説明

肌の色ムラ解析装置、肌の色ムラ解析方法、及び肌の色ムラ解析プログラム

【課題】肌の色ムラを所定の色ムラサイズの色素成分ごとに数値化して解析する。
【解決手段】頬の肌全体に分布している色素成分の分布状態から前記肌の色ムラを解析する肌の色ムラ解析装置であって、前記頬の肌全体が撮影された画像を所定の周波数によって所定の色ムラサイズごとに分解する周波数解析手段と、前記周波数解析手段により分解された所定の色ムラサイズの画像ごとに前記肌の色情報を取得し、取得した前記肌の色情報に基づき前記色素成分ごとの分布状態を算出する色素成分算出手段と、前記色素成分算出手段により得られる色素成分の分布状態に基づき、前記所定の色ムラサイズの前記色素成分ごとに前記肌の色ムラを数値化して解析する色ムラ解析手段とを有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌の色ムラ解析装置、肌の色ムラ解析方法、及び肌の色ムラ解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現代における肌の悩み、肌に対するニーズは多様化しており、例えばシミ、そばかす、くすみ、頬の赤み、にきび跡等の肌全体に生じる色ムラは、肌の印象に影響を及ぼすものとしてその解明が望まれている。このような肌の色ムラは、主にメラニン色素、ヘモグロビン色素等の色素成分の局所的な分布に影響され、色ムラを解析するためには、それぞれの色素情報を個別に抽出し、その分布状態を解析する必要がある。
【0003】
従来では、撮影した肌画像から独立成分分析によりメラニン、ヘモグロビン成分画像を抽出し、抽出した各画像を段階的に複数の空間周波数帯域に分解し、分解した画像の画素強度の度数分布からパラメータを算出する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−293214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1の手法では、段階的に複数の空間周波数帯域により画像を分解しているため、色ムラの要因となるシミ、頬の赤み、にきび跡等の複数の症状に応じた色ムラサイズの解析を行うことができない。また独立成分分析により算出しているメラニン成分とヘモグロビン成分は、画像のRGB値から肌の内部反射光のメラニン成分とヘモグロビン成分を計算しているため、あくまでも見かけ上の量であって実際の量に基づいていないという問題があった。更に、画素強度の度数分布から算出しているパラメータは、シミュレーションを行うためのパラメータであり、実際に色ムラを数値化、又は計測することにより、色ムラを解析することができなかった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、肌の色ムラを所定の色ムラサイズの色素成分ごとに数値化して解析する肌の色ムラ解析装置、肌の色ムラ解析方法、及び肌の色ムラ解析プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、頬の肌全体に分布している色素成分の分布状態から前記肌の色ムラを解析する肌の色ムラ解析装置であって、前記頬の肌全体が撮影された画像を所定の周波数によって所定の色ムラサイズごとに分解する周波数解析手段と、前記周波数解析手段により分解された所定の色ムラサイズの画像ごとに前記肌の色情報を取得し、取得した前記肌の色情報に基づき前記色素成分ごとの分布状態を算出する色素成分算出手段と、前記色素成分算出手段により得られる色素成分の分布状態に基づき、前記所定の色ムラサイズの前記色素成分ごとに前記肌の色ムラを数値化して解析する色ムラ解析手段とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、頬の肌全体に分布している色素成分の分布状態から前記肌の色ムラを解析する肌の色ムラ解析装置により実行される肌の色ムラ解析方法であって、前記頬の肌全体が撮影された画像を所定の周波数によって所定の色ムラサイズごとに分解する周波数解析手順と、前記周波数解析手順により分解された所定の色ムラサイズの画像ごとに前記肌の色情報を取得し、取得した前記肌の色情報に基づき前記色素成分ごとの分布状態を算出する色素成分算出手順と、前記色素成分算出手順により得られる色素成分の分布状態に基づき、前記所定の色ムラサイズの前記色素成分ごとに前記肌の色ムラを数値化して解析する色ムラ解析手順とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、頬の肌全体に分布している色素成分の分布状態から前記肌の色ムラを解析する肌の色ムラ解析プログラムであって、コンピュータを、前記頬の肌全体が撮影された画像を所定の周波数によって所定の色ムラサイズごとに分解する周波数解析手段、前記周波数解析手段により分解された所定の色ムラサイズの画像ごとに前記肌の色情報を取得し、取得した前記肌の色情報に基づき前記色素成分ごとの分布状態を算出する色素成分算出手段、前記色素成分算出手段により得られる色素成分の分布状態に基づき、前記所定の色ムラサイズの前記色素成分ごとに前記肌の色ムラを数値化して解析する色ムラ解析手段として機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、肌の色ムラを所定の色ムラサイズの色素成分ごとに数値化して解析することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態における肌の色ムラ解析装置の機能構成の一例を示す図である。
【図2】本実施形態における肌の色ムラ解析処理が実現可能なハードウェア構成の一例を示す図である。
【図3】本実施形態における肌の色ムラ解析処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】肌の色ムラ解析処理手順を更に具体例に説明するための図である。
【図5】周波数解析処理の具体例を説明するための図である。
【図6】色彩解析した例について説明するための図である。
【図7】色彩解析した色ムラを色ムラスコアによって比較した図である。
【図8】色ムラ指標と視感評価値との相関関係を説明するための図である。
【図9】色ムラの数値化を説明するための図である。
【図10】所定の色ムラサイズに分解された画像から色素成分ごとに色ムラが数値化された色ムラ指標と官能評価値との相関関係を説明するための図である。
【図11】色ムラ可視化方法を説明するための図である。
【図12】中周波画像からメラニン成分の色ムラを可視化する例を示す図である。
【図13】低周波画像からメラニン成分の色ムラを可視化する例を示す図である。
【図14】中周波画像からヘモグロビン成分の色ムラを可視化する例を示す図である。
【図15】低周波画像からヘモグロビン成分の色ムラを可視化する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
<肌の色ムラ解析装置:機能構成例>
図1は、本実施形態における肌の色ムラ解析装置の機能構成の一例を示している。図1に示すように、本実施形態における肌の色ムラ解析装置10は、入力手段11と、出力手段12と、記録手段13と、画像取得手段14と、周波数解析手段15と、色素成分算出手段16と、色ムラ解析手段17と、画像生成手段18と、制御手段19とを有するように構成される。
【0014】
肌の色ムラ解析装置10は、頬の肌全体が撮影された画像を所定の周波数によって所定の色ムラサイズごとに分解し、所定の色ムラサイズに分解された画像ごとに肌の色情報を取得し、取得した肌の色情報に基づき、色素成分ごとの色素成分の分布状態を算出し、算出された色素成分の分布状態に基づき、所定の色ムラサイズの色素成分ごとに肌の色ムラを数値化して解析する。
【0015】
入力手段11は、例えばキーボードや、マウス等のポインティングデバイス等からなり、ユーザ等からの画像取得指示や、周波数解析指示、色素成分算出指示、色ムラ解析指示等の各種指示の開始、終了等の入力を受け付ける。
【0016】
出力手段12は、例えばディスプレイ等からなり、入力手段11により入力された内容や、入力内容に基づいて実行された内容等の表示、出力を行う。例えば、出力手段12は、画像生成手段18により生成された色素成分ごとの濃度ヒストグラムの表示や、色ムラ解析手段17により可視化された肌の色ムラを表示する。
【0017】
記録手段13は、画像取得手段14により取得された画像や、周波数解析手段15により分解された画像、色素成分算出手段16により算出された色素成分の分布状態、色ムラ解析手段17によって数値化された色ムラ等の各種データを記録する。また、記録手段13は、必要に応じて記録されている各種データを読み出すことができる。
【0018】
画像取得手段14は、例えば拡散照明ボックスとデジタルカメラから構成されるSIAシステム(Skin Image Analyzer)等によって解析対象者のシミ、そばかす、くすみ等の肌の悩みが集中する頬部位における肌(地肌)を撮影した画像を取得する。
【0019】
ここで、撮影される画像は、例えば拡散光を照射することによって肌表面の反射や影の影響等が抑えられるため、皮膚の「色」を計測して、肌の色情報を取得するために用いられる。また、撮影された画像は、肌の色みや肌の色ムラの視感判定に用いることが可能なため、後述するように画像から抽出された部分について、撮影された画像と対応づけながら症状を特定することが可能となる。
【0020】
周波数解析手段15は、画像取得手段14によって取得された頬の肌全体を撮影した画像を所定の周波数からなるバンドパスフィルターによって所定の色ムラサイズごとに分解する。ここで、所定の周波数とは、例えば半値幅が約10.0〜40.0mm程度の低周波や、例えば半値幅が約2.0〜10.0mm程度の中周波、例えば半値幅が約1.0〜2.0mm程度の高周波等を示す。
【0021】
周波数解析手段15は、撮影された肌画像から、上述のように予め設定された低周波により例えば肌のシミ、頬の赤み等による比較的大きめの大サイズの色ムラが抽出された低周波画像を分解して取得し、予め設定された中周波により例えば肌のにきび、シミそばかす等による比較的小さな中サイズの色ムラが抽出された中周波画像を分解して取得し、予め設定された高周波により例えば毛穴等の小サイズの色ムラが抽出された高周波画像を分解して取得する。
【0022】
これにより、周波数解析手段15は、色ムラを形成する複数の症状に合わせて、撮影された肌画像を分解し、所定サイズの色ムラが抽出された画像を取得することが可能となる。
【0023】
色素成分算出手段16は、周波数解析手段15により分解された所定の色ムラサイズの画像ごとに解析対象者の肌の色情報を取得し、取得した肌の色情報に基づき色素成分ごとの分布状態を算出する。ここで、肌の色情報とは、例えば撮影されたRGB表色系RGB値や、RGB表色系から変換されたXYZ表色系XYZ値等を示す。また、色素成分とは、例えばメラニン成分又はヘモグロビン成分等を示す。
【0024】
具体的には、色素成分算出手段16は、本出願人の特許第3798550号公報の手法を用いて、皮膚の分光反射率からメラニン成分とヘモグロビン成分の含有量を算出する。
【0025】
例えば、色素成分算出手段16は、皮膚の反射スペクトル、ランベルト−ベールの法則における透過率を皮膚の反射率に置き換えた吸光度モデル及び皮膚の構成成分の吸光係数スペクトルを用いて重回帰分析を行うことにより、皮膚中のメラニン成分、ヘモグロビン成分等の量を求める。
【0026】
また、色素成分算出手段16は、本出願人の特許第3727807号公報の手法を用いて、分光反射率と対応する画像のRGB値等から、メラニン成分量とヘモグロビン成分量を算出し、画像計測からメラニン成分の分布及びヘモグロビン成分の分布を測定する。
【0027】
例えば、色素成分算出手段16は、皮膚の測色値と皮膚中の成分量のデータを重回帰分析して重回帰式を予め求め、重回帰式を用いて皮膚の測色値から皮膚中の成分であるメラニン成分、ヘモグロビン成分等からなる群より選択された少なくとも一つの物質の量を求める。
【0028】
なお、色素成分算出手段16は、上述した手法を用いて算出した色素成分の濃さ及びその分布状態を示す画像を色素成分ごとに生成することもできる。
【0029】
色ムラ解析手段17は、色素成分算出手段16によって算出された色素成分の分布状態に基づき、所定の色ムラサイズの色素成分ごとに肌の色ムラを数値化して解析する。
【0030】
例えば、色ムラ解析手段17は、色素成分算出手段16により得られる色素成分の分布状態から色素成分の濃度平均値より値の高い濃度領域を積算することにより肌の色ムラを数値化して解析する。
【0031】
より具体的には、色ムラ解析手段17は、色素成分算出手段16により得られる色素成分の分布状態から色素成分の濃度平均値を基準として、濃度平均値以上の濃度値と、濃度平均値以上の濃度値のそれぞれの画素数とを乗算し、乗算された値を積算して数値化する。
【0032】
また、色素成分算出手段16により算出された色素成分の分布状態を色素成分ごとの濃度ヒストグラムとした場合に、メラニン成分の色ムラを、メラニン濃度m、画像の全画素に占めるメラニン濃度mの画素数の割合f(m)、画像の画素ごとの濃度の平均値Amとして、以下の式により算出してメラニン成分の色ムラ指標としても良い。
【0033】
【数1】


同様に、ヘモグロビン成分の色ムラを、ヘモグロビン濃度h、画像の全画素に占めるヘモグロビン濃度mの画素数の割合f(h)、画像の画素ごとの濃度の平均値Ahとして、以下の式により算出してヘモグロビン成分の色ムラ指標としても良い。
【0034】
【数2】


これにより、色ムラ解析手段17は、解析対象者の頬部位における色ムラを、複数の症状に応じた色ムラサイズごとに、数値化されたメラニン成分の色ムラ指標、ヘモグロビン成分の色ムラ指標から解析することが可能となる。
【0035】
また、色ムラ解析手段17は、色素成分算出手段16により得られる色素成分の分布状態から色素成分の濃度平均値を基準とし、色素成分の濃度平均値から所定値以上の濃度領域を可視化することもできる。
【0036】
より具体的には、色ムラ解析手段17は、色素成分算出手段16により算出された色素成分の分布状態を色素成分の濃度ヒストグラムとした場合に、濃度ヒストグラムのピーク値+0.1以上の値を可視化すると良い。これにより、色ムラ解析手段17は、色ムラサイズごとに数値化した色ムラを人が知覚する「色ムラ」に対応させながら表示することが可能となる。
【0037】
画像生成手段18は、色素成分算出手段16によって算出された色素の分布状態を色素成分ごとに濃度ヒストグラムとして生成する。
【0038】
制御手段19は、色ムラ解析装置10の各構成部全体の制御を行う。例えば、制御手段19は、ユーザ等による入力手段11からの指示等に基づいて、画像取得手段14により解析対象者の頬部位から肌の画像を取得し、周波数解析手段15により所定の色ムラサイズの画像を分解し、色素成分算出手段16により色素の分布状態を算出し、色ムラ解析手段17により色素成分ごとに肌の色ムラを解析する等の各制御を行う。
【0039】
<色ムラ解析装置:ハードウェア構成>
上述した肌の色ムラ解析装置10では、各機能をコンピュータに実行させることができる肌の色ムラ解析プログラム等の実行プログラムを生成し、例えば汎用のパーソナルコンピュータ、サーバ等に実行プログラムをインストールすることにより、本発明における肌の色ムラ解析処理等を実行することができる。
【0040】
ここで、本実施形態における肌の色ムラ解析処理が実行可能なコンピュータのハードウェア構成例について説明する。図2は、本実施形態における肌の色ムラ解析処理が実現可能なハードウェア構成の一例を示している。
【0041】
図2のコンピュータ本体には、入力装置21と、出力装置22と、ドライブ装置23と、補助記憶装置24と、メモリ装置25と、各種制御を行うCPU(Central Processing Unit)26と、ネットワーク接続装置27とを有するように構成され、これらはシステムバスBで相互に接続されている。
【0042】
入力装置21は、ユーザ等が操作するキーボード、マウス等のポインティングデバイスを有しており、ユーザ等からのプログラムの実行等、各種操作信号を入力する。また、入力装置21は、例えば拡散照明ボックスとデジタルカメラ等を用いて撮影された解析対象者の肌の画像を入力する入力ユニットを有している。
【0043】
出力装置22は、本発明の処理を行うためのコンピュータ本体を操作するのに必要な各種ウィンドウやデータ等を表示するディスプレイを有し、CPU26が有する制御プログラムにより実行経過や結果等を表示することができる。
【0044】
ここで、本発明においてコンピュータ本体にインストールされる実行プログラムは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリやCD−ROM等の可搬型の記録媒体28等により提供される。プログラムを記録した記録媒体28は、ドライブ装置23にセット可能であり、記録媒体28に含まれる実行プログラムが、記録媒体28からドライブ装置23を介して補助記憶装置24にインストールされる。
【0045】
補助記憶装置24は、ハードディスク等のストレージ手段であり、本発明における実行プログラムや、コンピュータに設けられた制御プログラム等を記憶し、必要に応じて入出力を行うことができる。
【0046】
メモリ装置25は、CPU26により補助記憶装置24から読み出された実行プログラム等を格納する。なお、メモリ装置25は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等からなる。
【0047】
CPU26は、OS(Operating System)等の制御プログラム、及びメモリ装置25に格納されている実行プログラムに基づいて、各種演算や各ハードウェア構成部とのデータの入出力等、コンピュータ全体の処理を制御して、肌の色ムラ解析処理等の各処理を実現することができる。
【0048】
なお、プログラム実行中に必要な各種情報等は、補助記憶装置24から取得することができ、また実行結果等を格納することもできる。
【0049】
ネットワーク接続装置27は、通信ネットワーク等と接続することにより、実行プログラムを通信ネットワークに接続されている他の端末装置等から取得したり、プログラムを実行することで得られた実行結果又は本発明における実行プログラム自体を他の端末装置等に提供したりすることができる。
【0050】
上述したハードウェア構成により、本発明における肌の色ムラ解析処理を実行することができる。また、プログラムをインストールすることにより、汎用のパーソナルコンピュータ等で本発明における肌の色ムラ解析処理を容易に実現することができる。
【0051】
<本実施形態における肌の色ムラ解析処理手順>
次に、本実施形態における肌の色ムラ解析処理手順について説明する。図3は、本実施形態における肌の色ムラ解析処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0052】
図3に示す肌の色ムラ解析処理において、画像取得手段14は、例えば拡散照明ボックスとデジタルカメラ等を用いて撮影された解析対象者の頬部位における肌(地肌)の画像を取得する(S10)。
【0053】
ここで、画像取得手段14は、例えば解析対象者の頬部位における約65mm×65mm程度の肌(地肌)の画像を取得する。なお、画像取得手段14は、肌の画像を取得する際に、解析対象者の目の下のくま、目の回りのシワ、ほうれい線等を除外して取得すると良い。
【0054】
次に、周波数解析手段15は、画像取得手段14により取得された肌の画像を所定の周波数からなるバンドパスフィルターによって所定の色ムラサイズごとに分解する(S11)。
【0055】
次に、色素成分算出手段16は、周波数解析手段15により分解された所定の色ムラサイズの画像ごとに解析対象者の肌の色情報を取得し、取得した肌の色情報に基づき、色素成分ごとの分布状態を算出する(S12)。
【0056】
次に、色ムラ解析手段17は、色素成分算出手段16によって算出された色素成分の分布状態に基づき、所定サイズの色素成分ごとに肌の色ムラを数値化して解析する(S13)。
【0057】
最後に、色ムラ解析手段17は、解析結果に基づいて、肌の色ムラを可視化する(S14)。なお、画面生成手段18は、色素成分算出手段16によって算出された色素の分布状態を色素成分ごとに濃度ヒストグラムとして画面に出力しても良い。
【0058】
<肌の色ムラ解析処理手順の具体例>
次に、上述した肌の色ムラ解析処理手順について更に具体的に説明する。図4は、肌の色ムラ解析処理手順を更に具体的に説明するための図である。
【0059】
図4に示すように、まず、画像取得手段14は、例えば拡散照明ボックスとデジタルカメラ等を用いて撮影された解析対象者の頬部位における肌(地肌)の画像を取得する。
【0060】
ここで、取得される肌の画像は、例えば解析対象者の目の下から口元まで、また解析対象者の鼻の横から耳元までの広い範囲の頬部位を対象とする約65mm×65mm程度の画像とし、撮影した肌の画像から解析対象者の目の下のくま、目の回りのシワ、ほうれい線等を除外した画像を取得すると良い
次に、周波数解析手段15は、画像取得手段14により取得された画像を元画像として、元画像から所定の色ムラサイズの画像に分解する。周波数解析手段15は、例えばバンドパスフィルターによる周波数解析により、元画像を半値幅が約10.0〜40.0mm程度の低周波画像、半値幅が約2.0〜10.0mm程度の中周波画像、半値幅が約1.0〜2.0mm程度の高周波画像に分解する。
【0061】
次に、色素成分算出手段16は、周波数解析手段15により分解した画像から解析対象者の肌の色情報を取得し、上述した重回帰分析等の手法によりメラニン成分、ヘモグロビン成分等の成分量を算出して色素成分ごとの成分画像を生成する。
【0062】
例えば、色素成分算出手段16は、比較的大きな大サイズの色ムラを形成するシミや頬の赤み等を抽出する低周波画像からそれぞれメラニン成分画像とヘモグロビン成分画像を生成する。また、色素成分算出手段16は、比較的小さめの中サイズの色ムラを形成するシミ、そばかすやにきび等を抽出する中周波画像からそれぞれメラニン成分画像とヘモグロビン成分画像を生成する。
【0063】
次に、色素成分算出手段16は、色ムラサイズごとに生成されたメラニン成分画像及びヘモグロビン成分画像からメラニン成分及びヘモグロビン成分の濃度及びその分布状態を算出する。図4に示す画像には、色素成分算出手段16により算出された各色素成分の濃度及びその分布状態が示されている。
【0064】
次に、色ムラ解析手段17は、色素成分算出手段16によって算出された色素成分の分布状態に基づき、肌の色ムラを所定の色ムラサイズの色素成分ごとに数値化する。これにより、色ムラ解析手段17は、比較的大きな大サイズの色ムラを形成している大きなシミ、頬の赤み、また比較的小さめの中サイズの色ムラを形成している小さなシミ、そばかす、にきび等のそれぞれに対して関与するメラニン成分の色ムラ、及びヘモグロビン成分の色ムラを数値化することが可能となる。
【0065】
なお、小サイズの色ムラを形成するきめ、毛穴等を抽出する高周波画像については、後述するように、肌全体の色ムラ指標に対する小サイズの色ムラの寄与率が低いため、本実施形態では色ムラを数値化するときの対象としていないが、本発明においてはこれに限定されない。
【0066】
<周波数解析処理>
次に、上述した周波数解析処理について具体例を説明する。図5は、周波数解析処理の具体例を説明するための図である。
【0067】
図5(A)は、解析対象者の頬部位から取得される肌(地肌)の画像を示している。また、図5(B)は、頬部位から取得された約65.0mm×65.0mm程度の肌(地肌)の画像を示している。
【0068】
また、図5(C)には、図5(B)の画像から半値幅が約1.0〜2.0mm程度の高周波用フィルターにより分解された画像が示されている。図5(C)に示す画像では、小サイズの色ムラとなるきめ、毛穴等が抽出されている。
【0069】
また、図5(D)には、図5(B)の画像から半値幅が約2.0〜10.0mm程度の中周波用フィルターにより分解された画像が示されている。図5(D)に示す画像では、中サイズの色ムラとなる比較的小さめのシミ、にきび等が抽出されている。
【0070】
図5(E)には、図5(B)の画像から半値幅が約10.0〜40.0mm程度の低周波用フィルターにより分解された画像が示されている。図5(D)に示す画像では、大サイズの色ムラとなる比較的大きな頬の赤み、シミ、肝斑等が抽出されている。
【0071】
上述したように、本実施形態では、周波数解析手段15により所定の周波数によって撮影された肌の画像が分解され、所定サイズの色ムラが抽出された画像を得ることが可能となる。
【0072】
<色彩解析した例>
ここで、上述した所定の色ムラサイズに分解された画像を色彩解析した例について説明する。図6は、色彩解析した例を説明するための図である。なお、図6には、上述した所定サイズに分解された色ムラを、画像領域における皮膚のベース色(地肌の画像平均値)との色差(ΔEab*)により色付け(色彩解析)したものが示されている。
【0073】
図6(A)は、解析対象者の頬部位から取得される地肌の画像を示している。また、図6(B)は、頬部位から取得された約65.0mm×65.0mm程度の肌(地肌)の画像を示している。
【0074】
また、図6(C)は、上述した小サイズの色ムラに分解した画像を色彩解析したものであり、抽出されたきめ、毛穴等において皮膚のベース色との色差が生じた部分に色付けがなされている。
【0075】
また、図6(D)は、上述した中サイズの色ムラに分解した画像を色彩解析したものであり、抽出された比較的小さめのシミ、にきび等において皮膚のベース色との色差が生じた部分に色付けがなされている。
【0076】
また、図6(E)は、上述した大サイズの色ムラに分解した画像を色彩解析したものであり、抽出された比較的大きな頬の赤み、シミ等において皮膚のベース色との色差が生じた部分に色付けがなされている。
【0077】
<色彩解析の色ムラスコア>
次に、上記図6に示す方法により色彩解析した各サイズの色ムラを、色ムラスコアを用いて比較した例について説明する。
【0078】
図7は、色彩解析した各サイズの色ムラを、色ムラスコアを用いて比較した図である。なお、色ムラスコアは、色彩解析した色ムラから以下に示す算出式により算出されたものである。色ムラスコア=Σ(画像平均値との色差(ΔEab)×画素数(%))
また、図7に示す各サイズの色ムラスコアは、20代の25名の画像と、50代の25名の画像を対象として、各サイズに分解した色ムラの色彩解析を行い、その色彩解析した各サイズの色ムラについての平均値を示している。
【0079】
図7に示すように、きめ、毛穴等の小サイズの色ムラ、シミ、にきび跡等の中サイズの色ムラ、頬の赤み、シミ等の大サイズの色ムラのそれぞれの色ムラスコアを比較すると、20代及び50代共に小サイズの色ムラスコア値は他のサイズの色ムラスコアに比べて低いことが分かる。
【0080】
なお、中サイズの色ムラは、20代と比較して50代の色ムラスコア値が高く、大サイズの色ムラは、20代と50代の色ムラスコア値が同程度となった。
【0081】
<色ムラ指標と視感評価値との相関関係>
次に、上述した色ムラスコアから算出した色ムラ指標と、対象画像の色ムラとを視感評価により評価した視感評価値との相関関係について説明する。図8は、色ムラ指標と視感評価値との相関関係を説明するための図である。
【0082】
ここで、色ムラスコアから算出した色ムラ指標は、上述した小サイズの色ムラスコア、中サイズの色ムラスコア、大サイズの色ムラスコアと、視感評価値とを重回帰分析して重回帰式を算出し、得たものである。具体的には、色ムラ指標=0.0008×小サイズスコア+0.04×中サイズスコア+0.03×大サイズスコアの算出式を得た。
【0083】
図8(A)は、上述のように算出された色ムラ指標と視感評価値との相関関係を示している。算出された色ムラ指標は、視感評価値と重相関係数0.81で対応しており、視感評価値と高い相関関係にあることが分かる。
【0084】
また、図8(B)は、上述のように算出された色ムラ指標への各サイズの色ムラスコアの寄与率を示したものである。図8(B)に示すように、シミ、にきび跡等の中サイズの色ムラ、頬の赤み、シミ等の大サイズの色ムラと比較して、きめ、毛穴等の小サイズの色ムラは、肌全体の「色ムラ」への寄与率が非常に低い。また、中サイズの色ムラの方が、大サイズよりも寄与率が高くなっている。
【0085】
すなわち、所定の色ムラサイズに分解された画像を色彩解析して色ムラスコアを算出し、視感評価値との重回帰分析に基づいて色ムラサイズごとに「色ムラ」への寄与率を算出したところ、「色ムラ」への寄与率は、中サイズと大サイズの色ムラが高いことが分かった。
【0086】
そこで、本実施形態においては、色ムラを数値化して解析するときに、中サイズと大サイズの色ムラについて解析対象とする。なお、本発明において、これに限定されるものではなく、上述した小サイズ、中サイズ、大サイズのいずれか1つ又は複数のサイズを組み合わせて色ムラ解析を行っても良い。
【0087】
<色ムラ数値化方法>
次に、本実施形態の色ムラ解析手段17による色ムラ数値化方法について説明する。図9は、色ムラの数値化を説明するための図である。
【0088】
なお、図9に示すヒストグラムは、色素成分算出手段16により算出された色素成分ごとの分布状態を、画像生成手段18により色ムラサイズごとに各色素成分の濃度ヒストグラムとして生成されたものである。
【0089】
図9(A)は、中周波画像の解析領域におけるメラニン成分の濃度ヒストグラムを示している。また、図9(B)は、低周波画像の解析領域におけるメラニン成分の濃度ヒストグラムを示している。
【0090】
ここで、図9(A)及び図9(B)のヒストグラムは、画像解析領域におけるメラニン成分の濃度値に対する画像中の画素数の割合(%)を示している。また、図9(A)及び図9(B)に示すヒストグラムA〜Hは、評価者4名の官能評価により、色ムラの「シミのムラ」レベルについて、「なし〜あり(レベル0〜レベル3)」までの4段階評価された肌画像A〜Hから生成されたものである。
【0091】
図9(A)及び図9(B)に示すように、官能評価により「シミのムラ」レベルなし(レベル0)とされた肌画像A、Eのヒストグラムと、「シミのムラ」レベルあり(レベル3)とされた肌画像B〜D、F〜Hのヒストグラムとでは、ヒストグラムの形状が異なっている。
【0092】
すなわち、レベル0とされた肌画像A、Eのヒストグラムでは、メラニン成分の狭い範囲の濃度に画素が集中しているのに対し、レベル3とされた肌画像B〜D、F〜Hのヒストグラムでは、メラニン成分の広い範囲の濃度に画素が分散している。
【0093】
また、図9(C)は、中周波画像の解析領域におけるヘモグロビン成分の濃度ヒストグラムを示している。また、図9(D)は、低周波画像の解析領域におけるヘモグロビン成分の濃度ヒストグラムを示している。
【0094】
図9(C)及び図9(D)のヒストグラムは、画像の解析領域におけるヘモグロビン成分の濃度値に対する画像中の画素数の割合(%)を示している。また、図9(C)及び図9(D)に示すヒストグラムa〜hは、色ムラの「赤み」レベルについて、「なし〜あり(レベル0〜レベル3)」までの4段階評価された肌画像a〜hから生成されたものである。
【0095】
上述したメラニン成分と同様に、図9(C)及び図9(D)に示すように、官能評価により「赤み」レベルなし(レベル0)とされた肌画像a、eのヒストグラムと、「赤み」レベルあり(レベル3)とされた肌画像b〜d、f〜hのヒストグラムとでは、ヒストグラムの形状が異なっている。
【0096】
すなわち、レベル0とされた肌画像a、eのヒストグラムでは、ヘモグロビン成分量の狭い範囲の濃度に画素が集中しているのに対し、レベル3とされた肌画像b〜d、f〜hのヒストグラムでは、ヘモグロビン成分量の広い範囲の濃度に画素が分散している。
【0097】
本実施形態の色ムラ解析手段17は、上述した色素成分の濃度ヒストグラムの特徴を踏まえ、以下にように、色ムラを数値化する。
【0098】
ここで、図9(E)は、メラニン成分、ヘモグロビン成分等の色素成分の濃度値に対するその濃度値の画素数の割合(%)を示している。
【0099】
人が知覚する「色ムラ」を生じさせる各色素成分のムラとは、地肌(画像解析領域中の平均値)よりもコントラストが高い部分において発生している。そこで、本実施形態の色ムラ解析手段17は、画像解析領域における色素成分の濃度平均値より値の高い濃度領域を積算することにより各色素成分の色ムラを数値化する。
【0100】
例えば、画像解析領域を画素数により表す場合には、色素成分の濃度平均値を基準とし、濃度平均値以上の濃度値と、濃度平均値以上の濃度値のそれぞれの画素数を乗算して、乗算された値を積算することにより数値化しても良い。
【0101】
また、図9(E)に示すように、色素成分ごとの濃度ヒストグラムが生成された場合に、メラニン成分の色ムラを、メラニン濃度m、画像の全画素に占めるメラニン濃度mの画素数の割合f(m)、画像の画素ごとの濃度の平均値Amとして、以下の式により数値化して、メラニン成分の色ムラ指標とする。
【0102】
【数3】


同様に、ヘモグロビン成分による色ムラは、ヘモグロビン濃度h、画像の全画素に占めるヘモグロビン濃度hの画素数の割合f(h)、画像の画素ごとの濃度の平均値Ahとして、以下の式により数値化して、ヘモグロビン成分の色ムラ指標とする。
【0103】
【数4】


なお、上述した式において、白斑等による色ムラを数値化する場合には、∞を−∞として、数値化することが可能である。
【0104】
<色ムラ指標と官能評価値との相関関係>
次に、本実施形態の色ムラ解析手段17により、所定の色ムラサイズに分解された画像から色素成分ごとに色ムラが数値化された色ムラ指標と、官能評価値との相関関係について説明する。
【0105】
図10は、所定の色ムラサイズに分解された画像から色素成分ごとに色ムラが数値化された色ムラ指標と官能評価値との相関関係を説明するための図である。
【0106】
ここでは、日本人女性20代〜60代の96名の顔画像を対象として、本実施形態の色ムラ解析手段17により、所定の色ムラサイズごとに分解された画像から色素成分ごとに色ムラを数値化したときのムラ指標(色ムラ指標)と、評価者6名により官能評価を実施したときの平均値との相関関係を示している。
【0107】
なお、官能評価は、所定の色ムラサイズに分解された画像の各色素成分の色ムラ(メラニン成分の茶色の色ムラ、ヘモグロビン成分の赤みの色ムラ)について5段階評価(目立つ〜目立たない)したものである。
【0108】
図10(A)は、中周波メラニン成分画像から算出されたメラニン成分のムラ指標(色ムラ指標)と官能評価値との相関関係を示したものである。また、図10(B)は、低周波メラニン成分画像から算出されたムラ指標(色ムラ指標)と官能評価値との相関関係を示したものである。
【0109】
図10(A)に示すように、中周波メラニン成分画像の色ムラ指標と官能評価値との相関関係は、相関係数r=0.69、P<0.001であり、色ムラ指標と官能評価値には有意な相関が見られた。
【0110】
また、図10(B)に示すように、低周波メラニン成分画像の色ムラ指標と官能評価値との相関関係は、相関係数r=0.42、P<0.001であり、色ムラ指標と官能評価値には有意な相関が見られた。
【0111】
次に、図10(C)は、中周波ヘモグロビン成分画像から算出されたヘモグロビン成分のムラ指標(色ムラ指標)と官能評価値との相関関係を示したものである。また、図10(D)は、低周波ヘモグロビン成分画像から算出されたムラ指標(色ムラ指標)と官能評価値との相関関係を示したものである。
【0112】
図10(C)に示すように、中周波ヘモグロビン成分画像の色ムラ指標と官能評価値との相関関係は、相関係数r=0.31、P<0.01であり、色ムラ指標と官能評価値には有意な相関が見られた。また、図10(D)に示すように、低周波ヘモグロビン成分画像の色ムラ指標と官能評価値との相関関係は、相関係数r=0.52、P<0.001であり、色ムラ指標と官能評価値には有意な相関が見られた。
【0113】
上述したように、本実施形態の色ムラ解析手段17により、所定の色ムラサイズの色素成分ごとに数値化された色ムラ指標は、人が知覚する「色ムラ」と良く対応していることが分かる。
【0114】
<色ムラ可視化方法>
次に、本実施形態の色ムラ解析手段17による色ムラ可視化方法について説明する。図11は、色ムラ可視化方法を説明するための図である。
【0115】
なお、図11に示すヒストグラムは、図9と同様に、色素成分算出手段16により算出された色素成分ごとの分布状態を、画像生成手段18により色ムラサイズごとに各色素成分の濃度ヒストグラムとして生成されたものである。
【0116】
図11(A)は、中周波画像の解析領域におけるメラニン成分の濃度ヒストグラムを示し、図11(B)は、低周波画像の解析領域におけるメラニン成分の濃度ヒストグラムを示している。
【0117】
また、図11(C)は、中周波画像の解析領域におけるヘモグロビン成分の濃度ヒストグラムを示し、図11(D)は、低周波画像の解析領域におけるヘモグロビン成分の濃度ヒストグラムを示している。
【0118】
図11(A)〜図11(D)に示すように、レベル0(色ムラなし)とされた画像J、画像L、画像N、画像Pのヒストグラムでは、ピーク値±0.1の範囲に画素が集中しており、メラニン成分及びヘモグロビン成分の濃度のとりうる値が狭い。
【0119】
一方、レベル3(色ムラあり)とされた画像K、画像M、画像O、画像Qヒストグラムでは、ピーク値±0.1以外の範囲に対しても画素が分布しており、メラニン成分及びヘモグロビン成分の濃度のとりうる値の幅は広い。
【0120】
上述したヒストグラムの特徴を踏まえ、本実施形態の色ムラ可視化方法では、人が知覚する「色ムラ」を最適に表示するため、ヒストグラムにおけるピーク値から所定値以上(例えばピーク値+0.1以上)の濃度を持つ領域に色づけを行うことにより可視化する。以下に具体例を示す。
【0121】
<色ムラ可視化の具体例>
上述した、本実施形態の色ムラ解析手段17による色ムラ可視化の具体例について説明する。図12は、中周波画像からメラニン成分の色ムラを可視化する例を示す図であり、図13は、低周波画像からメラニン成分の色ムラを可視化する例を示す図である。
【0122】
また、図14は、中周波画像からヘモグロビン成分の色ムラを可視化する例を示す図であり、図15は、低周波画像からヘモグロビン成分の色ムラを可視化する例を示す図である。
【0123】
ここで、図12(A)は、図12(B)に示すシミレベル0(色ムラなし)と評価された元画像(パネルNo.001)と、シミレベル3(色ムラあり)と評価された元画像(パネルNo.002)とをそれぞれ中周波で分解した中周波画像からメラニン濃度ヒストグラムを生成したものである。
【0124】
図12(A)に示すように、図12(B)のシミレベル0と評価された画像(パネルNo.001)のメラニン濃度ヒストグラムは、ピーク値±0.1の範囲に画素が集中している。一方、図12(B)のシミレベル3と評価された画像(パネルNo.002)のメラニン濃度ヒストグラムは、ピーク値±0.1以上の範囲に画素が分散している。
【0125】
本実施形態の色ムラ解析手段17は、図12(B)に示すシミレベル3の中周波画像に対して、図12(A)に示すシミレベル3のヒストグラムのピーク値から例えば0.1以上の濃度を持つ領域に色付けを行い、可視化する。
【0126】
ここで、図12(C)は、図12(A)に示す濃度ヒストグラム解析により得られるメラニン成分の濃度に対応した色ムラ表示例の一例を示す図である。まず、色ムラを表示するために、濃度ヒストグラムを解析して、メラニン成分の濃度平均値を算出し、濃度平均値=Amと設定する。
【0127】
また、図12(C)に示すように、人が知覚可能なメラニン濃度値を例えば0.10以上として、濃度平均値Am+0.10〜濃度平均値Am+0.15のメラニン濃度値に対応する色、濃度平均値Am+0.15〜濃度平均値Am+0.20のメラニン濃度値に対応する色等、濃度値を0.05ステップずつに分けてそれぞれの濃度値に対応する色を設定する。
【0128】
色ムラ解析手段17は、このように設定された色ムラ表示例に基づいて、濃度ヒストグラムの濃度値に対応する画像の画素に対して色付けを行う。これにより、例えば図12(B)に示すようなシミレベル3の中周波画像に対してメラニン成分の色ムラの可視化を行う。
【0129】
同様に、図13には、低周波画像に対してメラニン成分の色ムラの可視化を行った例、図14には、中周波画像に対してヘモグロビン成分の色ムラの可視化を行った例、図15の低周波画像に対してヘモグロビン成分の色ムラの可視化を行った例を示す。
【0130】
なお、上述した図12〜15に示す色ムラ可視化画像は、濃度ステップを模様等により設定して識別可能に表示させることもできる。
【0131】
上述したように、本実施形態によれば、肌の色ムラを所定の色ムラサイズの色素成分ごとに数値化して解析することが可能となる。すなわち、解析対象者の頬部位における色ムラを、複数の症状に応じた色ムラサイズごとに、数値化されたメラニン成分の色ムラ指標、ヘモグロビン成分の色ムラ指標から解析することが可能となる。
【0132】
また、本実施形態によれば、所定の色ムラサイズごとに、数値化した色素成分ごとの色ムラを人が知覚する「色ムラ」と対応させながら最適に表示させることも可能となる。
【0133】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施例に基づき具体的に説明したが、本
発明は上記実施例で説明したものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲
で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0134】
10 肌の色ムラ解析装置
11 入力手段
12 出力手段
13 記録手段
14 画像取得手段
15 周波数解析手段
16 色素成分算出手段
17 色ムラ解析手段
18 画像生成手段
19 制御手段
21 入力装置
22 出力装置
23 ドライブ装置
24 補助記憶装置
25 メモリ装置
26 CPU
27 ネットワーク接続装置
28 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頬の肌全体に分布している色素成分の分布状態から前記肌の色ムラを解析する肌の色ムラ解析装置であって、
前記頬の肌全体が撮影された画像を所定の周波数によって所定の色ムラサイズごとに分解する周波数解析手段と、
前記周波数解析手段により分解された所定の色ムラサイズの画像ごとに前記肌の色情報を取得し、取得した前記肌の色情報に基づき前記色素成分ごとの分布状態を算出する色素成分算出手段と、
前記色素成分算出手段により得られる色素成分の分布状態に基づき、前記所定の色ムラサイズの前記色素成分ごとに前記肌の色ムラを数値化して解析する色ムラ解析手段とを有することを特徴とする肌の色ムラ解析装置。
【請求項2】
前記色ムラ解析手段は、前記色素成分算出手段により得られる色素成分の分布状態から前記色素成分の濃度平均値より値の高い濃度領域を積算して前記数値化を行うことを特徴とする請求項1に記載の肌の色ムラ解析装置。
【請求項3】
前記色ムラ解析手段は、前記色素成分算出手段により得られる色素成分の分布状態から前記色素成分の濃度平均値を基準とし、前記濃度平均値から所定値以上の濃度領域を可視化することを特徴とする請求項1又は2に記載の肌の色ムラ解析装置。
【請求項4】
前記色ムラ解析手段は、前記色素成分算出手段により得られる色素成分の分布状態から前記色素成分の濃度平均値を基準とし、前記濃度平均値以上の濃度値と、前記濃度平均値以上の濃度値のそれぞれの画素数とを乗算し、乗算された値を積算して前記数値化を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の肌の色ムラ解析装置。
【請求項5】
前記周波数解析手段は、予め設定された低周波により前記撮影された画像から前記肌のシミ、頬の赤みによる色ムラサイズの画像に分解し、予め設定された中周波により前記撮影された画像から前記肌のにきび、シミそばかすによる色ムラサイズの画像に分解することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の肌の色ムラ解析装置。
【請求項6】
前記色素成分は、メラニン成分又はヘモグロビン成分であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の肌の色ムラ解析装置。
【請求項7】
前記色素成分算出手段によって算出された色素成分の分布状態を前記色素成分の濃度ヒストグラムとして生成する画像生成手段を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の肌の色ムラ解析装置。
【請求項8】
頬の肌全体に分布している色素成分の分布状態から前記肌の色ムラを解析する肌の色ムラ解析装置により実行される肌の色ムラ解析方法であって、
前記頬の肌全体が撮影された画像を所定の周波数によって所定の色ムラサイズごとに分解する周波数解析手順と、
前記周波数解析手順により分解された所定の色ムラサイズの画像ごとに前記肌の色情報を取得し、取得した前記肌の色情報に基づき前記色素成分ごとの分布状態を算出する色素成分算出手順と、
前記色素成分算出手順により得られる色素成分の分布状態に基づき、前記所定の色ムラサイズの前記色素成分ごとに前記肌の色ムラを数値化して解析する色ムラ解析手順とを有することを特徴とする肌の色ムラ解析方法。
【請求項9】
前記色ムラ解析手順は、前記色素成分算出手順により得られる色素成分の分布状態から前記色素成分の濃度平均値より値の高い濃度領域を積算して前記数値化を行うことを特徴とする請求項8に記載の肌の色ムラ解析方法。
【請求項10】
前記色ムラ解析手順は、前記色素成分算出手段により得られる色素成分の分布状態から前記色素成分の濃度平均値を基準とし、前記濃度平均値から所定値以上の濃度領域を可視化することを特徴とする請求項8又は9に記載の肌の色ムラ解析方法。
【請求項11】
前記色ムラ解析手順は、前記色素成分算出手順により得られる色素成分の分布状態から前記色素成分の濃度平均値を基準とし、前記濃度平均値以上の濃度値と、前記濃度平均値以上の濃度値のそれぞれの画素数とを乗算し、乗算された値を積算して前記数値化を行うことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の肌の色ムラ解析方法。
【請求項12】
前記周波数解析手順は、予め設定された低周波により前記撮影された画像から前記肌のシミ、頬の赤みによる色ムラサイズの画像に分解し、予め設定された中周波により前記撮影された画像から前記肌のにきび、シミそばかすによる色ムラサイズの画像に分解することを特徴とする請求項8乃至11のいずれか一項に記載の肌の色ムラ解析方法。
【請求項13】
前記色素成分は、メラニン成分又はヘモグロビン成分であることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか一項に記載の肌の色ムラ解析方法。
【請求項14】
前記色素成分算出手順によって算出された色素成分の分布状態を前記色素成分の濃度ヒストグラムとして生成する画像生成手順を有することを特徴とする請求項8乃至13のいずれか一項に記載の肌の色ムラ解析方法。
【請求項15】
頬の肌全体に分布している色素成分の分布状態から前記肌の色ムラを解析する肌の色ムラ解析プログラムであって、
コンピュータを、
前記頬の肌全体が撮影された画像を所定の周波数によって所定の色ムラサイズごとに分解する周波数解析手段、
前記周波数解析手段により分解された所定の色ムラサイズの画像ごとに前記肌の色情報を取得し、取得した前記肌の色情報に基づき前記色素成分ごとの分布状態を算出する色素成分算出手段、
前記色素成分算出手段により得られる色素成分の分布状態に基づき、前記所定の色ムラサイズの前記色素成分ごとに前記肌の色ムラを数値化して解析する色ムラ解析手段として機能させる肌の色ムラ解析プログラム。
【請求項16】
前記色ムラ解析手段は、前記色素成分算出手段により得られる色素成分の分布状態から前記色素成分の濃度平均値より値の高い濃度領域を積算して前記数値化を行うことを特徴とする請求項15に記載の肌の色ムラ解析プログラム。
【請求項17】
前記色ムラ解析手段は、前記色素成分算出手段により得られる色素成分の分布状態から前記色素成分の濃度平均値を基準とし、前記濃度平均値から所定値以上の濃度領域を可視化することを特徴とする請求項15又は16に記載の肌の色ムラ解析プログラム。
【請求項18】
前記色ムラ解析手段は、前記色素成分算出手段により得られる色素成分の分布状態から前記色素成分の濃度平均値を基準とし、前記濃度平均値以上の濃度値と、前記濃度平均値以上の濃度値のそれぞれの画素数とを乗算し、乗算された値を積算して前記数値化を行うことを特徴とする請求項15乃至17のいずれか一項に記載の肌の色ムラ解析プログラム。
【請求項19】
前記周波数解析手段は、予め設定された低周波により前記撮影された画像から前記肌のシミ、頬の赤みによる色ムラサイズの画像に分解し、予め設定された中周波により前記撮影された画像から前記肌のにきび、シミそばかすによる色ムラサイズの画像に分解することを特徴とする請求項15乃至18のいずれか一項に記載の肌の色ムラ解析プログラム。
【請求項20】
前記色素成分は、メラニン成分又はヘモグロビン成分であることを特徴とする請求項15乃至19のいずれか一項に記載の肌の色ムラ解析プログラム。
【請求項21】
前記色素成分算出手段によって算出された色素成分の分布状態を前記色素成分の濃度ヒストグラムとして生成する画像生成手段を有することを特徴とする請求項15乃至20のいずれか一項に記載の肌の色ムラ解析プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−240086(P2011−240086A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117466(P2010−117466)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】