説明

肥料組成物の製造法

【解決手段】亜リン酸、又は亜リン酸塩、又は両方をキトサンの水溶液に加え、次に肥料成分を加える事により亜リン酸、亜リン酸塩の効果を持続させる製造方法。
【効果】一定濃度に薄めて葉面散布した場合、茎、葉に付着し脱落しにくく、更に乾燥すると肥料成分を含んで皮膜を形成するため、肥料成分が長期間付着しており、土壌粒子に付着した場合も同様に強固に付着し、容易に流亡しない。皮膜により空気と遮断されるため、亜リン酸(塩)は酸化されず、長期に安定している。このため病原菌による病気の発生を長期に防止できるようになる。さらにリンの吸収が良くなるため、農薬の使用量の減少とリン酸肥料の減少につながる。
【0001】
亜リン酸、亜リン酸塩の効果を持続性とする組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0004】
近年、世界的に農業に対する世論の声は厳しく、特に農薬の散布に対し忌避されている。このような農産物に対する消費者の声に十分こたえることが重要である。これらの要望に対しリン酸肥料の一種である亜リン酸および亜リン酸塩はリン酸肥料として利用されるが、
【0005】
殺菌性を有すること、リン酸肥料の代替になることが既に公知である(特公昭56−41603号、USP4075324、特開平7−59411)。亜リン酸(塩)をジカルボン酸(塩)、トリカルボン酸(塩)を併用する方法(USP5514200、USP6113665、USP6645268)があるが、そ
【0006】
の効果は十分ではない。更に亜リン酸(塩)は空気中で容易に酸化されてリン酸(塩)になり、殺菌力が失われる欠点を有する。キトサンは農業の現場では多くの目的に沿って利用されており、例えば「キトサンの農業利用の理論と実際 技報堂出版 2000年11月6
【0007】
日」に詳細な説明があるが、亜リン酸と併用して持続性とする技術と亜リン酸(塩)の酸化を防止する技術については知られていない。亜リン酸(塩)が農薬ではないにもかかわらず殺菌性を有することは農薬の使用量の減少につながり消費者の要求に合致するもので
【0008】
ある。これらの亜リン酸又は亜リン酸塩を原料とする葉面散布用の液肥は著しく低粘度で、ほとんど水と同等である。このため、葉面散布を行っても植物の葉、茎、土壌に付着してもわずかであり、わずかの雨、朝露によっても脱落し、土壌から流亡する。植物を病原菌
【0009】
から長期に守るためには、亜リン酸又は亜リン酸塩が植物の葉、茎、土壌に出来る限り長く付着し、亜リン酸(塩)がリン酸(塩)に酸化されるのを防ぐことが重要である。葉面からの吸収を良くするためにも、同じように重要である。亜リン酸、亜リン酸塩が植物に
【0010】
長期に付着させることが農薬散布と農作業の減少につながる。
本発明者等はこれらの亜リン酸、亜リン酸塩が長期間付着できないこと、空気中で容易に酸化されて殺菌力の無いリン酸(塩)に変化し、その効果を十分に発揮できない欠点を改
【0011】
良すべく研究を行った結果、本発明を完成させた。すなわち本発明は1)亜リン酸の水溶液にキトサンを溶解し、次に肥料成分を加える。2)亜リン酸、又は亜リン酸塩、又は両方をキトサンの水溶液に加え、次に肥料成分を加えることにより行われる。このようにし
【0012】
て得られた亜リン酸、亜リン酸塩、キトサン、肥料成分を含む水溶液は粘稠な液体であり、水と任意に混合溶解する。一定濃度に薄めて葉面散布した場合、茎、葉に付着し脱落しにくく、更に乾燥すると肥料成分を含んで皮膜を形成するため、空気と遮断され肥料成分が
【0013】
長期間付着している。土壌粒子に付着した場合も同様に強固に付着し、容易に流亡せず、亜リン酸(塩)も長期に安定している。このため病原菌による病気の発生を長期に防止できるようになる。さらにリンの吸収が良くなるため、農薬の使用量の減少とリン酸肥料の
【0014】
減少につながり、更に農作業が減少する。本発明は全体の農業コストの削減と消費者の要望に沿う現代社会の要望に適応した重要な発明である。
次に本発明の実施について述べる。本発明において使用されるキトサンはカニ、エビの殻
【0015】
を苛性ソーダなどで加水分解した製品が数多く市販されており、これらのすべてが利用可能である。粘度調整のために分子量の小さいものから大きいものまで目的に合わせて利用される。亜リン酸塩としては、通常一または二カリウム塩、一または二アンモニウム塩通
【0016】
常一または二ナトリウム塩である。
公知の肥料成分として第一または第二リン酸カリウム、第一または第二リン酸アンモニウム、尿素、アミノ酸、蛋自分解アミノ酸、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化カ
【0017】
ルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、硫酸カリウム等である。微量要素としては二価鉄塩、亜鉛塩、銅塩、モリブデン酸塩、ホウ酸、マンガン塩、コバルト塩等である。その他、酸化防止剤、溶解補助剤、安定剤、展着剤、防腐剤、植物活性剤、組成均一化促
【0018】
進剤、発酵促進剤、効果発現促進剤等が使用される。例えば、ビート糖密、サトウキビ糖密、果糖ブドウ糖液、アミノ糖、単糖類、多糖類、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、核酸、植物ホルモン、サイトカイニン、ビタミン類、海藻エキス、グリセリン、長鎖
【0019】
脂肪酸ポリグリセリド、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸等が主に使用される。本発明に使用されるキトサン水溶液は各種の酸の溶液として得られる。例えば、リン酸水溶液、酢酸水溶液、クエン酸水溶
【0020】
液、乳酸水溶液、グリコール酸水溶液、グルコン酸水溶液、リンゴ酸水溶液等があるが特に限定されるものではない。本発明において使用される成分の割合は限定されるものではなく、植物の種類、生長のステージ、気温、天候により変化するのが通常である。
以下実施例により説明するが、これに限定されるものではない。
【0021】
実施例1
85%リン酸250g、水100g、キトサン5gを70℃で30分撹拌する。粘稠な液となる。これに亜リン酸二カリウム30g、尿素50g、糖蜜100gを加えて撹拌すると、褐色透明な粘稠性液体肥料が得られる。 粘度25℃ 5,500 C.P.S.
【0022】
実施例2
亜リン酸50g、水120g、キトサン7gを70℃で30分撹拌する。これに尿素10g、リン酸水素二カリウム10g、糖蜜55gを加え撹拌すると褐色透明な粘稠性液体肥料が得られる。 粘度25℃ 7,000 C.P.S.
【0023】
実施例3
亜リン酸50g、クエン酸15g、水100g、キトサン5gを40℃で1時間撹拌する。これに以下の成分を加える。透明粘稠性液体肥料が得られる。
1. L−グルタミン酸ジナトリウム 1g
2. L−グルタミン 2g
3. グリシン 2g
4. グリコシアミン 0.5g
5. L−アラニン 0.5g
6. L−プロリン 0.1g
7. L−メチオニン 0.5g
8. グルコサミン塩酸塩 1g
9. L−リンゴ酸 5g
10. ビタミンC 3g
11. マンニット 1g
12. L−リジン 1g
13. L−アルギニン 1g
14. L−セリン 0.5g
15. L−フェニルアラニン 0.5g
【0024】
実施例4
クエン酸15g、キトサン3g、水90gを50℃で1時間撹拌溶解する。これに亜リン酸モノカリウム35gを加え撹拌するとペースト状液体肥料が得られる。
【0025】
実施例5
クエン酸20g、キトサン3g、水90gを50℃で1時間撹拌溶解する。これに亜リン酸ジカリウム25gを加える。少し発熱し溶解するが、室温で乳濁した。クリーム状の液体肥料が得られる。
【0026】
実施例6
亜リン酸35g、クエン酸17.5g、キトサン3g、水90gを50℃で1時間撹拌溶解する。これにリン酸水素二カリウム10g、尿素20g、硫酸マンガン200mg、塩化亜鉛100mg、モリブデン酸アンモニウム50mg、ホウ酸0.5gを加える。透明粘稠な液体肥料が得られる。粘度 25℃ 1,200 C.P.S.
【0027】
実施例7
亜リン酸40g、クエン酸12.5g、キトサン3g、水100gを50℃で1時間撹拌溶解する。これにグルテン分解アミノ酸(40%塩化アンモニウム含む)10gを加え溶解する。淡褐色粘稠な液体肥料が得られる。粘度 25℃ 2,200 C.P.S.
【0028】
実施例8
水70gに亜リン酸18gを加えた溶液にキトサン2gを加え40℃2時間撹拌する。透明高粘性溶液が得られる。これに亜リン酸モノカリウム12gを加え溶解すると高粘性透明な液体肥料が得られる。
粘度25℃ 1,600 C.P.S.
【0029】
実施例9
水70gに亜リン酸9gを加えた溶液にキトサン2gを加え40℃2時間撹拌する。透明高粘性溶液が得られる。これにグルテン分解アミノ酸(塩化アンモニウム40%含有)10gを加え溶解すると高粘度の半ペースト状の液体肥料が得られる。
【0030】
実施例10
水70gに亜リン酸18gを加えた溶液にキトサン2gを加え40℃2時間撹拌する。これに、亜リン酸モノカリウム12g、グルテン分解アミノ酸(塩化アンモニウム40%含有)10gを加え溶解すると高粘度の半ペースト状の液体肥料が得られる。
粘度 25℃ 2,500 C.P.S.
【0031】
実施例11
水70gに亜リン酸18gを加えた溶液にキトサン2gを加え40℃2時間撹拌する。これに、亜リン酸モノカリウム12g加える。次に塩化カルシウム二水塩1g、塩化マグネシウム六水塩1g、ビート糖蜜10gを溶解し、褐色透明粘稠液体肥料を得られる。
粘度 25℃ 1,800 C.P.S.
【0032】
実施例12
水70gに亜リン酸9gを加えた溶液にキトサン2gを加え40℃2時間撹拌する。これに亜リン酸モノカリウム13.2g、クエン酸6gを加え、透明粘稠な液体肥料を得られる。
室温に放置しておくと半透明となる。
粘度 25℃ 2,800 C.P.S.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【0002】亜リン酸水溶液にキトサンを溶解する。次に公知の肥料成分を加え溶解することを特徴とする肥料組成物の製造法。
【請求項2】
【0003】亜リン酸、又は亜リン酸塩、又は両方をキトサン水溶液に加え溶解する。次に公知の肥料成分を加え溶解することを特徴とする肥料組成物の製造法。

【公開番号】特開2006−28000(P2006−28000A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−238932(P2004−238932)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(591062445)有限会社日本医薬品開発研究所 (1)
【Fターム(参考)】