して製剤1を調製した。製剤の構成は、クエン酸三ナトリウム100重量部に対して、炭酸水素ナトリウム4重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.4重量部である。
【0045】
(製剤の調製例2)
クエン酸三ナトリウム100g、炭酸水素ナトリウム4g、ヒドロキシプロピルセルロース0.4g、グルコマンナン0.4gを均質になるまで十分に混合して製剤2を調製した。製剤の構成は、クエン酸三ナトリウム100重量部に対して、炭酸水素ナトリウム4重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.4重量部、グルコマンナン0.4重量部である。
【0046】
(製剤の調製例3)
クエン酸三ナトリウム100g、炭酸水素ナトリウム4g、ヒドロキシプロピルセルロース0.4g、グルコマンナン0.4g、マルチトール24gを均質になるまで十分に混合して製剤3を調製した。製剤の構成は、クエン酸三ナトリウム100重量部に対して、炭酸水素ナトリウム4重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.4重量部、グルコマンナン0.4重量部、マルチトール24重量部である。
【0047】
(製剤の調製例4)
クエン酸三ナトリウム100g、炭酸水素ナトリウム4g、ヒドロキシプロピルセルロース0.4g、グルコマンナン0.4g、ソルビトール24gを均質になるまで十分に混合して製剤4を調製した。製剤の構成は、クエン酸三ナトリウム100重量部に対して、炭酸水素ナトリウム4重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.4重量部、グルコマンナン0.4重量部、ソルビトール24重量部である。
【0048】
(製剤の調製例5)
クエン酸三ナトリウム100g、炭酸水素ナトリウム4g、ヒドロキシプロピルセルロース0.4g、グルコマンナン0.4g、トレハロース24gを均質になるまで十分に混合して製剤5を調製した。製剤の構成は、クエン酸三ナトリウム100重量部に対して、炭酸水素ナトリウム4重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.4重量部、グルコマンナン0.4重量部、トレハロース24重量部である。
【0049】
(製剤の調製例6)
クエン酸三ナトリウム100g、炭酸水素ナトリウム4g、ヒドロキシプロピルセルロース0.4g、グルコマンナン0.4g、還元澱粉加水分解(商品名:PO−60、固形分濃度70重量%、東和化成工業株式会社製)34.3gを均質になるまで十分に混合して製剤6を調製した。製剤の構成は、クエン酸三ナトリウム100重量部に対して、炭酸水素ナトリウム4重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.4重量部、グルコマンナン0.4重量部、還元澱粉加水分解物24.01重量部である。
【0050】
(製剤の調製例7)
クエン酸三ナトリウム100g、炭酸ナトリウム0.12g、ヒドロキシプロピルセルロース0.4g、マルチトール24gを均質になるまで十分に混合して製剤7を調製した。製剤の構成は、クエン酸三ナトリウム100重量部、炭酸ナトリウム0.12重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.4重量部、マルチトール24重量部である。
【0051】
(製剤の調製例8)
クエン酸三ナトリウム100g、炭酸水素ナトリウム3.75g、ヒドロキシプロピルセルロース0.25g、グルコマンナン0.25g、マルチトール18.75gを均質になるまで十分に混合して製剤8を調製した。製剤の構成は、クエン酸三ナトリウム100重量部、炭酸水素ナトリウム3.75重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.25重量部、グルコマンナン0.25重量部、マルチトール18.75重量部である。
【0052】
(製剤の調製例9)
クエン酸三ナトリウム100g、炭酸水素ナトリウム30g、ヒドロキシプロピルセルロース0.4g、グアガム0.4g、ソルビトール3gを均質になるまで十分に混合して製剤9を調製した。製剤の構成は、クエン酸三ナトリウム100重量部、炭酸水素ナトリウム30重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.4重量部、グアガム0.4重量部、ソルビトール3重量部である。
【0053】
(製剤の調製例10)
クエン酸三ナトリウム100g、炭酸水素ナトリウム5g、ヒドロキシプロピルセルロース0.05g、ローカストビーンガム0.05g、トレハロース10gを均質になるまで十分に混合して製剤10を調製した。製剤の構成は、クエン酸三ナトリウム100重量部、炭酸水素ナトリウム5重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.05重量部、ローカストビーンガム0.05重量部、トレハロース10重量部である。
【0054】
(製剤の調製例11)
クエン酸三ナトリウム100g、炭酸水素ナトリウム7g、ヒドロキシプロピルセルロース8g、ジェランガム8g、キシリトール20gを均質になるまで十分に混合して製剤11を調製した。製剤の構成は、クエン酸三ナトリウム100重量部、炭酸水素ナトリウム7重量部、ヒドロキシプロピルセルロース8重量部、ジェランガム8重量部、キシリトール20重量部である。
【0055】
(製剤の調製例12)
クエン酸三ナトリウム100g、炭酸ナトリウム0.05g、ヒドロキシプロピルセルロース0.4g、ペクチン0.4g、ソルビトール40gを均質になるまで十分に混合して製剤12を調製した。製剤の構成は、クエン酸三ナトリウム100重量部、炭酸ナトリウム0.05重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.4重量部、ペクチン0.4重量部、ソルビトール40重量部である。
【0056】
(製剤の調製例13)
クエン酸三ナトリウム100g、炭酸水素ナトリウム4g、ヒドロキシプロピルセルロース0.4g、マルチトール30gを均質になるまで十分に混合して製剤13を調製した。製剤の構成は、クエン酸三ナトリウム100重量部、炭酸水素ナトリウム4重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.4重量部、マルチトール30重量部である。
【0057】
(製剤の調製例14)
クエン酸三ナトリウム100g、炭酸水素ナトリウム4g、ヒドロキシプロピルセルロース0.4g、キサンタンガム0.4gを均質になるまで十分に混合して製剤14を調製した。製剤の構成は、クエン酸三ナトリウム100重量部、炭酸水素ナトリウム4重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.4重量部、キサンタンガム0.4重量部である。
【0058】
(製剤の調製例15)
クエン酸三ナトリウム100g、炭酸水素ナトリウム4g、ヒドロキシプロピルセルロース0.4g、グアガム0.4g、マルチトール24gを均質になるまで十分に混合して製剤15を調製した。製剤の構成は、クエン酸三ナトリウム100重量部、炭酸水素ナトリウム4重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.4重量部、グアガム0.4重量部、マルチトール24重量部である。
【0059】
(製剤の調製例16)
クエン酸三ナトリウム100g、炭酸ナトリウム60g、ヒドロキシプロピルセルロース0.4g、キサンタンガム0.4gを均質になるまで十分に混合して比較品となる製剤16を調製した。製剤の構成は、クエン酸三ナトリウム100重量部、炭酸ナトリウム60重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.4重量部、キサンタンガム0.4重量部である。
【0060】
(製剤の調製例17)
クエン酸三ナトリウム100g、炭酸水素ナトリウム5g、ヒドロキシプロピルセルロース20gを均質になるまで十分に混合して比較品となる製剤17を調製した。製剤の構成は、クエン酸三ナトリウム100重量部、炭酸水素ナトリウム5重量部、ヒドロキシプロピルセルロース20重量部である。
【0061】
(製剤の調製例18)
クエン酸三ナトリウム100g、炭酸水素ナトリウム5g、ヒドロキシプロピルセルロース0.4g、マルチトール80g、を均質になるまで十分に混合して比較品となる製剤18を調製した。製剤の構成は、クエン酸三ナトリウム100重量部、炭酸水素ナトリウム5重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.4重量部、マルチトール80重量部である。
【0062】
上述の製剤1〜18の配合量を表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
試験例1(冷凍ムキエビのボイル)
原料のエビには、平均体長約40mmのベトナム産ムキエビの冷凍品を使用した。冷凍ムキエビは、防水性のあるビニール製の袋に入れて外部から水が入らないように封をし、ビニール袋ごと15℃の流水中にさらして、ムキエビに凍結部がなくなるまで解凍処理し、最後にビニール袋からムキエビを取り出して十分に水切りをし、生状態のムキエビとした。次に、調製例1〜6、調製例8、調製例9〜14で調製した製剤1〜6、製剤8、製剤9〜14を各々水に溶かして、製剤1〜6は何れも固形分濃度3.0重量%の水溶液とし、製剤8は固形分濃度5.0重量%の水溶液とし、製剤9〜14は何れも固形分濃度3.0重量%の水溶液とした。製剤溶液の詳細は表3に示す。解凍したムキエビ100重量部に対して、各々の製剤を溶かした水溶液25重量部の割合で、両者をジッパー付きの袋に入れて、できるだけ内部の空気を取り除いてジッパーを閉じ、これを5℃の冷蔵庫内に2時間静置させて浸漬処理した。浸漬処理後、ジッパー付き袋からムキエビを取り出してザルの上に乗せ、ムキエビ表面に付着している製剤溶液の水切りをした。水切りされたムキエビは、沸騰状態の1重量%の食塩水中に入れて2分間ボイル処理し、ボイル後、茹で上がったムキエビをザルに受けて室温で10分間静置し放冷したものをボイルエビのサンプルとして各種官能検査と歩留まり評価を実施し、品質改良剤による改良効果を評価した。なお、本発明品の効果を評価するため、同一原料のムキエビについて、製剤溶液による浸漬を行わず、解凍後直ちに前述の方法でボイル処理し、放冷したものを対照品とした。官能検査による評価結果と歩留まりの結果を表4に示す。
【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
比較試験例1(冷凍ムキエビのボイル)
本発明の数値範囲を超えた配合例による製剤を用いて、冷凍ムキエビのボイル品について品質改良効果を比較した。原料のエビは調製例1と同じものを使用した。製剤は、調製例16〜18で調製した製剤16〜18を各々水に溶かして、何れも固形分濃度3.0重量%の水溶液とした。製剤溶液の詳細は表5に示す。その後は調製例1と同様の操作を行い、ボイルエビのサンプルについて各種官能検査と歩留まり評価を実施し、品質改良剤による改良効果を評価した。なお、本発明品の効果を評価するため、同一原料のムキエビについて、製剤溶液による浸漬を行わず、解凍後直ちに前述の方法でボイル処理し、放冷したものを対照品とした。官能検査による評価結果と歩留まりの結果を表6に示す。
【0068】
【表5】

【0069】
【表6】

【0070】
試験例2(冷凍イカのセイロ蒸し)
原料のイカには、市販のアカイカの冷凍品を使用した。冷凍アカイカは、防水性のあるビニール製の袋に入れて外部から水が入らないように封をし、ビニール袋ごと15℃の流水中にさらして、アカイカに凍結部がなくなるまで解凍処理し、最後にビニール袋からアカイカを取り出して十分に水切りをし、生状態のアカイカとした。そしてこのアカイカを、20×50mm、厚さ5mmの大きさにカットした。次に、調製例3、調製例7、調製例8で調製した製剤3、製剤7、製剤8を各々水に溶かして、製剤3と製剤7は固形分濃度3.0重量%の水溶液とし、製剤8は固形分濃度5.0重量%の水溶液とした。製剤溶液の詳細は表7に示す。解凍したアカイカ100重量部に対して、各々の製剤を溶かした水溶液25重量部の割合で、両者をジッパー付きの袋に入れて、できるだけ内部の空気を取り除いてジッパーを閉じ、これを5℃の冷蔵庫内に2時間静置させて浸漬処理した。浸漬処理後、ジッパー付き袋からアカイカを取り出してザルの上に乗せ、アカイカ表面に付着している製剤溶液の水切りをした。水切りされたアカイカは耐熱容器に入れ、内部が沸騰したセイロに耐熱容器ごと入れて10分間蒸した。蒸した後、アカイカをザルに受けて室温で10分間静置し放冷したものを蒸したアカイカのサンプルとして各種官能検査と歩留まり評価を実施し、品質改良剤による改良効果を評価した。なお、本発明品の効果を評価するため、同一原料のアカイカについて、製剤溶液による浸漬を行わず、解凍後直ちに前述の方法でセイロ蒸しし、放冷したものを対照品とした。官能検査による評価結果と歩留まりの結果を表8に示す。
【0071】
【表7】

【0072】
【表8】

【0073】
試験例3(豚肉のセイロ蒸し)
原料の豚肉には、市販の国産豚で予め約3mmにスライスされたモモの生肉を使用した。豚モモ肉は、30×30mmの大きさにカットした。次に、調製例3および調製例8で調製した製剤3と製剤8を各々水に溶かして、製剤3は固形分濃度3.0重量%の水溶液とし、製剤8は固形分濃度5.0重量%の水溶液とした。製剤溶液の詳細は表9に示す。豚モモ肉100重量部に対して、各々の製剤を溶かした水溶液を25重量部の割合で、両者をジッパー付きの袋に入れて、できるだけ内部の空気を取り除いてジッパーを閉じ、これを5℃の冷蔵庫内に2時間静置させて浸漬処理した。浸漬処理後、ジッパー付き袋から豚モモ肉を取り出してザルの上に乗せ、豚モモ肉表面に付着している製剤溶液の水切りをした。水切りされた豚モモ肉は耐熱容器に入れ、内部が沸騰したセイロに耐熱容器ごと入れて10分間蒸した。蒸した後、豚モモ肉をザルに受けて室温で10分間静置し放冷したものを蒸した豚モモ肉のサンプルとして各種官能検査と歩留まり評価を実施し、品質改良剤による改良効果を評価した。なお、本発明品の効果を評価するため、同一原料の豚モモ肉について、製剤溶液による浸漬を行わず、カット後直ちに前述の方法でセイロ蒸しし、放冷したものを対照品とした。官能検査による評価結果と歩留まりの結果を表10に示す。
【0074】
【表9】

【0075】
【表10】

【0076】
試験例4(鶏肉の唐揚げ)
原料の鶏肉には、市販の国産鶏ササミ肉の生肉を使用した。鶏ササミ肉は筋を取り除き、40×30mmにカットした。次に、調製例8および調製例15で調製した製剤8と製剤15を各々水に溶かして、製剤8は固形分濃度5.0重量%の水溶液とし、製剤15は固形分濃度3.0重量%の水溶液とした。製剤溶液の詳細は表11に示す。鶏ササミ肉100重量部に対して、各々の製剤を溶かした水溶液を25重量部の割合で、両者をジッパー付きの袋に入れて、できるだけ内部の空気を取り除いてジッパーを閉じ、これを5℃の冷蔵庫内に2時間静置させて浸漬処理した。浸漬処理後、ジッパー付き袋から豚モモ肉を取り出してザルの上に乗せ、鶏ササミ肉表面に付着している製剤溶液の水切りをした。次いで、市販の唐揚げ用調味粉末を水切りされた鶏ササミ肉にまぶし、鶏ササミ肉重量に対して10%の重量の唐揚げ用調味粉末を付着させた。次いで、180℃に加熱したキャノーラ油にて4分間油ちょうした。油ちょう後、鶏ササミ肉の唐揚げを油きり用の網に受けて室温で10分間静置し放冷したものを鶏ササミ肉の唐揚げのサンプルとして各種官能検査と歩留まり評価を実施し、品質改良剤による改良効果を評価した。なお、本発明品の効果を評価するため、同一原料の鶏ササミ肉について、製剤溶液による浸漬を行わず、カット後は、そのまま市販の唐揚げ用調味粉末を鶏ササミ肉重量に対して10%の重量付着させ、前述と同様に油ちょうし、放冷したものを対照品とした。官能検査による評価結果と歩留まりの結果を表12に示す。
【0077】
【表11】

【0078】
【表12】

【0079】
試験例5(鮭の鉄板焼)
原料の鮭には、市販の国産鮭の甘塩タイプを使用した。鮭は、40×30mm、厚さ20mmにカットした。次に、調製例8で調製した製剤8を水に溶かして固形分濃度3.0重量%の水溶液(製剤溶液8−2)を調製した。製剤溶液の詳細は表13に示す。鮭カット肉100重量部に対して、製剤溶液8−2を25重量部の割合で、両者をジッパー付きの袋に入れて、できるだけ内部の空気を取り除いてジッパーを閉じ、これを5℃の冷蔵庫内に2時間静置させて浸漬処理した。浸漬処理後、ジッパー付き袋から鮭カット肉を取り出してザルの上に乗せ、鮭カット肉表面に付着している製剤溶液の水切りをした。次いで、ホットプレートの温度目盛を180℃に設定し、プレートが十分に加熱された状態で、鮭カット肉を各面で6分間づつ、合計12分間焼成した。焼成後、鮭カット肉をとり皿に入れ、室温で10分間静置し放冷したものを鮭カット肉焼成品のサンプルとして各種官能検査と歩留まり評価を実施し、品質改良剤による改良効果を評価した。なお、本発明品の効果を評価するため、同一原料の鮭カット肉について、製剤溶液による浸漬を行わず、カット後は、直ちにホットプレートで、前述と同様の条件で焼成し、放冷したものを対照品とした。官能検査による評価結果と歩留まりの結果を表14に示す。
【0080】
【表13】

【0081】
【表14】

【0082】
試験例6(ホタテ貝柱のセイロ蒸し)
原料のホタテ貝柱には、市販で国産の生ホタテ貝柱(直径35mm、厚さ20mm)を使用し、ホタテ貝柱を縦方向に4等分にカットした。次に、調製例8で調製した製剤8を水に溶かして固形分濃度3.0重量%の水溶液(製剤溶液8−2)を調製した。製剤溶液の詳細は表15に示す。ホタテ貝柱100重量部に対して、製剤溶液8−2を25重量部の割合で、両者をジッパー付きの袋に入れて、できるだけ内部の空気を取り除いてジッパーを閉じ、これを5℃の冷蔵庫内に2時間静置させて浸漬処理した。浸漬処理後、ジッパー付き袋からホタテ貝柱を取り出してザルの上に乗せ、ホタテ貝柱表面に付着している製剤溶液の水切りをした。水切りされたホタテ貝柱は耐熱容器に入れ、内部が沸騰したセイロに耐熱容器ごと入れて10分間蒸した。蒸した後、ホタテ貝柱をザルに受けて室温で10分間静置し放冷したものを蒸したホタテ貝柱のサンプルとして各種官能検査と歩留まり評価を実施し、品質改良剤による改良効果を評価した。なお、本発明品の効果を評価するため、同一原料のホタテ貝柱について、製剤溶液による浸漬を行わず、カット後直ちに前述の方法でセイロ蒸しし、放冷したものを対照品とした。官能検査による評価結果と歩留まりの結果を表16に示す。
【0083】
【表15】

【0084】
【表16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエン酸塩100重量部、炭酸塩及び/又は炭酸水素塩0.01〜35重量部、ヒドロキシプロピルセルロース0.01〜10重量部、からなる肉類の品質改良剤。
【請求項2】
さらに、増粘剤を0.001〜10重量部配合した請求項1に記載の肉類の品質改良剤。
【請求項3】
さらに、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトール、重合度が2以下の水素化糖類の含有量が固形物換算で60重量%以上の還元澱粉加水分解物、トレハロース、からなる群から選ばれる何れか一種又は二種以上の混合物である糖・糖アルコール類を0.01〜50重量部配合した、請求項1又は2に記載の肉類の品質改良剤。
【請求項4】
加熱加工前の肉類を、固形分濃度が0.01〜20.0重量%である請求項1から3の何れか一つに記載の品質改良剤水溶液中に浸漬し、次いで加熱加工する、肉類の品質改良方法。