説明

脂肪族生物分解性リンカーに基づく放出可能なポリマー複合体

構造式(A)のような活性化ポリマービシン誘導体、並びにそれと共に作成された複合体が開示される。ビシン誘導体を作成および使用する方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許
本出願は、ここに言及することによりその内容が引用される、2003年5月30日に出願された米国特許出願第10/449/849号および2002年8月13日に出願された米国特許出願第10/218,167号の一部継続出願(CIP)である。
【0002】
本発明は、生物学的活性物質の生体内循環寿命の延長に有用な分枝ポリマーに関する。本発明はまた、該ポリマーにより作製される複合体に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリ(エチレングリコール)PEGおよび同様の水溶性ポリ(アルキレンオキシド)にペプチドまたはポリペプチドをカップリングする初期の概念のいくつかが、ここに言及することにより引用される特許文献1に開示される。これらのポリマーにより修飾されるポリペプチドは、免疫原性/抗原性の減少を示し、修飾されていないものよりも長く血流中を循環する。
【0004】
ポリ(アルキレンオキシド)を共役させるために、ヒドロキシル末端基の1つを、反応性の官能基に転換する。この工程はしばしば「活性化」と称され、産物は「活性化ポリ(アルキレンオキシド)」と称される。他の実質的に非抗原性のポリマーは、同様に「活性化」または官能化される。
【0005】
活性化ポリマーを、結合部位としての機能を果たす求核官能基を有する治療剤と反応させる。結合部位として通常使用される1つの求核官能基は、リシンのε−アミノ基である。遊離カルボン酸基、好ましくは活性化カルボニル基、酸化炭水化物成分およびメルカプト基もまた結合部位として使用される。
【0006】
インスリンおよびヘモグロビンは、共役される第一の治療剤の1つであった。これらの比較的大きいポリペプチドは、いくつかの遊離ε−アミノ結合部位を含有する。十分な数のポリマーが結合して、免疫原性を減少させ、生物活性を大きく失わずに循環寿命を増加することができる。
【0007】
しかしながら、過度のポリマー共役および/または生物活性と関連する基が見られる治療成分の活性部位を含む共役は、しばしば活性および従って治療上の有用性を失わせる。これはしばしば、生物活性と関連しない結合部位をほとんど有しない低分子量のペプチドによる場合である。多くの非ペプチド治療剤はまた、ポリマー修飾の利益を得るのに十分な数の結合部位を有しない。
【0008】
上記で述べられた問題を克服するための1つの提案は、より長く、より分子量の多いポリマーを使用することである。しかしながら、所望の分子量に依存して、これらの物質は調製が困難になり使用に費用がかかりうる。さらに、それらは時に、より容易に利用できるポリマーに比べてほとんど改良を提供しない。
【0009】
別の提案は、タンパク質のアミノ基に、トリアジン環によりポリマーの2つのストランドを結合させることである。例えば、非特許文献1参照。しかしながら、トリアジンは、共役後に許容できるレベルに減少することが困難な毒性物質である。さらに、平面構造が2つのポリマー鎖を定位置に強く固定する。このことは、ポリマー共役の利益を、ポリマー鎖の長さを増加することにより得られるのとほぼ同じものに制限する。したがって、トリアジンに基づかない活性化ポリマーが当該技術に実質的な利益を与える。
【0010】
しかしながら、上記の場合には、生物学的活性ポリマー複合体は、ポリマーともとの生物活性成分との間に実質的な加水分解抵抗性結合を有して形成された。したがって、プロドラッグ自体(もとの分子が最終的には生体内で遊離する)よりも永続的に結合される持続性の複合体が調製された。
【0011】
同一出願人による特許文献2、3および4には、脂肪族リンカーによる求核原子への結合の共通点を共有するPEGの複数のストランドに関するさらなる改良が開示される。前記のトリアジンに基づく分子ポリマー複合体と異なり、脂肪族リンカーは、他の有用な利点を提供するだけでなく、トリアジンの毒性を回避することを可能にする。
【0012】
さらに、長年の間に、プロドラッグを調製するいくつかの方法も提案されてきた。プロドラッグは、投与において、生体内で活性のあるもとの化合物を最終的に遊離する生物学的活性のもとの化合物の化学的誘導体を含む。プロドラッグの使用により、生体内で生物学的活性化合物の作用の始まりおよび/または持続を修飾することが可能となる。プロドラッグはしばしば、もとのまたは活性化合物の生物学的不活性または実質的不活性の形態である。活性の薬の放出の速度は、もとの生物学的活性化合物をプロドラッグキャリアに加えるリンカーの加水分解の速度を含むいくつかの要因により影響される。
【0013】
エステルまたはリン酸結合に基づくいくつかのプロドラッグが報告されている。多くの場合、プロドラッグを形成するために使用されるエステル結合の特有の種類は、水性環境中で加水分解について数日までのt1/2を提供する。プロドラッグを形成しようと思っても、多くの複合体は、生体内で達成される十分な加水分解の前に除去される。したがって、もとの薬化合物をより迅速に産生するように、生体内でポリマー−薬結合のより迅速な加水分解を可能にする結合を有するプロドラッグを提供することが好ましい。
【0014】
アミドまたはカルバメート結合に基づくプロドラッグも報告されている。一般に、アミド結合は加水分解に高い抵抗性であることが知られている。しかしながら、ε−アミノ酸のC末端アミドは、N末端が1つまたは2つのヒドロキシエチル基によりN-ヒドロキシエチル化される場合、25℃およびpH7.4で容易に加水分解されることが最近報告された。ビスN-2-ヒドロキシエチルグリシン(ビシン)タイプの分子が、そのような加水分解の手掛かりである。そのようなビシンタイプの基は、プロドラッグの合成において最近使用されている。ここに言及することによりその内容が引用される特許文献5および6参照。
【特許文献1】米国特許第4,179,337号明細書
【特許文献2】米国特許第5,643,575号明細書
【特許文献3】米国特許第5,919,455号明細書
【特許文献4】米国特許第6,113,906号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第10/218,167号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第10/449,849号明細書
【非特許文献1】26,49-53(1981) and Proc.Soc.Exper.Biol.Med.,188,364-9(1988)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
プロドラッグの作製の分野にはさらに改良の余地がある。本発明は、そのような改良を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のある態様において、構造式(I)の化合物が提供される:
【化1】

【0017】
ここで、
R1は、実質的に非抗原性のポリマー残基、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、アラルキル、および末端分枝基からなる群より独立して選択され;
ZおよびZ’は、同じまたは異なっており、標的細胞中に能動輸送される成分、疎水性成分、二官能性結合成分およびこれらの組合せから独立して選択され;
Y1-3は同じまたは異なってもよく、O、SまたはNR11から選択され;
L1およびL3は、独立して二官能性リンカーであり;
R3-R11、R24およびR25は同じまたは異なってもよく、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群より選択され;
L2は、下記の構造式であり、
【化2】

【0018】
Y15は、O、S、NR34またはCH2から選択され;
R30-35は同じまたは異なってもよく、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキルまたはアリールから選択され;
AおよびA’は同じまたは異なってもよく、アルキル基、脱離基、官能基、診断薬、ターゲティング成分、生物活性成分およびOHから独立して選択され;
a、g、eは同じまたは異なってもよく、独立して0または約1から約5までの自然数、好ましくは0または1の自然数であり;
b、c、d、およびd’は同じまたは異なってもよく、独立して0または1であり、
m、n、o、およびpは同じまたは異なってもよく、独立して約1から約6までの自然数であり、
(a+e)は1かそれより大きい。
【0019】
本発明の別の態様は、R1がアルファおよびオメガ末端結合基を含むポリマー残基である場合に形成される二官能性化合物を含む。本発明のこの態様において、生物学的活性物質、薬、タンパク質、ポリペプチド、オリゴヌクレオチドの2つの等価物を、ポリマー(好ましくはPEG)ビシン系に結合することができる。そのような二官能性ポリマー複合体の例は、構造式(II)として下記に示される:
【化3】

【0020】
ここで、
ZおよびZ’は、独立して二官能性結合基または下記の構造式であり、
【化4】

【0021】
Y4はO、SまたはNR11であり、L5は二官能性リンカーであり、全ての他の変数は上記のように定められる。
【0022】
本発明の化合物を調製する方法およびこれを使用する治療方法も提供される。
【0023】
本発明の目的のために、「残基」という用語は、重合体のプロドラッグキャリア部分が結合される置換反応を受けた後に残る化合物の一部を意味すると解されるべきである。
【0024】
本発明の目的のために、「ポリマー残基」または「PEG残基」という用語はそれぞれ、生物学的活性化合物との反応を受けた後に残るポリマーまたはPEGの一部を意味すると解されるべきである。
【0025】
本発明の目的のために、「アルキル」という用語は、直鎖、分枝、置換、例えばハロ−、アルコキシ−、ニトロ−、C1-12アルキル、C3-8シクロアルキルまたは置換シクロアルキル等を含むと解されるべきである。
【0026】
本発明の目的のために、「置換された」という用語は、官能基または化合物内に含有される1つ以上の原子を加える、または1つ以上の異なる原子で置換することを含むと解されるべきである。
【0027】
本発明の目的のために、置換アルキルは、カルボキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキルおよびメルカプトアルキルを含む;置換アルケニルは、カルボキシアルケニル、アミノアルケニル、ジアルケニルアミノ、ヒドロキシアルケニルおよびメルカプトアルケニルを含む;置換アルキニルは、カルボキシアルキニル、アミノアルキニル、ジアルキニルアミノ、ヒドロキシアルキニルおよびメルカプトアルキニルを含む;置換シクロアルキルは、4-クロロシクロヘキルのような成分を含む;アリールは、ナフチルのような成分を含む;置換アリールは、3-ブロモ-フェニルのような成分を含む;アラルキルは、トルイルのような成分を含む;ヘテロアルキルは、エチルチオフェンのような成分を含む;置換へテロアルキルは、3-メトキシ-チオフェンのような成分を含む;アルコキシは、メトキシのような成分を含む;およびフェノキシは、3-ニトロフェノキシのような成分を含む。ハロ−は、フロロ、クロロ、ヨードおよびブロモを含むと解されるべきである。
【0028】
本発明の目的のために、「十分な量」という用語は、当業者により理解されるような治療効果を達成する量を意味する。
【0029】
本発明の目的のために、「事実上非抗原性の」および「実質的に非抗原性の」という用語は、当該技術において実質的に非毒性であり、哺乳類において感知できる免疫反応を誘発しないと解される全てのポリマー物質を含むと解されるべきである。
【0030】
本発明の目的のために、「自然数」という用語は、正の全ての数、好ましくは約1-6およびより好ましくは1または2を意味すると解すべきである。
【0031】
本発明の1つの主要な利点は、ビシンリンカーがプロドラッグの加水分解の速度の操作を可能にし、それにより生体外だけでなく生体内でも様々の速度で天然の存在物を放出することができるということである。例えば、アミノ酸または短いペプチド残基を含む様々の二官能性成分は、生体内および生体外で、プロドラッグの加水分解および/または細胞吸収の速度を調整するために任意のL1-3の一部として含まれてもよい。
【0032】
本発明の別の利点は、ポリマー成分をビシン系の唯一の腕に結合させることにより、結合の工程がよりきれいでより速くなるということである。
【0033】
本発明のさらなる利点は、加水分解中の不純物または副生成物の形成がほとんどまたは全くないために、退社特性が改善されるということである。
【0034】
本発明のさらに別の利点は、ターゲティング成分並びに生物活性成分、即ち薬を、同じポリマープラットフォームに結合させ、治療効果を高める可能性を増加させることができるということである。
【0035】
本発明の別の利点は、ポリマー輸送系により供給される標的化合物がしばしば、生体内での水溶性および循環寿命の測定可能な増加を示すということである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
A. 式(I)
本発明のある実施の形態において、構造式(I)の化合物が提供される。
【化5】

【0037】
ここで、
R1は、実質的に非抗原性のポリマー残基、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、アラルキル、および末端分枝基からなる群より独立して選択され;
ZおよびZ’は、同じまたは異なっており、標的細胞中に能動輸送される成分、疎水性成分、二官能性結合成分およびこれらの組合せから独立して選択され;
Y1-3は同じまたは異なってもよく、O、SまたはNR11から選択され;
L1およびL3は、独立して二官能性リンカーであり;
R3-R11、R24およびR25は同じまたは異なってもよく、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群より選択され;
L2は、下記の構造式から選択され、
【化6】

【0038】
Y15は、O、S、NR34またはCH2から選択され;
R30-35は同じまたは異なってもよく、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキルまたはアリールから選択され;
AおよびA’は同じまたは異なってもよく、アルキル基、脱離基、官能基、診断薬、ターゲティング成分、生物活性成分およびOHから独立して選択され;
a、g、eは同じまたは異なってもよく、独立して0または約1から約5までの自然数、好ましくは0または1の自然数であり;
b、c、d、およびd’は同じまたは異なってもよく、独立して0または1であり、
m、n、o、およびpは同じまたは異なってもよく、独立して約1から約6までの自然数であり、
(a+e)は1かそれより大きい。
【0039】
本発明のある好ましい態様において、R1は、ポリエチレングリコール(PEG)基のような実質的に非抗原性のポリマー残基を含む。必要に応じて、R1は、ここにJとして示されるキャッピング基を含む。ポリマーキャッピングに使用される好ましいJ基は、OH、NH2、SH、CO2H、CH3のようなC1-6アルキル成分、および構造式(III))の化合物を含む:
【化7】

【0040】
ここで、全ての変数は上記のように定められる。
【0041】
本発明の構造式を有する他の変数に関して、本発明のある態様において以下のものが好ましい:
ある態様において、R1はポリアルキレンオキシド残基であり、より好ましくはポリエチレングリコール残基である;
他の態様において、R1は、複数のポリマーストランドの添加を可能とするように以下により詳細に記載されるビシンに基づく末端分枝基である;
別の態様において、Aは好ましくは官能基または生物活性成分であり、A’は官能基、ターゲティング成分または診断薬である;
R3-R11、およびR24-25は、それぞれ水素である;
a、b、c、e、m、n、oおよびpはそれぞれ好ましくは1である。
【0042】
好ましくは、ZおよびZ’は、上記のように
【化8】

【0043】
である、または、生物学的活性のA基と結合した場合に構造式(I)および(II)のビシンポリマー部分から放出するプロドラッグが形成されるように、アミノ酸残基、ペプチド残基、標的細胞中に能動輸送され、疎水性であるまたはそのような特性の組合せを有する基を有する。ここに言及することによりその内容が引用される、同一出願人による米国特許出願第09/758,993号明細書も参照。
【0044】
B. 実質的に非抗原性のポリマー
上記のように、R1は好ましくは、ポリアルキレンオキシド(PAO)およびより好ましくはmPEGのようなポリエチレングリコールのように実質的に非抗原性である水溶性のポリマー残基である。説明の目的でおよび制限する意図でなく、R1のポリエチレングリコール(PEG)残基部分は、以下から選択されてもよい:
【化9】

【0045】
ここで、xは重合であり;
R12は、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-12分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシから選択され、
Jは構造式IIに関して上記で説明したようにキャッピング基である。
【0046】
ある特に好ましい実施の形態において、R1は、
【化10】

【0047】
からなる群より選択され、
ここで、xは自然数であり、好ましくは量平均分子量が約2,000から約40,000Daになるように選択される。本発明の別の態様において、ポリマーの分子量は、技術者の必要に依存して、数100から40,000またはそれ以上までである。
【0048】
また、本発明の範囲内に含まれるものとして、R1は、言及することによりその開示内容がここに含まれる、同一出願人による米国特許第5,605,976号、同第5,643,575号および同第6,113,906号に記載される分枝ポリマー残基から選択されてもよい。これらの全式のうち、下記のものが好ましい:
【化11】

【0049】
ここで、
(q)は約1から約5までの整数であり;
Z”は、O、NR13、S、SOまたはSO2であり;
R13は、H、C1-8アルキル、C1-8分枝アルキル、C1-8置換アルキル、アリールまたはアラルキルであり;
(h)は0または1であり;
(k)は自然数、好ましくは約1から約6までである。
【0050】
本発明の範囲内に含まれる他の分枝活性化ポリマーは、好ましくは、言及することによりその開示内容がここに含まれる、同一出願人によるPCT公報第WO02/065988号および同第WO02/066066号に記載される化合物から選択されてもよい。
【0051】
これらの全式のうち、下記のものが好ましい:
【化12】

【0052】
ここで、
R1’はPEGのようなポリマー残基である。
【0053】
さらに別の好ましい実施の形態において、R1は以下の構造式のポリマー残基である:
【化13】

【0054】
ここで、
R1’はPEGのようなポリマー残基であり;
Wは、O、アミノ酸、
【化14】

【0055】
-(CH2)y、および-NH(CHCH)2であり;
zは0、1、2、3または4であり;
nは自然数、好ましくは約1から約500まで、より好ましくは約200であり;
yは自然数、好ましくは約1から約6までである。
【0056】
PEGは通常下記の構造式により示され:
【化15】

【0057】
R1’は好ましくはこの構造式の残基を含む。
【0058】
ポリマー(x)についての重合度は、約10から約2,300まででもよい。これは、ポリマー鎖中の反復ユニットの数を示し、ポリマーの分子量に依存する。好ましくは、xは自然数であり、量平均分子量が約2,000から約40,000Daまでになるように選択される。(J)成分は、ここに定められるようにキャッピング基である、すなわち、ポリマーの末端で見られる基であり、いくつかの態様において、NH2、OH、SH、CO2H、C1-6アルキルまたは他のPEG末端活性化基のいずれかから選択されてもよく、そのような基は当業者により理解される。
【0059】
ポリエチレングリコール、同一出願人による米国特許第5,643,575号('575特許)明細書に記載されるような分枝PEG誘導体、「star-PEG」およびShearwater Corporation’s 2001 catalog “Polyethylene Glycol and Derivatives for Biomedical Application”に記載されるような複数の腕の(multi-armed)PEGもまた有用である。前記のそれぞれの開示は、ここに言及することにより引用される。’575特許により提供される分枝は、単一の結合から生物学的活性分枝または酵素上で添加されるポリマーを増加する1つの手段として、ビシン基から第二または第三の分枝を可能とする。所望であれば、過度の実験をすることなく、二官能性結合基への結合のために水溶性ポリマーを官能化できるということが理解されるであろう。
【0060】
PAOおよびPEGは量平均分子量が実質的に変化してもよいが、好ましくは、R1およびR1’はそれぞれ、本発明の多くの態様で約2,000から約40,000Daの量平均分子量を有する。
【0061】
ここに含まれるポリマー物質は、好ましくは室温で水溶性である。そのようなポリマーの限定されないリストには、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコールのようなポリアルキレンオキシドホモポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール、それらのコポリマーおよびブロックコポリマーの水溶性が維持される場合にはそれらのブロックコポリマーが含まれる。
【0062】
さらなる実施の形態において、およびPAOに基づくポリマーに代わるものとして、R1およびR1’は、必要に応じてデキストラン、ポリビニルアルコール、炭水化物に基づくポリマー、ヒドロキシプロピルメチル−アクリルアミド(HPMA)、ポリアルキレンオキシド、および/またはそれらのコポリマーのような1つ以上の事実上非抗原性の物質から選択される。ここに言及することによりその内容が引用される、同一出願人による米国特許第6,153,655号明細書参照。ここに記載されるようにPEGのようなPAOについて同じ種類の活性化が使用されることを当業者は理解するであろう。当業者はさらに、前記のリストは単なる説明でなく、ここに記載される特質を有する全てのポリマー物質が考慮され、ポリプロピレングリコール等のような他のポリアルキレンオキシド誘導体も考慮されるということを理解するであろう。
【0063】
本発明のポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)ジアミンのような二官能性物質でコポリマー化して、透明なコンタクトレンズ、創傷包帯、薬物分配システム等における使用に適切な相互浸透ポリマーネットワークを形成してもよい。そのような分枝の立体的制限および水溶性は、当業者により容易に理解されるであろう。しかしながら、好ましくは、複数の分枝ポリマーの分子量は、80,000ダルトンを超えない。
【0064】
C. 二官能性リンカー群;L1、L2、L3およびL5
本発明の多くの態様において、特に構造式(I)において、L1およびL3は、例えばR1およびA’のポリマーストランドまたは他の成分へのビシン誘導体の結合を容易にする結合基である。提供される結合は、直接または当業者に知られるさらなるカップリング基を介してもよい。他のL基は明細書に記載されており、L1についてと同じ群から選択されることが理解される。L2およびL5は以下でさらに説明されるが、本発明のある態様において、L1およびL3は、下記から選択される:
【化16】

【0065】
ここで、
R14-R17およびR19が、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-12分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群より独立して選択され;
R18が、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-12分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシ、NO2、ハロアルキルおよびハロゲンからなる群より選択され;
tおよびsが、個別に選択される自然数、好ましくは約1から約4までである。
【0066】
本発明の他の態様において、L1およびL3はアミノ酸残基を含んでもよい。アミノ酸は、既知の天然発生L-アミノ酸、例えば、例を挙げるとアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、セリン、トレオニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、および/またはそれらの組合せのいずれかから選択されてもよい。L1がペプチドを含む場合、ペプチドのサイズは例えば、約2から約10アミノ酸残基の範囲である。ある好ましい実施の形態において、ペプチドはGly-Phe-Leu-Glyである。
【0067】
アミノ酸残基は、好ましくは下記の構造であり、
【化17】

【0068】
ここで、
X’はO、SまたはNR26であり、YはO、SまたはNR27であり、R26、R27およびR28はR3を定めるのと同じ群から独立して選択されるが、それぞれ好ましくはHまたは低級アルキル(すなわちC1-6アルキル)である;fは約1から約10までの自然数であり、好ましくは1である。
【0069】
疎水性または非疎水性の、天然発生アミノ酸、並びに様々の既知の非天然発生アミノ酸(DまたはL)の誘導体および類似物も、本発明の範囲内であると考えられる。単に実施例として、アミノ酸類似物および誘導体は、ここに言及することにより引用される63 Fed.Reg.,29620,29622,に挙げられる、2-アミノ-アジピン酸、3-アミノアジピン酸、ベータ-アラニン、ベータ-アミノプロピオン酸、2-アミノ-酪酸、4-アミノ酪酸、ピペリジン酸、6-アミノカプロン酸、2-アミノ-ヘプタン酸、2-アミノイソブチル酸、3-アミノイソブチル酸、2-アミノピメリン酸、2,4-アミノ酪酸、デスモシン、2,2-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノ-プロピオン酸、n-エチルグリシン、N-エチルアスパラギン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシ-プロリン、イソデスモシン、アロ-イソロイシン、N-メチルグリシン、サルコシン、N-メチル-イソロイシン、6-N-メチル-リシン、N-メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、および他の枚挙にいとまがないものを含む。
【0070】
短いペプチドは、上記のように、例えば約2から約10までのペプチドまたはそれより多いアミノ酸である。
【0071】
より好ましくは、独立して、
【化18】

【0072】
から選択される。
【0073】
本発明の別の実施の形態において、L2は、
【化19】

【0074】
から選択され、
R30-35は、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ヘテロアルキルまたはアリールから独立して選択され、
nは好ましくは約1から約3までの自然数である。
【0075】
好ましくは、L2は、
【化20】

【0076】
から選択される。
【0077】
本発明の主な利点は、ポリマービシンプラットホーム(platform)からの生物活性成分または薬の加水分解または放出の速度をコントロールできるということである。選択された特定のリンカーに依存して、当業者は、加水分解の速度を操作するために化合物を修飾することができる。本発明のこの好ましい態様により、当業者は、意図される標的へ生物活性成分を供給する速度を調整することができる。生物活性成分または薬を素早く放出するのが所望である状況において、L2リンカーを組み込むことは加水分解の速度を早める。対照的に、プラットフォームからの成分または薬の放出がしばしばpHまたは酵素の存在のような条件に依存する、同一出願人による米国特許出願第10/218,167号明細書に開示されるより迅速なビシンに基づくポリマープラットフォームについて、隣接基補助によりリンカーL2は、pH条件または酵素の存在または不存在と独立してポリマープラットホームから生物活性成分または薬が放出される速度を実質的に早めることができる。しかしながら、酵素の存在下において、加水分解の速度は、適用できる場合には隣接基補助によりまたは酵素反応により、いずれか早いほうにコントロールされる。したがって、加水分解の速度は、ビシン成分自体とPEG部分との間で使用されるリンカーの種類に強く依存する。
【0078】
D.ZおよびZ’成分およびその機能
本発明のある態様において、ZおよびZ’はL5-C(=Y4)であり、ここでL5は二官能性リンカーであり、L1と同じ群から選択され、Y4はY1-3を定めるのと同じ群から選択される。本発明のこの態様において、ZおよびZ’基は、A基とビシン輸送形態の残りとの間の結合として作用する。
【0079】
本発明の他の態様において、ZおよびZ’は、標的細胞中に能動輸送される成分、疎水性成分、およびその組合せである。ZおよびZ’は好ましくは一価であるが、ビシンに基づくポリマーへの1つ以上のA基の結合を可能とするように、Zは必要に応じて二価または多価でもよい。能動輸送を達成するために、ZおよびZ’は、アミノ酸、ペプチド残基、またはL1に関して上記されるような任意のポリアミン残基、糖残基、脂肪酸残基、C1-6アルキル、置換アリール、ヘテロアリール、-C(=O)、-C(=S)、またはR29がHである-C(NR29)、低級アルキル等を含んでもよい。
【0080】
本発明のこの態様は、ビシン−ポリマーに基づくプロドラッグ複合体への組入れに適切な生物学的活性物質それ自体は、ビシン結合組成物からの加水分解放出後に活性でないが、さらなる化学的工程/反応を受けた後に活性となる物質/化合物でもよいという原理に広く基づく。この実施の形態により、ビシンに基づくポリマー系により血流に供給される治療剤または診断用薬、ペプチド、ポリペプチド等は、細胞内化学により、例えば組織または細胞中に存在する酵素または酵素系により活性化される、所定の標的細胞中に入るまたは能動輸送されるまで不活性のままである。
【0081】
生体内でビシン−ポリマーに基づく複合体の加水分解により複合体が分解されて、生物学的活性物質(ここでAと示される)が、ZまたはZ’成分に結合しながら細胞外液中に放出されるように、本発明のこの態様のプロドラッグは調製される。本発明のこの態様における生物学的活性物質は好ましくは、小分子の治療剤および/または診断用薬であるが、これに限定されない。例えば、1つの可能なZ-Aの組合せは、ロイシン−ドキソルビシン(doxorubacin)であり、別の組合せは、アミノ酸結合カンプトセシンまたはパクリタキセルであり、処理される組織は腫瘍組織である。
【0082】
本発明がどのように実施されるかに関して任意の理論または仮説に拘束されずに、輸送エンハンサーとして選択される追加成分に依存して、腫瘍細胞中への生物学的活性物質の輸送の速度は、保護されたおよび/または輸送が強められた形態で、例えばEPR効果を示す組織の、細胞外組織スペースへの生物学的活性物質の供給によるということが考えられる。
【0083】
さらなる選択において、輸送エンハンサー(ZまたはZ’)は、細胞膜輸送系について既知の物質から選択される。単に例として、細胞は、ある栄養素およびエンドクリン因子等を能動輸送することが知られており、そのような栄養素、またはその類似物は、標的細胞中への生物学的有効物質の能動輸送を強めるために容易に使用される。これらの栄養素の例には、アミノ酸残基、ペプチド、例えば約2から約10残基またはそれ以上のサイズの短いペプチド、単糖および脂肪酸、エンドクリン因子等が含まれる。
【0084】
短いペプチドは、上記のように、例えば、約2から約10残基またはそれ以上の範囲のペプチド、アミノ酸残基である。本発明のこの実施の形態において、そのようなペプチド輸送エンハンサーは、疎水性である必要はないが、別の方法で吸収を強めるおよび/または全身の血流中で早期の加水分解から結合小分子物質を保護する作用をすると考えられる。例えば、ポリアルギニンのようなペプチド輸送エンハンサー、および同様の分子量範囲の他の輸送エンハンサーは、血漿に基づく加水分解酵素による生物学的活性物質から立体的に込み合った分解をするが、その後カテプシンのような様々のペプチドおよび/またはプロテアーゼにより標的細胞内で分解されると考えられる。
【0085】
ある好ましい態様において、ZおよびZ’は疎水性成分である。疎水性が有効性にどのように寄与するかに関して任意の理論または仮説に拘束されずに、疎水性成分は、細胞外組織スペース、例えば血漿中に存在する、加水分解酵素等の攻撃を抑制することにより、生物学的活性物質から離れて輸送エンハンサーの細胞外分解を抑制すると考えられる。したがって、好ましい輸送エンハンサーには、上記のように、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンのような疎水性アミノ酸、並びに、γ−アミノ酸のような非天然発生誘導体、およびその類似物が含まれる。
【0086】
さらなる選択において、輸送エンハンサーは、疎水性有機成分である。単に例として、有機成分は、C6-18、またはより大きい、アルキル、アリールまたはヘテロアリール−置換または非置換である。有機成分輸送エンハンサーはまた、例えば-C(=S)および/または-C(=O)を含む有機官能基を含むと考えられる。
【0087】
E.構造式(I)A、A’およびD基
1.脱離基または活性化基
AおよびA’が脱離基または活性化基である態様において、適切な成分は、N-ヒドロキシベンゾトリアゾリル、ハロゲン、N-ヒドロキシ-フタルイミジル、p-ニトロフェノキシ、イミダゾリル、N-ヒドロキシスクシニミジル;チアゾリジニルチオン(Thiazolidinyl thione)、O-アシルウレア、ペンタフルオロフェノキシル、2,4,6-トリクロロフェノキシルまたは当業者に明らかな他の適切な脱離基を含む。
【0088】
本発明の目的のために、脱離基は、所望の標的、すなわち生物活性成分、二官能性スペーサー、中間体等上に見られる求核剤と反応できる基であると理解されるべきである。したがって、標的は、タンパク質、ペプチド、酵素、天然のまたはドキソルビシンのような化学合成された治療分子、モノ−保護されたジアミンのようなスペーサー上に見られるNH2のような、置換のための基を含む。
【0089】
本発明の化合物は、所望なら、ビシン基と脱離基または結合標的(薬)との間にスペーサー基を含んでもよい。スペーサー成分は、ヘテロアルキル、アルコキシ、18炭素原子またはさらなるポリマー鎖を含むアルキルでもよい。標準的な合成技術を使用してスペーサー成分を加えてもよい。AおよびA’について選択されるそれらの成分は、生物学的活性求核原子に加えて他の成分と反応してもよい。
【0090】
2.官能基
AおよびA’は官能基でもよい。そのような官能基の限定されない例には、アミン含有スペーサーを介してビシン部分に結合できるマレイミジル、ビニル、スルホンの残基、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、メルカプト、ヒドラジド、カルバゼート(carbazate)等が含まれる。ビシン部分に結合されると、官能基(例えばマレイミド)を使用して、ポリペプチド、アミノ酸またはペプチドスペーサー等のシステイン残基のような標的にポリマー複合体を結合できる。
【0091】
3.生物活性成分
構造式(I)の態様において、AおよびA’はアミン−またはヒドロキシル−含有化合物の残基である。そのような適切な化合物の限定されない例には、有機化合物、酵素、タンパク質、ポリペプチド等の残基が含まれる。有機化合物は、ダウノルビシン、ドキソルビシン;p-アミノアニリンマスタード、メルファラン、Ara-C(シトシンアラビノシド)および関連する代謝拮抗化合物、例えばゲムシタビンを含むがこれに限定されない。あるいは、この成分は、アミンまたはヒドロキシルを含有する心血管作動薬、カンプトテシンおよびパクリタキセルのような抗悪性腫瘍薬、抗感染薬、ニスタチン、フルコナゾールおよびアンホテリシンBのような抗真菌薬、抗不安薬、胃腸薬、中枢神経系活性化剤、鎮痛薬、不妊薬(fertility agent)、避妊薬、抗炎症薬、ステロイド剤、作用薬等の残基でもよい。
【0092】
上記のものに加えて、生物活性成分は、酵素、タンパク質、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、モノクローナル抗体、CC49のような一本鎖抗原結合タンパク質(SCA)の残基でもよく、それらの断片も考慮される。適切なタンパク質は、ポリマー結合のため少なくとも一つの利用可能な基、例えばε-アミノ、シスチニルチオ、N-末端アミノ、を有するポリペプチド、酵素、ペプチド等を含むがこれに限定されず、生理的または薬理的活性を有する物質並びに有機溶媒中で反応を触媒できる物質を含む。
【0093】
所定のタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドは、ヘモグロビン、因子VII、VIII、およびIXを含む血液因子のような血清タンパク質;免疫グロブリン、インターロイキン、すなわちIL-1からIL-13までのようなサイトカイン等、α、βおよびγインターフェロン、顆粒球コロニー刺激因子を含むコロニー刺激因子、血小板由来成長因子およびホスホリパーゼ活性化タンパク質(PLAP)並びにチモシンアルファ1およびセクレチンを含むがこれに限定されない。一般的な生物学的または治療上興味のある他のタンパク質は、インスリン、レクチンおよびリシンのような植物タンパク質、腫瘍壊死因子および関連タンパク質、例えばTGFαまたはTGFβの形質転換増殖因子および上皮成長因子のような成長因子、ホルモン、ソマトメジン、エリスロポイエチン、色素性ホルモン、視床下部放出因子、抗利尿ホルモン、プロラクチン、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、組織プラスミノゲンアクチベーター等を含む。所定の免疫グロブリンは、IgG、IgE、IgM、IgA、IgDおよびそれらの断片を含む。
【0094】
インターロイキン、インターフェロンおよびコロニー刺激因子のようないくつかのタンパク質は、通常は組換え技術を使用する結果として、非グリコシル化形態でも存在する。非グリコシル化形態も本発明のタンパク質に含まれる。
【0095】
所定の酵素は、炭水化物特異的酵素、タンパク質分解酵素、酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、脱離酵素、イソメラーゼおよびリガーゼを含む。特定の酵素に限定されずに、所定の酵素の例は、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、エンドトキシナーゼ、カタラーゼ、キモトリプシン、リパーゼ、ウリカーゼ、アデノシンジホスファターゼ、チロシナーゼおよびビリルビンオキシダーゼを含む。所定の炭水化物特異的酵素は、グルコースオキシダーゼ、グルコダーゼ(glucodase)、ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、グルクロニダーゼ(guludouronidase)等を含む。
【0096】
生体内生物活性を示す生物ポリマーの任意の部分もここに含まれる。これには、アミノ酸配列、核酸(DNA、RNA)、ペプチド核酸(PNA)、抗体断片、一本鎖結合タンパク質、例えばここに言及することにより引用される米国特許第4,946,778号明細書参照、抗体または断片、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体および触媒抗体の融合を含む結合分子が含まれる。
【0097】
タンパク質またはそれらの一部は、組織培養のような当業者に知られる技術、動物供給源からの抽出、または組換えDNA技術を使用することにより調製または単離できる。タンパク質、ポリペプチド、アミノ酸配列等の形質転換供給源も考慮される。そのような物質は、形質転換動物、すなわちマウス、ブタ、ウシ等から得られ、タンパク質は、ミルク、血液または組織中で発現される。形質転換昆虫およびバキュロウィルス発現系もまた、供給源として考慮される。さらに、突然変異インターフェロンのような、タンパク質の突然変異バージョンもまた、本発明の範囲内である。
【0098】
所定の他のタンパク質は、ブタクサ(ragweed)、抗原E、ミツバチ毒、ダニアレルゲン等のようなアレルゲンタンパク質である。上記のものは本発明に適切なタンパク質の例示である。ここで定められるように、特別に説明されていないが利用可能なアミノ基を有するこれらのタンパク質もまた考慮され、本発明の範囲内であることを理解すべきである。
【0099】
本発明の好ましい態様において、アミノまたはヒドロキシル含有化合物は、そのような治療が所望である条件について、動物、例えばヒトを含む哺乳類の治療における医薬または診断用途に適切な生物活性化合物である。上記のリストは、例示であり修飾可能な化合物について制限するものではない。当業者は、他のそのような化合物/組成物を過度の実験をしないで同様に修飾できることが分かるであろう。特別に説明されていないが適切な結合基を有するそれらの生物活性物質もまた考慮され、本発明の範囲内であることを理解すべきである。
【0100】
ここに含めるのに適切なアミノまたはヒドロキシル含有分子の種類についての唯一の限定は、ポリマー複合体と反応し結合できる利用可能な少なくとも一つの(一次または二次)アミンまたはヒドロキシルが存在すること、およびプロドラッグシステム放出および親化合物の再生後に生物活性の実質的損失がないことである。
【0101】
4.アルキル基
AおよびA’がアルキル基である構造式(I)の態様において、適切な基の限定的でないリストは、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、および置換C1-6ヘテロアルキルから構成される。
【0102】
5.診断薬
AおよびA’が診断薬である構造式(I)の態様において、適切な薬の限定的でないリストは、色素、キレート剤、およびアイソトープ標識化合物および緑色蛍光タンパク質(GFP)のような他の標識化合物を含む。
【0103】
6.ターゲティング成分
AおよびA’がターゲティング成分である構造式(I)の態様において、適切な物質の限定的でないリストは、TATペプチドおよびU-7ペプチドのようなペプチド、CC49のような一本鎖抗体、および例えばタウリンおよびビオチンのような小分子を含む。
【0104】
F.ビシン結合ポリマーの合成
特定のビシンに基づくポリマー化合物の合成は、実施例に示される。説明のために図1を参照すると、ある好ましい方法は、
1)下記のような拡張ブロックされた二官能性リンカーの約1当量を、
【化21】

【0105】
酸保護されたビシン成分(図1で1として示される)の約1当量と反応させて下記のような中間体を形成し、
【化22】

【0106】
ここで、tBuは保護基である;
2)工程1)の中間体を、例えば塩化アセチルのようなアシル化剤と反応させて下記のような中間体を形成し、;
【化23】

【0107】
3)上記で生じた中間体を非ブロック化し、塩基性カップリング条件下でPNP-PEGまたはSC-PEGのような活性化ポリマーと反応させ、
4)ビシン酸を脱保護し、その後カップリング条件下でチアゾリジニルチオンまたはN-ヒドロキシルスクシニミドのような適切な活性化基により前記酸を活性化する、
各工程を含む。
【0108】
ビシン誘導体を作成する別の方法は、
1)拡張ブロックされた二官能性リンカーの1当量を、酸保護されたビシン成分の1当量と反応させて下記のような中間体を形成し、
【化24】

【0109】
ここで、tBuは保護基である;
2)工程1)の中間体を、下記のような適切に修飾された活性化基と反応させて、
【化25】

【0110】
下記のような中間体を形成し、
【化26】

【0111】
3)上記で生じた中間体を非ブロック化し、塩基性カップリング条件下でPNP-PEGまたはSC-PEGのような活性化ポリマーと反応させ、
4)ビシン酸を脱保護し、その後カップリング条件下でチアゾリジニルチオンまたはN-ヒドロキシルスクシニミドのような適切な活性化基により前記酸を活性化する、
各工程を含む。
【0112】
他の技術的に認識される保護基をt-Buの代わりに使用できることが理解されるであろう。活性化PEGまたはポリマービシン誘導体は、薬、ペプチド、スペーサー等と反応しそれに結合できる。
【0113】
適切なカップリング剤の限定されないリストには、1,3-ジイソプロピル-カルボジイミド(DIPC)、任意の適切なジアルキルカルボジイミド、2-ハロ-1-アルキル-ピリジニウムハライド(Mukaiyama試薬)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)、プロパンホスホン酸環式無水物(PPACA)およびフェニルジクロロホスフェート等が含まれ、これらは、Sigma-Aldrich Chemicalのような商業供給源から入手され、または既知の技術を使用して合成される。
【0114】
好ましくは、置換基は、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(CH3CN)、塩化メチレン(DCM)、クロロホルム(CH3Cl)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはそれらの混合物のような不活性溶媒中で反応させる。適切な塩基には、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミン、KOH、カリウムt-ブトキシドおよびNaOH等が含まれる。反応は通常、約0℃から約22℃までの温度(室温)で行われる。
【0115】
選択される経路に関係なく、ここに記載される合成技術から生じる好ましい化合物は、下記を含む:
【化27】

【化28】

【0116】
ここで、A1は下記のような基であるか、
【化29】

【0117】
または上記のような他の脱離基または活性化基である。
【0118】
適切な標的とのビシン活性化ポリマーの反応により、A1をA2に変形し、A2は生物活性成分、スペーサー等の残基である、活性化ポリマーの複合体への変形が生じる。
【0119】
上記の技術から生じる好ましい化合物の限定的でないリストは、下記のようである:
【化30】

【化31】

【化32】

【0120】
ここで、
【化33】

【0121】
である。
【0122】
G.複合ポリマー添加
本発明のさらなる態様において、ビシンに基づく複合分枝ポリマー化合物が提供される。特に、ベースのビシン誘導体はさらに修飾され、1つ以上の末端分枝基を含む。好ましくは、末端分枝基は以下の構造である:
【化34】

【0123】
ここで、
Y6およびY7は、独立してO、SまたはNR46であり;
L6は、L1を定めるのと同じ群から選択される二官能性リンカーであり;
L8は、L3を定めるのと同じ群から選択される二官能性リンカーであり;
R40-R46は同じまたは異なってもよく、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群より選択され;
j、j’、iおよびi’は、それぞれ独立して0または自然数であり;
lおよびl’は独立して0または1であり;
u、r、vおよびwは、独立して選択される自然数であり;
R50は、実質的に非抗原性のポリマー残基、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、およびアラルキル、および
【化35】

【0124】
からなる群より選択され、
L7は、L1を定めるのと同じ群から選択される二官能性リンカーであり;
L9は、L2を定めるのと同じ群から選択される二官能性リンカーであり;
R60は、実質的に非抗原性のポリマー残基、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、およびアラルキルからなる群より選択される。
【0125】
生じる分枝ビシン誘導体は、下記の構造式である:
【化36】

【0126】
ここで、全ての変数は上記で定められるものである。
【0127】
上記および実施例で示すように、本発明の方法を使用して形成されるビシンポリマー系は、生物活性成分または他のA基の複数回負荷(multiple loading)を可能とする。本発明の分枝ビシン系の利点は、当業者が直鎖上の高分子ポリマーを使用でき、さらに、1つ以上の生物活性成分、診断薬または標的物質を、当業者の必要に応じて様々の組合せで結合できることである。
【0128】
H.生体内診断
本発明のさらなる態様は、必要に応じて上記の輸送エンハンサーに結合された診断用標識を有して調製される本発明の複合体を提供し、標識は診断または画像化の目的のために選択される。したがって、適切な標識は、任意の適切な成分、例えばアミノ酸残基を、任意の当該技術において標準的な発光同位元素、ラジオ−不透明(radio-opaque)標識、磁気共鳴標識、または他の核磁気共鳴映像法に適切な非放射性同位元素標識、蛍光型標識、紫外線、赤外線または電気化学的刺激の下で目に見える色を示すおよび/または蛍光可能な標識に結合することにより調製され、外科手術中等に腫瘍組織を画像化することができる。必要に応じて、診断標識は、複合治療成分中に組み込まれるおよび/またはそれに結合され、動物またはヒト患者中の治療上の生物学的活性物質の分布の観察が可能となる。
【0129】
本発明のさらなる態様において、本発明の標識された複合体は、例えば放射性同位元素標識を含む任意の適切な標識を用いて、既知の方法により容易に調製される。単に例として、これらには、生体内での腫瘍細胞中への選択的摂取についてのラジオイムノシンチグラフィ物質を産生するために、131ヨウ素、125ヨウ素、99mテクネチウムおよび/または111イリジウムが含まれる。例えば、単に例として、ここに言及することにより引用される、米国特許第5,328,679号;同第5,888,474号;同第5,997,844号;および同第5,997,845号の各明細書により示されるように、Tc-99mにペプチドを結合させる既知の方法が多くある。
【0130】
おおまかに、患者中の腫瘍組織の解剖学的局在化のために、腫瘍を有する疑いのある患者または動物に複合標識を投与する。標識された免疫グロブリンが腫瘍部位に局在化するのに十分な時間が経過した後、標識により生じるシグナルが、例えば視覚的に、X線らジオグラフィにより、コンピュータ化されたトランス軸性(transaxial)トモグラフィー、MRI、蛍光標識の計器検出により、ガンマカメラのようなフォトスキャン装置により、または選択される標識の性質に適切な他の方法または計器により検出される。
【0131】
検出されたシグナルは、腫瘍部位の画像または解剖学的および/または生理的判定に変換される。画像は、生体内の腫瘍の位置を見つけ、適切な治療方法を案出するのを可能にする。標識された成分自体が治療物質である実施形態において、検出されたシグナルは、治療中解剖学的局在化の徴候を提供し、続く診断および治療の介入のための基準を提供する。
【0132】
I.治療の方法
本発明の別の態様は、哺乳類中で様々の病状を治療する方法を提供する。この方法は、そのような治療を必要とする哺乳類に、ここに記載されるようにして調製されたドキソルビシン−ビシン結合−PEG複合体のようなプロドラッグの有効な量を投与する工程を含む。この組成物は、特に、腫瘍性疾患の治療、全身腫瘍組織量の減少、腫瘍の転移の防止および哺乳類における腫瘍/新生物の成長の再発の防止に有用である。
【0133】
投与される化合物の量は、そこに含まれる親分子(parent molecule)、例えばペプチド、ポリペプチド、タンパク質、酵素等に依存する。通常、治療方法に使用されるプロドラッグの量は、哺乳類中で所望の治療結果を有効に達成する量である。もちろん、様々のプロドラッグ化合物の投薬量は、親化合物、生体内加水分解の速度、ポリマーの分子量等にいくらか依存して変化する。当業者は、臨床的経験および治療指示に基づいて選択されたプロドラッグの最適な投薬量を特定するであろう。実際の投薬量は、過度の実験をせずに当業者に明らかであろう。
【0134】
本発明の化合物は、哺乳類への投与のための一つ以上の適切な薬剤組成物中に含まれてもよい。薬剤組成物は、当該技術においてよく知られる方法により調製される、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル等の形態でもよい。そのような組成物の投与は、医師の必要性に依存して経口および/または非経口の経路によってもよい。組成物の溶液および/または懸濁液は、例えば、任意の既知の方法により、例えば静脈、筋肉、皮下注射等による、組成物の注射または浸潤のための運搬媒介物として利用してもよい。
【0135】
そのような投与は、体の空間または腔への注入、並びに吸入および/または鼻腔内経路によってもよい。しかしながら、本発明の好ましい態様において、化合物は、それを必要とする哺乳類に非経口で投与される。
【0136】
実施例
以下の実施例は、本発明のさらなる認識を提供するために役立つものであり、決して本発明の有効な範囲を制限することを意味するものではない。実施例に記載される数は、図1から5に示されるものと対応する。
【0137】
化学反応
基本手順
全ての反応は、乾燥した窒素またはアルゴン雰囲気下で行った。市販の試薬をさらに精製せずに使用した。全てのPEG化合物を、使用前に、真空下でトルエンからの共沸蒸留により乾燥させた。Varian Mercury 300NMRスペクトロメーターおよび特に定めがない限り溶媒として重水素化クロロホルムを使用して、NMRスペクトルを得た。テトラメチルシラン(TMS)からダウンフィールド(downfield)の100万(ppm)ごとに分けて化学シフト(δ)を報告した。
【0138】
HPLC方法 1mL/分の流速で0.5%トリフルオロ酢酸中30-90%のアセトニトリルの勾配を使用して、多波長UV検出器と共にZOBAX 300 SB C-8逆相カラム(150×4.6mm)またはPhenomenex Jupiter 300A C18逆相カラム(150×4.6mm)を使用するBeckman Coulter System Gold HPLC器具により、中間体および最終産物の反応混合物および純度を観察した。
【実施例1】
【0139】
化合物3の合成
乾燥塩化メチレンの30ml中の2(2.3g,8.7mmol)、1(1.9g,8.8mmol)、およびDMAP(1.6g,12.9mmol)の溶液を、氷浴中で0℃に冷却し、EDCハイドロクロライド(2.3g,12.0mmol)を加えた。この混合物を一晩室温まで温め、0.1N HClで洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒をロトバップ(rotovap)により濾液から除去し3(3.6g,7.8mmol,90%)を生じた。
【0140】

【実施例2】
【0141】
化合物4の合成
乾燥塩化メチレンの35ml中の3(1.8g,3.9mmol)の溶液に、塩化アセチル(0.49g,6.2mmol)を加え、ジイソプロピルエチルアミン(1.82g,14mmol)を加えた。この混合物を室温で10分間攪拌し、この間TLCにより出発物質は検出されなかった。この混合物を飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒をロトバップにより濾液から除去し1.6gの粗生成物を得た。この物質を、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィにより精製し、酢酸エチル中2.5%のアセトニトリルで溶出し、4(0.69g,1.4mmol,35%)を生じた。
【0142】

【実施例3】
【0143】
化合物7の合成
20mlの塩化メチレンおよび5mlのTFA中の4(0.25g,0.50mmol)の溶液を、室温で15分間攪拌し、ロトバップにより溶媒を除去して5を生じた。化合物5を10mlの乾燥塩化メチレンと混合し、pHが8.0を超えるまでDIEAを加えた(〜0.2g)。このビシン溶液を、乾燥塩化メチレン40ml中の6(5.0g,0.12mmol)の溶液に加え、室温で一晩攪拌した。このとき、溶媒をロトバップにより一部除去し、産物をエーテルで沈殿させ、採集し、エーテルで洗浄した。この粗精製物を12% DMF/IPAから再結晶させ、7(4.6g,0.11mmol,90%)を生じた。
【0144】

【実施例4】
【0145】
化合物8の合成
50mlの塩化メチレンおよび25mlのTFA中の7(4.8g,0.12mmol)の溶液を、室温で7時間攪拌し、ロトバップにより溶媒を一部除去し、エーテルで産物を沈殿させた。固体を濾過により採集し、エーテルで数回洗浄し乾燥させて8(4.1g,0.10mmol,85%)を生じた。
【0146】

【実施例5】
【0147】
化合物9の合成
40mlの乾燥塩化メチレン中の8(4.0g,0.1mmol)、2-メルカプトチアゾリン(70mg,0.59mmol)、およびDMAP(0.1g,0.79mmol)を、氷浴中で0℃まで冷却し、EDCハイドロクロライド(0.11g,0.59mmol)を加えた。この混合物を一晩で室温にした。この時、溶媒をロトバップにより一部除去し、産物をエーテルで沈殿させ、採集し、エーテルで洗浄した。粗精製物を12%DMF/IPAから再結晶させ、9(3.7g,0.09mmol,93%)を生じた。
【0148】

【実施例6】
【0149】
化合物10の合成
30mlの塩化メチレンおよび30mlのDMF中の9(3.0g,0.073mmol)、ドキソルビシン(0.17g,0.29mmol)およびDMAP(71mg,0.59mmol)の溶液を、室温で一晩攪拌した。この時、溶媒をロトバップにより一部除去し、産物をエーテルで沈殿させ、採集し、エーテルで洗浄した。粗精製物を12%DMF/IPAから三度再結晶させ、10(2.9g,0.069mmol,94%)を生じた。
【0150】

【実施例7】
【0151】
化合物13の合成
25mlの塩化メチレン中の12(2.5g.,10.1mmol)、ジグリコリック無水物(diglycolic anhydride)11(1.1g,9.5mmol)およびDMAP(1.3g,9.5mmol)を室温で一晩攪拌し、0.2N HClで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させ、濾過し、ロトバップにより濾液から溶媒を除去し、13(2.9g,8.0mmol,84%)を生じた。Nmrは倍加ピークを示した。
【0152】

【実施例8】
【0153】
化合物14の合成
30mlの乾燥塩化メチレン中の13(2.8g,7.7mmol)、1(1.7g,7.7mmol)、およびDMAP(1.3g,10.8mmol)を氷浴中で0℃まで冷却し、EDCハイドロクロライドの1.9g(10.0mmol)を加えた。この混合物を一晩で室温にし、0.2N HClで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥させ、濾過し、ロトバップにより濾液から溶媒を除去し、14(2.3g,4.1mmol,53%)を生じた。
【実施例9】
【0154】
化合物15の合成
20mlの塩化メチレン中の粗製の14(2.3g,4.1mmol)の溶液に、塩化アセチル(0.64g,8.2mmol)を加え、その後ジイソプロピルエチルアミン(1.1g,8.2mmol)を加えた。この混合物を室温で10分間攪拌し、この間TLCにより出発物質は検出されなかった。この混合物を飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、ロトバップにより濾液から溶媒を除去し、2.1gの粗精製物を生じた。この物質をシリカゲル上の絡むクロマトグラフィにより精製し、酢酸エチル中5%のメタノールで溶出し、産物を生じた(0.24g,0.40mmol,10%)。
【0155】

このアセチル化産物(0.23g,0.38mmol)を、20mlの塩化メチレンおよび5mlのTFAの溶液中で15分間攪拌し、ロトバップにより溶媒を除去した。このビシン残渣を10mlの乾燥塩化メチレンと混合し、pHが8.0を超えるまでDIEAを加えた(〜0.2g)。このビシン溶液を、30mlの乾燥塩化メチレン中の6(4.0g,0.10mmol)の溶液に加え、室温で一晩攪拌した。この時、ロトバップにより溶媒を一部除去し、産物をエーテルで沈殿させ、採集し、エーテルで洗浄した。この粗精製物を12% DMF/IPAから再結晶させ、産物を生じた(3.8g,0.02mmol,95%)。
【0156】

40mlの塩化メチレンおよび20mlのTFA中のペグ化産物(3.8g,0.10mmol)の溶液を、室温で15時間攪拌し、ロトバップにより溶媒を一部除去し、産物をエーテルで沈殿させた。固体を濾過により採集し、エーテルで数回洗浄し、乾燥させて酸(3.4g,0.08mmol,89%)を生じた。
【0157】

40mlの塩化メチレン中の上記の酸(3.4g,0.08mmol)、2-メルカプトチアゾリン(59mg,0.50mmol)、およびDMAP(81mg,0.66mmol)を氷浴中で0℃まで冷却し、EDCハイドロクロライド(0.11g,0.59mmol)を加えた。この混合物を一晩で室温にした。この時、ロトバップにより溶媒を一部除去し、産物をエーテルで沈殿させ、採集し、エーテルで洗浄した。この粗精製物を20% DMF/IPAから再結晶させ、15(3.2g,0.078mmol,94%)を生じた。
【0158】

【実施例10】
【0159】
化合物16の合成
30mlの塩化メチレンおよび30mlのDMF中の15(3.2g,0.0783mmol)、ドキソルビシン(0.18g,0.319mmol)およびDMAP(77mg,0.62mmol)の溶液を、室温で一晩攪拌した。この時、ロトバップにより溶媒を一部除去し、産物をエーテルで沈殿させ、採集し、エーテルで洗浄した。この粗精製物を、20% DMF/IPAから四度再結晶させ、16(2.8g,0.067mmol,88%)を生じた。
【0160】

【実施例11】
【0161】
化合物17の合成
室温で20mlの塩化メチレン中の12(1.0g,4.0mmol)の溶液に、トリホスゲン(0.4g,1.3mmol)、およびジイソプロピルエチルアミン(1.0g,8.1mmol)を加えた。この混合物を、室温で1時間攪拌し、1(0.88g,4.0mmol)、およびDMAP(0.5g,4.0mmol)を加えた。この混合物を、室温で一晩攪拌したままにし、0.1N HClで洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、ロトバップにより濾液から溶媒を除去し、2.2gの粗精製物を生じた。この物質を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィにより精製し、酢酸エチル中6%のメタノールで溶出し、17(1.3g,2.6mmol,65%)を生じた。
【0162】

【実施例12】
【0163】
化合物18の合成
2mlの乾燥塩化メチレン中の17(0.1g,0.2mmol)の溶液に、塩化アセチル(32mg,0.4mmol)を加え、その後ジイソプロピルエチルアミン(87mg,0.67mmol)を加えた。この混合物を室温で10分間攪拌し、この間TLCにより出発物質は検出されなかった。この混合物を、飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、ロトバップにより濾液から溶媒を除去し、18(0.1g,0.2mmol,100%)を生じた。
【0164】

【実施例13】
【0165】
化合物20の合成
8mlの塩化メチレンおよび2mlのTFA中の18(0.1g,0.2mmol)の溶液を15分間攪拌し、ロトバップにより溶媒を除去した。このビシン残渣を5mlの乾燥塩化メチレンと混合し、pHが8.0を超えるまでDMAPを加えた(〜0.6g)。このビシン溶液を、15mlの乾燥塩化メチレン中の19(2.0g,0.05mmol)の溶液に加え、室温で一晩攪拌した。この時、ロトバップにより溶媒を一部除去し、産物をエーテルで沈殿させ、採集し、エーテルで洗浄した。この粗精製物を、12% DMF/IPAから再結晶させ、20(1.8g,0.04mmol,90%)を生じた。
【0166】

【実施例14】
【0167】
化合物21の合成
20mlの塩化メチレンおよび10mlのRFA中の20(1.8g,0.04mmol)の溶液を、室温で7時間か攪拌し、ロトバップにより溶媒の一部を除去し、エーテルで産物を沈殿させた。濾過により固体を採集し、エーテルで数回洗浄し、乾燥させて産物を生じた(1.4g,0.03mmol,78%)。
【0168】

10mlの乾燥塩化メチレン中の上記の酸(1.2g,0.03mmol)、2-メルカプトチアゾリン(0.01g,0.09mmol)、およびDMAP(0.014g,0.12mmol)の溶液を、氷浴中で0℃に冷却し、EDCハイドロクロライド(0.017g,0.09mmol)を加えた。この混合物を、一晩で室温にした。この時、ロトバップにより溶媒を一部除去し、産物をエーテルで沈殿させ、採集し、エーテルで洗浄した。この粗精製物を、12% DMF/IPAから再結晶させ、21(1.1g,0.03mmol,92%)を生じた。
【0169】

【実施例15】
【0170】
化合物22の合成
10mlの塩化メチレンおよび10mlのDMF中の21(1.0g,0.025mmol)、ドキソルビシン(28mg,0.05mmol)およびDMAP(12mg,0.1mmol)の溶液を、室温で一晩攪拌した。この時、ロトバップにより溶媒を一部除去し、産物をエーテルで沈殿させ、採集し、エーテルで洗浄した。この粗精製物を、12% DMF/IPAから三度再結晶させ、22(0.6g,0.015mmol,60%)を生じた。
【実施例16】
【0171】
化合物24の合成
230mlの塩化メチレンおよび23mlのDMF中の23(23g,0.575mmol)およびジサクシニミジルカーボネート(2.36g,9.2mmol)の溶液を0℃に冷却し、ピリジン(0.75ml,9.2mmol)を加えた。この混合物を一晩で室温にし、セライト(Celite)(登録商標)により濾過し、ロータリーエバポレーターにより濾液から溶媒を一部除去した。粗生成物をエーテルで沈殿させ、濾過により採集した。20% DMF/IPAからの再結晶により24(20.1g,0.50mmol,86%)を生じた。
【0172】

【実施例17】
【0173】
化合物25の合成
18(0.51g,0.9mmol)の溶液を、10mlの乾燥塩化メチレンと混合し、pHが8.0を超えるまでDIEAを加えた(〜0.6g)。このビシン溶液を、40mlの乾燥塩化メチレン中の24(5.0g,0.12mmol)の溶液に加え、室温で一晩攪拌した。この時、ロトバップにより溶媒を一部除去し、産物をエーテルで沈殿させ、採集し、エーテルで洗浄した。この粗精製物を、12% DMF/IPAから再結晶させ、25(4.9g,0.12mmol,94%)を生じた。
【0174】

【実施例18】
【0175】
化合物26の合成
55mlの塩化メチレンおよび28mlのTFA中の25(5.5g,0.13mmol)の溶液を、室温で7時間攪拌し、ロトバップにより溶媒を一部除去し、産物をエーテルで沈殿させた。濾過により固体を採集し、エーテルで数回洗浄し、乾燥させて酸(5.1g,0.12mmol,93%)を生じた。
【0176】

50mlの乾燥塩化メチレン中の酸(5.0g,0.12mmol)、2-メルカプトチアゾリン(0.17g,1.4mmol)、およびDMAP(0.23g,1.9mmol)の溶液を、氷浴中で0℃に冷却し、EDCハイドロクロライド(0.28g,1.5mmol)を加えた。この混合物を一晩で室温にした。この時、ロトバップにより溶媒を一部除去し、産物をエーテルで沈殿させ、採集し、エーテルで洗浄した。この粗精製物を、12% DMF/IPAから再結晶させ、26(4.6g,0.11mmol,92%)を生じた。
【0177】

【実施例19】
【0178】
化合物27の合成
20mlの塩化メチレンおよび20mlのDMF中の26(2.3g,0.055mmol)、ドキソルビシン(0.25g,0.44mmol)およびDMAP(0.11g,0.88mmol)の溶液を、室温で一晩攪拌した。この時、ロトバップにより溶媒を一部除去し、産物をエーテルで沈殿させ、採集し、エーテルで洗浄した。この粗精製物を、12% DMF/IPAから二度再結晶させ、27(1.7g,0.039mmol,71%)を生じた。
【実施例20】
【0179】
モノビシン−12K−リゾチームおよびモノビシン−20K−リゾチーム複合体の調製
素早く攪拌しながら、1:1.5-2のPEG対タンパク質の反応モル比で、PEG粉末を、pH7.6、0.05Mリン酸ナトリウム中の5mg/mlリゾチーム(Sigma,MO)の6mlに加えた。25℃の反応温度およびN2下で60分後、試料をpH5.1の10mMリン酸ナトリウムで希釈し、伝導率を2msより低くしpHを〜5にした(より低いpHは反応を和らげ、放出可能なPEG-タンパク質複合体を安定化させる)。
【0180】
20mMリン酸ナトリウム、pH5.1の溶媒系および20mMリン酸ナトリウム、pH5.1中の1M NaClの勾配緩衝液を使用して、陽イオン交換カラム(Poros HS, Applied Biosystems, CA)上でモノPEG-リゾチームを単離した。カラムから溶出された化合物の順序は、マルチPEG-リゾチームが最初で、次にモノPEG-リゾチームおよび次に天然リゾチームと示された。SDS-PAGE(precast 4-20% SDS non-reducing gel, Invitrogen, CA)上で同定されたものPEG- リゾチームのピークを集め、5k NMWL膜(Millipore Corp.,Bedford,MA)を使うウルトラフリー(Ultrafree)遠心分離フィルタ装置を使用して濃縮した。
【実施例21】
【0181】
マルチビシン−12J−リゾチームおよびマルチビシン−20K−リゾチーム複合体の調製
素早く攪拌しながら、1:20-30のPEG対タンパク質の反応モル比で、PEG粉末を、pH7.6、0.1Mリン酸ナトリウム中の5mg/mlリゾチームの0.5mlに加えた。室温およびN2下で60分間反応を行い、pHを6.0に低下させることにより停止し、サイズ除外カラム上ですぐに精製した。
【0182】
20mMリン酸ナトリウム、pH6.0で、反応混合物を5mlに希釈し、0.45μmフィルターにより濾過し、HiLoad Superdex 200カラム(Amersham, NJ)上で分離した。カラムを、140mM NaCl、20mM NaP、pH6.0で平衡化し、複合体を1ml/画分/分で溶出した。SDS-PAGE上で同定されt亜ピークの画分を集め、プールし、Ultrafee 30K(Millipore Corp.,Bedford,MA)を使用して濃縮した。
【実施例22】
【0183】
インビトロの結果
【表1】

【実施例23】
【0184】
タンパク質複合体
物質および方法
鶏の卵白リゾチーム(EC3.2.1.17)、リゾチーム基質細菌(Micrococcus lysodeikticus)、およびPBS緩衝液(10mMホスフェート、pH7.4、138mM NaCl、および2.7mM KCl)を、Sigma Inc.(St.Louis,MO)から購入した。プレキャストTris-グリシンSDS電気泳動ゲルおよびゲルランニングバッファ(running buffer)を、Invitrogen(Carlsbad,CA)から得た。複合体の生体外の加水分解を測定するために使用されるラット血漿をEDTAで処理し、冷凍保存した。IL-2をPepro Tech(Princeton,NJ)から購入し、GFPをClontech(Palo Alto,CA)から得た。全ての生体内の測定は3重に行い、±5%の標準偏差が生体外測定について見られた。
【0185】
単一のPEG-リゾチーム複合体の調製
鶏の卵からのリゾチームは、14,500の分子量および6リシン残基を有する。素早く攪拌しながら、1:1(PEG:リゾチーム)の反応モル比で、活性化PEG粉末を、pH7.3、0.1Mリン酸緩衝液中の5mg/mLのリゾチーム溶液に加えた。25℃で45分間攪拌した後、反応物を0.2Mリン酸ナトリウム(pH5.1)で最終pH6.5に処理した。6,000-8,000MWカットオフ膜を使用して、4℃、pH5.1で、反応混合物を20mMリン酸ナトリウムに対して透析した。透析後のサンプル伝導性は、2mS未満でなければならない。NaCl勾配で、pH5.1で、20mMリン酸ナトリウムの溶媒系を使用して、単一のPEG-リゾチームの単離を陽イオン交換カラム(Poros,HS)で行った。単一のPEG-リゾチームのピークを集め、10k NMWL膜(Millipore Corp.,Bedford,MA)を使うウルトラフリー(ultrafree)遠心分離フィルタを使用して濃縮した。精製された単一のPEG-リゾチームの収率は約20-30%であった。
【0186】
複数のPEG-リゾチーム複合体の調製
素早く攪拌しながら、30:1(PEG:リゾチーム)の反応モル比で、活性化PEGリンカーを、pH7.3、0.1Mリン酸緩衝液中の5mg/mLのリゾチーム溶液に加えた。室温で45分間攪拌した後、反応物を0.2Mリン酸ナトリウム(pH5.1)で最終pH6.5に処理した。反応混合物をH2Oで希釈し、1mL/分においてHiload Superdex200で分離した。カラムバッファは、20mMリン酸ナトリウム(pH6.8)および140mMNaClを含有する。ピークの画分を集め、30k NMWL膜(Millipore Corp.,Bedford,MA)を使うウルトラフリー(ultrafree)遠心分離フィルタ装置を使用して濃縮した。精製された複数のPEG-リゾチームの収率は約85%であり、蛍光測定アッセイにより分析されるリゾチーム分子ごとのPEGの数は、5-6であった。
【0187】
濃度測定
pH7.3、0.1Mリン酸ナトリウム中280nmで2.39mL/mg.cmの減衰係数を使用するUVにより、PEG-リゾチーム複合体の濃度を、測定した。
【0188】
リゾチームについての酵素活性アッセイ
上記の反応条件下で、リゾチーム活性は、単一のPEGのみとの結合により消失した。リゾチームの放出は、様々の放出条件下でのリゾチーム活性の産生により示され、SDS電気泳動ゲルにおいて確認された。標準手金リゾチーム活性アッセイにおいて、0.02%(w/v)のM.lysodeikiticus(基質)の0.2mLを、96ウェルタイタープレート中で、0.01%BSAを含有する、pH6.2の50μL 66mMリン酸カリウム中の0.12−0.24μgのリゾチームに加えた。450nmにおける吸光度は5分間であった。吸光度の減少の速度を、酵素活性の測定として使用した。
【0189】
酵素活性の1ユニットは、450nmにおいて25℃で0.001吸光度ユニット/分の変化を生じる。
【0190】
ラット血漿および化学的バッファ中のリゾチームの放出
pH6.5のリン酸緩衝液中のPEG-リゾチーム複合体は、pH7.4のPBSによるバッファ交換を受け、ラット血漿中の放出を観察した。37℃でのPBSの安定性を測定した。複合体はまた、pH8.5のTrisバッファ中の放出のために、H2Oによるバッファ交換を受けた。単一のPEG-リゾチーム複合体についてCentriCon 10k遠心分離管(Millipore Corp.,Bedford,MA)を使用し、複数のPEG-リゾチーム複合体についてCentriCon 30kを使用した。単一または複数のPEG-リゾチーム複合体からのリゾチームの放出を、N2下で、0.15mg/mLで行った。指示時間において、アリコートを取り出し、0.2Mホスフェート(pH5.1)でpH6.5まで中和し、さらなる分析まで-20℃で保存した。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】図1は、詳細な説明および実施例に説明される本発明の化合物を形成する方法を概略的に図示する。
【図2】図2は、詳細な説明および実施例に説明される本発明の化合物を形成する方法を概略的に図示する。
【図3】図3は、詳細な説明および実施例に説明される本発明の化合物を形成する方法を概略的に図示する。
【図4】図4は、詳細な説明および実施例に説明される本発明の化合物を形成する方法を概略的に図示する。
【図5】図5は、詳細な説明および実施例に説明される本発明の化合物を形成する方法を概略的に図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造式(I)を有する化合物であって、
【化1】

R1は、実質的に非抗原性のポリマー残基、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、アラルキル、および末端分枝基からなる群より独立して選択され;
ZおよびZ’は、同じまたは異なっており、標的細胞中に能動輸送される成分、疎水性成分、二官能性結合成分およびこれらの組合せから独立して選択され;
Y1-3は同じまたは異なってもよく、O、SまたはNR11から選択され;
L1およびL3は、独立して二官能性リンカーであり;
R3-R11、R24およびR25は同じまたは異なってもよく、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群より選択され;
L2は、下記の構造式であり、
【化2】

Y15は、O、S、NR34またはCH2から選択され;
R30-35は同じまたは異なってもよく、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキルまたはアリールから選択され;
AおよびA’は同じまたは異なってもよく、アルキル基、脱離基、官能基、診断薬、ターゲティング成分、生物活性成分およびOHから独立して選択され;
a、g、eは同じまたは異なってもよく、独立して0または約1から約5までの自然数であり;
b、c、d、およびd’は同じまたは異なってもよく、独立して0または1であり、
m、n、o、およびpは同じまたは異なってもよく、独立して約1から約6までの自然数であり、
(a+e)は1かそれより大きい、
ことを特徴とする化合物。
【請求項2】
R3-R10、R24-25およびR30-34がそれぞれ水素であり、Y15がOまたはNR34であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項3】
a、b、c、d、d’、g、m、n、oおよびpがそれぞれ1であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項4】
eが0であり、aが0であり、bが0であり、cが0であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項5】
R1がポリアルキレンオキシドを有することを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項6】
R1がポリエチレングリコールを有することを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項7】
Aが活性化基、ターゲティング成分または生物活性成分であり、A’がアルキル基、活性化基、ターゲティング成分または診断薬であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項8】
R1が、OH、NH2、SH、CO2H、C1-6アルキル成分、および
【化3】

からなる群より選択されるキャッピング基Jをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項9】
【化4】

であることを特徴とする請求項8記載の化合物。
【請求項10】
R1が、
【化5】

からなる群より選択され、
xが重合度であり;
R12が、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群より選択され;
Jがキャッピング基であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項11】
R1が、
【化6】

からなる群より選択され、
xが重合度であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項12】
R1が、下記の構造式のポリマー残基を含み、
【化7】

xが重合度であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項13】
L1およびL3が、
【化8】

からなる群より独立して選択され、
R14-R17およびR19が、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-12分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群より選択され;
R18が、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-12分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシ、NO2、ハロアルキルおよびハロゲンからなる群より選択され;
tおよびsが、個別に選択される約1から約4までの自然数であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項14】
L2が、
【化9】

からなる群より選択され、
R30-34が、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ヘテロアルキルまたはアリールから独立して選択され、
nが約1から約3までの自然数であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項15】
R1が、
【化10】

からなる群より選択され、
(q)が約1から約5までの自然数であり;
Z”が、O、NR13、S、SOまたはSO2であり;R13がH、C1-8アルキル、C1-8分枝アルキル、C1-8置換アルキル、アリールまたはアラルキルであり;
(h)が0または1であり;および
(k)が約1から約6までの自然数である、
ことを特徴とする請求1記載の化合物。
【請求項16】
【化11】

【化12】

からなる群より選択され、
A1が脱離基であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項17】
A1が、
【化13】

からなる群より選択される脱離基であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項18】
前記末端分枝基が、下記の構造式を有し、
【化14】

Y6およびY7は、独立してO、SまたはNR46であり;
L6は、L1を定めるのと同じ群から選択される二官能性リンカーであり;
L8は、L2を定めるのと同じ群から選択される二官能性リンカーであり;
R40-R46は同じまたは異なってもよく、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群より選択され;
j、j’、iおよびi’は、それぞれ独立して0または自然数であり;
lおよびl’は、独立しては0または1であり;
u、r、vおよびwは、独立して選択される自然数であり;
R50は、実質的に非抗原性のポリマー残基、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、およびアラルキル、および
【化15】

からなる群より選択され、
L7は、L1を定めるのと同じ群から選択される二官能性リンカーであり;
L9は、L2を定めるのと同じ群から選択される二官能性リンカーであり;
R60は、実質的に非抗原性のポリマー残基、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、およびアラルキルからなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項19】
下記の構造式
【化16】

を有することを特徴とする請求項18記載の化合物。
【請求項20】
下記の構造式
【化17】

を有することを特徴とする請求項19記載の化合物。
【請求項21】
下記の構造式
【化18】

【化19】

からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項22】
下記の構造式
【化20】

【化21】

からなる群より選択され、
【化22】

であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項23】
【化23】

【化24】

からなる群より選択され、
AおよびA’が独立して脱離基であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項24】
ポリマー複合体を調製する方法であって、
下記の構造式であって、
【化25】

A1は脱離基であり;
A’は、アルキル基、脱離基、官能基、診断薬、ターゲティング成分、およびOHからなる群より選択され;
R1は、実質的に非抗原性のポリマー残基、H、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、アラルキル、および末端分枝基からなる群より独立して選択され;
ZおよびZ’は、標的細胞中に能動輸送される成分、疎水性成分、二官能性結合成分およびこれらの組合せから選択され;
Y1-3は同じまたは異なってもよく、O、SまたはNR11から選択され;
L1およびL3は、同じまたは異なる二官能性リンカーでもよく;
R3-R11、R24およびR25は同じまたは異なってもよく、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分枝アルキル、C3-8シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、フェノキシおよびC1-6ヘテロアルコキシからなる群より選択され;
L2は下記の構造式であり、
【化26】

Y15は、O、S、NR34またはCH2から選択され、
R30-35は同じまたは異なってもよく、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキルまたはアリールから選択され;
a、g、eは同じまたは異なってもよく、独立して0または自然数であり;
b、c、d、およびd’は、独立して0または1であり、
m、n、o、およびpは、独立して自然数であり、
(a+e)は1かそれより大きい、
化合物を、
生物学的活性物質と十分な条件下で反応させ、下記の構造式であって、
【化27】

A2は生物学的活性物質の残基である、
構造式を形成する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
ビシンに基づくポリマー輸送系を調製する方法であって、
1)拡張ブロックされた二官能性リンカーの1当量を、酸保護されたビシン成分の1当量と反応させて、下記の構造式の中間体を形成し:
【化28】

ここで、tBuは保護基である;
2)前記中間体を、アシル化剤と反応させて下記の中間体を形成し;
【化29】

3)生じた前記中間体を非ブロック化し、塩基性カップリング条件下で活性化ポリマーと反応させ;
4)ビシン酸を脱保護し、その後カップリング条件下で適切な活性化基により前記酸を活性化する、
各工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
有効量の請求項1の化合物を、それを必要とする哺乳類に投与する工程を含む治療の方法であって、A’がアルキル基であり、Aが生物学的活性物質の残基であることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−523239(P2008−523239A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546901(P2007−546901)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/045467
【国際公開番号】WO2006/066020
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(505354899)エンゾン ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】ENZON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】