説明

肌質改善用セット

【課題】 人工皮膚シートによる処置方法と光線治療器による処置方法とを組み合わせることによって、使用者が自ら行う行為の作業性を改善し、肌質改善作用の即効性を向上させることのできる肌質改善用セットを提供する。
【解決手段】 溶媒としての水又はローションに可溶の蛋白質としてのフィブロインを含むシート1と、このシート1を溶媒に溶かして調製した溶剤を顔面などの皮膚面に塗布した使用者に、アーク放電によって発生する可視光線を照射するための光線治療器10と、を含む。光線治療器10は、使用者の溶剤塗布箇所、又は、使用者の背後から右肩に可視光線を照射する機能を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌質改善用セット、詳しくは、皺、リフティング、ニキビ跡などの肌質を改善するのに有益な肌質改善用セットに関する。
【背景技術】
【0002】
皺やニキビなどで失われた肌本来の美しさを再生するのに人工皮膚シートが従来より知られていた。この人工皮膚シートは、縫合糸や人工皮膚などとして医療現場で活用されているシルク(絹)の再生機能に着目し、エステティックサロンでの施術に応用できるように人工皮膚をシート化したものである。そして、この人工皮膚シートは、人間の皮膚と同じアミノ酸で構成されているために人の肌を正常な状態に保つことに好適に用い得る素材であるとされている。ここで採り上げている人工皮膚シートの主成分は、シルクの75%を構成しているといわれるフィブロイン100%でなる。フィブロインは、グリシン、アラニン、セリン、チロシンなどの18種類のアミノ酸で構成されていると云われ、蚕の繭玉を形成している繊維状の蛋白質でなる。
【0003】
この人工皮膚シートを用いた皮膚再生のメカニズムは、下層から上層に浮き上がるようなムーブメント、すなわち、皺を形成している皮溝にアミノ酸が入り込み、表面に人工的な皮膚を作り出すというものである。そして、人工皮膚シートを顔面などの人体の処置部位に貼り付けておくと、上記した皮膚再生メカニズムと、人工皮膚シートの処置部位に対する密封包帯効果(ODT効果)とが相乗して処置部位で皮膚再生能力が復活し、凹凸の少ない滑らかな美しい肌が再生されると云われている。また、上記のODT効果は処置部位で上記の皮膚再生メカニズムを繰り返し行わせることによってさらに高まり、また、そのようにして得られる皮膚再生能力の復帰作用は数日間持続すると云われている。
【0004】
上記の人工皮膚シートを用いる従来の皮膚改善手順の一例を、図6を参照して次に説明する。所定の大きさに分断した人工皮膚シートを、2ml程度の水又はローションに溶かして指先で均一に混ぜることにより溶剤を調製する(S1)。次にこの溶剤を処置部位、たとえば顔面から首筋に亘って指先で伸ばすように万遍なく塗布する(S2)。溶剤の塗布後は、塗布した溶剤を5分間程度かけて自然乾燥させる(S3)。ここまでの一連の工程(S1→S2→S3)を3回繰り返した後、さらにもう1回だけ上記工程(S1→S2→S3)を繰り返し、最後に蒸しタオル(ホットタオル)で処置部位を10〜15秒間程度蒸らし(S4)、溶剤を拭き取る(S5)。
【0005】
一方、繭糸から分離したフィブロインの非結晶性フィルムからなる創傷被覆剤が従来より知られている(たとえば特許文献1又は特許文献2参照)。また、粘着性発熱シートを人の顔面に貼着し、その発熱シートによる密封効果と温熱効果との相乗作用で顔面の汚れや老廃物を除去することなどにより美肌に保つことも従来より提案されている(たとえば特許文献3参照)。
【0006】
上記した人工皮膚シートを用いる処置方法は、人工皮膚シートを溶媒としてのローション(化粧水)に溶かして調製した溶剤を処置部位に塗布して乾燥させることを数回に亘って繰り返すというものである。
【0007】
この処置方法に対して、可視光線を人体に照射することによる理学的な光線治療法も知られており、この理学療法に用い得る光線治療器としての炭素アーク燈治療器が従来提案されていた(たとえば特許文献4参照)。この光線治療器は、炭素電極棒間に所定の電圧を印加して可視光線であるアーク光を発生させ、そのアーク光としての可視光線を開度調節可能な投光口から処置部位又は肩部に照射することができるようになっていて、このような処置方法を行うと、人間の体液としてのリンパ液や血液の流れが活発化し、リンパ液や血液により抗体組織が活性化されて自然治癒力が高まり、肌質改善作用や肩凝り改善作用などが得られると云われている。
【0008】
【特許文献1】特開平09−192210号公報
【特許文献2】特開平11−070160号公報
【特許文献3】特開平11−299818号公報
【特許文献4】特開2003−144560公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
冒頭で説明した人工皮膚シートを用いる処置方法は、人工皮膚シートを溶媒としてのローション(化粧水)に溶かして調製した溶剤を処置部位に塗布して乾燥させることを数回(上記事例では4回)に亘って繰り返すことが推奨されていて、その繰り返しごとに人工皮膚シートを指先でローションに溶かすという面倒な溶剤調製ステップS1や5分程度の時間のかかる自然乾燥ステップS3を行わねばならないという煩わしさがある。
【0010】
一方、特許文献4に記載されている光線治療器としての炭素アーク燈治療器は、それを卓上などに設置してその投光口の前で使用者が処置部位又は肩部を上記投光口から出る可視光線に曝しておくだけで済み、使用者は上記した溶剤調製ステップS1などの特別な面倒な操作を自ら行う必要がないという長所を備えている。
【0011】
本発明は以上の状況に鑑みてなされたものであり、人工皮膚シートによる処置方法と光線治療器による処置方法とを組み合わせることによって、人工皮膚シートだけを用いる処置方法についての上記の煩わしさを顕著に改善し、併せて、その処置方法による肌質改善作用の即効性を向上させることを可能にすることのできる肌質改善用セットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る肌質改善用セットは、溶媒としての水又はローションに可溶の蛋白質としてのフィブロインを含むシートと、上記シートを上記溶媒に溶かして調製した溶剤を顔面などの皮膚面に塗布した使用者に、アーク放電によって発生する可視光線を照射するための光線治療器と、を含む、というものである。
【0013】
本発明において、上記シートは、所要量の上記溶剤に対する溶解比率を調節可能にするために小片に分断可能に形成されていることが望ましく、また、上記光線治療器は、上記溶剤を塗布した上記使用者の溶剤塗布箇所に可視光線を照射する機能、又は、上記使用者の右肩の背後から肩甲骨と胸椎の間で肋骨相互の隙間に可視光線を照射する機能を備えていることが望ましい。
【0014】
本発明の作用ないし効果については後述する実施形態を参照して詳細に説明する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、人工皮膚シートによる処置方法と光線治療器による処置方法とを組み合わせることによって、人工皮膚シートだけを用いる処置方法についての上記の煩わしさ、たとえばフィブロインを含むシートを溶媒に溶かすという溶剤調製ステップを行う回数を最少限度に抑えることができるようにして使用者が自ら行う作業性を顕著に改善したものであり、併せて、肌質改善作用の即効性をさらに向上させたものである。したがって、使用者にとっては、人工皮膚シートを溶媒としての水又はローションに溶かして調製した溶剤を処置部位に塗布して乾燥させることを1回だけ行い、その溶剤の塗布箇所に光線治療器で発生させたアーク放電による可視光線を照射するという簡単でかつ手間のかからない操作を行うだけで、冒頭で説明した人工皮膚シートによる処置方法、すなわち人工皮膚シートを溶媒としての水又はローションに溶かして調製した溶剤を処置部位に塗布して乾燥させることを数回に亘って繰り返すという処置方法を行った場合と比べて遜色のない肌質改善効果が得られることになる。このことから、本発明に係る肌質改善用セットを用いることにより、老若男女を問わず、誰でもが手軽に自己の肌質を美しく改善することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明に係る肌質改善用セットを用いる処置手順の説明図、図2(A)は同肌質改善用セットに用いられるシート1の平面図、同(B)は同シート1を分断した状態の平面図、図3は同肌質改善用セットの光線治療器の外観図、図4は同光線治療器の電気回路図、図5は光線治療器の使用方法説明図である。
【0017】
この実施形態にかかる肌質改善用セットは、図2(A)に示したシート1と図3に示した光線治療器10とを含んでいる。
【0018】
図2(A)のシート1には、冒頭で説明した人工皮膚シートが用いられている。したがって、シート1は、シルクの75%を構成しているといわれるフィブロイン100%を主成分としていて、グリシン、アラニン、セリン、チロシンなどの18種類のアミノ酸で構成されている。また、このフィブロインは、蚕の繭玉を形成している繊維状の蛋白質である。そして、このシート1を用いた皮膚再生のメカニズムは、皺を形成している皮溝にアミノ酸が入り込み、表面に人工的な皮膚を作り出すというものである。このことから、シート1だけを用いて図6を参照して説明した処置方法を行った場合でも、そのシート1による皮膚再生メカニズムとODT効果とが相乗して処置部位で皮膚再生能力が復活し、凹凸の少ない滑らかな美しい肌が再生される。
【0019】
図2(A)(B)を併せ見ることによって判るように、1枚のシート1のサイズは定型になっている。図例では、定型のシート1にミシン目などの破断線イが形成されていて、その破断線イを利用してその定型のシート1を同図(B)ように一定サイズの小片1aに分断することができるようになっている。したがって、定型のシート1を分断して得られる小片1aを何枚用いるかによって、フィブロインの使用量を定めることができる。
図3に示した光線治療器10は、箱形のベース部13とこのベース部13の前半部に開閉方向揺動可能に取り付けられたカバー部14とを備えていて、ベース部13の前縁とカバー部14の前縁とによって横向きに開口する矩形の投光口12が形成されている。このため、カバー部14を上下に揺動させることによって投光口12の開口面積を拡縮させることが可能である。図例の光線治療器10では、カバー部14の揺動角度を調節した後、そのカバー部14に設けた位置決め用ねじ15をベース部13のねじ孔16にねじ込むことによって投光口12の開口面積を拡大することができ、また、位置決め用ねじ15をねじ孔16から外してカバー部14を最も下位位置に揺動させることによって投光口12の開口面積を縮小することができるようになっている。20は把手、30は通風口、40はパンタグラフ機構によって形成された昇降機構である。
【0020】
この光線治療器10は、図4に示した電気回路を備えている。図4において、Aはアーク放電部で、このアーク放電部1は一対の炭素電極棒11,11の先端部相互間に形成されている。これらの炭素電極棒11には商用電源7に接続されるVラインとWラインとの2系統が接続され、Vラインにスイッチ6とコイル状の抵抗線2とが直列に介在され、Wラインにスイッチ6とサーモスイッチ5とが直列に介在されている。また、VラインとWラインとの間に、冷却ファン3を駆動させるためのモータ4とパイロットランプ8とが並列に介在されている。そして、この電気回路が図3に示したベース部13の内部空間に収容されていて、商用電源7がベース部13の外部へ引き出されている。
【0021】
図3及び図4で説明した光線治療器10では、投光口12の開口面積を調節した後、商用電源7から給電してアーク放電部1でアーク放電を行わせると、投光口12から可視光線が横向きに放出される。こうして投光口12から放出された可視光線が人体に照射されると、その可視光線の温熱作用によって可視光線の照射部位の内部が42℃程度に温められ、これによってリンパ液や血液といった体液の流通が促進され、リンパ液や血液により抗体組織が活性化される。また、この光線治療器10は、卓上などに設置することが可能であり、その置き場所や投光口12の開口面積の大きさ、さらには、投光口12から使用者までの距離を適切に選定(一般的には肌が気持ちよく感じられる15〜20cmが適切である)することによって、可視光線を、使用者の顔面やその他の部位に効率よく照射することができることは勿論、使用者の右肩の背後から肩甲骨と胸椎の間で肋骨相互の隙間にも勿論照射することができる。
【0022】
上記したシート1と光線治療器10とを含む実施形態の肌質改善用セットを用いた処置方法の一例を図1を参照して説明する。
【0023】
上記シート1を2ml程度の溶媒、具体的には水又はローションに溶かして指先で均一に混ぜることにより適度の濃度の溶剤を調製する(S11)。この溶剤調製ステップS11自体は、図6を参照して説明した溶剤調製ステップS1と同様である。この溶剤調製ステップS11を行う際、溶剤の濃度を適度に選択することが望まれる。この点に関し、シート1を図2(B)のように何枚かの小片1aに分断することができるようになっていることを利用して、1枚のシート1の全部を用いると濃度が濃すぎる場合に、その小片1aの枚数を増減して濃度を適度に調節することができるという利便がある。また、小片1aのサイズが決まっているので、何枚の小片1aを用いるかによって濃度を毎回一定に定めることができるとうい利便もある。
【0024】
溶剤調製ステップS11を経ることによって調製した溶剤を処置部位、たとえば顔面の目尻下などに指先で伸ばすように万遍なく塗布する(S12)。溶剤の塗布後は、塗布した溶剤を5分間程度かけて自然乾燥させる(S13)。ここまでの一連の工程(S11→S12→S13)は図6を参照して説明したところと同様である。
【0025】
上記自然乾燥ステップS13の後、又は、その溶剤塗布後に自然乾燥ステップS13を行わずに直ちに、図3などを参照して説明した光線治療器10を卓上などにおき、その投光口12を溶剤塗布箇所に向け、可視光線を溶剤塗布箇所に5〜10分間程度照射する(S14)。この場合、光線治療器10の投光口12から塗布箇所までの距離を15〜20cmに定めることが適切である。この可視光線照射ステップS14での可視光線照射時間や投光口から塗布箇所までの距離は、肌荒れ程度やその他の使用者の都合に合わせて適宜変更することのできる事項である。
【0026】
こうして可視光線照射ステップS14を行った後、最後に蒸しタオル(ホットタオル)で処置部位を10〜15秒間程度蒸らし(S15)、溶剤を拭き取り(S16)、処置を終了する。蒸らしステップS15や溶剤拭取りステップS16は、図6を参照して説明した蒸らしステップS4や溶剤拭取りステップS5と同様である。ここでの蒸らしステップS15の時間も使用者の都合に合わせて適宜変更することのできる事項である。
【0027】
以上の処置方法を顔面の目尻下の肌に対して1回行うだけで、皺や肌荒れが目立ちにくくなったことを確認しており、その効果は、図6を参照して説明した人工皮膚シートを用いる処置方法と同等であると認められた。
【0028】
上記処置方法では、溶剤塗布箇所に光線治療器10で発生させた可視光線を照射した事例を説明したけれども、可視光線の照射箇所は、必ずしも溶剤塗布箇所に定める必要は必ずしもない。すなわち、冒頭で説明したように、光線治療器10で発生したアーク光としての可視光線は、人間の体液としてのリンパ液や血液の流れを活発化させることを通じて、抗体組織を活性化させるものであり、リンパ液や血液の流れを活発化させるためには、人間の身体の中でも右肩の背後から肩甲骨と胸椎の間で肋骨相互の隙間に照射することが有効であることが判っている。そのため、溶剤塗布箇所が目尻下などの顔面であっても、光線治療器10による可視光線の照射箇所を、使用者の右肩の背後から肩甲骨と胸椎の間で肋骨相互の隙間に定めることによって、より効率のよい肌質改善効果が得られる。
【0029】
図5は光線治療器10のそのような使用方法を説明的に示したものである。すなわち、同図のように、使用者Mの背後の卓上に光線治療器10を設置し、その投光口から出た可視光線を右肩部付近に照射することによって、可視光線の照射箇所が、使用者の右肩の背後から肩甲骨と胸椎の間で肋骨相互の隙間に定められる。
【0030】
図1で説明した処置方法を、図6を参照して説明した人工皮膚シートを用いる処置方法と対比することによって判るように、本発明に係る肌質改善用セットを用いる図1で説明した処置方法は、溶剤調製、溶剤塗布、乾燥などの各ステップを1回だけ行えばよいので、それらの各工程を数回に亘って繰り返す図6の処置方法に比べて、使用者が自ら行う煩わしい溶剤調製作業を行う回数が1回だけで済む。そのため、使用者が自ら行う作業性が顕著に改善され、肌質改善作用の即効性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る肌質改善用セットを用いる処置手順の説明図である。
【図2】(A)は同肌質改善用セットに用いられるシート1の平面図、(B)は同シートを分断した状態の平面図である。
【図3】同肌質改善用セットの光線治療器の外観図である。
【図4】同光線治療器の電気回路図である。
【図5】光線治療器の使用方法説明図である。
【図6】人工皮膚シートを用いる従来の処置手順の一例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0032】
M 使用者
1 シート
1a シートの小片
10 光線治療器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒としての水又はローションに可溶の蛋白質としてのフィブロインを含むシートと、上記シートを上記溶媒に溶かして調製した溶剤を顔面などの皮膚面に塗布した使用者に、アーク放電によって発生する可視光線を照射するための光線治療器と、を含むことを特徴とする肌質改善用セット。
【請求項2】
上記シートは、所要量の上記溶剤に対する溶解比率を調節可能にするために小片に分断可能に形成されている請求項1に記載した肌質改善用セット。
【請求項3】
上記光線治療器は、上記溶剤を塗布した上記使用者の溶剤塗布箇所に可視光線を照射する機能を備えている請求項1に記載した肌質改善用セット。
【請求項4】
上記光線治療器は、上記使用者の右肩の背後から肩甲骨と胸椎の間で肋骨相互の隙間に可視光線を照射する機能を備えている請求項1に記載した肌質改善用セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−117618(P2006−117618A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309827(P2004−309827)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(595105928)日本ヘルスファーム株式会社 (1)
【Fターム(参考)】