説明

胃腸機能亢進剤

【課題】胃又は腸管の収縮を効果的に増強させて胃腸機能を亢進させることができ、しかも副作用がなく長期にわたって服用できる安全な胃腸機能亢進剤を提供する。
【解決手段】(a)2種以上の乳酸菌、及び(b)アロエ又はその処理物を含有する胃腸機能亢進剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸管収縮の増強作用等の胃腸機能を亢進させる作用を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ストレス、食生活の欧米化、運動不足等によって、便秘、胸やけ、胃もたれ、消化不良等の胃腸機能の障害による症状を訴える人が増加している。例えば、便秘は、多くの現代人を悩ませている不快症状の一つであるだけではなく、肩こり、頭痛、食欲不振などの症状、及び肌荒れなどの美容面における問題の間接的な原因となっている。
【0003】
便秘、胸やけ、胃もたれ、消化不良等の胃腸障害は、胃又は腸の蠕動(ぜんどう)運動が弱いと起こりやすいといわれている。従来より、乳酸菌等の有用菌、アロエ等の植物等に胃腸機能の改善作用があることが知られている。乳酸菌は、腸内菌叢を改善することで、瀉下作用があり、便秘改善に使用されている。また、アロエは、大腸内の水分量を増加させて蠕動運動を起こすことにより瀉下作用があるとされている。
【0004】
特許文献1には、サラシア属植物の抽出物と、抗便秘作用を有する成分または抗下痢作用を有する成分の少なくとも1種とを含有する経口用組成物が開示されている。特許文献2には、アスパラガスから得られる組成物と、メチルメチオニン及び/又はその誘導体、ナイアシン及び/又はその誘導体、ビタミンB2、アロエ、ムチン及び乳酸菌からなる群から選ばれる1又は2以上の物質とを含有する胃腸障害改善・予防作用を有する飲食品が開示されている。特許文献3には、活性炭の表面にアロエエキス等の植物抽出物質類を担持させてなる吸着剤と、整腸物質としてビフィズス菌を含有している排便消臭剤が開示されている。
【0005】
特許文献4には、乳酸菌死菌体及びアロエ等を含有する便秘改善食品が開示されている。特許文献5には、ケール加工品と、乳酸菌、ビフィズス菌、食物繊維、アロエ等から選択される少なくとも1種を配合した便秘改善作用を有する食品が開示されている。特許文献6には、便秘改善作用を有する成分を含有する素材として、乳酸菌、アロエ等が開示されている。特許文献7には、塩化カルニチンを必須とし、アロエ、乳酸菌等を含んでもよい胃排出能の低下を改善する組成物が開示されている。
しかしながら、上記の組成物には、より強い胃腸機能亢進作用を発揮できるようにする工夫の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−215276号公報
【特許文献2】特開2008−19170号公報
【特許文献3】特開2005−247784号公報
【特許文献4】特開2004−81105号公報
【特許文献5】特開2002−204669号公報
【特許文献6】特開2002−51731号公報
【特許文献7】特開平8−259445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、胃又は腸管の収縮を効果的に増強させて胃腸機能を亢進させることができ、しかも副作用がなく長期にわたって服用できる安全な胃腸機能亢進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を重ね、(a)2種以上の乳酸菌と、(b)アロエ又はその処理物とを組合わせて用いると、これらの相乗的な作用により腸管収縮を効果的に増強させることができることを見出した。腸管収縮は、腸管平滑筋の収縮により起こるため、上記(a)2種以上の乳酸菌及び(b)アロエ又はその処理物を用いると、胃、小腸及び大腸等の消化管の平滑筋に作用してその収縮を増強させることができる。すなわち消化管の蠕動運動を活発化させることができる。従って、上記(a)2種以上の乳酸菌及び(b)アロエ又はその処理物を用いると、消化管の収縮を増強させることにより、胃腸機能を亢進させることができる。このような消化管の収縮を増強させる作用を有する組成物を用いると、例えば胃の蠕動運動を活発化させることができるため、胃における消化作用を改善し、さらに胃から食物を腸に送り出しやすくできる。また、腸管収縮を増強させると、腸の動きを活発化させて、優れた便秘解消効果を発揮できることになる。
本発明者らは、上記知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(8)に関する。
(1)(a)2種以上の乳酸菌、及び(b)アロエ又はその処理物を含有することを特徴とする胃腸機能亢進剤。
(2)乳酸菌が、ラクトバシラス(Lactobacillus)属及びストレプトコッカス(Streptococcus)属から選択される2種以上の菌を含む前記(1)に記載の胃腸機能亢進剤。
(3)乳酸菌が、ラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)に属する乳酸菌少なくとも1種、及びストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecalis)に属する乳酸菌少なくとも1種を含む前記(1)又は(2)に記載の胃腸機能亢進剤。
(4)乳酸菌が、ラクトバシラス・アシドフィルス KS−13(Lactobacillus acidophilus KS-13)及びストレプトコッカス・フェーカリス 129 BIO 3B(Streptococcus faecalis 129 BIO 3B)を少なくとも含む前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の胃腸機能亢進剤。
(5)アロエが、ケープアロエ(Aloe ferox Miller)、又はケープアロエ(Aloe ferox Miller)とアロエ アフリカーナ(Aloe africana Miller)若しくはアロエ スピカータ(Aloe spicata Baker)との雑種である前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の胃腸機能亢進剤。
(6)アロエの処理物が、アロエの葉の液汁の乾燥物である前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の胃腸機能亢進剤。
(7)胃腸機能亢進が、腸管収縮増強である前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の胃腸機能亢進剤。
(8)前記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の胃腸機能亢進剤を含む腸管収縮増強剤。
【0010】
本明細書中においては、1984年以前の分類学においてストレプトコッカス(Streptococcus)属と分類されていた乳酸菌を、ストレプトコッカス(Streptococcus)属という(例えば、Schleifer,K.H. and R.Kilpper-Balz. 1984.Int.J.Syst.Bacteriol.34:31-34.参照)。このストレプトコッカス(Streptococcus)属の一部が、現在乳酸菌の分類に使用されている1984年以降の分類学上、エンテロコッカス (Enterococcus)属に分類される乳酸菌となった(例えば、Schleifer,K.H. and R.Kilpper-Balz. 1984.Int.J.Syst.Bacteriol.34:31-34(上記文献と同じ)参照)。例えば、本明細書中に記載されるストレプトコッカス・フェーカリス 129 BIO 3B等のストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecalis)は、現在の分類学上エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)に分類される乳酸菌である。本発明においては、上記ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する乳酸菌として、現在乳酸菌の分類に使用されている1984年以降の分類学上、エンテロコッカス (Enterococcus)属に分類される乳酸菌を用いることが好ましい。
【0011】
本明細書中においては、1980年以前の分類学においてラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)に分類されていた乳酸菌を、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)という(例えば、Lauer,E.and O.Kandler. 1980.Zbl.Bakt.,I.Abt.Orig.C1:75-78.参照)。このラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)の一部が、現在乳酸菌の分類に使用されている1980年以降の分類学上、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)に分類される乳酸菌となった(例えば、Lauer,E.and O.Kandler. 1980.Zbl.Bakt.,I.Abt.Orig.C1:75-78.(上記文献と同じ)参照)。本明細書中に記載されるラクトバシラス・アシドフィルス KS−13(Lactobacillus acidophilus KS-13)等のラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)は、現在の分類学上ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)に分類される乳酸菌である。
【0012】
乳酸菌の分類体系は1980年頃までは細胞形態、細胞配列、乳酸発酵形式、糖の資化性、DNA−DNA相同性などによって分類されていたが、現在では化学分類学的性質や16SrRNA遺伝子の塩基配列を用いた遺伝学的手法により、新規属の提案や既知属の再分類が活発に行われるようになったため、現在の分類学ではストレプトコッカス・フェーカリス 129 BIO 3Bはエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)に、ラクトバシラス・アシドフィルス KS−13(Lactobacillus acidophilus KS-13)はラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)に、それぞれ属している。
【発明の効果】
【0013】
本発明の胃腸機能亢進剤を用いると、消化管の収縮を増強させることができるため、便秘等の胃腸機能障害を効果的に改善することができる。また、本発明の胃腸機能亢進剤は、長期間服用しても副作用がなく安全なものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、4流体ノズルを有する噴霧乾燥装置の一例を示す図である。
【図2】図2は、実施例で用いたマグヌス槽の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の胃腸機能亢進剤は、(a)2種以上の乳酸菌、及び(b)アロエ又はその処理物を含有する。
本発明において用いられるアロエは、生薬に使用されているものであればよい。好ましくは、アロエとして、ケープアロエ(Aloe ferox Miller)、又はケープアロエ(Aloe ferox Miller)とアロエ アフリカーナ(Aloe africana Miller)若しくはアロエ スピカータ(Aloe spicata Baker)との雑種を用いる。
【0016】
アロエの処理物としては、アロエの葉の粉末、アロエ末、アロエの抽出物であるアロエエキス等が挙げられる。好ましくは、アロエ末又はアロエエキスであり、より好ましくは、アロエ末を用いる。アロエ末は、通常、アロエの葉の液汁の乾燥物を粉末としたものであり、例えば、日本薬局方のアロエ末が好適に使用される。アロエエキスは、通常、アロエ末に水等の適当な浸出液を加え、冷浸法、温浸法又はパーコレーション法により一定時間浸出した後、浸出液をろ過し、適当な方法で濃縮又は乾燥することによって得られる。こうして得られたアロエエキスのうち、軟エキス剤は水飴様の稠度とし、乾燥エキス剤は砕くことができる固い塊、粒状又は粉末とされる。
【0017】
アロエは、通常アロエ末として、又はその抽出物であるアロエエキスとして市販品を入手できる。本発明の胃腸機能亢進剤には、アロエ末をそのまま配合してもよく、アロエエキスの形態にて配合してもよい。
【0018】
本発明における乳酸菌は特に限定されず、例えば、ビフィズス菌、乳酸桿菌、乳酸球菌等の乳酸菌から選択される2種以上の菌であればよい。
【0019】
本発明においては使用される乳酸菌は、例えば、Bifidobacterium bifidum、B. longum、 B. breve、B. adolescentis、B. infantis、B.pseudolongum、B.thermophilum等のビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属のビフィズス菌;例えば、Lactobacillus acidophilus、L. casei、L. gasseri、L. plantarum、L. delbrueckii subsp bulgaricus、L. delbrueckii subsp lactis、L. fermentum、L. helveticus、L. johnsonii、L. paracasei subsp. paracasei、L. reuteri、L. rhamnosus、L. salivarius、L. brevis等のラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸桿菌;例えば、Leuconostoc mesenteroides等のリューコノストック属、Streptococcus(Enterococcus) faecalis、Streptococcus(Enterococcus) faecium、 Streptococcus(Enterococcus) hirae、Streptococcus thermophilus等のストレプトコッカス(Streptococcus)属(現在の分類学上、エンテロコッカス (Enterococcus)属に分類される)、Lactococcus lactis、L. cremoris等のラクトコッカス(Lactococcus)属、Tetragenococcus halophilus等のテトラジェノコッカス(Tetragenococcus)属、Pediococcus acidilactici、P. pentosaceus等のペディオコッカス(Pediococcus)属、Oenococcus oeni等のオエノコッカス(Oenococcus)属等の乳酸球菌等が挙げられる。
これらの菌体は、例えばATCC又はIFOなどの機関や財団法人 日本ビフィズス菌センターなどから容易に入手することができる。また、市販されているものを適宜使用することもできる。
【0020】
本発明においては、2種以上の乳酸菌は、ラクトバシラス(Lactobacillus)属及びストレプトコッカス(Streptococcus)属から選択される2種以上の菌を含むことが好ましい。上述したように、ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する乳酸菌は、好ましくは、現在乳酸菌の分類に使用されている1984年以降の分類学上、エンテロコッカス (Enterococcus)属に分類される乳酸菌である。より好ましくは、ラクトバシラス(Lactobacillus)属から選択される少なくとも1種の乳酸菌、及びストレプトコッカス(Streptococcus)属から選択される少なくとも1種の乳酸菌を用いる。ラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸菌として、ラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)が好ましい。ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌として、ストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecalis)が好ましい。本発明における乳酸菌は、ラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)に属する乳酸菌少なくとも1種、及びストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecalis)に属する乳酸菌少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。さらに、ラクトバシラス・アシドフィルス KS−13(Lactobacillus acidophilus KS-13)及びストレプトコッカス・フェーカリス 129 BIO 3B(Streptococcus faecalis 129 BIO 3B)の2種を必須として用いるのが最も好ましい。
【0021】
本発明の効果を奏することになる限り、上記乳酸菌以外に、糖化菌、酪酸菌等の有用菌を含んでもよい。例えば、Bacillus subtilis、Bacillus mesentericus、Bacillus polyformenticus等の糖化菌;例えば、Bacillus coagulans等の有胞子性乳酸菌; Bacillus toyoi、B.licheniformis、Clostridium butyricum等の酪酸菌;その他の有用菌が挙げられる。
これらの菌体は、例えばATCC又はIFOなどの機関や財団法人 日本ビフィズス菌センターなどから容易に入手することができる。また、市販されているものを適宜使用することもできる。
【0022】
上記菌体は、公知の条件又はそれに準じる条件で培養することにより得ることができる。例えば、乳酸菌の場合は、通常、グルコ−ス、酵母エキス、及びペプトン等を含む液体培地で上記乳酸菌の1種又は2種以上を通常約25〜45℃程度で約4〜72時間程度、好気又は嫌気培養し、培養液から菌体を集菌し、洗浄し、湿菌体を得る。また、糖化菌の場合は、通常、肉エキス、カゼイン製ペプトン、塩化ナトリウム等を含む寒天培地で1種又は2種以上を通常約25〜45℃程度で約4〜72時間程度、好気培養し、培地から菌体を集菌し、洗浄し、湿菌体を得る。
【0023】
本発明において用いる乳酸菌は、生菌が好ましいが、菌の処理物を用いてもよい。菌の処理物とは、乳酸菌に何らかの処理を加えたものをいい、その処理は特に限定されない。該処理物として具体的には、該菌体の超音波などによる破砕液、該菌体の培養液又は培養上清、それらを濾過又は遠心分離など固液分離手段によって分離した固体残渣などが挙げられる。また、細胞壁を酵素又は機械的手段により除去した処理液、トリクロロ酢酸処理又は塩析処理などして得られるタンパク質複合体(タンパク質、リポタンパク質、糖タンパク質など)又はペプチド複合体(ペプチド、糖ペプチド等)なども該処理物として挙げられる。さらに、これらの濃縮物、これらの希釈物又はこれらの乾燥物なども該処理物に含まれる。また、該菌体の超音波などによる破砕液、該細胞の培養液又は培養上清などに対し、例えば各種クロマトグラフィーによる分離などの処理をさらに加えたものも本発明における該処理物に含まれる。乳酸菌の死菌体も本発明における該処理物に含まれる。上記死菌体は、例えば、酵素処理、約100℃程度の熱をかける加熱処理、抗生物質などの薬物による処理、ホルマリンなどの化学物質による処理、γ線などの放射線による処理などにより得ることができる。
【0024】
本発明において使用される乳酸菌は、乾燥物(菌体乾燥物)であってもよく、菌体乾燥物としては、シングルミクロンの菌体乾燥物が好ましい。菌体乾燥物とは、通常は乾燥された個々の菌体又は乾燥された菌体の集合物をいう。また、シングルミクロンとは、小数第1位を四捨五入して1〜10μmをいう。本発明に使用される乳酸菌として、シングルミクロンの菌体乾燥物を使用すると、製剤中の生菌率が上がるため、腸管収縮増強作用等が高まる結果、胃腸機能の亢進作用が高くなる。
【0025】
菌体乾燥物の好ましい製造方法について説明する。上記菌体を溶媒に分散して菌体液とする。溶媒は、当業界で用いられる公知の溶媒を用いてよいが、水が好ましい。また、所望によりエタノールを加えてよい。エタノールを加えることによって、最初にエタノールが気化し、ついで水が気化するから、段階的な乾燥が可能となる。さらに、菌体液は、懸濁液であってもよい。溶媒は上記で示したものと同じでよい。また、懸濁させる際、懸濁剤、例えばアルギン酸ナトリウム等を使用してもよい。
また、上記菌体液には、さらに保護剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、又は静電気防止剤など当業界で一般に用いられている添加剤を通常の配合割合で添加してもよい。
【0026】
上記菌体液を、菌体乾燥物を製造するために噴霧乾燥装置による乾燥操作に付する。噴霧乾燥装置は、シングルミクロンの噴霧液滴を形成できる微粒化装置を備えた噴霧乾燥装置が好ましい。非常に粒径の小さな噴霧液滴にすると、噴霧液滴の単位質量あたりの表面積が大きくなり、乾燥温風との接触が効率よく行われるため、生産性が向上する。
ここでシングルミクロンの液滴とは、噴霧液滴の粒径が小数第1位を四捨五入して1〜10μmであるものをいう。
【0027】
噴霧乾燥装置には、微粒化装置が、例えばロータリーアトマイザー(回転円盤)、加圧ノズル、又は圧縮気体の力を利用した2流体ノズルや4流体ノズルである噴霧乾燥装置が挙げられる。
噴霧乾燥装置は、シングルミクロンの噴霧液滴を形成できるものであれば、上記形式のいずれの噴霧乾燥装置であってもよいが、4流体ノズルを有する噴霧乾燥装置を使用するのが好ましい。
【0028】
4流体ノズルを有する噴霧乾燥装置では、4流体ノズルの構造としては、気体流路と液体流路とを1系統として、これを2系統ノズルエッジにおいて対称に設けたもので、ノズルエッジに流体流動面となる斜面を構成している。
また、ノズルエッジの先端の衝突焦点に向かって、両サイドから圧縮気体と液体を一点に集合させる外部混合方式の装置がよい。この方式であれば、ノズル詰まりがなく長時間噴霧することが可能となる。
【0029】
4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置について図1を用いてさらに詳しく説明する。4流路ノズルのノズルエッジにおいて、液体流路3又は4から湧き出るように出た菌体液が、気体流路1又は2から出た高速気体流により流体流動面5で薄く引き伸ばされ、引き伸ばされた液体はノズルエッジ先端の衝突焦点6で発生する衝撃波で微粒化させることにより、シングルミクロンの噴霧液滴7を形成する。
【0030】
圧縮気体としては、例えば、空気、炭酸ガス、窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガス等を用いることができる。とくに、酸化されやすいもの等を噴霧乾燥させる場合は、炭酸ガス、窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガスを用いるのが好ましい。
圧縮気体の圧力としては、通常約1〜15kg重/cm、好ましくは約3〜8kg重/cmである。
ノズルにおける気体量は、ノズルエッジ1mmあたり、通常約1〜100L/分、好ましくは約10〜20L/分である。
【0031】
通常、その後、乾燥室において、その噴霧液滴に乾燥温風を接触させることで水分を蒸発させ菌体乾燥物を得る。
乾燥室の入り口温度は、通常約2〜400℃、好ましくは約5〜250℃、より好ましくは約5〜150℃である。入り口温度が約200〜400℃の高温であっても、水分の蒸発による気化熱により乾燥室内の温度はそれほど高くならず、また、乾燥室内の滞留時間を短くすることにより、生菌の死滅や損傷をある程度抑えることができる。
出口温度は、通常約0〜120℃、好ましくは約5〜90℃、より好ましくは約5〜70℃である。
【0032】
4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置では、液体流路が2流路あるので、異なった2種の菌体液又は菌体液と他の溶液若しくは懸濁液をそれぞれの液体流路から、同時に噴霧することにより、これらが混合された菌体乾燥物を製造できる。
例えば、異なった2種類の菌体の菌体液を同時に噴霧することにより、該2種の菌体を含有する菌体乾燥物が得られる。
【0033】
上記のように菌体乾燥物の粒径を小さくすることにより、生菌率が上がり、生菌率の多い製剤を提供できるという利点がある。
すなわち、シングルミクロンの菌体乾燥物を得るためにはシングルミクロンの噴霧液滴を噴霧するのが好ましい。噴霧液滴の粒径を小さくすると、噴霧液滴の単位質量あたりの表面積が大きくなるので、乾燥温風との接触が効率よく行われ、乾燥温風の熱による菌体の死滅又は損傷を極力抑えることができる。その結果として、生菌率が上がり生菌数の多い菌体乾燥物が得られる。
【0034】
本発明の胃腸機能亢進剤は、(a)2種以上の乳酸菌、及び(b)アロエ又はその処理物と、他の成分とを混合することにより容易に製造される。他の成分は、本発明の効果を奏する限り特に限定されない。本発明の胃腸機能亢進剤は、医薬品、医薬部外品、飲食品、飼料等の形態として用いることができる。このような、本発明の胃腸機能亢進剤を含む医薬品も、本発明の1つである。
【0035】
本発明の胃腸機能亢進剤の剤形は、それぞれの成分の物理化学的性質、生物学的性質等を考慮して投与に好適な剤形とすればよい。医薬品の場合には、経口投与に適しており、内服剤とすることが好ましい。内服剤の剤型としては、例えば、錠剤、ペレット、細粒剤、散剤、顆粒剤、丸剤、チュアブル剤、トローチ剤、液剤、懸濁剤等が挙げられる。中でも、錠剤又は散剤が好ましい。さらに、本発明の胃腸機能亢進剤は、(a)2種以上の乳酸菌、及び(b)アロエ又はその処理物の他に、賦形剤(例えば、乳糖、デンプン、結晶セルロース又はリン酸ナトリウム等)、結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(例えばデンプン、カルメロースナトリウム等)、滑沢剤(例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、マクロゴール、ショ糖脂肪酸エステル等)、安定剤(亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン等)、着色剤、賦香剤、光沢剤等、当業界で使用される公知の添加剤等を適宜含有していてもよい。製剤中に含まれる2種以上の乳酸菌の合計量は、通常、最終製剤中に約0.000001〜99質量%の範囲から適宜選択して決定することができる。製剤中に含まれるアロエ又はその処理物の量は、通常、最終製剤中に約0.0001〜99質量%の範囲から適宜選択して決定することができる。
【0036】
(a)2種以上の乳酸菌、及び(b)アロエ又はその処理物を含有する組成物の調製は、製剤の常法によって成分を混合し、製造することができる。その場合、該組成物における(a)2種以上の乳酸菌、及び(b)アロエ又はその処理物の配合比率は、(b)アロエ又はその処理物の質量1に対し、(a)2種以上の乳酸菌の合計を、生菌の菌数にして約4×10〜2×10個とすることが好ましく、約4×10〜1×10個とすることがより好ましい。2種以上の乳酸菌において、各乳酸菌の配合比率は特に限定されない。例えば、ラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)及びストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecalis)を用いる場合には、ラクトバシラス・アシドフィルスの生菌数1に対して、ストレプトコッカス・フェーカリスを生菌数で0.001〜1000個程度用いることが好ましく、ラクトバシラス・アシドフィルスの生菌数1に対して、ストレプトコッカス・フェーカリスを生菌数で0.1〜10個程度用いることがより好ましい。
【0037】
なお、乳酸菌は、一般に嫌気性で乾燥状態では空気又は酸素に対して弱く、また、高温と湿気に弱いため、組成物の製剤化に際してはできるだけ、不活性ガスの存在下又は真空、低温下で、処理することが好ましい。
【0038】
(a)2種以上の乳酸菌、及び(b)アロエ又はその処理物を含有する組成物を固形製剤にする場合、乾燥法によって、単に粉末同士を混合してもよいし、またその粉末を圧縮して顆粒にしたり、錠剤にしたりしてもよい。湿式法により顆粒、錠剤を製造する場合は、結合剤の水溶液を用いて練合、乾燥し、目的の固形剤とすることができる。さらに、この様にして得られた粉末又は顆粒をカプセルに充填して、カプセル剤とすることもできる。
【0039】
例えば、錠剤を製造する場合は、公知の打錠機を用いるとよい。該打錠機としては、例えば単発式打錠機又はロータリー型打錠機等が挙げられる。また、丸剤、チュアブル剤又はトローチ剤の製造方法は、公知の方法に従って行われてよく、例えば錠剤を製造するのと同じ手段で作ることができる。
【0040】
微量の有効成分(2種以上の乳酸菌、及びアロエ又はその処理物)を大量の他の粉末と混合し均一な混合物を得るためには、いわゆる段階的混合法を採るのがよい。例えば、有効成分をその100〜200容量倍の粉末と混合して均一な粉末を得、これを残りの粉末と混合すると均一な粉末を得ることができる。
含水物からの乾燥には、L−乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥などの手段をとることができる。乳酸菌の乾燥菌体を得るには、適当な安定剤、例えばグルタミン酸モノナトリウム塩、アドニトールなどを加えた中性の緩衝液に菌を懸濁させておき、自体公知の方法で乾燥することもできる。
【0041】
本発明において、2種以上の乳酸菌の投与量は、生菌を用いる場合には、それぞれの乳酸菌につき、生菌の菌数にして通常約10〜1012個/大人/回、好ましくは10〜1010個/大人/回、より好ましくは10〜1010個/大人/回である。各菌ごとにこの量を、通常1日2〜4回、好ましくは食前約1時間〜食後約2時間の間に、アロエ又はその処理物と共に経口投与するのが効果的である。ここで、製剤中の生菌数の測定は菌体によって異なるが、例えば日本薬局方外医薬品規格に記載されたそれぞれの菌体の定量方法により容易に測定できる。
【0042】
本発明において、アロエ又はその処理物の投与量は、アロエ末の量として、通常約5〜380mg/大人/回、好ましくは約5〜250mg/大人/回、より好ましくは約10〜250mg/大人/回である。アロエ又はその処理物の投与量は、例えばアロエエキスを使用する場合には、アロエエキスの製造に用いられたアロエ末の量とする。
【0043】
本発明の胃腸機能亢進剤は、中でも、消化管収縮の増強、特に腸管収縮の増強に好適に用いられる。
本発明の胃腸機能亢進剤は、例えば、胃腸機能障害又は胃腸機能の低下により生じる症状のある個体(動物)に好適に適用することができる。また、本発明の胃腸機能亢進剤は、副作用がなく安全であることから、予防目的で長期間投与することもできる。このため、上記胃腸機能障害又は胃腸機能の低下により生じる症状を発症した個体だけでなく、健常な個体、該症状を発症するおそれのある個体(動物)等にも好適に適用することができる。中でも、上記胃腸機能障害又は胃腸機能の低下により生じる症状を発症した個体に特に好適に適用される。
胃腸機能障害及び胃腸機能の低下により生じる症状としては特に限定されず、便秘、胃もたれ、胸やけ、消化不良、腹部膨満感、腹痛、酸逆流、硬便、残便感等が挙げられる。中でも、便秘に好適に適用される。個体としてはヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等の哺乳類が好ましく、特にヒトが好ましい。
【0044】
本発明の胃腸機能亢進剤は、(a)2種以上の乳酸菌と、(b)アロエ又はその処理物との併用によって、胃、小腸、大腸等の消化管の収縮等を効果的に増強できるものであるため、胃腸機能障害の予防、改善又は治療に有効なものであり、投与の方法も簡単で、しかも副作用がほとんどないものである。
【0045】
本発明の胃腸機能亢進剤は、腸管収縮増強剤、又は便秘改善剤として好適に使用すすることができるものである。
本発明の胃腸機能亢進剤を含む腸管収縮増強剤も、本発明の1つである。本発明の胃腸機能亢進剤を含む便秘改善剤も、本発明の1つである。
本発明の腸管収縮増強剤及び便秘改善剤の好ましい態様等は、上述した胃腸機能亢進剤と同じである。
【0046】
本発明の胃腸機能亢進剤は、上述した医薬品として用いることができるほか、機能性食品、特定保健用食品又はドリンク剤などの飲食品として用いることができるものである。本発明の胃腸機能亢進剤を含む胃腸機能亢進用飲食品組成物、腸管収縮増強用飲食品組成物、及び便秘改善用飲食品組成物も、本発明の1つである。本発明に係る飲食品組成物を、便秘等の胃腸機能の低下若しくは胃腸機能障害を発症した、又はそのおそれのあるヒトを含む哺乳動物に摂取させることにより、胃腸機能を亢進させて該症状を予防又は改善することができる。飲食品組成物中に含まれる2種以上の乳酸菌の合計量は、通常、最終組成物中に約0.000001〜99質量%の範囲から適宜選択して決定することができる。飲食品組成物中に含まれるアロエ又はその処理物の量は、通常、最終組成物中に約0.0001〜99質量%の範囲から適宜選択して決定することができる。
【0047】
本発明の胃腸機能亢進剤を飲食品組成物として用いる場合、その形態は特に限定されない。また、飲食品組成物は、自然流動食、半消化態栄養食若しくは成分栄養食、又はドリンク剤等の加工形態とすることもできる。さらに、本発明にかかる飲食品組成物は、アルコール飲料又はミネラルウォーターに用時添加する易溶性製剤としてもよい。より具体的には、本発明に係る飲食品組成物は、例えばビスケット、クッキー、ケーキ、キャンディー、チョコレート、チューインガム、和菓子などの菓子類;パン、麺類、米飯又はその加工品;清酒、薬用酒などの発酵食品;ヨーグルト、ハム、ベーコン、ソーセージ、マヨネーズなどの畜農食品;果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、茶などの飲料等の形態とすることができる。
【0048】
また、本発明に係る飲食品組成物は、例えば、医師の食事箋に基づく栄養士の管理の下に、病院給食の調理の際に任意の食品に本発明の飲食品組成物を加え、その場で調製した食品の形態で患者に与えることもできる。本発明の飲食品組成物は、液状であっても、粉末や顆粒などの固形状であってもよい。
【0049】
本発明に係る飲食品組成物は、食品分野で慣用の補助成分を含んでいてもよい。上記補助成分としては、例えば乳糖、ショ糖、液糖、蜂蜜、ステアリン酸マグネシウム、オキシプロピルセルロース、各種ビタミン類、微量元素、クエン酸、リンゴ酸、香料、無機塩などが挙げられる。
【0050】
本発明に係る飲食品組成物の摂取量は、摂取する哺乳動物の生活習慣病の状態、年齢、性別などによって異なるので、一概には言えないが、(a)2種以上の乳酸菌、及び(b)アロエ又はその処理物を、それぞれ上述した医薬品の場合と同様の量摂取させることが好ましい。
【実施例】
【0051】
以下実施例を示してさらに詳しく説明を行うが、本発明はこれによりなんら制限されるものではない。本実施例中、「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
【0052】
<実施例1>
(乳酸菌菌体乾燥物の調製及び該菌体乾燥物中の生菌数の測定)
1.菌(3B:Streptococcus faecalis 129 BIO 3B)の調製方法
3Bの菌体乾燥物の調製は以下のように行った。すなわち、3Bの凍結保存菌株(ビオフェルミン製薬社保存菌株)を37℃で24時間静置培養後、ラクトミン試験用液体培地(2)(日本薬局方外医薬品規格「ラクトミン」の項に記載)にこの培養菌液をラクトミン試験用液体培地(2)100に対して1の割合(容量比)で接種し、37℃で18時間静置培養した。得られた培養菌液を遠心分離し、水で3回洗浄後、適量の水を加え、湿菌体1kgに対し、グルタミン酸塩0.1kg及びデキストリン0.5kgの割合で加えて噴霧乾燥装置にて菌体乾燥物とした。なお、3B株は、医療用医薬品のビオフェルミン配合散(商品名、ビオフェルミン製薬社製)等の成分として含まれており、該散剤等から通常行われる方法で精製することによって入手可能である。
【0053】
上記ラクトミン試験用液体培地(2)は、日本薬局方外医薬品規格「ラクトミン」の項に記載された方法に従い、下記の成分を混合し、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で15分間加熱して滅菌して調製した。
酵母エキス 5g
カゼイン製ペプトン 20g
ブドウ糖 20g
肉エキス 15g
トマトジュース 200mL
ポリソルベート80 3g
L−塩酸システイン 1g
精製水 800mL
pH 6.8±0.1
トマトジュースは、トマトジュースに等量の精製水を加え、時々かき混ぜながら煮沸した後、pHを6.8に調整し、ろ過したものを使用した。
【0054】
2.菌体乾燥物中の生菌数の測定
日本薬局方外医薬品規格「ラクトミン」の項に記載されているラクトミンの定量法に準じて測定した。すなわち、菌体乾燥物5gを精密に量り、希釈液(2)30mL中に加え、強く振り混ぜ、更に同希釈液を加えて正確に50mLとし、よく振り混ぜ、この菌液1mLを正確に量り、別に正確に分注した同希釈液9mL中に加える操作(10倍希釈法)を繰り返し、1mL中の生菌数が20〜200個となるよう希釈した。この液1mLをペトリ皿にとり、ここに50℃に保ったラクトミン試験用カンテン培地(2)を20mL加えてすばやく混和し、固化させた。これを37℃で24〜48時間好気培養し、出現したコロニー数及び希釈倍率から菌体乾燥物中の生菌数を求めた。これにより求めた上記1.で得られた菌体乾燥物の菌数は、生菌数6.4×1011CFU/gであった。
【0055】
実施例中で用いた希釈液(2)の調製方法を、以下に示す。
希釈液(2)の調製方法
日本薬局方外医薬品規格「ラクトミン」の項に記載された方法に従い、下記の成分を混合し、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で15分間加熱して滅菌して調製した。
無水リン酸一水素ナトリウム 6.0g
リン酸二水素カリウム 4.5g
ポリソルベート80 0.5g
L−塩酸システイン 0.5g
カンテン 1.0g
精製水 1000mL
pH 6.8〜7.0
【0056】
上記ラクトミン試験用カンテン培地(2)は、上記ラクトミン試験用液体培地(2)にカンテン20gを加え、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で15分間加熱して滅菌して調製した。
【0057】
<実施例2>
(乳酸菌菌体乾燥物の調製及び該菌体乾燥物中の生菌数の測定)
1.菌(LA:Lactobacillus acidophilus KS-13)の調製方法
LAの菌体乾燥物の調製は以下のように行った。すなわち、LAの凍結保存菌株(ビオフェルミン製薬社保存菌株)を37℃で24時間静置培養後、ラクトミン試験用液体培地(2)にこの培養菌液をラクトミン試験用液体培地(2)100に対して1の割合(容量比)で接種し、37℃で18時間静置培養した。得られた培養菌液を遠心分離し、水で3回洗浄後、適量の水を加え、湿菌体1kgに対し、グルタミン酸塩0.1kg及びデキストリン0.5kgの割合で加えて噴霧乾燥装置にて菌体乾燥物とした。なお、LA株は、一般用医薬品の新ビオフェルミンS錠(商品名、ビオフェルミン製薬社製)等の成分として含まれており、該錠剤等から通常行われる方法で精製することによって入手可能である。
【0058】
2.菌体乾燥物中の生菌数の測定
日本薬局方外医薬品規格「ラクトミン」の項に記載されているラクトミンの定量法に準じて測定した。すなわち、菌体乾燥物5gを精密に量り、希釈液(2)30mL中に加え、強く振り混ぜ、更に同希釈液を加えて正確に50mLとし、よく振り混ぜ、この菌液1mLを正確に量り、別に正確に分注した同希釈液9mL中に加える操作(10倍希釈法)を繰り返し、1mL中の生菌数が20〜200個となるよう希釈した。この液1mLをペトリ皿にとり、ここに50℃に保ったラクトミン試験用カンテン培地(2)を20mL加えてすばやく混和し、固化させた。これを37℃で24〜48時間好気培養し、出現したコロニー数及び希釈倍率から菌体乾燥物中の生菌数を求めた。これにより求めた上記1.で得られた菌体乾燥物の菌数は、生菌数6.8×1011CFU/gであった。
【0059】
<実施例3>
(乳酸菌及びアロエ併用による腸管収縮増強作用)
アロエとしてアロエ末(日本粉末薬品社製)を、乳酸菌として実施例1及び2の方法によって得た3B及びLAの菌体乾燥物を用いた。
【0060】
雄性SDラットを8週齢で購入後(日本SLCより購入)、室温22±5℃、湿度55±5%、12時間周期の照明(7:00〜19:00)条件下で、固形飼料(CE−2:日本クレア社製)及び上水道を自由に摂取させ飼育した。1週間以上予備飼育を行い、体重300〜400gのラットを試験に使用した。
【0061】
ラットを麻酔下で放血致死後、直ちに開腹し結腸下部を摘出した。腸内容物、周囲に付着している脂肪及び外膜を除去し1.5 cmの管状標本を作製した。
10mL容量のマグヌス槽に予め37℃に加温したTyrode液(NaCl(8.0g/L)、KCl(0.2g/L)、MgCl(0.1g/L)、CaCl(0.2g/L)、NaHCO(1.0g/L)、NaHPO(0.05g/L)、glucose(1.0g/L))10mLを充填し、これに摘出標本を1gの負荷のもとにアイソメトリックトランスドューサー(FD−ピックアップTB−611T、日本光電社製)に図2に示すように懸垂した。標本の腸管運動はアンプ(AD−632J、日本光電社製)を介してレコーダー(WT645G、日本光電社製)で記録した。標本は、37℃、通気下で1時間以上平衡化を行った。この間約20分毎にTyrode液の交換を行った。平衡化後、安定したところで検体をマグヌス槽に添加した。
【0062】
実施例で用いたマグヌス槽の構造を示す模式図を、図2に示す。マグヌス槽11は、気体供給部12、環流水供給口14及び環流水排出口19、並びに、輸液注入口16及び輸液排出口21を備える。
気体供給部12から空気13がマグヌス槽中のTyrode液23に供給される。環流水供給口14から、マグヌス槽内の温度を保つための環流水15が供給され、マグヌス槽を環流した水20は、環流水排出口19から排出される。実施例においては、環流水供給口14から37℃の水15を供給した。輸液注入口16からTyrode液17が管内に注入される。輸液排出口21から、実験に使用されたTyrode液(modified Tyrode液)22が排出される。Tyrode液23内に懸垂した管状標本24が収縮すると、矢印18の方向に設置されたアイソメトリックトランスドューサー(FD−ピックアップTB−611T、日本光電社製)によって収縮の強度が検出される。
【0063】
検体として、アロエは、160mg/mLとなるようにメタノールで溶解したアロエ溶液を用いた。乳酸菌は、測定した生菌数を基にして菌が2.5×1010cfu/mLとなるようにTyrode液で懸濁し、37℃で30分間加温したものを用いた。なお、2種の乳酸菌を用いる場合は、それぞれの懸濁液を等量ずつ混合して用いた。また、アセチルコリンは、10−6M及び10−5MとなるようにTyrode液に溶解して用いた。なお、各検体の添加量として、アロエ溶液は、15μL、乳酸菌懸濁液及びアセチルコリンは、それぞれ100μLをマグヌス槽中に充填されているTyrode液10mLに添加した。すなわち、マグヌス槽中の各検体の濃度は、アロエ0.24mg/mL、乳酸菌2.5×10cfu/mL、アセチルコリン10−8M及び10−7Mとなる。また、処置する検体の濃度及び組合せは以下の(i)〜(ix)に従い、実施した。
【0064】
(i)アロエ(0.24mg/mL)
(ii)LA(2.5×10cfu/mL)
(iii)3B(2.5×10cfu/mL)
(iv)LA(1.25×10cfu/mL)+3B(1.25×10cfu/mL)
(v)アロエ(0.24mg/mL)+LA(2.5×10cfu/mL)
(vi)アロエ(0.24mg/mL)+3B(2.5×10cfu/mL)
(vii)アロエ(0.24mg/mL)+LA(1.25×10cfu/mL)+3B(1.25×10cfu/mL)
(viii)アセチルコリン(10−8M)
(ix)アセチルコリン(10−7M)
【0065】
上記(i)〜(ix)に従い、検体を処置した場合の標本の腸管運動の評価は、レコーダーに記録した波形より示される検体添加後1分間の最大張力、すなわち腸管収縮強度を用いた。
【0066】
(結果)
摘出ラット結腸下部に(i)〜(ix)を処置した場合の腸管運動の波形及び検体添加後1分間の最大腸管収縮力として張力(g)を表1に示した。表1から明らかなように、アロエをマグヌス槽に添加することにより腸管収縮作用が認められた。また、乳酸菌(LA、3B及びLA+3B)においても腸管収縮作用が認められた。さらに、これらアロエと乳酸菌を併用して添加した場合、併用することにより強い腸管収縮作用が認められ、この反応は乳酸菌が1種の場合より2種の場合の方が、腸管収縮作用が強い結果となった。さらに、表1に示した張力(g)の値から腸管収縮強度を比較すると、アロエ及び2種の乳酸菌を併用して添加した場合の腸管収縮力の増強は、相乗的な効果であることが認められた。またアロエと乳酸菌併用による腸管収縮反応は、副交感神経を刺激することにより排便を促進するアセチルコリンによる腸管収縮と同程度の反応であった。以上の結果より、アロエと少なくとも2種以上の乳酸菌を併用することにより腸管収縮作用が増強し、排便促進につながることが示された。
また、腸管収縮は、腸管平滑筋の収縮により起こるため、アロエ及び2種の乳酸菌を用いると、平滑筋に作用してその収縮を増強させると考えられる。従って、アロエ及び2種の乳酸菌を用いると、胃、小腸、大腸等の消化管の収縮を増強させ、胃腸機能を亢進させることができる。
【0067】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の胃腸機能亢進剤は、便秘、消化不良、胃もたれ、消化不良等の胃腸機能障害又は胃腸機能の低下により生じる症状の予防又は改善に有用である。
【符号の説明】
【0069】
1、2 圧縮気体が供給される気体流路
3、4 被乾燥体を含む液体が供給される液体流路
5 流体流動面
6 衝突焦点
7 噴霧液滴
11 マグヌス槽
12 気体供給部
13 空気
14 環流水供給口
15 水(環流水)
16 輸液注入口
17 Tyrode液
18 矢印
19 環流水排出口
20 水(環流水)
21 輸液排出口
22 Modified Tyrode液
23 Tyrode液
24 管状標本

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)2種以上の乳酸菌、及び(b)アロエ又はその処理物を含有することを特徴とする胃腸機能亢進剤。
【請求項2】
乳酸菌が、ラクトバシラス(Lactobacillus)属及びストレプトコッカス(Streptococcus)属から選択される2種以上の菌を含む請求項1に記載の胃腸機能亢進剤。
【請求項3】
乳酸菌が、ラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)に属する乳酸菌少なくとも1種、及びストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecalis)に属する乳酸菌少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載の胃腸機能亢進剤。
【請求項4】
乳酸菌が、ラクトバシラス・アシドフィルス KS−13(Lactobacillus acidophilus KS-13)及びストレプトコッカス・フェーカリス 129 BIO 3B(Streptococcus faecalis 129 BIO 3B)を少なくとも含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の胃腸機能亢進剤。
【請求項5】
アロエが、ケープアロエ(Aloe ferox Miller)、又はケープアロエ(Aloe ferox Miller)とアロエ アフリカーナ(Aloe africana Miller)若しくはアロエ スピカータ(Aloe spicata Baker)との雑種である請求項1〜4のいずれか一項に記載の胃腸機能亢進剤。
【請求項6】
アロエの処理物が、アロエの葉の液汁の乾燥物である請求項1〜5のいずれか一項に記載の胃腸機能亢進剤。
【請求項7】
胃腸機能亢進が、腸管収縮増強である請求項1〜6のいずれか一項に記載の胃腸機能亢進剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の胃腸機能亢進剤を含む腸管収縮増強剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−126700(P2012−126700A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282276(P2010−282276)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(391015351)ビオフェルミン製薬株式会社 (6)
【Fターム(参考)】