説明

肩載せ型カメラ揺動制御装置

【課題】揺動制御幅を増大させて、カメラ揺動制御装置として十分で的確な効果を発揮し、撮影者に負担を増やさない肩載せ型カメラ揺動制御装置を提供する。
【解決手段】前記カメラ装置を載置する第1支持部材と、これに対向して配置される第2支持部材とから成り、これらの間で、カメラ装置の重心直下の支持手段、ピッチ及びロール方向の変位を検出する角速度検出手段、当該変位を相殺する揺動制御手段とを備えたカメラ揺動制御装置において、山型部1a、2aの後側の第1支持部材1の下面に揺動制御手段を形成するアクチュエータ15の磁石を磁性材料から成るヨークの縦板側面に設けて垂下させ、山型部1a、2aの後側の第2支持部材2の上面に前記磁石が側面に相対向し、ヨークの縦板の一つが中空部に遊通するコイルを立設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、テレビ番組や映画制作等において、撮影者の肩に載せて被写体を撮影する肩載せ型カメラの揺動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビ番組制作や、映画制作等で使用される肩載せ型カメラ装置では、装置の振動乃至は揺動による映像のブレを防止するために補正技術があり、その補正技術としては大きくパッシブ型とアクティブ型がある。
【0003】
特に、アクティブ型のものとしては、特許文献1のように、肩載せ型カメラ装置を載置して支持する第1支持部材と、前記第1支持部材に対向して配置されるとともに、前記肩部に載せられて支持される第2支持部材と、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に設けられ、前記第1支持部材を前記カメラ装置の略重心直下で支持するピッチ方向、ロール方向に揺動自在な支持手段と、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に設けられ、前記第1支持部材からの荷重を受ける弾性部材と、前記第1支持部材と前記第2支持部材との間に設けられ、前記第1支持部材に生じた振動乃至は揺動による変位を検出する角速度検出手段と、この変位を相殺する手段を有する振動制御手段とを備え、前記弾性部材は、前記第1支持部材の振動により生じた荷重を受けるとともに、前記カメラ装置の重心位置が前記支持手段の支持位置から移動したときに生じる荷重を受けるカメラ制振装置がある。
【特許文献1】特開2009−169187号公報
【0004】
そして、この様なカメラ制振装置においても、性能の良さ、すなわち、揺動に対するより十分で的確な対応は常に追求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カメラ装置に伝わる揺動を十分且つ的確に制御しようとすると、アクチュエータの駆動力を増大させなければならない。アクチュエータの駆動力を増大させるには、磁石を厚く長くするか、又はコイルの量を増大させるしかない。しかし、コイルの量を増大させるのは電力消費が大きくなり、得策ではなく、磁石を厚く長くする方が選択出来るが、鉄製の磁石を厚く長くすると制振装置の重量を大きく増加させることになる。撮影者の肩に載せるカメラ装置の揺動制御装置としては重量の増加は極力避けなければならない。
【0006】
一方、前記肩載せ型カメラ装置は記録方式の高密度化及び小型化に伴い、従来のテープ駆動用のメカニズムが無くなり、軽量化される傾向にある。しかし、肩載せ型カメラ装置の光学的なレンズ部の重量は従来と変わらないため、カメラ装置としては前方のレンズ側に重量が偏った傾向が顕著になって来ている。その結果、肩載せ型カメラ装置の揺動制御装置を装着した場合、支持支点に対してレンズ部と反対側とのバランスを取るために後部にバランスウエイト35が必要になる(図1の点線部分参照)。このバランスウエイトは揺動制御の可動部の重量を増加させ、動的な駆動力の低下、つまり制御の効果の低下を招く原因の一つとなっている。
【0007】
本発明は、これらの点に鑑みて為されたもので、揺動制御幅を増大させて、カメラ揺動制御装置として十分且つ的確な効果を発揮しながらも、撮影者に負担を増やさない肩載せ型カメラ揺動制御装置を提供して前記課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、肩載せ型カメラ装置を載置して支持する第1支持部材と、前記第1支持部材に対向して配置されると共に、撮影者の肩部に載せられて支持される第2支持部材とから成り、前記第1支持部材を前記カメラ装置の略重心直下に支持する、ピッチ及びロール方向に揺動自在な支持手段、前記第1支持部材と第2支持部材との間であってその後部に設けられ、前記第1支持部材に生じた揺動によるピッチ及びロール方向の変位を検出する角速度検出手段、及びこれらの変位を相殺する手段を有する揺動制御手段とを備えたカメラ揺動制御装置において、前記第1支持部材の後部の下面に前記揺動制御手段を形成するアクチュエータの磁石を磁性材料から成るヨークの縦板側面に設けて垂下させ、前記第2支持部材の後部の上面に前記磁石が側面に相対向し、前記ヨークの縦板の一つが中空部に遊通するコイルを立設した肩載せ型カメラ揺動制御装置とした。
【0009】
請求項2の発明は、前記コイルを巻き付けたボビンを樹脂製とし、前記ヨークの縦板の一つが、このボビンの中に遊通している前記請求項1に記載の肩載せ型カメラ揺動制御装置とした。
【0010】
請求項3の発明、前記コイルと共に配線を第2支持部材上に設けた前記請求項1又は2に記載の肩載せ型カメラ揺動制御装置とした。
【0011】
請求項4の発明は、前記第1支持部材及び第2支持部材の間であって後側両側にロック手段を設け、これらのロック手段は第1支持部材下面から逆三角形でその下部が下方へ延びたバネ板を垂下させ、第2支持部材の上面に前記バネ板に対向してバネ板の一側に固定板を立設し、当該バネ板の他側にピストンを設け、当該ピストンの前後運動で前記バネ板を固定板とで挟持自在な構成である前記請求項1、2又は3に記載の肩載せ型カメラ揺動制御装置とした。
【0012】
請求項5の発明は、前記第1支持部材及び第2支持部材の略中央部に山型部を設け、当該第2支持部材の山型部の下面凹部にブリッジ状肩パッドを設けた前記請求項1、2、3又は4に記載の肩載せ型カメラ揺動制御装置とした。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、第1支持部材の後部の下面に揺動制御手段を形成するアクチュエータの磁石を垂下して設け、前記第2支持部材の後部の上面に前記磁石を対向する位置にコイルを設け、第2支持部材に対して移動する第1支持部材に重量のある磁石を設けたので、前記アクチュエータの駆動力を増大させるために磁石を大きなものとしたにもかかわらず、カメラ揺動制御装置として十分且つ的確な効果を発揮しながらも、バランスウエイトを取り付ける必要がなく、撮影者の負担を増大させないカメラ揺動制御装置が提供出来る。
【0014】
また、前記磁石を大きなものとしない場合でも、バランスウエイトを取り付ける必要がなく、カメラ装置及び揺動制御装置全体の重量を下げる事が出来、撮影者にとって負担を軽減出来、使い易いものとなる。
【0015】
請求項2の発明によれば、コイルを巻き付けるボビンを樹脂製としたので、ボビン内に入るヨークとの絶縁が確実に出来、万一前記ヨークとの接触があっても、コイルを傷付けず、アクチュエータとして確実に作動出来、その結果、カメラ揺動制御装置として信頼性の高いものである。
【0016】
請求項3の発明では、従来の制振装置では前記配線が可動する第1支持部材に設けられており、リード線、ネジやナットが移動による振動で断線したり緩められたりすることがあったが、この請求項3の発明によれば、前記コイルと共に配線を、肩に固定された第2支持部材上に設けたので、前記断線やネジ等の緩みが無く、品質を長期にわたり維持出来、カメラ揺動制御装置として信頼性の高いものである。
【0017】
請求項4の発明によれば、バネ板は逆三角形状で下端を下方に伸ばした延長部を有するので、第1支持部材の揺動幅が大きくてもバネ板は常に固定板に対向しているため、ピストンで挟持可能となって、任意の位置で第1支持部材と第2支持部材の状態をロックすることが出来る。
【0018】
請求項5の発明によれば、例えば、第1支持部材及び第2支持部材の山型部を従来のものより前後幅を小さくし、種々の大きさのカメラ装置に対応出来るようにした場合、第2支持部材の支持箇所の下面の凹部が狭くなるが、前記ブリッジ状肩パッドを設けることにより、撮影者の肩に載せる幅を確保出来、撮影者にかかる負担を軽減することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
肩載せ型カメラ装置を載置して支持する第1支持部材と、前記第1支持部材に対向して配置されると共に、撮影者の肩部に載せられて支持される第2支持部材とから成り、前記第1支持部材を前記カメラ装置の略重心直下に支持する、ピッチ及びロール方向に揺動自在な支持手段、前記第1支持部材と第2支持部材との間であってその後部に設けられ、前記第1支持部材に生じた揺動によるピッチ及びロール方向の変位を検出する角速度検出手段、及びこれらの変位を相殺する手段を有する揺動制御手段とを備えたカメラ揺動制御装置において、前記第1支持部材の後部の下面に前記揺動制御手段を形成するアクチュエータの磁石を磁性材料から成るヨークの縦板側面に設けて垂下させ、前記第2支持部材の後部の上面に前記磁石が側面に相対向し、前記ヨークの縦板の一つが中空部に遊通するコイルを立設した。
【0020】
これにより、カメラ揺動制御装置として十分且つ的確な効果を発揮しながらも、バランスウエイトを取り付ける必要がなく、撮影者の負担を増大させないカメラ揺動制御装置が提供出来る。
【実施例1】
【0021】
以下、この発明の実施例1の肩載せカメラ揺動制御装置を図に基づいて説明する。図1は、この発明の実施例1の肩載せカメラ揺動制御装置を取り付けた肩載せカメラ装置を示す側面図である。図2は、この発明の実施例1の肩載せカメラ揺動制御装置を正面側から見た場合の斜視図である。図3は、この発明の実施例1の肩載せカメラ揺動制御装置を背面側から見た場合の斜視図である。図4は、この発明の実施例1の肩載せカメラ揺動制御装置の正面図である。図5は、この発明の実施例1の肩載せカメラ揺動制御装置の背面図である。図6は、この発明の実施例1の肩載せカメラ揺動制御装置の制御装置のブロック図である。
【0022】
図7は、この発明の実施例1の肩載せカメラ揺動制御装置の後側の第1支持部材の下面の斜視図である。図8は、この発明の実施例1の肩載せカメラ揺動制御装置の後側の第2支持部材の上面の斜視図である。図9は、この発明の実施例1の肩載せカメラ揺動制御装置の後側の第2支持部材に設けたコイルに、第1支持部材の下面から磁石及びヨークを取り出し嵌合した状態の斜視図である。
【0023】
図1に示す様に、この肩載せカメラ装置B(以下、単に「カメラ装置」と言う)の前部にはレンズ鏡筒部31を設け、カメラ装置Bの後部には、電源部32を設けている。このカメラ装置Bの下面の略中央部には、段部によって凹部33を設けており、この凹部33に、後述するカメラ装置Bの揺動を制御する揺動制御装置Aの支持箇所1a、2aを嵌合して取り付ける様になっている。揺動制御装置Aによる揺動制御はピッチ及びロールの2方向で行われる。
【0024】
図2及び3に示す様に、揺動制御装置Aは略長方形状で略中央部に段部によって支持箇所である山型部1aを設けた第1支持部材1、及び同様にして山型部2aを設けた第2支持部材2を所定の間隔をあけて相対向して形成する。第1支持部材1と第2支持部材2の間であって、前記山型部1a、2aを挟んで前側には、前側空間3が形成され、同様に第1支持部材1と第2支持部材2の間であって、前記山型部1a、2aを挟んで後側には、後側空間4が形成されている。
【0025】
前述の様に、揺動制御装置Aの山型部1a、2aはカメラ装置Bの凹部33に係合する。第1支持部材1における支持箇所の前側上面にはカメラ取付ネジ5が設けられ、このカメラ取付ネジ5は、カメラ装置Bの下面の対向した部材に螺合される。第1支持部材1における山型部1aの後側上面にはカメラ取付フック6が設けられ、カメラ取付フック6は、カメラ装置Bの下面の対向した孔に係合される。これにより、カメラ装置Bは揺動制御装置Aの上に着脱自在に取り付けられる。
【0026】
また、前記第1支持部材1と第2支持部材2の山型部1a、2aは、第1支持部材1の山型部1aを従来のものより前後幅を小さくし、種々の大きさのカメラ装置Bに対応出来るようにしている。そのため、第2支持部材2の山型部2aの下面の凹部が狭くなっており、撮影者がこれを担ぐ際、負担がかかるので第2支持部材2の下面凹部にはブリッジ状肩パッド2bが設けられている。これにより撮影者の肩幅に見合う凹部幅を確保している。また、第2支持部材2の前端部には、レンズ鏡筒部31内部のレンズのフォーカス等を調整する光学系調整部34が設けられている(図1参照)。
【0027】
第1支持部材1と第2支持部材2の間の前側空間3には、図4に示す様に、上側前後調整部7、下側前後調整部8、ピッチ用連結部9(支持手段)、ロール用連結部10(支持手段)、及び前側ばね部11(図4では記載無し)が設けられている。上側前後調整部7及び下側前後調整部8は、第1支持部材1及び第2支持部材2に対するピッチ用連結部9及びロール用連結部10の前後方向の位置を調整する。ピッチ用連結部9及びロール用連結部10はカメラ装置Bの略重心直下に配置され、カメラ装置Bの自重を支えており、これにより第2支持部材2に対して第1支持部材1がピッチ、ロールの両方向に揺動自在に支持されている。前側ばね部11はカメラ装置Bが載置された第1支持部材1が傾いた場合、カメラ装置Bの重心位置の偏心分の荷重を受ける。
【0028】
上側前後調整部7は、図4に示すように、スライド機構(図示省略)、スライドベース(図示省略)及び調整ハンドル7a等を備えている。スライド機構は、横方向に一対設けられている。スライド機構は、第1支持部材1の前後方向に延在するガイドレール(図示省略)と、このガイドレールに摺動可能に設けられているスライド(図示省略)を有している。この左右のスライドの下面にスライドベースが固定されている。調整ハンドル7aは、揺動制御装置Aの外部に配置されている。
【0029】
この様な上側前後調整部7では、調整ハンドル7aを回転操作すると、スライド機構においてスライドがガイドレールに沿って移動することにより、スライドベースが前後に移動する。これにより、上側前後調整部7の下面部に固定されたピッチ用連結部9が上側前後調整部7の上面部に固定された第1支持部材1に対して前後に移動する。
【0030】
下側前後調整部8も、前記上側前後調整部7と上下の違いはあるが、同様に構成されて作用し、これにより、下側前後調整部8の上面部に固定されたロール用連結部10が、下側前後調整部8の下面部に固定された第2支持部材2に対して前後に移動する。
【0031】
ピッチ用連結部9は、図4に示すように、ピッチ用保持板9a及びピッチ用シャフト9b等を備えている。ピッチ用保持板9aは、前記上側前後調整部7のスライドベースの下面に左右一対固定されている。また、ピッチ用シャフト9bはロッド状を成し、横方向に延在するとともに、その両端部は前記ピッチ用保持板9aに固定されている。
【0032】
この様なピッチ用連結部9ではピッチ用シャフト9bが回転すると、これと一体なピッチ用保持板9aがピッチ軸回りに回転する。これにより、上側前後調整部7及び第1支持部材1がピッチ用保持板9aと共にピッチ軸回りに回転する。
【0033】
ロール用連結部10は、図4に示すように、ロール用保持板10a及びロール用シャフト10b等を備えている。ロール用保持板10aはピッチ用保持板9aの間の前記ピッチ用シャフト9bに固定されている。ロール用シャフト10bはロッド状を成し前後方向に延在すると共に、その後端部は、ロール用保持板10aに固定されている。また、このロール用シャフト10bの前端部はロール用ベアリング10cを介してロール用ベアリングホルダ10dに回転自在に支持されている。そして、このロール用ベアリングホルダ10dは前記下側前後調整部8に載置されている。
【0034】
この様なロール用連結部10ではロール用シャフト10bがロール用ベアリング10cの中で回転すると、ロール用シャフト10bの後端部が固定されたロール用保持板10aがロール軸回りに回転する。これにより、ピッチ用連結部9、上側前後調整部7及び第1支持部材1が、ロール用保持板10aとともにロール軸回りに回転する。この様に、前記ピッチ用連結部9とロール用連結部10とで、第1支持部材1は第2支持部材2に対してピッチ方向及びロール方向に揺動自在に支持され、この支持点も第1支持部材1及び第2支持部材1の前後に移動固定自在である。
【0035】
前記前側ばね部11は、前側空間3におけるピッチ用連結部9の後方向に一対配置されている。前側ばね部11は、後述する後側ばね部13と同じ構成で、ばね(弾性部材)及びばね台座を備えている。ばねは、コイル状をなし、その両端部は、第1支持部材1の下面および第2支持部材2の上面に固定されたばね台座に支持されている。この様な前側ばね部11では、第1支持部材1が傾いた場合、横方向一対のばねが、カメラ装置Bの偏心分の荷重を第1支持部材1を通じて受ける。また、ばねは、カメラ装置Bの重心位置が偏心していないときでも、カメラ装置Bの振動により生じた荷重を第1支持部材1を通じて受けることが出来る。また、この前側空間3の左右には上下、左右の揺動幅を規制するストッパ17が夫々設けられている。このストッパは後述するストッパ12と略同様の構成である。
【0036】
第1支持部材1と第2支持部材2との間の後側空間4には、ストッパ12(図5参照)、後側ばね部13(図1参照)、角速度検出部14(角速度検出手段、図1参照)、アクチュエータ15(振動制御手段、図1、2及び3参照)、及び制御部16が設けられている。ストッパ12は第1支持部材1と第2支持部材2の間での上下、左右方向の揺動の幅を規制する。後側ばね部13は、カメラ装置Bが載置された第1支持部材1が傾いた場合、カメラ装置Bの重心位置の偏心分の荷重を受ける。角速度検出部14は、第1支持部材1のピッチ方向およびロール方向の角速度を検出する。アクチュエータ15は、カメラ装置Bが載置された第1支持部材1が傾いた場合、カメラ装置Bの回転慣性分の荷重に対して抵抗力を発生することにより、カメラ装置Bの揺動を制御する。制御部16は、前記角速度検出部14により検出された各方向の角速度に基づき、前記アクチュエータ15の動作制御を行う。
【0037】
ストッパ12は、図5に示すように、第1支持部材1及び第2支持部材2の後端部に配置されている。ストッパ12は、第1支持部材1の後端部の縁に設けた係合部材12aと、第2支持部材2の後端部の縁から板を立設した形状のガイド部材12cとを有する。係合部材12aの下端部には突起12bが形成され、ガイド部材12cには垂直方向に延在する開口窓12dが形成され、この開口窓12dに前記突起12bが挿入されている。この開口12dは従来設けられていたものより垂直方向の長さが長いものとなっている。ストッパ12では、突起12bが開口窓12d内に沿って案内されることにより、第1支持部材1と第2支持部材2の間での上下、左右方向の揺動の幅を規制するものである。
【0038】
後側ばね部13は、図1に示すように、後側空間4の前側の横方向に一対配置されている。後側ばね部13は、ばね13a(弾性部材)及びばね台座13bを備えている。ばね13aは、コイル状をなし、その両端部は、第1支持部材1の下面及び第2支持部材2の上面に固定されたばね台座13bに支持されている。この様な後側ばね部13では、第1支持部材1が傾いた場合、横方向一対のばね13aが、カメラ装置Bの偏心分の荷重を第1支持部材を通じて受ける。また、ばね13aは、カメラ装置Bの重心位置が偏心していないときでも、カメラ装置Bの揺動により生じた荷重を第1支持部材1を通じて受けることができる。
【0039】
角速度検出部14は、図1に示すように、第1支持部材1の下面に取り付けられ、図6に示す様に、ピッチ用ジャイロセンサ14a及ロール用ジャイロセンサ14bを有する。ピッチ用ジャイロセンサ14aは、第1支持部材1のピッチ方向の角速度を検出し、ロール用ジャイロセンサ14bは、第1支持部材1のロール方向の角速度を検出する。
【0040】
アクチュエータ15は、図7、8及び9に示すように、後側空間4の後側に一対配置され、磁石15a、ヨーク15b及びコイル15cを備えている電磁アクチュエータである。ヨーク15bは、鉄製で第1支持部材1の下面に固定される基部15dと、この基部15dの両端部及び中央部から下方へ向けて垂下する3つの縦板部15eを有している。この縦板部15eが下がってきても第2支持部材2との間に隙間が形成されるよう規制されている。コイル15cは、樹脂製で略四角筒形状のボビン15fの周囲に巻き付けられ、前記ヨーク15bの中央部の縦板部15eがボビン15f内に遊通されるように第2支持部材2上に設けられ固定されている。また、コイル15cの上端部とヨーク15aの基部15dとの間にはヨーク15aが下がってきても、コイル15cの上端部に当たらないように隙間が形成される様に規制されている。磁石15aはコイル15cの外側面に対向するように、ヨーク15bの両端部の縦板部15eの内側面に夫々設けられている。コイル15cから延びた配線(図示省略)は第2支持部材2上に配設されて、前記制御部16を介してカメラ装置Bの電源部32に電気的に接続されている。
【0041】
ここで使用する磁石15aは、従来使用されていたものが4mmの厚さを有するものとすれば、ここでは7mmの厚さのものを使用し、また、長さも幾分長いものを使用している。その結果、アクチュエータ15としての駆動力は増大されており、磁石自体の重量は従来のものより重いものとなっている。
【0042】
この様なアクチュエータ15の駆動では、角速度検出部14により検出された第1支持部材1の角速度に基づき、前記制御部16を介してコイル15cに電流を流す。すると、コイル15cと磁石15aとの間に電磁力が生じることにより、カメラ装置Bの回転慣性分の荷重に対して抵抗力を発生し、その結果、カメラ装置Bの揺動が制御される。
【0043】
制御部16は、図6に示すように、ピッチ用抵抗力算出回路16a、ロール用抵抗力算出回路16b、右側加算回路16c,左側加算回路16d、及び右側増幅回路16e,左側増幅回路16fを備えている。ピッチ用抵抗力算出回路16aは、ピッチ用ジャイロセンサ14aからの角速度の検出値に基づき、右側のアクチュエータ15及び左側のアクチュエータ15に必要な抵抗力を算出する。一方、ロール用抵抗力算出回路16bは、ロール用ジャイロセンサ14bからの角速度の検出値に基づき、右側のアクチュエータ15及び左側のアクチュエータ15に必要な抵抗力を算出する。
【0044】
ピッチ用抵抗力算出回路16aは、左右のアクチュエータ15が発生する抵抗力を算出した後、それぞれに対応するピッチ用右側信号PRおよびピッチ用左側信号PLを右側加算回路16c、左側加算回路16dに出力する。
【0045】
一方、ロール用抵抗力算出回路16bは、左右のアクチュエータ15が発生する抵抗力を算出した後、それぞれに対応するロール用右側信号RRおよびロール用左側信号RLを右側加算回路16c、左側加算回路16dに出力する。
【0046】
右側加算回路16cは、ピッチ用右側信号PR及びロール用右側信号RRを加算し、その加算値は、右側増幅回路16eによる増幅後、右側のアクチュエータ15へ出力される。一方、左側加算回路16dは、ピッチ用左側信号PL及びロール用左側信号RLを加算し、その加算値は、左側増幅回路16fによる増幅後、左側のアクチュエータ15へ出力される。これにより、右側のアクチュエータ15及び左側のアクチュエータ15は、カメラ装置Bのピッチ方向およびロール方向の回転慣性分の荷重に対して抵抗力を発生する。
【0047】
この様に右側,左側のアクチュエータ15は、ピッチ方向、ロール方向で検出された第1支持部材1の角速度に基づき抵抗力を発生することにより、第1支持部材1のピッチ方向及びロール方向の揺動が制御される。
【0048】
以上の様に、この実施例1の揺動制御装置Aでは、第1支持部材1をカメラ装置Bの略重心直下で支持しているピッチ用連結部9及びロール用連結部10を備えているので、これらの連結部9、10がカメラ装置Bの自重を支えることが出来る。ここで、カメラ装置Bが傾いた場合、カメラ装置Bの重心位置の偏心分の荷重と回転慣性分の荷重が生じるが、この実施例1の揺動制御装置Aでは、第1支持部材1からの荷重を受ける前側ばね部11、後側ばね部13を備えているので、各ばね部11、13がカメラ装置Bの偏心分の荷重を受けることができる。また、前側ばね部11、後側ばね部13は、カメラ装置Bの重心位置が偏心していないときでも、カメラ装置Bの振動により生じた荷重を受けることができる。そして、第1支持部材1に生じた揺動を制御するアクチュエータ15を備えているので、アクチュエータ15が、カメラ装置Bの回転慣性分の荷重に対する抵抗力を発生することにより、カメラ装置Bの揺動を制御することが出来る。
【0049】
加えて、この実施例1のカメラ揺動制御装置Aでは、従来使用していた磁石15aより厚く長いものを使用してアクチュエータ15の駆動力を増大しているため、当該アクチュエータ15の動きをより強力により大きくすることが出来る。よって、第1支持部材1と第2支持部材2との間の後側空間4に設けたストッパ12のガイド部材12cの開口12dが従来ものより垂直方向の長さが長いものとなっても、十分に対応することが出来る。その結果、従来のものでは制御出来なかった大きな揺動でも、この実施例1の装置では対応することが出来、肩載せカメラ揺動制御装置Aとして信頼性が高いものである。
【0050】
さらに、従来の肩載せカメラ制振装置ならば、実際に、このカメラ制振装置にカメラ装置を取り付けた場合、カメラの前側、すなわち、レンズ部が重く、どうしてもカメラ装置及び制振装置の前側に重心が偏向していた。そこで、このバランスを取るために、カメラ装置の後部の電源部の直ぐ後にバランスウエイト35を取り付けていた(図1の点線部分参照)。その結果、カメラ装置及び制振装置全体の重量の増加となっていた。しかし、この実施例1のカメラ揺動制御装置Aならば、可動する前記第1支持部材1の下面に、従来のものより厚く長い磁石15aを垂下させたことにより、この磁石15aの重量がバランスウエイト35の役割を成し、別途、バランスウエイト35を取り付ける必要がないので、前記の様に揺動制御を大きなものとしても、カメラ装置及び制御装置全体の重量を増大させる必要が無い。
【0051】
その結果、カメラ揺動制御装置Aとして十分且つ的確な効果を発揮しながらも、撮影者に新たな負担を増やさないカメラ揺動制御装置Aが提供出来るものである。
【0052】
前記実施例1では、カメラ揺動制御装置Aの磁石15aを従来使用していたものより厚く長いものを使用しているが、使用する磁石は従来のものでも良い。その場合、アクチュエータ15の駆動力は従来のままであるが、磁石15aを第1支持部材1の下面に設けているので、別途、バランスウエイト35を取り付ける必要がない。その結果、カメラ装置B及び揺動制御装置A全体の重量を下げる事が出来、撮影者にとって負担を軽減出来、使い易いものとなる。
【0053】
また、前記後側空間4の左右後部には第1支持部材1が第2支持部材2に対してどのような位置においても、この状態をロックするロック手段20が設けられている。このロック手段20は、第1支持部材1の後部両側からバネ板20aが垂下され、第2支持部材2の後部両側に設けた固定板20bの間に、これらの各固定板20b、20bに対向して可動ピストン20cを夫々設け、この可動ピストン20cを電動により伸ばすと固定板20bに近接して前記バネ板20aを固定板20bとピストン20cとで挟持する構成である。
【0054】
そして、前記バネ板20aは逆三角形状で下端を下方に伸ばした延長部を有するものである。このため、第1支持部材1の揺動幅が大きくてもバネ板20aは常に固定板20bに対向しているため、ピストン20cで挟持可能となっている。
【0055】
また、ヨーク15bを鉄製としているが、ヨーク15bの材質は鉄に限定するものではなく、他の磁性材料のものでももちろん良い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明の実施例の肩載せカメラ揺動制御装置を取り付けた肩載せカメラ装置を示す側面図である。
【図2】この発明の実施例1の肩載せカメラ揺動制御装置を正面側から見た場合の斜視図である。
【図3】この発明の実施例1の肩載せカメラ揺動制御装置を背面側から見た場合の斜視図である。
【図4】この発明の実施例1の肩載せカメラ揺動制御装置合の正面図である。
【図5】この発明の実施例1の肩載せカメラ揺動制御装置の背面図である。
【図6】この発明の実施例1の肩載せカメラ揺動制御装置の制御装置のブロック図である。
【図7】この発明の実施例1の肩載せカメラ揺動制御装置の後側の第1支持部材の下面の斜視図である。
【図8】この発明の実施例1の肩載せカメラ揺動制御装置の後側の第2支持部材の上面の斜視図である。
【図9】この発明の実施例1の肩載せカメラ揺動制御装置の後側の第2支持部材に設けたコイルに、第1支持部材の下面から磁石及びヨークを取り外し嵌合した状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
A 揺動制御装置 B カメラ装置
1 第1支持部材 2 第2支持部材
3 前側空間 4 後側空間
5 カメラ取付ネジ 6 カメラ取付フック
7 上側前後調整部 8 下側前後調整部
9 ピッチ用連結部 10 ロール用連結部
11 前側ばね部 12 ストッパ
13 後側ばね部 14 角速度検出部
15 アクチュエータ 16 制御部
17 ストッパ 20 ロック手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肩載せ型カメラ装置を載置して支持する第1支持部材と、前記第1支持部材に対向して配置されると共に、撮影者の肩部に載せられて支持される第2支持部材とから成り、前記第1支持部材を前記カメラ装置の略重心直下に支持する、ピッチ及びロール方向に揺動自在な支持手段、前記第1支持部材と第2支持部材との間であってその後部に設けられ、前記第1支持部材に生じた揺動によるピッチ及びロール方向の変位を検出する角速度検出手段、及びこれらの変位を相殺する手段を有する揺動制御手段とを備えたカメラ揺動制御装置において、
前記第1支持部材の後部の下面に前記揺動制御手段を形成するアクチュエータの磁石を磁性材料から成るヨークの縦板側面に設けて垂下させ、前記第2支持部材の後部の上面に前記磁石が側面に相対向し、前記ヨークの縦板の一つが中空部に遊通するコイルを立設したことを特徴とする、肩載せ型カメラ揺動制御装置。
【請求項2】
前記コイルを巻き付けたボビンを樹脂製とし、前記ヨークの縦板の一つが、このボビンの中に遊通していることを特徴とする、前記請求項1に記載の肩載せ型カメラ揺動制御装置。
【請求項3】
前記コイルと共に配線を第2支持部材上に設けたことを特徴とする、前記請求項1又は2に記載の肩載せ型カメラ揺動制御装置。
【請求項4】
前記第1支持部材及び第2支持部材の間であって後側両側にロック手段を設け、これらのロック手段は第1支持部材下面から逆三角形でその下部が下方へ延びたバネ板を垂下させ、第2支持部材の上面に前記バネ板に対向してバネ板の一側に固定板を立設し、当該バネ板の他側にピストンを設け、当該ピストンの前後運動で前記バネ板を固定板とで挟持自在な構成であることを特徴とする、前記請求項1、2又は3に記載の肩載せ型カメラ揺動制御装置。
【請求項5】
前記第1支持部材及び第2支持部材の略中央部に山型部を設け、当該第2支持部材の山型部の下面凹部にブリッジ状肩パッドを設けたことを特徴とする、前記請求項1、2、3又は4に記載の肩載せ型カメラ揺動制御装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−171933(P2011−171933A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32784(P2010−32784)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(391038822)ヘルツ株式会社 (5)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】