説明

胴衣

【課題】 着用者の身体に的確かつ迅速に装着できる胴衣を提供すること。
【解決手段】 前身頃体10の前身主体部12には第1止着部材16m,16nが設けられており、後身頃体30の後身装着部34a,34bには前記第1止着部材16m,16nと止着する第2止着部材34m,34nが設けられており、更に、前記後身装着部34a,34bの第2の面には、前記後身装着部34a,34bを前記前身主体部12の前記表面に対向させて止着する操作する際に着用者1の手の指を引っ掛けることにより前記後身装着部34a,34bを操作する引き掛け部51が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者に装着する胴衣に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術としては、着用者の胸面・腹面に装着させる前身頃体と、前記着用者の背面に装着させる後身頃体とを備えている胴衣が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この胴衣では、着用者に装着する際に、着用者の胸面・腹面・胸面に前身頃体を対応させ、着用者の背面に後身頃体を対応させる。そして、後身頃体から延びている一対の後身装着部に設けられている止着部材と前身頃体に設けられている止着部材とを止着することによって前身頃体と後身頃体とを着用者に装着するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−144170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の胴衣では、着用者の手の指によって一対の後身装着部を掴み、前身頃体に巻きつけるようにして一対の後身装着部を前身頃体に装着するので、一対の後身装着部を前身頃体にまでで引き寄せるために大きな力を必要とすることから、容易に装着ができないという問題がある。
【0006】
また、着用者が手に手袋をしている場合には、手袋の指部により後身装着部を掴もうとすると、滑りやすく掴み難くなり、大きな指及び腕の力を必要とすることから、後身装着部を前身頃体に装着することが困難となるという問題がある。
【0007】
また、着用者が手に手袋をしている場合には、指により後身装着部を掴み難くなるので、前身頃体から後身装着部を取り外す操作も作業も困難なものとなる。
【0008】
したがって、着用者は、特に緊急時の行動において、迅速に胴衣の装着することが出来ないという問題がある。
【0009】
それ故に、本発明の課題は、着用者の身体に的確かつ迅速に装着でき、迅速に取り外すことができる胴衣を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施の態様においては、着用者に装着する前身頃体及び後身頃体を含む胴衣において、前記前身頃体は、前記着用者の胸面・腹面に対向させる前身主体部を有し、前記後身頃体は前記着用者の背面に対向させる後身主体部と、前記前身主体部の表面に対向するように前記後身主体部から延びている一対の後身装着部とを有し、前記前身主体部の表面には、第1止着部材が設けられており、前記後身装着部には、前記後身装着部を前記前身主体部へ巻きつけるようにして前記前身主体部の前記表面に対向させた際に前記第1止着部材と止着するよう前記後身装着部の第1の面に第2止着部材が設けられており、更に、前記第2止着部材を設けた前記後身装着部の前記第1の面と対向する第2の面には、前記後身装着部を前記前身主体部の前記表面に対向させて止着する操作又は前記後身装着部を前記前身主体部から取り外し操作する際に前記着用者の手の指を引っ掛けることにより前記後身装着部を操作する引き掛け部が設けられていることを特徴とする胴衣が得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施の態様に係る胴衣によれば、着用者が胴衣を装着・取り外すときに引き掛け部に挿入して引っ掛け操作することによって、着用者の身体に的確かつ迅速に装着でき、迅速に取り外すことができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明に係る胴衣の一実施の形態例を示している。図1を参照して、胴衣は、着用者1の胸面・腹面に対向させて装着する前身頃体10と、着用者1の背面に対向させて装着する後身頃体30とを備えている。
【0013】
前身頃体10は着用者1が着用したときに、着用者1の胸面・腹面に対向する前身主体部12と、着用者1の肩面にそれぞれ対向させるように前身主体部12の上部から延びている一対の前身肩部14aとを有している。
【0014】
着用者1の腹面に対向する前身主体部12の表面には、一対の前身連結部16a,16bが設けられている。前身連結部16a,16bの表面には、止着・取り外しが可能な止着部材16m,16n(第1止着部材)が設けられている。
【0015】
さらに、着用者1の腹面に対応する部分における前身主体部12の表面には、上部が前身主体部12の上部に接続されている前掛け部12aが前身主体部12の表面を開閉可能になすように設けられている。
【0016】
前身主体部12の表面の下方側には、帯状の止着部材12mが設けられている。一方、前掛け部12aの内側面には、止着部材12mと止着・取り外しが可能な止着部材12nが設けられている。
【0017】
したがって、前掛け部12aは、前身主体部12に対向させた際に、内側面に設けられている止着部材12nによって前身主体部12の表面に設けられている止着部材12mに止着・取り外しが可能なものである。
【0018】
なお、前身主体部12の中央部の内部には、図示しない防護板が設けられている。
【0019】
図2は、図1に示した胴衣の後身頃体30を展開して背面から見た状態を示している。図3は後身頃体30の一部を示す断面図である。図4は図2に示した後身頃体30を内側から見た状態を示している。
【0020】
図2乃至図4をも参照して、後身頃体30は、着用者1が胴衣を着用したときに、着用者1の背面に対応する後身主体部32と、後身主体部32の上部から着用者1の肩面のそれぞれに対応させるように後身主体部32から延びている一対の後身肩部33a,33bとを有している。
【0021】
さらに、一対の後身肩部33a,33bには、一対の後身肩部33a,33bと一体に一対の肩掛け部33d,33eが設けられている。一対の肩掛け部33d,33eは、一対の後身肩部33a,33b及び一対の前身肩部14aの表面を開閉可能に保持する部分である。
【0022】
また、着用者1の首部の周りに対応する一対の後身肩部33aには、略馬蹄形の首襟部33gが一対の後身肩部33a,33bと一体に設けられている。なお、図4に示したように、後身主体部32の中央部には、防護板32aが設けられている。
【0023】
後身頃体30は、後身主体部32の左側縁及び右側縁からそれぞれ延びている一対の後身装着部34a,34bを有している。
【0024】
一対の後身装着部34a,34bは、前身主体部12上の腹面に対向するように延びており、一対の前身連結部16a,16bの表面のそれぞれと一対一に着脱可能となっている。後身装着部34a,34bの内側面((第1の面))のそれぞれには、止着・取り外しが可能な止着部材34m,34n(第2の止着部材)が設けられている。
【0025】
後身装着部34a,34bは、止着部材34m,34nによって前身連結部16a,16bの表面に設けられている止着部材16m,16nと着脱可能となっている。
【0026】
さらに、図2に示したように、後身装着部34a,34bの延在端部における表面(第1の面に対向している第2の面)のそれぞれには、図2及び図3に示したように、引き掛け部51が形成されている。引き掛け部51は、後身装着部34a,34bを構成している2枚の基材34x、34yを重ね合わせ結合糸53により縫合することによって結合されており、後身装着部34a,34bの端部にポケット部55を構成している。ポケット部55は、着用者1の少なくとも親指が入り込む大きさとすることが望ましい。
【0027】
胴衣を着用者1に装着するには、着用者1の胸面・腹面・胸面に前身頃体10を対応させ、着用者1の背面に後身頃体30を対応させた状態で、一対の後身肩部33a,33bと一体となっている一対の肩掛け部33d,33eによって一対の前身肩部14aを囲むように閉じることによって保持する。
【0028】
その後、後身装着部34a,34bは、一対の前身連結部16a,16bへ巻きつけるように操作して前身連結部16a,16bに装着する。この際、後身装着部34a,34bの引き掛け部51のポケット部55には、着用者1の指を挿入し引っ掛け、後身装着部34a,34bを巻きつけるようにして前身連結部16a,16b側へ引き寄せて装着する。
【0029】
即ち、後身装着部34a,34b及び一対の前身連結部16a,16bは、図5に示すように、前身連結部16a,16bの表面に設けられている止着部材16m,16nと後身装着部34a,34bに設けられている止着部材34m,34nとが止着する。
【0030】
このように後身装着部34a,34bと前身連結部16a,16bとを止着部材16m,16nと止着部材34m,34nとによって装着することにより、着用者1の身体に的確にかつ迅速に装着できる。
【0031】
また、装着した後は、後身装着部34a,34bの引き掛け部51のポケット部55に着用者1の指を挿入し引っ掛け操作することにより後身装着部34a,34bを迅速に取り外すことができる。
【0032】
なお、止着部材12m,12n、16m,16n、34m,34nは、面ファスナー、スナップ式ファスナー、スナップボタン、ファスナーテープ、スナップテープなどから選択して適宜に利用する。
【0033】
図6(A)及び図6(B)は、後身装着部34a,34bの引き掛け部51とは異なる他の実施の形態例を示している。
【0034】
図6(A)及び図6(B)に示した後身装着部34a,34bの引き掛け部61は、後身装着部34a,34bの表面(第2の面)の端部に帯部材63をループ状に重ね合わせ結合糸65により縫合して結合しループ状の帯部材63と、この帯部材63に保持したリング部材66とを有する。
【0035】
ループ状の帯部材65には、リング部材66が通されてリング部材66が外れないように保持されている。リング部材66は、樹脂又は金属製とし、着用者1の少なくとも親指が入り込む大きさとすることが望ましい。
【0036】
この引き掛け部61においても、後身装着部34a,34bの引き掛け部61のリング部材66に着用者1の指を挿入し引っ掛けてから後身装着部34a,34bを巻きつけるようにして前身連結部16a,16b側に引き寄せることにより前身連結部16a,16bに装着する。
【0037】
即ち、前身連結部16a,16bの表面に設けられている止着部材16m,16nと後身装着部34a,34bに設けられている止着部材34m,34nとを止着する。
【0038】
このように後身装着部34a,34bと前身連結部16a,16bとを、止着部材16m,16nと止着部材34m,34nとによって止着することにより、着用者1の身体に的確かつ迅速に装着できると共に、装着後の後身装着部34a,34bをご迅速に取り外すことができる。
【0039】
図7(A)及び図7(B)は、後身装着部34a,34bの引き掛け部51と異なるさらに他の実施の形態例を示している。
【0040】
図7(A)及び図7(B)に示した後身装着部34a,34bの引き掛け部71は、後身装着部34a,34bの端部に両端部を結合糸75により縫合した結合されている帯部材73を有する。
【0041】
後身装着部34a,34bの表面と帯部材73の中間部分との隙間は、着用者1の少なくとも親指が入り込む大きさとすることが望ましい。
【0042】
この引き掛け部71においても、後身装着部34a,34bの引き掛け部71に着用者1の指を挿入し引っ掛けて、後身装着部34a,34bを巻きつけるようにして後身装着部34a,34bを引き寄せることにより前身連結部16a,16bへ装着する。
【0043】
即ち、前身連結部16a,16bの表面に設けられている止着部材16m,16nと後身装着部34a,34bに設けられている止着部材34m,34nとを止着する。
【0044】
このように後身装着部34a,34bと前身連結部16a,16bとを、止着部材16m,16nと止着部材34m,34nとによって止着することにより、着用者1の身体に的確にかつ迅速に装着できると共に、装着後の後身装着部34a,34bをご迅速に取り外すことができる。
【0045】
なお、引き掛け部71の帯部材73は、後身装着部34a,34bの端部の耳部に近隣するように大きな外形形状のものであってもよい。
【0046】
上述した胴衣は、浮力部材を設けた救命胴衣、防刃部材を設けた防刃胴衣、もしくは防弾部材を設けた防護胴衣として適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る胴衣の一実施の形態例を示し、胴衣を着用する前の状態を示す斜視図である。
【図2】図1の胴衣の後身頃体を裏面で展開した状態を示す背面図である。
【図3】図1の胴衣の後身装着部の一部を断面して示した図2のIII-III線断面図である。
【図4】図2の胴衣の後身頃体を内側面で展開した状態を示す背面図である。
【図5】図1に示した胴衣を着用者が装着した状態を示す斜視図である。
【図6】図1に示した胴衣の後身装着部における引き掛け部の他の実施の形態例を示しており、(A)は一方側の後身装着部の平面図、(B)は(A)の正面図である。
【図7】図1に示した胴衣の後身装着部における引き掛け部のさらに他の実施の形態例を示しており、(A)は一方側の後身装着部の平面図、(B)は(A)のVI-VI線断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 着用者
10 前身頃体
12 前身主体部
12a 前掛け部
12m,12n,16m,16n,34m,34n 止着部材
14a 前身肩部
16a,16b 前身連結部
30 後身頃体
32 後身主体部
33a,33b 後身肩部
34a,34b 後身装着部
33d,33e 肩掛け部
33g 首襟部
34x、34y 基材
65,75 結合糸
51,61,71 引き掛け部
55 ポケット部
63、73 帯部材
66 リング部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者に装着する前身頃体及び後身頃体を含む胴衣において、
前記前身頃体は、前記着用者の胸面・腹面に対向させる前身主体部を有し、
前記後身頃体は前記着用者の背面に対向させる後身主体部と、前記前身主体部の表面に対向するように前記後身主体部から延びている一対の後身装着部とを有し、
前記前身主体部の表面には、第1止着部材が設けられており、
前記後身装着部には、前記後身装着部を前記前身主体部へ巻きつけるようにして前記前身主体部の前記表面に対向させた際に前記第1止着部材と止着するよう前記後身装着部の第1の面に第2止着部材が設けられており、
更に、前記第2止着部材を設けた前記後身装着部の前記第1の面と対向する第2の面には、前記後身装着部を前記前身主体部の前記表面に対向させて止着する操作又は前記後身装着部を前記前身主体部から取り外し操作する際に前記着用者の手の指を引っ掛けることにより前記後身装着部を操作する引き掛け部が設けられていることを特徴とする胴衣。
【請求項2】
請求項1記載の胴衣において、前記引き掛け部は、前記後身装着部を構成している2枚の基材により前記着用者の少なくとも親指が入り込む大きさに形成されているポケット部であることを特徴とする胴衣。
【請求項3】
請求項1記載の胴衣において、前記引き掛け部は、前記第2の面に結合したループ状の帯部材と、該帯状部材に保持したリング部材とからなることを特徴とする胴衣。
【請求項4】
請求項1記載の胴衣において、前記引き掛け部は、前記第2の面に両端部を結合した帯部材であることを特徴とする胴衣。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−126855(P2010−126855A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304861(P2008−304861)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(594137410)信和株式会社 (6)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】