説明

育苗用ポット

【課題】生分解性を有する上に育苗に要する労力を軽減できる育苗用ポットを提供する。
【解決手段】本発明の育苗用ポット10は、生分解性樹脂を主成分として含有する生分解性樹脂層11と、吸水性樹脂を主成分として含有する保水層12とを備え、側面10aに貫通孔13が少なくとも1つ形成されている。本発明の育苗用ポット10においては、生分解性樹脂層11を一対有し、該一対の生分解性樹脂層11の間に保水層12が配置されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の育苗に使用される育苗用ポットに関する。
【背景技術】
【0002】
野菜や花きを栽培する方法として、育苗用ポットを用いて、種子を発芽させ、ある程度まで生育させて苗とした後、その苗を畑や花壇の土壌に植えつける方法が知られている。
育苗用ポットとしては、ポリオレフィン製のものが広く使用されているが、ポリオレフィン製の育苗用ポットを用いた場合には、苗を土壌に植え替える際に、育苗用ポットから苗を取り出す必要があり、手間がかかる上に、根を傷付けるおそれがあった。このような問題は、特に、苗の数が多い農業においては深刻である。
そこで、特許文献1,2には、生分解性樹脂製の育苗用ポットを用いて、苗を育苗する方法が提案されている。この方法では、育苗用ポットごと土壌中に植え込むため、育苗用ポットから苗を取り出す必要がない。
【0003】
ところで、育苗の際には灌水作業が必要になるが、特許文献1,2に記載の生分解性樹脂製の育苗用ポットを用いても、灌水の頻度については、ポリオレフィン製の育苗用ポットを用いた場合と同様であり、育苗に要する労力は充分に軽減されていなかった。
育苗の際の灌水の頻度を少なくして労力を軽減する方法として、特許文献3には、土壌に保水材を配合する方法が開示されている。しかし、この場合、保水材を土壌に配合する作業が必要になるため、必ずしも育苗の労力軽減になっていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−250357号公報
【特許文献2】特開2006−197895号公報
【特許文献3】特開2007−319029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生分解性を有する上に、育苗に要する労力を軽減できる育苗用ポットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]生分解性樹脂を主成分として含有する生分解性樹脂層と、吸水性樹脂を主成分として含有する保水層とを備え、側面に貫通孔が少なくとも1つ形成されていることを特徴とする育苗用ポット。
[2]生分解性樹脂層を一対有し、該一対の生分解性樹脂層の間に保水層が配置されていることを特徴とする[1]に記載の育苗用ポット。
【発明の効果】
【0007】
本発明の育苗用ポットは、生分解性を有する上に、育苗に要する労力を軽減できる。しかも、本発明の育苗用ポットは、容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の育苗用ポットの実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す育苗用ポットの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の育苗用ポットの一実施形態について説明する。
図1に、本実施形態の育苗用ポットの斜視図、図2に、本実施形態の育苗用ポットの縦断面図を示す。本実施形態の育苗用ポット10は、横断面が円形状の鉢であり、一対の生分解性樹脂層11,11と、一対の生分解性樹脂層11,11の間に配置された保水層12とを備える。
【0010】
生分解性樹脂層11は、生分解性樹脂を主成分として含有する。
生分解性樹脂は、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル(ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリエチレンサクシネート)、ポリエチレングリコール/プロピレングリコール等のポリエーテル、多糖類(デンプン、酢酸セルロースなど)等が挙げられる。
また、生分解性樹脂層11は、必要に応じて、澱粉、肥料、農薬、防腐剤、植物ホルモン剤等を含有してもよい。澱粉を含有する場合には、生分解性樹脂層11の生分解を促進できる。肥料を含有する場合には、苗の成長に必要な養分を補給できる。
【0011】
生分解性樹脂層11における生分解性樹脂の含有率は、50質量%以上であり、80質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。生分解性樹脂の含有率が前記下限値以上であれば、生分解後の残渣を少なくできる。
【0012】
保水層12は、吸水性樹脂を主成分として含有する層である。この保水層12は吸水性樹脂によって保水性を発揮するが、育苗用ポット10の形態では、生分解性樹脂層11に挟まれており、外部から水がほとんど供給されないため、保水機能が利用されることはない。
本発明で使用される吸水性樹脂は、吸水性を有するだけでなく、周囲の環境が乾燥した際に離水する性質も有するものである。
吸水性樹脂の具体例としては、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、澱粉−アクリルアミドグラフト共重合体、セルロース−アクリロニトリルグラフト共重合体、カルボキシメチルセルロース架橋体、ポリビニルアルコール架橋体、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、ポリアクリルアミド架橋体が挙げられる。
また、保水層12は、生分解性樹脂層11と同様に、必要に応じて、澱粉、肥料、農薬、防腐剤、植物ホルモン剤等を含有してもよい。
【0013】
保水層12における吸水性樹脂の含有率は50質量%以上であり、80質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。吸水性樹脂の含有率が前記下限値以上であれば、充分に保水できる。
【0014】
保水層12の厚さは10〜1000μmであることが好ましい。保水層12の厚さが前記下限値以上であれば、充分に保水できる上に土壌中で崩壊しやすく、前記上限値以下であれば、容易に製造できる。
【0015】
また、本実施形態の育苗用ポット10においては、側面10aと底面10bとに円形状の貫通孔13が複数形成されている。通常、生分解性樹脂層が完全に生分解するよりも根の成長の方が速い。したがって、育苗用ポット10の側面10aおよび底面10bに貫通孔13が形成されていることで、成長した根を通すことができる。貫通孔13が形成されていない場合には、根が育苗用ポット10内で根巻きを生じ、根腐れすることがある。
【0016】
貫通孔13の大きさは、育苗用ポット10の大きさにもよるが、直径が2〜20mmであることが好ましい。貫通孔13の直径が前記下限値以上であれば、根巻きをより防止でき、前記上限値以下であれば、育苗用ポット10から土が流出することを防止できる。
貫通孔13の配置間隔は、貫通孔13の大きさにもよるが、5〜50mmであることが好ましい。貫通孔13の配置間隔が前記下限値以上であれば、根巻きをより防止でき、前記上限値以下であれば、育苗用ポット10の強度低下を防止できる。
【0017】
育苗用ポット10は、例えば、以下の製造例Aにより製造することができる。
すなわち、2枚の生分解性樹脂層11,11を押出成形により各々形成し、一方の生分解性樹脂層11の片面に保水層12を塗工等により形成し、保水層12の上に他方の生分解性樹脂層11を重ね合わせて積層シートを作製する。次いで、その積層シートを育苗用ポット10の形状にプレス成形した後、側面10aおよび底面10bに貫通孔13を形成することにより、育苗用ポット10を得る。
また、育苗用ポット10は、例えば、以下の製造例Bにより製造することもできる。
すなわち、製造例Aと同様にして作製した積層シートから、育苗用ポット10の側面10aになる部分と底面10bになる部分を切り出す。次いで、育苗用ポット10の側面10aになる部分と底面10bになる部分とを接着し、側面10aおよび底面10bに貫通孔13を形成することにより、育苗用ポット10を得る。
【0018】
上記の育苗用ポット10を用いた苗の育苗方法は、まず、育苗用ポット10の内部に用土を充填し、その用土に種子を播き、日光に当たる場所に配置する。次いで、適宜、灌水して種子を発芽させ、ある程度まで生育させて苗とし、その苗を育苗用ポット10ごと、畑や花壇の土壌に植え付ける。
土壌中で育苗用ポット10の生分解性樹脂層11は生分解して消失するため、苗を植え替える必要がない。しかも、生分解性樹脂層11が生分解して消失することにより、保水層12が土壌に接するようになるため、保水材として機能することができる。したがって、育苗用ポット10を用いることにより、保水層12が保水材になるため、土壌に保水性を付与することができる。これにより、灌水の頻度を減らした場合でも、保水層12から水を放出でき、苗に供給することができる。しかも、土壌に保水材を配合する作業をしなくてもない。よって、育苗に要する労力を軽減できる。
また、生分解性樹脂層11と保水層12とを備える育苗用ポット10は、押出成形や塗工などの汎用的な工程により容易に製造することができる。なお、土壌に保水性を付与する育苗用ポットとして、生分解性樹脂層11に吸水性樹脂を混合したものも考えられたが、生分解性樹脂層11に吸水性樹脂を混合することは困難であり、仮に混合できたとしても成形加工は困難であり、実用性は低い。
【0019】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、例えば、生分解性樹脂層11が1層であってもよい。ただし、生分解性樹脂層11を1層とした場合には、保水層12の内側に、保水層12を保持するための保持層を設けることが好ましい。保持層としては、例えば、紙等の透水性基材、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子からなる層が好ましい。
また、底面10bに貫通孔13が形成されていなくてもよい。側面10aに形成される貫通孔13の数は1つであっても構わない。
また、本発明の育苗用ポットは、横断面が多角形(例えば、三角形、四角形、五角形、六角形等)や楕円形の鉢であってもよい。
【符号の説明】
【0020】
10 育苗用ポット
10a 側面
10b 底面
11 生分解性樹脂層
12 保水層
13 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂を主成分として含有する生分解性樹脂層と、吸水性樹脂を主成分として含有する保水層とを備え、側面に貫通孔が少なくとも1つ形成されていることを特徴とする育苗用ポット。
【請求項2】
生分解性樹脂層を一対有し、該一対の生分解性樹脂層の間に保水層が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の育苗用ポット。

【図1】
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【図2】
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