説明

胆汁排泄感受性の候補化合物のスクリーニング方法

【課題】胆汁排泄感受性の候補化合物をスクリーニングする方法の提供。
【解決手段】肝細胞の培養物であって、少なくとも1個の毛細胆管を有する培養物を提供すること;当該培養物に対し候補化合物をさらすこと;および少なくとも1個の毛細胆管中の候補化合物の量であって、候補化合物の胆汁排泄感受性を示す少なくとも1個の毛細胆管の候補化合物の量の測定することをステップに含む。所望により、肝細胞の培養物は、サンドイッチ配置の長期培養物である。当該方法は、一度の労力で複数の候補化合物のスクリーニングに好ましくは適用し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の情報
本出願は、1999年3月17日提出の米国仮特許出願60/124,810(その開示は引用によりすべてこの文書に加える)の利益および優先権を主張する。
【0002】
許可書
本発明は、National Institute of Healthからの研究費GM41935の下での、政府支援の一部を用いて完成された。
【0003】
技術分野
本発明は、胆汁排泄感受性な治療剤として主に使用の候補化合物をスクリーニングする方法に関する。より特に、本発明は、胆汁排泄感受性な候補化合物をスクリーニングするインビトロの方法に関する。化合物はヒトおよび他の恒温脊椎動物への投与用の治療剤としての使用のため選択され得る。
【0004】
略語の表
【表1】

【背景技術】
【0005】
背景技術
初回通過代謝は、肝臓へと導く門脈の血液供給(portal blood supply)の治療剤、薬物または他の化合物の吸収に関係する。薬物を飲み込むと、胃および小腸で吸収され、その後、肝臓に入る門脈への血液中に流れ込む。次いで、その肝臓は、肝臓の血液供給(liver blood supply)を通して高濃度の薬物を急速に吸収し代謝する。そのため、多量の薬物が、体循環または薬物作用部位で見られるということはあり得ない。加えて、初回通過代謝経路を通じた急速代謝は、高血漿濃度の不要な代謝産物を形成する。
【0006】
そのため、肝臓では、治療組成物が、しばしば望ましくなくは、動物の循環系から取り除かれる。それらは、肝細胞(肝臓の細胞)により取り込まれ、毛細胆管を通して胆汁中に排泄される。肝細胞中への取り込みは、NtcpおよびcMOATを含む、肝細胞に内在性の輸送系により仲介される。その輸送体は、肝細胞のシヌソイド膜を通して、治療組成物のような生体異物および内在性化合物を移動させる。毛細胆管は、肝細胞からの排泄成分を受け入れ、動物からの除去のための通常の胆管に胆汁を輸送する肝臓組織内の構造である。そのため、基質の胆汁排泄は、シヌソイド膜を通過する移動、細胞質を通過する移動、および細管膜を通過する輸送を含む複合過程である。
【0007】
コンビナトリアル化学技術の進歩により、治療剤としての可能性を有する究極的に多数の化合物の同定が可能となった。しかし、肝細胞による吸収の可能性の低い候補化合物を迅速に同定し得る、胆汁排泄感受性および毛細胆管を通じた排泄感受性のアッセイは、合成および薬理学的活性のスクリーニングのペースよりも遅れる。多くのインビボ(例えば、動物にキャニュレートした胆管)およびインビトロ製剤(例えば、単離潅流細胞、単離肝細胞、肝細胞カプレット、肝臓血漿膜小胞(liver plasma membrane vesicles)および発現化輸送タンパク質)を用い、胆汁排泄過程を調査する。例えば、Oude Elferink et al., Biochim Biophys. Acta 1241:215-268, 1995参照。
【0008】
更に、短期間(3−8時間)培養物の肝細胞カプレットを用い、GrafおよびBoyer J. Hepatol. 10: 387-394, 1990により記載されたように、蛍光顕微鏡を用いる蛍光化合物の胆汁排泄が直接検査される。しかし、生体異物の胆汁排泄を研究するための培養した肝細胞カプレットの適用は、基質が蛍光発色団を含まなければならない点で制限される。
【0009】
長期間(典型的には24時間を超える)培養物の肝細胞は、細管様構造の方向性を修復すると報告されている。例えば、Barth and Schwarz, Proc. Natl. Acad. Sci. 79: 4985-4987, 1982; Maurice et al., J. Cell Sci 90: 79-92, 1988; Talamini et al., Hepatology 25: 167-172, 1997参照。通常の培養物条件で維持される一次肝細胞(primary hepatocyte)が薬物代謝および肝細胞毒性の研究に用いられるが、長期培養した肝細胞は肝胆汁性輸送の研究モデルには適さない。特に、Groothuis and Meijer, J. Heptalogy 24 (Suppl. 1): 3-28, 1996 および LeCluyse et al., Adv. Drug Del. Rev. 22: 133-186, 1996に記載のように、肝臓輸送性を含む肝臓特有の機能の急速な喪失および通常の毛細胆管ネットワーク確立の破壊および通常の肝細胞形態維持の破壊がその培養物液中で観察された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在の方法(existing method)では、ヒト胆汁排泄の調査に広く適用され得ることが示されていない。加えて、現在のアプローチ(existing approach)では、複数の薬物候補について胆汁排泄過程の効率的な試験に使用することができない。そのため、肝臓取り込みおよび候補化合物の胆汁排泄感受性を評価するアッセイが長い間必要とされていた。そのアッセイは、評価法の初期の治療薬剤としての更なる評価から、望ましくない高胆汁排泄感受性の当該化合物の除去が促進され得る。相応して、治療薬剤として更なる試験に適当な候補化合物(すなわち、胆汁排泄感受性のない化合物)の迅速な同定が長い間必要とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要約
胆汁排泄感受性の候補化合物をスクリーニングする方法を本明細書で開示する。当該方法は、肝細胞の培養物、細管空間を有する少なくとも1個の毛細胆管を含む培養物を提供すること;当該培養物に対し候補化合物をさらすこと;および少なくとも1個の毛細胆管の細管空間中の候補化合物の量であって、候補化合物の胆汁排泄感受性を示す少なくとも1個の毛細胆管の細管空間中の候補化合物の量を決定することをステップに含む。肝細胞の培養物は、好ましくは、サンドイッチ配置の長期培養物を含む。
【0012】
従って、胆汁排泄感受性の候補化合物の迅速で安価なスクリーニング法を提供することが本発明の目的である。
【0013】
胆汁排泄感受性の候補化合物のインビトロのスクリーニング法を提供することが本発明の更なる目的である。
【0014】
また、一度に多くの候補化合物のスクリーニングを促進する胆汁排泄感受性の候補化合物のスクリーニング法を提供することが本発明の更なる目的である。
【0015】
また、胆汁排泄感受性の候補化合物のスクリーニングの高処理法を提供することが本発明の更なる目的である。
【0016】
本発明の幾つかの目的は上記しており、他の目的は、以下の最良の記載として添付の実験例および図面と関連させるとき、それらの記載から明白になり得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1Aは、3時間培養した肝細胞単層における標準緩衝液(黒印)およびCa++のない緩衝液(白印)中の[H]イヌリン(1μM)の蓄積取り込みを示すグラフである。図1Bは、96時間、サンドイッチ配置で培養した肝細胞における標準緩衝液(黒印)およびCa++のない緩衝液(白印)中の[H]イヌリン(1μM)の蓄積取り込みを示すグラフである。
【図2】図2Aは、3時間培養した肝細胞単層における標準緩衝液(黒印)およびCa++のない緩衝液(白印)中の[14C]サリチラート(1μM)の蓄積取り込みを示すグラフである。図2Bは、96時間、サンドイッチ配置で培養した肝細胞における標準緩衝液(黒印)およびCa++のない緩衝液(白印)中の[14C]サリチラート(1μM)の蓄積取り込みを示すグラフである。
【図3】図3Aは、3時間培養した肝細胞単層における標準緩衝液(黒印)およびCa++のない緩衝液(白印)中の[H]メトトレキサート(1μM)の蓄積取り込みを示すグラフである。図3Bは、96時間、サンドイッチ配置で培養した肝細胞における標準緩衝液(黒印)およびCa++のない緩衝液(白印)中の[H]メトトレキサート(1μM)の蓄積取り込みを示すグラフである。
【図4】図4Aは、3時間培養した肝細胞単層における標準緩衝液(黒印)およびCa++のない緩衝液(白印)中の[H][D−pen2,5]エンケファリン(15μM)の蓄積取り込みを示すグラフである。図4Bは、96時間、サンドイッチ配置で培養した肝細胞における標準緩衝液(黒印)およびCa++のない緩衝液(白印)中の[H][D−pen2,5]エンケファリン(15μM)の蓄積取り込みを示すグラフである。
【図5】図5Aは、3時間培養した肝細胞単層における標準緩衝液(黒印)およびCa++のない緩衝液(白印)中の[H]タウロコール酸(1μM)の蓄積取り込みを示すグラフである。図5Bは、96時間、サンドイッチ配置で培養した肝細胞における標準緩衝液(黒印)およびCa++のない緩衝液(白印)中の[H]タウロコール酸(1μM)の蓄積取り込みを示すグラフである。
【図6】図6Aは、インビボでのラット胆汁中に排泄する用量の割合と、以下のモデル基質の場合の96時間サンドイッチ培養した肝細胞における胆汁排泄指標の割合との間の関係を示すグラフである:イヌリン(□)、サリチラート(◆)、メトトレキサート(○)、[D−pen2,5]エンケファリン(▲)、およびタウロコール酸(●)。胆汁排泄指標は、等式3に基づき10分間の蓄積取り込みデータ(図1A−5B)から計算した。波線は、データに線形回帰等式を適合させる。図6Bは、インビボでのラット胆汁中に排泄する用量の割合と、以下のモデル基質の場合の96時間サンドイッチ培養した肝細胞におけるインビボ内因性胆汁クリアランスおよびインビトロ胆汁クリアランスの割合との間の関係を示すグラフである:イヌリン(□)、サリチラート(◆)、メトトレキサート(○)、[D−pen2,5]エンケファリン(▲)、およびタウロコール酸(●)。インビボ内因性胆汁クリアランスは、文献からのインビボ胆汁クリアランス値に基づく等式2から計算した。インビトロ胆汁クリアランスは、等式4から計算した。波線は、データに線形回帰等式を適合させる。
【図7】図7Aは、3時間培養した肝細胞単層における標準緩衝液(黒印)およびCa++のない緩衝液(白印)中の[H]264W94(3μM)の蓄積取り込みを示すグラフである。図7Bは、96時間、サンドイッチ配置で培養した肝細胞における標準緩衝液(黒印)およびCa++のない緩衝液(白印)中の[H]264W94(3μM)の蓄積取り込みを示すグラフである。
【図8】図8Aは、3時間培養した肝細胞単層における標準緩衝液(黒印)およびCa++のない緩衝液(白印)中の[H]2169W94(3μM)の蓄積取り込みを示すグラフである。図8Bは、96時間、サンドイッチ配置で培養した肝細胞における標準緩衝液(黒印)およびCa++のない緩衝液(白印)中の[H]2169W94(3μM)の蓄積取り込みを示すグラフである。
【図9】図9Aは、化合物264W94の化学構造を示す。ここで、アスタリスクの印は、不均一に組み込まれた14Cの位置を示す。図9Bは、化合物2169W94の化学構造を示す。ここで、アスタリスクの印は、不均一に組み込まれた14Cの位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の詳細な説明
本発明により、方法は、胆汁排泄感受性な候補化合物または基質のスクリーニングの方法を提供する。当該方法は、肝細胞の培養物であって、細管空間を有する少なくとも1個の毛細胆管を含む培養物を提供すること;当該培養物に対し候補化合物をさらすこと;および少なくとも1個の毛細胆管の細管空間中の候補化合物の量であって、候補化合物の胆汁排泄感受性を示す少なくとも1個の毛細胆管の細管空間中の候補化合物の量を測定することをステップに含む。
【0019】
当業者が認識するように、インビボの基質の胆汁排泄には、シヌソイド膜を通した移動、細胞質を通過する移動、および細管膜を通した移動が含まれる。そのため、本発明の好ましい肝細胞培養物では、肝細胞により示される機能性がインビボで確立される。例えば、シヌソイドまたは細管輸送系、またはシヌソイドおよび細管輸送系の両方のような肝臓輸送系の確立は、好ましくは本発明により予想される。典型的な輸送系には、以下に限らないが、Ntcp、cMOAT、OATP1、OATP2、MRP2、P−gp、BSEPおよびMDR2が含まれる。
【0020】
加えて、少なくとも1個の毛細胆管の確立および肝細胞培養物における通常の肝細胞形態学の確立がまた、本発明により予想される。好ましくは、培養物には、多数の毛細胆管が含まれる。より好ましくは、多くの毛細胆管は細管ネットワークを含む。少なくとも1個の毛細胆管の細管空間における、以下に記載のような候補化合物の量により、候補化合物の胆汁排泄感受性が示される。
【0021】
以下の語は、当業者により十分に理解されていると考えられるが、以下の定義は、本発明の解説を促進するため開示する。
【0022】
“候補化合物”または“候補基質”なる語句は、化合物の胆汁排泄感受性の特徴付けが望ましい任意の化合物をいうことを意味する。典型的な候補化合物または基質には、薬物および他の治療剤のような生体異物、発癌物質および環境汚染物質、ならびにステロイド、脂肪酸およびプロスタグランジンのような生体内物質が含まれる。
【0023】
本発明の方法によりスクリーニングした候補薬物および他の治療剤は、恒温脊椎動物の処置に有用であることは予想される。そのため、本発明は、哺乳類および鳥類に関する。
【0024】
ヒトのような哺乳類ならびに危険にさらされる要因のある重要な動物(シベリアンタイガーのような)の処置、ヒトにとって経済的な重要性(ヒトの消費のための農場で飼育する生物)および/または社会的な重要性(ペットとしてまたは動物園内で飼う動物)のある動物、例えば、ヒト以外の脊椎動物(ネコおよびイヌのような)、ブタ(子ブタ、食用ブタおよびイノシシ)、反芻動物(畜牛、ウシ、ヒツジ、キリン、シカ、ヤギ、バイソンおよびラクダ)、およびウマの処置が予想される。また、危険にさらされ、動物園で飼われている特定種のトリならびにニワトリの処置を含むトリ、およびより好ましくは飼い慣らされたトリ、すなわち、シチメンチョウ、ニワトリ、アヒル、ガン、ホロホロチョウのような飼鳥類およびヒトにとって経済的に重要性のあるような飼鳥類の処置もまた予想される。そのため、以下に限らないが、飼い慣らされたブタ(子ブタおよび食用ブタ)、反芻動物、ウマ、飼鳥類などを含む家畜の処置が予想される。
【0025】
“胆汁排泄物”なる語句は、基質が、肝細胞(肝臓の細胞)により取り込まれ、毛細胆管を通して胆汁中に排泄されることにより動物循環系から除去される、生物学的過程をいうことを意味する。肝細胞への取り込みは、以下に制限されないが、NtcpおよびOATP1を含む肝細胞に内在性の輸送系により仲介される。毛細胆管は、肝細胞からの排泄成分を受け入れ、胆汁を動物から取り除くための胆管に胆汁を輸送する、肝臓組織内の構造である。
【0026】
本明細書および請求項中で使用する“候補化合物の量”なる語句および/または“少なくとも1個の毛細胆管中の候補化合物の量を決定する”なる成句により、肝細胞により取り込まれ、本発明のアッセイにより少なくとも1個の毛細胆管中に排泄される任意の候補化合物の量を意味する。例えば、“量”は、本発明により培養物に候補化合物をさらした後、少なくとも1個の毛細胆管中に存在する候補化合物を実質的にいうことができない。他に、“量”は、本発明により培養物に候補化合物をさらした後少なくとも1個の毛細胆管中に存在するすべての候補化合物を実質的にいうことができる。そのため、“少なくとも1個の毛細胆管中の候補化合物の量”を用い、高度に排泄されない、広範囲に排泄されない、および広範囲におよび急速に排泄されない候補化合物が述べられる。
【0027】
“少なくとも1個の毛細胆管中の候補化合物の量を決定すること”なる成句はまた、下記のような胆汁排泄指標計算および胆汁クリアランス計算の使用を意味する。“少なくとも1つも毛細胆管中の候補化合物中の量を決定すること”なる成句はまた、下記本発明のアッセイの高処理実施態様で述べられるような少なくとも1個の毛細胆管中への候補化合物の取り込みの要因となる低減した量のマーカー化合物の検出をいうことができる。そのため、“少なくとも1個の毛細胆管中の候補化合物の量”の定量的および定性的な決定は、本発明の範囲内にあることが予想される。
【0028】
“候補化合物の量”なる成句および/または“少なくとも1個の毛細胆管中の候補化合物の量を決定すること”なる成句はまた、例えば、候補化合物のクラスまたはシリーズのスクリーニング、および次いで当該クラスまたはシリーズ内の候補化合物の胆汁排泄感受性のランキングを確立することを意味する。そのため、本発明の好ましい実施態様により、排泄に対するより少ないかまたはより低い感受性がそのランキングにより観察される候補化合物または化合物群が更なる実験か治療薬剤としての開発のために選択され得、その一方、そのランキングにより、排泄に対するより高いかより大きい感受性が観察される化合物が更なる実験か治療剤としての開発から除かれ得ることが予想される。
【0029】
しかし、当業者が容易に認識し得るように、化合物が胆汁排泄に感受性であるという特性が、治療剤としての化合物の更なる開発を必然的に妨げるということはない。実際、治療剤としての特定の候補化合物の開発を続行するかどうかの決定は、以下に限らないが、候補化合物の生物学的活性が含まれる多くの因子に基づく。胆汁排泄感受性は重要な因子である一方、当業者により典型的に考慮される唯一の因子というわけではない。そのため、本発明の方法による胆汁排泄感受性の特徴付けは、治療剤として候補化合物の開発を続行するかどうか評価する当業者による使用に望ましいデータを提供する。
【0030】
“マーカー”化合物なる語句は、蛍光またはケミルミネセンス分光測光法、シンチレーション分析、クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(LC/MS)、比色定量などのような標準的な検出技術を用い容易に検出し得る化学的化合物をいうことを意味する。そのため、典型的なマーカー化合物には、以下に限らないが、蛍光源または蛍光性化合物、ケミルミネセンス化合物、比色分析用化合物、UV/VIS吸収化合物、放射性核種およびそれらの組合せが含まれる。
【0031】
本明細書に述べる胆汁排泄過程を通じて広範囲に取り込まれ排泄される治療組成物は、典型的に、対象に治療効果を供する最小の機会を有する。そのため、評価過程の初期に、治療剤としての更なる評価から望ましくない高感受性を有する化合物を除外することを促進するため、肝細胞の取り込みおよび化合物の胆汁排泄感受性についてのインビトロ試験の確立が非常に望ましい。本発明の胆汁排泄アッセイはその試験を提供する。
【0032】
ラットの肝細胞は、本発明の方法における使用のための培養物に好ましい;しかし、当業者に認識されるような任意の適当な肝細胞起源は本発明の範囲内であると予想される。典型的な起源には、上記列挙の恒温脊椎動物が含まれる。特に、典型的な起源には、以下に限らないが、ヒト、サル、ヒトニザル、ネコ、イヌ、ブタ、食用ブタ、蓄牛、ウシ、ヒツジ、ウマ、シチメンチョウ、ニワトリ、カモおよびガンが含まれる。
【0033】
本発明の胆汁排泄アッセイ法は、所望により肝細胞のサンドイッチ培養物を確立することを含み、その場合、少なくとも1個の肝細胞層が、マトリクスの2層の間に形成される。サンドイッチ培養物としての配置が当該培養物の好ましい配置である一方、当業者に認識されるような任意の適当な配置は本発明の範囲内にあると予想される。例えば、少なくとも1個の毛細胆管が形成され肝細胞の機能性が確立される、培養物中の肝細胞のクラスター、集合体または他の会合もしくは群は、本発明の範囲内にあると予想される。好ましくは、当該培養物配置は、多くの毛細胆管の形成を促進する。より好ましくは、培養物配置は、細管ネットワークの形成を促進する。本明細書中で考察するように、毛細胆管の細管空間中の候補化合物の量は、候補化合物の胆汁排泄感受性を示す。
【0034】
加えて、好ましいサンドイッチ配置では、肝細胞は、マトリクスまたはスキャフォールディングの2層の間の単層中に培養される。しかし、肝細胞はまた、マトリクス中に固定されるか、垂直に、水平に、対角にまたはそれらの組合せでマトリクスを通して不均一に広がり得、それによって、1次元、2次元および3次元の肝細胞集合体が形成される。そのため、本発明により、肝細胞培養物は、肝細胞を適当なマトリクスと混合し、当該混合物をマルチウェルプレートのような適当な培養物コンテナー中に入れることにより形成され得ることが予想される。
【0035】
コラーゲンが肝細胞の培養に好ましい基質またはスキャフォールディングである一方、当業者が認識し得るような天然、合成またはその組合せの何れかの任意の適当な基質またはスキャフォールディングは、本発明の範囲内にあると予想される。例えば、以下に限らないが、ラミニンを含む他の生物学的基質および登録商標MATRIGELのもとBedford, MassachusettsのCollaborative Biomedical Products, Inc.により販売されている基底膜誘導化生物学的細胞培養物基質(basement membrane derived biological cell culture substrate)は、適当な基質またはスキャフォールディング物質を含むと予想される。ポリマーのような種々の物質から典型的に製造される合成マトリクス物質、基質物質またはスキャフォールディング物質はまた、本発明の範囲内にあると予想される。培養物中の肝細胞において使用するための特定マトリクスを有する種々の成分物質はまた、本発明の方法により予想される。
【0036】
培養した肝細胞は、好ましくは、“長期培養物”のように培養される。“長期培養物”なる語句は、少なくとも約12時間培養する肝細胞をいうことを意味する。より好ましくは、“長期培養物”なる語句は、少なくとも約24時間、少なくとも48時間、または少なくとも約72時間培養された肝細胞をいうことを意味する。さらにより好ましくは、“長期培養物”なる語句は、少なくとも約96時間培養された肝細胞をいうことを意味する。長期培養物は、毛細胆管の形成および肝細胞内の機能性の確立を促進する。
【0037】
長年の特許法条約に従い、請求項を含む本出願において単数形の記載には複数形も含まれる。
【0038】
並立する実施態様
本発明の1の実施態様により、複製肝細胞培養物は、好ましくは、サンドイッチ配置で確立される。第1の培養物は、標準的緩衝液にさらされ、第2の培養物は、Ca++のない緩衝液にさらされる。Ca++のない緩衝液へさらされることから、肝細胞の単層中の接着過程または接合複合体を破壊することにより、肝細胞単層内の毛細胆管が破壊される。Ca++のない緩衝液にさらされることが、毛細胆管を実質的に破壊する接着過程または接合複合体を破壊する好ましい方法である一方、当業者が認識し得るような毛細胆管の実質的な破壊を促進する接着過程または接合複合体を破壊する任意の適当が技術が本発明の範囲内であると予想される。典型的な技術には、以下に限らないが、細胞に対する細胞結合部位と相互作用し、それにより結合による隣接細胞を妨げるペプチドの培養物への投与が含まれる。
【0039】
次いで、候補化合物および/または化合物群を各培養物に加える。候補化合物は、Ca++のない緩衝液で処理された培養物中の毛細胆管内に維持できない。そのため、この培養物では、候補化合物は、肝細胞中に取り込まれ、肝細胞の細胞質中に保持され得る。しかし、細管膜を通して肝細胞により排泄される任意量の候補化合物(群)は、緩衝培地中に流入し、緩衝培地を取り出すときに取り出される。対照的に、候補化合物が、毛細胆管が未処置である肝細胞サンドイッチ培養物に投与されるとき、細胞により取り込まれ細胞により排泄される任意の候補化合物は、肝細胞の細胞質および毛細胆管の両方の中に保持される。
【0040】
次いで、未処置毛細胆管内に存在する候補化合物の量の測定を得ることが望ましい。緩衝性媒体は、培養物から取り出され、その培養物は洗浄および細胞溶解される。以下に示す実験例に記載するように、培養物内の細胞の溶解は、培養物の振動と組合せた(couple)適当な溶解緩衝液の添加により、達成され得る。好ましい溶解緩衝液には、界面活性剤が含まれる。望ましい測定は、培養物からの溶解物と比較するため毛細胆管を破壊した(例えば、Ca++のない培地にさらされることにより)培養物からの溶解物中に存在する候補基質の量を未処置毛細胆管と比較することにより得られた。2つの特定の予測を用い、培養物を比較し、未処置毛細胆管中に存在する候補化合物の量を決定する。上記のように、未処置毛細胆管中の候補化合物の量は、候補化合物の胆汁排泄感受性を示す。
【0041】
1つの計算は、胆汁排泄指標として記載され、それは、以下のような候補化合物の取り込みおよび排泄の計算である:100%×{(未処置毛細胆管を有する培養物中の取り込みからCa++のない培養物におけるのみの肝細胞中への取り込みを引いたもの)を(未処置毛細胆管を有する培養物中の取り込み)で割ったもの}。他の計算は、胆汁クリアランス計算であり、それらは以下のように行う:(未処置毛細胆管を有する培養物中の取り込みからCa++のない培養物におけるのみの肝細胞中への取り込みを引いたもの)を(インキュベーション時間に緩衝液培地中の候補化合物の濃度をかけたもの)で割る。
【0042】
下記の実験例で記載したような胆汁排泄の標準インビトロアッセイと本発明のインビトロアッセイとの比較において、胆汁クリアランスがより迅速で望ましい排泄の評価の提供を決定づける。特に、インビトロ胆汁クリアランス計算は、(1)高度に排泄されず;(2)広く排泄され;広くおよび迅速に排泄される候補物質間で十分に相違した。そのため、胆汁クリアランス計算の使用には、本発明の重要な態様を含む。
【0043】
代謝産物アッセイの実施態様
本発明の方法の肝細胞では、本発明の特定の代謝活性(フェーズI活性と呼ばれる)は、実質的に低下する。胆汁輸送の維持と組合された代謝活性の実質的な低下は、相違が親候補化合物の胆汁排泄と親候補化合物の代謝産物または代謝産物群との間で生じ得る点で、本発明のインビトロ胆汁排泄アッセイの利点を示す。この特徴は、本発明の重要な態様を含む。
【0044】
本発明の代謝産物アッセイの好ましい実施態様により、当該方法は、第1セットおよび第2セットの肝細胞の2つの培養物を確立することを含み、コラーゲンの2層と肝細胞の少なくとも1層内に形成される少なくとも1個の毛細胆管との間にサンドイッチされた少なくとも1層の肝細胞を好ましくは含むそれぞれの培養物を伴う。第1セットの培養物には、未処置毛細胆管を含み、第2セットの培養物には、破壊された毛細胆管を含む。
【0045】
次いで、代謝酵素活性および/または輸送系は、フェノバルビタールおよびβ−ナフトフラボンのようなフェーズI肝臓酵素活性をアップレギュレートすることが知られる誘導物を用い当分野に既知の技術により第1セットおよび第2セットの培養物のそれぞれのうちの1個の培養物の肝細胞内で誘導される。典型的な誘導物および同一物と組合される技術は、Parkinson, A. (1996) Biotransformation of Xenobiotics in Casarett and Doull's Toxicology. The Basic Science of Poisons., 5th Ed. (Klaassen, C.D. ed.) pp.113-186, McGraw Hill, New Yorkにより、およびLeCluyse et al., (1996) Cultured rat hepatocytes, in Models for Assessing Drug Absorption and Metabolism (Borchard et al. eds), pp 121-160, Plenum Press, New Yorkにより、記載されており、それぞれの内容は、引用によりこの文書に加える。
【0046】
候補親化合物は、候補親化合物の取り込みが可能な十分な時間、第1および第2のセットの培養物にさらされる。各セットの培養物は、洗浄され、次いで細胞溶解される。不活性化代謝性酵素を有する各セットの培養物中の培養物から得られる溶解物中に存在する候補親化合物の量が決定される。活性代謝性酵素を有する各セットの培養物中の培養物から得られる溶解物中に存在する候補親化合物の代謝産物の量もまた決定される。
【0047】
不活性化代謝性酵素を有する培養物に対する胆汁クリアランス値は、培養物の溶解物中の候補親化合物の量を用い計算する。次いで、胆汁クリアランス計算値を用い、上記のように候補親化合物の胆汁排泄感受性を決定する。活性代謝性酵素を有する培養物に対する胆汁クリアランス値は、培養物の溶解物中の候補親化合物の代謝産物の量を用い計算する。次いで、胆汁クリアランス計算値を用い、上記のように代謝産物の胆汁排泄感受性を決定する。この情報は、例えば、プロドラッグ形の治療組成物の投与をすべきか否かの評価に有用となると予想される。
【0048】
高処理アッセイの実施態様
本発明の更なる他の態様は、高処理の肝臓取り込みおよび胆汁排泄アッセイに関する。そのアッセイは、好ましくは、上記のような培養された肝細胞の使用を含み、内在性のシヌソイドまたは細管輸送系、またはシヌソイドおよび細管の輸送系の両方にとって基質となるマーカー化合物に関係する。典型的な輸送系には、以下に限らないが、Ntcp、cMOAT、OATP1、OATP2、MRP2、P−gp、BSEPおよびMDR2が含まれる。特に、候補化合物は、下記実験例に記載の細胞培養物および化合物投与技術によりマーカー化合物と組合せて肝細胞培養物に投与される。
【0049】
候補化合物とマーカー化合物との間の取り込みおよび排泄の競合が評価される。すなわち、培養物中の毛細胆管内のマーカー化合物(例えば、マーカー化合物からのシグナルを測定または検出する)の量における著しい低下は、候補化合物(マーカー化合物とは逆に)は取り込まれ、広く排泄されることを示し得る。
【0050】
次いで、候補化合物の肝臓取り込みおよび胆汁排泄感受性のランキングが確立される。そのため、本発明の高処理アッセイの好ましい実施態様により、排泄に対しより少ないかより低い感受性がそのランキングにより観察される候補化合物または化合物群が更なる実験または治療剤としての開発のために選択され得、その一方、排泄に対しより高いかより大きい感受性がそのランキングにより観察される化合物群が更なる実験または治療剤としての開発から除かれ得ることが予想される。
【0051】
典型的なマーカー化合物には、蛍光性cMOAT/MRP2基質、カルボキシジクロロフルオレセインが含まれる。好ましくは、弱い蛍光性のみを示す、カルボキシジクロロフルオレセインジアセテートを、肝細胞原形質膜中への迅速な浸透のために蛍光源前駆体として利用する。カルボキシジクロロフルオレセインジアセテートは、Haugland, Molecular Probes: Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (1992-1994), p.134, Molecular Probes, Inc., 1992に記載のように、肝細胞の細胞質中で、細胞内エステラーゼにより、高蛍光性産物カルボキシジクロロフルオレセインに容易に加水分解される。
【0052】
カルボキシジクロロフルオレセインの蛍光性は、pHに感受性があり、そのため、カルボキシジクロロ蛍光(carboxydichlorofluorescence)の強度に基づく任意のアッセイがpHの効果であると考えられる。しかし、0.3pH単位未満の相違が肝細胞カプレット中のサイトゾルと毛細胆管との間に見られることが観察される。カルボキシジクロロフルオレセインは、酸性オルガネラ中のpH決定に用いられるが、蛍光強度は、pH7.1とpH7.4との間では顕著に変らない。pH7.4のカルボキシジクロロフルオレセインの蛍光は、最大放出波長でpH7.1の場合よりも約10−20%のみ高い。カルボキシジクロロフルオレセインをカルボキシジクロロフルオレセイン細胞分布に対する定性プローブとして使用する限り、サイトゾルと細管との間の僅かなpH勾配は、本発明の高処理アッセイの適用に影響しない。
【0053】
更なるマーカー化合物には、以下に限らないが、蛍光標識タウロコール酸、下記実験例に記載のように肝細胞により迅速におよび広く取り込まれ毛細胆管中に排泄される胆汁酸;コリルグリシルアミド(cholylglycylamido)フルオレセイン、Boyer and Soroka, Gastroenterology 109: 1600-1611 (1995)に記載の他の蛍光性胆汁酸;MDR2およびP−gpのためのローダミン123;およびカルボキシフルオレセインジアセテート(CFDA)が含まれる。
【0054】
本発明の方法は、ICN Pharmaceuticals, Inc.(Costa Mesa, California)より利用可能である96ウェルマイクロタイタープレートのような、当業者に既知の標準マルチウェルアッセイプレート内で行われ得る。そのため、多くの候補化合物が、マルチウェルプレートのマルチウェル内で胆汁排泄感受性について同時にスクリーニングし得る。
【0055】
以下の実験例には、本発明の好ましい型の解説が含まれる。以下の実験例の特定の態様は、本発明の実施で活動する本発明者により発見または予想される技術および方法について述べられている。これら実験例は、発明者の標準的な研究での実施の使用を通じて解説される。本発明の開示および当分野の通常レベルの技術を考慮すると、当業者は、以下の実験例が例示のみを目的とし、多くの変化、修飾および変更が本発明の精神および範囲から出発することなく行われ得ることを認識する。
【0056】
実験例
以下の実験例は、サンドイッチ培養したラット肝細胞中(本方法)とインビボのラット中(標準)との胆汁排泄の相関関係の確立に関する。胆汁排泄性の別種のスペクトルを示す5つのモデル基質が選択され、ラットにおけるインビボでの胆汁中に排泄される用量の割合とインビトロの割合との関係を、本発明の方法によりサンドイッチ培養した肝細胞を用い、試験した。5つのモデル基質には、インシュリン、サリチラート、メトトレキサート、[D−pen2,5]エンケファリンおよびタウロコール酸が含まれる。
【0057】
更に、264W94およびその代謝産物の胆汁排泄のインビボとインビトロの比較を実施例4に開示する。化合物2169W94は、ラットおよびヒトにおける264W94のO−ジメチル化代謝産物であり、それは、ウリジン−5'−ジホスホフルクロン酸(diphosphoflucuronic acid)と更に結合し、グルクロニド結合体を形成する(Silver et al., ISSX Proceedings, (San Diego, California USA) pp.387, 1996)。化合物264W94および2169W94の構造式を図9に示す。
【0058】
実施例において使用する物質および方法
化学物質
[H]タウロコール酸(3.4 Ci/mmol; 純度>97%)、[14C]サリチラート(55.5 mCi/mmol; 純度>99%)、および[H][D−pen2,5]エンケファリン(36 Ci/mmol; 純度97%)は、Dupon New England Nuclear(Boston, Massachusetts)から得た。[H]メトトレキサート(13.7 Ci/mmol; 純度>99%)および[H]イヌリン(1.3 Ci/mmol; 純度97%)は、Amersham International plc (Buckinghamshire, England)から得た。化合物[14C]264W94((3R,5R)−3−ブチル−3−エチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−7,8−ジメトキシ−5−フェニル−1,4−ベンゾチアゼピン−1,1−ジオキシド; 45.5 mCi/mmol; 純度>99%)および[14C]2169W94((3R,5R)−3−エチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−7−メトキシ−8−ヒドロキシ−5−フェニル−1,4−ベンゾチアゼピン−1,1−ジオキシド;43.7 mCi/mmol; 純度>99%)は、Glaxo Wellcome, Inc.(Research Triangle Park, North Carolina)から得た。コラゲナーゼ(タイプI、クラスI)は、Worthington Biochemical Corp.(Freehold, New Jersey)から得た。Dulbecco's修飾Eagle's培地(DMEM)、ウシ胎児血清培地およびインシュリンは、Gibco(Grand Island, New York)から購入した。ラット・テイル・コラーゲン(タイプI)は、Collaborative Biomedical Research (Bedford, Massachusetts)から得た。すべての他の化学物質および試薬は、分析純度であり、商業的供給源から容易に利用可能である。
【0059】
動物
Charles River Laboratory(Raleigh, North Carolina)のオスWistarラット(250-280g)を肝臓ドナーとして使用した。ラットは、研究を行う前、少なくとも1週間は12時間の明と暗のサイクルで定期的に変化するステンレススチールのゲージ中で個々に飼育し、使用するまでは任意に餌を与えた。胆管にカニューレを挿入されたラット(200-250g)は、Charles River(Raleigh, North Carolina)から得た。すべての方法は、Institutional Animal CareおよびChapel Hill, Chapel Hill, North CarolinaのUniversity of North CarolinaのUse Committeeより承認を得た。
【0060】
培養物ディッシュの調製
プラスチック培養ディッシュ(60mm)を肝細胞培養物の調製前に少なくとも1日、ラット・テイル・コラーゲンで前被覆した。ゲル化コラーゲン基部を得るために、氷冷中和コラーゲン溶液(0.1mg、1.5mg/ml、pH7.4)を各培養物ディッシュ上に広げた。新たに被覆したディッシュを約1時間、加湿インキュベーター中、37℃に静置すると、マトリクス物質はゲルとなり、その後、3ml DMEMを各ディッシュに加え、加湿インキュベーター中に保存した。
【0061】
ラット肝細胞の培養物
肝細胞を2段階潅流法で単離した。端的には、ラットを門脈にカニューレを挿入する前にケタミンおよびキシラジン(xylazine)(それぞれ60および12mg/kg i.p.)で麻酔した。当該肝臓は、コラーゲナーゼタイプI(0.5mg/ml)を含む酸素で処理したCa2+のないクレブス・ヘンセレイト重炭酸緩衝液でin situで10分間潅流した。肝臓カプセルは、鉗子で取り出した。肝細胞は、100ml DMEM中でゆっくりと肝臓を振盪することにより放出させた。
【0062】
当該放出された細胞を滅菌ナイロンのメッシュ(70μm)を通して濾過する。肝細胞懸濁液を50×gで3分間遠心分離した。細胞ペレットを25ml DMEMおよびPiscataway, New JerseyのPharmacia, Inc.により登録商標PERCOLLのもと販売されている同体積の90%等張性ポリビニルピロリドン被覆シリカコロイド遠心分離培地(pH7.4)に再懸濁した。生じた細胞懸濁液を約70から約150×150gで5分間遠心分離した。当該ペレットを50ml DMEMに再懸濁し、細胞懸濁液を1個のチューブに合わせ、その後、50×gで3分間遠心分離した。肝細胞の生存能力は、トリパンブルー除外により決定された。90%を超える生存能力を有する肝細胞調製物のみを更に研究に用いた。
【0063】
肝細胞懸濁液を5%ウシ胎児血清、1μM デキサメタゾンおよび4mg/Lインシュリンを含むDMEMで調製した。肝細胞懸濁液を約2−3×10cell/60mmディッシュの濃度で前被覆ディッシュに加えた。細胞をプレーティング約1時間後、当該培地を吸引し、3mlの新しいDMEMを加えた。輸送研究の場合、コラーゲンオーバーレイなしに3−5時間シードした肝細胞を、3時間または短時間培養した肝細胞として定義した。
【0064】
サンドイッチ培養した肝細胞を調製するため、中和コラーゲン溶液(0.1ml、約1.5から3.0 mg/ml、pH7.4)を細胞のシード後24時間後に単層に加えた。コラーゲンオーバーレイを有する培養物は、加湿インキュベーター中で45分間37℃でインキュベートし、DMEMの添加前にコラーゲンをゲルにした。培地は細胞をシードした後の4日間、毎日変えた。これらの肝細胞は、96時間または長期培養した肝細胞と呼んだ。
【0065】
サンドイッチ培養した肝細胞の蓄積取り込みの研究
コラーゲンサンドイッチ配置で培養した肝細胞を、3ml標準緩衝液またはCa2+のない緩衝液中で37℃10分間インキュベーションした。インキュベーション緩衝液を取り除いた後、取り込みは、基質を含む3ml標準緩衝液を各ディッシュに加えることにより開始した。明示した時間のインキュベーション後、蓄積取り込みは、インキュベーション溶液の吸引し3ml氷冷標準緩衝液により4度洗浄し、細胞外基質を取り除くことにより停止した。洗浄後、1%TritonX−100溶液2mlを培養物ディッシュに加え、当該細胞を室温で20分間、シェーカーでディッシュをシェイキングすることにより細胞溶解させる。溶解物のアリコート(1ml)を液体シンチレーションスペクトロメトリーで分析した。Bio-rad DC Protein Assay Kit(Bio-Rad Laboratories, Hercules, California)を用い、標準としてウシ血清アルブミンを使用する培養物抽出物におけるタンパク質濃度を決定した。TritonX−100(1%)はアッセイを妨げなかった。細胞単層中に取り込まれる基質のすべての値を、従前に述べられたように細胞非存在下の適当な対照ディッシュ中で決定した基質取り込みを差引くことによりコラーゲンに対する非特異的結合を較正した。
【0066】
264W94の静脈注射および2169W94の経口投与後のラットにおける胆汁排泄
[14C]264W94を、滅菌水/ポリプロピレングリコール400/エタノール(2:1:1v/v/v)の混合物中に濃度0.125mg/mLの溶液として製剤した。投与前の胆汁の回収後、[14C]264W94溶液を尾部静脈注射(0.1mg/kg)により投与した。2169W94研究のため、[14C]2169W94を、水中の0.5%(w/v)メチルセルロース中で濃度0.1mg/mLの懸濁液として調製した。投与前胆汁の回収の後、[14C]2169W94懸濁液を胃管栄養法(1.0mg/kg)により投与した。すべてのラットを、個々に、ラットが自由に移動できるプラスチック代謝ゲージに入れた。胆汁を、氷で取り囲むポリプロピレンコンテナーの中に回収した。264W94研究の場合、胆汁コンテナーを投与後8および24時間で変えた。従前の研究により、サンプルは、氷上で24時間安定であることが示された。胆汁サンプルは、分析するまで−20℃で保存した。
【0067】
分析手順
264W94または2169W94を含む細胞の溶解物または胆汁サンプルのアリコートを、2倍体積の氷冷アセトニトリルと混合し、遠心分離し、沈殿したタンパク質を除いた。当該上清を、窒素の下、室温で蒸発させ、50mM 酢酸アンモニウム/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸(95:5:0.1 v:v:v)およびアセトニトリルの70/30混合物100μL中に再構成した。当該サンプル抽出物を、WATERS(登録商標)SYMMETRY(登録商標)C18カラム(3.9×150mm)に注入し、50mM 酢酸アンモニウム(pH4.0)およびアセトニトリルの85/15混合物により溶出した;アセトニトリルの割合をWATERS(登録商標)600E System Controllerにより55%にまで20分間かけて増加させ、次いで、次ぎの10分間で100%にまで増加させた。
【0068】
HPLCから溶出する放射性炭素は、オンライン放射活性ディテクター(RADIOMATIC FLO-ONE/BETA(登録商標) Radio-Chromatography Detector Series 500 TR Series, Packard Instrument Co.)で定量した。264W94、2169W94および2169W94グルクロニドのピークは、精製した標準化合物と比較することにより同定した。これらの条件下、これら3成分のベースライン分離を行った。3成分の濃度は、全注入放射活性に対し各ピークの溶出放射活性を正規化することにより決定した。
【0069】
データ分析
取り込まれたデータをタンパク質量に正規化し、肝細胞の3−4分離調製物から平均±SDとして表した。Ca2+の存在下および非存在下における10分間の蓄積基質取り込みの平均値間の統計学的な相違は、既知のStudent’s t−テストの使用により決定された。0.05未満のP値が有意であると考えられた。
【0070】
インビボの胆汁クリアランス、Cl(ml/min/kg体重)を等式1により計算した:
【数1】

[式中、Amountbile(0−T)は、0から殆どの薬物が全身性循環から排泄されるときである時間Tまでの胆汁中に回収される親薬物の量を示し、AUC0−Tは、血漿濃度−時間曲線の下、0から時間Tまでの領域を示す。]。
【0071】
インビボの内因性の胆汁クリアランス(ClBin、ml/min/kg体重)は、胆汁排泄が優勢排泄経路であると見なされる肝臓性質の十分に攪拌されたモデル(Pang et al., J. Pharmacokinet. Biopharm. 5: 625-653, 1977)に基づく等式2に従い評価した。
【数2】

[式中、Qは、ラットの肝臓血漿流、40ml/min/体重kg{(血流×(1−ヘマトクリット)};Pollack et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 18: 197-202, (1989)を示し、Clは、当該文献中で報告されているモデル化合物の胆汁クリアランスか等式1から計算した胆汁クリアランスを示す。]
【0072】
単層中の基質の胆汁排泄は、定量的に、等式3に基づくBiliary Excretion Indexにより評価した。
【数3】

[式中、UptakestandardおよびUptakeCa++−freeは、標準緩衝液およびCa++のない緩衝液それぞれにおいて前インキュベーションした肝細胞単層における10分間インターバルの基質の蓄積取り込みを示す。]
【0073】
サンドイッチ−培養した肝細胞の胆汁クリアランス、ClB(culture)(ml/min/体重kg)は、等式4により計算した
【数4】

[式中、Timeincubationは、10分間、Concentrationmediumは、インキュベーション培地中の初期基質濃度を示す。]。ラットの肝臓重量および肝組織中のタンパク質量は、すべての計算において、それぞれ、40g/体重kgおよび0.20g/肝重量g(Seglen et al., Methods in Cell Biology(13th Ed. Prescott D. M. Eds.)pp. 30-78, Academic Press, New York, 1976)と想定した。
【0074】
実施例の結果の要約
本発明による長期サンドイッチ培養した肝細胞における5モデル基質の胆汁排泄は、インビボ胆汁排泄性と一致した。胆汁排泄指標計算を用いる培養した肝細胞における胆汁排泄の定量は上記している。端的には、胆汁排泄指標は、毛細胆管中に維持される基質の割合を示す。実験例の結果は、胆汁中に排泄される用量の割合に基づいてインビボでは無視し得る胆汁排泄に付される化合物(例えば、イヌリン、サリチラート)が、低い胆汁排泄指標を有する(ほぼ0)ことを示す。インビボで胆汁中でより広範囲に排泄される化合物(例えば、メトトレキサート、[D−pen2,5]エンケファリン、およびタウロコール酸)は、高い胆汁排泄指標を有する(およそ50%)。
【0075】
胆汁排泄指標とインビボで胆汁中に排泄される用量の割合との間の関係は、分類別の相関関係を示すのみである。メトトレキサートおよび[D−pen2,5]エンケファリンは、胆汁中に“高度に”排泄される(静脈注射用量の約60%および70%が、それぞれ、胆汁中に1時間で回収された)化合物を示す。対照的に、タウロコール酸は、静脈注射用量の殆どすべてが1時間未満に胆汁中に排泄される点で“迅速におよび広範囲に”排泄される。そのため、胆汁排泄指標は、無視可能または低い胆汁排泄に対し広範囲に胆汁排泄される化合物群の間で区別され得る。
【0076】
しかし、胆汁排泄指標は、メトトレキサート(胆汁排泄指標:約55%)または[D−pen2,5]エンケファリン(胆汁排泄指標:約42%)のような高度に胆汁中に排泄される化合物と、タウロコール酸(胆汁排泄指標:約56%)のような“迅速にそして広範囲に”排泄される化合物を区別することができないと思われる。胆汁排泄指標におけるこの制限が、この指標が主に細管排泄機能により決定されるという事実に起因し得る。インビボで胆汁中に排泄される静脈投与基質の割合は、シヌソイド取り込み活性、細管排泄活性、および他の競合性排泄過程により決定される。
【0077】
胆汁クリアランスは、インビボとインビトロの胆汁排泄の関係の比較としてより有効なパラメーターを示す。当該インビボ胆汁クリアランスは、時間Tの胆汁中に排泄された量および時間0と時間Tとの間の血漿AUCの割合として実験例で計算した。殆どの投与用量が時間Tで排泄されたため、胆汁クリアランスは、時間0から時間無限大までを計算する胆汁クリアランスに近づく。この点について計算した胆汁クリアランスは、内因性の胆汁クリアランスおよび肝臓血漿流速の関数である。血漿流の効果を無視するため、内因性の胆汁クリアランスを、Pang and Rollan in J. Pharmacokinet. Biolphrm. 5: 625-653, 1997により述べられた肝臓の性質の“十分に攪拌された”モデルに基づき計算した。同様に、インビトロ胆汁クリアランスは、肝細胞単層における細管ネットワーク中に排泄する量およびインキュベーション培地中のAUCの割合として計算した。
【0078】
サンドイッチ培養した肝細胞では、当該インキュベーション培地は、同時にディッシュ中の全肝細胞に利用できた。そのため、計算したインビトロの胆汁クリアランスは、内因性の胆汁クリアランスを示す。しかし、胆汁排泄には、2つの過程、すなわち、シヌソイド膜を通した取り込みおよび細管膜を通した排泄が含まれ、厳密な内因性の胆汁クリアランスは、細管膜を通した輸送により決定され、細胞内基質濃度に基づき計算される。そのため、実験例において計算したインビボおよびインビトロの“内因性の”クリアランス値は、当該過程、すなわちシヌソイド取り込みまたは細管排泄の何れかにおいて最も遅いステップにより制限される割合である、“見かけの”内因性の胆汁クリアランスとして呼ばれ得る。
【0079】
インビトロ胆汁クリアランスとインビボ内因性胆汁クリアランスとの間の相関関係は、5モデル基質では高かった(r2=0.9865)。インビボ内因性胆汁クリアランスにより、5モデル基質は、3グループ、すなわち:胆汁中に排泄されない化合物(イヌリンおよびサリチラート;約0ml/min/kg)、胆汁中に高度に排泄される化合物(メトトレキサートおよび[D−pen2,5]エンケファリン、それぞれ約17.3ml/min/kgおよび約34.4ml/min/kg);および胆汁中に迅速におよび広範囲に排泄される化合物(タウロコール酸、約116.9ml/min/kg)に分類され得る。推算されたインビトロ胆汁クリアランスは、これら3グループの化合物(それぞれ約0、4-13、および56ml/min/kg)の間では適当に区別された。これらの結果から、胆汁クリアランスは、胆汁排泄指標との比較としてインビボとインビトロとの間の胆汁排泄の関係をより正確に特徴付けることが示唆される。
【実施例】
【0080】
実施例1
培養した肝細胞中での蓄積取り込み
イヌリンの蓄積取り込みは、短期または長期の培養の肝細胞の何れかである全インキュベーション時間で無視することができた(開始で添加した基質の0.01%未満)(図1Aおよび図1B)。3時間培養した肝細胞において、サリチラート、メトトレキサートおよび[D−pen2,5]エンケファリンの蓄積取り込みは、標準緩衝液およびCa2+のない緩衝液中では有意な差はなかった(図2A、3Aおよび4A;p>0.05)。しかし、Ca2+のない緩衝液と比較した標準緩衝液でタウロコール酸の僅かに高い蓄積取り込みが観察された(図5A);10分において、標準緩衝液における蓄積取り込みは、Ca2+のない緩衝液中よりも約10%高かった(p=0.0352)。96時間培養した肝細胞では、細胞外Ca2+は、サリチラートの蓄積取り込みには効果がなかった(図2B、p>0.05)。しかし、標準緩衝液中の長期培養した肝細胞におけるメトトレキサート、[D−pen2,5]エンケファリン、およびタウロコール酸の取り込みは、Ca2+のない緩衝液よりも有意に高かった(図3B、4B、および5B;p<0.05)。
【0081】
実施例2
ラットの胆汁中に排泄される用量の割合と培養した肝細胞中の胆汁排泄指標との関係
胆汁排泄性の異なるスペクトルを示す5モデルの基質を選択し、ラットのインビボでの胆汁中に排泄される用量の割合とサンドイッチ培養した肝細胞中の胆汁排泄指標との関係を試験した。静脈投与後のラット胆汁中に排泄される用量の割合に関する情報は文献から得た。胆汁中へのイヌリンおよびサリチラート排泄の程度は無視できた(Eriksson et al., Acta Physiol. Scand. 95: 1-5, 1975; Laznicekand et al., Eur. J. Drug Met. Pharmacokinet. 19: 21-26, 1994)。約50−60%の22μmol/kgメトトレキサート用量(Bremnes et al., Cancer Res. 49: 2460-2464, 1989; Masuda et al., Cancer Res. 57: 3506-10, 1997)および70%の14.5μmol/kg[D−pen2,5]エンケファリン用量(Chen et al., Pharm. Res. 14: 345-350, 1997)は1時間で未変化薬物としてラット胆汁中に排泄された。タウロコール酸胆汁排泄は、メトトレキサートおよび[D−pen2,5]エンケファリンよりも迅速で広範囲であった。1時間で、事実上、100%の用量(8.0μmol/kg)がラット胆汁中に回収された(Inoue et al., Biochim. Biophys. Acta. 833; 211-216, 1985)。
【0082】
サンドイッチ培養した肝細胞中の胆汁排泄は、図3B−5Bの10分間蓄積取り込みデータに基づき等式3から計算される胆汁排泄指標として定量的に表され得る。イヌリンおよびサリチラートの胆汁排泄指標は、イヌリンまたはサリチラートの蓄積取り込みにおける統計学的に有意な相違が標準緩衝液とCa2+のない緩衝液との間で観察されない(p>0.05)ため、無視することができると仮定した。メトトレキサート、[D−pen2,5]エンケファリンおよびタウロコール酸の胆汁排泄指標は、それぞれ55.4±18.3%、42.4±6.5%および56.4±5.2%であった。インビボでラット胆汁に排泄される用量の割合とインビトロ系で測定される胆汁排泄指標との間の関係を図6Aに示す。胆汁排泄指標は、インビボでの胆汁排泄を無視できる化合物(例えば、イヌリンおよびサリチラート)では非常に低くなった。対照的に、胆汁排泄指標は、インビボで胆汁中に排泄される化合物では適度に高くなった(例えば、メトトレキサート、[D−pen2,5]エンケファリン、およびタウロコール酸)。
【0083】
実施例3
インビトロとインビボの胆汁クリアランスの関係
イヌリン、サリチラート、メトトレキサートおよびタウロコール酸のインビボ胆汁クリアランス(体重あたりのml/min)は、それぞれ0.035(Utesch et al., Vitro Cell. Dev. Biol. 27A: 858-863, 1991)、〜0(Laznicekand et al., Eur. J. Drug Met. Pharmacokinet. 19: 21-26, 1994)、12.1(Masuda et al., Cancer Res. 57: 3506-10, 1997)、および29.8(Inoue et al., Biochim. Biophys Acta. 833: 211-216, 1985)であった。[D−pen2,5]エンケファリンのインビボ胆汁クリアランス、18.5mg/min/kgは、ChenおよびPollack(Chen and Pollack, Pharm. Res. 14: 345-350, 1997)により報告されているデータから等式1に基づき計算した。これらインビボ胆汁クリアランス値に基づき、イヌリン、サリチラート、メトトレキサート、[D−pen2,5]エンケファリンおよびタウロコール酸の内因性胆汁クリアランスは、等式2から計算した(それぞれ、0.04、0.17.3、34.4および116.9 ml/min/kg)。
【0084】
10分間の蓄積取り込みデータ(図1B−5B)に基づき等式4から計算した、イヌリン、サリチラート、メトトレキサート、[D−pen2,5]エンケファリンおよびタウロコール酸のインビトロ胆汁クリアランスは、それぞれ〜0、〜0,4.1±1.0、12.6±2.2および56.2±6.0 ml/min/kgであった。インビボの内因性胆汁クリアランスは、5モデル化合物(図6B)のインビトロ胆汁クリアランス(r2=0.9865)と十分に相関した。
【0085】
実施例4
264W94および代謝産物のインビボとインビトロの胆汁排泄の関係
化合物264W94と2169W94の構造式を図9に示す。化合物2169W94は、ラットおよびヒトにおける264W94のO−デメチル化代謝産物であり、それは、更に、ウリジン−5'−ジホスホフルクロン酸と結合し得、グルクロニド結合体を形成する(Silver et al., ISSX Proceedings, (San Diego, California USA)pp. 387, 1996)。
【0086】
ラットへの[14C]264W94(0.24μmol/kg)の静脈投与後、264W94も2169W94の何れも24時間では胆汁中には検出されなかった。しかし、全投与放射活性の35.4%(n=2)は、最初の1時間で胆汁中に回収された。胆汁中から回収された放射活性の約30.0%が、2169W94グルクロニドであり、胆汁中に残る放射活性の70%は、同定されない代謝産物を示した。ラットへの[14C]264W94(2.4μmol/kg)の経口投与後、2169W94は、24時間では胆汁中に検出されなかった。しかし、全投与放射活性の66.4%(n=2)が8時間で胆汁中から回収された。胆汁中の放射活性の約88.7%が、2169W94グルクロニド結合体型であった。これらインビボの結果は、264W94およびそのO−デメチル化物、2169W94の胆汁排泄は無視できるが、2169W94のグルクロニド結合体はラットでは広範囲に胆汁排泄をすることを示す。
【0087】
3時間および96時間培養した肝細胞では、264W94および代謝産物の胆汁排泄を決定するため、蓄積取り込みが3μM [14C]264W94または[14C]2169W94を含む標準緩衝液中で行われる前に、肝細胞単層を標準またはCa2+のない緩衝液中でインキュベーションした(図7および8)。3時間培養した肝細胞では、264W94または2169W94の全放射活性により測定された蓄積取り込みは、標準緩衝液またはCa2+のない緩衝液でプレインキュベーションした肝細胞と同様であり(p>0.05)、これは、短期間培養した肝細胞では246W94および2169W94の取り込みはCa2+のない緩衝液中の単層のプレインキュベーションにより影響を受けなかったことを示唆する。96時間培養した肝細胞では、全放射活性により測定された264W94の10分間蓄積取り込みは、標準緩衝液またはCa2+のない緩衝液中でプレインキュベーションした単層において有意な相違はなかった(p>0.05)。
【0088】
10分における細胞溶解物のHPLC分析は、全放射活性の73.0%が264W94型であり、3.3%が2169W94グルクロニド結合体であり、2169W94は溶解物中には検出されないことを示した。96時間のサンドイッチ培養した肝細胞では、2169W94の10分の蓄積取り込みは、Ca2+の非存在下よりもCa2+存在下のほうが約70%高くなった(p>0.05)。10分の細胞溶解物では、約16.7%の全放射活性が2169W94型であり、約58.5%が2169W94グルクロニド結合体であった。化合物2169W94は、長期培養した肝細胞における毛細胆管ネットワーク中に排泄されるグルクロニド結合体を形成する。
【0089】
薬物代謝産物のインビボ胆汁排泄を予測する本発明のインビトロ胆汁排泄アッセイの利用性を更に特徴付けるため、264W94およびそのO−デメチル化代謝産物269W94および2169W94グルクロニドのインビトロおよびインビボの胆汁排泄を調査した。ラットおよびヒト肝臓ミクロソーム、正確にカットした肝臓スライス、およびcDNAが発現した肝臓のチトクロムp450イソ酵素で行われた従前のインビトロ研究は、246W94が8−メトキシの位置でO−デメチル化代謝産物を形成することを示す。調査した幾つかのチトクロムp450イソ酵素の間では、CYP3A4は、264W94の代謝に主として関与するイソ酵素であった(Silver et al., ISSX Proceedings (San Diego, California USA)p.387, 1996)。
【0090】
インビボの性質の研究は、264W94もそのO−デメチル化代謝産物、2169W94の何れも胆汁中に排泄されないことを示した。しかし、他の非同定性代謝産物を一緒に、2169W94グルクロニド結合体は、広範囲に胆汁中に排泄された。長期サンドイッチ培養した肝細胞では、264W94の胆汁排泄の欠損が、264W94の無視し得るインビボ胆汁排泄と一致した。
【0091】
インビボで264W94均等物の約35%が、264W94の静脈注射後1時間で代謝産物として胆汁中に排泄された。しかし、培養した肝細胞では、264W94代謝産物の胆汁排泄は無視できた(図7B)。264W94の代謝産物のインビボおよびインビトロの間の見かけの胆汁排泄の不一致は、代謝活性における相違により説明され得る。インビボで、264W94をO−デメチル化し、2169W94を形成し、その後、2169W94をウリジン−5'−ジホスホグルクロン酸と結合させ、2169W94グルクロニドを形成する。このグルクロニド結合体は、胆汁中に排泄される全量の30%を占める。264W94と共にインキュベートした長期サンドイッチ培養肝細胞の溶解物では、インキュベートした全量の約3%しか2169W94グルクロニド結合体として検出されなかった。これらの結果は、長期培養した肝細胞がO−デメチル化反応できないことを示した。結果として、無視し得るグルクロニド結合体が形成され、胆汁中に排泄された。
【0092】
しかし、2169W94、すなわち、264W94のO−デメチル化代謝産物を伴う単層のインキュベーション後、2169W94の58.5%がグルクロニド結合体に変換され、有意な胆汁排泄が培養した肝細胞で観察された(図8B)。明らかに、O−デメチル化のようなフェーズI代謝活性が非常に低下し、その一方、グルクロニド結合体のようなフェーズII代謝活性は、本発明により使用された長期サンドイッチ培養した肝細胞において、少なくとも一部維持される。そのため、実験例が、本発明のアッセイを用い親型の基質のインビボ胆汁排泄を予測し得ることをさらに示す。確かに、代謝産物のインビボ胆汁排泄を研究し予測する本インビトロアッセイ法の適用は、単層中の代謝活性の状態を考慮する必要がある。
【0093】
参考文献
下記文献および明細書中で引用された全参考文献は、背景を供し、説明し、提供するか、本明細書で用いる方法、技術および/または組成物を教授する限度において引用により本明細書に加える。
【表2】

【0094】
本発明の種々の詳細は、本発明の範囲から出発することなく変化し得ることが理解されるであろう。更に、先の記述は、解説のみを目的とし、制限を目的とするものではない。当該発明は、請求の範囲によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胆汁排泄感受性の候補化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)肝細胞の培養物を提供すること、この場合、肝細胞の培養物は少なくとも1個の毛細胆管を含み、
(b)当該培養物に対し候補化合物をさらすこと、および
(c)少なくとも1個の毛細胆管中の候補化合物の量であって、候補化合物が胆汁排泄感受性を示す少なくとも1個の毛細胆管中の候補化合物の量を決定すること、
のステップを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−273467(P2009−273467A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161569(P2009−161569)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【分割の表示】特願2000−605772(P2000−605772)の分割
【原出願日】平成12年3月17日(2000.3.17)
【出願人】(500459410)ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (16)
【Fターム(参考)】