説明

肺動脈から神経刺激を伝達する刺激システム

埋込医療装置の様々な実施形態は、肺動脈の内部から自律神経標的を刺激し、少なくとも1つの電極と、電源と、電源に接続された神経刺激装置と、アンカー構造体とを有する。神経刺激装置は、少なくとも1つの電極を介して神経刺激標的に伝達される神経刺激信号を生成するように構成されている。アンカー構造体は、神経刺激装置、電源、および少なくとも1つの電極を肺動脈内に長期的に且つ安全に埋込むように構成されている。アンカー構造体、神経刺激装置、電源、および少なくとも1つの電極は、肺動脈弁を介して肺動脈に埋込まれるように構成されている。様々な実施形態において、神経刺激装置は、肺動脈弁を介した配線接続なく肺動脈内に長期的に埋込まれた場合、神経刺激プロトコルを実施するために動作可能となるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、医療装置に一般に関する。より詳細には本願は、肺動脈の内部から、肺動脈圧受容器などの自律標的を刺激する刺激システム、刺激装置、および刺激方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高交感神経緊張(自律神経失調症ともいう)は、数々の心臓病、特に心不全(HF)と急性心筋梗塞(AMI)の特徴である。β遮断薬は、高まった交感神経活動の均衡をとるための主要な薬物である。自律神経系は人体の生理活動を制御し、自律神経系緊張の不均衡は多くの疾病と症状に関係する。迷走神経刺激法は、自律神経失調症の均衡をとるための電気生理学的なアプローチである。
【0003】
神経刺激は数々の研究の主題であり、睡眠障害、消化管運動、摂食障害、肥満、拒食症、消化管疾患、高血圧症、昏睡、てんかんの治療に提案されている。副交感神経の電気刺激によって、圧反射を誘発することができ、交感神経活動の低下が誘発され、血管抵抗を減少させることによって血圧が低下する。圧反射は、受容体から自然に生じる。求心性迷走神経線維は、たとえば圧反射を神経支配し調節する。副交感神経の刺激は交感神経の活動を弱め、更に心拍数と血圧を抑える。鬱血性心不全(CHF)患者においては、患者の交感神経緊張が増加し、カテコールアミンが増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第11/748,171号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0161912号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
交感神経緊張とカテコールアミンが増加すると、心臓の酸素消費量の増加、心臓肥大(リモデリング)、心不全の悪化、および突然心臓死を引き起こす場合がある。迷走神経刺激法は交感神経緊張を中和する場合があり、突然心臓死を防ぐ場合がある。迷走神経刺激法は鬱血性心不全に関連した高交感神経緊張を弱め、更に心拍数が低下し、酸素必要量が減少し、心拡張期が増加し、心室性不整脈の発生が低下する。交感神経緊張の低下は心臓の興奮性を低下させ、不整脈が減少する。神経刺激による交感と副交感の神経系の変調は、臨床的に有益な利点(たとえば更なるリモデリング、および心筋梗塞に続く致命的な不整脈の素因から心筋を保護する)を有することが示されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
埋込医療装置の様々な実施形態は、肺動脈の内部から自律神経系標的を刺激し、少なくとも1つの電極と、電源と、電源に接続された神経刺激装置と、アンカー構造体とを有する。神経刺激装置は、少なくとも1つの電極を介して神経刺激標的に伝達される神経刺激信号を生成するように構成されている。アンカー構造体は、神経刺激装置、電源、および少なくとも1つの電極を肺動脈内に長期的に且つ安全に埋込むように構成されている。アンカー構造体、神経刺激装置、電源、および少なくとも1つの電極は、肺動脈弁を介して肺動脈内に埋込まれるように構成されている。
【0007】
刺激システムの様々な実施形態は、肺動脈内の肺動脈圧受容器を刺激し、少なくとも1つの生理学的パラメータを感知するセンサ装置と、肺動脈弁を介して伝達されるように、且つ肺動脈内に完全に埋込まれるように構成された少なくとも1つの肺動脈装置と、感知
した生理学的パラメータに応じて神経刺激療法を実施する装置とを有する。肺動脈装置は、少なくとも1つの肺動脈装置に電力を供給する電源と、肺動脈の内部から自律神経系標的を刺激する装置と、少なくとも1つの肺動脈装置を肺動脈内に長期的に且つ安全に埋込む装置とを有する。
【0008】
刺激方法の様々な実施形態によると、少なくとも1つの生理学的パラメータが感知され、神経標的は、肺動脈内に長期的に埋込まれた神経刺激装置を用いて刺激される。神経標的を刺激するステップは、神経刺激装置が肺動脈弁を介した配線接続を用いることなく肺動脈内に長期的に埋込まれた場合、感知した生理学的パラメータに応じて神経刺激療法を実施するステップを有する。刺激方法の様々な実施形態によると、少なくとも1つの生理学的パラメータが感知され、神経標的は、肺動脈内に長期的に埋込まれた神経刺激装置を用いて刺激される。神経標的を刺激するステップは、神経刺激装置が肺動脈内に長期的に埋込まれる場合、感知した生理学的パラメータに応じて神経刺激療法を実施するステップを有する。神経刺激療法を実施するステップは、神経刺激を伝達するために制御入力として使用可能な自律健康度を示す、少なくとも2つの生理学的パラメータを感知するステップを有する。第1生理学的パラメータは第2生理学的パラメータよりも鋭い自律健康度の指標を提供するように、少なくとも2つのパラメータは、自律健康度の変更への時間応答が互いに異なる。神経刺激療法を実施するステップは、少なくとも2つの生理学的パラメータを用いて総合指数を生成するステップを含み、それぞれのパラメータの時間応答に少なくとも部分的に基づき、少なくとも2つの生理学的パラメータのそれぞれに重付けを行なうステップと、神経刺激の伝達を制御するために総合指数を使用するステップとを有する。
【0009】
この発明の概要は、本願の開示内容のうちの幾つかについての要旨であり、本主題を排他的または包括的に扱うことを意図したものではない。本主題に関する更なる詳細は、詳細な説明と添付の特許請求の範囲に記載される。他の態様は、以下の詳細な説明を読み理解することによって、および詳細な説明の一部をなす図面を参照することによって当業者に明らかとなるであろう。詳細な説明と図面はそれぞれ、限定的に解釈されるものではない。本発明の範囲は、添付の請求項とそれらの同等物によって定義される。
【0010】
以下に記載する本主題の詳細な説明においては、添付の図面を参照する。添付の図面は、本主題が実施され得る特定の態様と実施形態を、例示によって示すものである。これらの実施形態は、当業者にとって本主題が実施可能となるように、十分詳細に記載されている。他の実施形態を利用してもよく、本主題の範囲から逸脱することなく、構造的、論理的、および電気的な変更がなされてもよい。本開示において、「一」、「1つの」、または「様々な」実施形態という場合、必ずしも同一の実施形態ではなく、1つ以上の実施形態が意図される。したがって、以下の詳細な説明は限定的ではなく、その範囲は添付の特許請求の範囲が権利を付与される法的同等物のすべての範囲に従って、該特許請求の範囲によってのみ規定される。
【0011】
肺動脈はその左右の枝において、および左右の枝間の分岐領域において肺動脈圧受容器を有する。これらの肺動脈圧受容器(本明細書において肺動脈圧受容器という)が刺激されると、迷走神経の求心性活動は増加する。肺動脈圧受容器は、励起されると視床下部の心臓血管中枢に抑制信号を送信し、そして交感神経の出力が減少し、迷走神経の出力が増加する。生理的状態において、肺動脈圧力は肺動脈圧受容器への主要な刺激である。交感神経の出力を減少させるために、且つ迷走神経の出力を増加させるために肺動脈圧受容器を刺激することによってβ遮断薬の効力が再現されるように、肺動脈圧受容器は刺激に(たとえば電気刺激に、または神経標的を刺激する他の方法に)応答する。
【0012】
医療装置の様々な実施形態は、病態生理学的状態(たとえば1つ以上のセンサを用いて
検出され得る病態生理学的状態)を検出し、肺動脈圧受容器を介して迷走神経刺激を伝達してもよい。装置の幾つかの実施形態は、肺動脈圧センサ(本明細書において肺動脈圧力センサという)を使用する。肺動脈圧受容器の刺激の代わりに、または該刺激に加えて、他の自律神経標的(たとえば迷走神経の幾つかの枝)が肺動脈を通り、肺動脈の内部から得られる経血管(transvascular)刺激によって標的とされてもよい。
【0013】
装置の実施形態は、装置を肺動脈弁に通すことによって肺動脈内に長期的に埋込まれるように構成される。またこの装置の実施形態は、肺動脈圧力センサと、少なくとも1つの電極(たとえば1対以上の電極、または単極刺激に用いられる電極)と、皮下に埋込み可能な埋込制御装置と、潜在的に病的な状態を分析するために、および検出した病的な状態に適切な神経刺激療法のモードを伝達するために適切なアルゴリズムを実施する制御システムと、アンカーシステムとを有する。装置の構成要素について、以下に簡潔に説明する。
【0014】
肺動脈(左右の肺動脈と、左右の肺領域間の分岐領域とを有する)に安全に配置されるように構成された、長期的に埋込み可能な装置を識別するために本明細書において用いられる肺動脈装置の実施形態は、肺動脈装置用のアンカー装置として機能する自己拡張型の金属メッシュ構造体を有する。金属メッシュ構造体は、適切な材料(たとえばチタンニッケル合金(TiNi))を用いて形成される。この金属構造体は電気刺激用の1対以上の電極を有してもよく、それ自体が電極であってもよい。幾つかの実施形態によると、肺動脈装置は、膨張時に実質的に血液の流れを妨げない拡張可能なバルーンを用いて肺動脈に固定される。たとえば動的に調節可能な直径を有する管状バルーンが、血管内に配置されるように形成されてもよい。管状バルーンは、流体通路間に内腔をなすオープンスペースを含んでもよい。この場合、流体通路によってバルーンの膨張と収縮が可能になり、血管内へのバルーンの配置後はこのオープンスペースによって血管内の血液の流れが実質的に妨げられない。別のバルーンの実施形態はマルチローブバルーンを有する。このマルチローブバルーンはローブ間にスペースを有し、血管内へのバルーンの配置後はこのスペースによって血管内の血液の流れが実質的に妨げられない。非閉塞性のバルーンの例は、特許文献1(出願日:2007年5月14日、「容量受容体刺激によって血液量を規制する方法と装置(Method and Apparatus for Regulating
Blood Volume Using Volume Receptor Stimulation)」)に記載されており、この全内容を引用によって本明細書に援用する。肺動脈装置は経静脈に埋込まれ、右肺動脈枝および/または左肺動脈枝に固定されてもよい。肺動脈装置は、少なくとも1つの電極を有する。
【0015】
肺動脈装置の幾つかの実施形態は、肺動脈圧力センサと、刺激回路と、テレメトリ回路と、電源とを有するハウジングモジュールを有する。他の実施形態によると、肺動脈圧力センサとペーシング回路のそれぞれは、自身のハウジングモジュールを有する。また、肺動脈装置は単にペーシング装置であってもよく、センサシステムはスタンドアロンの埋込システムであってもよい。
【0016】
様々な実施形態によると、肺動脈圧力センサは、微小電気機械システム(MEMS)に基づく電力効率のよい容量圧力センサである。この場合、特定用途向け集積回路(ASIC)の回路はセンサ入力を取得し、これをフィードバックとして用いて電極刺激を制御するために、アナログ機能とデジタル機能を提供する。特定の形状関数のパルスを生成するために、直接デジタル合成(DDS)に基づく信号生成アルゴリズムを用いてもよい。
【0017】
肺動脈装置は、右心室から肺動脈弁を介して肺動脈に通され、肺動脈内に長期的に埋込まれる。肺動脈装置は、長期的に配置されたリードを肺動脈と右心室の間の肺動脈弁を介して延伸させることなく、肺動脈内において操作できる。このように、肺動脈弁の機能(
たとえば右心室と肺動脈の間を密閉する能力)が、長期的に埋込まれた肺動脈装置によって影響されることは考えられない。
【0018】
肺動脈装置の様々な実施形態は、感知電極を用いて心拍数を検出し、肺動脈装置の様々な実施形態は、感知した肺動脈圧力から心拍数を抽出する。肺動脈装置の幾つかの実施形態は、肺動脈の外部の装置(たとえば埋込心調律管理(CRM)装置)から心拍数情報を取得する。
【0019】
制御システムは、肺動脈に埋込まれた装置の一部であっても(たとえば肺動脈装置に統合されても)よく、あるいは肺動脈の外部の装置であってもよい。テレメトリ回路とトランスデューサは、外部装置/内部装置(たとえば埋込まれたICD、無線センサ、またはコミュニケータ)と通信を行なうために使用されてもよく、プログラムされたプロトコルに準じて神経刺激療法を伝達する。通信技術は、無線周波数、音響特性(acoustic)などであってもよい。幾つかの実施形態において、制御システムは、肺動脈の外部に埋込まれた埋込装置(たとえば心調律管理装置)に含まれる。肺動脈モジュールはテレメトリシステムを有し、制御装置は肺動脈モジュールと共に無線で動作する。制御装置は神経刺激の伝達を制御し、センサから測定値を受信し、信号を処理する。制御装置のコマンドは、例示であって次に限定されないが、神経刺激の開始と停止、神経刺激パルス列の数または長さ、神経刺激の頻度、シミュレーション信号のデューティサイクル、および治療期間を含んでもよい。制御装置は、肺動脈の外部のセンサによって、および/または肺動脈装置のセンサによって生理学的反応を監視してもよい。生理学的反応は、神経刺激の構成を変更するために用いられてもよい。
【0020】
肺動脈装置が単にペーシング装置である場合、肺動脈装置はセンサ(たとえばインピーダンスセンサ、圧力センサ、心音センサ、呼吸センサ、フローセンサ/速度センサ、および/または化学センサ)を用いて、肺動脈の外部の制御装置と共に使用されてもよい。制御装置はセンサデータを分析し、神経刺激プロトコルに準じて神経刺激を伝達するように肺動脈装置に命令する。
【0021】
様々な実施形態によると、肺動脈装置は充電電池によって電力供給される。様々な実施形態は、リチウム電池を使用する。充電電池は、1つの完全なパッケージまたは別個のパッケージにおいてセンサおよび/またはペーシングモジュールに接続される。この電池は誘導的な、無線周波数による、または音響的効果による再充電技術を用いて再充電されてもよい。
【0022】
肺動脈装置は、心不全患者の肺動脈圧受容器を刺激するために使用されてもよい。心不全が悪化しつつあるとき、肺動脈圧力は増加する。肺動脈圧力の増加がトリガとなって肺動脈装置は肺動脈圧受容器刺激療法を伝達し、そして迷走神経の出力を活性化する。心不全は自律神経失調症によって、特に交感神経緊張の増加によって特徴付けられる。肺動脈圧受容器の刺激と迷走神経の活性化は、活性化された交感神経緊張を弱める。別の臨床的応用は、虚血発作時に、特に心筋梗塞(MI)時に肺動脈圧受容器を刺激することである。心筋梗塞時に自律神経活動の均衡がとれていると、死亡率が有意に低下される。肺動脈圧受容器の刺激は、高血圧症治療に用いられてもよい。
【0023】
システムの様々な実施形態は、肺動脈の内部から肺動脈圧受容器を刺激するように構成された肺動脈圧受容器刺激装置を備える肺動脈装置を有する。また、病的な状態および/または肺動脈圧受容器刺激の生理的フィードバックを検出可能なセンサと、センサおよび肺動脈圧受容器刺激装置を用いて治療プロトコルを実施するように構成された制御装置とを更に有する。幾つかの実施形態は、センサと肺動脈装置を統合する。幾つかの実施形態は、肺動脈圧受容器刺激装置を備える肺動脈装置とは別個の装置として、センサを肺動脈
に長期的に埋込む。幾つかの実施形態は、肺動脈の外部のセンシング(たとえば埋込心調律管理装置または他の埋込装置によって実施され得るセンシング)を提供する。
【0024】
様々な実施形態によると、制御装置は1つ以上の病的な状態を示す1つ以上の信号を分析し、検出した1つ以上の病的な状態に適切な1つ以上の治療法を判断し、治療法を活性化するためのセンサ閾値を設定するように構成されている。病的な状態を示す信号は、センサのベースラインを判断するために使用されてもよい。測定は間欠的にまたは周期的に(たとえば毎日)行ない、傾向(たとえば週毎の傾向または月毎の傾向)を体系化してもよい。治療法には、急性イベントがトリガとなる治療法が含まれてもよく、プログラムされたスケジュールに準じて伝達され、慢性的に伝達される治療法が含まれてもよい。センサ閾値は、経験的に設定されてもよい。肺動脈圧力の閾値は、ベースライン、ベースライン圧力から逸脱した絶対値(mmHg)、またはベースライン圧力から逸脱したパーセンテージであってもよい。心拍数の閾値は、上限閾値と下限閾値を含んでもよい。インピーダンスの閾値は、ベースライン、インピーダンスのベースラインから逸脱した絶対値、またはインピーダンスのベースラインから逸脱したパーセンテージであってもよい。呼吸の閾値は、ベースライン、ベースラインから逸脱した絶対値、またはベースラインから逸脱したパーセンテージであってもよい。圧反射感受性(BRS)の閾値は、上限閾値と下限閾値を含んでもよい。圧反射感受性の閾値は、ベースライン、ベースラインから逸脱した絶対値、またはベースラインから逸脱したパーセンテージを含んでもよい。圧反射感受性の指標は、収縮期血圧に対して示されたRR間隔の傾斜であってもよく、この場合、閾値は信頼区間を示す。圧反射感受性については、特許文献2(「圧反射分析による自律神経活動の評価(Assessing Autonomic Activity Using
Baroreflex Analysis)」)に記載されており、この全内容を引用によって本明細書に援用する。心音の閾値はS3心音の発生として検出されてもよく、虚血の閾値は検出された虚血イベントであってもよい。
【0025】
生理機能と治療法について、読み手のために以下に簡潔に説明する。本開示は、様々なシステム、装置、および刺激方法の実施形態について引き続き説明する。
[生理機能]
自律神経系(ANS)は「不随意の」臓器を規制し、随意筋(骨格筋)の収縮は体性運動神経によって制御されている。不随意の臓器の例としては、呼吸器官と消化器官、更に血管と心臓がある。多くの場合、自律神経系は、たとえば腺の規制、皮膚、目、胃、腸、および膀胱の筋肉の規制、ならびに心筋と血管周囲の筋肉の規制を行なうように不随意で再帰的に機能する。
【0026】
自律神経系には、交感神経系と副交感神経系が含まれる。交感神経系は、応力と緊急事態に対する「闘争逃走反応」に関わっている。他の効果のうち、「闘争逃走反応」は骨格筋の血流を増加させるために血圧と心拍数を増加させ、「闘争逃走」にエネルギを与えるために消化を抑える。副交感神経系は、緩和と「休息消化反応(rest and digest response)」に関わっている。これは他の効果の中で特に、血圧と心拍数を低下させ、エネルギを保存するために消化を高める。自律神経系は通常の内部機能を維持し、体性神経系と共に動作する。
【0027】
心拍数と力は、交感神経活動の増加または副交感神経活動の低下と共に増加し、心拍数と力は、交感神経活動の低下または副交感神経活動の増加と共に低下する。求心性神経は、インパルスを神経中枢に伝達する。遠心性神経は、インパルスを神経中枢から離すように伝達する。
【0028】
交感神経系と副交感神経系には、心拍数と血圧以外の生理作用がある。たとえば交感神経緊張が増加すると、瞳孔が拡大し、唾液と粘液の生成が低下し、気管支筋が緩和し、胃
の不随意収縮(蠕動)と胃の運動性との連続波が低下し、肝臓によるグリコーゲンからグルコースへの変換が増加し、腎臓による尿分泌が低下し、壁は緩み膀胱括約筋は締まる。また副交感神経緊張が増加すると、瞳孔が収縮し、唾液と粘液の生成が増加し、気管支筋が収縮し、胃と大腸の分泌と運動性が増加し、小腸における消化が高まり、尿分泌が増加し、壁は収縮して膀胱括約筋が緩む。交感神経系と副交感神経系に関連する機能は数多くあり、互いに複雑に統合されてもよい。本主題の実施形態は、肺動脈圧力への肺動脈圧受容器の生理学的反応を再現するように、肺動脈内において肺動脈圧受容器(圧反射反応の自然な入力)として機能する特定の神経終末部を刺激する。
【0029】
圧反射は、肺動脈圧受容器の刺激がトリガとなって生じる反射作用である。圧反射経路は、肺動脈圧受容器と脳幹の間の求心路(たとえば迷走神経または迷走神経の枝の求心性線維)と、脳幹から血管運動神経中枢(血管拡張/血管収縮を制御する筋肉と神経)までの遠心路(たとえば迷走神経または迷走神経の枝の遠心性繊維)とを有する。肺動脈圧受容器は、圧力の増加によって生じる壁内部からの伸長に反応して、圧力の変化を感知する。肺動脈圧受容器は、圧力の低下を生じさせ易い中枢性反射機構の受容体として機能する。肺動脈圧受容器は、内部圧力と動脈壁の伸長とによって自然に刺激される。肺動脈圧受容器の刺激は交感神経活動を抑制し(副交感神経系を刺激し)、末梢血管抵抗性と心筋収縮性を低下させることによって体全身動脈圧を低下させる。本主題の実施形態は、肺動脈圧受容器を刺激することによって迷走神経の活動を調整する。迷走神経の調整は次に限定されないが、心不全、心筋梗塞後のリモデリング、および高血圧症など様々な心臓血管疾患を治療するために用いられてもよい。これらの状態について、以下に簡潔に説明する。
【0030】
心不全は、心臓機能によって通常量未満の心拍出量となる臨床的症候群をいう。この通常量未満の心拍出量とは、組織の代謝要求を満たすのに十分なレベル未満となり得るものである。心不全は、付随する静脈性鬱血と肺鬱血によって、鬱血性心不全(CHF)として生じる場合がある。心不全は、虚血性心疾患、高血圧症、および糖尿病など様々な病因によって生じ得る。
【0031】
高血圧症は、心臓病および関連する他の心臓併存疾患の一因である。血管が収縮すると、高血圧症が起こる。その結果、より高い血圧でフローを維持するために心臓はより激しく動作し、心不全の一因となり得る。高血圧症は、一般に高血圧(たとえば全身動脈血圧が心血管損傷を招き易いレベルまで一時的または持続的に上昇すること、または他の有害な影響)に関する。高血圧症は、収縮期血圧が120mmHgを越える、または拡張期血圧が80mmHgを越えるものとして定義されている。管理不良高血圧の影響としては、次に限定されないが、網膜血管の病気と脳卒中、左心室の肥大と不全、心筋梗塞、解離性動脈瘤、および腎血管性疾患がある。
【0032】
心臓リモデリングは、心筋梗塞に続いて生じる得る構造的要因、生化学的要因、神経ホルモンの要因、および電気生理学的要因、または低下した心拍出量の他の原因に関与する心室の複雑なリモデリングプロセスをいう。心室リモデリングは、所謂後方不全によって心拍出量を増加させるように働く生理的な代償機構がトリガとなる。この後方不全とは、心室の拡張期充満圧を増加させることによって、所謂前負荷(すなわち心臓拡張期の終わりに心室の血液量によって心室が伸長される度合い)を増加させる。前負荷が増加すると、心収縮時の拍出量の増加、すなわちフランクスターリング法則として知られる現象が生じる。しかし、或る期間にわたって前負荷が増加したために心室が伸長する場合、心室は拡張する。心室容積の拡大によって、付与の収縮期圧における心室壁の応力が増加する。これは心室の圧力−容積動作の増加に伴い、心室筋を肥大させる刺激として機能する。拡張の不利点は、通常の残存心筋にかかる余分な作業負荷、および肥大を生じさせる刺激を表わす壁の張力増加(ラプラスの法則)である。増加した張力に一致するのに十分な肥大ではない場合、更なる進行性の拡張を生じさせる悪循環が続いて起こる。心臓が拡張し始
めると、ホルモン分泌と交感神経放電とに応じる血管運動中枢神経系の制御中枢に、求心性肺動脈圧受容器信号と心肺受容器信号とが送信される。これは血行力学と、交感神経系と、ホルモン変調(たとえばアンギオテンシン変換酵素(ACE)活性の有無)とを組合せたものであり、このホルモン変調とは、心室リモデリングに関与する細胞構造体における有害な変調を最終的に説明するものである。肥大を生じさせる持続応力は、心筋細胞のアポトーシス(すなわちプログラムされた細胞死)を誘発する。また最終的には、心臓機能を更に悪化させる壁の菲薄化を招く。したがって、心室の拡張と肥大は初め補償的であって心拍出量を増加させるが、そのプロセスは最終的に収縮期と心拡張期の機能障害をもたらす。心室リモデリングの程度は、心筋梗塞後の増加した死亡率と心不全患者に正に相関していることが示されている。
【0033】
[治療法]
本主題は肺動脈圧受容器の刺激によって、または肺動脈(たとえば肺動脈を通る迷走神経の枝)に最も近い自律神経標的の経血管刺激によって、迷走神経刺激を提供する刺激システム、刺激装置、および刺激方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】左右の肺動脈と左右の迷走神経の生理機能を示す概略図。
【図2】肺動脈内に埋込まれた肺動脈(PA)装置の一実施形態を示す概略図。
【図3】埋込心調律管理(CRM)装置と肺動脈に埋込まれた肺動脈装置とを有する刺激システムを示す概略図。
【図4】肺動脈装置の実施形態を示す概略図。
【図5】肺動脈装置の実施形態を示す概略図。
【図6】肺動脈装置の実施形態を示す概略図。
【図7】肺動脈装置の実施形態を示す概略図。
【図8】肺動脈装置の実施形態を示す概略図。
【図9】例として肺動脈装置の変形例を示す概略図。
【図10】例として肺動脈装置の変形例を示す概略図。
【図11】例として肺動脈装置の変形例を示す概略図。
【図12A】左肺動脈および/または右肺動脈に電極を配置するための肺動脈装置の様々な実施形態を示す概略図。
【図12B】左肺動脈および/または右肺動脈に電極を配置するための肺動脈装置の様々な実施形態を示す概略図。
【図12C】左肺動脈および/または右肺動脈に電極を配置するための肺動脈装置の様々な実施形態を示す概略図。
【図12D】左肺動脈および/または右肺動脈に電極を配置するための肺動脈装置の様々な実施形態を示す概略図。
【図13】長期的に埋込まれた肺動脈装置の一実施形態のブロック図。
【図14】左肺動脈装置と右肺動脈装置として示す、埋込惑星装置と埋込衛星肺動脈装置を有するネットワークを示す概略図。
【図15】様々な実施形態に係る埋込医療装置(IMD)と肺動脈装置を有する刺激システムを示す概略図。
【図16】様々な実施形態に係る埋込心調律管理装置と肺動脈装置を有する刺激システムを示す概略図。
【図17】右肺動脈装置と右心室リードとを備える一実施形態を示す概略図。
【図18】右肺動脈装置と左肺動脈装置と、右心室リードとを備える一実施形態を示す概略図。
【図19】迷走神経刺激法に統合された心房除細動治療を提供可能な一実施形態を示す概略図。
【図20】迷走神経刺激法に統合された心臓再同期療法(CRT)を提供可能な一実施形態を示す概略図。
【図21】様々な実施形態に係る肺動脈装置を示す概略図。
【図22】様々な実施形態に係る神経刺激(NS)要素と心調律管理要素とを備える埋込医療装置を示す概略図。
【図23】様々な実施形態に係るマイクロプロセッサに基づく埋込装置の一実施形態の系統図。
【図24】外部システムの一実施形態を示すブロック図。
【図25】変動する時間応答のパラメータの総合指数を用いて神経刺激プロトコルを実施する刺激システムの一実施形態を示す概略図。
【図26】肺動脈圧、心拍数、インピーダンス、および他のパラメータの総合指数を用いて神経刺激プロトコルを実施する刺激システムの一実施形態を示す概略図。
【図27】神経刺激療法を開始するために使用される閾値を判断する方法を示す概略図。
【図28】神経刺激プロトコルを実施する上で使用される総合指数を判断する方法を示す概略図。
【図29】神経刺激プロトコルを実施する上で使用される総合指数を判断するために、肺動脈圧力と、インピーダンスと、心拍数とを有するパラメータの重付けを行う方法を示す概略図。
【図30】神経刺激プロトコルを実施する上で使用される総合指数を判断するために、肺動脈圧力と、インピーダンスと、心拍数とを有するパラメータの重付けを行う方法を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、左右の肺動脈と左右の迷走神経の生理機能を示す。肺動脈は、迷走神経によって神経支配される肺動脈圧受容器を有する。また、迷走神経の様々な枝は、肺動脈を通る。左迷走神経101は、鎖骨下動脈102に隣接して延びる。様々な神経は、大動脈103の弓形部の周囲に延びる。迷走神経101はまた、動脈管索104を越えて延びる。前肺神経叢105は、左肺動脈106と交差する。右迷走神経107は、鎖骨下動脈108を越えて延びる。心臓神経109は、気管111付近の腕頭動脈110を越えて延びる。心臓神経109はまた、奇静脈113の弓形部を越えて、右肺動脈114に延びる。左迷走神経101の低部分115と、右迷走神経107の低部分116とは、図1の下方に示されている。したがって数々の迷走神経の標的は、肺動脈内(たとえば肺動脈圧受容器と幾つかの迷走神経の枝)を標的としてもよい。
【0036】
[神経刺激療法]
迷走神経刺激法は、神経刺激療法の一例である。迷走神経療法の例としては、たとえば高血圧症を治療するための血圧制御、心調律管理、心筋梗塞と虚血、心不全、および条件付けを行なうための神経刺激療法がある。迷走神経刺激法は、他の数々の治療(たとえば痛み、てんかん、および摂食障害の治療)に対して提案されている。他の神経刺激療法を有するこのようなリストは、包括的なリストを意図していない。電気治療、音響療法、超音波治療、光線療法、および磁気治療を用いた神経刺激法が提案されている。
【0037】
治療の一実施形態は、肺動脈圧受容器または肺動脈に最も近い迷走神経の標的の刺激による迷走神経刺激法を用いる心室リモデリングの防止および/または治療に関わる。自律神経系の活動は、心筋梗塞の結果として生じる、または心不全のために生じる心室リモデリングに少なくとも部分的に関与する。リモデリングは、たとえばアンギオテンシン変換酵素阻害薬やβ遮断薬を用いた薬理学的介入によって影響され得ることが実証されている。薬物治療には副作用の危険性があるが、薬物の影響を精密に調整するのは難しい。本主題の実施形態は、自律神経活動(抗リモデリング治療(ART)という)を調整するために、電気刺激装置を使用する。心室の再同期ペーシング(リモデリング制御治療(RCT
)ともいう)と連動して伝達される場合、自律神経活動のこのような調整は、心臓リモデリングを逆転または防止するように相乗的に働く場合がある。神経刺激療法の一実施形態は、肺動脈圧受容器の刺激または肺動脈に最も近い迷走神経標的の刺激による迷走神経刺激法を用いて高血圧症を抑制するのに十分な持続期間、圧反射を刺激することによって行なう高血圧症の治療に関わる。
【0038】
[心筋刺激療法]
様々な神経刺激療法は、様々な心筋刺激療法に統合されてもよい。治療法を統合することによって、相乗効果が得られる場合がある。治療法は互いに同期されてもよく、感知データは、治療間で共有されてもよい。たとえば心拍数と経胸腔インピーダンスが、心調律管理装置から肺動脈神経刺激装置に与えられてもよい。心筋刺激療法は、心筋の電気刺激による心臓治療を提供する。心筋刺激療法の幾つかの例について、以下に記載する。
【0039】
ペースメーカは、時間調整されたペーシングパルスによって心臓を鼓動させる装置であり、最も一般的には、心拍数が遅すぎるという徐脈治療用の装置である。ペースメーカは適切に機能する場合、最小心拍数を高めることによって代謝要求を満たすべく、心臓が適切なリズムで鼓動するように心臓能力の低下を補う。効率的な血液のポンプ注入を促進するために、心周期における心腔の収縮の仕方とその度合いに影響する埋込装置も開発されている。心腔が互いに協調して収縮すると、心臓はより効率的にポンプ注入を行なう。すなわち、心房と心室の両方における特定の伝導経路によって心筋全体への励起(すなわち脱分極化)が迅速に伝導され、通常どおりの結果がもたらされる。これらの経路は興奮性インパルスを洞房結節から心房心筋に、房室結節に、したがって心室筋に伝導し、両心房と両心室において収縮が協調して行なわれる。これらの両方はそれぞれの心腔の筋繊維の収縮を同期させ、心房または心室それぞれの収縮を反対側の心房または心室に同期させる。通常どおりに機能する特定の伝導経路によって可能となる同期をとることなく、心臓のポンプ注入の効率は大幅に低下される。これらの伝導経路の病的状態、および心室間伝導または心室内伝導の他の欠陥は、心不全の原因要素となり得る。これは臨床的症候群といい、心臓機能の異常のため、心拍出量が末梢組織の代謝要求を満たすのに十分なレベル未満になる。これらの問題に対処するために、心房および/または心室の収縮の協調(心臓再同期療法CRT)の改善を目的とする、適切に時間調整された電気刺激を1つ以上の心腔に供給する埋込心臓の装置が開発されている。直接心筋収縮力に影響を与えるわけでないが、再同期によって、ポンプ注入の効率向上と心拍出量の増加と共により協調した心室収縮が可能になるため、心室の再同期は心不全を治療する上で有用である。現在、内因性心房収縮の検出または心房ペーシングの伝達について心臓再同期療法の一般の形式では、指定された房室遅延間隔後、同時にまたは指定された二心室オフセット間隔によって別々に、両心室に刺激パルスが与えられる。
【0040】
心臓再同期療法は、心筋梗塞後の患者と、不全患者とに生じ得る有害な心室リモデリングを抑制する上で有益となり得る。おそらくこれは、心臓再同期療法が利用される場合に、心拍周期中に心室にかかる壁応力の分布変化によって生じる。心筋繊維が収縮前に伸長する度合いを前負荷といい、筋繊維を短縮させる最大の張力と速度は、前負荷の増加と共に増加する。心筋領域が他の領域よりも後に収縮する場合、これら対向する領域の収縮によって後に収縮する領域が伸長し、前負荷が増加する。収縮による心筋繊維の張力または応力の度合いを、後負荷という。血液が大動脈と肺動脈に送り出されるのに伴い、心室内の圧力は、心拡張期から収縮期の値に急速に上昇するため、興奮性刺激パルスによって最初に収縮する心室の部分は、後に収縮する心室の部分よりも低い後負荷に対して収縮する。したがって、他の領域よりも後に収縮する心筋領域においては、前負荷と後負荷の両方が増加する。このような状況は、心不全と、心筋梗塞による心室機能不全とに関連する心室伝導遅延によって頻繁に生じる。後に活性化する心筋領域への壁応力が増加すると、心室リモデリングのトリガになる可能性が高い。より協調した収縮を生じ得る方法で梗塞領
域付近の心室の1つ以上の部位を鼓動させることによって、心臓再同期療法は、心筋領域の早期興奮を与える。早期興奮が与えられない場合、この心筋領域は後に心収縮時に活性化され、壁応力が増加する。他の領域に比べ、リモデリングが行なわれた領域の早期興奮は、該領域の機械的応力を無くしてリモデリングが逆転または防止されないようにする。カルディオバージョン(QRS群と同時に心臓に伝達される電気ショック)、および除細動(同期せずQRS群に伝達される電気ショック)は、ほとんどの頻拍性不整脈を止めるために使用できる。電気ショックは、心筋を脱分極化させるのと同時に難治性とすることによって頻拍性不整脈を止める。埋込除細動器(ICD)として知られる種の心調律管理装置は、装置が頻拍性不整脈を検出すると衝撃パルスを心臓に伝達することによって、この種の治療を提供する。頻脈の電気治療の他の種類は、抗頻脈ペーシング(ATP)である。心室の抗頻脈ペーシングにおいて、頻脈の原因となるリエントリ回路を遮断するように、心室は1つ以上のペーシングパルスによって競合的に鼓動する。現代の埋込除細動器は、典型的には抗頻脈ペーシング能力を有し、不整頻拍が検出されると抗頻脈ペーシング治療または衝撃パルスを伝達する。
【0041】
[刺激システム、刺激装置、および刺激方法]
図2は、肺動脈218内に埋込まれた肺動脈装置217の一実施形態を示す。図に示す肺動脈装置217は、電極として、および肺動脈218内の装置のアンカー部として機能する構造体219と、感知機能と制御機能を提供するように構成されたモジュール220と、充電電池221とを有する。肺動脈装置217の幾つかの実施形態は、肺動脈圧力を感知する能力を提供する。充電電池221は、電力を転送するための無線装置を用いて再充電できる。たとえば肺動脈装置217は、超音波エネルギまたは無線周波数エネルギを受信してそのエネルギを電荷に変換するのに適切なトランスデューサを有してもよい。幾つかの実施形態によると、図に示す肺動脈装置217は、神経刺激療法の自律制御を行なう。
【0042】
図3は、埋込心調律管理装置322と、肺動脈318に埋込まれた肺動脈装置317とを有する刺激システムを示す。図に示す心調律管理装置322は、缶323と、心筋を感知し刺激するために用いられる適切な電極に関連した心調律管理リード324とを有する。矢印325で示すように、肺動脈装置317と缶323は、無線で通信を行なえる。したがって図に示す実施形態において、肺動脈装置317の神経刺激制御の少なくとも幾らかは、心調律管理装置の缶323内で行なわれてもよい。また感知した様々なパラメータ(たとえば心拍数、呼吸、ECG測定、インピーダンス)および/または検出した様々なイベント(たとえば不整脈、心筋梗塞)は、肺動脈装置を使用して行なわれる神経刺激療法のための入力として機能し得る。
【0043】
幾つかの実施形態によると、肺動脈装置は膨張時に血液の流れを実質的に妨げない拡張可能なバルーンを用いて、肺動脈に固定される。非閉塞性のバルーンの例は、特許文献1(出願日:2007年5月14日、「容量受容体刺激によって血液量を規制する方法と装置(Method and Apparatus for Regulating Blood Volume Using Volume Receptor Stimulation)」)に記載されており、この全内容を引用によって本明細書に援用する。
【0044】
図4〜図8は、肺動脈装置の幾つかの実施形態を示す。図4は、肺動脈418内に配置されたステント形式の長期的に埋込まれた肺動脈装置417を示しており、この装置は封入された電子プラットフォームを含んでいる。回路またはマイクロシステムが電子プラットフォーム上に含まれているため、再狭窄を防止する機械的機能に加え、インテリジェント機能が、ステントによって実施可能である。長期的に埋込まれた装置は小型であり、カテーテルによって、たとえばバイオシステムの血管網を介して配置できる。このため、侵襲性の外科的治療に関連した問題が軽減される。図5は、封入された電子プラットフォー
ム526を有するステント形式の長期的に埋込まれた肺動脈装置517の一実施形態を示す。図6は、2つの封入された電子プラットフォーム626を有するステント形式の長期的に埋込まれた肺動脈装置617の一実施形態を示す。所望に応じ、追加の電子プラットフォームが組込まれてもよい。装置の一実施形態は、複数の電子プラットフォームを結合する少なくとも1つの専用電気コネクタを有する。装置の一実施形態は、複数の電子プラットフォームを結合するために、ステント構造体から絶縁されたメッシュのストランド627を使用する。
【0045】
長期的に埋込まれた装置の一実施形態に係るステントは、絶縁体によって分離された少なくとも2つの導電部分を有する。導電部分のうちの一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。長期的に埋込まれた装置の様々な実施形態によると、これらの導電部分は電気治療(たとえば神経刺激)を提供するために、電力伝送を受信するために、および/または通信伝送の送受信を行なうために使用される。図7は、円筒状のまたは径方向に配向された陽極728と陰極729を備える、長期的に埋込まれた肺動脈装置717の一実施形態を示す。図8は、長手方向に配向された陽極828と陰極829を備える、長期的に埋込まれた肺動脈装置817の一実施形態を示す。様々な実施形態によると、これらの分割されたステント状構造体は、1つのステントからなる。径方向に配向された陽極と陰極、または長手方向に配向された陽極と陰極を形成または分離するために、ステントは必要に応じて切断される。陽極と陰極は、絶縁体材料730または830を用いて再結合される。
【0046】
図9〜図11は、例として肺動脈装置の幾つかの変形例を示す。図9は、アンカー部919と、アンカー部に構築された電極931と、肺動脈圧力を感知し、且つ電極931を用いて神経刺激(たとえば肺動脈圧受容器刺激)を制御するように構成されたモジュール932とを備える肺動脈装置917を示す。図10は、アンカー部1019と、アンカー部に構築された電極1031と、肺動脈圧センサ1032および関連する回路と、ペーシングと感知機能を制御するように構成された別個のモジュール1033とを備える肺動脈装置1017を示す。図11は、アンカー部1119と、アンカー部に構築された電極1131と、ペーシングを制御するように、且つ肺動脈の内部または肺動脈の外部の別の装置から感知情報を受信するように構成されたモジュール1134とを備える肺動脈装置1117を示す。
【0047】
図12A〜図12Dは、左肺動脈および/または右肺動脈に電極を配置するための肺動脈装置の様々な実施形態を示す。様々な数の電極が、それぞれの肺動脈内に配置されてもよい。加えて様々な種類の電極(たとえば肺動脈装置から延びるテザー上のチップ電極とリング電極、抗頻脈性不整脈機能を提供する実施形態において除細動ショックに使用できるようなコイル電極、拡張可能なステント状の電極など)が使用されてもよい。幾つかの装置は、双極刺激(たとえばリングと電極の間の刺激ベクトル)を与えるように構成されており、幾つかの装置は、単極刺激(たとえばリード上の電極と、別のリードまたは導電性ハウジング上の別の電極との間の刺激ベクトル)を与えるように構成されている。肺動脈装置の様々な実施形態は、肺動脈壁に適切に接するように、およびリードを肺動脈壁内に受動的に固定するように予め形成される。能動的な固定が使用されてもよい。
【0048】
図12Aは、肺動脈弁を介して右肺動脈1218Rに入れられるように構成された肺動脈装置1217Rを示す。幾つかの実施形態において、電極のうちの少なくとも1つは、右迷走神経の脱分極化を誘発するように構成と配置され;幾つかの実施形態において、電極のうちの少なくとも1つは、右肺動脈において肺動脈圧受容器を捕捉するように形成と配置される。図12Bは、肺動脈弁を介して左肺動脈1218Lに入れられるように構成された肺動脈装置1217Lを示す。幾つかの実施形態において、電極のうちの少なくとも1つは、左迷走神経の脱分極化を誘発するように構成と配置され;少なくとも幾つかの
実施形態において、電極のうちの少なくとも1つは、左肺動脈において肺動脈圧受容器を捕捉するように形成と配置される。
【0049】
様々な実施形態は、右肺動脈および/または左肺動脈において肺動脈圧受容器を標的とする。様々な実施形態は、右迷走神経の枝、左迷走神経の枝、または右迷走神経の枝と左迷走神経の枝の組合せを標的とする。左迷走神経の枝と右迷走神経の枝は、心臓の互いに異なる領域を神経支配するため、刺激されると様々な結果が生じる。本開示の知識では、右迷走神経は、心臓の右側(たとえば右心房と右心室)を神経支配しているように思われ、左迷走神経は、心臓の左側(たとえば左心房と左心室)を神経支配しているように思われる。洞結節は心臓の右側に存在するため、右迷走神経の刺激の変時作用はより大きい。したがって様々な実施形態は、収縮性と、興奮性と、心臓の右側および/または左側の炎症反応とを選択的に制御するように、右迷走神経および/または左迷走神経を選択的に刺激する。
【0050】
図12Cと図12Dは、肺動脈弁を介して入れられるように、且つ右肺動脈1218R内に固定されるように構成された第1肺動脈装置1217Rと、肺動脈弁を介して入れられるように、且つ左肺動脈1218L内に固定されるように構成された第2肺動脈装置1217Lとを示す。これらの装置は、肺動脈弁を介して延びる配線接続なく動作可能である。図12Cの装置は、互いに無線で通信を行なう。感知情報と治療情報は、装置間で共有されてもよい。幾つかの実施形態は電気治療に1つの装置を使用し、感知用に別の装置を使用する。図12Dに示すように、装置は有線接続(たとえば装置間に延びるテザー)によって互いに通信を行なう。
【0051】
図13は、長期的に埋込まれた肺動脈装置1335の一実施形態を示すブロック図である。図に示す実施形態によると、この装置1335は、電力/通信回路1336と、制御回路1337と、神経刺激回路1338と、センサ回路1339とを有する。神経刺激回路は、高血圧症、虚血、心不全、または不整脈を治療すべく所望の治療(たとえば神経刺激療法)を提供するように動作する、治療提供回路として機能する。一実施形態において、センサ回路は肺動脈圧力を感知するように動作し、或る実施形態においては心拍数を感知し、あるいは感知した肺動脈圧力から心拍数を導出する。
【0052】
図に示す電力/通信回路1336は、超音波信号を用いて、または他の無線による電力転送技術を用いて充電できる充電電池を有する。統合可能であることを示すために、電力/通信回路1336は1つのボックス内に結合されている。制御装置は、構成要素のうちのいずれかもしくはすべての機能の監視、制御、または監視制御を行なう。様々な実施形態によると、制御装置はセンサ回路、刺激回路、または感知刺激回路をトリガするように構成されている。一実施形態によると、制御装置は電力回路と他のシステム構成要素との間の電力フローを制御することによってシステム電力を管理するために使用される。制御装置は任意のシステム構成要素の動作を制御でき、電子機器のタイミング用と機能用のシステムクロックを提供できる。制御装置は、ステートマシンであってもよい。図に示す装置は、命令と感知データを保存可能なメモリ1340を有する。制御回路は、ハードウェア、ソフトウェア、およびハードウェアとソフトウェアの組合せによって実装可能である。たとえば様々な実施形態によると、制御回路は、神経刺激療法に関連した機能を実行すべくメモリに組込まれた命令を実行するプロセッサを有する。神経刺激回路は、1つ以上の刺激電極を介して、所望の神経標的部位(たとえば肺動脈における肺動脈圧受容器の部位)に電気刺激パルスを与えるために使用される。様々な実施形態において、神経刺激回路がテザーと電極を介して電気刺激を与えるように、テザーによって少なくとも1つの電極が神経刺激回路に接続される。様々な実施形態において、神経刺激回路が、装置(またはステント状もしくはバルーン状のアンカー構造体)のハウジング上の電極を介して電気刺激を与えるように、少なくとも1つの電極が該ハウジングに統合され、あるいは該ハウ
ジング上に形成される。センサ回路は、神経刺激のフィードバックを供給するために使用されてもよい。たとえばセンサ回路は、自律神経系の神経活動、血圧、または心拍数の検出と処理を行なうために使用されてもよい。様々な実施形態によると、刺激パルスの振幅;刺激パルスの頻度;パルスのデューティサイクル;神経刺激療法のそれぞれの周期の期間;神経刺激パルス列の期間;およびパルスの波の形態のうち、いずれかの特徴または2つ以上の特徴を組合せたものを設定するために、刺激回路はモジュールを有する。波の形態の例としては、方形波、三角波、正弦波、および(自然に発生する圧反射刺激を示すような)ホワイトノイズを再現するのに望ましい高調波成分を有する波がある。
【0053】
肺動脈装置の様々な実施形態は、肺動脈の血圧変化を監視するために圧力センサを有する。したがってこのセンサは、神経刺激の影響を監視する。様々な実施形態において、血圧を感知するために、たとえば微小電気機械システム技術が使用される。幾つかのセンサ実施形態は、薄膜の変位に基づき血圧を判断する。刺激装置とセンサが別々の装置に配置されている場合であっても、刺激装置とセンサの機能は統合されてもよい。
【0054】
圧力センサの例としては、容量性の薄膜センサと圧電センサがある。様々な実施形態によると、圧力の測定、フローの導出、速度の導出、心拍出量の監視、血行動態の安定の監視、および電導収縮解離(EMD)の監視を行なうために、容量性の薄膜センサが使用される。心臓の電気的な異常と冠動脈血管の異常とには相関性がある。しかし、電気的機能は正常と思われるが機械的機能が異常であること、または機械的機能は正常であるが電気的機能が異常と思われることもあり得る。電導収縮解離は、生体系の電気的機能と機械的機能とが互いに調和または一致しない状況を識別する。
【0055】
したがって本主題の様々な実施形態は、肺動脈の圧力センサからの局所的なフィードバックに少なくとも部分的に基づき、肺動脈圧受容器への神経刺激を自動的に調整する肺動脈装置を提供する。局所的にセンシングを行なうことによって、フィードバック制御が改善される。様々な実施形態によると、装置は肺動脈圧パラメータ(たとえば平均圧力、収縮期圧、拡張期圧)を監視する。平均肺動脈圧が増加する場合、あるいはプログラム可能な目標圧力を越えた状態のままである場合、たとえば血圧と高血圧症を抑えるために、装置は増加した速度で圧反射を刺激する。平均肺動脈圧が目標圧力に向かって下がる場合、装置は圧反射への刺激を減らすことによって応じる。様々な実施形態において、アルゴリズムは現在の代謝状態(心臓の要求)を考慮し、それに応じて神経刺激を調節する。
【0056】
一実施形態によると、装置が提供するセンサ機能は、持続的な血管内測定(たとえば血圧、血流、および血管径)を提供できる。様々な実施形態によると、センサは圧力を測定するために使用される。またセンサは、フローの導出、速度の導出、心拍出量の監視、血行動態の安定の監視、電導収縮解離の監視、および心臓の収縮力の測定を行なうために使用されてもよい。
【0057】
肺動脈装置は、衛星−惑星構成における衛星装置として組込まれてもよい。図14は、埋込惑星装置1441と衛星肺動脈装置1442とを有するネットワークを示し、衛星肺動脈装置1442は、左肺動脈装置と右肺動脈装置として示されている。惑星装置は、たとえばテレメトリを使用するそれぞれの衛星装置と無線で(すなわち直接の電気的接続なく)通信を行なえる。惑星装置は、感知機能および/または治療機能を提供するようにそれぞれの衛星装置に個々に命令する。衛星装置は、自律的に機能して惑星装置と通信を行ってもよい。様々な実施形態において、この通信は、惑星装置および/または衛星装置によって開始される。図に示す実施形態において、プログラマ1443は惑星装置と無線で通信を行ない、そして惑星装置は衛星装置と無線で通信を行なう。幾つかの実施形態において、プログラマは少なくとも1つの衛星装置と直接無線で通信を行なえる。幾つかの実施形態は、誘導的に通信を行なうように構成されている。
【0058】
図15は、様々な実施形態に係る埋込医療装置1544と肺動脈装置1545とを有するシステムを示す。埋込医療装置1544の様々な実施形態は神経刺激機能のみを含み、様々な実施形態は神経刺激機能と心調律管理機能との組合せを有する。埋込医療装置1544と肺動脈装置1545は、データと命令を無線で通信できる。様々な実施形態によると、埋込医療装置1544は、肺動脈に位置する肺動脈装置1545を用いて肺動脈の肺動脈圧受容器を刺激する。図に示す例において、埋込医療装置は無線ECG電極1546を含み(必ずしも図に示すように配置されなくてもよい)、無線ECG電極1546は心臓信号を検出するために使用されてもよい。
【0059】
図16は、様々な実施形態に係る埋込心調律管理装置1644と肺動脈装置1645とを有するシステムを示す。肺動脈装置と心調律管理装置とは通信可能であってもよい。様々な実施形態において、この通信によって、装置のうちの1つは別の装置から受信するデータに基づき、より適切な治療(すなわち、より適切な神経刺激療法または心調律管理療法)を伝達できる。幾つかの実施形態は、オンデマンド通信を提供する。図に示す肺動脈装置と心調律管理装置は、互いに無線で通信を行なえる。プログラマは、神経刺激(NS)装置と心調律管理装置のうちの少なくとも一つに、無線通信を行なえる。たとえば様々な実施形態は、データと命令を互いに無線で通信するためにテレメトリコイルを使用する。他の実施形態において、データおよび/またはエネルギの通信は、超音波装置によって行なわれる。肺動脈装置は、解剖学的に左右の肺動脈の最も近くに位置する、標的とされた副交感神経を、肺動脈圧受容器を刺激するのに十分な強度で経血管的に(transvascularly)刺激するために、および/または隣接する自律神経の脱分極化を誘発するために使用できる。また、たとえば左心房と右心房のペーシングパルスを伝達するために使用できる。このような心房ペーシングは、幾つかの心臓再同期療法用途において提供されてもよい。
【0060】
様々な実施形態によると、非意図的に心臓組織を捕捉しないように、且つ不整脈(たとえば心房細動または心室細動)を引き起こさないように、装置は不応期を感知し、不応期において肺動脈内の1つ以上の電極から神経刺激を伝達する設計になっている。副交感神経系の迷走神経の有髄繊維は、心筋組織の繊維よりもはるかに低い位置に存在する。したがってこれらの迷走神経の有髄繊維を刺激するとき、心筋刺激が存在しない状態において副交感神経刺激が与えられることがある。
【0061】
図17は、右肺動脈装置1747と右心室リード1748とを有する一実施形態を示す。図に示す埋込医療装置(IMD)1749は、右肺動脈装置1747と無線で通信を行なう。また埋込医療装置1749は、右肺動脈装置1747上の電極を用いて右心房ペーシングを行なえ、肺動脈圧受容器および/または右迷走神経標的の神経刺激のセンシングと制御を行なえる。幾つかの実施形態において、心房イベントは右肺動脈装置上の同じ電極から感知されてもよい。神経刺激時に右心房を非意図的に捕捉しないように、神経刺激は感知したp波と同期されてもよい。幾つかの右肺動脈装置の実施形態は、肺動脈圧受容器および/または右迷走神経の神経標的を刺激するように、ならびに右心房組織を捕捉すべく特に構成と配置された電極を使用するように、特に構成と配置された電極を使用する。幾つかの実施形態は、刺激信号が神経経路の脱分極化および/または心房組織の捕捉を行なうか否かを制御するために、刺激信号の信号パラメータ(たとえば振幅や頻度)を制御する。図に示す埋込医療装置の用途には迷走神経の調整が含まれる。この迷走神経は、迷走神経の調整によって生じる非意図的な心房捕捉を回避するために、迷走神経の調整と、ペーシングを行ったイベントまたは内因性心房イベントに関連した不応期とを同期させる能力を備えるものである。
【0062】
図18は、右肺動脈装置1847Rと左肺動脈装置1847Lを含み、右心室リード1
848を有する一実施形態を示す。図に示す埋込医療装置1849は、神経刺激(たとえば肺動脈圧受容器刺激)を制御するために、これらの肺動脈装置と無線で通信を行なう。幾つかの実施形態において、図に示す埋込医療装置1849は、これらの肺動脈装置を用いて両心房ペーシングを行なえる。肺動脈から神経標的(肺動脈圧受容器または迷走神経の枝)を刺激することに加え、幾つかの肺動脈装置の実施形態は、左右肺動脈のうちの少なくとも一方の電極を用いて心房イベントを感知することができ、および/または左右肺動脈のうちの少なくとも一方の電極を用いて心房組織のペーシングを行ない、もしくは心房組織の細動を止める。複数の心房イベントは、同じ電極から感知されてもよい。神経刺激は、心房組織を非意図的に捕捉しないように、感知したp波に基づき時間調整されてもよい。幾つかの実施形態は、神経標的を刺激するように特に構成と配置された電極と、心房組織を捕捉するように特に構成と配置された電極とを使用する。幾つかの実施形態は、刺激信号が神経経路の脱分極化および/または心房組織の捕捉を行なうか否かを制御するために、刺激信号の信号パラメータ(たとえば振幅や頻度)を制御する。
【0063】
図19は、迷走神経刺激法に統合された心房除細動治療を提供可能な一実施形態を示す。図に示すシステムは、右心室リード1948と冠状静脈洞リード1950、右肺動脈装置1947Rと左肺動脈装置1947Lを有する。図に示す埋込医療装置1949は、様々な構成によって心房ショックを与えることができ、肺動脈の内部から神経標的(たとえば肺動脈圧受容器)を刺激することもできる。心臓迷走神経を刺激することの潜在的利益としては、心筋梗塞に続く炎症反応を低下させることや、細動を止めるための電気刺激閾値を下げることがある。たとえば頻脈が感知されると迷走神経刺激が与えられ、次いで除細動ショックが与えられる。迷走神経刺激は、除細動ショックをより少ないエネルギで与えることを可能にする。図に示す右心室リード1948は心内膜双極リードであり、心臓の右心室と電気的接触を確立するように配置された電極を備えている。これらの電極によって、右心室における心室興奮の双極センシングが可能になる。図に示すリード1948は、上大静脈を介して右心房に、更に右心室に入れられる。
【0064】
図に示す冠状静脈洞リード1950は、心房にショックを与えるためのリードであり、一般に第1電極またはチップ電極と、第2電極または近位電極とを有する。このリード1950上に、追加の電極が組込まれてもよい。所望の感知機能と刺激機能を提供するのに使用される様々な潜在的電極構成を提供することによってリードを配置する際、このような電極は有用となり得る。冠状静脈洞リード1950は可撓性があり、上大静脈を通って下方に進み、右心房に、次いで冠静脈洞入口部に、更に心臓の左側付近に位置する冠状静脈洞のチャネルに進むように配置される。これによって第1電極またはチップ電極は、左心室に隣接して左心房下方に位置する冠状静脈洞内における冠状静脈洞のチャネル、あるいは左心室に隣接して左心房下方に位置する大心臓静脈内における冠状静脈洞のチャネル内に存在する。第1電極が上記のように位置するとき第2電極が右心房に存在するように、電極は互いに離間される。冠状静脈洞リード1950上の電極は、心房における心臓活動について双極センシングを行なえ、更に心房へ除細動またはカルディオバージョンの電気エネルギを伝達できる。除細動エネルギは、埋込医療装置1949の缶またはハウジングと、右心室リード1948上と冠状静脈洞リード1950上の他の電極との間に与えられてもよい。肺動脈装置1947R,1947Lは、冠状静脈洞リード1950と右心室リード1948と共に使用されてもよい。これらの肺動脈装置の電極は、左右心房の少なくとも一方の活動を感知する際に使用されるように、および/または左右心房の少なくとも一方の組織を捕捉するために使用されるように、肺動脈圧受容器および/または特定の迷走神経経路という標的への刺激を供給するように配置と構成されてもよい。肺動脈装置1947R,1947L上の電極は、所望の感知ベクトル、ペーシングベクトル、および衝撃ベクトルを提供するために、埋込医療装置1949上の導電性ハウジングと共に、または他のリード(たとえば冠状静脈洞リード1950)上の他の電極と共に使用されてもよい。これらの肺動脈装置は、冠状静脈洞リードと右心室リードとは無関係に使用されて
もよい。これらの肺動脈装置上の電極は、他の電極を用いて適切な感知ベクトル、ペーシングベクトル、および衝撃ベクトルに沿って迷走神経刺激を与えてもよい。
【0065】
図20は、迷走神経刺激法に統合された心臓再同期療法を提供可能な一実施形態を示す。図に示す実施形態は、冠状静脈洞を介して延びる左心室リード2051と、右心室リード2048と、右心房リード2052とを有する。図に示すシステムはまた、左肺動脈装置2047Lと右肺動脈装置2047Rを有する。図に示す左心室リード2051は冠状静脈洞を介して入れられ、更に分枝静脈まで進められる。図に示す装置の様々な実施形態は、再同期治療を提供すべく、両心室ペーシングおよび/または両心房ペーシングと共に迷走神経刺激法を提供することができる。幾つかの実施形態は、左右の肺動脈において電極を使用する両心房ペーシングを提供する。両心房ペーシングで同期をとることによって、心房性頻脈と心房細動による負担(たとえばリエントリ性頻拍)が抑えられる。
【0066】
図21は、様々な実施形態に係る肺動脈装置2152を示す。図に示す装置は、所定の神経標的(肺動脈圧受容器および/または肺動脈の最も近くを通る迷走神経の枝)に伝達される神経刺激信号を供給し、誘発された神経刺激応答を用いて治療を提供する。図に示す装置は、制御回路2153とメモリ2154を有する。制御回路は、ハードウェア、ソフトウェア、およびハードウェアとソフトウェアの組合せによって実装可能である。たとえば様々な実施形態によると、制御回路はプロセッサを含み、プロセッサは、神経刺激療法に関連した機能を実行するためにメモリに組込まれた命令を実行する。図に示す装置は、プログラマとの通信または別の外部装置もしくは内部装置との通信を行なうために使用される送受信機2155および関連する回路を更に有する。様々な実施形態は、無線通信能力を有する。たとえば幾つかの送受信機の実施形態は、プログラマとの通信または別の外部装置もしくは内部装置との通信を無線で行なうために、テレメトリコイルを使用する。
【0067】
図に示す装置は、肺動脈圧受容器を刺激して圧反射反応を誘発するために、治療伝達システム2156(たとえば神経刺激回路)を更に有する。図に示す装置は、センサ回路2157を更に有する。センサ回路は、心臓状態の判断または治療のためのフィードバック供給を行なうのに有用なパラメータを検出するために使用されてもよい。幾つかの実施形態は、神経の交通を検出するように構成されたセンサ回路を使用する。他の生理学的パラメータ(たとえば心拍数、呼吸、および血圧)が感知されてもよい。肺動脈装置の一実施形態は、肺動脈圧力センサを有する。様々な実施形態によると、神経刺激回路は、たとえば所定位置に配置された1つ以上の刺激電極2158を介して、所望の神経標的に電気刺激パルスを供給するために使用される。幾つかの実施形態は、他の種類のエネルギ(たとえば超音波エネルギ、光エネルギ、または磁気エネルギ)を提供するために、トランスデューサを使用する。制御回路は、メモリ内の治療スケジュールを用いて治療を制御してもよい。あるいは制御回路は、神経刺激/抑制の強度を適切に調節するために、メモリに保存されている感知した生理学的反応の1つ以上の標的範囲を、感知した生理学的反応と比較してもよい。標的範囲はプログラム可能であってもよい。
【0068】
神経刺激を用いる様々な実施形態によると、刺激回路は、刺激特性のうちのいずれか1つまたは組み合わせを設定または調節するように構成されている。神経刺激療法の強度は、1つ以上の刺激特性を調節することによって調節されてもよい。刺激特性の例としては、刺激信号の振幅、周波数、極性、および波の形態がある。波の形態の例としては、方形波、三角波、正弦波、および望ましい高調波成分を有する波がある。神経刺激回路の幾つかの実施形態は、所定の振幅、形態、パルス幅、および極性を有する刺激信号を生成するように構成されており、更に、振幅、波の形態、パルス幅、および極性のうちの少なくとも1つを変更するために、制御装置からの制御信号に応答するように構成されている。神経刺激回路の幾つかの実施形態は、所定の周波数を有する刺激信号を生成するように構成
されており、更に刺激信号の周波数を変更するために、制御装置からの制御信号に応答するように構成されている。
【0069】
制御装置は、メモリに保存されている刺激命令(たとえば刺激スケジュール)に準じて刺激回路によって伝達された神経刺激を制御するように、プログラムされてもよい。神経刺激は、刺激バーストにおいて伝達されてもよい。刺激バーストとは、所定周波数における一連の刺激パルスである。刺激バーストは、バースト持続期間とバースト間隔によって特徴付けられてもよい。バースト持続期間は、1つのバーストが続く時間の長さである。バースト間隔は、連続するバーストの開始点間の時間によって識別されてもよい。プログラムされたバーストパターンは、バースト持続期間とバースト間隔の組合せを含んでもよい。1つのバースト持続期間とバースト間隔を有する単一のバーストパターンは、プログラムされた期間、周期的に継続してもよく、あるいはより複雑なスケジュールに従ってもよい。プログラムされたバーストパターンはより複雑であってもよく、複数のバースト持続期間とバースト間隔のシーケンスからなってもよい。プログラムされたバーストパターンは、デューティサイクルによって特徴付けられてもよい。デューティサイクルとは、神経刺激が固定時間オンとなり、神経刺激が固定時間オフとなる反復サイクルをいう。
【0070】
幾つかの実施形態によると、制御装置は刺激回路が生成する神経刺激を、刺激信号のそれぞれのパルスを開始することによって制御する。幾つかの実施形態において、制御回路は刺激信号パルス列を開始し、刺激信号は所定の周波数とバースト持続期間においてパルス列を生成することによって、制御回路からのコマンドに応答する。パルス列の所定の周波数とバースト持続期間は、プログラム可能であってもよい。パルス列におけるパルスのパターンは、1つのバースト持続期間とバースト間隔を有する単一のバーストパターンであってもよく、あるいは複数のバースト持続期間とバースト間隔を有するより複雑なバーストパターンに従ってもよい。幾つかの実施形態において、制御装置は神経刺激セッションを開始するように、および神経刺激セッションを終了するように、刺激回路を制御する。制御装置の制御下に位置する神経刺激セッションのバースト期間は、プログラム可能であってもよい。制御装置はまた、(たとえば感知した1つ以上のパラメータによって、または神経刺激を停止するのに望ましいと判断される他の条件によって生成される)割込信号に応じて、神経刺激セッションを終了してもよい。
【0071】
図に示す装置は、プログラム可能な刺激スケジュールを実行するために使用できるクロックまたはタイマ2159を有する。慢性的な神経刺激療法(たとえば心不全治療)は、特定の時間(たとえば夜間)に行なわれるようにプログラムされてもよい。たとえば患者にとってより都合のよい時間まで治療を待つことが可能な病的状態と重症度である場合、病的状態が検出されたときに病的状態に対して治療が行なえるように、および治療が可能なときはいつでも治療をプログラムされたスケジュールに準じて(たとえば日中の特定の時間)伝達するように、装置はプログラムされてもよい。刺激セッションは、第1プログラム時間に開始して第2プログラム時間に終了してもよい。様々な実施形態は、ユーザがトリガする信号に基づき、刺激セッションを開始および/または終了する。様々な実施形態は、刺激セッションを有効および/または無効にするために感知データを使用する。したがって、たとえばクロックは治療に有効な条件を与えるために使用されてもよい。別の例として、治療を可能にするように複数の条件が共に機能してもよい。
【0072】
様々な実施形態によると、スケジュールとは、神経刺激療法が伝達される時間間隔または期間をいう。スケジュールは開始時間と終了時間によって、または開始時間と持続期間によって定義されてもよい。様々な装置の実施形態は、神経刺激療法に用いられる検出された病的状態(たとえば患者の休息または睡眠、低心拍数レベル、時刻など)によってだけでなく、有効な条件によって左右されるプログラムされたスケジュールに準じて、治療を適用する。治療スケジュールはまた、刺激がどのように伝達されるか(たとえば識別さ
れた治療期間にわたりパルス周波数で(たとえば2分間5Hzのパルス周波数で)連続的に、または治療伝達期間定義されたデューティサイクルに準じて(たとえば2分間5Hzのパルス周波数で分速10秒))を特定してもよい。これらの例で示すように、治療スケジュールはデューティサイクルとは区別できる。
【0073】
図22は、様々な実施形態に係る神経刺激要素2261と心調律管理要素2262とを有する埋込医療装置2260を示す。図に示す装置は、制御装置2263とメモリ2264を有する。様々な実施形態によると、神経刺激法と心調律管理機能を実行するために、制御装置はハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組合せを有する。たとえば本開示に記載するプログラムされた治療用途は、メモリに組込まれてプロセッサによって実行されるコンピュータ可読の命令として保存可能である。たとえば治療スケジュールとプログラム可能なパラメータは、メモリに保存されてもよい。様々な実施形態によると、制御装置は神経刺激と心調律管理機能とを行なうべくメモリに組込まれている命令を実行するために、プロセッサを有する。図に示す神経刺激療法は、特定の病的状態に、および病的状態の様々な組合せに適切であると判断された所定の神経刺激療法を含んでもよい。たとえば所定の神経刺激療法は、高血圧症に適切な治療、虚血に適切な治療、および高血圧症と虚血の組合せに適切な治療を含んでもよい。様々な実施形態は、心調律管理療法(たとえば徐脈ペーシング、抗頻脈ペーシングなどの抗頻脈治療、除細動とカルディオバージョン、および心臓再同期療法)を有する。
【0074】
心調律管理療法セクション2262は、制御装置の制御下において、1つ以上の電極を用いて心臓の刺激および/または心臓信号の感知を行なう構成要素を有する。図に示す心調律管理療法セクションはパルス発生器(PG)2265を含み、パルス発生器2265は心臓を刺激すべく電極を介して電気信号を供給するために使用される。また心調律管理療法セクションは、感知した心臓信号の検出と処理を行なうために、センサ回路2266を更に有する。インタフェース2267は、概して制御装置2263とパルス発生器2265との通信、および制御装置2263とセンサ回路2266との通信を行なうために使用されるものとして示されている。心調律管理療法を提供するために使用する例として、3つの電極が示されているが、本主題は、特定数の電極サイトに限定されない。それぞれの電極は自身のパルス発生器とセンサ回路を含んでもよいが、本主題はこれに限定されない。パルス生成機能とパルス感知機能は、複数の電極を用いて機能するように多重化されてもよい。
【0075】
神経刺激療法セクション2261は、制御装置の制御下において、神経刺激標的の刺激の制御、および/または神経活動に関連したパラメータもしくは神経活動(たとえば心拍数、血圧、および呼吸)のサロゲートの感知を行なうために使用される構成要素を有する。センサ(たとえば神経活動、心拍数、血圧、呼吸、インピーダンス用のセンサ)からの信号の検出と処理を行なうために、センサ回路2268が使用される。インタフェース2269は、概して制御装置2263とセンサ回路2268との通信を行なうために使用されるものとして示されている。神経刺激療法セクションは、肺動脈装置2271と無線で通信を行なうためにモジュール2270を有する。この肺動脈装置2271は、肺動脈圧受容器にまたは肺動脈装置を用いてアクセス可能な他の自律神経系標的に神経刺激を伝達するために、刺激回路を有する。図に示す装置は、クロック/タイマ2272を更に有する。このクロック/タイマ2272は、プログラムされた治療をプログラムされた刺激プロトコルおよび/またはスケジュールに準じて伝達するために使用されてもよい。図に示す装置は、プログラマとの通信、または別の外部装置もしくは内部装置との通信を行なうために使用される送受信機2273および関連する回路を更に有する。様々な実施形態は、テレメトリコイルを有する。
【0076】
図23は、様々な実施形態に係るマイクロプロセッサに基づく埋込装置の一実施形態を
示す系統図である。装置の制御装置は、双方向データバスによってメモリ2375と通信を行なうマイクロプロセッサ2374である。制御装置は、設計の種類としてステートマシンを用いた他の種類のロジック回路(たとえば個別の構成要素またはプログラム可能なロジックアレイ)によって実装されてもよい。本明細書において「回路」という語は、個別のロジック回路、またはマイクロプロセッサのプログラミングをいう。図には、感知用とペーシング用チャネルの3つの例を示す。「A」〜「C」で示すこれらのチャネルは、リング電極2376A〜2376Cと、チップ電極2377A〜2377Cと、センスアンプ2378A〜2378Cと、パルス発生器2379A〜2379Cと、チャネルインタフェース2380A〜2380Cとを備える双極リードを有する。それぞれのチャネルは、電極に接続されたパルス発生器からなるペーシングチャネルと、電極に接続されたセンスアンプからなる感知チャネルとを有する。チャネルインタフェース2380A〜2380Cは、マイクロプロセッサ2374と双方向に通信を行なう。またそれぞれのインタフェースは、センスアンプからの感知信号の入力をデジタル化するためのアナログ−デジタル変換器と、ペーシングパルスの出力、ペーシングパルス振幅の変更、ならびにセンスアンプの利得値と閾値の調節を行なうためにマイクロプロセッサによる書込が可能なレジスタとを含んでもよい。特定のチャネルによって生成される電位信号(すなわち心臓の電気的活動を表わす、電極が感知する電圧)が指定された検出閾値を越えると、ペースメーカのセンサ回路は、チャンバセンス(すなわち心房センスまたは心室センス)を検出する。特定のペーシングモードにおいて使用されるペーシングアルゴリズムは、ペーシングをトリガまたは抑制するためにこのようなセンスを使用する。内因性の心房レートおよび/または心室レートは、心房センスと心室センスの間の時間間隔を測定することによって測定されてもよく、心房頻拍性不整脈と心室頻拍性不整脈を検出するために使用されてもよい。
【0077】
それぞれの双極リードの電極は、マイクロプロセッサによって制御されるスイッチングネットワーク2381に、リード内のコンダクタを介して接続される。スイッチングネットワークは、内因性の心臓活動を検出すべく電極をセンスアンプの入力に切替えるために、およびペーシングパルスを伝達すべく電極をパルス発生器の出力に切替えるために使用される。スイッチングネットワークはまた、リードのリング電極とチップ電極の両方を用いる双極モードにおいて、またはリードの電極のうちのただ1つを用いる単極モードにおいて、装置ハウジング(缶)2382を使用して、または接地電極として機能する別のリード上の電極を使用して、装置が感知またはペーシングを行なえるようにする。衝撃パルス発生器2383も、ショックを適用可能な(shockable)頻拍性不整脈の検出時に1対のショック電極2384,2385を介して除細動ショックを伝達するために、制御装置とインタフェースをとる。図に示す装置は、肺動脈装置2387と無線通信を行なうためにマイクロプロセッサ2374に接続されたモジュール2386を有する。マイクロプロセッサは、肺動脈装置によって伝達される神経刺激を制御する。
【0078】
この図は、外部装置との通信を行なうために使用可能なマイクロプロセッサに接続されたテレメトリインタフェース2388を示す。図に示すマイクロプロセッサ2377は、神経刺激療法ルーチンと、心筋の(心調律管理)刺激ルーチンとを実行できる。神経刺激療法ルーチンの例としては、高血圧症、虚血、心筋梗塞後、および心不全リモデリング治療がある。心筋治療ルーチンの例としては、徐脈ペーシング治療、抗頻脈ショック療法(たとえば,カルディオバージョンまたは除細動の治療)、抗頻脈ペーシング、および心臓再同期療法がある。
【0079】
図24は、外部システム2489の一実施形態を示すブロック図である。幾つかの実施形態において、外部システムはプログラマを有する。図に示す実施形態において、外部システムは患者管理システムを有する。図に示すように、外部システムは外部装置2490と、電気通信ネットワーク2491と、リモート装置2492とを有する患者管理システ
ムである。外部装置2490は埋込医療装置付近に配置され、埋込医療装置と通信を行なうために外部テレメトリシステム2493を有する。リモート装置2492は1つ以上の遠隔位置に存在し、ネットワーク2491によって外部装置2490と通信を行なう。これによって、医師または他の介護者は遠隔地から患者の監視と治療を行なうことが可能になり、および/または1つ以上の遠隔位置から様々な治療資源へのアクセスが可能になる。図に示すリモート装置2492は、ユーザインターフェース2494を有する。様々な実施形態によると、外部装置はプログラマまたは他の装置(たとえばコンピュータ、携帯情報端末、または電話機)を有する。様々な実施形態において、外部装置2490は、適切な通信チャンネルで互いに通信を行なうように構成された2つの装置を有する。たとえばコンピュータとブルートゥース対応型の携帯機器(たとえば携帯情報端末、電話機)が例として挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
高度患者管理(APM)システムは、観察もしくは感知された習慣を回避するためのパラメータ調節、または治療強度の調節を患者および/または医師に可能とするために使用されてもよい。この入力はコンピュータ、プログラマ、携帯電話機、携帯情報端末などによって与えられてもよい。患者は通常の電話、携帯電話、またはインターネットを使用してコールセンタに電話してもよい。この通信はリピータを介してもよい。応答として、コールセンタ(たとえばコールセンタのサーバ)は、治療の調節または微調整を行なうために、自動的に装置に情報を送信してもよい。コールセンタは、患者の医師にイベントについて通知してもよい。装置問合せ(device interrogation)は、自動的にトリガされてもよい。装置問合せの結果は、過渡応答を改善するために治療の調節および/または微調整が行なわれるべきか、ならびにどのように行なわれるべきかを判断するために用いられてもよい。サーバは、装置問合せの結果を用いて治療の調節および/または微調整を自動的に行ってもよい。医療スタッフは、装置問合せの結果を再検討してもよく、所望の治療の調節および/または微調整を行なうように装置をリモートサーバによってプログラムしてもよい。サーバは、装置問合せの結果を患者の医師に伝えてもよく、患者の医師は、治療の調節および/または微調整を行なうために入力または指示を与えてもよい。
【0081】
図25は、変動する時間応答のパラメータの総合指数を用いて、神経刺激プロトコルを実施するシステムの一実施形態を示す。2595に示すように、パラメータA,B,Cなどの数々のパラメータが感知される。これらの感知パラメータのそれぞれは、自律健康度の変化(たとえば自律平衡の変化)への時間応答に関連している。図に示す実施形態において、パラメータBまたはCに比べ、パラメータAは、自律健康度の変化に対してより鋭い応答を示す。総合指数生成器2596は、これらのパラメータの値(たとえば感知した測定値、または感知した測定値に基づき導出した値)を受信し、所定のアルゴリズムに準じて総合指数を生成する。所定のアルゴリズムとは、自律健康度の変化へのパラメータの時間応答に少なくとも部分的に準じて、パラメータに重付けを行ったものである。制御装置2597は、総合指数に基づき所望の神経刺激強度を判断し、神経刺激強度を適切に調節するように神経刺激回路2598に命令する。たとえば神経刺激パルス列の振幅、頻度、または持続期間は、神経刺激強度を調節するように調節されてもよい。
【0082】
図26は、肺動脈圧、心拍数、インピーダンス、および他のパラメータの総合指数を用いて、神経刺激プロトコルを実施するシステムの一実施形態を示す。図に示す実施形態は、図25に類似している。図26は、肺動脈圧、心拍数、およびインピーダンスが様々な時間応答の感知パラメータであることを示している。心拍数の応答は比較的速く、圧力の応答は心拍数よりも遅く、インピーダンスの応答は圧力よりも遅い。たとえば胸郭インピーダンスは、肺水腫(すなわち代償不全の指標)を検出するために使用されてもよい。インピーダンスによって、心筋収縮性の変化を測定してもよい。これらのパラメータは、急性で慢性的な患者の自律健康度に関する有用な情報を提供してもよい。
【0083】
図27は、神経刺激療法を開始するために使用される閾値を判断する方法を示す。ステップS2701に示すように、センサシステム(たとえば肺動脈圧力センサ、またはマルチセンサシステム)は、生理学的パラメータを感知するために使用される。システムはステップS2702に示すようにデータを収集し、ステップS2703に示すようにデータをインデックスにコンパイルし、インデックスとインデックスの1つ以上の閾値とを比較する。閾値は、神経刺激療法が開始される閾値であってもよい。閾値は、神経刺激療法が調節される閾値であってもよい。図に示す実施形態において、ステップS2704において閾値を合格している場合、ステップS2705において神経刺激療法が開始される。センサは、神経刺激への生理学的反応を監視する。ステップS2706において判断されるように応答が肯定の場合、ステップS2707に示すようにパラメータの監視は継続され、プログラムされた刺激スケジュールの間、神経刺激は継続される。ステップS2706において応答が肯定ではないと判断される場合、ステップS2709において肯定の応答が検出されるまで、またはステップS2710に示すようにカウンタが満了するまで、ステップS2708に示すように神経刺激の1つ以上のパラメータ(振幅、頻度、デューティサイクル、パルス列持続期間など)が変更される。
【0084】
図28は、神経刺激プロトコルを実施するために使用される総合指数を判断する方法を示す。この図は、監視したパラメータは自律健康度の変化への応答時間が互いに異なることを示す。データコンパイルによってパラメータそれぞれの変化が判断され、自律平衡の変化へのパラメータの時間応答に少なくとも部分的に基づき、それぞれのパラメータ変更への重付けが行なわれる。総合指数は、重付けが行なわれたパラメータ変更を用いて生成される。たとえば幾つかの実施形態は、応答が遅いパラメータよりも、応答が速いパラメータの変化への重付けをより大きくしてもよい。また幾つかの実施形態は、応答が速いパラメータよりも、応答が遅いパラメータの変化への重付けをより大きくしてもよい。パラメータへの重付けは、自律平衡の変更への時間応答と、医師によって割り当てられた、またはアルゴリズムによって判断された重要性または関連性とに基づき行なわれてもよい。
【0085】
図29と図30は、神経刺激プロトコルの実施に使用される総合指数を判断するために、肺動脈圧力、インピーダンス、および心拍数などのパラメータに重付けを行なう方法を示す。これらの図は、図28に示す方法の特定の例を示す。これらの図においてA%はB%以上であり、B%はC%以上であり、C%はD%以上である。図29に示すように、心拍数の変化よりも肺動脈圧の変化への重付けを大きくする。図30に示すように、増加したインピーダンス変化(遅い応答)よりも、減少した心拍数変化(速い応答)への重付けを大きくする。図29に示す方法は、たとえば神経刺激療法を開始すべきか否かを判断すべく、総合指数を生成するために使用されてもよい。図30に示す方法は、たとえば神経刺激療法が所望の応答を提供しているか否かを検出するために使用されてもよい。
【0086】
システムは、(迷走神経が刺激されると副交感神経応答を提供する)神経の交通を刺激する設計、または(迷走神経が抑制されると交感神経応答を提供する)神経の交通を抑制する設計であってもよい。様々な実施形態は、一方向の刺激を伝達し、あるいは神経内の神経繊維のうちの幾つかに選択的に刺激を伝達する。様々な実施形態によると、先に示し記載する装置は、神経刺激を電気刺激として伝達するように構成されている。神経刺激を伝達するための他の要素を使用してもよい。たとえば幾つかの実施形態は、他の種類のエネルギ(たとえば超音波エネルギ、光エネルギ、磁気エネルギ、または熱エネルギ)を用いて神経刺激を伝達するためにトランスデューサを使用する。
【0087】
本明細書に示し記載するモジュールと他の回路は、ソフトウェア、ハードウェア、およびソフトウェアとハードウェアの組合せによって実装可能であることを本技術分野の当業者には理解されたい。このように、モジュールと回路という語は、たとえばソフトウェア
実装、ハードウェア実装、およびソフトウェアとハードウェアの実装を包含するように意図される。
【0088】
本開示に示す刺激方法は、本主題の範囲内において他の方法を除外するようには意図されない。本技術分野の当業者は本開示を読み理解することによって、本主題の範囲内の他の方法について理解するであろう。上記の実施形態、および記載の実施形態の部分は、必ずしも互いに排他的ではない。これらの実施形態またはそのうちの部分は組合わされてもよい。様々な実施形態において、この方法は、搬送波に埋込まれたコンピュータデータ信号または伝播信号を用いて実施される。このコンピュータデータ信号または伝播信号は、1つ以上のプロセッサによって実行された場合、それぞれの方法をプロセッサに実行させる命令シーケンスを表わす。様々な実施形態において、これらの方法は、それぞれの方法を実行するようにプロセッサに指示可能であり、コンピュータアクセス可能な媒体上に含まれる1組の命令として実行される。様々な実施形態において、媒体は磁気媒体、電子媒体、または光媒体である。
【0089】
上記の詳細な説明は例示であって、限定的なものではない。他の実施形態は、上記の説明を読み理解することによって本技術分野における当業者に明らかであろう。したがって本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲が権利を付与されるのと同等のすべての範囲に従って、特許請求項の範囲を基準にして判断される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺動脈の内部から、自律神経標的を刺激する埋込医療装置であって、
前記埋込医療装置は、
少なくとも1つの電極と;
電源と;
前記電源に接続される神経刺激装置であって、前記神経刺激装置は、前記電極を介して神経刺激標的に伝達される神経刺激信号を生成するように構成されることと;
前記電極、前記電源、および前記神経刺激装置を、前記肺動脈内に長期的に且つ安全に埋込むように構成されたアンカー構造体と
を有することを特徴とする、埋込医療装置。
【請求項2】
前記電極、前記電源、前記神経刺激装置、および前記アンカー構造体は、肺動脈弁を介して前記肺動脈に埋込まれるように構成され、
前記神経刺激装置は、配線接続なく前記肺動脈弁を介して前記肺動脈内に長期的に埋込まれた場合、神経刺激プロトコルを実施するために操作可能に構成される、
請求項1記載の埋込医療装置。
【請求項3】
前記神経刺激装置は、神経刺激プロトコルを実施するように構成された制御システムを有する、
請求項1記載の埋込医療装置。
【請求項4】
前記神経刺激装置は、神経刺激プロトコルを実施するために前記肺動脈の外部の制御装置からの命令を無線で受信するように構成された通信モジュールを有する、
請求項1記載の埋込医療装置。
【請求項5】
前記埋込医療装置は更に、
肺動脈圧を感知するように構成された圧力センサと、心拍数を感知するように構成された心拍数センサとのうちの少なくとも一方を有し、
前記神経刺激装置は、前記圧力センサまたは前記心拍数センサに接続され、
前記神経刺激装置は、前記肺動脈圧または前記心拍数に基づき、神経刺激プロトコルを制御するように構成される、
請求項1記載の埋込医療装置。
【請求項6】
前記神経刺激装置は、前記肺動脈圧から前記心拍数を導出するように構成される、
請求項5記載の埋込医療装置。
【請求項7】
前記神経刺激装置は、神経刺激プロトコルを実施するために、
神経刺激を伝達するために制御入力として使用可能な自律健康度をそれぞれ示す第1生理学的パラメータと第2生理学的パラメータを感知し、前記第1生理学的パラメータが前記第2生理学的パラメータよりも鋭い自律健康度の指標を提供するように、前記第1生理学的パラメータと前記第2生理学的パラメータは、前記自律健康度の変化に対する時間応答が互いに異なり、
それぞれ前記時間応答に基づき、前記第1生理学的パラメータと前記第2生理学的パラメータそれぞれを重付けするように、前記第1生理学的パラメータと前記第2生理学的パラメータを用いて総合指数を生成し、
神経刺激の伝達を制御するために総合指数を使用する、
請求項1記載の埋込医療装置。
【請求項8】
前記神経刺激装置は、心拍数パラメータ、インピーダンスパラメータ、および肺動脈圧
パラメータのうちの少なくとも2つの生理学的パラメータを使用することによって、前記総合指数を生成するように構成される、
請求項7記載の埋込医療装置。
【請求項9】
前記電極、前記神経刺激装置、および前記アンカー構造体は、前記肺動脈において肺動脈圧受容器を刺激すべく、標的とした神経刺激を伝達するように構成されている、
請求項1記載の埋込医療装置。
【請求項10】
前記電源は、
充電電池と;
前記充電電池を無線で充電する充電装置と
を有する、
請求項1記載の埋込医療装置。
【請求項11】
前記電極は、前記アンカー構造体に一体形成される、
請求項1記載の埋込医療装置。
【請求項12】
肺動脈内の肺動脈圧受容器を刺激する刺激システムであって、前記刺激システムは:
少なくとも1つの生理学的パラメータを感知するセンサ装置と;
前記肺動脈の肺動脈弁を通って伝達されるように構成された少なくとも1つの肺動脈装置と;
前記生理学的パラメータに応じて神経刺激療法を実施する療法装置と
を有し、
前記肺動脈装置は、
前記肺動脈装置に電力供給する電源と;
前記肺動脈の内部から、自律神経系標的を刺激する刺激装置と;
前記肺動脈内に、少なくとも1つの前記肺動脈装置を、長期的に且つ安全に埋込む埋込装置と
を有することを特徴とする、刺激システム。
【請求項13】
前記刺激システムは更に、
ペーシング治療を行なうペーシング装置と;
反頻脈治療を行なう板頻脈治療装置と;
心臓再同期療法を行なう心臓再同期療法装置と
を有する、請求項12記載の刺激システム。
【請求項14】
前記センサ装置は、前記肺動脈に長期的に埋込まれるように構成された肺動脈圧センサを有する、
請求項12記載の刺激システム。
【請求項15】
前記肺動脈装置は、前記肺動脈圧センサを有する、
請求項14記載の刺激システム。
【請求項16】
前記センサ装置は、心拍数、インピーダンス、心音、呼吸、血流、姿勢、および活動のうちの少なくとも1つを感知する、
請求項12記載の刺激システム。
【請求項17】
前記センサ装置は、前記肺動脈の外部の埋込センサである外部埋込センサを用いることによって、前記生理学的パラメータを感知し、
前記肺動脈装置は、前記肺動脈の内部から、前記外部埋込センサに無線通信する無線装
置を有する、
請求項12記載の刺激システム。
【請求項18】
前記肺動脈装置は、
右肺動脈に埋込まれるように構成された第1肺動脈装置と;
左肺動脈に埋込まれるように構成された第2肺動脈装置と
を含み、
前記第1肺動脈装置と前記第2肺動脈装置は、互いに通信を行なう通信装置をそれぞれ有する、
請求項12記載の刺激システム。
【請求項19】
前記療法装置は、心不全、虚血、不整脈、および高血圧症のうちの少なくとも1つを治療するために、前記肺動脈内の肺動脈圧受容器を刺激する、
請求項12記載の刺激システム。
【請求項20】
前記センサ装置は、神経刺激を伝えるために制御入力として使用可能な自律健康度を示す第1生理学的パラメータと第2生理学的パラメータを感知し、前記第1生理学的パラメータが前記第2生理学的パラメータよりも鋭い自律健康度の指標を提供するように、前記第1生理学的パラメータと前記第2生理学的パラメータは、自律健康度の変更に対する時間応答が互いに異なり、
前記療法装置は、
前記時間応答に基づき、前記第1生理学的パラメータと前記第2生理学的パラメータそれぞれに重付けするように、前記第1生理学的パラメータと前記第2生理学的パラメータを用いて総合指数を生成する指数生成装置と;
神経刺激の伝達を制御するために前記総合指数を用いる刺激制御装置と
を有する、請求項12記載の刺激システム。
【請求項21】
前記療法装置は、配線接続なく前記肺動脈を介して、前記肺動脈内に長期的に埋込まれるために、
前記肺動脈の内部から神経刺激を制御する内部制御装置と、
前記肺動脈の外部から神経刺激を制御する外部制御装置とのうちの一方を有する、
請求項12記載の刺激システム。
【請求項22】
少なくとも1つの生理学的パラメータを感知するパラメータ感知ステップと;
肺動脈弁を介して配線接続を用いることなく肺動脈内に長期的に埋込まれた神経刺激装置を用いて、前記生理学的パラメータに応じて神経刺激療法を実施するように神経標的を刺激する刺激ステップと
を有することを特徴とする、刺激方法。
【請求項23】
前記パラメータ感知ステップは、神経刺激を伝達するために制御入力として使用可能な自律健康度をそれぞれ示す第1生理学的パラメータと第2生理学的パラメータを感知し、前記第1生理学的パラメータが前記第2生理学的パラメータよりも鋭い自律健康度の指標を提供するように、前記第1生理学的パラメータと前記第2生理学的パラメータは、自律健康度の変化に対する時間応答が互いに異なり、
前記刺激ステップは、
前記第1生理学的パラメータと前記第2生理学的パラメータそれぞれの時間応答に基づき、前記第1生理学的パラメータと前記第2生理学的パラメータそれぞれに重付けするように、前記第1生理学的パラメータと前記第2生理学的パラメータを使用することによって総合指数を生成する指数生成ステップと;
神経刺激の伝達を制御するために、前記総合指数を使用する刺激制御ステップと
を有する、請求項22記載の刺激方法。
【請求項24】
前記パラメータ感知ステップは、前記肺動脈の内部から肺動脈圧を感知し、
前記刺激ステップは、肺動脈圧受容器を刺激する、
請求項22記載の刺激方法。
【請求項25】
少なくとも1つの生理学的パラメータを感知する感知ステップと;
神経刺激装置が前記肺動脈内に長期的に埋込まれる場合、感知した生理学的パラメータに応じて神経刺激療法を実施するように、前記肺動脈内に長期的に埋込まれた前記神経刺激装置を用いることによって神経標的を刺激する刺激ステップと
を有する刺激方法であって、
前記パラメータ感知ステップは、
神経刺激を伝達するために制御入力として使用可能な自律健康度をそれぞれ示す第1生理学的パラメータと第2生理学的パラメータを感知し、前記第1生理学的パラメータが前記第2生理学的パラメータよりも鋭い自律健康度の指標を提供するように、前記第1生理学的パラメータと前記第2生理学的パラメータは、自律健康度の変更に対する時間応答が互いに異なり、
前記刺激ステップは:
それぞれの前記時間応答に基づき前記第1生理学的パラメータと前記第2生理学的パラメータそれぞれに重付けするように、前記第1生理学的パラメータと前記第2生理学的パラメータを用いて総合指数を生成する指数生成ステップと;
神経刺激の伝達を制御するために、前記総合指数を使用する刺激制御ステップと
を有することを特徴とする、刺激方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2011−505963(P2011−505963A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537932(P2010−537932)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/013306
【国際公開番号】WO2009/075750
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】