説明

脂環式ジアミンおよびその製造方法

本発明は、脂環式ジアミンおよびその製造方法を提供する。本発明による脂環式ジアミンは、連続的な還元的アミノ化反応器系に供給された、1,3−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、1,4−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、それらの混合物、およびそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、ならびにアンモニアの反応生成物を含み;1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、およびアンモニアは、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系の存在下で、80℃〜約160℃の範囲の温度で、かつ、700〜3500psigの範囲の圧力で互いに接触し;1つまたは複数の脂環式ジアミンが形成され;前記1つまたは複数の脂環式ジアミンが、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、それらの組合せ、およびそれらの混合物からなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「脂環式ジアミンおよびその製造方法」という名称の、2009年7月31日に出願された米国仮特許出願第61/230319号から優先権を主張する非仮出願であり、その教示を、以下で完全に再現しているかのように参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、脂環式ジアミンおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ビス(アミノメチル)シクロヘキサンは、脂肪族ジイソシアネート(ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン)の前駆体としての用途を有するジアミンである。それは、特定のポリウレタン系における鎖延長剤として有用であり、エポキシ硬化剤として使用可能である。ビス(アミノメチル)シクロヘキサンは、いくつかの異性体として存在し、その1,3−および1,4−異性体が最も重要である。アミノメチル基はシクロヘキサン環の平面の上または下にそれぞれ配置できるので、1,3−および1,4−異性体は、いくつかのジアステレオマーの形態で存在することもできる。
【0004】
1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン混合物は、いくつかの合成経路を経由して調製することができる。米国特許第3143570号は、水中での中間体固形物イミノメチルシクロヘキサンカルボニトリルの調製および分離を必要とする2段階プロセスを記載している。
【0005】
別の例では、経路は、ブタジエンおよびアクロレインを用いて開始することができ、ディールス‐アルダー反応で1,2,3,6−テトラヒドロベンズアルデヒドを形成する。次いでこの中間体は、ヒドロホルミル化して第2のアルデヒド基を追加し、還元的にアミノ化して所望のジアミンを形成する。例えば米国特許第6252121号に記載されるように、ジアミンの異性体形態の混合物が得られる。
【0006】
しかし、米国特許第6252121号にあるように、スポンジ金属触媒またはシリカゲル/アルミナ担持ニッケルを用いて、ヒドロホルミル化した1,2,3,6−テトラヒドロベンズアルデヒドを還元的にアミノ化すると、低い収率でジアミン生成物を生じる傾向がある。出発材料の相当部分は、不要な副生物およびポリマー種を形成する。その結果、原料費が高く、粗生成物の精製が困難で高価になる恐れがある。ポリマー副生物は、しばしば反応器および下流での精製単位操作を汚す。
【0007】
例えば、米国特許第5041675号および第5055618号に記載されるように、アルキルアミンでアルデヒド基を「保護する」(または「阻止する」)ことにより、還元的アミノ化反応における副生物形成を抑制することがときには可能である。阻止された基は、重合および他の不要副反応に対し、より耐性がある。しかし、この手法は、追加の原料を使用することが必要であり、反応に追加の化学種を導入する。その追加の化学種は、後に粗生成物から除去し、リサイクルしなければならない。プロセスの収率は、高度に経済的なプロセスを有するのに必要な収率にはまだ非常に足りない。
【0008】
さらに、ジアルデヒド中間体を経由する1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造は、触媒失活のため困難であることがあり、この触媒失活により収率が急激に低下する。より安定な触媒が確認されてきたが、これらの触媒では、操作の一番最初から収率は低い。さらに、ジアルデヒド中間体の経路では、アクロレインの供給が信頼でき、十分でなければならない。
【0009】
これらの触媒性能の問題を克服し、将来起こる可能性のあるアクロレインの供給問題を回避するために、本発明は、1,3−および1,4−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド(CCA)の還元的アミノ化を提供する。この中間体は、アクリロニトリル原料に基づいており、これはアクロレインよりも入手が容易である。ニトリル基の還元とアルデヒド官能性の還元的アミノ化とを同時に行うには、特殊な触媒が必要である。従来のニトリル還元条件および触媒は、アルデヒドの還元的アミノ化条件および触媒よりも攻撃的である。したがって、ニトリル基の完全な還元のために有効である触媒および条件は、アルデヒドを対応するアルコールに還元する傾向を有し、収率の損失を伴う恐れもある。一方、アルデヒドの還元的アミノ化のために通常選択される触媒および条件は、ニトリル基を完全に還元するには通常効果がなく、中間体アミノニトリルの収率損失を生じる。さらに、現在の触媒の寿命が比較的短いため、他の課題が生じる。ジアミン生成物(1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン)の良好な収率をもたらす触媒は、稼動250時間未満内にニトリル水素化段階のための活性を絶えず消失する。このプロセスのための経済的に実行可能な触媒は、寿命の時間数、または、同等に触媒1ポンド当たりに製造される1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンのポンド数がより多く必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、脂環式ビス(アミノメチル)化合物を経済的にかつ高収率で調製できる方法を提供すれば望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、脂環式ジアミンおよびその製造方法を提供する。
【0012】
一実施形態では、本発明は、還元的アミノ化反応器系に供給された、1,3−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、1,4−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、それらの混合物、およびそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、ならびにアンモニアの反応生成物を含む脂環式ジアミンを提供し;1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、およびアンモニアは、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系の存在下で、80℃〜約160℃の範囲の温度で、かつ、700〜3500psigの範囲の圧力で互いに接触し;1つまたは複数の脂環式ジアミンが形成され;前記1つまたは複数の脂環式ジアミンが、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、それらの組合せ、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0013】
別の一実施形態では、本発明はさらに、(1)1,3−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、1,4−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、それらの混合物、およびそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、ならびにアンモニアを還元的アミノ化反応器系に供給する段階と、(2)1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、およびアンモニアを、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系の存在下で、80℃〜約160℃の範囲の温度で、かつ、700〜3500psigの範囲の圧力でお互いに接触させる段階と、(3)それによって、1つまたは複数の脂環式ジアミンを形成し、前記1つまたは複数の脂環式ジアミンが、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、それらの組合せ、およびそれらの混合物からなる群から選択されるジアミンである段階とを含む脂環式ジアミンを製造するための方法を提供する。
【0014】
もう1つ別の一実施形態では、本発明はさらに、(1)1,3−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、1,4−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、それらの混合物、およびそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、ならびにアンモニアを、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系の存在下で、80℃〜約160℃の範囲の温度で、かつ1400〜2500psigの範囲の圧力で互いに接触させる段階と、(2)それによって、1つまたは複数の脂環式ジアミンの生成物収率を改善し、前記1つまたは複数の脂環式ジアミンが、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、それらの組合せ、およびそれらの混合物からなる群から選択されるジアミンである段階とを含む脂環式ジアミンの製造収率を改善する方法を提供する。
【0015】
別の一実施形態では、本発明は、1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒドが、最初にアンモニアと接触し、次いで混合物が1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系の存在下で水素と接触することを除いて、先行する実施形態のいずれかによる、脂環式ジアミンおよびその製造方法、ならびに脂環式ジアミンの製造収率を改善する方法を提供する。
【0016】
別の一実施形態では、本発明は、反応器系が、固定床反応器、スラリー反応器、またはそれらの組合せを含む1つまたは複数の連続反応器を備えることを除いて、先行する実施形態のいずれかによる、脂環式ジアミンおよびその製造方法、ならびに脂環式ジアミンの製造収率を改善する方法を提供する。
【0017】
別の一実施形態では、本発明は、固定床反応器が、トリクルベッド反応器、充填気泡塔反応器、または向流反応器を含むことを除いて、先行する実施形態のいずれかによる、脂環式ジアミンおよびその製造方法、ならびに脂環式ジアミンの製造収率を改善する方法を提供する。
【0018】
別の一実施形態では、本発明は、スラリー反応器が、撹拌タンクスラリー反応器、スラリー気泡塔反応器、循環流動層反応器、またはエジェクターノズル付きループ反応器を含むことを除いて、先行する実施形態のいずれかによる、脂環式ジアミンおよびその製造方法、ならびに脂環式ジアミンの製造収率を改善する方法を提供する。
【0019】
別の一実施形態では、本発明は、セミバッチまたはバッチ反応器が、固定床反応器、またはスラリー反応器、またはそれらの組合せを含むことを除いて、先行する実施形態のいずれかによる、脂環式ジアミンおよびその製造方法、ならびに脂環式ジアミンの製造収率を改善する方法を提供する。
【0020】
別の一実施形態では、本発明は、固定床反応器が、トリクルベッド反応器、充填気泡塔反応器、または向流反応器を含むことを除いて、先行する実施形態のいずれかによる、脂環式ジアミンおよびその製造方法、ならびに脂環式ジアミンの製造収率を改善する方法を提供する。
【0021】
別の一実施形態では、本発明は、スラリー反応器が、撹拌タンクスラリー反応器、スラリー気泡塔反応器、循環流動層反応器、またはエジェクターノズル付きループ反応器を含むことを除いて、先行する実施形態のいずれかによる、脂環式ジアミンおよびその製造方法、ならびに脂環式ジアミンの製造収率を改善する方法を提供する。
【0022】
別の一実施形態では、本発明は、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系が、完全な反応混合物と接触する前に、200℃〜500℃の範囲の温度で水素と接触することを除いて、先行する実施形態のいずれかによる、脂環式ジアミンおよびその製造方法、ならびに脂環式ジアミンの製造収率を改善する方法を提供する。
【0023】
別の一実施形態では、本発明は、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系が、完全な反応混合物と接触する前に、0℃〜80℃の範囲の温度でアンモニア、溶媒、水素、それらの混合物、およびそれらの組合せを含む混合物と接触することを除いて、先行する実施形態のいずれかによる、脂環式ジアミンおよびその製造方法、ならびに脂環式ジアミンの製造収率を改善する方法を提供する。
【0024】
本発明を説明する目的で、例示的である形態を図面に示す。しかしながら、本発明は、図示される正確な配置および手段に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】例示的な管型反応器を示す図である。
【図2】触媒系を試験するための研究室システム用の例示的プロセスフロー図を示す概略図である。
【図3】実施例1の稼動時間およびモル収率間の関係を示すグラフである。
【図4】実施例2の稼動時間およびモル収率間の関係を示すグラフである。
【図5】実施例3の稼動時間およびモル収率間の関係を示すグラフである。
【図6】実施例4の稼動時間およびモル収率間の関係を示すグラフである。
【図7】実施例5の稼動時間およびモル収率間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、脂環式ジアミンおよびその製造方法を提供する。本発明による脂環式ジアミンは、還元的アミノ化反応器系、例えば、1つまたは複数の連続反応器、1つまたは複数のバッチ反応器、1つまたは複数のセミバッチ反応器、またはそれらの組合せに供給された、3−シアノシクロヘキサン−1−カルボキシアルデヒド、4−シアノシクロヘキサン−1−カルボキシアルデヒド、それらの混合物、およびそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、ならびにアンモニアの反応生成物を含み;1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、およびアンモニアは、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系の存在下で、80℃〜約160℃の範囲の温度で、かつ、700〜3500psigの範囲の圧力で互いに接触し;1つまたは複数の脂環式ジアミンが形成され;前記1つまたは複数の脂環式ジアミンが、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、それらの組合せ、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0027】
1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒドは、3−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、4−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、それらの混合物、およびそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0028】
3−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、CAS No.50738−61−9は、以下の構造および式を有し得る。
【0029】
【化1】

【0030】
4−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、CAS No.18214−33−0は、以下の構造および式を有し得る。
【0031】
【化2】

【0032】
1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、およびアンモニア間の反応は、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系の存在下で、60℃〜200℃、例えば、80℃〜約160℃または90℃〜約130℃の範囲の温度で、かつ、500〜5000psig、例えば、700〜3500psigまたは1400〜2500psigの範囲の圧力で生じ得る。そのような1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系は、Co、Ni、Ru、Fe、Cu、Re、Pdからなる群から選択される金属、それらの酸化物、それらの混合物、およびそれらの組合せを含み得る。そのような1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系は、バルク金属触媒系、スポンジ金属触媒系、担持型金属触媒系、それらの混合物またはそれらの組合せを含み得る。そのような1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系は、バルクCoベースの触媒系を含み得る。連続プロセスでは、触媒の寿命は、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系に対する1つまたは複数の脂環式ジアミンの重量比を促進し、その比は300より大きい、例えば500より大きい、または別の場合では900より大きい、または別の場合では1000より大きい。さらに、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系は、スポンジ金属触媒を含み得る。さらに、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系は、1つまたは複数の助触媒あるいは1つまたは複数の結合剤あるいは1つまたは複数の触媒担体を含み得る。そのような1つまたは複数の助触媒は、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属からなる群から選択され得る。そのような1つまたは複数の結合剤は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、それらの混合物、またはそれらの組合せを含み得る。そのような1つまたは複数の触媒坦体は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、それらの混合物、またはそれらの組合せを含み得る。そのような1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系は、Grace Davison Catalyst CompanyのRaney Cobalt Catalyst、BASFのCo−0179Tコバルト触媒、BASFのCo−138Eコバルト触媒、およびSud−ChemieのG−103コバルト触媒の市販品が入手可能である。
【0033】
連続プロセスでは、触媒の費用は、その寿命に依存し、その寿命は、求められる触媒1ポンド当たりに製造される生成物の重量と同等である。十分に長い寿命は、経済的に実行可能な連続プロセスで求められる。1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系は、1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、およびアンモニア間の反応を触媒するのに必要な量で存在し得る。例えば、触媒寿命は、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系に対する脂環式ジアミンの重量比を促進し、300より大きい、例えば500より大きい、または別の場合では900より大きい、または別の場合では1000より大きい。一実施形態では、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系は、例えば、連続固定床触媒系を含み得る。
【0034】
1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系は、1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、およびアンモニア間の反応を触媒するのに必要な量で存在し得る。空間速度は、触媒質量当たり、1時間当たりの1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド混合物の質量と定義されるが、毎時0.1〜10.0、例えば毎時0.1〜5.0、または別の場合では毎時0.1〜3.0、または別の場合では毎時0.1〜2.0、または別の場合では毎時0.1〜1.0、または別の場合では毎時0.3〜0.8の範囲にある。
【0035】
アンモニアは、1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒドに関して過剰な量で存在する。アンモニアは、例えば、1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒドの1モル当たり2〜50モルの範囲で、または別の場合では、1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒドの1モル当たり5〜40モルの範囲で、または別の場合では、1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒドの1モル当たり8〜30モルの範囲で存在し得る。水素は、例えば、1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒドのモル当たり3〜30モルの範囲で、または別の場合では、1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒドの1モル当たり3〜10モルの範囲で、または別の場合では、1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒドの1モル当たり3〜6モルの範囲で存在し得る。
【0036】
1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、およびアンモニア間の反応は、1つまたは複数の溶媒の存在下で場合によって起こり得る。そのような溶媒は、これに限定されないが、水;2−プロパノール(イソプロピルアルコール)、CAS No.67−63−0;メタノール、CAS No.67−56−1;t−ブタノール、CAS No.75−65−0;およびテトラヒドロフラン(THF)、CAS No.109−99−9を含む。反応器へのフィードは、1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒドおよび1つまたは複数の溶媒の合計重量に対する、1つまたは複数の溶媒の0〜90重量パーセント、または別の場合では、1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒドおよび1つまたは複数の溶媒の合計重量に対する、1つまたは複数の溶媒の0〜30重量パーセント、または別の場合では、1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒドおよび1つまたは複数の溶媒の合計重量に対する、1つまたは複数の溶媒の0〜10重量パーセントを含み得る。
【0037】
1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、およびアンモニア間の反応は、連続的な還元的アミノ化反応器系で起こり得、または別の場合では、その反応はバッチ反応器系で起こり得、または別の場合では、その反応はセミバッチ反応器系で起こり得る。そのような反応器系は、一般に当業者に知られている。連続的な還元的アミノ化反応器系、セミバッチ還元的アミノ化反応器系、またはバッチ還元的アミノ化反応器系は、直列式、並列式、またはそれらの組合せの、1つまたは複数の反応器を含み得る。
【0038】
本発明により製造される1つまたは複数の脂環式ジアミンは、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、それらの組合せ、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0039】
1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、CAS No.2579−20−6は、以下の構造または式を有し得る。
【0040】
【化3】

【0041】
1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、CAS No.2549−93−1は、以下の構造または式を有し得る。
【0042】
【化4】

【0043】
追加の副生物は、3−(アミノメチル)シクロヘキサンカルボニトリル、CAS No.23083−50−3;4−(アミノメチル)シクロヘキサンカルボニトリル、CAS No.54898−73−6;3−アザビシクロ[3.3.1]ノナン、CAS No.280−70−6;3−アザビシクロ[3.3.1]ノナ−2−エン、CAS No.7129−32−0;7−アミノ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−メタンアミン;3−(アミノメチル)−シクロヘキサンメタノール、CAS No.925921−54−6;4−(アミノメチル)−シクロヘキサンメタノール、CAS No.1074−62−0を含み得る。
【0044】
本発明による脂環式ジアミンを製造するためのプロセスは、(1)1,3−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、1,4−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、それらの混合物、およびそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、ならびにアンモニアを、還元的アミノ化反応器系に供給する段階と、(2)1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、およびアンモニアを、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系の存在下で、80℃〜約160℃の範囲の温度で、かつ、700〜3500psigの範囲の圧力で互いに接触させる段階と、(3)それによって、1つまたは複数の脂環式ジアミンを形成し、前記1つまたは複数の脂環式ジアミンが、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、それらの組合せ、およびそれらの混合物からなる群から選択されるジアミンである段階とを含む。
【0045】
本発明による、脂環式ジアミンを製造するためのプロセスでは、1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、アンモニア、および任意選択で1つまたは複数の溶媒は、還元的アミノ化反応器系に導入され、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系の存在下で、80℃〜約160℃の範囲の温度で、かつ、700〜3500psigの範囲の圧力で互いに反応して、1つまたは複数の脂環式ジアミンを生じる。
【0046】
一実施形態では、1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒドは、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系の存在下で、最初にアンモニアと接触し、次いで、1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒドとアンモニアとの反応生成物を含む生成混合物が、水素と接触する。
【0047】
1つまたは複数の脂環式ジアミン、場合により1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒドとアンモニアとの反応生成物の一部、場合によりアンモニアの一部、場合により水素の一部、場合により1つまたは複数の副生物の一部、場合により水の一部、および場合により1つまたは複数の溶媒の一部を含む生成混合物は、上記したように、1つまたは複数の反応器系で形成される。次いで生成混合物は、1つまたは複数の反応器系から取り出され、連続的に配置した1つまたは複数の蒸留塔に移される。生成混合物が、連続的に配置した1つまたは複数の蒸留塔に移された後、アンモニアの少なくとも一部、水素の一部、またはそれらの混合物は、1つまたは複数の蒸留段階を経由して生成混合物から除去される。次いで、場合により存在するなら、1つまたは複数の溶媒の少なくとも一部、および/または水は、1つまたは複数の蒸留段階を経由して除去される。次いで、1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒドと、アンモニアとの反応生成物の少なくとも一部、あるいは1つまたは複数の副生物は、1つまたは複数の蒸留段階を経由して除去され、したがって、生成混合物から1つまたは複数の脂肪族ジアミンを分離し、1つまたは複数のシアノアルデヒドを1つまたは複数の脂肪族ジアミンに変換する。蒸留プロセスは、さらに、参照により本明細書にその全体が組み込まれている米国仮特許出願第61/230300号に記載されている。
【0048】
本発明による脂環式ジアミンの製造収率を改善する方法は、(1)1,3−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、1,4−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、それらの混合物、およびそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、ならびにアンモニアを1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系の存在下で、80℃〜約160℃の範囲の温度で、かつ、1400〜2500psigの範囲の圧力で互いに接触させる段階と、(2)それによって、1つまたは複数の脂環式ジアミンの生成物収率を改善し、前記1つまたは複数の脂環式ジアミンが、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、それらの組合せ、およびそれらの混合物からなる群から選択されるジアミンである段階とを含む。
【0049】
本発明により製造される1つまたは複数の脂環式ジアミンは、脂肪族ジイソシアネート(ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン)への前駆体、特定のポリウレタン系の鎖延長剤、またはエポキシ硬化剤として使用できる。
【実施例】
【0050】
以下の実施例は、本発明を例示するが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0051】
実施例A〜Gは、以下の手順によりバッチ反応器で調製した。
【0052】
実施例A
3−および4−シアノシクロヘキサン−1−カルボキシアルデヒド(1.001g;7.30ミリモル)ならびにジグリム(diglyme)(0.4004g;内部標準)の混合物を、Grace Davisonにより提供されるNi−Cr修飾Raney Co 2724触媒(0.2g)、アンモニア(液状)(6.82g;401mmol)、およびメタノール(溶媒として)(25ml)を含む高圧反応器である80mlのParr反応器に入れた。反応器を10〜15分間以内で120℃に加熱した。次いで水素を約1000psiになるまで加え、反応混合物を120℃で3時間撹拌した。反応器内容物のガスクロマトグラフィー分析によれば、1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが96パーセントの収率で得られ、3−アザビシクロ[3.3.1]−ノナン(二環式副生物)は反応混合物中に約2パーセントのみ検出された。
【0053】
実施例B
6.82g(401mmol)のアンモニアの代りに1.68g(99mmol)のアンモニアを使用した以外は、実施例Aに記載した手順を繰り返した。1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンならびに3−アザビシクロ[3.3.1]ノナンの収率はそれぞれ91パーセントおよび6パーセントであった。
【0054】
実施例C
溶媒としてメタノールの代りにn−ブタノールを使用した以外は、実施例Aに記載した手順を繰り返した。1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンならびに3−アザビシクロ[3.3.1]ノナンの収率はそれぞれ92パーセントおよび4パーセントであった。
【0055】
実施例D
Raney Co 2724触媒の代りにGrace DavisonのCr修飾Raney Ni 2400触媒を使用した以外は、実施例Aに記載した手順を繰り返した。1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンならびに3−アザビシクロ[3.3.1]ノナンの収率はそれぞれ96パーセントおよび4パーセントであった。
【0056】
実施例E
Raney Co 2724触媒の代りにGrace DavisonのMo(モリブデン)修飾Raney Ni 3110触媒を使用した以外は、実施例Aに記載した手順を繰り返した。1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンならびに3−アザビシクロ[3.3.1]ノナンの収率はそれぞれ92パーセントおよび8パーセントであった。
【0057】
実施例F
Raneyコバルト触媒の代りにAldrichのシリカ/アルミナ担持208779ニッケル触媒を使用した以外は、実施例Aに記載される手順を繰り返した。1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンならびに3−アザビシクロ[3.3.1]ノナンの収率はそれぞれ90パーセントおよび10パーセントであった。
【0058】
実施例G
450mLのParr反応器で28種の触媒をスクリーニングした。他の粉末状材料との直接比較用に供するため、粒状および成形触媒をまず粉砕した。すべての触媒を最初に、30psigおよび180℃で1時間、水素と共に処理した。次いで、反応器を脱気し、室温でメタノール/アンモニア混合物を反応器に入れた。次いで反応器を撹拌しながら反応温度、約130℃に加熱し、反応物シアノアルデヒドを反応器に注入した。次いで水素を用いて反応器を1000psigに加圧した。水素の取込みが停止するまで1000psigを維持するのに必要なだけ水素を供給した。次いで反応器を冷却し、サンプリングした。Grace DavisonのRaney Co 2786の場合、触媒1g−1時間当たり生成物6.19gの統合(時間平均)反応速度で、二環式副生物(3−アザビシクロ[3.3.1]ノナン)1g当たり10.7gの生成物(1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン)を得た。
【0059】
実施例1〜5は、以下の手順により連続固定床反応器で調製した。
【0060】
実施例1
約85〜90重量パーセントのシアノアルデヒドを含む粗シアノアルデヒドを蒸留し、オーバーヘッド(overheads)を少量(数百ppm)の酸化防止剤であるIsonox132と組み合わせることにより、反応器フィード混合物を調製した。蒸留したシアノアルデヒドをテトラヒドロフラン(THF)で25重量パーセントに希釈した。混合物を炭酸ナトリウム層に通し(フィードの前処理)、窒素を拡散(sparged)させた。反応管にBASFにより提供されるCo−0179T触媒5.5gを装填し、100粒度(grit)(150μm)のSiC(シリコンカーバイド)微粒子で希釈した。設計した反応器の概略図を図1で見ることができる。図2に反応器系のフロー図を示す。開始の前に触媒を200℃で一晩、流動水素を用いて処理した。反応器温度を連続水素フロー下で80℃未満に下げた後、アンモニアの過剰フロー(本明細書の以下で記述するように、所望の設定点の少なくとも3〜5倍)を開始し、次いで有機混合物、すなわち、シアノアルデヒドおよびTHFについて同じ比率での過剰フローを行った。次いで温度および圧力を所望の設定点である100℃および1000psigに設定した。少なくとも1時間後に、アンモニアおよび有機物のフィード速度をそれぞれ所望の設定点である0.22mL/minに下げ、シアノアルデヒドに対する水素のモル比10に伴う毎時重量空間速度(有機物およびアンモニアの合計質量フィード速度に基づく)を5hr−1にした。サンプルを定期的に反応器から収集し、ガスクロマトグラフィーで分析した。稼動0〜64時間の間に収集したサンプルは、ジアミン(1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン)のモル収率が77〜80パーセントであり、アミノニトリルのモル収率が11〜14パーセントであり、二環式アミン(3−アザビシクロ[3.3.1]ノナン)のモル収率が6〜7パーセントであることを示し、この期間の生成物分布に有意な変化はなく、触媒性能が安定していることを示唆した。次いで、フィード速度を半減させ、WHSV(毎時重量空間速度)を2.5hr−1に下げた。稼動95〜232時間の間に収集したサンプルは、ジアミン(1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン)のモル収率が88〜90パーセントであり、アミノニトリルのモル収率が1.4〜2.1パーセントであり、二環式アミン(3−アザビシクロ[3.3.1]ノナン)のモル収率が6〜8パーセントであることを示し、この期間の生成物分布に有意な変化はなく、触媒性能が安定していることを示唆した。図3において実行時間950時間を経て、触媒性能の小さな低下が見られるが(アミノニトリル収率、二環式アミン収率、および二環式イミンはすべて第2軸上)、この低下は比較的ごく小さい。950時間において温度を110℃に上げた。稼動1075時間において圧力を1000psigから1250psigに上げた。圧力の上昇により、二環式アミンが15%から9%に減少したことから選択性の有意な増加がみられ、生成物ジアミン収率は79%から84%に上昇した(図3参照)。同様の増加は、圧力をさらに1250psigから1400psigに上げてもみられた(二環式アミン収率は9%から7%に低下し、ジアミンの収率は82%から85%に急増した)。この稼動の生産性は、常におよそ5.0×10−7モルのジアミン/g触媒/sを維持した。表1は、ppmでのコバルト浸出値を表している。圧力が高いほどジアミン生成物中のコバルトは少なかった。これらの金属濃度値は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)により得た。
【0061】
実施例2
反応管に、Grace DavisonのRaney Co 2786、8×12メッシュ20.0g(水湿し)を装填し、100粒度(150μm)のSiC微粒子で希釈した。有機物フィードは、実施例1のフィードの記述と同じであった。次いで温度および圧力を所望の設定点である107℃および1100psigに設定した。アンモニアおよび有機物のフィード速度を最初はそれぞれ0.11および0.22mL/minに設定し、次いで25時間において有機物を半減させて0.11mL/minにした。サンプルを定期的に反応器から収集し、ガスクロマトグラフィーで分析した。稼動50〜150時間の間に収集したサンプルは、ジアミン(1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン)のモル収率が87〜91パーセントであり、アミノニトリルのモル収率が0〜4パーセントであり、二環式アミン(3−アザビシクロ[3.3.1]ノナン)のモル収率が4〜6パーセントであることを示した。同じフィードおよび反応器条件で稼動150時間後に収集したサンプルは、図4に示すようにジアミン収率の連続的低下を示し、アミノニトリルおよび二環式アミン(3−アザビシクロ[3.3.1]ノナン)の収率は上昇し、ジアミン収率は、稼動175時間までに50パーセントに低下した。
【0062】
実施例3
反応管に、BASFにより提供されたCo−0179T触媒6.27gを装填し、100粒度(150μm)のSiC微粒子で希釈した。この反応器に対する有機物フィードは、反応器にそのままの状態で供給された、約85〜90重量パーセントのシアノアルデヒドを含む粗脂環式シアノアルデヒド(CCA)であった。開始の前に触媒を200℃で一晩、流動水素を用いて処理した。反応器温度を連続水素フロー下で80℃未満に下げた後、アンモニアの過剰フロー(所望の設定点の少なくとも3〜5倍)を開始した。次いで温度および圧力を所望の設定点である100℃および1000psigに設定した。少なくとも1時間後に、アンモニアを所望の設定点である0.44mL/minに下げ、有機物を0.11mL/minで開始した。30時間後にCCAに対する水素のモル比7で、アンモニアおよび有機物のフィード速度をそれぞれ0.13および0.03mL/minに下げた。サンプルを定期的に反応器から収集し、ガスクロマトグラフィーで分析した。稼動90〜185時間の間に収集したサンプルは、ジアミン(1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン)のモル収率が80〜85パーセントであり、アミノニトリルのモル収率が0〜1パーセントであり、二環式アミン(3−アザビシクロ[3.3.1]ノナン)のモル収率が10〜12パーセントであることを示した。触媒性能を図5に示す。
【0063】
実施例4
反応管に、BASFにより提供されるCo−0138E触媒4.28gを装填し、100粒度(150μm)のSiC微粒子で希釈した。この反応器に対する有機物フィードは、テトラヒドロフラン(THF)で25重量パーセントに希釈した約85〜90重量パーセントのシアノアルデヒドを含む粗脂環式シアノアルデヒド(CCA)であった。開始の前に触媒を200℃で一晩、流動水素を用いて処理した。反応器温度を連続水素フロー下で80℃未満に下げた後、アンモニアの過剰フロー(所望の設定点の少なくとも3〜5倍)を開始した。次いで温度および圧力を所望の設定点である100℃および1000psigに設定した。少なくとも1時間後に、アンモニアを所望の設定点である0.11mL/minに下げ、CCAに対する水素のモル比7で有機物を0.11mL/minで開始した。サンプルを定期的に反応器から収集し、ガスクロマトグラフィーで分析した。稼動0〜190時間の間に収集したサンプルは、ジアミン(1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン)のモル収率が80〜87パーセントであり、アミノニトリルのモル収率が0〜7パーセントであり、二環式アミン(3−アザビシクロ[3.3.1]ノナン)のモル収率が6〜13パーセントであることを示した。触媒性能を図6に示す。
【0064】
実施例5
約85〜90重量パーセントのシアノアルデヒドシアノアルデヒドを含むクルードを20重量%のtert−ブタノール(t−ブタノール)と組み合わせることにより反応器フィード混合物を調製した。混合物を炭酸ナトリウム層に通した。反応管にBASFの触媒Co−0179T、ロットDM00042 6.5gを装填し、100粒度のSiC微粒子で希釈した。開始の前に触媒を233℃で一晩、流動水素を用いて処理した。反応器温度を連続水素フロー下で80℃未満に下げた後、アンモニアの過剰フロー(所望の設定点の少なくとも3〜5倍)を開始した。次いで温度および圧力を所望の設定点である100℃および2000psigに設定した。少なくとも1時間後に、0.07mL/minの有機物フィード速度と共に、アンモニア速度を所望の設定点である0.22mL/minに下げ、CCAに対する水素のモル比5において、毎時重量空間速度(WHSV、有機物およびアンモニアの合計質量フィード速度に基づく)を2.8hr−1にした。稼動0〜30時間の間に収集したサンプルは、ジアミン(1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン)のモル収率が91〜92%であり、アミノニトリルのモル収率が0〜0.25%であり、二環式アミン(3−アザビシクロ[3.3.1]ノナン)のモル収率が2.3〜3.6%であることを示した(図7)。稼動50時間後に、フロー速度を、4hr−1の合計WHSVに対して上げた。より高い速度での生産性は、1.23×10−6モルのジアミン/g触媒/sであった。表1は、ppmでのコバルト浸出値を表す(ICP−MSによる)。この場合も圧力が高いほど(この場合2000psig)、ジアミン生成物中のコバルトは少なかった。
【0065】
本発明は、その趣旨および本質的な属性から逸脱することなしに他の形態で具体化することができ、したがって、本発明の範囲を指示するものとして、上記の明細書ではなく、添付の特許請求の範囲を参照すべきである。
【0066】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−シアノシクロヘキサン−1−カルボキシアルデヒド、4−シアノシクロヘキサン−1−カルボキシアルデヒド、それらの混合物、およびそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、ならびにアンモニアを、還元的アミノ化反応器系に供給する段階と、
1つまたは複数の前記脂環式シアノアルデヒド、水素、およびアンモニアを、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系の存在下で、80℃〜約160℃の範囲の温度で、かつ、700〜3500psigの範囲の圧力で互いに接触させる段階と、
それによって、1つまたは複数の脂環式ジアミンを形成する段階であって、1つまたは複数の前記脂環式ジアミンが、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、それらの組合せ、およびそれらの混合物からなる群から選択されるジアミンである段階と
を含む、脂環式ジアミンを製造するための方法。
【請求項2】
還元的アミノ化反応器系に供給された、1,3−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、1,4−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、それらの混合物、およびそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、およびアンモニアの反応生成物を含む、1つまたは複数の脂環式ジアミンであって、
1つまたは複数の前記脂環式シアノアルデヒド、水素、およびアンモニアが、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系の存在下で、80℃〜約160℃の範囲の温度で、かつ、700〜3500psigの範囲の圧力で互いに接触し;1つまたは複数の脂環式ジアミンが形成され;1つまたは複数の脂環式ジアミンが、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、それらの組合せ、およびそれらの混合物からなる群から選択される、1つまたは複数の脂環式ジアミン。
【請求項3】
1,3−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、1,4−シアノシクロヘキサンカルボキシアルデヒド、それらの混合物、およびそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒド、水素、ならびにアンモニアを、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系の存在下で、80℃〜約160℃の範囲の温度で、かつ1400〜2500psigの範囲の圧力で互いに接触させる段階と、
それによって、1つまたは複数の脂環式ジアミンの生成物収率を改善させる段階であって、1つまたは複数の前記脂環式ジアミンが、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、それらの組合せ、およびそれらの混合物からなる群から選択されるジアミンである段階と
を含む、脂環式ジアミンの製造収率を改善する方法。
【請求項4】
前記触媒系が、毎時0.1〜10.0の範囲にある空間速度を有し、空間速度が、1時間当たりの触媒質量に対する1つまたは複数の脂環式シアノアルデヒドの混合物質量の比と定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記還元的アミノ化反応器系が、直列式、並列式、またはそれらの組合せの、1つまたは複数の連続反応器を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記還元的アミノ化反応器系が、1つまたは複数のバッチまたはセミバッチ反応器を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系が、Co、Ni、Ru、Fe、Cu、Re、Pdからなる群から選択される金属、それらの酸化物、それらの混合物、およびそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1つまたは複数の前記金属ベース不均一触媒系が、バルク金属触媒系、スポンジ金属触媒系、担持型金属触媒系、それらの混合物、またはそれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
1つまたは複数の前記金属ベース不均一触媒系が、バルクCoベースの触媒系を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
1つまたは複数の前記金属ベース不均一触媒系が、1つまたは複数の助触媒あるいは1つまたは複数の結合剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
1つまたは複数の前記助触媒が、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
1つまたは複数の前記結合剤が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、それらの混合物、またはそれらの組合せを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
触媒の寿命が、1つまたは複数の前記金属ベース不均一触媒系に対する、1つまたは複数の前記脂環式ジアミンの重量比を促進し、その比が300より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
1つまたは複数の前記脂環式シアノアルデヒド、水素、およびアンモニアが、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系の存在下で、80℃〜約160℃の範囲の温度で、かつ、700〜3500psigの範囲の圧力で互いに接触する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
エポキシ用の硬化剤、ポリオール用の開始剤、または脂肪族ポリイソシアネート用の中間体として使用される、請求項2に記載の1つまたは複数の脂環式ジアミン。
【請求項16】
1つまたは複数の前記脂環式シアノアルデヒドおよびアンモニアを互いに接触させて反応させ、次いでアンモニアおよび脂環式シアノアルデヒドの前記混合物の生成物を、1つまたは複数の金属ベース不均一触媒系の存在下で、80℃〜約160℃の範囲の温度で、かつ、700〜3500psigの範囲の圧力で、水素と接触させる、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−500992(P2013−500992A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523074(P2012−523074)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/043869
【国際公開番号】WO2011/014747
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】