説明

脂質−ポリマー複合体、その調製、及びその使用

本発明は、低分子量脂質−GAG複合体、及び細胞に対する病原性効果、とりわけ細胞内病原体による感染の抑制、阻害、予防、又は治療におけるその使用法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子量脂質−GAG複合体と、細胞に対する病原性効果(とりわけ細胞内病原体による感染を含む)の抑制、阻害、予防、又は治療におけるその使用法とを提供する。
【背景技術】
【0002】
酵素ホスホリパーゼA2(PLA2、EC3.1.1.4)を阻害する薬理活性を有する脂質複合体が従来技術において知られている。ホスホリパーゼA2は、リン脂質のsn−2位での脂肪酸及びリゾリン脂質への分解を触媒する。この酵素の活性は、さまざまな細胞機能と相関しており、特にエイコサノイド(プロスタグランジン、トロンボキサン、及びロイコトリエン)、血小板活性化因子及びリゾリン脂質などの脂質性メディエーターの産生と相関する。脂質複合体によって、有害薬剤及び病原性プロセスから細胞及び生物を、より広範囲にわたって防御することができ、これには微生物感染の予防と治療とが含まれる。脂質複合体によって、有害薬剤及び病原性プロセスから細胞及び生物を、より広範囲にわたって防御することが可能であり、これには微生物感染の予防と治療とが含まれる。
より広範囲にわたって、細胞及び生物を有害薬剤、病原性及び炎症プロセスから防護するために、脂質複合体は、研究室での集中的な研究の対象となっている。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態では、本発明は、リン脂質(PL)に結合したグリコサミノグリカン(GAG)を含む脂質−ポリマー複合体を提供し、この複合体は、GAGとPLをそれぞれ約0.25:15〜約5:15の質量PL対質量GAG比で反応させることにより調製される。
【0004】
一実施形態では、本発明は、アミド又はエステル結合を介してリン脂質(PL)に結合したグリコサミノグリカン(GAG)を含む脂質−ポリマー複合体を提供し、このGAGの分子量は5〜20kDaである。
【0005】

【0006】

【0007】
【0008】
【0009】
【0010】

【0011】

【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明と見なされる主題は、具体的に指摘され、及び本明細書の結論部分において明確に請求される。本発明は、しかしながら、構成及び操作方法に関しては、その目的、特徴、及び利点とともに、添付された図面とともに以下の詳細な説明を参照することにより、最もよく理解され得る:
【0013】
【図1】図1は、本発明方法の実施に要求される反応槽の特徴の概念図を示す。
【0014】
【図2】図2は、実施例5に従って調製されたヒアルロン酸−ホスファチジルエタノールアミン複合体(HyPE)のNMRスペクトルを示す。
【0015】
【図3】図3は、実施例5に従って調製されたHyPEのHPLCクロマトグラムを示す。
【0016】
【図4】図4は、RAW264.7細胞のインビトロの活性化の略図を示す。
【0017】
【図5】図5は、LPSの非存在下でのRAW264.7細胞による平均XTT還元(OD450)を示す。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0018】
【図6】図6は、LPSにより活性化されたRAW264.7細胞による平均XTT還元(OD450)を示す。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0019】
【図7】図7は、LPS非存在下でのRAW264.7細胞からの平均TNF−α放出を図示している。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0020】
【図8】図8は、LPSにより活性化されたRAW264.7細胞からの平均TNF−αの放出を示す。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0021】
【図9】図9は、LPSの非存在下でのRAW264.7細胞からの平均IL−6放出を示す。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0022】
【図10】図10は、LPSにより活性化されたRAW264.7細胞からの平均IL−6の放出を示す。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0023】
【図11】図11は、LPSの非存在下でのRAW264.7細胞からの平均IP−10放出を示す。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0024】
【図12】図12は、LPSにより活性化されたRAW264.7細胞からの平均IP−10放出を示す。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0025】
【図13】図13は、LPSの非存在下でのRAW264.7細胞からの平均PGE放出を示す。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0026】
【図14】図14は、LPSにより活性化されたRAW264.7細胞からの平均PGE放出を示す。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0027】
【図15】図15は、TNF−α産生の用量−反応曲線を示す(+LPS)。Prism4を用いたデータあてはめ、S字型用量−反応曲線(可変勾配):Y=Bottom+(Top+Bottom)/(1+10^((LOGIC50−X)*HillSlope))。Xは被験物質濃度の対数、Yは反応。Constraints Bottom=0、Top=100。
【0028】
【図16】図16は、IL−6産生の用量−反応曲線を示す(+LPS)。Prism4を用いたデータあてはめ、S字型用量−反応曲線(可変勾配):Y=Bottom+(Top+Bottom)/(1+10^((LOGIC50−X)*HillSlope))。Xは被験物質濃度の対数、Yは反応。Constraints Bottom=0、Top=100。
【0029】
【図17】図17は、IP−10産生の用量−反応曲線を示す(+LPS)。Prism4を用いたデータあてはめ、S字型用量−反応曲線(可変勾配):Y=Bottom+(Top+Bottom)/(1+10^((LOGIC50−X)*HillSlope))。Xは被験物質濃度の対数、Yは反応。Constraints Bottom=0、Top=100。
【0030】
【図18】図18は、PGE産生の用量−反応曲線を示す(+LPS)。Prism4を用いたデータあてはめ、S字型用量−反応曲線(可変勾配):Y=Bottom+(Top+Bottom)/(1+10^((LOGIC50−X)*HillSlope))。Xは被験物質濃度の対数、Yは反応。Constraints Bottom=0、Top=100。
【0031】
【図19】図19は、低分子量ヒアルロン酸ナトリウムSEC−MALS分子量解析からのクロマトグラムである。赤線は光散乱に付随する。青線は屈折率信号を示す。
【0032】
【図20】図20は、SEC−MALSにより決定された低分子量ヒアルロン酸ナトリウムの分子量分布である。
【0033】
【図21】図21は、サンプル208−088(低分子量ヒアルロン酸ナトリウム)のUVスペクトルである。
【0034】
【図22】図22は、LPS非存在下でのRAW264.7細胞による平均XTT還元(OD450)を示す。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0035】
【図23】図23は、LPSにより活性化されたRAW264.7細胞による平均XTT還元(OD450)を示す。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0036】
【図24】図24は、LPS非存在下でのRAW264.7細胞からの平均TNF−α放出を示す。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0037】
【図25】図25は、LPSにより活性化されたRAW264.7細胞からの平均TNF−α放出を示す。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0038】
【図26】図26は、LPS非存在下でのRAW264.7細胞からの平均IL−6放出を示す。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0039】
【図27】図27は、LPSにより活性化されたRAW264.7細胞からの平均IL−6放出を示す。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0040】
【図28】図28は、LPS非存在下でのRAW264.7細胞からの平均IP−10放出を示す。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0041】
【図29】図29は、LPSにより活性化されたRAW264.7細胞からの平均IP−10放出を示す。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0042】
【図30】図30は、LPS非存在下でのRAW264.7細胞からの平均PGE放出を示す。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0043】
【図31】図31は、LPSにより活性化されたRAW264.7細胞からの平均PGE放出を示す。誤差範囲は標準偏差を表す。
【0044】
【図32−1】図32−1は、TNF−α産生の用量−反応曲線を示す(+LPS)。Prism4を用いたデータあてはめ、S字型用量−反応曲線(可変勾配):Y=Bottom+(Top+Bottom)/(1+10^((LOGIC50−X)*HillSlope))。Xは被験物質濃度の対数、Yは反応。Constraints Bottom=0、Top=100。
【図32−2】図32−2は、TNF−α産生の用量−反応曲線を示す(+LPS)。Prism4を用いたデータあてはめ、S字型用量−反応曲線(可変勾配):Y=Bottom+(Top+Bottom)/(1+10^((LOGIC50−X)*HillSlope))。Xは被験物質濃度の対数、Yは反応。Constraints Bottom=0、Top=100。
【図32−3】図32−3は、TNF−α産生の用量−反応曲線を示す(+LPS)。Prism4を用いたデータあてはめ、S字型用量−反応曲線(可変勾配):Y=Bottom+(Top+Bottom)/(1+10^((LOGIC50−X)*HillSlope))。Xは被験物質濃度の対数、Yは反応。Constraints Bottom=0、Top=100。
【0045】
【図33−1】図33−1は、IL−6産生(+LPS)用量−反応曲線を示す。Prism4を用いたデータあてはめ、S字型用量−反応曲線(可変勾配):Y=Bottom+(Top+Bottom)/(1+10^((LOGIC50−X)*HillSlope))。Xは被験物質濃度の対数、Yは反応。Constraints Bottom=0、Top=100。
【図33−2】図33−2は、IL−6産生(+LPS)用量−反応曲線を示す。Prism4を用いたデータあてはめ、S字型用量−反応曲線(可変勾配):Y=Bottom+(Top+Bottom)/(1+10^((LOGIC50−X)*HillSlope))。Xは被験物質濃度の対数、Yは反応。Constraints Bottom=0、Top=100。
【図33−3】図33−3は、IL−6産生(+LPS)用量−反応曲線を示す。Prism4を用いたデータあてはめ、S字型用量−反応曲線(可変勾配):Y=Bottom+(Top+Bottom)/(1+10^((LOGIC50−X)*HillSlope))。Xは被験物質濃度の対数、Yは反応。Constraints Bottom=0、Top=100。
【0046】
【図34−1】図34−1は、IP−10産生の用量−反応曲線を示す(+LPS)。Prism4を用いたデータあてはめ、S字型用量−反応曲線(可変勾配):Y=Bottom+(Top+Bottom)/(1+10^((LOGIC50−X)*HillSlope))。Xは被験物質濃度の対数、Yは反応。Constraints Bottom=0、Top=100。
【図34−2】図34−2は、IP−10産生の用量−反応曲線を示す(+LPS)。Prism4を用いたデータあてはめ、S字型用量−反応曲線(可変勾配):Y=Bottom+(Top+Bottom)/(1+10^((LOGIC50−X)*HillSlope))。Xは被験物質濃度の対数、Yは反応。Constraints Bottom=0、Top=100。
【図34−3】図34−3は、IP−10産生の用量−反応曲線を示す(+LPS)。Prism4を用いたデータあてはめ、S字型用量−反応曲線(可変勾配):Y=Bottom+(Top+Bottom)/(1+10^((LOGIC50−X)*HillSlope))。Xは被験物質濃度の対数、Yは反応。Constraints Bottom=0、Top=100。
【0047】
【図35−1】図35−1は、PGE産生の用量−反応曲線を示す(+LPS)。Prism4を用いたデータあてはめ、S字型用量−反応曲線(可変勾配):Y=Bottom+(Top+Bottom)/(1+10^((LOGIC50−X)*HillSlope))。Xは被験物質濃度の対数、Yは反応。Constraints Bottom=0、Top=100。
【図35−2】図35−2は、PGE産生の用量−反応曲線を示す(+LPS)。Prism4を用いたデータあてはめ、S字型用量−反応曲線(可変勾配):Y=Bottom+(Top+Bottom)/(1+10^((LOGIC50−X)*HillSlope))。Xは被験物質濃度の対数、Yは反応。Constraints Bottom=0、Top=100。
【図35−3】図35−3は、PGE産生の用量−反応曲線を示す(+LPS)。Prism4を用いたデータあてはめ、S字型用量−反応曲線(可変勾配):Y=Bottom+(Top+Bottom)/(1+10^((LOGIC50−X)*HillSlope))。Xは被験物質濃度の対数、Yは反応。Constraints Bottom=0、Top=100。
【0048】
【図36】図36は、HyPEの調製に用いられた実際の反応槽の写真を図示する。冷却機は反応槽の後ろにあり、及び防音容器のドアは超音波フローセルを示すために開放されている。
【0049】
【図37】図37は、実施例11からのHyPE反応の2時間後のクロマトグラムを示す。
【0050】
【図38】図38は、実施例11からのHyPE反応の6時間後のクロマトグラムを示す。
【0051】
【図39】図39は、実施例11から単離された最終的なHyPEのGPC分析を示す。
【0052】
【図40】図40は、1滴の4%NaODで処理された実施例11から単離された最終的なHyPEのNMRスペクトルを示す。
【0053】
説明の単純性及び明瞭さのために、図において示される要素は、必ずしもその尺度に従って描かれてはいないことが、理解されるであろう。実施例については、そのいくつかの要素の寸法は、明瞭さのために他の要素と比較して誇張されていることがある。更に、適切と考えられる場合には、対応する類似の要素を示すために、参照数字が図を通じて繰り返されることがある。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、膨大な具体的詳細が説明される。しかしながら、当業者は、本発明が、これらの具体的詳細を伴わずに実施され得ることを理解するであろう。他の例では、本発明をわかりにくくしないために、よく知られた方法、手順、及び成分はその詳細が記載されない。
【0055】
本明細書において記載される、プロセスにおける化学物質及び試薬を特定するために使用される略語は、当業者には容易に理解されるものである。本発明の目的のために、DCCは、ジシクロヘキシルカルボジイミドを指し、EDACは、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を指し、BOPは、ベンゾチアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩を指し、PyBOPは、ベンゾチアゾール−1−イル−オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩を指し、HATUは、O−(7−アザベンゾチアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩を指し、TSTUは、O−(N−サクシンイミドイル)−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩を指し、HOBTはヒドロキシベンゾチアゾールを指し、及びHOATは、1−ヒドロキシ−7−アザ−ベンゾチアゾールを指す。
【0056】
本明細書では用語「脂質」は、リン脂質、グリセロ脂質、スフィンゴ脂質、ステロール脂質、プレノール脂質、糖脂質などを含む全ての種類の脂質を意味する。
【0057】
本発明は、一実施形態では、炎症性疾患の治療のためのいくつかの実施形態において有用な脂質−ポリマー複合体を提供する。
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の脂質−ポリマー複合体を調製するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の脂質−ポリマー複合体の使用のための方法を提供する。
【0059】
一実施形態では、本発明は、リン脂質(PL)に結合したグリコサミノグリカン(GAG)を含む脂質−ポリマー複合体を提供し、この複合体は、GAGとPLをそれぞれ約0.25:15〜約5:15の質量PL対質量GAG比で反応させることにより調製される。
【0060】
他の実施形態では、前記質量PL対質量GAG比は約0.25:15である。他の実施形態では、前記質量PL対質量GAG比は約0.5:15である。他の実施形態では、前記質量PL対質量GAG比は約1:15である。他の実施形態では、前記質量PL対質量GAG比は約2:15である。他の実施形態では、前記質量PL対質量GAG比は約5:15である。
【0061】
一実施形態では、本発明は、リン脂質(PL)にアミド又はエステル結合を介して結合したグリコサミノグリカン(GAG)を含み、該GAGの分子量が5〜20kDaである、脂質−ポリマー複合体を提供する。
【0062】
他の実施形態では、前記本発明の前記脂質−複合体化合物のGAGは、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、又はケラタン硫酸である。他の実施形態では、前記GAGはヒアルロン酸である。他の実施形態では、前記GAGはヘパリンである。他の実施形態では、前記GAGはコンドロイチンである。他の実施形態では、前記GAGはコンドロイチン硫酸である。他の実施形態では、前記GAGはデルマタン硫酸であり、他の実施形態では、前記GAGはケラタン硫酸である。
【0063】
他の実施形態では、前記コンドロイチン硫酸はコンドロイチン−6−硫酸、コンドロイチン−4−硫酸、又はそれらの誘導体である。他の実施形態では、前記デルマタン硫酸は、デルマタン−6−硫酸、デルマタン−4−硫酸、又はそれらの誘導体である。
【0064】
他の実施形態では、本発明の前記脂質−複合体化合物のPLは、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、又はホスファチジルグリセロールである。他の実施形態では、前記PLは、パルミチン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエイン酸、エルカ酸、又はドコサヘキサエン酸のいずれかの残基を含む。他の実施形態では、前記PLはジミリストイルホスファチジルエタノールアミンである。他の実施形態では、前記PLはジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンである。
【0065】
他の実施形態では、前記GAGの多分散性は約1〜1.75である。他の実施形態では、前記GAGの多分散性は約1.25〜1.5である。
【0066】
一実施形態では、本発明の前記脂質−ポリマー複合体はGAGを含み、前記GAGの平均分子量は5kDa〜90kDaである。他の実施形態では、前記GAGの平均分子量は5kDa〜60kDaである。他の実施形態では、前記GAGの平均分子量は5kDa〜40kDaである。他の実施形態では、前記GAGの平均分子量は5kDa〜15kDaである。他の実施形態では、前記GAGの平均分子量は5kDa〜20kDaである。
【0067】
一実施形態では、ヒアルロン酸ナトリウムなどの低分子量GAGは、実施例9に記載されるようにヒアルロン酸ナトリウムの酸加水分解により調製される。他の実施形態では、前記酸加水分解は塩酸を含む。他の実施形態では、前記酸加水分解は硫酸を含む。他の実施形態では、前記酸加水分解はトリフルオロ酢酸を含む。他の実施形態では、前記酸加水分解はホウ酸を含む。他の実施形態では、前記酸加水分解は酢酸を含む。他の実施形態では、前記酸加水分解の酸濃度は約0.1〜12モル濃度である。他の実施形態では、前記酸加水分解の酸濃度は約1〜6モル濃度である。他の実施形態では、前記酸加水分解の酸濃度は約6〜12モル濃度である。他の実施形態では、前記酸加水分解は、25℃〜100℃の温度で行われる。他の実施形態では、前記酸加水分解は25℃〜50℃の温度で行われる。他の実施形態では、前記酸加水分解は、50℃〜100℃の温度で行われる。
【0068】
一実施形態では、実施例10に記載されるように、ヒアルロン酸及び誘導体の分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー及び多角度光散乱(SEC−MALS)により決定される。クロマトグラム及び系統図は、図19及び図20に規定されており、赤線が光散乱信号を示すのに対して、青線は屈折率信号を示す。図21はUVスペクトルを示す。
【0069】
光散乱測定は、屈折率検出器などの高感度濃度検出器と直列で使用され、及びdn/dc値(示差屈折率増加量)の値が既知の場合には、モル質量の絶対的測定を与えることができる。本質的に、光散乱測定は、自動的に全てのサンプルに対してカラム較正曲線を与え、時間のかかるコンフォーメーションに依存する較正手順を取り除く。
【0070】
一実施形態では、SEC−MALS分子量決定のためのヒアルロン酸のサンプルは、サンプルの秤量された量をリン酸エステル緩衝液に溶解することにより調製される。他の実施形態では、SEC−MALS分子量決定のためのヒアルロン酸のサンプルは、秤量した一定量のサンプルを酢酸緩衝液に溶解することにより調製される。他の実施形態では、SEC−MALS分子量決定用のヒアルロン酸サンプルは、秤量した一定量のサンプルをトリス緩衝液に溶解することにより調製される。他の実施形態では、SEC−MALS分子量決定のためのヒアルロン酸のサンプルは、秤量した一定量のサンプルをMES緩衝液に溶解することにより調製される。
【0071】
他の実施形態では、本発明は、リン脂質(PL)に結合したグリコサミノグリカン(GAG)を含む脂質−ポリマー複合体を含む薬学的組成物を提供し、この複合体は、GAGとPLを、それぞれ約0.25:15〜約5:15の質量PL対質量GAG比で反応させることにより調製される。他の実施形態では、前記GAGの平均分子量は5kDa〜90kDaである。他の実施形態では、前記GAGの平均分子量は5kDa〜20kDaである。他の実施形態では、前記GAGの平均分子量は10kDより大きい。
【0072】

【0073】
一実施形態では、Lは脂質である。他の実施形態では、Lはリン脂質である。他の実施形態では、Lはホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、又はホスファチジルグリセロールである。他の実施形態では、Lは、パルミチン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエイン酸、エルカ酸、又はドコサヘキサエン酸の残基を含む。他の実施形態では、Lはジミリストイルホスファチジルエタノールアミンである。他の実施形態では、前記Lはジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンである。
【0074】
他の実施形態では、Xはヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、又はケラタン硫酸である。他の実施形態では、Xはヒアルロン酸である。他の実施形態では、Xはヘパリンである。他の実施形態では、Xはコンドロイチンである。他の実施形態では、Xはコンドロイチン硫酸である。他の実施形態では、Xはデルマタン硫酸、他の実施形態では、Xはケラタン硫酸である。
【0075】
他の実施形態では、前記コンドロイチン硫酸はコンドロイチン−6−硫酸、コンドロイチン−4−硫酸、又はそれらの誘導体である。他の実施形態では、前記デルマタン硫酸は、デルマタン−6−硫酸、デルマタン−4−硫酸、又はそれらの誘導体である。
【0076】

【0077】
他の実施形態では、前記GAGの分子量は5〜20kDaである。
【0078】
ホスファチジルエタノールアミン(PE)構成部分の例は、リン脂質の類似体であって、リン脂質のグリセロール骨格に結合する2つの脂肪酸基の鎖長が2〜30炭素原子の長さであり、及びこれらの脂肪酸鎖は飽和及び/又は不飽和炭素原子を含む。脂肪酸鎖の代わりに、直接又はエーテル結合を介してリン脂質のグリセロール骨格に結合したアルキル鎖は、PEの類似体に含まれる。一実施形態では、PE構成部分は、ジパルミトイル−ホスファチジル−エタノールアミンである。他の実施形態では、PE構成部分は、ジミリストイル−ホスファチジル−エタノールアミンである。
【0079】
ホスファチジル−エタノールアミン及びその類似体は、天然、合成、及び半合成誘導体及びそれらの異性体を含む種々の源に由来するものであってよい。
【0080】
PE構成部分の代わりに用い得るリン脂質は、N−メチル−PE誘導体及びそれらの類似体(N−メチル−PEのアミノ基が共有結合を介して結合);N,N−ジメチル−PE誘導体及びそれらの類似体(N,N−ジメチル−PEのアミノ基が共有結合を介して結合)、パルミトイル−ステアロイル−PS、種々の源に由来する天然PS、半合成PS類、天然及び人工PS類、及びそれらの異性体などのホスファチジルセリン(PS)及びそれらの類似体を含む。本発明において有用な結合した構成部分としての他のリン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸及びホスファチジルグリセロール(PG)、と同時にそれらの、リン脂質、リゾリン脂質、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリン、リゾスフィンゴミエリン、セラミド、及びスフィンゴシンのいずれかを含む誘導体である。
【0081】
PE−複合体及びPS−複合体については、リン脂質は結合したモノマー又はポリマー構成部分に、リン脂質の極性頭部基の窒素原子を介して、直接、又はスペーサー基を介するかのいずれかにより結合する。PC、PI、及びPG複合体については、リン脂質は、結合したモノマー又はポリマー構成部分に極性頭部基の窒素原子又は酸素原子のいずれかを介して、直接、又はスペーサー基を介するかのいずれかにより結合する。
【0082】

【0083】
一実施形態では、前記ホスファチジルセリンは、ホスファチジルセリンのCOO構成部分を介してYに結合され、又はYが存在しない場合にはXに結合される。
【0084】

【0085】

【0086】

【0087】

【0088】

【0089】

【0090】

【0091】

【0092】

【0093】

【0094】

【0095】

【0096】

【0097】

【0098】

【0099】

【0100】

【0101】

【0102】

【0103】

【0104】

【0105】

【0106】

【0107】
他の実施形態では、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(IXa)、(IXb)、(X)、(Xa)、(XI)、(XII)、(XIIa)、(XIII)、(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVII)、(XVIII)、(XIX)、(XX)、(XXI)、及び(XXII)のRは、パルミチン酸残基又はミリスチン酸残基である。
【0108】
他の実施形態では、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(IXa)、(IXb)、(X)、(Xa)、(XI)、(XII)、(XIIa)、(XIII)、(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVII)、(XVIII)、(XIX)、(XX)、(XXI)、及び(XXII)のRは、パルミチン酸残基又はミリスチン酸残基である。
【0109】
いくつかの実施形態では、本明細書で上記に示される化合物(A)、(B)(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(IXa)、(IXb)、(X)、(Xa)、(XI)、(XII)、(XIIa)、(XIII)、(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVII)、(XVIII)、(XIX)、(XX)、(XXI)、及び(XXII)は、Z基を含む。一実施形態では、Zはなしである。他の実施形態ではZはイノシトールである。他の実施形態では、Zはコリンである。他の実施形態では、Zはグリセロールである。他の実施形態では、Zはエタノールアミンである。他の実施形態では、Zはセリンである。
【0110】
本明細書の上記で、一般式(A)、(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(IXa)、(IXb)、(X)、(Xa)、(XI)、(XII)、(XIIa)、(XIII)、(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVII)、(XVIII)、(XIX)、(XX)、(XXI)、及び(XXII)で表される任意の又は全ての化合物について:一実施形態では、Xはグリコサミノグリカンである。この態様に従い、及び一実施形態では、グリコサミノグリカンは、とりわけ、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ケラチン、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸又はそれらの誘導体であることができる。一実施形態では、前記コンドロイチン硫酸は、とりわけ、コンドロイチン−6−硫酸、コンドロイチン−4−硫酸又はそれらの誘導体である。他の実施形態では、Xはグリコサミノグリカンではない。他の実施形態では、Xは多糖であり、一実施形態では、ヘテロ多糖、及び他の実施形態ではホモ多糖である。他の実施形態では、Xはポリピラノースである。
【0111】
他の実施形態では、前記グリコサミノグリカンは二糖単位のポリマーである。他の実施形態では、ポリマー中の二糖単位の数はmである。他の実施形態では、mは2〜10,000の数である。他の実施形態では、mは2〜500の数である。他の実施形態では、mは2〜1000の数である。他の実施形態では、mは50〜500の数である。他の実施形態では、mは2〜2000の数である。他の実施形態では、mは500〜2000の数である。他の実施形態では、mは1000〜2000の数である。他の実施形態では、mは2000〜5000の数である。他の実施形態ではmは3000〜7000の数である。他の実施形態では、mは5000〜10,000の数である。他の実施形態では、グリコサミノグリカンの二糖単位は、1つの脂質又はリン脂質構成部分に結合することができる。他の実施形態では、グリコサミノグリカンの各二糖単位はゼロ若しくは1つの脂質又はリン脂質構成部分に結合することができる。他の実施形態では、前記脂質又はリン脂質構成部分は二糖単位の−COOH基に結合することができる。他の実施形態では、脂質又はリン脂質構成部分及び二糖単位の間の結合はアミド結合である。
【0112】
一実施形態では、本発明は脂質−GAG複合体又はリン脂質−GAG複合体、及びその使用方法を提供し、前記複合体は、一般式(A)、(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(IXa)、(IXb)、(X)、(Xa)、(XI)、(XII)、(XIIa)、(XIII)、(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVII)、(XVIII)、(XIX)、(XX)、(XXI)、及び(XXII)の構造で表される。他の実施形態では、前記GAGの平均分子量は5kDa〜90kDaである。他の実施形態では、前記GAGの平均分子量は5kDa〜60kDaである。他の実施形態では、前記GAGの平均分子量は5kDa〜40kDaである。他の実施形態では、前記GAGの平均分子量は5kDa〜15kDaである。他の実施形態では、前記GAGの平均分子量は5kDa〜20kDaである。他の実施形態では、前記脂質−GAG複合体はリン脂質−GAG複合体である。
【0113】
本発明の一実施形態では、Yはなしである。本発明の実施形態に従う、随意の架橋基(一実施形態では、スペーサーと称される)Yを形成する適切な2価の基の限定しない例は、例えば、2以上の、好適には4〜30の炭素原子の直鎖又は分岐鎖のアルキレン、−CO−アルキレン−CO、−NH−アルキレン−NH−、−CO−アルキレン−NH−、−NH−アルキレン−NH、CO−アルキレン−NH−、アミノ酸、シクロアルキレンであって、各例のアルキレンは、直鎖又は分岐鎖であり、かつ2以上の、好適には2〜30原子を鎖、−(−O−CH(CH)CH−)−の中に含み、式中xは1以上の整数である。
【0114】
本発明の一実施形態では、グリコサミノグリカンの糖の環は完全なまま(intact)である。他の実施形態では、完全なままとは閉環していることを指す。他の実施形態では、完全なままとは天然のままであることを指す。他の実施形態では、完全なままとは破壊されていないことを指す。
【0115】
本発明の一実施形態では、本発明に従う任意の化合物の脂質又はリン脂質の構造は完全なままである。他の実施形態では、本発明に従う任意の化合物の脂質又はリン脂質の天然の構造が維持されている。
【0116】
一実施形態では、本発明において使用される化合物は、生物分解性である。
【0117】
いくつかの実施形態で、用いられる化合物を以下の表1に一覧する。



【0118】

【0119】

【0120】
一実施形態では、式(B)及び式(XXII)のnは1〜10、他の実施形態では、nは1である。他の実施形態では、nは2である。他の実施形態では、nは3である。他の実施形態では、nは4である。他の実施形態では、nは5である。他の実施形態では、nは6である。他の実施形態では、nは7である。他の実施形態では、nは8である。他の実施形態では、nは9である。他の実施形態では、nは10である。
【0121】

【0122】

【0123】
他の実施形態では、前記カップリング剤は、DCC、EDAC、BOP、PyBOP、HATU、TSTU、又は任意の他のアミドカップリング剤である。他の実施形態では、前記カップリング剤はEDACである。他の実施形態では、前記カップリング剤は更にHOBT又はHOATを含む。
【0124】
他の実施形態では、前記ろ過の工程は、10kDのCentrasette膜を含む。
【0125】
他の実施形態では、Rはパルミチン酸の残基又はミリスチン酸の残基である。
【0126】
他の実施形態では、Rはパルミチン酸の残基又はミリスチン酸の残基である。
【0127】
他の実施形態では、グリコサミノグリカンの平均分子量は5kDa〜90kDaである。他の実施形態では、グリコサミノグリカンの平均分子量は5kDa〜20kDaである。他の実施形態では、グリコサミノグリカンの平均分子量は5kDa〜10kDaである。他の実施形態では、グリコサミノグリカンの平均分子量は10kDa〜20kDaである。他の実施形態では、グリコサミノグリカンの平均分子量は20kDa〜50kDaである。他の実施形態では、グリコサミノグリカンの平均分子量は30kDa〜60kDaである。他の実施形態では、グリコサミノグリカンの平均分子量は40kDa〜70kDaである。他の実施形態では、グリコサミノグリカンの平均分子量は50kDa〜80kDaである。他の実施形態では、グリコサミノグリカンの平均分子量は60kDa〜90kDaである。
【0128】
一実施形態では、ヒアルロン酸(HA)は溶液の形態で用いられる。他の実施形態では、HA溶液は実施例1に従って調製される。
【0129】
一実施形態では、断片化されたヒアルロン酸の調製プロセスは、限外ろ過を含む。他の実施形態では、実施例2に記載されるように、ヒアルロン酸の限外ろ過分別が行われる。
【0130】
一実施形態では、ホスファチジルエタノールアミン−ヒアルロン酸複合体(HyPE)は、GAGをPLとカップリング剤を用いて反応させることにより調製される。他の実施形態では、HyPEは、図1に図示されている装置を用いて実施例に従って調製される。
【0131】
一実施形態では、断片化されたHAがHyPEの調製に用いられる。他の実施形態では、断片化されたHAは実施例3に従って調製される。他の実施形態では、HyPEは実施例11に従って調製される。
【0132】
一実施形態では、カップリング剤が実施例3に従うHyPEの調製に用いられる。他の実施形態では、EDACがカップリング剤として用いられる。他の実施形態では、DCCがカップリング剤として用いられる。他の実施形態では、BOPがカップリング剤として用いられる。他の実施形態では、PyBOPがカップリング剤として用いられる。他の実施形態では、HATUがカップリング剤として用いられる。他の実施形態では、TSTUがカップリング剤として用いられる。
【0133】
一実施形態では、実施例3に従うHyPEの調製に用いられるカップリング剤はHOBTを含む。他の実施形態では、前記カップリング剤はHOATを含む。
【0134】
一実施形態では、粗HyPEが限外ろ過工程で処理される。他の実施形態では、HyPEは、実施例4に記載されるアルカリ限外ろ過に供される。
【0135】
一実施形態では、ろ過されたHyPEは抽出で単離される。他の実施形態では、HyPEは実施例5に記載されたプロセスに従って抽出される。他の実施形態では、前記抽出は、ジクロロメタン、エタノール及びメタノールを含む。
【0136】
一実施形態では、本発明は、被検体における炎症性疾患を治療する方法を提供し、この方法は炎症性疾患に罹患した被検体にリン脂質(PL)に結合したグリコサミノグリカン(GAG)を含む脂質−ポリマー複合体を含む組成物を投与することを含み、この複合体はGAGとPLをそれぞれ約0.25:15〜約5:15の質量PL対質量GAG比で反応させることで調製される。
【0137】
他の実施形態では、前記質量PL対質量GAG比は約0.25:15である。他の実施形態では、前記質量PL対質量GAG比は約0.5:15である。他の実施形態では、前記質量PL対質量GAG比は約1:15である。他の実施形態では、前記質量PL対質量GAG比は約2:15である。他の実施形態では、前記質量PL対質量GAG比は約5:15である。
【0138】
他の実施形態では、前記炎症性疾患は関節リウマチ、骨関節炎、創傷治癒、皮膚炎、再狭窄、嚢胞性線維症、多発性硬化症又は敗血症である。
【0139】
一実施形態では、HyPE及びHyPE類似体の炎症促進性サイトカインの発現を低下させる能力を測定するために、インビトロの検定が用いられる。他の実施形態では、実施例6、実施例7及び実施例8に従って、細胞に基づく検定が用いられる。他の実施形態では、IL−6の発現が測定される。他の実施形態では、TNF−αの発現が測定される。他の実施形態では、IP−10の発現が測定される。他の実施形態では、PGEの発現が測定される。
【0140】
他の実施形態では、前記組成物は静脈内的に投与される。他の実施形態では、前記組成物は局所的に投与される。
【0141】

【0142】

[用量及び投与経路]
【0143】
本発明の方法は、従来の賦形剤の中に脂質複合体を含む治療用組成物の使用に適応することができる。賦形剤とは、非経口、消化管内(enteral)(例えば、経口)又は局所の使用に適した薬学的に許容される有機又は無機担体物質であって、活性化合物と有害な反応を起こさないものである。好適な薬学的に許容される担体としては、限定はされないが、水、食塩水、アルコール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、炭水化物、例えばラクトース、アミロース又はデンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、白色パラフィン、グリセロール、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、コラーゲン、香油、脂肪酸モノグリセリド及びジグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。薬学的製剤を殺菌することができ、また必要に応じて、薬学的製剤を、例えば、潤滑剤、保存料、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響する塩類、緩衝剤、着色剤、香味料及び/又は芳香物質などの活性化合物と有害な反応を起こさない補助薬剤と混合することができる。必要に応じてそれらを、例えば、ビタミン、気管支拡張剤、ステロイド、抗炎症化合物、遺伝子治療剤、即ち野生型の嚢胞性線維症の膜コンダクタンス制御因子(CFTR)受容体、界面活性プロテインなどの当業者に理解される他の活性薬剤と組み合せることができる。
【0144】
一実施形態では、本明細書に記載されるように、本発明は更に化合物の塩の投与も提供する。一実施形態では、この塩は、薬学的に許容される塩であり、化合物の無毒性塩とも称され(一般的に、遊離酸と適切な有機又は無機塩基の反応により調製される)及び限定はされないが、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、酸性酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、カルシウム塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシレート、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート、ヘキシルレゾルシン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチルブロマイド、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムケート、ナプシル酸塩)、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド、及び吉草酸塩並びにそれらの塩の混合物が挙げられる。
【0145】
一実施形態では、投与経路は、非経口、消化管内、又はそれらの組み合わせであってよい。他の実施形態では、経路は眼内、結膜、局所、経皮、皮内、皮下、腹腔内、静脈内、動脈内、膣内、直消化管内、腫瘍内、傍癌(parcanceral)、経粘膜、筋肉内、血管内、心室内、頭蓋内、吸入、鼻吸引(スプレー)、舌下、経口、エアロゾル、若しくは坐薬、又はこれらの組み合わせであり得る。一実施形態では、投薬計画は、治療される病的状態の正確な性質、その病的状態の重篤度、患者の年齢及び一般的な健康状態などの要素に基づいて熟練した臨床医により決定される。
【0146】
一般的に、上述の目的で用いられる用量は変化するが、所望の抗疾患活性を発揮するための有効量内にある。本明細書で使用される用語「薬学的な有効量」とは、患者の症状又は疾患の所望の緩和を引き起こす式(I)化合物の量を指す。上記のいずれの目的のために用いられる用量は、一般的に体重の1Kgあたり1〜約1000mg(mg/kg)、1日あたり1〜4回投与されるか、又は持続点滴静注される。この組成物が局所的に投薬される場合、それらは一般的に0.1〜約10%w/vの濃度範囲で、1日あたり1〜4回投与される。
【0147】
一実施形態では、潜在的な抗酸化活性、膜安定化活性、抗増殖活性、抗ケモカイン活性、抗移動活性、及び抗炎症活性との単一の化学物質の使用は、被検体の炎症性疾患からの望ましい防護を提供し、又は他の実施形態では、本発明の方法は、記載された化合物の組み合わせ使用を提供する。他の実施形態では、本発明で用いられる化合物を、単一の剤形/組成物中で提供されることができ、又は他の実施形態では、複数の剤形を用いることができる。一実施形態では、本発明で用いられる剤形を同時に投与することができ、又は他の実施形態では、分、時間、日、週若しくは月の単位の、異なった時間間隔で投与することができる。
【0148】
一実施形態では、本発明で用いられる化合物が含まれる組成物を、種々の経路を介して投与することができ、一実施形態は、例えば、肺、及びリンパ系を通じた、より優れたかん流を提供するために、いくつかの化合物を非経口的に与えるなど、異なる化合物を異なる部位に提供するように適合されることがで、及び他の実施形態では、いくつかの剤形/化合物/組成物を、エアロゾルを介して提供することができ、又は他の実施形態では、より高い肺の粘膜濃度を提供するために鼻腔内に投与することができる。
【0149】
一実施形態では、本発明において使用される化合物を、一時的な病的状態の急性治療に用いられることができ、又は必要に応じて慢性的状態にも投与することができる。本発明の一実施形態では、化合物の濃度は、治療される疾患の性質、患者の状態、投与経路、及び個別の組成物の忍容性などの、さまざまな因子に依存する。
【0150】
一実施形態では、本発明の方法は、若年期の被検体への化合物の投与を提供し、又は他の実施形態では、被検体の生涯を通じて化合物の投与を提供し、又は他の実施形態では、症状の段階の重篤性及び恒常性に対応して病状対応的な化合物の投与を提供する。他の実施形態では、脂質又はPL複合体が投与されるべき患者は、疾患の症状を経験している人か、又は疾患に罹患する危険性のある人か、症状の再発を経験している人か、又は疾患の悪化している人か、又はそれらに伴う病的状態のある人である。
【0151】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される担体」とは、安全で、及び所望の投与経路で、少なくとも1つの本発明の化合物の有効量の適切な送達を提供する任意の製剤を指す。そのようなものとして、本発明の上述の全ての剤形は、ここに、「薬学的に許容される担体」と称される。この用語は、更に、化合物の安定性、及び投与経路に合致して、pH4.0〜pH9.0の範囲の特定の所望のpH値に維持される緩衝された剤形の使用をも指す。
【0152】
非経口投与については、特に適切なものは滅菌溶液、好適には油性又は水溶液と同様に懸濁液又は乳化液である。新しい化合物を凍結乾燥し、例えば、製品の注射のための調製に、得られた凍結乾燥物を使用することも可能である。
【0153】
一実施形態では、埋め込み又は坐薬が、本発明の脂質−GAG複合体を投与するために、用いられる。
【0154】
吸入による投与のために、特に気道の閉塞又は鬱血の治療のために、化合物の溶液又は懸濁液を混合し、及び適切な担体の存在下でエアロゾル化又は噴霧状化する。
【0155】
局所適用については、特に接触皮膚炎又は乾癬などの皮膚疾患の治療を目的として、化合物と従来のクリーム又は遅延放出パッチとの混合物が許容可能である。
【0156】
消化管内適用については、特に好適なものは錠剤、糖衣錠、液体、ドロップ、坐薬、又はカプセルである。シロップ、エリキシル剤などは甘みをつけたビークルが用いられる場合には使用可能である。適応がある場合には、坐薬又は浣腸剤形が推奨される投与経路である。
【0157】
例えば、リポソーム、又は、例えば、マイクロカプセル封入や多重コーティングなどにより活性化合物を異なった分解性のコーティングで保護することで、持続性又は指向性放出組成物を製剤化することができる。
【0158】
特定のケースにおける活性化合物の実際の好適な量は、利用される特定の化合物、製剤化された特定の組成物、適用の様式、並びに治療される特定の部位及び生物に従って変動することが理解されるであろう。所与の受給者に対する投薬量は、例えば、被験化合物と既知の薬剤の異なった活性の慣習的な比較、例えば適切な従来の薬学的なプロトコルの手段などの、従来の考慮を用いて決定できる。
[使用法]
【0159】
本発明の一実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載されるように、炎症性疾患に罹患した被検体の治療のために、又は炎症性疾患に罹患した被検体の死亡率を低下、若しくは死亡を遅延させるために、若しくは炎症性疾患に付随する症状を改善するために、本発明の複合体を利用する。
【0160】
一実施形態では、本発明で用いられる化合物は、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン及びヘパリンを含む。一実施形態では、本発明で用いられる化合物は、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン及びコンドロイチン硫酸を含む。一実施形態では、本発明で用いられる化合物は、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン及びヒアルロン酸を含む。一実施形態では、本発明で用いられる化合物は、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン及びカルボキシメチルセルロースを含む。一実施形態では、本発明で用いられる化合物は、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン及びヒアルロン酸を含む。
【0161】
一実施形態では、本発明で用いられる化合物は、アミド又はエステル結合を介してグリコサミノグリカンに結合したジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンである。一実施形態では、本発明で用いられる化合物は、アミド又はエステル結合を介してコンドロイチン硫酸に結合したジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンであり、このコンドロイチン硫酸は、コンドロイチン−6−硫酸、コンドロイチン−4−硫酸又はそれらの誘導体である。他の実施形態では、本発明で用いられる化合物は、アミド又はエステル結合を介してヘパリンに結合したジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンである。他の実施形態では本発明で用いられる化合物は、アミド又はエステル結合を介してヒアルロン酸に結合したジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンである。他の実施形態では、本発明で用いられる化合物は、アミド又はエステル結合を介してヒアルロン酸に結合したジミリストイルホスファチジルエタノールアミンである。
【0162】
一実施形態では、本発明の複合体は、本発明において有用である、広範囲の細胞保護的薬理活性を示す。一実施形態では、この化合物は抗炎症作用のために有用であり得る。サイトカイン及びケモカインの細胞同化(cellularelaboration)は、健康上、重要な調節的機能として作用する;しかしながら、ストレス又は疾患に対する過剰活性反応が引き起こされる場合、これらの化合物は、過剰に存在して組織を損傷し、それにより病態を更に悪化する方向に押しやる。一実施形態では、本発明の方法で用いられる脂質化合物は、とりわけ酵素ホスホリパーゼA2の細胞外形態を阻害する能力を含む、多重及び潜在的な薬理学的効果の組み合わせを保有する。
[嚢胞性線維症(CF)の治療法]
【0163】
一実施形態では、本発明の複合体は、炎症性疾患を有する被検体の炎症に影響することにおいて有用であり、この場合、被検体は、疾患の発症前の段階で、脂質複合体を投与される。CFの肺における炎症の特性は、莫大な数の好中球の気道内への持続性の浸潤である。好中球は、感染の制御を助けるが、大過剰に存在する場合には、それらは有害である。CFの肺の炎症プロセスの理解における主要な進歩は、症状の軽い及び/又は通常は痰が出ない患者における炎症プロセスを解析するための気管支鏡検査法の使用及び気管支肺胞洗浄(bronchoalveolarlavage:BAL)から来ている。最近のBAL研究は、好中球の豊富な炎症は非常に早期に、幼児期からでさえ、臨床的に明白な疾患なしに開始されることを示唆している。従って、一実施形態では、本発明の脂質/リン脂質複合体は、疾患の発症前の段階においてさえも、CFの治療において有用である。
【0164】
従って、一実施形態では、本発明は、嚢胞性線維症に罹患した被検体を治療する方法、又は嚢胞性線維症に罹患した被検体の死亡率を低下させるか、若しくは死亡を遅延させるための方法、又は嚢胞性線維症に付随する症状を改善するための方法、及び化合物/組成物/剤形を提供する。一実施形態では、本発明は、前記被検体の有害な炎症反応の縮小又は無効化、又は他の実施形態では、被検体のCFの予防、治療、罹患率の低下、重篤度の低下、発症の遅延、又は感染発病の減少を提供する。他の実施形態では、本発明は、炎症促進性ケモカイン、サイトカイン、又はそれらの組み合わせの発現を減少するための方法を提供する一方で、他の実施形態では、本発明は、ヒト気道上皮細胞株におけるNF−kB、IL−6、IL−8、又はそれらの組み合わせを活性化する方法を提供する。
[創傷の治療法]
【0165】
他の実施形態では、本明細書では、被検体の治療されるべき傷口に、本明細書に記載される任意の複合体を含む組成物の有効量を、塗布又は投与することを含む、創傷治癒を促進する方法が提供される。他の実施形態では、本明細書では、被検体の治療されるべき傷口に、本明細書に記載される一般式(A)の構造で表される化合物を含む組成物の有効量を、塗布又は投与することを含む、創傷治癒を促進する方法が提供される。
【0166】
他の実施形態では、創傷治癒の促進は創傷治癒を含む。他の実施形態では、創傷治癒の促進は創傷治癒を加速することを含む。他の実施形態では、創傷治癒の促進は、ウイルス及び/又は細菌感染のリスクを低下させることを含む。他の実施形態では、創傷治癒の促進は傷口の中の、又は傷口の近傍の炎症を低下させることを含む。
【0167】
他の実施形態では、本明細書に記載された複合体は、慢性及び急性創傷の治癒速度を増加させる。他の実施形態では、本明細書に記載された複合体は、創傷治癒を遅延又は損なう機構を妨げる。他の実施形態では、本明細書に記載された複合体は、創傷治癒を遅延又は損なう外生要因を妨げる。他の実施形態では、本明細書に記載された複合体は、創傷治癒を遅延又は損なう内生要因を妨げる。他の実施形態では、要因としては、感染、潰瘍化、特に糖尿病によるもの、血管疾患に付随する血液循環問題、栄養不良、ストレス、がんの放射線療法、及び/又は化学療法、免疫系の低下、あるいは単純に正常な加齢プロセスに起因するものが挙げられる。他の実施形態では、本明細書に記載された方法は、創傷治癒過程を促進する、治療的及び美容的アプローチの両方を提供する。
【0168】
他の実施形態では、創傷としては、限定はされないが、以下のものが挙げられる:外科的創傷;咬傷;熱傷;酸及びアルカリによる熱傷;低温火傷(凍傷)、日焼け、軽微な切り傷、大きな切り傷、擦過傷、裂傷、銃撃、又は刃物による傷害の創傷;先天性疾患による創傷;歯科手術による創傷;歯周病;外傷による創傷;腫瘍に付随する創傷、原発性腫瘍、又は転移に関連する悪性皮膚潰瘍に分類されるもの;潰瘍、下肢潰瘍;足部潰瘍;褥瘡及び角膜創傷。
[関節炎の治療法]
【0169】
本発明の他の実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載された複合体を用いる、関節炎に罹患した被検体を治療する方法、関節炎に罹患した被検体の関節への障害を低下させるか若しくは遅延させる方法、又は関節炎に付随する症状を改善する方法を提供する。本発明の他の実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載された複合体を含む製剤を用いる、関節炎に罹患した被検体を治療する方法、関節炎に罹患した被検体の関節への障害を低下させるか若しくは遅延させる方法、又は関節炎に付随する症状を改善する方法を提供する。
【0170】
他の実施形態では、本明細書では、関節痛、関節内の腫張、関節の炎症、又はそれらの組み合わせを患う被検体を治療する方法であって、本発明の複合体を含む組成物を、被検体に投与するステップを含む方法を提供する。他の実施形態では、本明細書では、関節痛、関節内の腫張、関節の炎症、又はそれらの組み合わせを患う被検体を治療する方法であって、本発明の複合体を含む組成物を、被検体の腫張/炎症を持つ関節内に注射するステップを含む方法を提供する。
【0171】
当業者は、用語「関節炎」が関節リウマチ(RA)及び骨関節炎(OA)の両方を指すことを認識することを理解されたい。
【0172】
他の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、IL−6、IL−8、TNF−α、NF−kB、又はそれらの組み合わせの産生を阻害し、それにより関節炎に罹患した被検体の関節への障害を軽減又は遅延させる。他の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、IL−6、IL−8、TNF−α、NF−kB、又はそれらの組み合わせの産生を阻害し、それにより関節炎に付随する症状を改善する。他の実施形態では、方法は、IL−6、IL−8、TNF−α、NF−kB、又はそれらの組み合わせの産生を阻害により、関節痛、関節内の腫張、関節の炎症、又はそれらの組み合わせをに苦しむ被検体を治療するために、本明細書に記載される複合体の投与を含む。他の実施形態では、本明細書に記載される複合体を含む組成物の関節内注射による局所投与は、関節の細胞内のIL−6、IL−8、TNF−α、NF−kB、又はそれらの組み合わせの産生を阻害する。他の実施形態では本明細書に記載される複合体を含む組成物の関節内注射による局所投与は、関節内の炎症を抑制する。
[他の炎症性疾患の治療法]
【0173】
当業者は、炎症性疾患が、限定はされないが、免疫系の活性化に起因する疾患を含むことを理解している。従って、自己免疫疾患は炎症性疾患であると理解される。かかる疾患としては、限定はされないが、関節リウマチ、骨関節炎、創傷治癒、皮膚炎、再狭窄、嚢胞性線維症、中枢神経系組織障害多発性硬化症、閉塞性肺疾患、クローン病、心臓血管疾患、動脈硬化、接触皮膚炎、乾癬、ARDS、又は敗血症が挙げられる。
【0174】
一実施形態では、本発明は、とりわけ、被検体に本発明の複合体の有効量を投与するステップにより、閉塞性肺疾患に罹患した被検体を治療する方法を含む、閉塞性肺疾患に罹患した被検体を治療する方法を提供する。
【0175】
一実施形態では、本発明は、とりわけ、被検体に、本発明の複合体の有効量を投与するステップにより、結腸炎、クローン病、を含む腸管の粘膜障害に罹患した被検体を治療することを含む、結腸炎、クローン病、又は他の形態の腸管の粘膜障害に罹患した被検体を治療方法を提供する。
【0176】
一実施形態では、本発明は、とりわけ、心臓血管疾患に罹患した被検体に本発明の複合体の有効量を投与するステップにより、心臓血管疾患に罹患した被検体を治療する方法を含む、心臓血管疾患に罹患した被検体を治療する方法を提供する。
【0177】
一実施形態では、本発明は、とりわけ、動脈硬化に罹患した被検体に本発明の複合体の有効量を投与するステップにより、動脈硬化に罹患した被検体を治療する方法を含む、動脈硬化に罹患した被検体を治療する方法を提供する。
【0178】
一実施形態では、本発明は、とりわけ、中枢神経系組織障害に罹患した被検体に本発明の複合体の有効量を投与するステップにより、中枢神経系組織障害に罹患した被検体を治療する方法を含む、中枢神経系組織障害に罹患した被検体を治療する方法を提供する。
【0179】
一実施形態では、本発明は、とりわけ、多発性硬化症に罹患した被検体に本発明の複合体の有効量を投与するステップにより、多発性硬化症に罹患した被検体を治療する方法を含む、多発性硬化症に罹患した被検体を治療する方法を提供する。
【0180】
一実施形態では、本発明は、とりわけ、接触皮膚炎に罹患した被検体に本発明の複合体の有効量を投与するステップにより、接触皮膚炎に罹患した被検体を治療する方法を含む、接触皮膚炎に罹患した被検体を治療する方法を提供する。
【0181】
一実施形態では、本発明は、とりわけ、乾癬に罹患した被検体に本発明の複合体の有効量を投与するステップにより、乾癬に罹患した被検体を治療する方法を含む、乾癬に罹患した被検体を治療する方法を提供する。
【0182】
一実施形態では、本発明は、とりわけ、敗血症に罹患した被検体に本発明の複合体の有効量を投与するステップにより、敗血症に罹患した被検体を治療する方法を含む、敗血症に罹患した被検体を治療する方法を提供する。
【0183】
一実施形態では、本発明は、とりわけ、ARDSに罹患した被検体に本発明の複合体の有効量を投与するステップにより、ARDSに罹患した被検体を治療する方法を含む、ARDSに罹患した被検体を治療する方法を提供する。
【0184】
本明細書に記載する脂質複合体の薬理活性は、脂質構成部分の性質に一部起因する可能性がある一方で、他の実施形態において、脂質複合体について観察される多重及び多様な薬理的性質の組み合わせは、この複合体の、本質的に1つの化学物質でいくつかの異なる薬剤として作用する能力を表す可能性がある。従って、例えば、CFで生じ得る、肺粘膜又は肺実質損傷は、免疫抑制、抗炎症、抗酸化、酸化窒素産生の抑制、又は膜安定化の薬理的活性の任意のひとつ又は全てにより軽減される可能性がある。
【0185】
一実施形態では、本発明は、炎症性疾患又は関連する疾患若しくは障害を「治療する」方法を提供するが、一実施形態では、「治療する」とは、治療的な治療及び予防的若しくは防止的な手段の両方を指し、その目的は、目的の病的状態、若しくは本明細書で上述した疾患を防止又は軽減することである。一実施形態では、「治療する」ことは、症状の発現を遅延させること、症状の重篤度を軽減すること、急性症状の出現を低下させること、症状の数を軽減すること、疾病に関連する症状の発現率を低下させること、症状の持続期間を軽減すること、症状の軽減、症状を改善すること、二次的症状を軽減すること、二次的感染を軽減すること、患者の生存期間を延長すること、疾患の再発を防止すること、症状発現の再発の数又は頻度を減少させること、症状の発現の間の期間を増大させること、進行の持続までの時間を増加させること、寛解を促進すること、寛解を誘導すること、寛解を増大させること、回復を加速すること、又は代替的治療薬の有効性を増大させるか、若しくはそれに対する抵抗性を低下させることを指す。
【0186】
一実施形態では、本発明の方法は、被検体の感染を治療するために有用であり、この病原体はウイルスであり、他の実施形態では、この病原体は細菌である。一実施形態では、前記病原体は、抗酸菌、シュードモナス菌、クリプトコッカス、ストレプトコッカス、レオウイルス、インフルエンザ、又は他の当業者に周知の感染などの、呼吸器系に感染する病原体である。
【0187】
更なる詳細なしで、当業者は先述の記載を用いて、本発明をその完全な範囲において利用することが可能であると考えられる。以下の実施例及び好適な具体的実施形態は、従って、単に説明のためのものであり、開示の残りの部分をいかなる方式においても制限するものでは決してないと解釈されるべきである。
【実施例】
【0188】
実施例1 ヒアルロン酸(HA)溶液の調製
4gのクロロクレゾールを、4Lの脱イオン(DI)水(0.1%溶液)に溶解した。機械的撹拌下にHA UL15を4Lの0.1%クロロクレゾール溶液に溶解した。限外ろ過膜の詰まりを防止するために、HA溶液を100μmフィルターで、次いで50μmフィルターで、次いで10μmフィルターでろ過した。これらのフィルターは全て予め10%過酸化水素で殺菌し、及び過酸化水素を除くことを確実に行うために大量のDI水で洗浄した(過酸化物検査紙により確認した)。
【0189】
実施例2 ヒアルロン酸(HA)の限外ろ過分別
実施例1のHA溶液を、予め10%過酸化水素で殺菌し、及び過酸化水素を除くことを確実に行うために大量のDI水で洗浄した(過酸化物検査紙により確認した)Centramateシステムに投入した。
【0190】
70kDaのOmega TFF膜による定容積透析ろ過の手段により、20Lの、実施例1で述べたように調製した0.1%クロロクレゾール溶液を、限外ろ過し、ろ液の70kDa未満の分画を、予め10%過酸化水素で殺菌したカーボイに集めた。ポンプ速度及びバルブは、滞留フローがろ液フローの10倍に、供給圧が40PSI未満になるように設定した。
【0191】
前記70kDaの膜を30kDaの膜で置き換え、及び前記Centramateシステムを10%過酸化水素で殺菌した。
【0192】
5Lのろ液、70kDa未満の分画、を容器に充填し、定容積透析ろ過の手段により、カーボイ中の残りの35Lの70kDa未満の分画を限外ろ過した。容器の容積を2Lに低下させ、及びクロロクレゾールを除去するために追加の10LのDI水を限外ろ過した(適切なGC検定により確認した)。容器の容積を更に1Lに低下させ、供給圧を40PSI未満に維持するために、必要に応じてポンプ速度を低下させた。前記容器の内容物を、直接加熱滅菌したLyoguard容器に移し、前記容器を空にし、Lyoguard容器を閉鎖し、凍結し、凍結乾燥して、HA UF70/30を生成させた。以前のバッチと一致することを確認するために、このロットのHA UF70/30のGPC分析をおこなった。A微生物限度(bioburden)試験及びクロロクレゾールの適切なGC検定をおこなった。HA UF70/30含水量の決定のために、カール・フィッシャー(Karl Fischer)試験をおこなった。
【0193】
実施例3 HyPEの合成反応
図36に図示される装置を用いて、24gの2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)を125mLのDI水に溶解するとともに、そのpHを、4N−NaOHによりpH6.4に調整した。
【0194】
12L丸底フラスコ(ポンプ及び音波粉砕機とともに閉鎖系を形成する。これらの全ては予めオートクレーブ処理及び/又は70%イソプロパノールにより滅菌)中で、2.5gのジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)及び25gのヒドロキシベンゾチアゾール(HOBT)を、940mLのtert−ブタノール及び80mLの水に、撹拌しながら、45°Cに加温して溶解した。これに、850mLの水及び115mLの前記MES溶液を加えた。この溶液のpHを、2.5N−NaOHにより、pH6.4に調整した。次に、実施例2の、25gのHA UF70/30を、撹拌下しながら、45°Cに加温して溶解した。25gの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノエチル)カルボジイミド(EDAC)を次いで加え、ポンプ及び音波粉砕機を起動し、システムを40〜50°Cで3時間保った。反応の進行をモニターするためにGPC分析をおこなった。3時間後に音波粉砕機及びポンプを停止し、及び溶液を室温で一晩撹拌した。翌日、HyPEを沈殿させるために、750mLのアセトニトリルを加えた。この混合物を30分間静置し、続いて上澄み液を除去した。ここに、予め150gのNaCOを7.5LのDI水に溶解して調製した、7.5Lの2%NaCOを加えた。強力な機械的撹拌を少なくとも2時間おこない、尿素に関連する副生成物を加水分解した。この溶液を、冷却したジャケット付きのフローセルを通過させて温度を20〜25°Cに保ちながら6NHClで中和した。
【0195】
実施例4 HyPEのアルカリ限外ろ過
2.25kgのNaHCOを、150gのクロロクレゾールを150LのDI水に溶解させて調製した、150Lの0.1%クロロクレゾール溶液に溶解した。実施例3の消化され中和されたHyPE溶液をポンプにより丸底フラスコからCentrasetteシステムに移送するために、バルブの手段により、閉鎖反応系を迂回させた。10kDaのOmega TFF膜による定容透析ろ過の手段により、150Lの1.5%NaHCOの0.1%クロロクレゾール溶液をろ過し、そのろ液の10kDa未満の分画を廃棄した。ポンプ速度及びバルブは、滞留フローがろ液フローの10倍に、供給圧が40PSI未満になるように設定した。約13.2分の尿素に関連したピーク及び約17.2分のHOBTのピークの消失を確認するためにGPC分析をおこなった。この溶液を、冷却されたジャケット付きのフローセルを通過させて温度を20〜25°Cに保ちながら6NHClで中和した。
【0196】
実施例5 HyPEの抽出
3Lのジクロロメタン、3Lのエタノール、及び2.25Lのメタノールを混合して抽出溶液を作成した。7.5Lのこの抽出溶液を、3Lの実施例4の粗HyPE溶液を含む丸底フラスコに加えた。これを15分間強力に撹拌し、その後45分間静置した。下層のジクロロメタン層を除去した。メタノール及びエタノールを除去するために、定容透析ろ過の手段により、この溶液を100LのDI水で洗浄した。約14分のピークの消失を確認するために、GPC分析をおこなった。容積を3Lに低下させ、及び2つの加熱殺菌されたLyoguard容器に全内容物を移し、閉鎖し、凍結し、凍結乾燥してHyPEを生成させた。単離されたHyPEのNMR及びHPLCデータが図2及び図3に示される。
【0197】
実施例6 RAW264.7細胞のインビトロの活性化
RAW364.7細胞のインビトロの活性化は、図4に図示された概略図に従って行われた。各被験物質が、DMEM(FBSなし)中に、10mg/mL(全ての被験物質濃度は、水分含量に関して補正された)の濃度で調製され、ボルテックスされ、50°Cで5分間加熱され、5分間音波破砕され、0.2μmのシリンジ・フィルターによりろ過された。0.6mg/mL、0.2mg/mL及び0.06mg/mLの2X被験物質希釈標準溶液を、10mg/mLのストック溶液をCMに希釈することにより調製した。2.55mMデキサメタゾン/エタノール溶液をCM中で2μM(2X希釈標準溶液)に希釈した。ビークルの参照溶液はCMであった。1mg/mLofLPS(1xPBS中で作成)溶液をCMにより〜10μg/mLに希釈した。RAW264.7細胞をCM中で、37°C、5%CO下にXX代継代(3〜4日ごとに継代培養)した。1x10細胞/mLの濃度の細胞の0.5mLを、24穴の組織培養プレートに播種した。処理に先立ち、37°C、5%CO下に細胞を30分間接着させた。適切な被験物質、デキサメタゾン、又はビークルの参照希釈標準溶液を、この細胞に加えた。LPS処理に先立ち、細胞を37°C、5%CO下で1時間培養した110μLのCMをLPSのないプレートに加えた。110μLの10μg/mLのLPSを1μg/mLのLPSを加えたプレートに加えた。これらのプレートを37°C、5%CO下で24時間インキュベートした。
【0198】
実施例7 上澄みの収穫/XTT検定
LPS処理の24時間後に細胞培養の上澄みを収集し、及び検定まで−30°Cで保存した。XTT検定のために400μLの培地を各細胞培養ウエルに残した。XTT検定でのブランクとするために、400μLの培地を細胞のない培養ウエルに加えた。200μLの活性化XTT試薬を各ウエルに加えた。プレートを37°C、5%CO下で1時間インキュベートした。各ウエルから100μLが採取され、及びサーモマックス・マイクロプレート・リーダー(ThermoMax microplate reader)(Molecular Devices、カリフォルニア州、サニーベル(Sunnyvale))により450nm(630nm補正)での読み取りをおこなった。高分子量HyPE組成物に関するXTTデータを、図5及び図6に示す。低分子量HyPE組成物に関するXTTデータを、図22及び図23に示す。
【0199】
実施例8 サイトカイン/ケモカイン検定
細胞培養の上澄みのIL−6、TNF−α、及びIP−10を、Luminexによるアッセイを用いて製造業者の操作説明書に従って分析した。Luminex100(Luminex社、テキサス州オースチン(Austin))を用いてデータを収集した。標準曲線は、1/yにより重み付けした5パラメータ・ロジスティック曲線当てはめ式(5−parameter logisticcurve−fitting equation)(StarStationV2.0;Applied Cytometry Systems、カリフォルニア州サクラメント(Sacramento))により生成した。各サンプルの測定値を、適切な標準曲線によって補間した。必要に応じて、計算によって得られた濃度に適切な希釈係数を乗じた。高分子量HyPE組成物に関するTNF−αデータを図7、図8及び図15に示す。低分子量HyPE組成物に関するTNF−αデータを、図24、図25、及び図32に示す。高分子量HyPE組成物IL−6データを、図9、図10、及び図16に示す。低分子量HyPE組成物に関するIL−6データを図26、図27、及び図33に示す。高分子量HyPE組成物に関するIP−10データを、図11、図12、及び図17に示す。低分子量HyPE組成物に関するIP−10データを、図28、図29及び図34に示す。
【0200】
細胞培養の上澄みのPGEを、ELISAを用いて、製造業者の操作説明書に従って分析した。吸光度測定値を、ThermoMax microplate reader(Molecular Devices)により検出した。標準曲線は、4パラメータ・ロジスティック曲線当てはめ式(4−parameter logistic curve−fitting equation)(SoftMax Pro4.7.1;Molecular Devices)を用いて生成された。各サンプルの測定値を、適切な標準曲線から補間した。二重の補間されたサンプル値を平均化し、標準偏差を計算した。計算によって得られた濃度を、適切な希釈係数で乗じた。高分子量HyPE組成物に関するPGEデータを、図13、図14及び図18に示す。低分子量HyPE組成物に関するPGEデータは図30、図31及び図35に示す。
【0201】
実施例9 低分子量ヒアルロン酸ナトリウムの調製
ヒアルロン酸ナトリウム(1.32MDa)の原料を酸性加水分解により分解した。このサンプル溶液を分解後直ちに限外ろ過した。最終生成物は、以前の場合のサンプルと同様に、スプレー乾燥機を用いて調製した。加えて、微生物的純度を達成するために、乾燥する前にそれを0.2mmフィルター(PALL)でろ過した。
【0202】
実施例10 分子量のSEC−MALSによる決定
HPLCポンプ(G1310A)、自動インジェクター(G1313A)、及び以下のカラム系から構成されるクロマトグラフィー系(Agilent、1100Series)と、PL aquagel−OH Mix及びPL aquagel−OH 30(300x7.5mm、8μm;Agilent Technologies)カラムとを、直列に連結し、室温で自動温度調節した。注入容積を100μLとした。溶離液(0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.5)を、DAWN−EOS多角度レーザー光散乱光度計(18角度、Wyatt Technologies Corporation)及び屈折率検出器 rEX Optilab(Wyatt Technologies Corporation)を用いてモニターした。データ取得及び分子量計算は、ASTRA Vソフトウエア Version 5.3.2.15.を用いておこなった。移動相の流速を0.8mL/minに維持した。ヒアルロン酸ナトリウムに対する比屈折率増分(dn/dc)として0.155mg/mLとした。
【0203】
一定の量に計量したサンプルをリン酸エステル緩衝液(濃度20.0mg/mL)に溶解して、ヒアルロン酸のサンプルを調製した。全てのサンプルを数時間撹拌した。この溶液をシリンジフィルター(0.2μm、直径25mm、Whatman)でろ過し、及びHPLC系で分析した。
【0204】
光散乱測定は、屈折率検出器などの高感度濃度検出器と直列に使用され、及びdn/dcの値(示差屈折率増加量)が既知の場合、モル質量の絶対的測定を提供できる。
【0205】
光散乱測定は、自動的に全てのサンプルに対してカラム較正曲線を与え、時間のかかるコンフォーメーションに依存する較正手順を取り除く。
【0206】
計算方法として屈折率検出器の既知のdn/dc及び既知の較正定数を用いた。示差屈折率増加量(mL/g単位での)を、屈折計を用いて決定した。
【0207】
ヒアルロン酸の重量平均分子量を、デキストラン標準の測定により検証した。
【0208】
低分子量ヒアルロン酸について決定された分子量及び多分散性値は、それぞれ、7.86x10g/mol及び1.32Mw/MNであった。クロマトグラム及び分布図を図19及び図20に示す。ここで、赤線は光散乱信号、及び青線は屈折率信号を示す。図21はUVスペクトルを示す。
【0209】
実施例11 9.54kDのヒアルロン酸からのHyPEの調製
14.5gのMESを75mLのDI水に溶解し、4N−NaOHでpHを6.4に調整することで、MES緩衝液を調製した。図1に示されているものと同様の装置を用いて、10.0gのHOBTを225mLのDI水、60mLのMES緩衝液、及び12mLのtert−ブタノールに溶解した。4N−NaOHでpHを6.4に調整した。15.1gのHAを350mLのDI水に溶解した。55°Cに加温して、1.25gのDPPEを440mLのtert−ブタノール、及び90mLDI水に溶解した。このHA溶液及びHOBT溶液を35°Cに加温し、及び混合した。次いで、50°CのDPPE溶液を加えると透明な溶液が得られた。これをフラスコに加えて、及び音波破砕機システム(図36)を通して循環させると、43°Cまでに冷えた。反応混合物のいくつかの成分を、溶液から析出させ、及び反応混合物を音波破砕機により透明な溶液とするためには、49°Cまで加温する必要があった。45°Cの温度で反応混合物に12.5gのEDACを粉末として加えた。180ワットの出力で音波破砕を開始した。図37と38に示されるように、反応をGPCによりモニターし、及び最初のピークの面積と第二のピークの面積との比が継続的に増大することにより観察されるように、凝集の程度のために反応を通常の3時間を越えて、翌日まで継続させた。音波破砕を停止し、及び明らかに固定子からの少量のゴム状破砕物を除去するために、反応混合物を0.45μmフィルターでろ過した。この溶液(1200mL)を600mLのDCM及び600mLのMeOHで抽出した。得られた乳化液を急速に再溶解し、さらに、水層を再び500mLのDCM及び500mLのEtOHで抽出した。最終的に、水層を250mLのDCM及び250mLのEtOHで抽出し、及び週末を越えて放置した。残渣のDCMを35°C、200Torrで、回転式エバポレーターにより除去した。次いで、この溶液を予め洗浄された10kDa膜を有するCentrasette限外ろ過システムに移し、及び定容透析ろ過により、残渣の有機溶媒を除去するために、5Lの1.5%NaHCOで洗浄した。次いで、2%NaCOを徐々に添加してpHをpH9.2に高めた。この溶液を1時間、室温で撹拌した。30Lの1.5%NaHCOで更に洗浄したところ、約12.5分のピークが消失した。この溶液をpH7になるまで30LのDI水で洗浄した。遊離パルミチン酸などの、消化/限外ろ過の副生成物を除去するために、この溶液を再び1LのDCM、1LのMeOH、及び0.75LのEtOHで抽出した。水層を再び400mLのDCM及び50mLのEtOHで抽出し、及び最終的に、3回目は400mLのDCM及び50mLのEtOHで抽出した。35°C、200Torrで、回転式エバポレーターにより残渣のDCMを除去した。定容透析ろ過により、15LのDI水による洗浄によって、残渣のMeOH及びEtOHを除去した。この溶液を約1Lまで濃縮し、及び0.2μmフィルターを通じてろ過し、Lyoguard容器に入れ、及び凍結乾燥機の中に入れた。棚温度を−70°Cまで下げて凍結した。凍結したときに、真空(14mT)を加え、及び棚温度を約30°Cまで上昇させた。5日後に、6.134gのHyPE、水補正重量で5.2gが回収された。これは12.5g(水補正)のHA換算で、42%の収率に相当する。総リンは0.28%(乾燥ベース)であった。LC/MS検定により、1,456ppmの遊離EDUが見出され、及びNaOHに曝露後には12,557ppmの総EDUが見出された。HOBTは検出されず、及びMESは80ppm未満であった。最終生成物のGPCを図39に、及びNMRデータを図40に示す。
【0210】
本明細書では、本発明の特定の特徴が説明され、記載されてきたが、当業者には多くの修正、置換、変更、及び等価物が自明であろう。従って、添付された請求項は、本発明の真の趣旨の範囲にある、かかる修正、及び変更を包含することを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン脂質(PL)に結合したグリコサミノグリカン(GAG)を含む脂質−ポリマー複合体であって、前記複合体が、前記GAGと前記PLをそれぞれ約0.25:15〜約5:15の質量PL対質量GAGの比で反応させることにより調製される、脂質−ポリマー複合体。
【請求項2】
前記質量PL対質量GAG比が約0.25:15である、請求項1に記載の脂質−ポリマー複合体。
【請求項3】
前記質量PL対質量GAG比が約0.5:15である、請求項1に記載の脂質−ポリマー複合体。
【請求項4】
前記質量PL対質量GAG比が約1:15である、請求項1に記載の脂質−ポリマー複合体。
【請求項5】
前記質量PL対質量GAG比が約2:15である、請求項1に記載の脂質−ポリマー複合体。
【請求項6】
前記質量PL対質量GAG比が約5:15である、請求項1に記載の脂質−ポリマー複合体。
【請求項7】
前記GAGがヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、又はケラタン硫酸である、請求項1に記載の脂質−ポリマー複合体。
【請求項8】
前記PLがホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、又はホスファチジルグリセロールである、請求項1に記載の脂質−ポリマー複合体。
【請求項9】
前記PLが、パルミチン酸の残基又はミリスチン酸の残基を含む、請求項1に記載の脂質−ポリマー複合体。
【請求項10】
前記PLがジミリストイルホスファチジルエタノールアミン又はジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンである、請求項1に記載の脂質−ポリマー複合体。
【請求項11】
前記GAGの多分散性が約1〜1.75である、請求項1に記載の脂質−ポリマー複合体。
【請求項12】
前記GAGの多分散性が約1.25〜1.5である、請求項11に記載の脂質−ポリマー複合体。
【請求項13】
前記GAGの平均分子量が5kDa〜90kDaである、請求項1に記載の脂質−ポリマー複合体。
【請求項14】
前記GAGの平均分子量が5kDa〜20kDaである、請求項13に記載の脂質−ポリマー複合体。
【請求項15】
リン脂質(PL)にアミド又はエステル結合を介して結合したグリコサミノグリカン(GAG)を含む、脂質−ポリマー複合体であって、前記GAGの分子量が5〜20kDaである、脂質−ポリマー複合体。
【請求項16】
前記GAGはヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、又はケラタン硫酸である、請求項15に記載の脂質−ポリマー複合体。
【請求項17】
前記PLが、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、又はホスファチジルグリセロールである、請求項15に記載の脂質−ポリマー複合体。
【請求項18】
前記PLが、パルミチン酸の残基又はミリスチン酸の残基を含む、請求項15に記載の脂質−ポリマー複合体。
【請求項19】
前記PLがジミリストイルホスファチジルエタノールアミン又はジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンである、請求項15に記載の脂質−ポリマー複合体。
【請求項20】
前記GAGの多分散性が、約1〜1.75である、請求項15に記載の脂質−ポリマー複合体。
【請求項21】
前記GAGの多分散性が約1.25〜1.5である、請求項20に記載の脂質−ポリマー複合体。
【請求項22】
請求項1に記載の脂質−ポリマー複合体を含む、薬学的組成物。
【請求項23】
請求項15に記載の脂質−ポリマー複合体を含む、薬学的組成物。

【図4】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図32−1】
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【図32−2】
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【図32−3】
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【図33−1】
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【図33−2】
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【図33−3】
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【図34−1】
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【図34−2】
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【図34−3】
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【図35−1】
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【図35−2】
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【図35−3】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図36】
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【公表番号】特表2012−526819(P2012−526819A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510916(P2012−510916)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/034317
【国際公開番号】WO2010/132402
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(504303573)イッサム リサーチ ディベロプメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティ オブ エルサレム リミテッド (10)
【出願人】(511274307)モリア バイオファーマスーティカルズ (1)
【Fターム(参考)】