説明

肝臓前駆細胞の馴化培地

本発明は、再生医療の分野のものである。非卵形多能性肝臓前駆細胞の馴化培地が組織再生効果を発揮することが見出された。したがって、無細胞馴化培地の調製物は、損傷および臓器不全、好ましくは肝臓および/または損傷または不全の処置に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的医薬品および再生医学の分野のものである。
【背景技術】
【0002】
幹細胞調製物は、ヒトまたは動物の組織に対して再生効果を発揮することが判明した。劇症肝不全(FHF)の治療におけるバイオ人工肝臓の支援の有効性を試験する臨床試験からはいくつかの有望な結果が得られているが、現行の医療機器は、主に機能的に安定なヒト肝細胞源がないことが原因で、十分な効力および日常的な使用のための信頼性が立証されていない(非特許文献1)。肝臓幹細胞はもちろん、他の組織由来の幹細胞でさえ、代替ヒト肝細胞源を与える可能性がある。幹細胞は、骨髄に加えて、肝臓および中枢神経系のような成体組織に存在し、以前に知られていたものよりも非常に大きな適応性を有する。
【0003】
特許文献1に記載のヒト肝臓多能性前駆細胞/幹細胞は、様々な組織細胞型に分化すること、および臓器再生効果を発揮することが判明した。これらの細胞は、肝細胞マーカーを発現する非卵形ヒト肝臓多能性前駆細胞株由来のものである。
【0004】
特許文献1には、また、
(i)成熟肝細胞の死および類上皮細胞形態を有する生存細胞の集団の選択まで細胞培養培地中で成体肝臓由来ヒト成熟肝細胞を培養する工程;
(ii)hEGF(ヒト上皮増殖因子)およびbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)を加えた、哺乳動物の細胞の増殖に必要な通常の無機塩、アミノ酸およびビタミンを含む血清含有グルコース含有培養培地中で培養することによって類上皮細胞形態を有する生存細胞の集団を拡大させる工程
を含む、様々な細胞型に分化する能力を有する上記ヒト肝臓多能性前駆細胞/幹細胞を単離する方法であって、特に成熟肝細胞を凍結保護剤の存在下にて血清含有培養培地中で冷凍し、次いで、工程(i)による培養の前に解凍することを特徴とする方法が開示されている。
【0005】
特許文献1のヒト多能性前駆細胞(本明細書中でHLSCと表す)およびその調製方法は、出典明示によりその全体として本明細書の一部を構成する。
【0006】
間葉系幹細胞(MSC)の調製物は、組織に対して再生効果を発揮することが判明した。例えば、骨髄由来間葉系幹細胞は、可溶性細胞外マトリックス糖タンパク質、サイトカインおよび増殖因子を包含する多くの栄養分子を分泌することによって造血を自然に支えていることが知られている。
【0007】
しかしながら、幹細胞調製物は、投与した場合に免疫反応を引き起こすという主要な欠点を有する。いくつかの幹細胞調製物は、癌を引き起こす可能性さえある。
【0008】
Parekkadanら(非特許文献2)は、最初に、人工重篤肝臓損傷のラットモデルにおいてそれらの効力を試験するために馴化培地(CM)の送達のような様々なMSC処理を評価した。この文献では、ラットに、D−ガラクトサミン(Gal−N)の注射を合計2回腹腔内投与した。Parekkadanのグループは、次なる研究(非特許文献3)で、MSC−CMの全身注入が、詳しくは細胞死の阻害および修復プログラムの刺激によって、急性損傷肝臓における肝保護反応を引き起こすことができるかを研究した。このグループは、致死量以下D−ガラクトサミン誘導療法を使用して、有意な延命効果およびMSC−CM処置後の肝臓酵素放出の予防を立証した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2006/126236号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Kobayashi N, Okitsu T, Tanaka N. Cell choice for bioartificial livers. Keio J Med. 2003;52(3):151-7
【非特許文献2】Parekkadan B, van Poll D, Suganuma K, Carter EA, Berthiaume F, Tilles AW, Yarmush ML. Mesenchymal stem cell-derived molecules reverse fulminant hepatic failure. PLoS ONE. 2007 Sep 26;2(9):e941
【非特許文献3】Van Poll D, Parekkadan B, Cho CH, Berthiaume F, Nahmias Y, Tilles AW, Yarmush ML. Mesenchymal stem cell-derived molecules directly modulate hepatocellular death and regeneration in vitro and in vivo. Hepatology. 2008 Jan 24;47(5):1634-1643
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記した幹細胞治療の欠点を考慮すると、再生医療分野において非常に有効な従来の調製物が通常細胞を含有しているということは、克服されるべき技術的課題である。
【0012】
かくして、本発明の目的は、再生医療分野において医薬組成物として有効であるが、細胞を含まないことによって細胞(特に、幹細胞)を含有している従来技術の調製物が引き起こす欠点を回避する、調製物を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、再生医療分野において有効であるが、細胞を含まないことによって細胞(特に、幹細胞)を含有している従来技術の調製物が引き起こす欠点を回避している、医薬組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的のおよび他の目的は、特許請求の範囲の独立項にて定義されている調製物および方法によって達成される。特許請求の範囲の従属項は、本発明の好ましい実施態様を対象とする。従属項および独立項のどちらの主題も本明細書の不可欠な部分を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
(原文に記載なし)
【発明を実施するための形態】
【0016】
劇症肝不全(FHF)のマウスモデルを使用して、肝臓前駆細胞株(例えば、国際公開第2006/126236号に記載の非卵形ヒト肝多能性前駆細胞株)を培養することによって生産される無細胞馴化培地(無細胞CM)は、肝臓に対する再生効果を発揮することが本願発明者らによって示された。肝臓前駆細胞株の培養によって生産された無細胞馴化培地(無細胞CM)は、臓器不全の治療、特に肝不全および腎不全の治療に有効であることが示された。驚くべきことに、肝臓前駆細胞株−CMは、同一条件下で調製された間葉系幹細胞−CMよりも有意に効果的であることが判明した。
【0017】
特に、本明細書の実施例1に記載する研究において、6〜7週齢の雄性SCIDマウスにLPS 0.125μgおよびD−ガラクトサミン(GalN)18mgを含有する生理食塩水500μLを腹腔内注射してFHFを誘発させた。LPSおよびGalN投与の30分後、1時間後および3時間後に、マウスに、回転式バイオリアクター中にて培養したHLSC由来の馴化培地3mlを腹腔内注射した。馴化培地の予備的分析により、サイトカイン、ケモカインおよび増殖因子の大部分が明らかになった。アラニントランスアミナーゼおよびアスパラギン酸トランスアミナーゼの血清中濃度は、損傷誘発後に顕著に増加し、馴化培地処置を伴う注射の6日後には有意に減少した。他方、BrdU、PCNAおよびタネルアッセイによって評価された肝組織の病理組織学的分析により、アポトーシスおよび壊死のインデックスの低下ならびに組織形態の回復が明らかになった。
【0018】
これらの研究は、炎症状態の治療および臓器再生におけるHLSC由来馴化培地の可能な治療用途の最初の実験的証拠をもたらした。
【0019】
かくして、本発明の第1の態様は、肝臓前駆細胞株、好ましくは非卵形ヒト肝臓多能性前駆細胞株、より好ましくは国際特許出願国際公開第2006/126236号(出典明示により本明細書の一部を構成する)に記載の非卵形ヒト肝臓多能性細胞株を培養することにより得ることができる無細胞馴化培地からなる調製物である。
【0020】
上記で定義した調製物の有効量を含む医薬組成物もまた本発明の範囲内である。
【0021】
以下、本発明の主題をなす肝臓前駆細胞株由来の無細胞馴化培地は、「無細胞HLSC−CM」と記す。
【0022】
「HLSC」なる用語は、肝臓多能性前駆細胞/幹細胞株をいう。好ましくは、「HLSC」なる用語は、非卵形肝臓多能性細胞株をいい、より好ましくは国際公開第2006/126236号に記載の肝臓多能性前駆細胞/幹細胞株をいう。よさらに好ましくは、HLSC細胞株は、国際公開第2006/126236号の請求項1〜10のいずれかにおいて定義されている特徴および/または国際公開第2006/126236号の第7頁の表1に集約されている特徴を有する。このような特徴は、出典明示により本明細書の一部を構成する。
【0023】
本発明の主題をなす無細胞HLSC−CMは、そのままでまたは濃縮形態で医薬組成物としての使用に適している。濃縮形態は、例えば、少なくとも約5倍、好ましくは少なくとも約10倍、より好ましくは少なくとも約20倍、さらに好ましくは約25倍濃縮されている。
【0024】
好ましくは、本発明の無細胞HLSC−CMは、当業者に知られているGMP条件下で培養された、肝臓多能性前駆細胞/幹細胞、好ましくは国際公開第2006/126236号に記載のHLSC細胞株から得られる。別法として、当業者に知られているBAL(人工肝臓)系中で培養された、肝臓多能性前駆細胞/幹細胞、好ましくは国際公開第2006/126236号に記載のHLSC細胞株から得ることができる。
【0025】
肝臓多能性前駆細胞/幹細胞の増殖およびその無細胞馴化培地(CM)の回収のためのGMP条件の一例を以下に記載する。
【0026】
肝臓多能性前駆細胞/幹細胞は、ウシ胎仔血清(FCS)(好ましくは約10%の濃度)、hEGF(ヒト上皮増殖因子)およびbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)の存在下で前駆幹細胞を培養することにより増殖工程が行われる国際公開第2006/126236号に記載の方法によって単離される。FCS、bFGFおよびhEGFは、好ましくは、GMP級、例えばInvitrogen製のものである。
【0027】
FCSはヒトへの注射に適さない異種タンパク質であるので、GMP条件下の馴化培地を回収するために培養物からFCSを除去する。そのためには、細胞を洗浄し、例えばGMP級ヒトアルブミンを添加したアルファMEMからなる回収用培地中にて24時間培養する。アルブミンの濃度は、好ましくは、約0.05%である。次いで、遠心分離または濾過により無細胞馴化培地を回収する。
【0028】
上記のインビボ実験において、劇症肝不全(FHF)の動物モデル(SCIDマウス)への本発明の無細胞HLSC−CMの投与が、MSC−CMで処置したSCIDマウスよりも有意な生存利益を提供することが示された。
【0029】
かくして、本発明の別の態様は、肝臓前駆細胞株、好ましくは非卵形ヒト肝臓多能性前駆細胞株、より好ましくは国際特許出願国際公開第2006/126236号に記載の非卵形ヒト肝臓多能性細胞株を培養することにより得られる、医薬として用いるための無細胞馴化細胞培養培地である。
【0030】
好ましい実施態様によると、該薬剤は、臓器の不全および/または損傷、好ましくは肝臓および/または腎臓の不全および/または損傷の治療のためのものである。
【0031】
また、本発明者らは、上記HLSCの培養により生産されるCMの臓器再生能を少なくとも一部模倣する能力を有するタンパク質混合物からなる単純医薬組成物を提供するために、これらのタンパク質(例えば、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子および/または他のタンパク質)を同定するために、上記CMの有益な効果に有意に関与すると考えられる本発明の無細胞HLSC−CMの組成物を分析した。
【0032】
かくして、本発明の別の態様は、少なくとも肝細胞増殖因子(HGF)、インターロイキン6(IL−6)およびインターロイキン8(IL−8)の混合物の医薬上有効量を含む単純医薬組成物である。
【0033】
好ましい実施態様では、該単純医薬組成物は、少なくとも肝細胞増殖因子(HGF)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン8(IL−8)および血管内皮増殖因子(VEGF)の混合物の医薬上有効量を含む。
【0034】
別の実施態様では、該単純医薬組成物は、少なくとも肝細胞増殖因子(HGF)、インターロイキン6(IL−6)、インターロイキン8(IL−8)およびマクロファージ刺激タンパク質(MSP)および任意の血管内皮増殖因子(VEGF)の混合物の医薬上有効量を含む。
【0035】
さらに別の実施態様では、該単純医薬組成物は、上記定義の実施態様のいずれかによるタンパク質混合物の医薬上有効量、およびアクチビンC、活性化白血球細胞接着分子(ALCAM)、ケモカイン(C−Cモチーフ)受容体4(CCR4)、システインリッチ膜貫通BMP制御因子1(コーディン様)(CRIM)、デコリン、エクトジスプラシンA2(EDA−A2)、エンドセリン、線維芽細胞増殖因子受容体様1(FGF R5)、グリピカン3、増殖関連腫瘍性タンパク質(GRO)、インスリン様増殖因子結合タンパク質6(IGFBP−6)、インスリン様増殖因子1(IGF−1)、インターロイキン20受容体、アルファ(IL−20 R アルファ)、クリングル含有膜貫通タンパク質2(Kremen−2)、潜在型トランスフォーミング増殖因子ベータ結合タンパク質1(潜在型TGF−ベータbp1)、水晶体線維の主要内在性タンパク質(MIP−2)、MSPベータ鎖、オステオプロテジェリン/TNFRSF11B(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー11b)、可溶性gp130(sgp130)、分泌タンパク質、酸性、システインリッチ(オステオネクチン)(SPARC)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるタンパク質を含む。
【0036】
本発明の単純医薬組成物における好ましいサイトカイン濃度範囲は、以下のとおりである:
HGF: 1〜100ng/ml、好ましくは5〜80ng/ml、より好ましくは10〜65ng/ml;
IL−6: 10〜200ng/ml、好ましくは20〜100ng/ml、より好ましくは30〜50ng/ml;
IL−8: ≧35ng/ml、好ましくは50-600ng/ml、より好ましくは100-300ng/ml;
VEGF(存在する場合): 10〜400ng/ml、好ましくは20〜250ng/ml、より好ましくは35〜175ng/ml;
MSP(存在する場合): 1〜100pg/ml、好ましくは5〜80pg/ml、より好ましくは5〜65pg/ml。
【0037】
しかしながら、本発明の範囲は、また、単純医薬組成物の希釈形態または濃縮形態も含む。濃縮形態は、例えば少なくとも約5倍、好ましくは少なくとも約10倍、より好ましくは少なくとも約20倍、さらにより好ましくは約25倍濃縮されている。希釈形態は、例えば少なくとも約5倍、好ましくは少なくとも約10倍、より好ましくは少なくとも約20倍、さらにより好ましくは少なくとも約25倍希釈されている。
【0038】
本発明の単純医薬組成物は、薬剤、特に臓器の不全および/または損傷、好ましくは肝臓および/または腎臓の不全および/または損傷の治療のための薬剤として使用するのに適している。好ましい実施態様によると、当該医薬組成物は、以下のサイトカイン投与量を投与するように処方される:
HGF: 0.01〜1mg/kg、好ましくは0.03〜0.8mg/kg、より好ましくは0.1〜0,5mg/kg;
インターロイキン6(IL−6): 0.01〜1mg/kg、好ましくは0.03〜0.8mg/kg、より好ましくは0.05〜0.5mg/kg;
インターロイキン8(IL−8): 0.01〜1mg/kg、好ましくは0.02〜0.8mg/kg、より好ましくは0.03〜0,5mg/kg;
VEGF(存在する場合): 0.01〜1mg/kg、好ましくは0.02〜0.8mg/kg、より好ましくは0.04〜0.5mg/kg;
MSP(存在する場合): 0.01〜1mg/kg、好ましくは0.02〜0.8mg/kg、より好ましくは0.08〜0.5mg/kg。
【0039】
特に好ましい実施態様では、これらのサイトカイン投与量は、1日1回投与される。
【0040】
当然のことながら、上記定義の単純医薬組成物は、単に、上記のHLSC培養により得られるCMの臓器再生能を少なくとも一部模倣する能力を有する単純医薬組成物の非限定的な例として提供される。
【0041】
本発明のさらなる目的および利点は、単に例証として提供される以下の実施例から明らかになるであろう。
【0042】
また、当然のことながら、本発明の医薬組成物および方法のさらなる実施態様は、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の実施例に基づいて予想され得る。
【実施例】
【0043】
実施例1 予備インビボ研究
HLSCおよびMSC細胞培養物の調製
国際公開第2006/126236号の記載に従って、ヒト肝臓前駆細胞(HLSC)を単離した。該細胞を60%〜70%の集密度に増殖させ(75cm2フラスコ1個につき約2×106HLSC)、完全に洗浄し、0.05%ヒト血清アルブミン(GMP生産)を添加した無血清アルファMEM培地10mL中にて培養した。既報のとおり骨髄穿刺液からヒト間葉系幹細胞(MSC)を単離し、増殖させ、特徴付けた。MSCの増殖をサポートするように特に処方された低血清(2%FCS)培地であるMesenPRO RSTM培地中にてMSCを培養した。
【0044】
馴化培地の調製
無細胞馴化培地は、MSCおよびHLSCの培養の24時間後に遠心分離によりこの無細胞馴化培地を回収することによって調製した。実験は、2×106細胞の細胞マスを用いて行った。次いで、3kDa分子量カットオフを有する限外濾過ユニット(Amicon Ultra−PL 3、Millipore)を用いて、培地を約25倍濃縮した。合計250μlの馴化培地を得た。この濃縮培地をα−MEM(FCS不含)3mlで最終容量3mlに希釈した。肝臓損傷誘発の30分後、1時間後および3時間後に馴化培地1mlを腹腔内投与した。
【0045】
FHFインビボモデル
劇症肝不全(FHF)の誘発のために、既述(Lehmann V, Freudenberg MA, Galanos C. Lethal toxicity of lipopolysaccharide and tumor necrosis factor in normal and D-galactosamine-treated mice. J Exp Med. 1987;165(3):657-63)のとおりD−ガラクトサミン(2−アミノ−2−デオキシ−D−ガラクトース)による動物の処置時にリポ多糖(LPS)の致死毒性を生じさせた。簡潔には、SCIDマウス10匹のグループにD−ガラクトサミン(GalN)(600mg/kg)および動物1匹につきLPS 0.125μgを腹腔内投与した。本発明者らは、予め、GalN(600mg/kg)およびLPS(動物1匹につき0.125μg)で処置したマウスに8時間以内に100%の致死率がもたらされたことを測定した。GalNおよびLPSはパイロジェンフリーNaCl溶液500μl中の混合物として投与した。注射の24時間後まで死亡を記録した。LPSおよびGalN注射の30分後、1時間後および3時間後、マウスにHLSCおよびMSC濃縮馴化培地1mLを3回腹腔内投与した。図1に示されるように、HLSC由来CMを注射したマウス5匹のうち4匹が生存していたが、MSC由来CMで処置したマウスは全く生存しなかった。
【0046】
HLSCおよびMSC馴化培地のサイトカイン組成
上記のHLSCおよびMSCを培養することにより得られた馴化培地の組成を研究するために、マルチプルELISA(Bioclarma)により31種類のサイトカインを測定した。10%FCSを含有する培地中にて両方の細胞型を培養した。培養の24時間後に馴化培地を回収した。培地だけのサイトカイン組成物も測定した。結果を下記表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
実施例2 T−フラスコ培養物から得られたHLSCおよびMSC−CMの効果ならびに(FHF)のD−ガラクトサミン/エンドトキシンインビボモデルにおけるタンパク質混合物の効果
劇症肝不全(FHF)のインビボモデル(SCIDマウス)における以下の実験を行った。
【0049】
1)第1の実験プロトコールは、HLSC T−フラスコ培養物から得られた25倍濃縮上清1mlの腹腔内注射からなっていた。25倍濃度は、3KD膜(Millipore)を用いて達成された。使用前に該上清を超遠心分離にかけた。D−GalN/LPS注射によるFHF誘発の30分後、1時間後および3時間後に該注射液を投与した。合計20匹のSCIDマウスを処置した。
【0050】
2)第2の実験プロトコールは、サイトカイン混合物の注射からなっていた。合計10匹のSCIDマウスに以下の組換えサイトカイン混合物を注射した。HGF: 870,75ng/ml×30mlのアルファMEM(静脈注射)=26μg IL−6: 340,5ng/ml×30(静脈注射)=10,4μg IL−8: 261ng/ml×30(静脈注射)=8μg VEGF: 202ng/ml×30(静脈注射)=6μg。合計10匹のSCIDマウスに混合物3mlを投与するためにこの混合物30mlを調製した。GALN/LPS腹腔内注射の30分後、1時間後および3時間後、各SCIDマウスにこのサイトカイン混合物1mlを注射した。各SCIDマウスは以下の投与を受けた: [HGF]: 2,59μg、[IL−6]: 1,02μg、[IL−8]: 0,79μg、[VEGF]: 0,6μg。この混合物をMIX 4と称する。
【0051】
3)第3の実験プロトールは、MIX 4+MSP−1の注射からなっていた。合計5匹のSCIDマウスに注射した。各SCIDマウスに以下のものを投与した: [HGF]: 2,59μg、[IL−6]: 1,02μg、[IL−8]: 0,79μg、[VEGF]: 0,6μg(BAL実験から得られたサイトカインの濃縮物)+[MSP−1]: 2ug。
【0052】
4)第4の実験プロトコールは、MSC−CMまたはHLSC−CMの注射からなっていた。MSC−CMを得るために、MSCを集密度90%に増殖させ(75cm2フラスコ1個につき約2×106MSC)、完全に洗浄し、2%FCS培養培地であるMesenPRO RSTM 10mL中にて培養した。24時間後に馴化培地を回収し、3kDaカットオフを有する限外濾過ユニット(Millipore、マサチューセッツ州ベッドフォード)を用いて25倍濃縮した。HLSC−CMを生産するために、HLSCを集密度60%〜70%に増殖させ(75cm2フラスコ1個につき約2×106HLSC)、完全に洗浄し、0.05%ヒト血清アルブミン(GMP生産)を添加した無血清アルファMEM培地10mL中にて培養した。24時間後に馴化培地を回収し、3kDaカットオフを有する限外濾過ユニット(Millipore、マサチューセッツ州ベッドフォード)を用いて25倍に濃縮した。
【0053】
これらの実験で使用したSCIDマウスの平均体重は約25gであった。
【0054】
材料および方法
FHFインビボモデル。FHF注射のために、既述(Lehmann V, Freudenberg MA, Galanos C. Lethal toxicity of lipopolysaccharide and tumor necrosis factor in normal and D-galactosamine-treated mice. J Exp Med. 1987;165(3):657-63)のとおりD−ガラクトサミン(2−アミノ−2−デオキシ−D−ガラクトース)による動物の処理時にリポ多糖(LPS)の致死毒性を生じさせた。簡潔には、SCIDマウスにD−ガラクトサミン(GalN)(600mg/kg、動物1匹につき18mg)および動物1匹につきLPS 0.125μgを腹腔内注射した。本発明者らは、予め、GalN(600mg/kg)およびLPS(動物1匹につき0,125μg)で処置したマウスに8時間以内に100%の致死率がもたらされたことを測定した。GalNおよびLPSはパイロジェンフリーNaCl溶液500μl中の混合物として投与した。注射の24時間後まで死亡を記録した。30分後、LPSおよびGalN注射の1時間後および3時間後、マウスにHLSC−馴化培地、MSC−馴化培地またはサイトカイン混合物1mLを腹腔内注射した。
【0055】
細胞培養。既報のとおりヒト間葉系幹細胞(MSC)を骨髄穿刺液から単離し、増殖させ、特徴付けた。MSCの増殖をサポートするように特に処方された低血清(2%FCS)培地であるMesenPRO RSTM培地中にてMSCを培養した。細胞は3〜5継代の間実験に使用された。
【0056】
MSC−馴化培地(CM)調製。既述のとおりヒトMSCを培養し、表面マーカー発現ならびに脂肪生成性および骨形成性分化能について特徴付けた。MSC−CMを得るために、細胞を90%の集密度に増殖させ(75cm2フラスコ1個につき約2×106HLSC)、完全に洗浄し、2%FCS培養培地であるMesenPRO RSTM 10mL中にて培養した。24時間後に馴化培地を回収し、3kDaカットオフを有する限外濾過ユニット(Millipore、マサチューセッツ州ベッドフォード)を使用して25倍に濃縮した。
【0057】
HLSC−CM調製。凍結ヒト肝細胞からヒトHLSCを得た。既述のとおりHLSCを培養し、表面マーカー発現および分化能について特徴付けた。HLSC−CMを得るために、細胞を60%〜70%の集密度に増殖させ(75cm2フラスコ1個につき約2×106HLSC)、完全に洗浄し、0.05%ヒト血清アルブミン(GMP生産)を添加した無血清アルファMEM培地10mL中にて培養した。24時間後に馴化培地を回収し、3kDaカットオフを有する限外濾過ユニット(Millipore、マサチューセッツ州ベッドフォード)を使用して25倍濃縮した。
【0058】
馴化培地の濃度: 培養の24時間後にT−フラスコから上清を回収した。次いで、該上清を、Milliporeからの3kDa分子量カットオフを有する限外濾過ユニットを使用して約25倍濃縮した。
【0059】
組織学的分析: H&E染色(ヘマトキシリン・エオシン染色)、増殖(PCNA染色)およびタネル(アポトーシス細胞)を介して肝臓の壊死を分析した。
【0060】
生化学的分析。標準的な臨床自動分析機器を使用して、血清アラニントランスアミナーゼ(ALT)およびアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)レベルを測定した。
【0061】
ウエスタンブロット: BAXおよびBclXS/Lの検出のためにウエスタンブロットを行った。肝臓をホモジナイズし、溶解バッファー(50mmol/L Tris−HCl、pH8.3、1%Triton X−100、10μmol/Lフェニルメチルスルホニルフルオリド、10μmol/Lロイペプチン、および100U/mlアプロチニン)中にて4℃で1時間溶解し、15,000gで遠心分離した。ブラッドフォード法により上清のタンパク質含有量を測定した。肝臓溶解物のタンパク質200μgを含有するアリコートを還元条件下で10%ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、ニトロセルロースメンブランフィルター上にエレクトロブロットした。該ブロットを20mmol/L Tris−HCl、pH7.5、500mmol/L NaCl+0.1%Tween(TBS−T)中5%脱脂乳でブロックした。次いで、該メンブランを適当な濃度の関連する一次抗体で4℃にて一夜イムノブロットした。TBS−Tで何回も洗浄した後、該ブロットをペルオキシダーゼ結合アイソタイプ特異的二次抗体と一緒に室温で1時間インキュベートし、TBS−Tで洗浄し、ECL検出試薬で1分間展開させ、X−Omatフィルムに暴露した。以下の抗体を使用した: Santa Cruz Biotechnologyからの抗BAXモノクローナル抗体および抗BclXS/Lポリクローナル抗体。
【0062】
結果
得られた結果を図2〜4に示す。
【0063】
図2は、HLSC−CM(n=22;生存率73%)、MSC−CM(n=5;生存率0%)またはサイトカイン混合物(サイトカイン: VEGF、IL6、IL8、HGF;n=10;生存率40%)、およびサイトカイン混合物+MSP−1(サイトカイン*: VEGF、IL6、IL8、HGF+MSP−1;n=5;生存率100%)で処理したGalN/LPS損傷SCIDマウスの生存率(%)を示す。
【0064】
図3は、対照、GalN/LPS処置マウス、FHF誘導の6日後にHLSC−CMを注射したGalN/LPS処置マウスのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)血清濃度を示す。
【0065】
図4は、FHF誘発の3日後および6日後にHLSC−CMを注射したGalN/LPS処置SCIDマウスのH&EおよびPCNA染色を示す写真である。
【0066】
実施例3 HLSC−およびMSC−馴化培地(CM)ならびにサイトカイン混合物を使用するインビトロ実験
この実験プロトコールでは、ヒト初代肝細胞においてアポトーシスを直接阻害することができるHLSC−CMの能力を研究した。アポトーシスのインビトロアッセイを使用して、HLSC由来の馴化培地が肝細胞死に対する直接阻害効果を発揮することを示した。このインビトロ活性をMSC−CMのインビトロ活性と比べた。該細胞によって産生される馴化培地中に存在する6つのヒト組換えサイトカインの効果をヒト肝細胞アポトーシスアッセイで研究した。
【0067】
材料および方法
細胞培養。既報のとおり骨髄穿刺液からヒト間葉系幹細胞(MSC)を単離し、増殖させ、特徴付けた。MSCの増殖をサポートするように特に処方された低血清(2%FCS)培地であるMesenPRO RSTM培地中にてMSCを培養した。細胞は3〜5継代の間実験に使用された。ヒト肝臓前駆細胞(HLSC)を既述のとおり単離し、4ng/mlのhEGFおよびhFGFを添加した10%FCS(GMP;ウシ胎仔血清)を含有するアルファMEM/EBM(3:1)中にて培養した。
【0068】
MSC−馴化培地(CM)。既述のとおりヒトMSCを培養し、表面マーカー発現ならびに脂肪生成性および骨生成性分化能について特徴付けた。MSC−CMを得るために、細胞を90%の集密度に増殖させ(75cm2フラスコ1個につき約2×106HLSC)、完全に洗浄し、2%FCS培養培地であるMesenPRO RSTM 10mL中にて培養した。24時間後に馴化培地を回収し、超遠心分離し、3kDaカットオフを有する限外濾過ユニット(Millipore、マサチューセッツ州ベッドフォード)を使用して25倍濃縮した。
【0069】
HLSC−CM。凍結ヒト肝細胞からヒトHLSCを得た。既述のとおりHLSCを培養し、表面マーカー発現および分化能について特徴付けた。HLSC−CMを得るために、細胞を60%〜70%の集密度に増殖させ(75cm2フラスコ1個につき約2×106HLSC)、完全に洗浄し、0.05%ヒト血清アルブミン(GMP生産)を添加した無血清アルファMEM 10mL中にて培養した。24時間後に馴化培地を回収し、超遠心分離し、3kDaカットオフを有する限外濾過ユニット(Millipore、マサチューセッツ州ベッドフォード)を使用して25倍濃縮した。
【0070】
インビトロ肝細胞アポトーシス(タネル)。肝細胞を、フィブロネクチン被覆プレート中にて30000細胞/ウェルで96ウェルプレート中にて1日培養した。濃度5mMのガラクトサミン−Dを24時間添加し、次いで、異なる量の既述のとおり得られたHLSCおよびMSC由来の馴化培地(0,5%〜16%)、4つのサイトカインの混合物(MIX 4はIL−8、IL−6、HGF、VEGFである)を添加した。結果は、8種類の実験の平均値±SDとして表した。
【0071】
サイトカイン濃度。インビトロ実験において使用されたヒト組換えサイトカインの濃度は、25倍濃縮されたフラスコ培養条件下で24時間後にHLSCにより生産された濃度から選択された。MSPの場合、BAL培養条件下で得られた濃度を使用した。最初の濃度は、馴化培地の貯蔵物と同じであると考えられ、次いで、細胞を、インビトロで使用した馴化培地の最高濃度を表す16%の各貯蔵濃度で刺激した。
【0072】
IL−6=56,5ng/ml、使用した最終濃度=9ng/ml
IL−8=210ng/ml、使用した最終濃度=33,6ng/ml
HGF=259ng/ml、使用した最終濃度=41,4ng/ml
VEGF=44,8ng/ml、使用した最終濃度=7,2ng/ml
MCP−1=25,7ng/ml、使用した最終濃度=4,1ng/ml
MSP=60ng/ml、使用した最終濃度=9,6ng/ml
【0073】
結果を図5〜10に示す。
【0074】
図5は、低濃度のHLSC−CMによるインビトロでの肝細胞アポトーシス阻害を示す。初代ヒト肝細胞をフィブロネクチン被覆プレート中にて培養した。D−ガラクトサミン(GalN)によりアポトーシスを誘発した。GalNへの暴露の間、肝細胞を、0.5;2;8または16%の25倍濃縮HLSC−CM(GMP生産)を添加した細胞培養培地中にて培養した。1ウェルにつき4つの画像をデジタル画像解析して細胞死を定量化した。示されたデータは、8つの実験の平均値±SDである。P<0.05。
【0075】
図6は、GalN処置ヒト肝細胞のタネルアッセイの代表的な顕微鏡写真を示す。(A)24時間後の5mM GalN処置肝細胞および(B)24時間後に2%HLSC−CMで刺激した5mM GalN処置肝細胞。
【0076】
図7は、低濃度のMSC−CMによるインビトロでの肝細胞アポトーシス阻害を示す。初代ヒト肝細胞をフィブロネクチン被覆プレート中にて培養した。D−ガラクトサミン(GalN)によりアポトーシスを誘発した。GalNへの暴露の間、肝細胞を、0.5;2;8または16%の25倍濃縮MSC−CMを添加して細胞培養培地中にて培養した。1ウェルにつき4つの画像をデジタル画像解析して細胞死を定量化した。示されたデータは、8つの実験の平均値±SDである。P<0.05。
【0077】
図8は、種々のサイチカイン混合物によるインビトロでの肝細胞アポトーシス阻害を示す。ヒト肝細胞をD−ガラクトサミン(GalN;5mM)の存在下で24時間培養した。GalN処置肝細胞に対するMIX4+MSPの使用により、24時間後にアポトーシス阻害がもたらされた。GalNで処置した肝細胞を、MIX4+MCP−1またはMIX4+MSP+MCP−1の組み合わせと一緒に培養した。1ウェルにつき4つの画像をデジタル画像解析して細胞死を定量化した。示されたデータは、8つの実験の平均値±SDである。*P<0.05。
【0078】
実施例4 マルチプレックスおよび酵素結合免疫吸着測定法によるCM組成分析
【0079】
ヒト肝臓幹細胞(HLSC)により培養培地中に生産された可溶性サイトカインは、肝臓治癒を増強することが示されている。関与するメカニズムをさらに解明するために、HLSCにより放出されるサイトカインを測定し、ヒト骨髄間葉系幹細胞(MSC)により生産されるサイトカインと比べた。分泌されたサイトカインのプロファイルの分析は回転ビン、正常酸素圧条件下のT−フラスコ、および低酸素条件下のT−フラスコのような異なる細胞培養条件下での馴化培地の生産によって拡張された。MSCの場合、正常酸素圧条件下のT−フラスコ中においてのみ細胞を培養した。合計16種類の馴化培地を得た。分析は、全て、HLSCおよびMSCによる24時間培養で生産された馴化培地のMultiplex系(Bio−rad)を用いて行われ、合計31種類のタンパク質と共に、多量の、とりわけ、HGF、IL6、IL8、VEGF、MCP1のようなサイトカインおよびケモカインの存在を示した。Bio−Radヒトマルチプレックスアッセイに使用したいくつかの抗体をELISAにより評価した(IL−6、IL−8、HGF、VEGF、MCP1およびMSP1)。ELISAは、RayBio(登録商標) Human ELISAキットを製造者の使用説明書に従って行った。本発明者らは、また、マルチプレックスおよび酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を比較評価した。比較は、生産した16種類の馴化培地中に存在する6つのサイトカインの測定値に基づいて行った。異なるキットによって測定されたサイトカイン濃度は、類似の傾向を示したが、測定した絶対濃度は異なっていた。
【0080】
材料および方法
細胞培養
HLSC。既述のとおりヒト肝臓前駆細胞(HLSC)を単離し、4ng/mlのrhEGFおよびrhFGFを添加した10%FCS(GMP;ウシ胎児血清)を含有するアルファMEM/EBM(3:1)中にて培養した。
【0081】
24時間培養したHLSCを用いて行われた実験の全てにおいて馴化培地(CM)回収のための初回細胞シーディングおよび培地組成は、以下に記載されるとおりであった。
【0082】
回転ビン中で培養した3継代目の細胞を用いる2つの実験: 100mlのRPMI+0,05%ヒトアルブミン中で培養した20×106HLSC
回転ビン中で培養した10継代目の細胞を用いる2つの実験: 100mlのRPMI+0,05%ヒトアルブミン中にて培養した20×106HLSC
正常酸素圧条件下のT−フラスコ中で培養した3継代目の細胞を用いる3つの実験:10mlのRPMI+0,05%ヒトアルブミン中で培養した2×106HLSC
正常酸素圧条件下のT−フラスコ中で培養した10継代目の細胞を用いる3つの実験: 10mlのRPMI+0,05%ヒトアルブミン中にて培養した2×106HLSC
低酸素圧条件下のT−フラスコ中で培養した3継代目の細胞を用いる2つの実験: 10mlのRPMI+0,05%ヒトアルブミン中にて培養した2×106HLSC
低酸素圧条件下のT−フラスコ中で培養した10継代目の細胞を用いる2つの実験: 10mlのRPMI+0,05%ヒトアルブミン中にて培養した2×106HLSC
【0083】
hMSC。既報のとおりヒト骨髄穿刺液からヒト間葉系幹細胞(hMSC)を単離し、増殖し、特徴付けた。MSCの増殖をサポートするように特に処方された低血清(2%FCS)培地であるMesenPRO RSTM培地中にてMSCを培養した。細胞は3継代の間実験に使用された。
【0084】
24時間培養されたhMSCを用いて行われた実験の馴化培地(CM)回収のための初回細胞シーディングおよび培地組成は、以下に記載されるとおりであった。
【0085】
正常酸素圧条件下のT−フラスコ中で培養した3継代目の細胞を用いる2つの実験: 10mlのRPMI+0,05%ヒトアルブミン中の2×106
【0086】
CMの調製。T−フラスコ中にて2×106の濃度の細胞をシーディングし、それらをインキュベーター中にて一夜インキュベートすることによってHLSC由来CMを得た。翌日、細胞を完全に洗浄し、0,05%のヒトアルブミンの存在下にてRPMI(フェノールレッド不含)10mL中にて培養した。24時間後にCM培地を回収し、各実験から得たアリコートの全てを−20℃で冷凍した。CMを、孔径3kDaカットオフを有するMilliporeの限外濾過ユニットを用いて4℃にて2700gで1、30時間遠心分離することによって濃縮した。
【0087】
90%の集密度に増殖させ(75cm2フラスコ1個につき約2×106HLSC)、完全に洗浄し、0,05%のヒトアルブミンの存在下にてRPMI(フェノールレッド不含)10mL中にて培養することによってhMSC由来CMを得た。24時間後に馴化培地を回収し、各実験から得たアリコートの全てを−20℃で冷凍した。CMを、孔径3kDaカットオフを有するMilliporeの限外濾過ユニットを用いて4℃にて2700gで1、30時間遠心分離することによって濃縮した。
【0088】
CMの回収後、細胞を回収し、トリパンブルー染料排除によって細胞生存率を評価して実験の全てにおいて95%を超える生存率を得た。
【0089】
全タンパク質量子化。以下の製造者のプロトコールに従ってブラッドフォード法(Bio−Rad Laboratories)によりCM中の全タンパク質濃度を測定した。標準的基準を作成するためにウシ血清アルブミン(BSA)を使用した。各試料から得た5μlを、蒸留水で1〜5に希釈したブラッドフォード試薬からの染料1mlに添加し、混合した。室温で5分間インキュベートした後、595nmの光での吸光度を蛍光光度計で検出した。各試料からのタンパク質能を直線化BSA吸光度曲線に従って算出した。
【0090】
ELISA。IL−8、IL−6、VEGF、HGF、MCP1およびMSP1の定量的測定のためのRayBio(登録商標) Human ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)を使用した。このアッセイは、96ウェルプレート上に被覆された、上記ヒトサイトカインに対して特異的な抗体を使用する。ウェルに標準および試料をピペットで添加し、試料中のサイトカインを固定化抗体によってウェルに結合させる。該ウェルを洗浄し、ビオチン化抗ヒトサイトカイン抗体を添加する。洗浄して未結合ビオチン化抗体を除去した後、該ウェルにHRP結合ストレプトアビジンをピペットで添加した。該ウェルを再度洗浄し、該ウェルにTMB基質溶液を添加し、結合したサイトカインの量に比例して発色した。停止液の色が青色から黄色へ変わり、色の強度が450nmで測定される。
【0091】
Bioclarmaアッセイ。標的タンパク質に対して特異的なモノクローナル抗体と結合した蛍光色素染色マイクロスフェアを含有する、Bio−radからのマルチプレックスバイオメトリックイムノアッセイを、製造者の使用説明書に従ってサイトカイン測定に使用した(Bio−Plex Human Cytokine Assay;Bio−Rad)。以下のサイトカインをアッセイした:IL−1β、IL−1ra、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、CXCL8(IL−8)、IL−9、IL−10、HGF、M−CSF、MIF、SCF、PDGF、ランテス、VEGF、エオタキシン、bFGF、IP−10、IFNγ、IL−12(p70)、IL−13、IL−15、IL−17、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM−CSF)、単球化学誘引性タンパク質(MCP−1)、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1β/CCL4)、MIP−1αおよびTNF−α。
【0092】
簡潔には、未希釈CM 250μlを抗体結合ビーズと一緒にインキュベートした。複合体を洗浄し、次いで、ビオチン化検出抗体と一緒にインキュベートし、最後に、ストレプトアビジン−フィコエリトリンと一緒にインキュベートした後、サイトカイン濃度価を評価した。1.95〜40,000pg/mlの範囲の組換えサイトカインを使用して、標準曲線を作成し、感度およびアッセイダイナミックレンジを最大にした。LuminexTM Instrumentation Systemからのマルチプレックスアレイリーダーを使用してサイトカインレベルを測定した。製造者によって提供されたソフトウエアを使用して濃度を算出した。得られた結果を表2〜8に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
【表4】

【0096】
【表5】

【0097】
【表6】

【0098】
【表7】

【0099】
【表8】

【0100】
HLSC馴化培地からのMSP−1の免疫沈降およびウエスタンブロット
免疫沈降およびウエスタンブロットによってHLSC培養上清中のMSP−1を測定した。24時間培養後の培養上清15mLを4℃にて4000×gで70分間遠心分離し、Amicon 3KD限外濾過膜で250μLに濃縮した。タンパク質沈殿のために、濃縮上清250μLに冷(−20℃)純粋エタノール1mlを添加し、−80℃で一夜インキュベートした。1,200gで遠心分離した後、沈殿したタンパク質を回収し、RIPAバッファー500μlで溶解した。プロテインA−セファロースと架橋結合した抗MSP抗体(R&D System)を使用して免疫沈降法を18時間行った。SDS−PAGEのために、ペレットを2−β−メルカプトエタノール40μLに懸濁し、100℃で加熱した。タンパク質を8%アクリルアミドゲル中にてSDS−PAGEによって分離し、ニトロセルロース膜に移した。0.05%Tween 20を含有するTris緩衝生理食塩水中5%脱脂粉乳で1時間ブロッキングした後、該膜を2μg/mlの抗ヒトMSP抗体と一緒に4℃で一夜インキュベートし、3回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシターゼ(BioRad)と結合したヤギ抗マウスIgGと一緒に室温で1時間インキュベートした。化学ルミネッセンス試薬で膜を顕現させ、ChemiDocで分析した。
【0101】
結果を、3種類の継代(1、2、5)でのHLSCの馴化培地からのMSPの免疫沈降を示している図9に示す。85KDaバンドは単量体MSP(pro−MSP)を表し、55KDaバンドは、二量体(活性)MSPのα鎖を表す。
【0102】
実施例5 Raybio Biotin Label−based Antibody ArrayによるCM組成分析
HLSCおよびMSC CM由来の507個のヒト標的タンパク質の発現レベルを同時に検出した。タンパク質アレイプロトコールにおいて記載したとおり0.2%FCSを添加したαMEMの存在下で1×106細胞の48時間培養後にCMを回収した。分子のパネルは、細胞培養上清中のサイトカイン、ケモカイン、アディポカイン、増殖因子、血管新生因子、プロテアーゼ、可溶性受容体、可溶性接着分子、および他のタンパク質を含んでいた。
【0103】
材料および方法
CMの調製。HLSCおよびMSC CMを調製するために、100mm組織培養皿中に細胞を1皿につき1×106細胞の密度でプレーティングした。次いで、完全培養培地を用いて細胞を24〜48時間培養した。その後、培地を低血清(0,2%FCS)培地と取り換え、次いで、細胞をさらにもう1回48時間培養した。CMを回収し、1000gで遠心分離した。ビオチン標識工程前に両方の細胞型由来のCMを透析した。単純なプロセスを介して、試料中のタンパク質の一級アミンをビオチン化し、次いで、透析して遊離ビオチンを除去した。ここから、アレイ膜上に新しくビオチン化した試料を添加し、室温でインキュベートした。HRP−ストレプトアビジンと一緒にインキュベートした後、化学ルミネッセンスによりシグナルを可視化した。このアレイにおいて、ビオチン標識および抗体アレイを含むプロセス全体をモニターするために内部対照を使用した。RayBio Biotin Label−based Antibody Arrayの解析のために特別の設計されたプログラムであるRayBio Analysis Toolを用いて結果を解析した。このアッセイのさらなる詳細は、RayBio(登録商標) Biotin Label−based Human Antibody Array I User Manualに見ることができる。
【0104】
図10は、HLSC(A)およびMSC−由来の上清(B)からのRayBio Biotin Labelベースヒトアレイマップを示す。
【0105】
RayBio Biotin Label−based Antibody Arrayアッセイの完全な結果は下記表9に集約される。
【0106】
【表9−1】

【表9−2】

【表9−3】

【表9−4】

【表9−5】

【表9−6】

【表9−7】

【表9−8】

【表9−9】

【表9−10】

【0107】
2.5以上のHLSC/MSC比に基づいて、合計25個のタンパク質をCMの活性に寄与する可能性が最も高いものであると同定した。このようなタンパク質は、表9において灰色の行で表示されている。
【0108】
実施例6 インビボFHFモデルに対するHLSC−およびHLSC−CM処置の効果の比較
急性毒性致死性肝炎のD−ガラクトサミン/エンドトキシンインビボモデル
ガラクトサミンの肝毒性作用の根底にあるメカニズムは、肝臓UTPの欠乏を引き起こす肝臓におけるUDP−ガラクトサミン誘導体の高い蓄積に起因して起こる。その結果、巨大分子(RNA、タンパク質、糖タンパク質、グリコーゲンなど)の生合成が停止する。これらの変化は、この反応の広範段階で血液中の肝臓酵素の増加および組織学によって同定され得る最終的な細胞損傷および細胞死を引き起こす。同時に、エンドトキシンが大規模な肝細胞アポトーシスを発症する腫瘍壊死因子a(TNF−a)の生産を誘発した。本発明者らは、この致死性インビボ系の作用を研究するためにSCIDマウスにおけるこのインビボモデルを開発した。
【0109】
方法
動物および実験プロトコール。6〜7週齢の雄性SCIDマウスを飲食自由の動物施設内で飼育した。これらの動物に、LPS 0.125μgおよびGalN 18mgを含有する生理食塩水500μLを腹腔内注射した。D−GalN/LPS注射の2時間後、これらのマウスに30×106のHLSCを腹腔内注射した。
【0110】
SCIDマウスの第2のグループに、LPSおよびGalNの注射と同時、30分後および2時間後に生理食塩水中HLSCの上清1mlを腹腔内接種した。対照マウスには、LPSおよびGalNの混合物を注射した。
【0111】
T−フラスコ中でのHLSCからの上清の生成: HLSCからのCM(CM−HLSC)の生成のために、細胞を60%〜70%の集密度に増殖させ(75cm2フラスコ1個につき約2×106HLSC)、完全に洗浄し、0.05%ヒト血清アルブミン(GMP生産)を添加した無血清アルファMEM培地10mL中にて培養した。24時間後に馴化培地を回収し、3kDaカットオフを有する限外濾過ユニット(Millipore、マサチューセッツ州ベッドフォード)を使用して25倍濃縮した
【0112】
組織学的分析: H&E染色、増殖(PCNA染色)およびタネル(アポトーシス細胞)により肝臓の壊死を分析した。
【0113】
ウエスタンブロット: BAXおよびBclXS/Lの検出のためにウエスタンブロットを行った。肝臓をホモジナイズし、溶解バッファー(50mmol/L Tris−HCl、pH8.3、1%Triton X−100、10μmol/L フェニルメチルスルホニルフルオリド、10μmol/L ロイペプチン、および100U/ml アプロチニン)中にて4℃で1時間溶解し、15,000gで遠心分離した。ブラッドフォード法によりCMのタンパク質含有量を測定した。肝臓溶解物のタンパク質200μgを含有するアリコートを還元条件下で10%ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、ニトロセルロースメンブランフィルターにエレクトロブロットした。20mmol/L Tris−HCl、pH7.5、500mmol/L NaCl+0.1%Tween(TBS−T)中5%脱脂乳でブロックした。次いで、該メンブランを適当な濃度の関連する一次抗体で4℃にて一夜イムノブロットした。TBS−Tで何回も洗浄した後、該ブロットをペルオキシダーゼ結合アイソタイプ特異的二次抗体と一緒に室温で1時間インキュベートし、TBS−Tで洗浄し、ECL検出試薬で1分間展開させ、X−Omatフィルムに暴露した。以下の抗体を使用した: Santa Cruz Biotechnologyからの抗BAXモノクローナル抗体および抗BclXS/Lポリクローナル抗体。
【0114】
結果
エンドトキシン(LPS)およびGalNを投与したマウスの致死率に対するHLSCの有益な効果の可能性を評価するために、6匹のマウスを使用して生存研究を行った。LPS 0,125μgおよびGalN 18mgならびに30×106のHLSCを注射した動物の生存率%は75%であった。LPSおよびGalN 18mgの注射と同時、30分後および2時間後に生理食塩水中HLSCの濃縮上清1mlを注射した動物の生存率%は70%であった(n=17)。HLSC注射の7日後に、アラニントランスアミナーゼ(ALT)の血清中濃度は273U/Lから57U/Lに低下し、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)の血清中濃度は1693U/Lから291U/Lに低下した。CM−HLSC注射の6日後に、ASTの濃度は1693U/Lから1000U/Lに低下した。
【0115】
HLSC注射の7日後の肝臓切片の組織学的分析は、アポトーシスおよび壊死のインデックスの低下を示した。
【0116】
上清処置の3日後および6日後の肝臓切片の組織学的分析は、アポトーシス(タネル)および壊死のインデックスの低下を示した。大規模な組織再生が観察された。これらの知見は、組織増殖インデックスの増加(PCNA染色)と相関していた。ウエスタンブロットにより、GalN/LPSだけで処置した動物においてはアポトーシス促進タンパク質BAXのアップレギュレーションがあり、異なる時点で濃縮上清でも処置した動物においてはダウンレギュレーションがあったことを示した。アポトーシス促進タンパク質BcLX/Lの発現の場合、濃縮上清で処置した動物においてはこのタンパク質のアップレギュレーションが見られ、GalN/LPSだけで処置した動物においては該発現のダウンレギュレーションが見られた。
【0117】
上記の結果を図11〜13に示す。
【0118】
図11aは、HLSCを注射したLPS/GalN致死モデル(n=6)におけるマウスの生存率を示す。
【0119】
図11bは、HLSC濃縮物を注射したLPS/GalN致死モデル(n=17)におけるマウスの生存率を示す。
【0120】
図12は、肝不全誘発(GalN/LPS)の3日後および6日後にT−フラスコから精製したHLSC由来CM濃縮物を注射したGalN/LPS処置SCIDマウスのH&EおよびPCNA染色を示す。
【0121】
図13は、アポトーシス肝細胞を評価するためのタネルアッセイの結果を示す。アポトーシス促進タンパク質BAXおよび抗アポトーシスタンパク質BclXの存在をウエスタンブロット分析により評価した。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6A】

【図6B】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10A】

【図10B】

【図11a】

【図11b】

【図12】

【図13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を含有しないことを特徴とする、ヒト肝臓多能性前駆細胞株の培養により得られる馴化培地。
【請求項2】
(i)成熟肝細胞の死および類上皮細胞形態を有する生存細胞の集団の選択まで成体肝臓由来ヒト成熟肝細胞を細胞培養培地中にて培養する工程;
(ii)hEGF(ヒト上皮増殖因子)およびbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)を加えた、哺乳動物の細胞の増殖に必要な通常の無機塩、アミノ酸およびビタミンを含む血清含有グルコース含有培養培地中で培養することによって類上皮細胞形態を有する生存細胞の集団を拡大させる工程;および
(iii)細胞培養培地から細胞を分取する工程
を含む方法によって得られることを特徴とする、請求項1記載の馴化培地組成物。
【請求項3】
成熟肝細胞を凍結保護剤の存在下にて血清含有培養培地中で冷凍し、次いで、工程(i)による培養の前に解凍することを特徴とする、請求項2記載の馴化培地。
【請求項4】
培養培地がGMP級ヒトアルブミンを加えたアルファMEMを含むことを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項記載の馴化培地。
【請求項5】
少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも20倍、さらにより好ましくは少なくとも25倍濃縮されていることを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項記載の馴化培地。
【請求項6】
GMP条件下で製造されることを特徴とする、請求項1〜5いずれか1項記載の馴化培地。
【請求項7】
(i)成熟肝細胞の死および類上皮細胞形態を有する生存細胞の集団の選択まで成体肝臓由来ヒト成熟肝細胞を細胞培養培地中にて培養する工程;
(ii)hEGF(ヒト上皮増殖因子)およびbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)を加えた、哺乳動物の細胞の増殖に必要な通常の無機塩、アミノ酸およびビタミンを含む血清含有グルコース含有培養培地中で培養することによって類上皮細胞形態を有する生存細胞の集団を拡大させる工程;および
(iii)細胞培養培地から細胞を分取する工程
を含む、馴化培地の製造方法。
【請求項8】
成熟肝細胞を凍結保護剤の存在下にて血清含有培養培地中で冷凍し、次いで、工程(i)による培養の前に解凍することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
培養培地がGMP級ヒトアルブミンを加えたアルファMEMを含むことを特徴とする、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜6いずれか1項記載の馴化培地の医薬上有効量を含む医薬組成物。
【請求項11】
薬剤としての請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
損傷または臓器不全の治療のための薬剤の製造のための請求項10記載の医薬組成物の使用。
【請求項13】
臓器が肝臓または腎臓であることを特徴とする、請求項12記載の使用。
【請求項14】
少なくとも肝細胞増殖因子(HGF)、インターロイキン6(IL−6)およびインターロイキン8(IL−8)の混合物の医薬上有効量を含む医薬組成物。
【請求項15】
混合物がさらに血管内皮増殖因子(VEGF)の医薬活性量を含むことを特徴とする、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
混合物がさらにマクロファージ刺激タンパク質(MSP)の医薬活性量を含むことを特徴とする、請求項14または15記載の医薬組成物。
【請求項17】
混合物がさらにアクチビンC、活性化白血球細胞接着分子(ALCAM)、ケモカイン(C−Cモチーフ)受容体4(CCR4)、システインリッチ膜貫通BMP制御因子1(コーディン様)(CRIM)、デコリン、エクトジスプラシンA2(EDA−A2)、エンドセリン、線維芽細胞増殖因子受容体様1(FGF R5)、グリピカン3、増殖関連腫瘍性タンパク質(GRO)、インスリン様増殖因子結合タンパク質6(IGFBP−6)、インスリン様増殖因子1(IGF−1)、インターロイキン20受容体、アルファ(IL−20 R アルファ)、クリングル含有膜貫通タンパク質2(Kremen−2)、潜在型トランスフォーミング増殖因子ベータ結合タンパク質1(潜在型TGF−ベータbp1)、水晶体線維の主要内在性タンパク質(MIP−2)、MSPベータ鎖、オステオプロテジェリン/TNFRSF11B(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー11b)、可溶性gp130(sgp130)、分泌タンパク質、酸性、システインリッチ(オステオネクチン)(SPARC)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるタンパク質の医薬活性量を含むことを特徴とする、請求項14〜16いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項18】
肝細胞増殖因子(HGF)が1〜100ng/mlの範囲の濃度であり、インターロイキン6(IL−6)が10〜200ng/mlの範囲の濃度であり、インターロイキン8(IL−8)が≧35ng/mlの濃度であることを特徴とする、請求項14〜17いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項19】
血管内皮増殖因子(VEGF)が10〜400ng/mlの範囲の濃度であることを特徴とする、請求項15〜18いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項20】
マクロファージ刺激タンパク質(MSP)が1〜100pg/mlの範囲の濃度であることを特徴とする、請求項16〜19いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項21】
少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも20倍、さらにより好ましくは少なくとも25倍濃縮されていることを特徴とする、請求項18〜20いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項22】
少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも20倍、さらにより好ましくは少なくとも25倍希釈されていることを特徴とする、請求項18〜20いずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項23】
損傷または臓器不全の治療のための薬剤の製造のための請求項14〜22いずれか1項記載の医薬組成物の使用。
【請求項24】
臓器が肝臓または腎臓であることを特徴とする、請求項23記載の使用。
【請求項25】
薬剤が、0.01〜1mg/kgの範囲の肝細胞増殖因子(HGF)の用量、0.01〜1mg/kgの範囲のインターロイキン6(IL−6)の用量、0.01〜1mg/kgの範囲のインターロイキン8(IL−8)の用量および所望により0.01〜1mg/kgの範囲の血管内皮増殖因子(VEGF)の用量を投与するのに適していることを特徴とする、請求項23または24記載の使用。

【公表番号】特表2011−522553(P2011−522553A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512983(P2011−512983)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057232
【国際公開番号】WO2009/150199
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(597075904)フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (55)
【Fターム(参考)】