説明

肥料、肥料の製造方法及び植物性廃棄物の処理方法

【課題】街路樹や庭木の剪定によって生じた大量の枝葉や茎、生花市場、花屋から出てきた生花の廃棄物を処理するにはかなりのコストがかかる。
【解決手段】植物性廃棄物を水とともに破砕し、この破砕された植物性廃棄物中に含まれている水溶性成分を分離し、これを液状のまま又は乾燥させて肥料又は肥料の原料とし、この肥料又は肥料の原料を販売することにより、植物性廃棄物の処理コストを肥料又は肥料の原料の販売益の分だけ低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物中に含まれている水溶性成分を有効成分とする肥料、該肥料の製造方法及び植物性廃棄物の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
市街地の広い道路の両脇や幹線道路の両脇には街路樹が植えられていることが多い。これらの街路樹は枝葉が伸びてくると、周囲の見通しを悪くしたり、景観を悪くするので、定期的に剪定がされている。街路樹を剪定すると大量の枝葉が出る。これらの枝葉は廃棄物として収集され、廃棄物処理センターに運ばれ、処理されている。
【0003】
また、一戸建ての家の庭や、集合住宅の庭には種々の庭木が植えられていることが多い。これらの庭木も枝葉が伸びてくると、庭が暗くなったり、見栄えが悪くなるので、定期的に剪定がされている。庭木を剪定すると大量の枝葉が出る。これらの枝葉も廃棄物として収集され、廃棄物処理センターに運ばれ、処理されている。
【0004】
また、生花市場や花屋では生花の見栄えを良くするために余分な枝葉や茎を剪定して販売しており、この剪定に伴って生花の枝葉や茎が大量に出る。また、生花は時間が経つと鮮度が落ちて売れない状態になる。これらの枝葉や茎や鮮度の落ちた生花は廃棄物として収集され、廃棄物処理センターに運ばれ、処理されている。
【0005】
廃棄物処理センターに運ばれた大量の枝葉や茎や生花は、堆積場に堆積させて腐らせるか、焼却炉で焼却されて処理されている。枝葉や茎や生花を腐らせるにはかなりの処理時間が必要なので、広い堆積場を必要とする。しかし、都市の近郊に広くてアクセスの良い堆積場を確保するのは非常に困難である。しかも、枝葉や茎や生花を腐らせると悪臭が発生するので、周囲に民家の少ない場所を選ばなければならず、そのような場所を確保するのは更に困難である。
【0006】
これらの問題を生じさせないように、これらの枝葉や茎や生花を焼却する場合は、煙、臭い、CO、ダイオキシン等が発生するので、それらに対する対策が必要になる。また、これらの枝葉・茎が生の場合や生花は水分が多く含まれていて燃やし難く、あえて燃やす場合は補助燃料が必要で、その分余分に処理コストがかかる。
【0007】
このように、植物の枝葉や茎や生花を堆積場に堆積して腐らせる方法にしろ、植物の枝葉や茎や生花を焼却する方法にしろ、これらの枝葉や茎や生花の廃棄物を処理するには最終的に処理コストがかなりかかるという問題があり、このため、これらの処理コストの低減が望まれていた。
【特許文献1】特開2008−036546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、街路樹や庭木の剪定によって生じた大量の枝葉や茎、生花市場、花屋から出てきた生花の廃棄物を処理するのにかなりのコストがかかっている点を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、枝葉や茎や生花の廃棄物中に含まれている水溶性成分を抽出し、この水溶性成分を肥料又は肥料の原料とし、この肥料又は肥料の原料の販売益の分だけ枝葉や茎や生花の廃棄物の処理コストを低減することを最も主要な特徴とする。
【0010】
すなわち、本発明は植物中に含まれている水溶性成分を主成分として含有する肥料と、植物を破砕し、この破砕された植物の液体部分と固体部分を分離し、該液体部分及び/又は該固体部分を肥料又は肥料の原料とする肥料の製造方法と、植物性廃棄物を破砕し、この破砕された植物の液体部分と固体部分を分離し、該液体部分及び/又は該固体部分を肥料又は肥料の原料とする植物性廃棄物の処理方法である。
【0011】
ここで、前記植物としては廃棄物が好ましいが、必ずしも廃棄物でなくても良い。また、前記水溶性成分とは、水に溶解する成分に限定されるものではなく、懸濁液中の浮遊粒子も含むものである。植物中に含まれている水溶性成分を効果的に抽出するためには、前記植物を水とともに破砕するのが好ましい。また、植物から抽出されたものは液状のままの肥料でも良いが、保管、運搬、販売の便からは乾燥させてフレーク状又は粉末状の肥料とするのが好ましい。また、この発明によって得られた肥料が目的とする組成になっていない場合は他の肥料成分を添加して調整しても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、植物の枝葉や茎や生花の廃棄物から肥料又は肥料の原料を作り、この肥料又は肥料の原料を販売することができるので、肥料又は肥料の原料の販売利益を植物の枝葉や茎や生花の廃棄物の処理コストに回すことにより、植物性廃棄物の処理コストを低減することができるという利点がある。
【0013】
また、本発明は、植物を原料として肥料又は肥料の原料を作ることができるので、その分だけ輸入に頼っている鉱物性の原料を使用して肥料を作らなくて済むという利点がある。また、本発明は、廃棄物を原料とするので、肥料又は肥料の原料を安価に作ることができるという利点がある。
【0014】
また、本発明は、植物を水とともに破砕する場合、植物中に含まれている水溶性成分を容易に抽出することができるという利点がある。また、本発明は、植物から得られた液状の抽出物を乾燥させてフレーク状又は粉末状の肥料とする場合、肥料の保管、運搬、販売が容易になるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
植物性廃棄物をできるだけ低コストで処理するという目的を、植物に含まれている水溶性成分を抽出してこれを肥料又は肥料の原料として利用することにより実現した。
【実施例1】
【0016】
1)成分の抽出
表1の左側、種類の欄に示す各植物について、図1に示すように、葉100gを準備し、これを水200cc〜300ccとともにミキサーに入れ、このミキサーを1〜2分程度回転させて葉を水とともに粉砕し、スラリー状のものを得た。次に、このスラリー状のものを木綿製の布袋に入れ、これを手で絞り、絞り液を得た。次に、得られた絞り液を鍋に入れ、中火で加熱して乾燥させ、フレーク状の固形分を得た。フレーク状のものの重量は植物の種類によって異なり、表1の右側、抽出肥料量の欄に示す通りであった。
【0017】
【表1】

2)固形分の分析
【0018】
次に、1)成分の抽出において得られた固形分の成分元素を分析したところ、表2〜表7に示す通りであった。ここで、表2はカーネーション、表3はユリ、表4はフリージア、表5は小手まり、表6はキク、表7はレッドロビンから抽出した水溶性成分の成分元素を示している。
【0019】
【表2】

【0020】
【表3】

【0021】
【表4】

【0022】
【表5】

【0023】
【表6】

【0024】
【表7】

【0025】
表2〜表7に示す結果から、これらの固形分にはKが多く含まれており、肥料としての用途の可能性が考えられる。
3)栽培実験
【0026】
次に、鉢にミニトマトを植え、前記6種類の固形分を撒き、時間の経過に従って生育状況を観察したところ、表8に示す通りであった。ここで、鉢の中の土の容積2000cm、重さ1680g(乾燥状態)であった。
【0027】
表8において、試料1〜試料4の条件は次の通りである。試料1は肥料無しである。試料2は肥料抽出時に発生する残渣をマルチング材として土壌表面に厚さ1cm程度撒いた。試料3は抽出肥料(キク)15ml(25g)を土壌に混ぜ入れた。試料4は抽出肥料(キク)30ml(50g)を土壌に混ぜ入れた。
【0028】
【表8】

【0029】
表8に示す結果から、試料2(堆肥としてチップをマルチング)と試料4(肥料50g)の生育状態は非常に良好で、茎・葉・実の成長に大きく作用していると思われる。試料3(肥料25g)の生育状態も肥料無しと比べて大きな違いは見られないが、葉の勢いがあり、肥料の効果が少なからずあると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明にかかる肥料の製造方法を説明するための工程図である

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物から抽出された水溶性成分を主成分として含有してなる肥料。
【請求項2】
前記植物が廃棄物であることを特徴とする請求項1に記載の肥料。
【請求項3】
植物を破砕し、この破砕された植物を液体部分と固体部分に分離し、該液体部分及び/又は該固体部分を肥料又は肥料の原料とすることを特徴とする肥料の製造方法。
【請求項4】
前記植物が廃棄物であることを特徴とする請求項3に記載の肥料の製造方法。
【請求項5】
前記植物を水とともに破砕することを特徴とする請求項3又は4に記載の肥料の製造方法。
【請求項6】
前記液体部分を乾燥させてフレーク状又は粉末状の肥料又は肥料の原料とすることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の肥料の製造方法。
【請求項7】
植物性廃棄物を破砕し、この破砕された植物性廃棄物の固体部分と液体部分を分離し、該液体部分及び/又は該固体部分を肥料又は肥料の原料とすることを特徴とする植物性廃棄物の処理方法。
【請求項8】
前記植物性廃棄物を水とともに破砕することを特徴とする請求項7に記載の植物性廃棄物の処理方法。
【請求項9】
前記液体部分を乾燥させてフレーク状又は粉末状の肥料又は肥料の原料とすることを特徴とする請求項7又は8に記載の植物性廃棄物の処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−24076(P2010−24076A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186145(P2008−186145)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(508217319)共和興業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】