説明

肥料

【課題】窒素肥効の改善されたシアナミド含有肥料を提供する。
【解決手段】シアナミドと、腐植酸又はその含有物とを含有してなる肥料。シアナミドの含有率が2〜15質量%、腐植酸又はその含有物の含有率が98〜85質量%であることが好ましい。また、これらの肥料は造粒されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肥料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シアナミド含有溶液からなる液状肥料が提案(特許文献1)されているが、窒素肥効が十分でなかった。一方、腐植酸は植物体の生育に有用な天然由来の高分子有機物であり、リン酸の土壌への固定化防止、根の活力向上、土壌の保肥力向上などの作用を有することが知られているが、肥料取締法による肥料成分としては認定されていない。しかし、腐植酸のこのような長所を利用して腐植酸と苦土分とを混合した腐植酸苦土肥料が市販されている。腐植酸苦土肥料は、例えば亜炭や草炭等の若年炭と硝酸を反応させて腐植酸を人工的に生成させ、それを塩基性マグネシウム含有物質で中和することによって製造されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平9−328383号公報
【特許文献2】特公昭40−14122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、窒素肥効の改善されたシアナミド含有肥料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、シアナミドと、腐植酸又はその含有物とを含有してなる肥料である。シアナミドの含有率が2〜15質量%、腐植酸又はその含有物の含有率が98〜85質量%であることが好ましい。また、これらの肥料は造粒されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、窒素肥効の改善されたシアナミド含有肥料が提供される。また、造粒することによって、粉立ちの少ない施肥作業の容易な、窒素肥効が更に改善されたシアナミド含有肥料が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
腐植酸(「フミン酸」とも呼ばれている。)又はその含有物としては、天然に産出する天然腐植酸の他に、例えば亜炭、草炭等の若年炭の酸化物ないしは若年炭と硝酸及び/又は硫酸との反応生成物などの腐植酸含有物を例示することができ、これらから選ばれた少なくとも1種が使用される。また、シアナミドとしては、例えば石灰窒素等から抽出されたものが使用される。シアナミドと腐植酸又はその含有物を混合するには、シアナミドはシアナミド水溶液として用いることが望ましく、その濃度は5〜50質量%、特に20〜40質量%であることが好ましい。
【0007】
シアナミドと腐植酸又はその含有物の含有率は、シアナミドが2〜15質量%、特に4〜8質量%であることが好ましく、腐植酸又はその含有物が98〜85質量%、特に96〜92質量%であることが好ましい。シアナミドとしてシアナミド水溶液を用いた場合、肥料には水分を含むことになるが、25質量%までの含水率であれば問題ない。肥料を造粒する場合、水分はバインダーとして機能するので、10〜20質量%の含水率はむしろ好ましい。貯蔵安定性等の点から含水が問題であれば乾燥して除去しておく。本発明の肥料には、例えばリン酸、カリウム等の肥料成分を含ませることもできる。
【0008】
本発明の肥料は造粒されていることが好ましい。これによって、窒素肥効が更に改善されたシアナミド含有肥料となる。造粒は、例えば転動造粒法、押し出し造粒法等によって行うことができる。肥料の平均粒径は2〜4mmが好ましい。
【実施例】
【0009】
実施例1
亜炭と硝酸の反応生成物からなる腐植酸含有物を70質量部とシアナミド含有溶液(シアナミド成分の濃度15質量%)30質量部を混合し、腐植酸含有物の含有率が70質量%、シアナミド含有率が4.5質量%、含水率25.5質量%の肥料を製造した。なお、シアナミド含有溶液は、石灰窒素と水を攪拌しながら炭酸ガスを吹き込んでろ過し、ろ液に酢酸を混合してpH5に調製したものを用いた。
【0010】
実施例2
実施例1で製造された肥料を傾斜皿形造粒機で造粒し、平均粒径が3.0mm、腐植酸含有物の含有率が75質量%、シアナミド含有率が5質量%、含水率20質量%の造粒肥料を製造した。
【0011】
実施例3
腐植酸含有物のかわりに、中国産の天然腐植酸を用い、平均粒径が3.0mm、腐植酸含有物の含有率が74質量%、シアナミド含有率が7質量%、含水率19質量%の造粒肥料としたこと以外は、実施例2と同様にして肥料を製造した。
【0012】
実施例4
腐植酸含有物のかわりに、草炭の空気酸化物を用い、平均粒径が3.0mm、腐植酸含有物の含有率が78質量%、シアナミド含有率が4質量%、含水率18質量%の造粒肥料としたこと以外は、実施例2と同様にして肥料を製造した。
【0013】
比較例1
シアナミド濃度が15質量%であるシアナミド水溶液を肥料とした。
【0014】
淡色黒ボク土を450g、上記肥料を窒素成分として100mg相当分、過リン酸石灰を0.5g及び塩化カリウムを0.2gからなる栽培土を鉢に入れ、直ちに20粒のコマツナを播種し、28日間栽培を行い、発芽率(播種した種子の中で発芽した割合)、地上部の重さ(地上部の葉茎の重さ)、薬害の有無(葉の外観で判断)を測定した。それらの結果を表1に示す。なお、薬害の有無は、目視観察によって、0:斑点・枯死全くない、1:斑点・脱色が認められた、2:葉のふちが枯れた、3:枯死、の4段階評価を行い、それらの平均点で評価した。
【0015】
【表1】

【0016】
実施例と比較例の対比から、本発明の肥料によれば、施肥直後に播種・定植を行っても、発芽率が悪化せず、さらに栽培期間中に斑点や枯死といった薬害が発生せずにコマツナの栽培ができた。また、実施例1と実施例2の対比から、肥料を造粒することによって、より地上部の重さが重くなり、肥効性が更に大きい肥料となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアナミドと、腐植酸又はその含有物とを含有してなる肥料。
【請求項2】
シアナミドを2〜15質量%、腐植酸又はその含有物を98〜85質量%含有してなる肥料。
【請求項3】
造粒されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の肥料。

【公開番号】特開2006−342028(P2006−342028A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170259(P2005−170259)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】