説明

背負式噴霧装置

【課題】 バッテリ保持が経年変化に拘らず確実であり、バッテリの抜脱操作が容易であり、操作性が良い背負式噴霧装置を提供する。
【解決手段】 背負式噴霧装置は、噴霧機本体10の左側面部10aに設けられた収容穴部11とこれに挿着されるバッテリ70とこれを収容穴部11にロックするロック機構部80とを有する。バッテリ70が収容穴部11に挿着されると、収容穴部11に設けられた本体側電極とバッテリ70に設けられたバッテリ側電極74とが接合し、ロック機構部80がバッテリ70を収容穴部11にロックする。ロック機構部80はバッテリ70の把手部71に設けられた係止突起部81と収容穴部11に設けられた係合凹部87とを有し、ロック機構部80はバッテリ挿着状態で上下対向配置される。収容穴部11の前側下部の縁部に前後方向に傾動可能なスイッチ部31を備えた駆動スイッチ30を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者に背負われて使用され、収容された薬剤を噴霧する背負式噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような背負式噴霧装置は、作業者が噴霧装置を背負った状態で噴霧対象物の周辺を歩きながら噴霧作業を行なうようにして用いられるので、噴霧装置を駆動させる電源は作業者の移動を便利にするための装置内に収納可能なバッテリが用いられている。このようなバッテリは放電することから、バッテリの交換ができるようなバッテリ収納構造が提案されている(特許文献1及び2参照))。
【0003】
特許文献1に記載の収納構造は、噴霧機本体の側部に設けられたバッテリケースと、バッテリケースの開口部を覆うバッテリケース蓋とを有してなる。バッテリケースは側部に開口部を形成した有底容器状である。バッテリケースの底面には孔部が形成され、この孔部の内側から延びるケーブルが孔部を通ってバッテリケース内に延出している。ケーブルの先端部には、バッテリに設けられたバッテリ側コネクタに連結可能なケーブル側コネクタが設けられている。バッテリは、バッテリ側コネクタとケーブル側コネクタとを連結した状態でバッテリケース内に挿入されて、バッテリケース蓋が閉じられることにより収納される。しかしながら、この特許文献1に記載の収納構造は、コネクタ同士の着脱作業が煩わしいので、特許文献2に記載のような収納構造が提案されている。
【0004】
特許文献2に記載の収納構造は、噴霧機本体の側部に設けられた収容穴部を備える。収容穴部は一端側が開口して矩形状に延び、その上下両面に本体側電極が前後方向に延びて収容穴部内に露出している。収容穴部に挿着されるバッテリは複数の電池とこれを保持するバッテリ保持部とを有して構成される。バッテリ保持部は箱状であり、この上下両面には電池に電気的に接続されて本体側電極と接合可能なバッテリ側電極が設けられている。バッテリ側電極は、弾性変形可能な板状部材を凸状に折り曲げて形成されている。バッテリ保持部の一端側端部には、作業者がバッテリ保持部を保持するための取っ手が設けられ、この取っ手を把持した状態でバッテリ保持部は収容穴部に挿入される。バッテリ保持部が収容穴部に挿着されると、バッテリ側電極が弾性変形した状態で本体側電極と押圧接触して、これらの電極が電気的に接続される。
【0005】
【特許文献1】実公平6−32825号公報
【特許文献2】実公平7−19265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の収納構造では、バッテリ保持部の収容穴部への係止がバッテリ側電極による弾性変形による付勢力のみであり、バッテリの着脱操作が繰り返して多数回行われた場合には、バッテリ側電極が疲労して弾性劣化が生じる。その結果、作業中にバッテリが収容穴部から抜脱状態になる虞が生じ、バッテリが抜脱状態になると、動力部への電力供給が遮断されて噴霧作業が中断する虞が生じる。
【0007】
また、バッテリに設けられた取っ手が破損すると、バッテリを収容穴部から抜脱することが困難になる。そこで、バッテリを収容穴部に挿着した状態でバッテリ保持部の一部を噴霧機本体から突出するようにしてもよいが、このようにすると、バッテリ保持部の突出した部分に他の物が引っ掛かる等の問題が生じる。このためバッテリは収容穴部内に完全に収納される必要がある。
【0008】
また、特許文献2に記載の噴霧装置は、バッテリを収容穴部に挿着すると動力部が駆動するように構成されている一方、スロットルレバーによって動力部のスロットル開度を調整し、調整レバーによってタンクから流れ出る散布物の量を制御するシャッタの開度を調整するように構成されている。そして、これらのレバーは、作業者が噴霧装置を背負った状態で作業者の左腰部付近に配置されている。このため、作業者の左手を自らの左腰部付近に移動させた状態でこれらレバーを左手によって上下操作すると、左腕に負担がかかりこの上下操作は煩わしい。特に、高齢者等の体の柔軟性が低い作業者が噴霧装置を背負ったままでこれらのレバーを操作することは困難であり、近年の農作業従事者の高齢化にともない、操作性の良い噴霧装置の提供が望まれている。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、バッテリ保持を経年変化に拘らず確実にし、バッテリの抜脱操作を容易にし、レバー等の操作性がよい背負式噴霧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するため、本発明は、作業者に背負われて使用され、噴霧機本体に収容された薬剤を噴霧する背負式噴霧装置であって、噴霧機本体の側面部(例えば、実施形態における左側面部10a)に開口した収容穴部と、該収容穴部に挿抜可能に挿着されるバッテリと、収容穴部に挿着されたバッテリを収容穴部にロックするロック機構部と、収容穴部に設けられた本体側電極と、バッテリに設けられたバッテリ側電極とを有し、バッテリは、これが収容穴部に挿着されると、バッテリ側電極が本体側電極と接合するとともに、ロック機構部によって収容穴部にロックされることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、バッテリが収容穴部に挿着されると、バッテリ側電極が本体側電極と接合するとともに、ロック機構部によってバッテリが収容穴部にロックされる。このため、バッテリはロック機構部によって確実に収容穴部にロックされるので、ロック機構部が損傷しない限り、バッテリは確実に収容穴部にロックされる。このため、噴霧作業中にバッテリが収容穴部から抜脱状態になって動力部への電力供給が遮断される事態を未然に防止することができる。
【0012】
また本発明は、バッテリは、作業者が把手可能な把手部と、該把手部の一端側の側面部から突出して把手部より小断面積を有した挿抜部とを有し、収容穴部は、挿抜部を挿嵌する挿嵌穴部と、該挿嵌穴部の他端側端部に繋がって作業者が把手部を握ったままで該把手部の挿抜操作が可能な挿抜穴部とを有し、バッテリ側電極を挿抜部に設け、本体側電極を挿嵌穴部に設け、挿抜部が挿嵌穴部に挿入されて把手部の一端側の側面部が挿嵌穴部と挿抜穴部との間に形成された段部に当接すると、バッテリ側電極及び本体側電極が接合することを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、挿抜部を挿嵌穴部に挿入して、把手部の一端側の側面部が挿嵌穴部と挿抜穴部との間に形成された段部に当接すると、バッテリ側電極及び本体側電極が接合することにより、作業者は、バッテリが収容穴部に確実に挿着されたことを認識するとともに、バッテリ側電極と本体側電極との電気的接続を確実に認識することができる。このため、挿着作業の作業性を向上させることができる。また把手部は作業者が把手可能に形成されているので、バッテリの収容穴部への着脱操作を容易にするとともに、脱着されたバッテリの持ち運びを容易にすることができる。
【0014】
また本発明は、ロック機構部は、把手部及び挿抜穴部のいずれか一方に設けられた係合凹部と、把手部及び挿抜穴部のいずれか他方に設けられて係合凹部に係止可能な係止突起部とを有し、係合凹部及び係止突起部を有してなるロック機構部は、上下に対向して配置され、把手部に設けられた係合凹部又は係止突起部は、押圧操作されると、挿抜穴部に設けられた係止突起部又は係合凹部との係止状態が解除されることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、ロック機構部を上下に対向配置し、把手部に設けられた係合凹部又は係止突起部は、押圧操作されると、挿抜穴部に設けられた係止突起部又は係合凹部との係止状態が解除されることにより、2つのロック機構部を同時に押圧操作しなければバッテリの抜脱操作ができないので、バッテリが容易に抜脱されることはなく、バッテリの挿着状態の保持を確実にすることができる。また、バッテリを抜脱した直後では、バッテリは作業者の掌内に収められた状態になるので、バッテリの抜脱操作を確実に行うことができるとともに、バッテリが作業者の手から落下する事態が抑制されてバッテリの損傷を防止することができる。
【0016】
さらに本発明は、噴霧機本体の側面部に開口する収容穴部の開口部に、バッテリが収容穴部に挿着された状態で開口部を塞ぐ蓋体部を設けたことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、収容穴部の開口部に蓋体部を設けることにより、外部の埃や水等からバッテリを保護することができ、特に噴霧作業中に噴霧された薬液からバッテリを保護することができる。その結果、収容穴部に設けられた電極や収容穴部周辺に設けられた電気部品等に繋がる電気系の故障を未然に防止することができる。
【0018】
また本発明は、収容穴部は、作業者に背負われた噴霧機本体の作業者左手側の側面部に設けられ、収容穴部の周辺であって噴霧機本体が作業者に背負われたときの作業者の左腰部付近の噴霧機本体に駆動スイッチを設けたことを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、噴霧機本体が作業者に背負われたときの作業者の左腰部付近の噴霧機本体に駆動スイッチを設けたことにより、作業者が右手に噴管をもったままで駆動スイッチの操作を行うことができ、バッテリの着脱操作や駆動スイッチの動作確認を容易に行うことができる。
【0020】
また本発明は、駆動スイッチは、噴霧機本体が作業者に背負われたときの前後方向に傾動可能なスイッチ部を備え、スイッチ部は、前後方向のいずれか一方側に傾動操作されると、薬剤を噴霧する動力部に電力供給をし、前後方向のいずれか他方側に傾動操作されると、動力部への電力供給を遮断することを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、スイッチ部が前後方向に傾動可能であり、スイッチ部は、前後方向のいずれか一方側に傾動操作されると、動力部に電力供給をし、前後方向のいずれか他方側に傾動操作されると、動力部への電力供給を遮断することにより、作業者が噴霧装置を背負い、作業者の左手を左腰部の周辺に移動させた状態で左手首を前後方向に動かすだけでスイッチ部を操作することができる。このため、駆動スイッチの操作性を向上させることができる。
【0022】
さらに本発明は、駆動スイッチの下方の噴霧機本体に外側に突出する保護部材を設けたことを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、駆動スイッチの下方の噴霧機本体に外側に突出する保護部材を設けることにより、噴霧機本体を小石等の突起物が存在する地面に置く場合や、噴霧装置を運搬中に噴霧機本体が転倒した場合でも、駆動スイッチに突起物が接触したり他の物が当たったりする事態を未然に防止することができ、駆動スイッチを保護することができる。
【0024】
また本発明は、バッテリが電動工具に用いられるものであることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、バッテリを電動工具に用いられるものとすることで、背負式噴霧装置以外の装置で使用可能なバッテリを利用することができ、バッテリを含めた背負式噴霧装置全体の製造コストを安価にすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係わる背負式噴霧装置によれば、収容穴部に挿着されたバッテリを収容穴部にロックするロック機構部を設け、ロック機構部を上下に対向配置し、駆動スイッチのスイッチ部が噴霧機本体が作業者に背負われたときに前後方向に傾動可能にすることにより、バッテリ保持を経年変化に拘らず確実にし、バッテリの抜脱操作を確実に行うことができ、操作性が良い背負式噴霧装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係わる背負式噴霧装置の好ましい実施の形態を図1から図4に基づいて説明する。本実施形態の背負式噴霧装置は、液体を噴霧する背負式噴霧装置を例にして説明する。なお、説明の都合上、図1(斜視図)に示す矢印の方向を前後方向及び左右方向として以下説明する。
【0028】
背負式噴霧装置1(以下、「噴霧装置1」と記す。)は、図1及び図2(斜視図)に示すように、有底容器状の噴霧機本体10と、これに繋がる棒状の噴管60と、噴霧機本体10に挿着されるバッテリ70とを有してなる。この噴霧装置1は、作業者(図示せず)が噴霧機本体10を背中に背負って右手に噴管60を持って噴霧作業を行なうようにして使用される。
【0029】
先ず、噴霧装置1に挿着されるバッテリ70について説明する。バッテリ70は、図3(斜視図)に示すように、作業者が把ることができる把手部71と、把手部71の一端側の側面部71aから突出して把手部71より小断面積を有した挿抜部73とを有してなる。把手部71は、図4(c)(正面図)に示すように、略直方体形状であるとともに、前側が凸状に突出した前後非対象な形状を有している。挿抜部73の断面形状は前後方向に延びる長孔状に形成されている。挿抜部73の中心Pの位置は把手部の中心Qよりも前側にずれた位置に配置されている。挿抜部73の先端側の上下両面にはバッテリ側電極74、75がそれぞれ取り付けられている。これらのバッテリ側電極74、75は、把手部71及び挿抜部73の少なくともいずれかの内部に収納された電池(図示せず)に電気的に接続されており、一方側の電極が+電極、他方側の電極が−電極として機能する。
【0030】
このようにバッテリ70の把手部71は、作業者が把手可能な大きさに形成されているので、バッテリ70の図3に示す噴霧機本体10への着脱操作が容易であるとともに、脱着されたバッテリ70の持ち運びが容易である。また、把手部71は前後非対象形状であるので、凸状側を前側にするようにバッテリ70の向きを変えるだけで、バッテリ70の向きを正しい向きにすることができ、バッテリ挿入操作の操作性を向上させることができる。
【0031】
把手部71の上面部71b及び下面部に71cには、ロック機構部80の一部を構成する係止突起部81が設けられている。ロック機構部80は、この係止突起部81と後述する図3に示す噴霧機本体10の収容穴部11に設けられて係止突起部81を係止させる係合凹部87とを有する。係止突起部81は、図4(a)(平面図)に示すように、上下方向に弾性変形可能に支持された押圧板部82の前側端部に外側方向に突出するように形成されている。係止突起部81は、押圧板部82が押圧操作されると、挿抜部73側に接近するように移動し、押圧板部82の押圧操作が解除されると、挿抜部73から離反する側に移動して元の位置に戻る。これらの係止突起部81、81は対向するように配置されている。
【0032】
このように構成されたバッテリ70が挿着される噴霧機本体10は、図1に示すように、その前側下部に背当て50を有し、前側に上下方向に延びる一対の背負バンド52が取り付けられて構成されている。作業者は背中を背当て50に当てた状態で一対の背負バンド52を対応する肩に掛けるようにして噴霧機本体10を背負う。
【0033】
噴霧機本体10の上部内側には有底容器状の薬液タンク54が内蔵され、薬液タンク54の上部に開口した注入口から薬液が注入され、注入口にはキャップ55が着脱可能に取り付けられている。薬液は、例えば、害虫や雑草等を駆除する防除用の薬剤を溶かした水溶液である。噴霧機本体10の下部には図示しないポンプ及びモータが収納されており、ポンプは薬液を吸引して一定の圧力に昇圧して噴管60に吐出するように作動し、モータはバッテリからの電力供給を受けて駆動してポンプを回転駆動させる。
【0034】
噴霧機本体10の左側面部10aの下部には、左側面部10aに開口してバッテリを収容可能な前述した収容穴部11が設けられている。収容穴部11は、図3に示すように、略矩形状に開口して噴霧機本体10の内側に延びる挿抜穴部12と、挿抜穴部12の先端部に繋がって噴霧機本体10の内側に延びる挿嵌穴部14とを有してなる。挿抜穴部12は、作業者がバッテリ70の把手部71を把ったままでバッテリ70の挿抜操作が可能な大きさを有する。なお、挿抜穴部12の断面形状は矩形状に限らず、円形状、多角形状でもよい。挿嵌穴部14は、断面形状が前後方向に延びる長孔状に形成されるとともに、挿抜部73の断面形状と相似形であって挿抜部73を挿嵌可能である。また挿嵌穴部14は、挿抜穴部12の断面積よりも小さな断面積を有する。このため、挿嵌穴部14と挿抜穴部12との間には段部16が形成されている。段部16は側面視において環状に形成されている。挿嵌穴部14の中心は挿抜穴部12のそれよりも前側にずれている。これは、バッテリ73に設けられた2つのバッテリ側電極74、75の向きが正しい方向に向けられた状態にあるときのみバッテリ70の挿入を可能にするためである。挿嵌穴部14の先端側の上面及び下面には、図4(b)(側面図)に示すように、本体側電極18がそれぞれ取り付けられている。これら本体側電極18はモータに電気的に接続されている。
【0035】
本体側電極18は、バッテリ70の挿抜部73が挿嵌穴部14に挿入されて把持部71の挿抜部側の側面部71aが段部16に当接すると、対応するバッテリ側電極74、75と接合するように配置されている。このため、作業者は把持部71が段部16に当接したことを確認することで、本体側電極18とバッテリ側電極74、75とが接合状態になることを確実に認識することができる。
【0036】
再び図3に示すように、段部16の上面部及び下面部には、ロック機構部80の他の一部を構成する係合凹部87が設けられている。係合凹部87は、段部16の中心側に開口するように設置されるとともに、対向するように配置されている。そして、係合凹部87は、バッテリ70が収容穴部11に挿着されると、対応する係止突起部81を係止する位置に配置されている。このため、バッテリ70の上側に配置された係止突起部81と段部16の上側に配置された係合凹部87からなるロック機構部80と、バッテリ70の下側に配置された係止突起部81と段部16の下側に配置された係合凹部87からなるロック機構部80からなる2つのロック機構部80、80を同時に押圧操作しなければ、バッテリ70の抜脱操作ができないことになる。その結果、バッテリ70が容易に脱着されることはなく、バッテリ70の保持を確実にすることができる。また、バッテリ70を抜脱した直後では、バッテリ70は作業者の手によってバッテリ上下両面が把持されているので、つまり、バッテリ70は作業者の掌内に収められた状態になるので、バッテリ70の抜脱操作を確実に行うことができるとともに、バッテリ70が作業者の手から落下する事態が抑制されて、バッテリの損傷を未然に防止することができる。なお、バッテリ70は電動工具等で使用されるものを用いてもよい。このようにバッテリ70を電動工具等で使用されるものをそのまま利用可能にすることで、バッテリ70を含めた背負式噴霧装置全体の製造コストを安価にすることができる。
【0037】
収容穴部11の開口部11aには、後端側がヒンジ結合されて前後方向に揺動自在であって開口部11aを塞ぐ蓋体部20が設けられている。蓋体部20の先端部にはロック部21が設けられ、蓋体部20が開口部11aを塞ぐと、ロック部21によって蓋体部20がロックされる。ロック部21は、前述したロック機構部80と同様な構成であるので、その説明は省略する。このように蓋体部20を収容穴部11の開口部11aに設けることにより、外部の埃や水等からバッテリ70を保護することができ、特に噴霧作業中に噴霧された薬液からバッテリ70を保護することができる。また、収容穴部11に設けられた電極や収容穴部周辺に設けられた後述する駆動スイッチ等の電気部品の故障を未然に防止することができる。
【0038】
収容穴部11の開口部11aにおける前側下部の縁部には、駆動スイッチ30が設けられている。この駆動スイッチ30は、噴霧機本体10が作業者に背負われたときに、作業者の左腰部付近に位置するように配置されている。駆動スイッチ30は、いわゆるトグルスイッチであり、前後方向に傾動可能なスイッチ部31を備える。スイッチ部31は前後方向前側に傾動操作されると、モータに電力供給をし、前後方向後側に傾動操作されると、モータへの電力供給を遮断するように構成されている。このため、作業者が噴霧機本体10を背負い、作業者の左手を左腰部周辺に移動させた状態で左手首を前後方向に動かすのみで、スイッチ部31を操作することが可能となり、駆動スイッチ30の操作性を向上させることができる。また駆動スイッチ30は収容穴部11の近傍位置に配置されているので、収容穴部11のメンテナンスの際に駆動スイッチ30のメンテナンスも同時に行うことができ、メンテナンス作業の作業性を向上させることができる。なお、スイッチ部31の傾動方向と電力供給との関係は前述した内容に限るものではなく、スイッチ部31が後側に傾動操作されるとモータに電力が供給され、前側に傾動操作されるとモータへの電力供給が遮断されるようにしてもよい。
【0039】
駆動スイッチ30の下方近傍位置には外側へ突出して前後方向に延びる保護部材35が設けられている。保護部材35は、スイッチ部31の突出長さと同程度又はスイッチ部31のそれより大きな突出長さを有している。このため、噴霧機本体10を小石等の突起物が存在する地面に置いたり、噴霧装置1の運搬中に噴霧機本体10が転倒したりしたときでも、駆動スイッチ31に突起物が接触したり他の物が当たったりすることはなく、駆動スイッチ31の損傷を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる背負式噴霧装置の斜視図を示す。
【図2】バッテリが装着された噴霧機本体の斜視図を示す。
【図3】バッテリが未装着の噴霧機本体の斜視図を示す。
【図4】バッテリを示し、同図(a)はバッテリの平面図であり、同図(b)はバッテリの側面図であり、同図(c)はバッテリの正面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 背負式噴霧装置
10 噴霧機本体
10a 左側面部(側面部)
11 収容穴部
11a 開口部
12 挿抜穴部
14 挿嵌穴部
16 段部
18 本体側電極
20 蓋体部
30 駆動スイッチ
31 スイッチ部
35 保護部材
70 バッテリ
71 把手部
73 挿抜部
74、75 バッテリ側電極
80 ロック機構部
81 係止突起部
87 係合凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者に背負われて使用され、噴霧機本体に収容された薬剤を噴霧する背負式噴霧装置であって、
前記噴霧機本体の側面部に開口した収容穴部と、
該収容穴部に挿抜可能に挿着されるバッテリと、
前記収容穴部に挿着されたバッテリを前記収容穴部にロックするロック機構部と、
前記収容穴部に設けられた本体側電極と、
前記バッテリに設けられたバッテリ側電極とを有し、
前記バッテリは、これが前記収容穴部に挿着されると、前記バッテリ側電極が前記本体側電極と接合するとともに、前記ロック機構部によって前記収容穴部にロックされることを特徴とする背負式噴霧装置。
【請求項2】
前記バッテリは、前記作業者が把手可能な把手部と、該把手部の一端側の側面部から突出して前記把手部より小断面積を有した挿抜部とを有し、
前記収容穴部は、前記挿抜部を挿嵌する挿嵌穴部と、該挿嵌穴部の他端側端部に繋がって前記作業者が前記把手部を握ったままで該把手部の挿抜操作が可能な挿抜穴部とを有し、
前記バッテリ側電極を前記挿抜部に設け、前記本体側電極を前記挿嵌穴部に設け、
前記挿抜部が前記挿嵌穴部に挿入されて前記把手部の一端側の側面部が前記挿嵌穴部と前記挿抜穴部との間に形成された段部に当接すると、前記バッテリ側電極及び前記本体側電極が接合することを特徴とする請求項1に記載の背負式噴霧装置。
【請求項3】
前記ロック機構部は、前記把手部及び前記挿抜穴部のいずれか一方に設けられた係合凹部と、前記把手部及び前記挿抜穴部のいずれか他方に設けられて前記係合凹部に係止可能な係止突起部とを有し、
前記係合凹部及び前記係止突起部を有してなるロック機構部は、上下に対向して配置され、
前記把手部に設けられた前記係合凹部又は前記係止突起部は、押圧操作されると、前記挿抜穴部に設けられた前記係止突起部又は前記係合凹部との係止状態が解除されることを特徴とする請求項2に記載の背負式噴霧装置。
【請求項4】
前記噴霧機本体の側面部に開口する前記収容穴部の開口部に、前記バッテリが前記収容穴部に挿着された状態で前記開口部を塞ぐ蓋体部を設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の背負式噴霧装置。
【請求項5】
前記収容穴部は、前記作業者に背負われた前記噴霧機本体の作業者左手側の側面部に設けられ、
前記収容穴部の周辺であって前記噴霧機本体が作業者に背負われたときの前記作業者の左腰部付近の前記噴霧機本体に駆動スイッチを設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の背負式噴霧装置。
【請求項6】
前記駆動スイッチは、前記噴霧機本体が作業者に背負われたときの前後方向に傾動可能なスイッチ部を備え、
前記スイッチ部は、前後方向のいずれか一方側に傾動操作されると、薬剤を噴霧する動力部に電力供給をし、前後方向のいずれか他方側に傾動操作されると、前記動力部への電力供給を遮断することを特徴とする請求項5に記載の背負式噴霧装置。
【請求項7】
前記駆動スイッチの下方の前記噴霧機本体に、外側に突出する保護部材を設けたことを特徴とする請求項6に記載の背負式噴霧装置。
【請求項8】
前記バッテリは、電動工具に用いられるものであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の背負式噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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