説明

育毛剤

【課題】糖尿病改善作用、血管新生抑制作用、DHA合成促進作用等の機能が知られているフコキサンチンおよび/またはフコキサンチノールの新たな用途の提供。
【解決手段】フコキサンチンおよび/またはフコキサンチノールを有効成分とする育毛剤。これら有効成分を使用することにより、マウスによる発毛率の上昇が確認された。また、これら有効成分を使用することにより、ヒトにおける育毛効果、脱毛効果、ふけ防止効果が確認された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フコキサンチンは、糖尿病改善作用(特許文献1)、血管新生抑制作用(特許文献2)、DHA合成促進作用(特許文献3)等の機能が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−314451号公報
【特許文献2】特開2008−1623号公報
【特許文献3】特開2007−77067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、フコキサンチンまたはその類似化合物の新たな用途を見出し、育毛効果に優れた育毛剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、フコキサンチンおよび/またはフコキサンチノールを有効成分とする育毛剤を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フコキサンチンおよび/またはフコキサンチノールの新たな用途を見出し、育毛効果に優れた育毛剤をすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明で用いられるフコキサンチンおよびフコキサンチノールは、公知の化合物であり、その調製法は、例えば前記特許文献2に記載されている。すなわち本発明において用いられるフコキサンチンは、天然物由来のものであることができ、例えば、コンブ科、チガイソ科等のコンブ目に属する褐藻類;ナガマツモ科、モズク科等のナガマツモ目に属する褐藻類;珪藻等の微細藻類等から抽出できる。
【0008】
抽出方法は、例えば極性有機溶媒、水と極性有機溶媒の混合液等の極性溶媒と原料とを接触させることによりなされる。極性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール等の炭素数1〜5の低級アルコール;プロピレングリコール;アセトン;酢酸エチル;ヘキサン;ジクロロメタン;クロロホルム等の単独或いは2種以上の組み合わせを挙げることができる。 なお、抽出に先立ち、フコキサンチンを含む原料を乾燥、粉砕処理しておくことが好ましい。 抽出方法は常法により行なえばよい。例えば、原料に対し2〜100倍容の上記抽出溶媒を加え、原料を浸漬処理、攪拌処理することにより、フコキサンチンを抽出することができる。
【0009】
抽出されたフコキサンチンは、減圧蒸留等により有機溶媒を取り除くことが好ましい。また、公知の各種精製方法に施すこともできる。また必要に応じて、更に、減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等の乾燥処理に施すこともできる。なお、本発明では市販品の各種フコキサンチンを使用することもできる。
【0010】
フコキサンチノールは、フコキサンチンが加水分解されたものであり、公知である。加水分解反応は、例えばフコキサンチンをリパーゼやコレステロールエステラーゼなどの脂質分解酵素により達成できる。
【0011】
本発明の育毛剤を経口投与する場合、フコキサンチンおよび/またはフコキサンチノールの投与量は、患者の年令、体重、適応症状などによって異なるが、例えば、凍結乾燥粉末として、成人1日約1mg〜1g、好ましくは3mg〜300mg程度投与するのがよい。
【0012】
本発明の育毛剤を頭皮に塗布する場合、通常、水性溶液または分散液の形態で使用される。この場合、本発明の有効成分の配合量は、好ましくは、0.00001〜10質量%であり、さらに好ましくは0.0001〜5質量%、とくに好ましくは0.01〜4質量%である。このような育毛剤は、例えば、成人1日1〜3回、1回量0.1ml〜10ml、好ましくは0.5ml〜2mlで頭皮に塗布するのがよい。
【0013】
本発明の育毛剤は、種々の形態で用いることができ、経口投与以外には、例えば、ヘアートニック、ヘアークリーム、ヘアーローション、リンス、シャンプー、ヘアーフォーム、ヘアージェル、エアゾール等の形態が挙げられる。
【0014】
また、本発明の育毛剤は、必要に応じて各種添加剤を添加することもできる。例えば、保湿剤、増粘剤、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、抗炎症剤、ビタミン類等が挙げられる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。
【0016】
調製例 上記特許文献2に記載の方法にしたがって、フコキサンチンおよびフコキサンチノールを調製した。方法を以下に示す。 粉砕機で粉末状にした市販の乾燥ワカメ(乾燥重量約100g)に、アセトン:メタノール(7:3,v/v)1Lを数回に分けて加え、襞濾紙を用いて濾過し、粗抽出画分を得た。エバポレーターで溶媒を除去し、メタノール100mLに溶解した後、ヘキサン100mLと水10mLを加えて分液漏斗を用いて液々分配した。
【0017】
得られた溶液の上層を除去し、下層をヘキサン100mLで2回洗浄した。その後、下層に水31mLを加えてメタノールの割合を70%にした後、ヘキサン100mLを加えて分配した。さらに、下層をエバポレータ−でボリュームが1/3になるまで濃縮した後、ジエチルエーテル150mLと水100mLを加えて分配した。
【0018】
上層(エーテル層)を集めてエバポレータ−で溶媒を除去し、得られた抽出物を薄層クロマトグラフィー(展開溶媒=ヘキサン:アセトン(6:4,v/v);PLCプレート(15 PLC plates20×20cm,Silica gel60 F254,1mm,Merck Ltd.,Japan))で展開した。 分離されたカロテノイド画分をプレートより掻き取り、再度抽出し、カロテノイド抽出物を得た。
【0019】
上記で得られたカロテノイド抽出物をHPLCに供し、測定波長444nmにて保持時間8.7分に現れるフコキサンチンのピーク部分の画分を分取し、分取した画分に対してをジクロロメタンと水を加えて抽出して精製した。HPLCの条件は下記に示すとおりである。フコキサンチンをアセトンに溶解し、比吸光度を濃度として用いて算出したところ、約11mgのフコキサンチンが得られた。この操作を数回繰り返し、凍結乾燥し、以下の各例で用いた粉末1とした。(HPLC分取条件)・流速 1.0mL/min・カラム温度 40℃・移動相(A)アセトニトリル:メタノール:水=75:15:10(v/v/v,0.1%酢酸アンモニウムを含む)と(B)酢酸エチル:メタノール=30:70(v/v,0.1%酢酸アンモニウムを含む)を用いた2液グラジエント
【0020】
また、上記のようにして得られたフコキサンチンをコレステロールエステラーゼを用いて酵素分解し、フコキサンチノールを得た。
【0021】
実施例1 特許第4041451号公報に記載の実験手順に従い、フコキサンチンおよびフコキサンチノールの育毛効果を検証した。 (1)マウスによる試験 C3Hマウス(8週齢、オス、平均体重35g)の背部皮膚(2cm×4cm)を電気バリカン及びシェーバーで刈り、翌日より各試料のいずれかを被験部皮膚に朝夕2回、一匹当り0.2mLを二週間連用塗布した。一試料に対して動物一群10匹使用した。塗布開始22日目に各試料の被験部皮膚をビデオカメラに撮影し、画像解析装置にて毛刈り部及び発毛部の面積を測定した。育毛効果の判定は、下記に示す発毛率(%)を算出し、実施例または比較例の各群の発毛率平均値を求めて比較を行った。発毛率(%)=(発毛部の面積)/(毛刈り部の面積)×100
【0022】
(2)ヒトによる試験 男性型脱毛症患者である被験者7名の耳上5cmの位置にて、頭髪を左右2ヶ所直径5mmの円形状に剃毛し、各試料のいずれかを左側の頭髪全体に毎日朝夕2回、約3mL、3ヶ月間塗布し、右側は何も塗布せずに、左右の比較を行った。 育毛効果、脱毛効果、ふけ防止効果の判定は、試験開始後3ヶ月後に各項に対し、右側の何も塗布していない被試部位と比較して、「産毛が剛毛化した或いは産毛が増加した」、「抜け毛が少なくなった」、「ふけが少なくなった」と回答した人数で示した。
【0023】
表1に示す処方の育毛剤を常法に従って作成し、前記の諸試験を実施して評価を行った。その結果を併せて表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
表1の結果から、フコキサンチンおよびフコキサンチノールに育毛効果があることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フコキサンチンおよび/またはフコキサンチノールを有効成分とする育毛剤。

【公開番号】特開2012−219027(P2012−219027A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83413(P2011−83413)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(599154412)
【Fターム(参考)】