説明

胎児細胞およびガン細胞を診断する非侵襲的方法

【課題】発育中の胎児の発育年齢などの胎児パラメータを非侵襲的に決定すると共に、サンプル中のガン細胞を非侵襲的に検出する。
【解決手段】胎児の発育年齢を決定し、または、サンプル中のガン細胞を検出する非侵襲的な方法が提供される。該方法はたとえば、妊娠女性からの血液のサンプル、および、テロメア核酸プローブを利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に関する相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項に基づき、2006年11月14日に出願された米国仮出願第60/865,796号および2006年3月13日に出願された米国仮出願第60/781,888号の特典を主張する。
本明細書において引用される全ての引例、および、それらに対する言及は、付加的もしくは代替的な詳細、特徴および/または技術的背景の教示に対して適切である場合、言及したことにより本明細書中に援用される。
本明細書における各実施例においては、妊娠女性における胎児パラメータを決定すると共に、テロメア・マーカに基づき細胞集団における分化細胞を検出する非侵襲的方法が開示される。一実施例において診断は、母体血液のサンプルから分離された胎児細胞に基づき、該胎児細胞の識別子として胎児テロメア構造を用いて行われる。
【背景技術】
【0002】
テロメア(telomere)は、染色体の端部の構造的構成要素であると共に、特殊なDNA−タンパク質複合体により形成され(非特許文献1)、該複合体は、非コーディングDNA反復体を含むと共に染色体の安定性と細胞の老化現象とに対して必須である。テロメアDNAは、脊椎動物の細胞におけるG豊富なヘキサヌクレオチド反復体TTAGGGから成り(非特許文献2)、且つ、テロメア結合タンパク質によりループ構造へと折畳まれる(非特許文献3)。テロメアは、染色体の不適切な再結合およびランダムな端部同士の融合を防止すると共に、細胞分裂において染色体の不完全なDNA複製を阻止することにより、染色体の完全性を維持すると思われる。
【0003】
培養液における人間の体細胞の複製に伴うテロメア反復体の喪失は、テロメアは“有糸分裂時計”の役割を果たし、すなわち細胞の老化現象および器官の加齢に資すること、および、テロメアの長さは、遺伝因子および性別により改変された細胞の複製履歴のバイオマーカであるということを例証している。たとえば人間の場合、複製された体細胞のテロメアの長さは、ドナーの年齢に反比例し(ヴァジリ等[Vaziri et al]、1993、正常なおよび三染色体性21の人間リンパ球の加齢の間におけるテロメアDNAの喪失[Loss of Telomeric DNA during Aging of Normal and Trisomy 21 Human Lymphocytes]、Amer. J. Hum. Genet., 52:661−607;スラグブーム等[Slagboom et al.]、1994、人間におけるテロメアサイズの遺伝子的決定:3つの年齢グループの研究[Genetic determination of telomere size in humans: a twin study of three age groups]、Amer. J. Hum. Genet. Nov., 55(5): 876−882、および、オクダ等(Okuda et al.]、2000、人間の腹部大動脈のテロメア損耗[Telomere attrition of the human abdominal aorta:]、Atherosclerosis Oct; 152(2): 391−398)、同一年齢の複数のドナーの間でも高度に可変的であり(既出のヴァジリ等、1993;既出のスラグブーム等、1994、および、既出のオクダ等、2000)、高度に遺伝性であり(既出のスラグブーム等、1994、および、ジーンクロス等[Jeanclos et al]、2000、テロメア長さは脈拍圧力に逆相関する[Telomere length inversely correlates with pulse pressure...]、Hypertension 36: 195−200)、且つ、男性よりも女性の方が長い(ジーンクロス等、2000 Hypertension 36: 195−200;および、ベネトス等[Benetos et al.]、2001、テロメア長さは生物学的加齢の指標である[Telomere length as an indicator of biological aging]、Hypertension 37: 381−385)。テロメア長さは、細胞分裂の解析のツールとして、且つ、細胞分裂の系統もしくは前駆物質関係および速度を解析すべく使用されてきた(ルファー等[Rufer et al.]、1998、流動細胞計測法により測定された人間のリンパ球の小集団におけるテロメア長さの動態[Telomere length dynamics in human lymphocyte subpopulations measured by flow cytometry]、Nat. Biotechnol;ルファー等、1999、幼児期における造血性幹細胞および記憶T細胞の高度の代謝に向かう顆粒球およびTリンパ球の部分集合点に関するテロメアの蛍光測定[Telomere fluorescence measurement in granulocytes and T lymphocyte subset point to a high turnover of hematopoietic stem cells and memory T cells in early childhood]、J. Exp. Med., Jul. 19; 190(2): 157−167;および、ソン等[Son et al.]、2000、年齢に伴う人間のTおよびBリンパ球におけるテロメア発現に対する系統特異的なテロメアの短縮化および不変の能力[Lineage−specific telomere shortening and unaltered capacity for telomerase expression in human T and B lymphocytes with age]、J. Immunol. 165: 1191−1196)。また、蛍光in situハイブリダイゼーションによれば、人間の血球の種々の小集団における年齢関連のテロメア短縮化が例証されている(ベローチャ等[Baerrlocher et al.]、蛍光in situハイブリダイゼーションおよび流動細胞計測法によるテロメア長さ測定:先端およびピットフォール[Telomere length measurement by fluorescence in situ hybridization and flow cytometry: tips and pitfalls]、Cytometry 47:89−99, 2002)。
【0004】
細胞の形質転換時に、テロメアが相当に短縮化したとき、染色体の末端は不安定となり且つ相互に融合し、切断−融合−架橋(BFB)サイクルに帰着する。テロメアの短縮化は、前立腺、膵臓、および乳房のガン病巣などの多数のガンにおける有力な変化と認識されている(ミーカー等[Meeker et al.]、2004、テロメア長さの異常性は上皮発癌現象の初期において早期に生ずる[Telomere Length Abnormalities Occur Early in the Initiation of Epithelial Carcinogenesis]、Clinical Cancer Research, 10: 33 17−3326)。但し、テロメア長さが長くとも、結腸直腸ガンの如き他のガンの予後は不十分である(Cancer 2006. 106: 541−551)。たとえば、乳ガンなどの一定のガンにおいて高投与量の化学療法は、造血性幹細胞の如き一定の細胞におけるテロメア長さの喪失を促進することが見出されている(シュレーダー等[Schroeder et al.]、“幹細胞の輸送ありでまたはなしでの化学療法の前後における乳ガン患者のテロメア長さ[Telomere length in breast cancer patients before and after chemotherapy with or without stem cell transportation]”、2001、British J. of Cancer 84: 1348−1353)。
【0005】
子宮内生活の間における人間のテロメア長さは高度に同調されることが例証されている、と言うのも、それは同一の胎児の各組織間で同様であるが複数の胎児間では可変的であり得るからである(ヤングレン等[Youngren et al.]、1998、人間胎児のテロメア長さの同調性[Synchrony in telomere length of the human fetus]、Hum. Genet. Jun. 102(6): 640−643)。しかし、(誕生時に)男性および女性の新生児間でテロメア長さに差は無いと思われる(オクダ等[Okuda et al.]、2002、新生児におけるテロメア長さ[Telomere length in the newborn]、Sep, 52(3): 377−381)。
【0006】
子宮内における胎児診断のための現在の方法としては、発育中の胎児の羊膜嚢から流体が取出されるという羊水穿刺の如き侵襲的技術が挙げられる。この処置は広く使用されているが、一定の状況においてそれは、胎児の損傷および/または流産に繋がり得る。発育の間における反復的な超音波診断は、不定の時的間隔に亙る超音波照射に対して胎児を反復的に晒すことから、母親は心配である。超音波診断の間に胎児を画像化すべく使用される超音波照射は後の生活において問題を引き起こす可能性があり得ると信ずる者もいる。この様に、妊娠女性および胎児を保護する胎児診断のための新規で更に正確な非侵襲的技術が必要とされる。
【0007】
サザンブロット(サチロピネーロ等[Satillo−Pineiro et al.]、“小児骨肉腫患者からの原発腫瘍および転移腫瘍におけるテロメラーゼ作用およびテロメア長さ[Telomerase activity and telomere length in primary and metastatic tumors from pediatric bone cancer patients]”、2004 Pediatric Res. 55(2): 231−235)、および、蛍光in situハイブリダイゼーション・ドット・カウンティング(シュルツェ等[Schulze et al.]、“テロメア長さ測定[Telomere Length Measurements]”、April 2000. Proc. First Euroconference on Quantitative Molecular Epiginetics)を、単独でもしくは流動細胞計測法と組み合わせる(シュールマン・エス[Suleman, S.]、“膀胱ガンに対する新規な診断試験としてのテロメア長さ分析[Telomere Length Analysis as a Novel Diagnostic Test for Bladder Cancer]、Enq. J. Interdisciplinary Studies for High School Students, 1(1): 1−5, 2003)などによる測定を含め、テロメア長さを決定する多くの方法が知られている。斯かるシステムは典型的には、事前選択された2つの細胞集団の間におけるテロメア長さの差を検出すべく設定されることから、その環境において他の正常細胞から微量のガン細胞の区別を許容する高信頼性のシステムを提供し得ない。
【0008】
一方、サンプルの顕微鏡分析を支援する多くの方法が知られている。たとえば限定的なものとしてで無く、一定の染料は一定の細胞構造に対して親和性を有することは知られている。故に斯かる染料は、斯かる構造の更なる明示を助力することで分析を支援すべく使用され得る。
【0009】
当業界において、細胞および組織の蛍光顕微鏡検査法は公知である。蛍光的に染色された複数の細胞を顕微鏡において画像化すると共に、これらの細胞において生ずる空間分布および時間的変化に関する情報を抽出する方法は開発されている。これらの方法およびそれらの用途の幾つかは、American Scientist 80 (1992)、p.322−335におけるテイラー等(Taylor. et al.)による論文に記述されている。これらの方法は、細胞内の蛍光情報提供分子の分布、量および生化学的環境に関する高い空間的および時間的な分解能の画像化測定のために数個の標本を調製すべく設計かつ最適化されている。蛍光信号の検出は、画像を形成する放出蛍光を使用するという落射蛍光顕微鏡に依るものとされ得る。落射蛍光顕微鏡の励起光は、サンプル内の蛍光タグを励起して該蛍光タグに蛍光を放出させるべく使用される。上記落射蛍光顕微鏡の利点は、問題となる生体的構造に対して蛍光分子が選好的に結合することで問題となる斯かる生体的構造の識別を許容する如くサンプルが調製され得るということである。
【0010】
“FISH”という略語は、励起光により照射されたときに二次的信号を発して染色体構造を検出する発色団タグ(蛍光団)を使用する技術を指している。FISHは、高度の配列類似性を示す染色体部分に対してのみ結合する蛍光プローブを使用する。斯かるタグは、特定の染色体および特定の染色体領域に対して指向され得る。上記プローブは、(ゲノムにおける類似の配列に対してではなく)該プローブの目標物に対して特異的にハイブリッド形成するに十分に長寸とされるべきだがハイブリッド形成処理を阻害するほどに大寸とされてなならず、且つ、それは蛍光団により直接的にタグ付けされるべきである。このことは、タグ付けされたヌクレオチドを用いるたとえばニック・トランスレーションまたはPCRなどの種々の様式で行われ得る。(プローブの標識化効率、プローブの種類および蛍光染料の如き多くの要因に依存して)顕微鏡の検出スレッショルド値を超えるべく信号増幅が必要であれば、タグ分子に対しては二次的に蛍光タグ付けされた抗体またはストレプトアビジンが結合されることで信号が増幅される。
【0011】
上記FISH技術は、染色体の異常性および遺伝子マッピングを識別すべく使用され得る。たとえばFISHキットによれば、ダウン症候群の原因であるトリソミー21、過剰染色体21を備えた細胞が“FISH処理”され得る。複数色のDNAプローブから成るFISHキットは市販されている。
【0012】
従来、診断FISHドット・カウンティングは熟練の顕微鏡技術者により手作業で実施されてきた。染色体状態を正しく識別するためには、ドットおよびその色の正しい識別に加え、他のサイズおよび形状の特性が分類されねばならない。上記事情により課される時間的制約により、分析は更に困難とされる。故に顕微鏡技術者は、診断検査を実施するために訓練されねばならない。しかし、最適状態下においてさえも、上記プロセスは単調で長時間に亙り、人的エラーに繋がり易いことが判明している。
【0013】
自動化された顕微鏡検査法の適用は、上記の手作業による手法の欠点の多くを克服する可能性を有している。自動式顕微鏡であれば、人的操作者により引き起こされる不可避の主観的要因なしで、全てを適時な様式として、サンプルにおける蛍光ドットを確実に識別し、それらの色を正確に決定し、それらを形状およびサイズに基づいて分類し、且つ、目標とされた状態の有無を決定するために必要な総括的分析が実施され得る。
【特許文献1】なし
【非特許文献1】ブラックバーン・イー・エイチ(Blackburn E. H.)、1994、Cell、Jun 3;77(5):621〜3
【非特許文献2】モイジス等(Moyzis et al)、1988、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 6622〜6626
【非特許文献3】グリフィス等(Griffith et al.)、1999、大きな二重ループにおける哺乳動物のテロメア端部(Mammalian Telomers end in a large duplex loop)、Cell、May, 14; 97(4): 503−514
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
現在、発育中の胎児におけるテロメア長さを決定する技術および/または情報は実現されていない。同様に、面倒な細胞の分離、または、労働集約的な細胞の分類に対する必要なしで、サンプルにおける他の細胞からガン細胞を検出する方法も存在しない。本発明者等は、蛍光in situハイブリダイゼーションに従いテロメア長さを自動的に決定する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施例においては、妊娠女性から血液のサンプルを分離する段階と、上記血液サンプルから胎児細胞を分離する段階と、テロメアの端部に対してハイブリッド形成すべく設計されたテロメア核酸プローブを用いてテロメア長さ決定することにより上記胎児細胞を識別する段階とを備えて成る、胎児細胞を診断する方法が提供される。
【0016】
一実施例においては、妊娠の任意の段階における母体血液を用いて胎児細胞を診断する方法が提供される。該方法は、妊娠女性から血液のサンプルを分離する段階と、上記血液サンプルから胎児細胞を分離する段階と、テロメア核酸プローブを用いるin situハイブリダイゼーション技術により胎児細胞を識別する段階とを備えて成る。識別された胎児細胞の各パラメータが測定されることで、たとえば、胎児の発育年齢が決定され得る。
【0017】
別実施例においては、
患者から組織サンプルを獲得する段階と、
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)条件を用いて、上記組織サンプル中の細胞の染色体DNAを、テロメアDNA、RNAおよび/またはPNAを備える核酸プローブに対してハイブリッド形成させて処理済みサンプルを獲得する段階と、
上記処理済みサンプルを自動顕微鏡システム上で分析する段階であって、上記自動顕微鏡システムは、
上記処理済みサンプルに関する光学場を自動的に探し、染色体テロメアDNAに結合している上記核酸プローブを表す蛍光信号を検出することによりテロメアを識別し、
上記処理済みサンプル中における他の細胞から、明白に異なる染色体テロメアDNAを有する細胞を識別し、
明白に異なる染色体テロメアDNAを有すると識別された上記細胞を、ガン性状態における細胞を表す標準物であって所定のテロメアDNAが結合しているという標準物と比較し、且つ、
ガン性状態が検出されたか否かに関する情報を出力する、
ように作用的にプログラムされているという段階とを備えて成る、
複数個の正常細胞中に分散されたガン細胞を検出する方法、
が開示される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発育中の胎児の発育年齢などの胎児パラメータが非侵襲的に決定されると共に、サンプル中のガン細胞が非侵襲的に検出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本明細書中に例示される実施例においては、自動化された検出顕微鏡検査法を採用することで蛍光信号の存在を検出かつ監視する蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)方法およびシステムを使用するというテロメア長さの検出および測定/定量方法が開示される。
【0020】
一実施例においては、(a)妊娠女性から血液のサンプルを分離する段階と、(b)上記血液サンプルから胎児細胞を分離する段階と、(c)テロメアの端部に対してハイブリッド形成すべく設計されたテロメア核酸プローブを用いてテロメア長さ決定することにより上記胎児細胞を識別する段階とを備えて成る、胎児細胞を診断する方法が提供される。上記胎児細胞が由来する胎児の発育年齢が判断されるべき場合、それはテロメア長さを調べることで決定され得る。
【0021】
検出および定量は、母体血液のサンプルにおける胎児細胞を識別する付加的な胎児細胞マーカとして使用され得る。一実施例において上記細胞の染色体テロメア長さは、胎児ヘモグロビンの検出と組み合わされ得る。in situハイブリダイゼーション技術が使用され得ると共に、サンプル細胞における染色体DNAに対する核酸プローブのハイブリッド形成の検出は、コンピュータ化されたロボット式顕微鏡を用いて増進され得る。この実施例においては母体血液中の胎児細胞の検出が使用されることで、母体血液サンプルにおける有核赤血球を識別する効率が相当に高められ得る。
【0022】
胎児細胞の識別および決定はまた、蛍光標識により標識化された少なくとも一種類の特異的テロメアDNAプローブと、胎児ヘモグロビンγの如き胎児特異的検出プローブとを用い、母体血液のサンプルから分離された有核胎児細胞の染色体端部のテロメア長さを測定することにより行われ得る。
【0023】
in situハイブリダイゼーションを用いたテロメア長さの定量は、成人細胞の母集団内における胎児細胞を識別するマーカとして使用され得る。母体の血液循環内における胎児細胞検出は、非常に好適であると共に、好首尾な出生前診断に対する低リスクの方法が提供される。テロメアの測定は、迅速な検出システムを用いて行われると共に、蛍光式でコンピュータ化されたロボット式顕微鏡下で分析され得る。母体血液サンプルから入手されたデータは、比較対照サンプル・データと比較される。
【0024】
一実施例において、胎児細胞の識別、特に胎児由来の有核赤血球の識別は、成熟した母体赤血球内に存在するヘモグロビンαと比較して、胎児細胞における核の存在およびヘモグロビンγの存在の識別の如き胎児細胞に存在する区別可能な特性を用いて達成される。
【0025】
本発明の方法は、ドナーの血液サンプルが貧血性の成人に由来するときでさえも胎児細胞を検出し得る。この実施例において、相当のレベルの胎児ヘモグロビンを発現し得る血球を有する一定の貧血性の患者は、膨大な量の母体細胞から非常に微量の胎児nRBCを識別するテロメア・プローブによりスクリーニングされ得る。
【0026】
別実施例においては、たとえば血液などのサンプル組織からの複数の正常細胞中に分散された微量のガン細胞を検出する方法が開示される。患者から組織が獲得された後、上記組織サンプルは、該サンプル組織中の各細胞の染色体テロメア長さの差を検出する蛍光in situハイブリダイゼーション処置を用いて処理される。上記技術は、上記組織サンプル中の細胞の染色体DNAに対してハイブリッド形成するテロメア核酸プローブを使用する。上記ハイブリダイゼーション技術においては、選択された色の蛍光染料によりタグ付けまたは標識化されたテロメアDNA、RNAおよび/またはPNAを備える核酸プローブが用いられる。ハイブリッド形成の後、サンプルは、該サンプルに関する光学場を自動的に探すコンピュータ・プログラムを備えた自動顕微鏡システムを用いて分析されることで、蛍光信号が検出される。上記サンプルから得られた蛍光信号は、染色体テロメアDNAに対する核酸プローブのハイブリッド形成を表すと共に、サンプル細胞内におけるテロメアの存在を識別する。上記蛍光プローブの強度は、上記細胞内に存在するテロメアDNAの長さに対して正比例するとして定量され得る。上記処理されたサンプルにおいて他の細胞と明らかに異なる染色体テロメアDNA長を有する細胞は、所定の基準と比較されたとき、たとえばガン性状態であると識別され得る。上記自動顕微鏡システムは、ガン性状態が検出されたか否かに関する情報を出力し得る。
【0027】
好適実施例に関する説明:
本発明は特定実施例に関して詳細に示されて記述されたが、上記に開示された種々のおよび他の特徴および機能、または、その代替物は望ましくは、他の多くの異なるシステムまたは用途に組み合わされ得ることは理解される。また、現在においては想定されず又は予見されない上記における種々の代替例、変更例、改変例または改良例もまた当業者により引き続き実施され得、それらもまた添付の各請求項により包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
妊娠女性から血液のサンプルを分離する段階と、
上記血液サンプルから胎児細胞を分離する段階と、
標識化されたテロメア核酸プローブを用いるin situハイブリダイゼーションにより胎児細胞を識別する段階とを備えて成る、
胎児細胞を診断する方法。
【請求項2】
前記胎児細胞をヘモグロビンγプローブによりハイブリッド形成させる段階を更に備えて成る、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記テロメア核酸プローブは蛍光化合物により標識化されたDNAプローブから成る、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記DNAプローブは蛍光化合物により直接的もしくは間接的に標識化される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記胎児細胞を識別する前記段階は、前記サンプル中の前記胎児細胞に結合された標識化テロメア核酸プローブから発せられる信号を定量することにより決定される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
妊娠女性から血液のサンプルを分離する段階と、
上記血液サンプルから胎児細胞を分離する段階と、
テロメアの端部に対してハイブリッド形成すべく設計されたテロメア核酸プローブを用いてテロメア長さ決定することにより上記胎児細胞を識別する段階とを備えて成る、
胎児細胞を診断する方法。
【請求項7】
患者から組織サンプルを獲得する段階と、
蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)条件を用いて、上記組織サンプル中の細胞の染色体DNAを、テロメアDNA、RNAおよび/またはPNAを備える核酸プローブに対してハイブリッド形成させて処理済みサンプルを獲得する段階と、
上記処理済みサンプルを自動顕微鏡システム上で分析する段階であって、上記自動顕微鏡システムは、
上記処理済みサンプルに関する光学場を自動的に探し、染色体テロメアDNAに結合している上記核酸プローブを表す蛍光信号を検出することによりテロメアを識別し、
上記処理済みサンプル中における他の細胞から、明白に異なる染色体テロメアDNA長を有する細胞を識別し、
明白に異なる染色体テロメアDNAを有すると識別された上記細胞を、ガン性状態における細胞を表す標準物であって所定のテロメアDNAが結合しているという標準物と比較し、且つ、
ガン性状態が検出されたか否かに関する情報を出力する、
ように作用的にプログラムされているという段階とを備えて成る、
複数個の正常細胞中に分散されたガン細胞を検出する方法。

【公表番号】特表2009−529887(P2009−529887A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500589(P2009−500589)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/063928
【国際公開番号】WO2007/106838
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(504133615)イコニシス インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】