脈管周囲の間葉系前駆細胞
【課題】間葉前駆細胞が、脈管周囲のマーカーを利用してある範囲の組織由来の脈管周囲の間隙から単離した。
【解決手段】脈管周囲のマーカー3G5の存在によって、好ましくは初期発生マーカー(例えば、MUC18、VCAM-1およびSTRO-1bri)と一緒にα平滑筋アクチンの存在によってもまた特徴付けられる新たな間葉系前駆細胞表現型が記載される。この脈管周囲の間葉系前駆細胞は多能性であり、脈管組織ならびに骨髄、象牙質および歯髄を形成することが示されている。これらのマーカーに基づく細胞分類を使用して富化する方法もまた記載される。
【解決手段】脈管周囲のマーカー3G5の存在によって、好ましくは初期発生マーカー(例えば、MUC18、VCAM-1およびSTRO-1bri)と一緒にα平滑筋アクチンの存在によってもまた特徴付けられる新たな間葉系前駆細胞表現型が記載される。この脈管周囲の間葉系前駆細胞は多能性であり、脈管組織ならびに骨髄、象牙質および歯髄を形成することが示されている。これらのマーカーに基づく細胞分類を使用して富化する方法もまた記載される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間葉系前駆細胞、および脈管周囲(peruvascular)のマーカーを有するこのような前駆細胞の部分集団の単離に関する。
【背景技術】
【0002】
間葉系前駆細胞は医学的用途のための可能性を有するので、これらの細胞を単離および富化する多数の試みがなされてきた。Pittingerら(1999)は、骨髄からのクローン原性細胞の増殖について示し、増殖された間葉系幹細胞の調製物を記載している。骨髄から比較的高い収率を提供するこのような方法のより最近の例は、Simmonsらの公報WO01/04268中に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO01/04268
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし今日まで、広範な組織からの間葉系前駆細胞の単離を可能にする方法の例はなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、多能性間葉系前駆細胞(MPC)の集団が脈管周囲の間隙(niche)に存在するという知見から生じる。このことにより、WO01/04268中で言及される単一の組織である骨髄よりもかなり広範な組織型のMPC供給源が存在することが実証されている。本発明は、MPCが富化した集団が、マーカー3G5によって識別される2つの集団へと分化し得るというさらなる発見から生じる。3G5陽性のMPCは、血管新生への応用のために特に重要であるとみなされるが、これらはまた、他の組織型へと分化することが実証可能に示されている。本発明の好ましい富化した集団中に存在するMPCのレベルが、いくつかの分化した組織型を提供するのに充分な数の特化した細胞の集団を生じる可能性があるということが、本発明のさらなる知見である。
【0006】
第1の態様の第1の形態において、本発明は間葉系前駆細胞(MPC)を富化する方法に帰すると言うことができ、この方法は、脈管新生した供給源組織から単細胞懸濁物を調製するステップおよび初期脈管周囲細胞マーカーの存在に基づいて富化するステップを含む。
【0007】
第1の態様の第2の形態において、本発明は間葉系前駆細胞を富化する方法に帰すると言うことができ、この方法は、骨髄ではない脈管新生した供給源組織から単細胞懸濁物を調製し、この組織は別個の細胞に分離するステップ、ならびに1種または複数の初期発生マーカーの存在またはレベル、および特化を示す1種または複数のマーカーの非存在のうち1つに基づいて富化するステップを含む。
【0008】
第1の態様の第3の形態において、本発明は間葉系前駆細胞(MPC)を富化する方法に帰すると言うことができ、この方法は、脈管新生した供給源組織から単細胞懸濁物を調製するステップおよびこの脈管新生した組織において脈管周囲の細胞によって発現されるマーカーの存在に基づいて富化するステップを含む。
【0009】
第2の態様において、本発明は間葉系前駆細胞(MPC)を富化した細胞の富化した集団に帰すると言うことができ、このMPCは、3G5、MUC18、VCAM-1、STRO-1briおよびα平滑筋アクチンの表現型を有する。
【0010】
第3の態様の第1の形態において、本発明は単離した間葉系前駆細胞(MPC)に帰すると言うことができ、このMPCは、3G5、MUC18、VCAM-1、STRO-1briおよびα平滑筋アクチンの表現型を有する。
【0011】
第3の態様の第2の形態において、本発明は、多能であり、表面マーカー3G5陽性である単離した哺乳動物細胞に帰すると言うことができる。
【0012】
第3の態様の第3の形態において、本発明は、クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能であり、脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靭帯、骨髄、腱および骨格筋を含むがこれらに限定されない群の組織から単離し、表面マーカーSTRO-1陽性である間葉系前駆細胞(MPC)に帰すると言うことができる。
【0013】
第3の態様の第4の形態において、本発明は、クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能である間葉系前駆細胞(MPC)を富化した細胞の増殖していない集団に帰すると言うことができ、このMPCは、表面マーカーMUC18/CD146およびα-平滑筋アクチンを同時発現する。
【0014】
第4の態様において、本発明は、本発明の第3の態様から生じる分化した子孫細胞に帰すると言うことができ、好ましくはこの子孫細胞は、少なくとも骨芽細胞、象牙芽細胞、象牙質産生、軟骨細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、髄間質、破骨細胞支持間質および造血支持間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、脈管、上皮、神経膠、ニューロン、星状膠細胞または稀突起神経膠細胞の細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】抗CD146(CC9)を用いて同時標識したSTRO-1+ MACS単離した細胞の特性を示す図である。(A)分類領域R1は、二重陽性のSTRO-1BRT/CD146+集団を示す。(B)STRO-1BRT/CD146+発現に基づくクローン原性細胞コロニー(>50細胞)の発生率を、5回の独立した実験からのポワソン分布分析を使用して細胞濃度当たり24反復の限界希釈分析によって決定した。BMMNC(C)、STRO-1int/CD146-細胞(D)およびSTRO-1BRT/CD146+細胞(E)の前方(サイズ)および垂直(粒度)の光散乱特徴。(F)CBFA1(レーン2)転写物、オステオカルシン(レーン4)転写物およびGAPDH(レーン6)転写物についてのSTRO-1BRT/CD146+分類した髄細胞のRT-PCR分析。CBFA1(レーン1)、オステオカルシン(レーン3)およびGAPDH(レーン5)を発現する対照細胞(デキサメタゾンの存在下で増殖させたBMSSC培養物)もまた示される。この反応混合物を1.5%アガロースゲル上での電気泳動に供し、エチジウムブロマイド染色によって可視化した。(G)骨(b)表面近傍のヒト骨髄(bm)切片中の血管(bv)壁上のCD146のin situ発現(矢印)(20×)。切片は、ヘマトキシリンで対比染色した。(H)ヒト骨髄の凍結切片中の血管壁と反応する、Texas redで標識したSTRO-1抗体およびフルオレセインイソチオシアネートで標識したCC9抗体の反応性を実証する二重免疫蛍光染色。
【図2】in vivoでのDPSCの免疫表現型分析を示す図である。棒グラフは、STRO-1、CD146および3G5を認識する抗体、ならびにアイソトープが一致した陰性対照抗体に対する反応性に基づいて、免疫磁気選択後の歯髄の単細胞懸濁物から回収されたクローン原性コロニーの数を示す。これらのデータは、3つの別個の実験から平均した未分画歯髄細胞中のコロニー総数の百分率として、ビーズ陽性の細胞画分において得られたコロニー形成単位の数として表す。統計的有意性(*)は、各抗体についてのコロニー総数の%を対応するアイソタイプが一致した対照と比較するスチューデントt検定(p 0.01)を使用して決定した。
【図3】歯髄における脈管周囲のマーカーの反応性を示す図である。ヒト歯髄(p)中の血管(小さい矢印)および神経束(nb)を取り囲む周囲の神経周膜(大きい矢印)上のSTRO-1抗原の免疫局在(20×)。(B)内部神経束(nb)を染色するフルオレセインイソチオシアネートで標識した抗神経フィラメント抗体と組み合わせた、歯髄神経周膜(矢印)に対するTexas Redで標識したSTRO-1抗体の反応性を実証する二重免疫蛍光染色(40×)。(C)ヒト歯髄組織中の血管壁に対するCD146抗原の免疫局在(20×)。(D)血管に対するTexas Redで標識したSTRO-1抗体およびフルオレセインイソチオシアネートで標識したCC9抗体の反応性を実証する二重免疫蛍光染色。(E)象牙芽細胞外部層(od)に対するウサギポリクローナル抗DSP抗体(矢印)を用いた歯髄組織の免疫組織化学染色(20×)。(F)血管(bv)壁中の単一の周皮細胞に対して反応性の3G5(矢印)(40×)。組織切片はヘマトキシリンで対比染色した。
【図4】BMSSCに対して反応性の3G5を示す図である。(A)CD146(PE)および3G5(FITC)を発現する全骨髄単核細胞(BMMNC)の典型的な二色FACS分析プロフィールを示す代表的なヒストグラム。(B)コロニー効率アッセイを、観察された全ての異なる発現パターンについて実施した(領域「R」1〜6)。これらのデータは、3つの別個の実験から平均した各細胞画分についてのコロニー形成単位の平均発生率として表す。
【図5】in vivoでの精製したBMSSCおよびDPSCの発生能。α-平滑筋アクチン(A)およびフォンビルブランド因子(B)に特異的な抗体で染色したMACS/FACS単離したSTRO-1BRT/CD146+髄細胞(矢印)のサイトスピン調製物。免疫磁気ビーズ選択(小さい矢印によって示される磁気ビーズ)によって単離し、α-平滑筋アクチン(C)およびフォンビルブランド因子(D)に特異的な抗体で染色したCD146+歯髄細胞(大きい矢印)。(E)3ヶ月間にわたって免疫無防備状態のマウス中にHA/TCPと共に移植したSTRO-1BRT/CD146+ BMSSCに由来するex vivoで増殖させた細胞による異所的な骨形成(b)および造血/脂肪生成髄(bm)(E)。(F)3ヶ月間にわたって免疫無防備状態のマウス中にHA/TCPと共に移植したCD146+ DPSCに由来するex vivoで増殖させた細胞による象牙質(d)および線維性歯髄組織(p)の異所的形成。切片はヘマトキシリンおよびエオシンによって染色した。
【図6】STRO-1陽性の骨髄単核細胞上のCD34、CD45およびグリコホリン-Aの発現を示す図である。磁気活性化分類によって最初に単離され、CD34(A)、CD45(B)またはグリコホリン-A(C)に対する抗体で同時染色されたSTRO-1陽性の骨髄単核細胞の典型的な二色フローサイトメトリー分析プロフィールを示す代表的なヒストグラム。このSTRO-1抗体は、ヤギ抗マウスIgM-フルオレセインイソチオシアネートを使用して同定したが、CD34、CD45およびグリコホリン-Aは、ヤギ抗マウスIgG-フィコエリスリンを使用して同定した。クローン原性MPC集団を含む高い発現のSTRO-1画分を、領域R1およびR2に基づく蛍光活性化細胞分類によって単離した。
【図7】骨髄MPCはSTRO-1 bright、CD34陰性、CD45陰性かつグリコホリン-A陰性である。このグラフは、図6中に示されるような領域R1およびR2に基づく、CD34抗原、CD45抗原またはグリコホリン-A抗原のいずれかの同時発現または欠如により選択された異なる分類されたSTRO-1 bright集団の各々について実施したin vitroの接着性コロニー形成アッセイの結果を示す。これらのデータは、各細胞画分について2つの別個の実験から平均したコロニー形成単位の平均発生率として表す。
【図8A】異なるヒト組織における脈間周囲のマーカーの反応性を示す図である。血管ならびに脾臓、膵臓(パネル1)、脳、腎臓(パネル2)、肝臓、心臓(パネル3)および皮膚(パネル4)上に存在する結合組織に対する、(A)STRO-1およびCD146、(B)STRO-1およびα-平滑筋アクチン、ならびに(C)3G5およびCD146の反応性を実証する二色免疫蛍光染色(20×)。STRO-1抗体および3G5抗体はヤギ抗マウスIgM-Texas Redを使用して同定したが、CD146およびα-平滑筋アクチンはヤギ抗マウスまたはIgG-フルオレセインイソチオシアネートを使用して同定した。同時局在は、黄色およびオレンジ色の蛍光の重複する領域(白の矢印)によって示される。
【図8B】異なるヒト組織における脈間周囲のマーカーの反応性を示す図である。血管ならびに脾臓、膵臓(パネル1)、脳、腎臓(パネル2)、肝臓、心臓(パネル3)および皮膚(パネル4)上に存在する結合組織に対する、(A)STRO-1およびCD146、(B)STRO-1およびα-平滑筋アクチン、ならびに(C)3G5およびCD146の反応性を実証する二色免疫蛍光染色(20×)。STRO-1抗体および3G5抗体はヤギ抗マウスIgM-Texas Redを使用して同定したが、CD146およびα-平滑筋アクチンはヤギ抗マウスまたはIgG-フルオレセインイソチオシアネートを使用して同定した。同時局在は、黄色およびオレンジ色の蛍光の重複する領域(白の矢印)によって示される。
【図8C】異なるヒト組織における脈間周囲のマーカーの反応性を示す図である。血管ならびに脾臓、膵臓(パネル1)、脳、腎臓(パネル2)、肝臓、心臓(パネル3)および皮膚(パネル4)上に存在する結合組織に対する、(A)STRO-1およびCD146、(B)STRO-1およびα-平滑筋アクチン、ならびに(C)3G5およびCD146の反応性を実証する二色免疫蛍光染色(20×)。STRO-1抗体および3G5抗体はヤギ抗マウスIgM-Texas Redを使用して同定したが、CD146およびα-平滑筋アクチンはヤギ抗マウスまたはIgG-フルオレセインイソチオシアネートを使用して同定した。同時局在は、黄色およびオレンジ色の蛍光の重複する領域(白の矢印)によって示される。
【図8D】異なるヒト組織における脈間周囲のマーカーの反応性を示す図である。血管ならびに脾臓、膵臓(パネル1)、脳、腎臓(パネル2)、肝臓、心臓(パネル3)および皮膚(パネル4)上に存在する結合組織に対する、(A)STRO-1およびCD146、(B)STRO-1およびα-平滑筋アクチン、ならびに(C)3G5およびCD146の反応性を実証する二色免疫蛍光染色(20×)。STRO-1抗体および3G5抗体はヤギ抗マウスIgM-Texas Redを使用して同定したが、CD146およびα-平滑筋アクチンはヤギ抗マウスまたはIgG-フルオレセインイソチオシアネートを使用して同定した。同時局在は、黄色およびオレンジ色の蛍光の重複する領域(白の矢印)によって示される。
【図9】FACSによる脂肪由来のMPCの単離を示す図である。以前に記載されたように(ShiおよびGronthos 2003)、コラゲナーゼ/ディスパーゼ消化後に生成された末梢脂肪由来の単細胞懸濁物の新たな調製物中のSTRO-1、CD146および3G5の発現を示す代表的なフローサイトメトリーヒストグラム。これらの抗体は、ヤギ抗マウスIgMまたはIgG-フィコエリスリンのいずれかを使用して同定した。次いで、細胞集団を、各マーカーに対する陽性さ(領域R3)または陰性さ(領域R2)に基づいてFACSによって選択し、次いで通常の増殖培地中にプレートして、各細胞画分中の接着性のコロニー形成細胞の発生率を評価した。
【図10】クローン原性の脂肪由来のMPCはSTRO-1/3G5/CD146陽性である。棒グラフは、STRO-1、CD146および3G5を認識する抗体に対する反応性に基づいて、蛍光活性化細胞分類後の酵素的に消化されたヒト末梢脂肪組織の単細胞懸濁物から回収され(図9)、次いで骨髄組織および歯髄組織について以前に記載されたように標準的な増殖培地中で培養した(ShiおよびGronthos 2003)クローン原性コロニーの数を示す。これらのデータは、2つの別個の実験から平均した、陽性および陰性の細胞画分中のプレートした105個の細胞当たりの得られたコロニー形成単位の数として表す。
【図11】脂肪由来MPCの免疫表現型分析を示す図である。コラゲナーゼ/ディスパーゼ消化後に生成された末梢脂肪由来の単細胞懸濁物の新たな調製物中のSTRO-1およびCD146(A)ならびに3G5およびCD146の同時発現を示す代表的なフローサイトメトリーヒストグラム。STRO-1抗体および3G5抗体はヤギ抗マウスIgM-フィコエリスリンを使用して同定したが、CD146はヤギ抗マウスIgG-フルオレセインイソチオシアネートを使用して同定した。約60%および50%のCD146陽性細胞が、それぞれSTRO-1および3G5を同時発現する。これらのデータは、10%以上のCD164陽性細胞がSTRO-1および3G5を同時発現することを示唆している。
【図12】精製された脂肪細胞由来のMPCのin vitroでの発生能を示す図である。STRO-1+/CD146+の脂肪細胞に由来する初代MPC培養物の調製物を、Gronthosら(2003)によって以前に記載されたように、標準培養条件(A)、骨形成誘導性培地(B)、脂肪生成誘導性培地(C)または軟骨形成条件(D)のいずれかにおいて再培養した。複数の分化誘導の2週間後、脂肪細胞由来のMPCは、骨(B;アリザリン陽性のミネラル沈着)、脂肪(C;Oil Red O陽性の脂質)および軟骨(D:II型コラーゲンマトリックス)を形成する能力を実証した。
【図13】FACSによる皮膚由来のMPCの単離を示す図である。コラゲナーゼ/ディスパーゼ消化後に生成された全厚皮膚由来の単細胞懸濁物の新たな調製物中のSTRO-1、CD146および3G5の発現を示す代表的なフローサイトメトリーヒストグラム。これらの抗体は、ヤギ抗マウスIgMまたはIgG-フィコエリスリンのいずれかを使用して同定した。次いで、細胞集団を、各マーカーに対する陽性さ(領域R3)または陰性さ(領域R2)に基づいてFACSによって選択し、次いで通常の増殖培地中にプレートして、各細胞画分中の接着性のコロニー形成細胞の発生率を評価した。
【図14】クローン原性の皮膚由来のMPCは、STRO-1/3G5/CD146陽性である。棒グラフは、STRO-1、CD146および3G5を認識する抗体に対する反応性に基づいて、蛍光活性化細胞分類後の酵素的に消化されたヒト皮膚の単細胞懸濁物から回収され(図6)、次いで骨髄組織および歯髄組織について以前に記載されたように標準的な増殖培地中で培養した(ShiおよびGronthos 2003)、接着性コロニーの数を示す。これらのデータは、2つの別個の実験から平均した、陽性および陰性の細胞画分中のプレートした105個の細胞当たりの得られたコロニー形成単位の数として表す。
【図15】(A)ex vivoで増殖させた骨髄MPCの免疫表現型発現パターンを示す図である。ex vivoで増殖させた骨髄MPCの単細胞懸濁物を、トリプシン/EDTA処理で調製し、次いで細胞系統関連マーカーを同定する抗体と共にインキュベートした。細胞内抗原を同定する抗体について、細胞調製物を冷70%エタノールで固定して、細胞内マーカーについて染色する前に細胞膜を透過性にした。アイソタイプが一致した対照抗体を同一条件下で処理した。フローサイトメトリー分析を、COULTER EPICS装置を使用して実施した。ドットブロットは、5,000リストモードの事象を示し、これは、アイソタイプが一致した陰性対照抗体(細い線)を参照した各系統の細胞マーカーについての蛍光強度(太い線)のレベルを示す。(B)培養したMPCの遺伝子発現プロフィールを示す図である。ex vivoで増殖させた骨髄MPCの単細胞懸濁物を、トリプシン/EDTA処理で調製し、総細胞RNAを調製した。RNAzolB抽出法を使用して総RNAを単離し、標準手順を使用して調製されるcDNA合成のためのテンプレートとして使用した。種々の転写物の発現を、以前に記載されたような標準プロトコル(Gronthosら、2003)を使用して、PCR増幅によって評価した。この研究において使用したプライマーセットを表2中に示す。増幅後、各反応混合物を1.5%アガロールゲル電気泳動によって分析し、エチジウムブロマイド染色によって可視化した。各細胞マーカーについての相対的遺伝子発現を、ImageQuantソフトウェアを使用して、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDHの発現を参照して評価した。
【図16】ex vivoで増殖させたSTRO-1bri MPCは、in vitroで細動脈へと発生し得る。ex vivoで増殖させた骨髄STRO-1bri MPCの単細胞懸濁物を、トリプシン/EDTA処理によって調製し、次いで200μlのマトリゲルを含む48ウェルのプレート中にプレートした。STRO-1bri MPCを、増殖因子PDGF、EGF、VEGFを10ng/mlで補充した無血清培地(Gronthosら、2003)中で、1ウェル当たり20,000細胞でプレートした。5% CO2中での37℃で24時間の培養後、これらのウェルを洗浄し、次いで4%のパラホルムアルデヒドで固定した。免疫組織科学研究を引き続き実施して、索様構造が、ヤギ抗マウスIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ抗体を用いて同定されたα-平滑筋アクチンを発現したことを実証した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、間葉系前駆細胞、特に脈管新生した組織の脈管周囲区画中に存在し得る間葉系前駆細胞に関する。このような間葉系細胞は、3G5表面マーカーの存在によって同定することが可能であり、おそらく他の初期発生マーカー(例えば、CD146(MUC18)、VCAM-1およびSTRO-1)によってさらにまたは別個に同定することが可能である。
【0017】
前駆細胞は、発生の増殖前の段階に実質的にある初期細胞である。これらは、完全に特化した細胞へといまだ分化していない細胞であるが、これらの細胞は、全ての型の細胞へと分化できる必要はないという点で、厳密な意味で幹細胞である必要はない。部分的に分化した前駆細胞は、幹細胞よりも高い増殖能力を有するという点で利益を有する。
【0018】
本発明の前駆細胞は、例えば造血組織とは反対に間葉系組織へと特化しているという点で、いくらか分化している。これは、単離したMPCが造血細胞に関連するマーカー(例えばCD34)を欠き、さらにそれらの分化能力が造血系に及ばないという生成されたデータから明らかである。さらに、これらは全ての間葉系細胞型へと分化する能力を有する必要はなく、むしろ1種、2種、3種またはそれ以上の細胞型へと分化することができる可能性がある。
【0019】
対象の組織から収集されたこれらの前駆細胞は、それらが起源となる細胞型について組織を再生するために有用であり得ることが理解される。したがって、心臓から単離した前駆細胞は、心臓組織を再生するために再誘導することができるが、その能力はそれほど限定されず、1つの組織型から単離した前駆細胞は、別の組織型で組織を再生するために有用であり得る。未分化の細胞が見出される微小環境は、分化の経路に対して影響を及ぼすことが知られており、したがって、再誘導が組織特異的である必要はない。
【0020】
示されたデータは、MPCを収集し、次いで、骨および骨髄ならびに象牙質および歯髄をそれぞれ産生するように再誘導し、さらには単離MPCのex vivoでの増殖後に細動脈(索様構造)が生成されたことを示している。
【0021】
特定の細胞型に特徴的なマーカーの遺伝子発現に基づいて広範な細胞を生成できることが理解される。したがって、適切な培養条件下で、本発明の脈管周囲のMPCから生成できる細胞型の範囲には、以下が含まれるがこれらに限定されないことが理解される:骨芽細胞、象牙芽細胞、象牙質産生、軟骨細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、髄間質、破骨細胞支持間質および造血支持間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、脈管、上皮、神経膠、ニューロン、星状膠細胞または稀突起神経膠細胞の細胞。
【0022】
MPCが脈管周囲の細胞から単離できるという知見の利点の1つは、このことが、MPCを単離または富化できる供給源組織の範囲を大いに拡大し、MPCの供給源を骨髄に限定する有効な制限がもはや存在しないということである。本発明の例示においてこれらのMPCを単離した組織は、ヒトの骨髄、歯髄細胞、脂肪組織および皮膚である。さらに、in situ染色および組織学的研究により、MPCが脾臓、膵臓、脳、腎臓、肝臓および心臓の脈管周囲の区画中に存在することが同定された。脈管周囲のMPCが存在する組織型の広範かつ多様な範囲を考慮すると、脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靭帯、骨髄、腱および骨格筋を含めることが可能な、より広範な範囲の組織由来のMPCもまた存在するであろうことが提唱される。
【0023】
本発明のこれらの前駆細胞は、これらが3G5陽性であるか、またはおそらく別の脈管周囲のマーカーを有するという点において、他の公知のMPCから識別される。これらは、脈管周囲の細胞上に存在する初期発生の表面マーカー、特にCD146(MUC18)、VCAM-1のうち1種または複数の存在、そしてあるいはまたはさらに、モノクローナル抗体STRO-1によって認識されるマーカーの高レベルの発現を富化することによって単離することが可能である。あるいはまたはさらに、富化は3G5を使用して実施できる。
【0024】
脈管周囲の細胞に関連するマーカー(例えば、α平滑筋アクチン(αSMA))もまたMPC上に存在し得る。
【0025】
MPCに関連する他の初期発生マーカーもまた存在し得る。これらには、THY-1、VCAM-1、ICAM-1、PECAM-1、CD49a/CD49b/CD29、CD49c/CD29、CD49d/CD29、CD29、CD61、インテグリンβ5、6〜19、トロンボモジュリン、CD10、CD13、SCF、STRO-1bri、PDGF-R、EGF-R、IGF1-R、NGFR、FGF-R、レプチン-R(STRO-2)からなる群を含めることが可能であるが必ずしもこれらに限定されない。これらのマーカーのうち1種または複数の陽性の発現は、供給源組織からMPCを富化する方法において使用することができる。
【0026】
本発明のMPCはまた、分化した組織中に存在するマーカーの非存在によって特徴付けることが可能であり、富化は、このようなマーカーの非存在に基づき得る。
【0027】
同様に、富化した細胞集団は造血起源のものではないことが好ましく、したがって、これらの細胞が存在しないことが好ましい。非存在として特徴的に同定されたマーカーには、CD34、CD45およびグリコホリンAが含まれるがこれらに限定されない。この目的のためのさらなる他のマーカーには、CD20およびCD19(Bリンパ球マーカー)、造血幹細胞および血管芽細胞上に存在するCD117(c-kit腫瘍性タンパク質)、CD14(マクロファージ)、CD3およびCD4(T細胞)を含めることが可能である。
【0028】
比較的休止状態の、直接的に富化したかまたは単離した脈管周囲のMPCを使用することが所望される可能性がある。あるいは、富化した集団の増殖を実施することが可能であり、かなり多数の細胞を生じるという有益な効果を有することが発見されている。しかし、直接的に富化した細胞のプールの増殖の効果は、最初のMPCの幾分かの分化が生じることである。5週間の期間にわたる増殖は、103倍の増大を生じることが可能である。102倍〜105倍の間へと集団を増殖させるために他の期間を選択することが可能である。この可能性は、サイトカインならびに特定の組織型への分化を指向する他の因子(例えば、平滑筋α索(smooth muscle alpha cord)を形成するPDGFおよびVEGF)を含む培地中でこれらを培養することによって指向させることが可能である。これらは次いで、修復を補助するために、例えば損傷を有する組織中に導入することができる。あるいは、集団中のMPCの割合を増大させるために、STRO-1briであり得る初期発生マーカーに基づいて細胞を増殖後に再選択することが所望される可能性がある。
【0029】
MPCの本質的に純粋な集団は、所望の組織構造を形成するために分化した細胞の形成を提供する必要がないことが見出されている。富化した集団は、富化した集団中の総細胞数の割合として、約0.001%、0.01%、0.02%、0.05%、0.1%、0.2%、0.5%もしくは1%またはそれより高いMPCのレベルを有し得る。このオーダーの富化は、富化したMPC集団の選択のための単一のマーカーの使用によって達成することができる。供給源組織が固有に高レベルの脈管周囲のMPCを有する場合に、これは特に当てはまる。かなりより3G5陽性のMPCが、骨髄中よりも、歯髄のような特定の組織中に存在することが見出されている。したがって、骨髄において、3G5陽性のMPCは、STR1briコロニー形成細胞に基づいてMPCの約15%を構成するが、一方で歯髄においては65%を構成し、脂肪組織および皮膚組織において90%より多くを構成していることが見出されている。単一のマーカーを使用した集団の増殖およびその後の再富化は、より高いレベルのMPC、おそらく約0.1%、0.5%、1%、2%、5%または10%より高いレベルを生じさせうる。
【0030】
前駆細胞のかなりの割合および好ましくは大多数が脈管周囲のMPCであることが所望されるとみなされるが、脈管周囲のMPCが単一の前駆細胞形態であることは、本発明の特定の形態のために必須であるとはみなされない。他の形態の前駆体もまた、脈間周囲のMPCが所望の分化を受ける能力を過度に妨害することなく存在し得る。このような他の形態には、おそらく3G5陰性である造血前駆体または非脈管周囲のMPCを含めることが可能である。
【0031】
本発明の特定の形態は、内皮細胞を実質的に含まない脈管周囲のMPCを提供する。この状況において、実質的に含まないとは、約5%、2%、1%または0.1%未満の内皮細胞であるとみなすことができる。あるいは、この状況は、この富化した集団がフォン・ビルブランド(von Willebrand)因子陰性であるという評価であり得る。
【0032】
分離の基礎を形成する細胞表面マーカーを有する細胞の認識は、多数の異なる方法によってもたらすことが可能であるが、これらの方法は全て、対象のマーカーに対する結合因子の結合と、その後の、高レベルの結合または低レベルの結合もしくは結合なしのいずれかである結合を示す細胞の分離に依存することが理解される。最も便利な結合因子は、好ましくは、モノクローナル抗体またはモノクローナル抗体(これらの因子の特異性に起因する)に基づく抗体または抗体ベースの分子である。抗体は両方のステップのために使用することができるが、他の因子もまた使用可能であり、したがって、これらのマーカーに対するリガンドもまた、これらのマーカーを有する細胞またはこれらのマーカーを欠く細胞を富化するために使用可能である。
【0033】
これらの抗体は、粗い分離を可能にするために固体支持体に結合させることが可能である。この分離技術は、収集すべき画分の生存能力の保持を最大化すべきである。異なる有効性の種々の技術を使用して比較的粗い分離を得ることができる。使用される特定の技術は、分離の効率、付随する細胞毒性、実施の容易さおよび速度、ならびに洗練された装置および/または技術的能力の必要性に依存する。分離のための手順には、抗体で被覆された磁気ビーズを使用する磁気分離、アフィニティクロマトグラフィーおよび固体マトリックスに結合した抗体を用いた「パンニング」を含めることが可能であるがこれらに限定されない。正確な分離を提供する技術にはFACSが含まれるがこれに限定されない。
【0034】
これらの方法に関して、細胞は陰性または陽性いずれかである。陽性の細胞は、細胞表面上にマーカーが存在する程度に依存して低い(lo)またはhi(明るい(bright))発現体のいずれかであり得、これらの用語は、蛍光または細胞の色分類プロセスにおいて使用される他の色の強度に関する。Loおよびbriの識別は、分類される特定の細胞集団に対して使用されるマーカーとの関連で理解される。
【0035】
脈管周囲のMPCを富化する方法は、第1のマーカーの発現を富化することによって細胞の第1の部分的に富化したプールを作製するステップ、および次いでこの細胞の部分的に富化したプールから第2のマーカーの発現を富化するステップを含み得る。
【0036】
この方法は、1種または複数のマーカーの認識に基づく固相分類ステップである第1のステップを含むことが好ましい。例示された実施形態の固相分類ステップは、STRO-1の高レベルの発現を認識するMACSを利用する。次いでこれにより、精密さの高い分類が第1のステップとして使用された場合よりも多数の細胞を有する富化したプールが得られる。例えばFACSが最初に使用される場合、前駆細胞の多くは他の細胞と結合しているので拒絶される。正確な分離方法を使用する第2の分類ステップが次に続き得る。この第2の分類ステップは、2種以上のマーカーの使用を含み得る。したがって、例示的な実施形態において、二色FACSが、STRO-1によって認識される抗原の高レベルの発現ならびにCD146の発現を認識するために使用される。第2のステップにおいて分類するために使用されるウインドウは、開始集団がすでに部分的に富化されているので、より有利に調整することが可能である。
【0037】
脈管周囲のMPCを富化する方法はまた、公知の技術を使用する第1の富化ステップの前に幹細胞の供給源を収集することを含み得る。したがって、組織を外科的に取り出す。供給源組織を構成する細胞は次いで、いわゆる単細胞懸濁物へと分離される。この分離は、物理的手段または酵素手段によって達成することが可能である。
【0038】
このような脈間周囲のMPCの好ましい供給源はヒトであるが、本発明は動物にも適用可能であることが予測され、これらの動物には、ウシ、ヒツジ、ブタなどのような農産動物、イヌのような家畜、マウス、ラット、ハムスターおよびウサギのような実験動物、またはウマのようなスポーツに使用され得る動物を含めることができる。
【0039】
さらなる形態において、本発明は、哺乳動物における組織生成の方法に帰すると言うことができ、この方法は、本発明の第1の態様と同様に前駆細胞の集団を富化するステップ、およびこの富化した集団を哺乳動物中に導入するステップ、およびこの富化した集団にこの哺乳動物中で組織を生成させるステップを含む。
【0040】
本発明の富化した細胞についての別の可能な使用は、考慮される組織型における治療的物質の発現のための外因性核酸の導入による、遺伝子治療の手段としての使用である。
【0041】
本発明の状況において、用語単離した細胞は、脈管周囲のMPCが、それらが存在する集団の総細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%または95%を構成することを意味し得る。
【0042】
〔実施例1:前駆細胞の単離および増殖〕
多数の異なる成体組織(皮膚、毛包、骨髄、腸、脳、膵臓およびより最近では歯髄を含む)において同定された幹細胞の適所は、しばしば高度に脈管新生された部位である(1)。通常は休止状態の幹細胞集団の維持および調節は、宿主組織の必要に応じて局所的微小環境によって厳密に制御されている(2、3)。骨髄および歯髄の両方の支持的な結合組織は、顕著な厳格さでそのそれぞれの微小環境(骨および象牙質の周囲の石灰化した構造を含む)を再生することが可能である高い増殖能力を有する間質幹細胞集団を含む(4、5)。生後の生体組織において、骨髄間質はゆるく編まれた高度に脈管化された組織として存在し、この組織は、造血を支持および調節する(6〜8)。多くの組織がその再生能力を失うかまたは低下させた時点で、成体骨髄は、造血実質組織の継続的な更新のための能力を保持し、隣接骨表面の再構築を担う(9、10)。対照的に、歯の内部髄室は、石灰化した象牙質によって埋められた微小脈管ネットワークによって浸潤された、非造血性の緻密な線維性組織からなる(11〜13)。歯の成熟後、歯髄は比較的静的であり、う蝕または機械的外傷のような損傷によって引き起こされた象牙質基質の損傷に応答した補修能力においてのみ作用する。
【0043】
機能的骨芽細胞(BMSSC:骨髄間質幹細胞)および象牙芽細胞(DPSC:歯髄幹細胞)の前駆体(これらは共に、その供給源組織によって同定されるMPCの形態である)は、in vitroでクローン原性細胞のクラスターを形成するその能力(異なる幹細胞集団の中で共通する特徴)によって最初に同定された(4、14〜18)。ex vivoで増殖させたBMSSCおよびDPSCの子孫は、種々の転写レギュレータ、細胞外マトリックスタンパク質、増殖因子/レセプター、細胞接着分子、ならびにいくつかではあるが全てではない、線維芽細胞、内皮細胞、平滑筋細胞および骨芽細胞に特徴的な系統マーカーについて、同様の遺伝子発現プロフィールを共有する(4、19)。しかし、以前の研究により、個々のBMSSCコロニーが、in vitroでの増殖速度とin vivoでの発生能力において顕著な差異を示すことが報告されている(5、14、20)。これらの知見と類似して、本発明者らは、異なるDPSCコロニーの増殖能および発生能における匹敵するレベルの不均質性を最近観察している(21)。合わせて考えると、これらの研究は、特化した二分化能および単分化能の前駆細胞集団を生じる、高度に増殖性の多分化能の幹細胞の小さい集団が先頭に立つ、骨髄および歯髄中に存在する間質前駆細胞の階層型の配置を結論付けている(22)。
【0044】
培養されたBMSSCおよびDPSCの特性についての広範な知識にもかかわらず、本発明者らは、それらのin vitro特徴が、それらの真の遺伝子発現パターンおよびin situでの発生能力の正確な描写であるか否かについてなお理解していない。さらに、各組織内のコロニー形成細胞の全てが1つの多分化能幹細胞プールに由来するか否か、またはこれらが別個の系統に属する特化した前駆細胞から生じるか否かは、正式には理解されていない。そのそれぞれの組織におけるBMSSCおよびDPSCの正確な解剖学的位置に関する情報もまた欠如している。これは主に、特に原始部分集団について、幹細胞が稀であること、ならびに骨形成および歯牙形成の間の異なる発生段階を同定する特異的マーカーの非存在に帰せられる。骨芽細胞および象牙芽細胞の前駆体についての1つの可能な適所は、それぞれ骨髄および歯髄の微小脈管ネットワークであり得るという仮説が以前に立てられている(23、24)。
【0045】
[材料および方法]
組織サンプル
正常なヒト成人志願者由来の腸骨稜由来の骨髄単核細胞(BMMNC)を、Royal Adealaide Hospital Human Ethics Committeeによって示されたガイドラインの下で得た。正常なヒトの埋伏した第3大臼歯を、それぞれ、University of Adelaide Human Ethics Committeeによって示された承認されたガイドラインの下でUniversity of Adelaide Dental Clinic Researchにて若い成人から収集した。廃棄された全厚の皮膚および末梢脂肪組織を、Royal Adelaide Hospital Human Ethics Committeeによって示されたガイドラインの下で、Skin Cell Engineering Laboratoryからの慣用的な形成外科手順から得た。歯髄組織を、以前に記載されたように歯冠および歯根から分離した(4)。3mg/mlのI型コラゲナーゼ(Worthington Biochem、Freehold、NJ)および4mg/mlのディスパーゼ(Boehringer Mannheim、GMBH、Germany)の溶液中での37℃で1〜3時間の酵素消化によって、歯髄、皮膚および脂肪組織の単細胞懸濁物を調製した。70μmの濾過器(Falcon、BD Labware、Franklin Lakes、NJ)に細胞を通過させることによって単細胞懸濁物を得た。次いで、以下に記載されるように、骨髄、歯髄、皮膚および脂肪の細胞(0.01〜1×105/ウェル)調製物を、免疫選択、RNA抽出または6ウェルプレート(Costar、Cambridge、MA)における直接的培養のいずれかに使用した。
【0046】
他のヒト組織標本(脳、肝臓、心臓、腎臓、肺、脾臓、胸腺、リンパ節、膵臓、皮膚)を、Royal Adelaide Hospital Human Ethics Committeeによって示された承認されたガイドラインの下で慣用的な病理学的試験の間にRoyal Adelaide Hospitalで実施した剖検から得た。約0.5cm2の各組織型の小さい標本を、Tissue-Tek II低温鋳型(cryomould)25mm×20mm×5mm(Miles Laboratories;Naperville、IL)中に配置し、液体窒素の浴中にガラスビーカーを吊るすことによって予め冷却したイソ-ペンタン(BDH Chemicals、Poole、England)の150ml〜200mlのパイレックス(登録商標)ガラスビーカー中に浸漬することによってO.C.T.化合物媒体(Miles Laboratories)で埋包した。イソペンタンを冷却し、ガラスの底が白色になった。凍結切片を-80℃で即座に保存した。神経組織および筋肉組織の凍結切片は、Histopathology Department of the I.M.V.S.、South Australiaから得、包皮の切片はImmunology Department of the I.M.V.S.、South Australiaから得た。ホルマリン固定してパラフィン埋包したヒト胎児肢(52日目)の切片は、Department of Histopathology、 Women's and Children's Hospital、Adelaide、South AustraliaからT.J. Khong博士の厚意によって提供された。
【0047】
[コロニー効率アッセイおよび培養]
単細胞懸濁物を低いプレーティング密度(6ウェルプレート中に3連で、1ウェル当たり1,000細胞と10,000細胞との間)でプレートして、異なる免疫選択された細胞画分のコロニー形成効率を評価した。これらの細胞を、20%の胎仔ウシ血清、2mMのL-グルタミン、100μMのL-アスコルビン酸-2-リン酸、100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを補充したα-改変イーグル培地中で5% CO2中37℃で培養した。14日目に培養物を4%のホルマリンで固定し、次いで0.1%のトルイジンブルーで染色した。50個以上の細胞の凝集物を、コロニー形成単位-線維芽細胞(CFU-F)と等価なクローン原性コロニーとしてスコアリングした。
【0048】
[磁気活性化細胞分類(MACS)]
この手順は、他に記載された手順の改変である(25)。簡潔に述べると、約1×108のBMMNCを、STRO-1bri上清(マウス抗ヒトBMSSC、IgM)(29)(1/2)と共に氷上で1時間インキュベートした。次いで、これらの細胞をPBS/5% FBSで洗浄し、1/50希釈のビオチン化ヤギ抗マウスIgM(μ-鎖特異的;Caltag Laboratories、Burlingame、CA)中に氷上で45分間懸濁した。洗浄後、これらの細胞をストレプトアビジンマイクロビーズ(Miltenyi Biotec、BergischGladbach、F.R.G.)と共に氷上で15分間インキュベートし、次いで製造者の推奨にしたがってMini MACS磁気カラム(Miltenyi Biotec)上で分離した。
【0049】
[蛍光活性化細胞分類(FACS)]
STRO-1bri MACS単離した細胞を、ストレプトアビジン-FITCコンジュゲート(1/50;CALTAG Laboratories)と共に氷上で20分間インキュベートし、次いでPBS/5% FBSで洗浄した。単色蛍光活性化細胞分類(FACS)を、FACStarPLUSフローサイトメータ(Becton Dickinson、Sunnyvale、CA)を使用して実施した。二色-FACS分析を、MACS単離したSTRO-1bri BMMNCを、飽和(1:1)レベルのCC9抗体上清(マウス抗ヒトCD146/MUC-18/Mel-CAM、IgG2a、Stan Gronthos博士)と共に氷上で1時間インキュベートすることによって達成した。PBS/5% FBSで洗浄した後、これらの細胞を第2の標識ヤギ抗マウスIgG2a(γ-鎖特異的)フィコエリスリン(PE)コンジュゲート抗体(1/50、CALTAG Laboratories)と共に氷上で20分間インキュベートした。次いでこれらの細胞をFACStarPLUSフローサイトメータの自動細胞堆積ユニット(ACDU)を使用して分類した。限界希釈アッセイ:1ウェル当たり1、2、3、4、5および10個の細胞を播種し、24回反復し、以前に記載されたように10日間にわたって血清除去した培地中で培養した(26)。同様に、新たに調製した分画していないBMMNCを、CC9(IgG2a)抗体および3G5(IgM)抗体、またはアイソタイプが一致した陰性対照抗体と共に、氷上で1時間インキュベートした。PBS/5% FBSで洗浄した後、これらの細胞を第2の標識ヤギ抗マウスIgG2a(γ-鎖特異的)フィコエリスリン(PE)およびIgM(1/50;CALTAG Laboratories)コンジュゲート抗体と共に氷上で30分間インキュベートした。細胞をPBS/5% FBS中で洗浄し、その後FACStarPLUSフローサイトメータを使用して分析した。各抗体に対する陽性の反応性は、アイソタイプが一致した対照抗体の99%より高い蛍光レベルとして規定した。
【0050】
[フローサイトメトリー分析]
ex vivoで増殖させた骨髄MPCの単細胞懸濁物を、トリプシン/EDTA処理によって調製し、次いでニートなSTRO-1上清または異なる細胞系統に関連するマーカーを同定する抗体(10μg/ml)と共に氷上で1時間インキュベートした。次いでこれらの細胞をPBS/5% FBS中で洗浄し、次いで、ヤギ抗マウスIgM-フィコエリスリン(1/50、SouthernBiotechnologies)、ヤギ抗マウスIgG-フィコエリスリンまたはヤギ抗ウサギIgG-フィコエリスリン(Caltag Laboratories)のいずれかと共にインキュベートした。細胞内抗原を同定する抗体について、細胞調製物の細胞膜を透過性にし、その後細胞内マーカーについて染色した。アイソタイプが一致した対照抗体を同一条件下で処理した。フローサイトメトリー分析を、COULTER EPICS装置を使用して実施した。ドットブロットは、5,000リストモード(listmode)の事象を示し、これは、アイソタイプが一致した陰性対照抗体を参照した各系統の細胞マーカーについての蛍光強度のレベルを示す。
【0051】
[免疫組織化学]
ヒト組織切片(μm)をキシレン中で脱ワックス(de-wax)し、PBS中の勾配付エタノールによって再水和した。凍結組織切片(μm)およびサイトスピン調製物を冷アセトンで-20℃で15分間固定し、次いでPBS中で洗浄した。これらのサンプルを引き続いて1.5%の過酸化水素を含むPBSで30分間処理し、洗浄し、次いで5%の非免疫ヤギ血清を用いて室温で1時間ブロッキングした。サンプルを1次抗体と共に室温で1時間インキュベートした。使用した抗体は以下である:マウス(IgG1およびIgG2a)対照(Caltag、Burlingame、CA);ウサギ(Ig)対照、1A4(抗α平滑筋アクチン、IgG1)、2F11(抗神経フィラメント、IgG1)、F8/86(マウス抗フォンビルブランド因子、IgG1)(Dako、Carpinteria、CA);STRO-1;CC9(抗CD146);LF-151(ウサギ抗ヒト象牙質シアロタンパク質(dentinsialoprotein);L. Fisher博士、NIDCR/NIH、MD)。作業希釈:ウサギ血清(1/500)、モノクローナル上清(1/2)および精製した抗体(10μg/ml)。単一の染色を、適切な2次抗体であるビオチン化ヤギ抗マウスIgM、IgG1、IgG2aまたはビオチン化ヤギ抗ウサギ(Caltag Laboratories)と共にサンプルを室温で1時間インキュベートすることによって実施した。次いで、アビジン-ペルオキシダーゼ複合体および基質を製造業者の指示にしたがって添加した(Vectastain ABC Kit standard、Vector Laboratories)。サンプルをヘマトキシリンで対比染色し、水性媒体中に設置した。二重抗体標識を、2次抗体であるヤギ抗マウスIgM-Texas RedおよびIgG-FITC (CALTAG Laboratories)を、室温で45分間添加することによって達成した。洗浄後、これらのサンプルをVECTASHIELD蛍光マウンタント(mountant)中に設置した。
【0052】
[免疫磁気ビーズ選択]
歯髄組織の単細胞懸濁物を、STRO-1(1/2)、CD146(1/2)または3G5(1/2)に対して反応性の抗体と共に氷上で1時間インキュベートした。これらの細胞をPBS/1% BSAで2回洗浄し、次いでヒツジ抗マウスIgGコンジュゲート磁気Dynabeadsまたはラット抗マウスIgMコンジュゲート磁気Dynabeads(1細胞当たり4個のビーズ;Dynal、Oslo、Norway)のいずれかと共に、4℃でロータリーミキサーで40分間インキュベートした。ビーズに結合している細胞を、製造業者の推奨するプロトコルにしたがってMPC-1磁気粒子濃縮器(Dynal)を使用して取り出した。
【0053】
[マトリゲル-細動脈アッセイ]
ex vivoで増殖させた骨髄STRO-1brightMPCの単細胞懸濁物をトリプシン/EDTA処理によって調製し、次いで200μlのマトリゲルを含む48ウェルプレート中に配置した。このSTRO-1brightMPCを、10ng/mlの増殖因子PDGF、EGF、VEGFを補充した無血清培地(Gronthosら、2003)中に、1ウェル当たり20,000細胞でプレートした。5%のCO2中で37℃での24時間の培養後、これらのウェルを洗浄し、次いで4%のパラホルムアルデヒドで固定した。免疫組織化学研究を、上記のように、ヤギ抗マウスIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ抗体/Vectastaining Kitを用いて同定したα-平滑筋アクチンに対して引き続いて実施した。
【0054】
[in vitroでのMPCの骨形成分化、脂肪生成分化および軟骨形成分化]
ex vivoで増殖させた脂肪由来のMPCの単細胞懸濁物を、以前に示されたように、10%のFCS、100μMのL-アスコルビン酸-2-リン酸、デキサメタゾン10-7Mおよび3mMの無機リン酸を補充したαMEM中で培養して、石灰化した骨マトリクスをin vitroで形成するように骨髄MPCを誘導した(Gronthosら、2003)。ミネラルの沈着を、陽性のvon Kossa染色によって同定した。脂肪生成を、以前に記載されたように(Gronthosら、2003)、0.5mMのメチルイソブチルメチルキサンチン、0.5μMのヒドロコルチゾンおよび60μMのインドメタシンの存在下で誘導した。Oil Red O染色を使用して、脂質が堆積した脂肪細胞を同定した。軟骨形成分化を、記載されたように(Pittengerら、1999)、10ng/mlのTGF-β3で処理した凝集培養物中で評価した。
【0055】
[in vivo翻訳研究]
以前に記載されたように(4)、約5.0×106のex vivoで増殖させた細胞(STRO-1bri/CD146+のBMSSCまたはCD146+のDPSCのいずれかに由来する)を、40mgのヒドロキシアパタイト/リン酸三カルシウム(HA/TCP)セラミック粉末(Zimmer Inc、Warsaw、IN)と混合し、次いで10週齢の免疫無防備状態のベージュマウス(NIH-bg-nu-xid、Harlan Sprague Dawley、Indianapolis、IN)の背側表面中に皮下移植した。これらの手順を、承認された動物プロトコル(NIDCR番号00-113)の仕様にしたがって実施した。
【0056】
[逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応]
総RNAを、STRO-1BRI/CD146+で分類したBMMNCおよび対照細胞(10-7Mのデキサメタゾンの存在下で3週間培養された初代BMSSC培養物)から、RNA STAT-60(TEL-TEST Inc.Friendswood TX)を使用して調製した。第1鎖cDNA合成を、オリゴ-dTプライマーを使用して第1鎖cDNA合成キット(GIBCO BRL、Life Technologies)を用いて実施した。第1鎖cDNA(2μl)を、46μlの1×PCRマスター反応ミックス(Roche Diagnostics、Gmbh Mannheim Germany)および10pMolの各ヒト特異的プライマーセット:CBFA1(632bpおよび3つのより小さい選択的スプライス改変体)(27)センス5'-CTATGGAGAGGACGCCACGCCTGG-3'[配列番号1]、アンチセンス、5'-CATAGCCATCGTAGCCTTGTCCT-3'[配列番号2];オステオカルシン(310bp)(4)センス、5'-CATGAGAGCCCTCACA-3'[配列番号3]、アンチセンス、5'-AGAGCGACACCCTAGAC-3'[配列番号4];GAPDH(800bp)(4)センス、5'-AGCCGCATCTTCTTTTGCGTC-3'[配列番号5];アンチセンス5'-TCATATTTGGCAGGTTTTTCT-3'[配列番号6]に添加した。これらの反応を、PCR Express Hybaidサーマルサイクラー(Hybaid、Franklin、MA)中で、95℃で2分間を1サイクル、次いで94℃/(30秒間)、60℃/(30秒間)、72℃/(45秒間)を35サイクル、最後に72℃で7分間の伸長でインキュベートした。増幅後、各反応を1.5%アガロースゲル電気泳動によって分析し、エチジウムブロマイド染色によって可視化した。
【0057】
[結果]
BMSSCおよびDPSCは、in vivoで、脈管関連抗原STRO-1およびCD146を発現する。
本発明者らは、STRO-1抗原の高い発現に基づいて、ヒト髄の吸引物から全ての検出可能なクローン原性コロニーを単離および富化するための、磁気活性化細胞分類(MACS)の有効性を以前に実証している(25、26)。BMSSCをさらに特徴付けるために、本発明者らは、内皮細胞および平滑筋細胞上に存在する細胞表面抗原CD146(MUC-18、Mel-CAMおよびSendo-1としても知られる)を認識する別のモノクローナル抗体CC9(28)と共にSTRO-1bri MACS単離した細胞をインキュベートした。これらの研究は、CC9が、二色FACS分析によって、総STRO-1+集団由来のSTRO-1 brightを発現する画分(STRO-1BRT)に選択的に結合することを実証した(図1A)。ポワソン分布統計を使用するクローニング効率アッセイにより、BMSSCの発生率の顕著な増大(プレートした5個のSTRO-1BRT/CD146+細胞当たり1コロニー)が得られ、分画していない髄と比較してクローン原性コロニー集団の2×103倍の富化が達成された(図1B)。STRO-1BRT/CD146-細胞画分においてはコロニー形成は検出できなかった(データ示さず)。
【0058】
STRO-1BRT/CD146+髄細胞の光散乱特性は典型的に、STRO-1+集団のバルクを含む有核赤血球およびBリンパ球よりも大きくより顆粒状であった(29)(図1C〜E)。STRO-1BRT/CD146+分類した細胞のサイトスピン調製物は、赤血球(グリコホリン-A)関連マーカーおよび白血球(CD45)関連マーカー陰性であることが見出された(データ示さず)。BMSSCが初期骨形成前駆体集団を示したことの確認は、初期および後期の骨形成(それぞれ、マーカーCBFA1およびオステオカルシン)を検出できなかった、高度に精製されたMACS/FACS単離したSTRO-1BRT/CD146+細胞のRT-PCR分析によって得られた(図1F)。しかし、STRO-1BRT/CD146+分類したBMSSCの子孫は、ex vivo増殖の後に、CBFA1およびオステオカルシンの両方を発現することが見出された。免疫局在研究により、CD146抗原が、ヒト骨髄の切片中の血管壁上で優勢に発現されたことが実証された(図1G)。STRO-1およびCD146の両方の局在は、ヒト骨髄トレフィンの凍結切片中の大きい血管に限定された(図1H)。
【0059】
免疫選択プロトコルを引き続いて使用して、ヒトDPSCもまたSTRO-1およびCD146をin situで発現するか否かを決定した。DPSCを単離するためのMACS分析またはFACS分析のいずれかの使用は、処理後に得られた限定的な数の歯髄細胞(歯髄サンプル1つ当たり約105細胞)と混合されたこれらの細胞が稀(プレートした2×103個の細胞当たり1つのコロニー形成細胞)であることに起因して限定的であった。これを回避するために、本発明者らは、1回の実験当たり3個〜4個の異なる第3大臼歯から得たいくつかの歯髄組織をプールし、STRO-1抗原またはCD146抗原のいずれかの発現に基づく、歯髄組織の単細胞懸濁物に対する免疫磁気ビーズ選択を使用した。STRO-1+画分は、総歯髄細胞集団の約6%を示した。比較研究により、個々のコロニーの増殖速度が磁気ビーズの存在下で乱されなかったことが実証された(データ示さず)。コロニー効率アッセイにより、歯髄由来のコロニー形成細胞の大部分(82%)が、BMSSCと同様に小さいSTRO-1+細胞画分中に示されることが示された(図2)。STRO-1陽性画分中のDPSCの平均発生率(プレートした105個の細胞当たり329個のコロニー形成細胞±56 SE、n=3)は、分画していない歯髄細胞(プレートした105個の細胞当たり55個のコロニー形成細胞±14 SE、n=3)の6倍の高さであった。同様のストラテジーを使用して、ヒト歯髄細胞の異なる画分を、抗体CC9との反応性に基づいて選択した。コロニー効率アッセイにより、高い割合(96%)の歯髄由来のクローン原性コロニーもまた、免疫磁気Dynalビーズ選択を使用して、CD146+集団中に存在したことが示された(図2)。CD146+画分中のクローン原性コロニーの平均発生率(プレートした105個の細胞当たり296個のコロニー形成細胞±37 SE、n=3)は、分画していない歯髄細胞(プレートした105個の細胞当たり42個のコロニー形成細胞±9 SE、n=3)の7倍の高さであった。
【0060】
免疫局在研究により、ヒト歯髄組織の凍結切片において、STRO-1発現が血管壁および神経束の周囲の神経周膜に限定され、成熟した象牙芽細胞または線維性組織中には存在しないことが示された(図3A〜B)。さらに、CD146とSTRO-1との同時局在が、周囲の線維性組織、象牙芽細胞層および神経の神経周膜に対する反応性を有さずに、外部血管細胞壁上で検出された(図3C〜D)。重要なことに、ヒト象牙芽細胞特異的分化マーカー象牙芽シアロタンパク質(DSP)の発現は、成熟象牙芽細胞を含む外部歯髄層に限定され(図3E)、線維性組織、神経束および血管には存在しなかった。
【0061】
[BMSSCおよびDPSCによる脈管周囲マーカー3G5の差示的発現]
本研究において、フローサイトメトリー分析により、細胞表面抗原3G5が、大きい割合(54%)の造血髄細胞によって高度に発現されたことが明らかとなった(図4A)。この観察により、ヒト髄の吸引物からBMSSCの直接精製された集団を単離するための候補マーカーとして3G5が排除された。さらに、3G5およびSTRO-1の発現に基づく二重FACS分析は、両方の抗体が同じアイソタイプを共有したので不可能であった。それにもかかわらず、異なる3G5/CD146 FACS分類した部分画分についてのin vitroのコロニー効率アッセイにより、小さい割合(14%)の骨髄クローン原性コロニーだけが低いレベルで3G5抗原を発現したことが実証された(図4B)。逆に、より大きい割合(63%)のクローン原性DPSC(プレートした105個の細胞当たり192個のコロニー形成細胞±18.4 SE、n=3)が、免疫磁気ビーズ選択後の3G5+細胞中に存在した(図2)。3G5は、ヒト歯髄組織の凍結切片中の周皮細胞に対する特異的な反応性を実証した(図3F)。
【0062】
本発明者らは次に、サイトスピン調製物上の内皮細胞のより特異的なマーカー(フォン・ビルブランド因子)および平滑筋細胞/周皮細胞のより特異的なマーカー(α-平滑筋アクチン)の発現を、新たに単離したSTRO-1BRT/CD146+ BMSSCおよびCD146+発現DPSCを使用して分析した。大きい割合の精製されたBMSSC(67%)は、α-平滑筋アクチン(図5A)陽性であるが、フォンビルブランド因子の発現を欠くことが見出された(図5B)。同様に、単離したDPSCの大多数(85%)もまた、α-平滑筋アクチンを発現するがフォン・ビルブランド因子を発現しないことが見出された(図5C、5D)。STRO-1BRT/CD146+ BMSSCおよびCD146+ DPSCの精製された集団を引き続いてin vitroで増殖させ、次いで免疫無防備状態のマウス中に移植して、それらのin vivoでの発生能を評価した。培養されたBMSSCおよびDPSCの子孫は、それぞれ骨髄および歯/歯髄の微小環境を再生することが可能であるという別個の能力を示し(図5E、F)、この能力は、選択されていない複数のコロニーに由来するBMSSCおよびDPSCの発生能と同一のようであった(4)。
【0063】
[考察]
本研究は、その個体発生および発生能が異なる2種の間葉系幹細胞集団が共に、そのそれぞれの組織の微小脈管系に関連するという直接的な証拠を提供している。
【0064】
本発明者らは、BMSSCおよびDPSCが、STRO-1抗原の高い発現に主に基づいて、それぞれ骨髄吸引物および酵素消化した歯髄組織から効率的に回収できることを実証するために、異なる免疫選択プロトコルを使用した。この細胞表面抗原は、ヒトの成人および胎児の骨髄から単離した髄線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞および平滑筋細胞を含む種々の間質細胞型の前駆体上に存在する(29、32〜34)。以前の研究により、骨形成前の集団のマーカーとしてSTRO-1が示されており、ここではその発現は、in vitroでの細胞の増殖および成熟骨芽細胞への分化の後に進行的に失われている(27、35、36)。STRO-1抗原はまた、異なる成体組織(例えば、脳、腸、心臓、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、筋肉、胸腺)中の大きい血管上(毛細血管上ではなく)にSTRO-1が局在化するという以前の研究(6)と一致して、ヒトの骨髄および歯髄の血管の外部細胞壁上に存在することが見出された。したがって、STRO-1は、異なる間葉系幹細胞集団の初期マーカーであるようであるが、in situでのこれらの幹細胞集団のための可能な脈間周囲の適所を推論する。
【0065】
BMSSCおよびDPSCが血管に直接関連するか否かを決定するために、本発明者らは、in situで平滑筋細胞、内皮細胞、心線維芽細胞およびシュワン細胞上に存在し、いくつかのヒト新生物のマーカーでもある(37)ことが公知の免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーCD146(MUC-18/Mel-CAM)を認識する別の抗体(CC9)(28)を利用した。特に、CD146は、骨髄の造血幹細胞によってもそれらの前駆細胞によっても発現されない。CD146の正確な機能は未知であるが、膜を横切るシグナル伝達を介した細胞接着、細胞骨格再構築、細胞の形状、移動および増殖を含む種々の細胞プロセスに関連付けられている。
【0066】
BMSSC集団を分析するために、STRO-1BRT発現髄細胞を、二重FACS分析を使用して、CD146の発現に基づいてSTRO-1+造血細胞(主にグリコホリン-A+の有核赤血球)からさらに識別した。精製されたSTRO-1BRT/CD146+ヒトBMSSCは、大きい顆粒細胞の特徴である光散乱特性を示した。本発明者らの研究は、5-フルオロウラシル(5-FU)処理後のマウス骨髄から部分的に精製されたBMSSCを単離し、高い垂直および前方の光散乱特徴を有するとしてこの集団を同定したVan Vlasselaerおよび共同研究者(1994)(38)の知見を支持している。興味深いことに、新たに単離した5-FU耐性マウスBMSSCもまた、2種の脈管周囲マーカーSab-1およびSab-2陽性であることが見出された(38)。逆に、より最近の研究は、BMSSCがin vitroで培養されると、ほとんどの原始集団が、低い垂直および前方の光散乱特性を示し(39)、したがってin situでBMSSCの真の形態学を反映していない可能性があることを示している。本研究において、STRO-1BRT/CD146+分類されたヒトBMSSCは、それぞれ初期および後期の特化した骨形成集団を同定するCBFA1およびオステオカルシンの発現を欠き(40、41)、このことは、BMSSCがヒト骨髄吸引物において骨形成前の表現型を示すことを示している。本発明者らは、高い割合の新たに単離したSTRO-1BRT/CD146+ BMSSCがα-平滑筋アクチンを発現したが、内皮特異的マーカーのフォン・ビルブランド因子は発現しなかったことを見出しており、これにより、この原始前駆体集団が特徴的な脈管周囲表現型を示すという直接的な証拠が提供された。
【0067】
本研究はまた、STRO-1またはCD146のいずれかの発現に基づいてヒト歯髄組織から直接的にDPSCについて単離および富化するために磁気ビーズ選択を使用することの有効性を実証した。CD146の免疫学的局在決定は、歯髄内の微小脈管に特異的であるようであった。STRO-1およびCD146の両方の、歯髄組織中の大きい血管の外部壁上での同時局在は、DPSCの大部分がこの微小脈管から生じていることを暗示した。しかし、STRO-1抗体は歯髄および末梢神経束中の神経周膜とも反応したので(未刊行の観察)、神経細胞の発生におけるこの抗原の役割を決定するためにはさらなる調査が必要である。
【0068】
BMSSCと同様に、新たに単離したCD146+ DPSCは、α-平滑筋アクチンは発現するがフォン・ビルブランド因子は発現しないことが見出された。DPSCはまた、象牙質形成表面から離れた位置にあることおよび分化した象牙芽細胞を含む外部歯髄層に限定されるヒト象牙芽細胞特異的象牙質シアロタンパク質(DSP)の発現を欠いていることの両方によって、未熟なプレ歯原性集団であることが示された。本発明者らは、ex vivoで増殖させたDPSCが、非誘導条件下で培養した場合、前駆体分子の象牙質シアロホスホタンパク質(dentinsialophosphoprotein)(DSPP)をin vitroで発現しないことを以前に記載している(4)。同様の研究により、DSPP mRNAが、新たに単離した象牙芽細胞/歯髄組織において高度に発現されたが、ラット切歯由来の培養された歯の乳頭細胞においては検出されなかったことが示されている(43、44)。整列された象牙質基質を形成するためにin vitro(45)またはin vivoでの移植のいずれかによってDPSCが誘導されたときだけ、DSPPが発現される(4)。
【0069】
ex vivoで増殖させたBMSSCおよびDPSCのin vitro研究は、それらの子孫が、多角形の内皮様の外観ではなく、二極性の線維芽細胞性の、星状または平坦な形態を有する培養された脈管周囲の細胞と形態学的に類似したという概念を支持した。さらに、本発明者らは、BMSSCおよびDPSCに由来するコロニーの子孫が、CD146およびα-平滑筋アクチンの両方について不均質な染色を示すが、内皮マーカーCD34およびフォン・ビルブランド因子のin vitroでの発現を欠くことを以前に示している(4)。
【0070】
2種の異なる間葉系幹細胞集団(例えば、BMSSCおよびDPSC)が脈間周囲の間隙中に存在するという観察は、他の成体組織中の幹細胞集団を同定するためのさらなる含みを有し得る。最近の知見により、ヒトの胎児および成人のサンプルに由来する骨格筋の結合組織および真皮中でヒト「逆」多能性間葉系幹細胞が同定されている(56)。しかし、これらの幹細胞の正確な位置、発生能および個体発生についてはなお多くが未知である。本研究において、骨髄および象牙質歯髄における間葉系幹細胞の適所の同定は、in vivoでのそれらの発生能を指向するために、原始多能集団をin vitroで選択的に維持および増殖させるために必要な基本的な条件を解明する助けとなり得る。
【0071】
〔実施例2〕
[成人ヒト骨髄MPCは、STRO-1抗原の高い発現およびCD34発現の欠如によって、間質前駆細胞、造血幹細胞および血管芽細胞から識別される。]
生後の骨髄は、血球形成(造血幹細胞)、内皮発生(血管芽細胞)および結合組織/間質分化(間質前駆細胞/骨髄間質幹細胞/間葉系幹細胞)を担う常在の幹細胞型および前駆細胞型の中心であるようである。本発明者らのグループによる最近の研究(Gronthosら、2003;ShiおよびGronthos 2003)は、ヒト多能性骨髄間葉系前駆細胞(MPC)を、STRO-1抗原の高い発現に基づき、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーVCAM-1(CD106)およびMUC-18(CD146)の同時発現によって、初めて精製および特徴付けした。SimmonsおよびTorok-Storb(1991aおよびb)による初期の研究は、in vitroで接着性コロニーを形成する能力を有する骨髄由来のSTRO-1+間質前駆細胞もまた、造血幹細胞マーカーCD34を低いレベルではあるものの発現したことを示している。これらの研究は、髄吸引物中の高い割合の接着性コロニー形成細胞を排除するために、CD34抗体-補体媒介性の細胞溶解を使用した(SimmonsおよびTorok-Storb 1991b)。STRO-1抗体は、ヒトのCD34+骨髄細胞を用いたマウスの免疫後に産生されるが、これは、STRO-1抗原がCD34+/グリコホリン-A+有核赤血球およびCD34+/CD20+ Bリンパ球上でも中程度〜低いレベルで発現されるという事実に起因して生じた可能性があることに留意することが重要である。本発明者らは、洗練された蛍光活性化細胞分類技術を使用して、多能性成人ヒト骨髄MPCが高レベルのSTRO-1を発現するが、間質前駆細胞、造血幹細胞および血管芽細胞のマーカー(CD34)、白血球抗原(CD45)ならびに有核赤血球マーカー(グリコホリン-A)の発現を欠くという直接的な証拠をここに提供する(図6A〜C)。これらのデータは、成人ヒト骨髄由来のMPCが、より成熟した間質前駆細胞、造血幹細胞および血管芽細胞とは別個の新規幹細胞集団であることを実証している(図7)。
【0072】
他に示さない限り、この実施例の材料および方法は実施例1と同じである。
【0073】
図6.STRO-1陽性の骨髄単核細胞上のCD34、CD45およびグリコホリン-Aの発現。磁気活性化分類によって最初に単離し、CD34(A)、CD45(B)またはグリコホリン-A(C)に対する抗体で同時染色したSTRO-1陽性の骨髄単核細胞の典型的な二色フローサイトメトリー分析プロフィールを示す代表的なヒストグラム。このSTRO-1抗体は、ヤギ抗マウスIgM-フルオレセインイソチオシアネートを使用して同定したが、CD34、CD45およびグリコホリン-Aは、ヤギ抗マウスIgG-フィコエリスリンを使用して同定した。クローン原性MPC集団を含む高い発現のSTRO-1画分を、領域R1およびR2に基づく蛍光活性化細胞分類によって単離した。
【0074】
図7.骨髄MPCはSTRO-1 bright、CD34陰性、CD45陰性かつグリコホリン-A陰性である。このグラフは、図6中に示されるような領域R1およびR2に基づく、CD34抗原、CD45抗原またはグリコホリン-A抗原のいずれかの同時発現または欠如により選択された異なる分類されたSTRO-1 bright集団の各々について実施したin vitroの接着性コロニー形成アッセイの結果を示す。これらのデータは、各細胞画分について2つの別個の実験から平均したコロニー形成単位の平均発生率として表す。
【0075】
〔実施例3〕
[異なるヒト組織中の多能性MPCの同定]
異なる組織中のMPCの存在および正確な位置はほぼ未知であるものの、本発明者らは、MPCがヒト骨髄組織および歯髄組織中の脈管周囲の間隙中に存在するようであることを最近実証した(ShiおよびGronthos 2003)。これらの観察は、間葉系幹細胞マーカーSTRO-1、平滑筋および周皮細胞のマーカーCD146、α平滑筋アクチン、ならびに周皮細胞特異的マーカー3G5の発現に基づいて、異なるMPC集団を同定および単離するための免疫組織化学方法および免疫選択方法の組み合わせに基づいていた。本発明者らは、心臓、肝臓、腎臓、皮膚、脾臓、膵臓、リンパ節を含む広範な種々の組織におけるSTRO-1/CD146抗原、STRO-1/α-平滑筋アクチン抗原および3G5/CD146抗原の同時局在を実証するこれらの研究をここで展開した(図8)。
【0076】
MPCが歯髄のような非骨髄組織から誘導可能であるという本発明者らのより初期の知見を確認するために、本発明者らは、成人ヒト末梢脂肪から異なるMPC集団を単離するために蛍光活性化細胞分類を使用した。単細胞懸濁物を、以前に記載されたように(ShiおよびGronthos 2003)、コラゲナーゼおよびディスパーゼによる脂肪組織の消化後に得た。次いで、脂肪由来の細胞を、STRO-1、CD146および3G5に対して反応性の抗体と共にインキュベートした。次いで、細胞集団を、各マーカーに対する陽性さ(領域R3)または陰性さ(領域R2)に基づいてFACSによって選択し、次いで通常の増殖培地(ShiおよびGronthos 2003)中にプレートして、各細胞画分中の接着性のコロニー形成細胞の発生率を評価した(図9)。12日間の培養後、コロニー(50個以上の細胞の凝集物)をスコアリングし、各細胞画分についてプレートした105個の細胞当たりのコロニー数として示した。本発明者らのデータにより、MPCが、STRO-1/3G5/CD146抗原の発現に基づいて脂肪組織から誘導できることが実証された(図10)。二色フローサイトメトリー分析により、小さい割合の脂肪由来の細胞だけがSTRO-1/CD146および3G5/CD146を同時発現したことが確認された(図11)。これらの知見は、MPCが脈管周囲のマーカーの同じセットに基づいて骨髄組織および歯髄組織の両方から単離できるという本発明者らの以前の観察(ShiおよびGronthos 2003)と一致している。さらに、本発明者らは、以前に記載されたように(Gronthosら、2003)、CD146選択によって単離した脂肪由来のMPCが、異なる組織(例えば、骨、脂肪および軟骨)へと分化する能力を有する(図12)ことを実証する証拠を提供する。
【0077】
皮膚のような無関係の組織におけるMPCの存在を試験する最近の知見もまた、本発明者らの仮説をさらに強化するために試験した。単細胞懸濁物を、ヒト脂肪組織について上述したように、コラゲナーゼおよびディスパーゼによる全厚のヒト皮膚の消化後に得た。次いで、皮膚由来の細胞を、STRO-1、CD146および3G5に対して反応性の抗体と共にインキュベートし、ヤギ抗マウスIgMまたはIgG-フィコエリスリンのいずれかを使用して同定した。次いで、細胞集団を、各マーカーに対する陽性さ(領域R3)または陰性さ(領域R2)に基づいてFACSによって選択し、次いで通常の増殖培地(ShiおよびGronthos 2003)中にプレートして、各細胞画分中の接着性のコロニー形成細胞の発生率を評価した(図13)。12日間の培養後、コロニー(50個以上の細胞の凝集物)をスコアリングし、各細胞画分についてプレートした105個の細胞当たりのコロニー数として示した。このデータにより、MPCが、STRO-1/3G5/CD146抗原の発現に基づいて皮膚からも誘導できることが実証された(図10)。合わせて考えると、これらのデータは、多能性MPCが、共通の表現型に基づいて生後のヒト組織に由来する実質的に全ての脈管新生した組織を同定および単離することが可能であることを示唆する。
【0078】
他に示さない限り、この実施例の材料および方法は実施例1と同じである。
【0079】
図8.異なるヒト組織における脈管周囲のマーカーの反応性。血管ならびに脾臓、膵臓(パネルI)、脳、腎臓(パネルII)、肝臓、心臓(パネルIII)および皮膚(パネルIV)上に存在する結合組織に対する、(A)STRO-1およびCD146、(B)STRO-1およびα-平滑筋アクチン、ならびに(C)3G5およびCD146の反応性を実証する二色免疫蛍光染色(20×)。STRO-1抗体および3G5抗体はヤギ抗マウスIgM-Texas Redを使用して同定したが、CD146およびα-平滑筋アクチンはヤギ抗マウスまたはIgG-フルオレセインイソチオシアネートを使用して同定した。同時局在は、黄色およびオレンジ色の蛍光の重複する領域(白の矢印)によって示される。
【0080】
図9.FACSによる脂肪由来のMPCの単離。以前に記載されたように(ShiおよびGronthos 2003)、コラゲナーゼ/ディスパーゼ消化後に生成された末梢脂肪由来の単細胞懸濁物の新たな調製物中のSTRO-1、CD146および3G5の発現を示す代表的なフローサイトメトリーヒストグラム。これらの抗体は、ヤギ抗マウスIgMまたはIgG-フィコエリスリンのいずれかを使用して同定した。次いで、細胞集団を、各マーカーに対する陽性さ(領域R3)または陰性さ(領域R2)に基づいてFACSによって選択し、次いで通常の増殖培地中にプレートして、各細胞画分中の接着性のコロニー形成細胞の発生率を評価した。
【0081】
図10.クローン原性の脂肪由来のMPCはSTRO-1/3G5/CD146陽性である。棒グラフは、STRO-1、CD146および3G5を認識する抗体に対する反応性に基づいて、蛍光活性化細胞分類後の酵素的に消化されたヒト末梢脂肪組織の単細胞懸濁物から回収され(図9)、次いで骨髄組織および歯髄組織について以前に記載されたように標準的な増殖培地中で培養した(ShiおよびGronthos 2003)、クローン原性コロニーの数を示す。これらのデータは、2つの別個の実験から平均した、陽性および陰性の細胞画分中のプレートした105個の細胞当たりの得られたコロニー形成単位の数として表す。
【0082】
図11.脂肪由来MPCの免疫表現型分析。コラゲナーゼ/ディスパーゼ消化後に生成された末梢脂肪由来の単細胞懸濁物の新たな調製物中のSTRO-1およびCD146(A)ならびに3G5およびCD146の同時発現を示す代表的なフローサイトメトリーヒストグラム。STRO-1抗体および3G5抗体はヤギ抗マウスIgM-フィコエリスリンを使用して同定したが、CD146はヤギ抗マウスIgG-フルオレセインイソチオシアネートを使用して同定した。約60%および50%のCD146陽性細胞が、それぞれSTRO-1および3G5を同時発現する。これらのデータは、10%以上のCD146陽性細胞がSTRO-1および3G5を同時発現することを示唆している。
【0083】
図12.精製された脂肪細胞由来のMPCのin vitroでの発生能。STRO-1+/CD146+の脂肪細胞に由来する初代MPC培養物の調製物を、Gronthosら、2003によって以前に記載されたように、標準培養条件(A)、骨形成誘導性培地(B)、脂肪生成誘導性培地(C)または軟骨形成条件(D)のいずれかにおいて再培養した。複数の分化誘導の2週間後、脂肪細胞由来のMPCは、骨(B;アリザリン陽性のミネラル沈着)、脂肪(C;Oil Red O陽性の脂質)および軟骨(D:II型コラーゲンマトリックス)を形成する能力を実証した。
【0084】
図13.FACSによる皮膚由来のMPCの単離。コラゲナーゼ/ディスパーゼ消化後に生成された全厚皮膚由来の単細胞懸濁物の新たな調製物中のSTRO-1、CD146および3G5の発現を示す代表的なフローサイトメトリーヒストグラム。これらの抗体は、ヤギ抗マウスIgMまたはIgG-フィコエリスリンのいずれかを使用して同定した。次いで、細胞集団を、各マーカーに対する陽性さ(領域R3)または陰性さ(領域R2)に基づいてFACSによって選択し、次いで通常の増殖培地中にプレートして、各細胞画分中の接着性のコロニー形成細胞の発生率を評価した。
【0085】
図14.クローン原性の皮膚由来のMPCは、STRO-1bri/3G5/CD146陽性である。棒グラフは、STRO-1、CD146および3G5を認識する抗体に対する反応性に基づいて、蛍光活性化細胞分類後の酵素的に消化されたヒト皮膚の単細胞懸濁物から回収され、次いで骨髄組織および歯髄組織について以前に記載されたように標準的な増殖培地中で培養した(ShiおよびGronthos 2003)、接着性コロニーの数を示す。これらのデータは、2つの別個の実験から平均した、陽性および陰性の細胞画分中のプレートした105個の細胞当たりの得られたコロニー形成単位の数として表す。
【0086】
〔実施例4〕
[ex vivoで増殖させたヒト骨髄間葉系前駆細胞の免疫表現型分析]
本発明者らは、多能性間葉系前駆細胞(MPC)が、表現型STRO-1bright/VCAM-1(CD106)+またはSTRO-1bright/MUC-18(CD146)+に基づいて、成人ヒト骨髄単核細胞から精製できることを以前に報告している(Gronthosら、2003;ShiおよびGronthos 2003)。このMPC集団は、既定された培養条件下でin vitroで容易に増殖させることが可能である(Gronthosら、2003)。本発明者らはここで、逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)およびフローサイトメトリー分析をそれぞれ使用して、mRNAレベルおよびタンパク質レベルの両方で、異なる細胞系統と関連するマーカーに基づいてex vivoで増殖させたMPCの子孫を特徴付けるデータを提示する。
【0087】
第1シリーズの実験において、半定量的RT-PCR分析を使用して、培養されたMPC集団中に存在する種々の系統関連遺伝子の遺伝子発現プロフィールを試験した(図15)。各細胞マーカーについての相対的な遺伝子発現を、ImageQuantソフトウェアを使用して、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDHの発現を参照して評価した(図15B)。さらに、単色フローサイトメトリー分析を使用して、細胞系統関連マーカーの発現に基づいて、ex vivoで増殖させたMPCのタンパク質発現プロフィールを試験した(図15A)。培養されたMPCの遺伝子発現およびタンパク質発現に基づく一般的な表現型の概要を表1中に示す。本明細書中に記載されるMPCの遺伝子発現プロフィールの直接的な比較により、この細胞集団と、Pittengerら、1999によって以前に記載された間葉系幹細胞(MSC)との間の明確な差異が実証された(表1)。
【0088】
他に示さない限り、この実施例の材料および方法は実施例1と同じである。
【0089】
図15A.ex vivoで増殖させた骨髄MPCの免疫表現型発現パターン。ex vivoで増殖させた骨髄MPCの単細胞懸濁物を、トリプシン/EDTA処理で調製し、次いで細胞系統関連マーカーを同定する抗体と共にインキュベートした。細胞内抗原を同定する抗体について、細胞内マーカーについて染色する前に細胞調製物を冷70%エタノールで固定して、細胞膜を透過性にした。アイソタイプが一致した対照抗体を同一条件下で処理した。フローサイトメトリー分析を、COULTER EPICS装置を使用して実施した。ドットブロットは、5,000リストモードの事象を示し、これは、アイソタイプが一致した陰性対照抗体(細い線)を参照した各系統の細胞マーカーについての蛍光強度(太い線)のレベルを示す。
【0090】
図15B.培養したMPCの遺伝子発現プロフィール。ex vivoで増殖させた骨髄MPCの単細胞懸濁物を、トリプシン/EDTA処理で調製し、総細胞RNAを調製した。RNAzolB抽出法を使用して総RNAを単離し、標準手順を使用して調製されるcDNA合成のためのテンプレートとして使用した。種々の転写物の発現を、以前に記載されたような標準プロトコル(Gronthosら、2003)を使用して、PCR増幅によって評価した。この研究において使用したプライマーセットを表2中に示す。増幅後、各反応混合物を1.5%アガロースゲル電気泳動によって分析し、エチジウムブロマイド染色によって可視化した。各細胞マーカーについての相対的遺伝子発現を、ImageQuantソフトウェアを使用して、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDHの発現を参照して評価した。
【0091】
図16.ex vivoで増殖させたSTRO-1bri MPCは、in vitroで細動脈へと発生し得る。ex vivoで増殖させたSTRO-1briおよびSTRO-1dullの骨髄MPCの単細胞懸濁物を、トリプシン/EDTA処理によって調製し、次いで200μlのマトリゲルを含む48ウェルのプレート中にプレートした。STRO-1dull(A)およびSTRO-1bri(B)のMPCを、増殖因子PDGF、EGF、VEGFを10ng/mlで補充した無血清培地(Gronthosら、2003)中で、1ウェル当たり20,000細胞でプレートした。5% CO2中での37℃で24時間の培養後、これらのウェルを洗浄し、次いで4%のパラホルムアルデヒドで固定した。免疫組織科学研究を引き続き実施して、索様構造が、ヤギ抗マウスIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ抗体を用いて同定されたα-平滑筋アクチンを発現したことを実証した。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
(参考文献)
【技術分野】
【0001】
本発明は、間葉系前駆細胞、および脈管周囲(peruvascular)のマーカーを有するこのような前駆細胞の部分集団の単離に関する。
【背景技術】
【0002】
間葉系前駆細胞は医学的用途のための可能性を有するので、これらの細胞を単離および富化する多数の試みがなされてきた。Pittingerら(1999)は、骨髄からのクローン原性細胞の増殖について示し、増殖された間葉系幹細胞の調製物を記載している。骨髄から比較的高い収率を提供するこのような方法のより最近の例は、Simmonsらの公報WO01/04268中に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO01/04268
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし今日まで、広範な組織からの間葉系前駆細胞の単離を可能にする方法の例はなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、多能性間葉系前駆細胞(MPC)の集団が脈管周囲の間隙(niche)に存在するという知見から生じる。このことにより、WO01/04268中で言及される単一の組織である骨髄よりもかなり広範な組織型のMPC供給源が存在することが実証されている。本発明は、MPCが富化した集団が、マーカー3G5によって識別される2つの集団へと分化し得るというさらなる発見から生じる。3G5陽性のMPCは、血管新生への応用のために特に重要であるとみなされるが、これらはまた、他の組織型へと分化することが実証可能に示されている。本発明の好ましい富化した集団中に存在するMPCのレベルが、いくつかの分化した組織型を提供するのに充分な数の特化した細胞の集団を生じる可能性があるということが、本発明のさらなる知見である。
【0006】
第1の態様の第1の形態において、本発明は間葉系前駆細胞(MPC)を富化する方法に帰すると言うことができ、この方法は、脈管新生した供給源組織から単細胞懸濁物を調製するステップおよび初期脈管周囲細胞マーカーの存在に基づいて富化するステップを含む。
【0007】
第1の態様の第2の形態において、本発明は間葉系前駆細胞を富化する方法に帰すると言うことができ、この方法は、骨髄ではない脈管新生した供給源組織から単細胞懸濁物を調製し、この組織は別個の細胞に分離するステップ、ならびに1種または複数の初期発生マーカーの存在またはレベル、および特化を示す1種または複数のマーカーの非存在のうち1つに基づいて富化するステップを含む。
【0008】
第1の態様の第3の形態において、本発明は間葉系前駆細胞(MPC)を富化する方法に帰すると言うことができ、この方法は、脈管新生した供給源組織から単細胞懸濁物を調製するステップおよびこの脈管新生した組織において脈管周囲の細胞によって発現されるマーカーの存在に基づいて富化するステップを含む。
【0009】
第2の態様において、本発明は間葉系前駆細胞(MPC)を富化した細胞の富化した集団に帰すると言うことができ、このMPCは、3G5、MUC18、VCAM-1、STRO-1briおよびα平滑筋アクチンの表現型を有する。
【0010】
第3の態様の第1の形態において、本発明は単離した間葉系前駆細胞(MPC)に帰すると言うことができ、このMPCは、3G5、MUC18、VCAM-1、STRO-1briおよびα平滑筋アクチンの表現型を有する。
【0011】
第3の態様の第2の形態において、本発明は、多能であり、表面マーカー3G5陽性である単離した哺乳動物細胞に帰すると言うことができる。
【0012】
第3の態様の第3の形態において、本発明は、クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能であり、脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靭帯、骨髄、腱および骨格筋を含むがこれらに限定されない群の組織から単離し、表面マーカーSTRO-1陽性である間葉系前駆細胞(MPC)に帰すると言うことができる。
【0013】
第3の態様の第4の形態において、本発明は、クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能である間葉系前駆細胞(MPC)を富化した細胞の増殖していない集団に帰すると言うことができ、このMPCは、表面マーカーMUC18/CD146およびα-平滑筋アクチンを同時発現する。
【0014】
第4の態様において、本発明は、本発明の第3の態様から生じる分化した子孫細胞に帰すると言うことができ、好ましくはこの子孫細胞は、少なくとも骨芽細胞、象牙芽細胞、象牙質産生、軟骨細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、髄間質、破骨細胞支持間質および造血支持間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、脈管、上皮、神経膠、ニューロン、星状膠細胞または稀突起神経膠細胞の細胞である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】抗CD146(CC9)を用いて同時標識したSTRO-1+ MACS単離した細胞の特性を示す図である。(A)分類領域R1は、二重陽性のSTRO-1BRT/CD146+集団を示す。(B)STRO-1BRT/CD146+発現に基づくクローン原性細胞コロニー(>50細胞)の発生率を、5回の独立した実験からのポワソン分布分析を使用して細胞濃度当たり24反復の限界希釈分析によって決定した。BMMNC(C)、STRO-1int/CD146-細胞(D)およびSTRO-1BRT/CD146+細胞(E)の前方(サイズ)および垂直(粒度)の光散乱特徴。(F)CBFA1(レーン2)転写物、オステオカルシン(レーン4)転写物およびGAPDH(レーン6)転写物についてのSTRO-1BRT/CD146+分類した髄細胞のRT-PCR分析。CBFA1(レーン1)、オステオカルシン(レーン3)およびGAPDH(レーン5)を発現する対照細胞(デキサメタゾンの存在下で増殖させたBMSSC培養物)もまた示される。この反応混合物を1.5%アガロースゲル上での電気泳動に供し、エチジウムブロマイド染色によって可視化した。(G)骨(b)表面近傍のヒト骨髄(bm)切片中の血管(bv)壁上のCD146のin situ発現(矢印)(20×)。切片は、ヘマトキシリンで対比染色した。(H)ヒト骨髄の凍結切片中の血管壁と反応する、Texas redで標識したSTRO-1抗体およびフルオレセインイソチオシアネートで標識したCC9抗体の反応性を実証する二重免疫蛍光染色。
【図2】in vivoでのDPSCの免疫表現型分析を示す図である。棒グラフは、STRO-1、CD146および3G5を認識する抗体、ならびにアイソトープが一致した陰性対照抗体に対する反応性に基づいて、免疫磁気選択後の歯髄の単細胞懸濁物から回収されたクローン原性コロニーの数を示す。これらのデータは、3つの別個の実験から平均した未分画歯髄細胞中のコロニー総数の百分率として、ビーズ陽性の細胞画分において得られたコロニー形成単位の数として表す。統計的有意性(*)は、各抗体についてのコロニー総数の%を対応するアイソタイプが一致した対照と比較するスチューデントt検定(p 0.01)を使用して決定した。
【図3】歯髄における脈管周囲のマーカーの反応性を示す図である。ヒト歯髄(p)中の血管(小さい矢印)および神経束(nb)を取り囲む周囲の神経周膜(大きい矢印)上のSTRO-1抗原の免疫局在(20×)。(B)内部神経束(nb)を染色するフルオレセインイソチオシアネートで標識した抗神経フィラメント抗体と組み合わせた、歯髄神経周膜(矢印)に対するTexas Redで標識したSTRO-1抗体の反応性を実証する二重免疫蛍光染色(40×)。(C)ヒト歯髄組織中の血管壁に対するCD146抗原の免疫局在(20×)。(D)血管に対するTexas Redで標識したSTRO-1抗体およびフルオレセインイソチオシアネートで標識したCC9抗体の反応性を実証する二重免疫蛍光染色。(E)象牙芽細胞外部層(od)に対するウサギポリクローナル抗DSP抗体(矢印)を用いた歯髄組織の免疫組織化学染色(20×)。(F)血管(bv)壁中の単一の周皮細胞に対して反応性の3G5(矢印)(40×)。組織切片はヘマトキシリンで対比染色した。
【図4】BMSSCに対して反応性の3G5を示す図である。(A)CD146(PE)および3G5(FITC)を発現する全骨髄単核細胞(BMMNC)の典型的な二色FACS分析プロフィールを示す代表的なヒストグラム。(B)コロニー効率アッセイを、観察された全ての異なる発現パターンについて実施した(領域「R」1〜6)。これらのデータは、3つの別個の実験から平均した各細胞画分についてのコロニー形成単位の平均発生率として表す。
【図5】in vivoでの精製したBMSSCおよびDPSCの発生能。α-平滑筋アクチン(A)およびフォンビルブランド因子(B)に特異的な抗体で染色したMACS/FACS単離したSTRO-1BRT/CD146+髄細胞(矢印)のサイトスピン調製物。免疫磁気ビーズ選択(小さい矢印によって示される磁気ビーズ)によって単離し、α-平滑筋アクチン(C)およびフォンビルブランド因子(D)に特異的な抗体で染色したCD146+歯髄細胞(大きい矢印)。(E)3ヶ月間にわたって免疫無防備状態のマウス中にHA/TCPと共に移植したSTRO-1BRT/CD146+ BMSSCに由来するex vivoで増殖させた細胞による異所的な骨形成(b)および造血/脂肪生成髄(bm)(E)。(F)3ヶ月間にわたって免疫無防備状態のマウス中にHA/TCPと共に移植したCD146+ DPSCに由来するex vivoで増殖させた細胞による象牙質(d)および線維性歯髄組織(p)の異所的形成。切片はヘマトキシリンおよびエオシンによって染色した。
【図6】STRO-1陽性の骨髄単核細胞上のCD34、CD45およびグリコホリン-Aの発現を示す図である。磁気活性化分類によって最初に単離され、CD34(A)、CD45(B)またはグリコホリン-A(C)に対する抗体で同時染色されたSTRO-1陽性の骨髄単核細胞の典型的な二色フローサイトメトリー分析プロフィールを示す代表的なヒストグラム。このSTRO-1抗体は、ヤギ抗マウスIgM-フルオレセインイソチオシアネートを使用して同定したが、CD34、CD45およびグリコホリン-Aは、ヤギ抗マウスIgG-フィコエリスリンを使用して同定した。クローン原性MPC集団を含む高い発現のSTRO-1画分を、領域R1およびR2に基づく蛍光活性化細胞分類によって単離した。
【図7】骨髄MPCはSTRO-1 bright、CD34陰性、CD45陰性かつグリコホリン-A陰性である。このグラフは、図6中に示されるような領域R1およびR2に基づく、CD34抗原、CD45抗原またはグリコホリン-A抗原のいずれかの同時発現または欠如により選択された異なる分類されたSTRO-1 bright集団の各々について実施したin vitroの接着性コロニー形成アッセイの結果を示す。これらのデータは、各細胞画分について2つの別個の実験から平均したコロニー形成単位の平均発生率として表す。
【図8A】異なるヒト組織における脈間周囲のマーカーの反応性を示す図である。血管ならびに脾臓、膵臓(パネル1)、脳、腎臓(パネル2)、肝臓、心臓(パネル3)および皮膚(パネル4)上に存在する結合組織に対する、(A)STRO-1およびCD146、(B)STRO-1およびα-平滑筋アクチン、ならびに(C)3G5およびCD146の反応性を実証する二色免疫蛍光染色(20×)。STRO-1抗体および3G5抗体はヤギ抗マウスIgM-Texas Redを使用して同定したが、CD146およびα-平滑筋アクチンはヤギ抗マウスまたはIgG-フルオレセインイソチオシアネートを使用して同定した。同時局在は、黄色およびオレンジ色の蛍光の重複する領域(白の矢印)によって示される。
【図8B】異なるヒト組織における脈間周囲のマーカーの反応性を示す図である。血管ならびに脾臓、膵臓(パネル1)、脳、腎臓(パネル2)、肝臓、心臓(パネル3)および皮膚(パネル4)上に存在する結合組織に対する、(A)STRO-1およびCD146、(B)STRO-1およびα-平滑筋アクチン、ならびに(C)3G5およびCD146の反応性を実証する二色免疫蛍光染色(20×)。STRO-1抗体および3G5抗体はヤギ抗マウスIgM-Texas Redを使用して同定したが、CD146およびα-平滑筋アクチンはヤギ抗マウスまたはIgG-フルオレセインイソチオシアネートを使用して同定した。同時局在は、黄色およびオレンジ色の蛍光の重複する領域(白の矢印)によって示される。
【図8C】異なるヒト組織における脈間周囲のマーカーの反応性を示す図である。血管ならびに脾臓、膵臓(パネル1)、脳、腎臓(パネル2)、肝臓、心臓(パネル3)および皮膚(パネル4)上に存在する結合組織に対する、(A)STRO-1およびCD146、(B)STRO-1およびα-平滑筋アクチン、ならびに(C)3G5およびCD146の反応性を実証する二色免疫蛍光染色(20×)。STRO-1抗体および3G5抗体はヤギ抗マウスIgM-Texas Redを使用して同定したが、CD146およびα-平滑筋アクチンはヤギ抗マウスまたはIgG-フルオレセインイソチオシアネートを使用して同定した。同時局在は、黄色およびオレンジ色の蛍光の重複する領域(白の矢印)によって示される。
【図8D】異なるヒト組織における脈間周囲のマーカーの反応性を示す図である。血管ならびに脾臓、膵臓(パネル1)、脳、腎臓(パネル2)、肝臓、心臓(パネル3)および皮膚(パネル4)上に存在する結合組織に対する、(A)STRO-1およびCD146、(B)STRO-1およびα-平滑筋アクチン、ならびに(C)3G5およびCD146の反応性を実証する二色免疫蛍光染色(20×)。STRO-1抗体および3G5抗体はヤギ抗マウスIgM-Texas Redを使用して同定したが、CD146およびα-平滑筋アクチンはヤギ抗マウスまたはIgG-フルオレセインイソチオシアネートを使用して同定した。同時局在は、黄色およびオレンジ色の蛍光の重複する領域(白の矢印)によって示される。
【図9】FACSによる脂肪由来のMPCの単離を示す図である。以前に記載されたように(ShiおよびGronthos 2003)、コラゲナーゼ/ディスパーゼ消化後に生成された末梢脂肪由来の単細胞懸濁物の新たな調製物中のSTRO-1、CD146および3G5の発現を示す代表的なフローサイトメトリーヒストグラム。これらの抗体は、ヤギ抗マウスIgMまたはIgG-フィコエリスリンのいずれかを使用して同定した。次いで、細胞集団を、各マーカーに対する陽性さ(領域R3)または陰性さ(領域R2)に基づいてFACSによって選択し、次いで通常の増殖培地中にプレートして、各細胞画分中の接着性のコロニー形成細胞の発生率を評価した。
【図10】クローン原性の脂肪由来のMPCはSTRO-1/3G5/CD146陽性である。棒グラフは、STRO-1、CD146および3G5を認識する抗体に対する反応性に基づいて、蛍光活性化細胞分類後の酵素的に消化されたヒト末梢脂肪組織の単細胞懸濁物から回収され(図9)、次いで骨髄組織および歯髄組織について以前に記載されたように標準的な増殖培地中で培養した(ShiおよびGronthos 2003)クローン原性コロニーの数を示す。これらのデータは、2つの別個の実験から平均した、陽性および陰性の細胞画分中のプレートした105個の細胞当たりの得られたコロニー形成単位の数として表す。
【図11】脂肪由来MPCの免疫表現型分析を示す図である。コラゲナーゼ/ディスパーゼ消化後に生成された末梢脂肪由来の単細胞懸濁物の新たな調製物中のSTRO-1およびCD146(A)ならびに3G5およびCD146の同時発現を示す代表的なフローサイトメトリーヒストグラム。STRO-1抗体および3G5抗体はヤギ抗マウスIgM-フィコエリスリンを使用して同定したが、CD146はヤギ抗マウスIgG-フルオレセインイソチオシアネートを使用して同定した。約60%および50%のCD146陽性細胞が、それぞれSTRO-1および3G5を同時発現する。これらのデータは、10%以上のCD164陽性細胞がSTRO-1および3G5を同時発現することを示唆している。
【図12】精製された脂肪細胞由来のMPCのin vitroでの発生能を示す図である。STRO-1+/CD146+の脂肪細胞に由来する初代MPC培養物の調製物を、Gronthosら(2003)によって以前に記載されたように、標準培養条件(A)、骨形成誘導性培地(B)、脂肪生成誘導性培地(C)または軟骨形成条件(D)のいずれかにおいて再培養した。複数の分化誘導の2週間後、脂肪細胞由来のMPCは、骨(B;アリザリン陽性のミネラル沈着)、脂肪(C;Oil Red O陽性の脂質)および軟骨(D:II型コラーゲンマトリックス)を形成する能力を実証した。
【図13】FACSによる皮膚由来のMPCの単離を示す図である。コラゲナーゼ/ディスパーゼ消化後に生成された全厚皮膚由来の単細胞懸濁物の新たな調製物中のSTRO-1、CD146および3G5の発現を示す代表的なフローサイトメトリーヒストグラム。これらの抗体は、ヤギ抗マウスIgMまたはIgG-フィコエリスリンのいずれかを使用して同定した。次いで、細胞集団を、各マーカーに対する陽性さ(領域R3)または陰性さ(領域R2)に基づいてFACSによって選択し、次いで通常の増殖培地中にプレートして、各細胞画分中の接着性のコロニー形成細胞の発生率を評価した。
【図14】クローン原性の皮膚由来のMPCは、STRO-1/3G5/CD146陽性である。棒グラフは、STRO-1、CD146および3G5を認識する抗体に対する反応性に基づいて、蛍光活性化細胞分類後の酵素的に消化されたヒト皮膚の単細胞懸濁物から回収され(図6)、次いで骨髄組織および歯髄組織について以前に記載されたように標準的な増殖培地中で培養した(ShiおよびGronthos 2003)、接着性コロニーの数を示す。これらのデータは、2つの別個の実験から平均した、陽性および陰性の細胞画分中のプレートした105個の細胞当たりの得られたコロニー形成単位の数として表す。
【図15】(A)ex vivoで増殖させた骨髄MPCの免疫表現型発現パターンを示す図である。ex vivoで増殖させた骨髄MPCの単細胞懸濁物を、トリプシン/EDTA処理で調製し、次いで細胞系統関連マーカーを同定する抗体と共にインキュベートした。細胞内抗原を同定する抗体について、細胞調製物を冷70%エタノールで固定して、細胞内マーカーについて染色する前に細胞膜を透過性にした。アイソタイプが一致した対照抗体を同一条件下で処理した。フローサイトメトリー分析を、COULTER EPICS装置を使用して実施した。ドットブロットは、5,000リストモードの事象を示し、これは、アイソタイプが一致した陰性対照抗体(細い線)を参照した各系統の細胞マーカーについての蛍光強度(太い線)のレベルを示す。(B)培養したMPCの遺伝子発現プロフィールを示す図である。ex vivoで増殖させた骨髄MPCの単細胞懸濁物を、トリプシン/EDTA処理で調製し、総細胞RNAを調製した。RNAzolB抽出法を使用して総RNAを単離し、標準手順を使用して調製されるcDNA合成のためのテンプレートとして使用した。種々の転写物の発現を、以前に記載されたような標準プロトコル(Gronthosら、2003)を使用して、PCR増幅によって評価した。この研究において使用したプライマーセットを表2中に示す。増幅後、各反応混合物を1.5%アガロールゲル電気泳動によって分析し、エチジウムブロマイド染色によって可視化した。各細胞マーカーについての相対的遺伝子発現を、ImageQuantソフトウェアを使用して、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDHの発現を参照して評価した。
【図16】ex vivoで増殖させたSTRO-1bri MPCは、in vitroで細動脈へと発生し得る。ex vivoで増殖させた骨髄STRO-1bri MPCの単細胞懸濁物を、トリプシン/EDTA処理によって調製し、次いで200μlのマトリゲルを含む48ウェルのプレート中にプレートした。STRO-1bri MPCを、増殖因子PDGF、EGF、VEGFを10ng/mlで補充した無血清培地(Gronthosら、2003)中で、1ウェル当たり20,000細胞でプレートした。5% CO2中での37℃で24時間の培養後、これらのウェルを洗浄し、次いで4%のパラホルムアルデヒドで固定した。免疫組織科学研究を引き続き実施して、索様構造が、ヤギ抗マウスIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ抗体を用いて同定されたα-平滑筋アクチンを発現したことを実証した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、間葉系前駆細胞、特に脈管新生した組織の脈管周囲区画中に存在し得る間葉系前駆細胞に関する。このような間葉系細胞は、3G5表面マーカーの存在によって同定することが可能であり、おそらく他の初期発生マーカー(例えば、CD146(MUC18)、VCAM-1およびSTRO-1)によってさらにまたは別個に同定することが可能である。
【0017】
前駆細胞は、発生の増殖前の段階に実質的にある初期細胞である。これらは、完全に特化した細胞へといまだ分化していない細胞であるが、これらの細胞は、全ての型の細胞へと分化できる必要はないという点で、厳密な意味で幹細胞である必要はない。部分的に分化した前駆細胞は、幹細胞よりも高い増殖能力を有するという点で利益を有する。
【0018】
本発明の前駆細胞は、例えば造血組織とは反対に間葉系組織へと特化しているという点で、いくらか分化している。これは、単離したMPCが造血細胞に関連するマーカー(例えばCD34)を欠き、さらにそれらの分化能力が造血系に及ばないという生成されたデータから明らかである。さらに、これらは全ての間葉系細胞型へと分化する能力を有する必要はなく、むしろ1種、2種、3種またはそれ以上の細胞型へと分化することができる可能性がある。
【0019】
対象の組織から収集されたこれらの前駆細胞は、それらが起源となる細胞型について組織を再生するために有用であり得ることが理解される。したがって、心臓から単離した前駆細胞は、心臓組織を再生するために再誘導することができるが、その能力はそれほど限定されず、1つの組織型から単離した前駆細胞は、別の組織型で組織を再生するために有用であり得る。未分化の細胞が見出される微小環境は、分化の経路に対して影響を及ぼすことが知られており、したがって、再誘導が組織特異的である必要はない。
【0020】
示されたデータは、MPCを収集し、次いで、骨および骨髄ならびに象牙質および歯髄をそれぞれ産生するように再誘導し、さらには単離MPCのex vivoでの増殖後に細動脈(索様構造)が生成されたことを示している。
【0021】
特定の細胞型に特徴的なマーカーの遺伝子発現に基づいて広範な細胞を生成できることが理解される。したがって、適切な培養条件下で、本発明の脈管周囲のMPCから生成できる細胞型の範囲には、以下が含まれるがこれらに限定されないことが理解される:骨芽細胞、象牙芽細胞、象牙質産生、軟骨細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、髄間質、破骨細胞支持間質および造血支持間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、脈管、上皮、神経膠、ニューロン、星状膠細胞または稀突起神経膠細胞の細胞。
【0022】
MPCが脈管周囲の細胞から単離できるという知見の利点の1つは、このことが、MPCを単離または富化できる供給源組織の範囲を大いに拡大し、MPCの供給源を骨髄に限定する有効な制限がもはや存在しないということである。本発明の例示においてこれらのMPCを単離した組織は、ヒトの骨髄、歯髄細胞、脂肪組織および皮膚である。さらに、in situ染色および組織学的研究により、MPCが脾臓、膵臓、脳、腎臓、肝臓および心臓の脈管周囲の区画中に存在することが同定された。脈管周囲のMPCが存在する組織型の広範かつ多様な範囲を考慮すると、脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靭帯、骨髄、腱および骨格筋を含めることが可能な、より広範な範囲の組織由来のMPCもまた存在するであろうことが提唱される。
【0023】
本発明のこれらの前駆細胞は、これらが3G5陽性であるか、またはおそらく別の脈管周囲のマーカーを有するという点において、他の公知のMPCから識別される。これらは、脈管周囲の細胞上に存在する初期発生の表面マーカー、特にCD146(MUC18)、VCAM-1のうち1種または複数の存在、そしてあるいはまたはさらに、モノクローナル抗体STRO-1によって認識されるマーカーの高レベルの発現を富化することによって単離することが可能である。あるいはまたはさらに、富化は3G5を使用して実施できる。
【0024】
脈管周囲の細胞に関連するマーカー(例えば、α平滑筋アクチン(αSMA))もまたMPC上に存在し得る。
【0025】
MPCに関連する他の初期発生マーカーもまた存在し得る。これらには、THY-1、VCAM-1、ICAM-1、PECAM-1、CD49a/CD49b/CD29、CD49c/CD29、CD49d/CD29、CD29、CD61、インテグリンβ5、6〜19、トロンボモジュリン、CD10、CD13、SCF、STRO-1bri、PDGF-R、EGF-R、IGF1-R、NGFR、FGF-R、レプチン-R(STRO-2)からなる群を含めることが可能であるが必ずしもこれらに限定されない。これらのマーカーのうち1種または複数の陽性の発現は、供給源組織からMPCを富化する方法において使用することができる。
【0026】
本発明のMPCはまた、分化した組織中に存在するマーカーの非存在によって特徴付けることが可能であり、富化は、このようなマーカーの非存在に基づき得る。
【0027】
同様に、富化した細胞集団は造血起源のものではないことが好ましく、したがって、これらの細胞が存在しないことが好ましい。非存在として特徴的に同定されたマーカーには、CD34、CD45およびグリコホリンAが含まれるがこれらに限定されない。この目的のためのさらなる他のマーカーには、CD20およびCD19(Bリンパ球マーカー)、造血幹細胞および血管芽細胞上に存在するCD117(c-kit腫瘍性タンパク質)、CD14(マクロファージ)、CD3およびCD4(T細胞)を含めることが可能である。
【0028】
比較的休止状態の、直接的に富化したかまたは単離した脈管周囲のMPCを使用することが所望される可能性がある。あるいは、富化した集団の増殖を実施することが可能であり、かなり多数の細胞を生じるという有益な効果を有することが発見されている。しかし、直接的に富化した細胞のプールの増殖の効果は、最初のMPCの幾分かの分化が生じることである。5週間の期間にわたる増殖は、103倍の増大を生じることが可能である。102倍〜105倍の間へと集団を増殖させるために他の期間を選択することが可能である。この可能性は、サイトカインならびに特定の組織型への分化を指向する他の因子(例えば、平滑筋α索(smooth muscle alpha cord)を形成するPDGFおよびVEGF)を含む培地中でこれらを培養することによって指向させることが可能である。これらは次いで、修復を補助するために、例えば損傷を有する組織中に導入することができる。あるいは、集団中のMPCの割合を増大させるために、STRO-1briであり得る初期発生マーカーに基づいて細胞を増殖後に再選択することが所望される可能性がある。
【0029】
MPCの本質的に純粋な集団は、所望の組織構造を形成するために分化した細胞の形成を提供する必要がないことが見出されている。富化した集団は、富化した集団中の総細胞数の割合として、約0.001%、0.01%、0.02%、0.05%、0.1%、0.2%、0.5%もしくは1%またはそれより高いMPCのレベルを有し得る。このオーダーの富化は、富化したMPC集団の選択のための単一のマーカーの使用によって達成することができる。供給源組織が固有に高レベルの脈管周囲のMPCを有する場合に、これは特に当てはまる。かなりより3G5陽性のMPCが、骨髄中よりも、歯髄のような特定の組織中に存在することが見出されている。したがって、骨髄において、3G5陽性のMPCは、STR1briコロニー形成細胞に基づいてMPCの約15%を構成するが、一方で歯髄においては65%を構成し、脂肪組織および皮膚組織において90%より多くを構成していることが見出されている。単一のマーカーを使用した集団の増殖およびその後の再富化は、より高いレベルのMPC、おそらく約0.1%、0.5%、1%、2%、5%または10%より高いレベルを生じさせうる。
【0030】
前駆細胞のかなりの割合および好ましくは大多数が脈管周囲のMPCであることが所望されるとみなされるが、脈管周囲のMPCが単一の前駆細胞形態であることは、本発明の特定の形態のために必須であるとはみなされない。他の形態の前駆体もまた、脈間周囲のMPCが所望の分化を受ける能力を過度に妨害することなく存在し得る。このような他の形態には、おそらく3G5陰性である造血前駆体または非脈管周囲のMPCを含めることが可能である。
【0031】
本発明の特定の形態は、内皮細胞を実質的に含まない脈管周囲のMPCを提供する。この状況において、実質的に含まないとは、約5%、2%、1%または0.1%未満の内皮細胞であるとみなすことができる。あるいは、この状況は、この富化した集団がフォン・ビルブランド(von Willebrand)因子陰性であるという評価であり得る。
【0032】
分離の基礎を形成する細胞表面マーカーを有する細胞の認識は、多数の異なる方法によってもたらすことが可能であるが、これらの方法は全て、対象のマーカーに対する結合因子の結合と、その後の、高レベルの結合または低レベルの結合もしくは結合なしのいずれかである結合を示す細胞の分離に依存することが理解される。最も便利な結合因子は、好ましくは、モノクローナル抗体またはモノクローナル抗体(これらの因子の特異性に起因する)に基づく抗体または抗体ベースの分子である。抗体は両方のステップのために使用することができるが、他の因子もまた使用可能であり、したがって、これらのマーカーに対するリガンドもまた、これらのマーカーを有する細胞またはこれらのマーカーを欠く細胞を富化するために使用可能である。
【0033】
これらの抗体は、粗い分離を可能にするために固体支持体に結合させることが可能である。この分離技術は、収集すべき画分の生存能力の保持を最大化すべきである。異なる有効性の種々の技術を使用して比較的粗い分離を得ることができる。使用される特定の技術は、分離の効率、付随する細胞毒性、実施の容易さおよび速度、ならびに洗練された装置および/または技術的能力の必要性に依存する。分離のための手順には、抗体で被覆された磁気ビーズを使用する磁気分離、アフィニティクロマトグラフィーおよび固体マトリックスに結合した抗体を用いた「パンニング」を含めることが可能であるがこれらに限定されない。正確な分離を提供する技術にはFACSが含まれるがこれに限定されない。
【0034】
これらの方法に関して、細胞は陰性または陽性いずれかである。陽性の細胞は、細胞表面上にマーカーが存在する程度に依存して低い(lo)またはhi(明るい(bright))発現体のいずれかであり得、これらの用語は、蛍光または細胞の色分類プロセスにおいて使用される他の色の強度に関する。Loおよびbriの識別は、分類される特定の細胞集団に対して使用されるマーカーとの関連で理解される。
【0035】
脈管周囲のMPCを富化する方法は、第1のマーカーの発現を富化することによって細胞の第1の部分的に富化したプールを作製するステップ、および次いでこの細胞の部分的に富化したプールから第2のマーカーの発現を富化するステップを含み得る。
【0036】
この方法は、1種または複数のマーカーの認識に基づく固相分類ステップである第1のステップを含むことが好ましい。例示された実施形態の固相分類ステップは、STRO-1の高レベルの発現を認識するMACSを利用する。次いでこれにより、精密さの高い分類が第1のステップとして使用された場合よりも多数の細胞を有する富化したプールが得られる。例えばFACSが最初に使用される場合、前駆細胞の多くは他の細胞と結合しているので拒絶される。正確な分離方法を使用する第2の分類ステップが次に続き得る。この第2の分類ステップは、2種以上のマーカーの使用を含み得る。したがって、例示的な実施形態において、二色FACSが、STRO-1によって認識される抗原の高レベルの発現ならびにCD146の発現を認識するために使用される。第2のステップにおいて分類するために使用されるウインドウは、開始集団がすでに部分的に富化されているので、より有利に調整することが可能である。
【0037】
脈管周囲のMPCを富化する方法はまた、公知の技術を使用する第1の富化ステップの前に幹細胞の供給源を収集することを含み得る。したがって、組織を外科的に取り出す。供給源組織を構成する細胞は次いで、いわゆる単細胞懸濁物へと分離される。この分離は、物理的手段または酵素手段によって達成することが可能である。
【0038】
このような脈間周囲のMPCの好ましい供給源はヒトであるが、本発明は動物にも適用可能であることが予測され、これらの動物には、ウシ、ヒツジ、ブタなどのような農産動物、イヌのような家畜、マウス、ラット、ハムスターおよびウサギのような実験動物、またはウマのようなスポーツに使用され得る動物を含めることができる。
【0039】
さらなる形態において、本発明は、哺乳動物における組織生成の方法に帰すると言うことができ、この方法は、本発明の第1の態様と同様に前駆細胞の集団を富化するステップ、およびこの富化した集団を哺乳動物中に導入するステップ、およびこの富化した集団にこの哺乳動物中で組織を生成させるステップを含む。
【0040】
本発明の富化した細胞についての別の可能な使用は、考慮される組織型における治療的物質の発現のための外因性核酸の導入による、遺伝子治療の手段としての使用である。
【0041】
本発明の状況において、用語単離した細胞は、脈管周囲のMPCが、それらが存在する集団の総細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%または95%を構成することを意味し得る。
【0042】
〔実施例1:前駆細胞の単離および増殖〕
多数の異なる成体組織(皮膚、毛包、骨髄、腸、脳、膵臓およびより最近では歯髄を含む)において同定された幹細胞の適所は、しばしば高度に脈管新生された部位である(1)。通常は休止状態の幹細胞集団の維持および調節は、宿主組織の必要に応じて局所的微小環境によって厳密に制御されている(2、3)。骨髄および歯髄の両方の支持的な結合組織は、顕著な厳格さでそのそれぞれの微小環境(骨および象牙質の周囲の石灰化した構造を含む)を再生することが可能である高い増殖能力を有する間質幹細胞集団を含む(4、5)。生後の生体組織において、骨髄間質はゆるく編まれた高度に脈管化された組織として存在し、この組織は、造血を支持および調節する(6〜8)。多くの組織がその再生能力を失うかまたは低下させた時点で、成体骨髄は、造血実質組織の継続的な更新のための能力を保持し、隣接骨表面の再構築を担う(9、10)。対照的に、歯の内部髄室は、石灰化した象牙質によって埋められた微小脈管ネットワークによって浸潤された、非造血性の緻密な線維性組織からなる(11〜13)。歯の成熟後、歯髄は比較的静的であり、う蝕または機械的外傷のような損傷によって引き起こされた象牙質基質の損傷に応答した補修能力においてのみ作用する。
【0043】
機能的骨芽細胞(BMSSC:骨髄間質幹細胞)および象牙芽細胞(DPSC:歯髄幹細胞)の前駆体(これらは共に、その供給源組織によって同定されるMPCの形態である)は、in vitroでクローン原性細胞のクラスターを形成するその能力(異なる幹細胞集団の中で共通する特徴)によって最初に同定された(4、14〜18)。ex vivoで増殖させたBMSSCおよびDPSCの子孫は、種々の転写レギュレータ、細胞外マトリックスタンパク質、増殖因子/レセプター、細胞接着分子、ならびにいくつかではあるが全てではない、線維芽細胞、内皮細胞、平滑筋細胞および骨芽細胞に特徴的な系統マーカーについて、同様の遺伝子発現プロフィールを共有する(4、19)。しかし、以前の研究により、個々のBMSSCコロニーが、in vitroでの増殖速度とin vivoでの発生能力において顕著な差異を示すことが報告されている(5、14、20)。これらの知見と類似して、本発明者らは、異なるDPSCコロニーの増殖能および発生能における匹敵するレベルの不均質性を最近観察している(21)。合わせて考えると、これらの研究は、特化した二分化能および単分化能の前駆細胞集団を生じる、高度に増殖性の多分化能の幹細胞の小さい集団が先頭に立つ、骨髄および歯髄中に存在する間質前駆細胞の階層型の配置を結論付けている(22)。
【0044】
培養されたBMSSCおよびDPSCの特性についての広範な知識にもかかわらず、本発明者らは、それらのin vitro特徴が、それらの真の遺伝子発現パターンおよびin situでの発生能力の正確な描写であるか否かについてなお理解していない。さらに、各組織内のコロニー形成細胞の全てが1つの多分化能幹細胞プールに由来するか否か、またはこれらが別個の系統に属する特化した前駆細胞から生じるか否かは、正式には理解されていない。そのそれぞれの組織におけるBMSSCおよびDPSCの正確な解剖学的位置に関する情報もまた欠如している。これは主に、特に原始部分集団について、幹細胞が稀であること、ならびに骨形成および歯牙形成の間の異なる発生段階を同定する特異的マーカーの非存在に帰せられる。骨芽細胞および象牙芽細胞の前駆体についての1つの可能な適所は、それぞれ骨髄および歯髄の微小脈管ネットワークであり得るという仮説が以前に立てられている(23、24)。
【0045】
[材料および方法]
組織サンプル
正常なヒト成人志願者由来の腸骨稜由来の骨髄単核細胞(BMMNC)を、Royal Adealaide Hospital Human Ethics Committeeによって示されたガイドラインの下で得た。正常なヒトの埋伏した第3大臼歯を、それぞれ、University of Adelaide Human Ethics Committeeによって示された承認されたガイドラインの下でUniversity of Adelaide Dental Clinic Researchにて若い成人から収集した。廃棄された全厚の皮膚および末梢脂肪組織を、Royal Adelaide Hospital Human Ethics Committeeによって示されたガイドラインの下で、Skin Cell Engineering Laboratoryからの慣用的な形成外科手順から得た。歯髄組織を、以前に記載されたように歯冠および歯根から分離した(4)。3mg/mlのI型コラゲナーゼ(Worthington Biochem、Freehold、NJ)および4mg/mlのディスパーゼ(Boehringer Mannheim、GMBH、Germany)の溶液中での37℃で1〜3時間の酵素消化によって、歯髄、皮膚および脂肪組織の単細胞懸濁物を調製した。70μmの濾過器(Falcon、BD Labware、Franklin Lakes、NJ)に細胞を通過させることによって単細胞懸濁物を得た。次いで、以下に記載されるように、骨髄、歯髄、皮膚および脂肪の細胞(0.01〜1×105/ウェル)調製物を、免疫選択、RNA抽出または6ウェルプレート(Costar、Cambridge、MA)における直接的培養のいずれかに使用した。
【0046】
他のヒト組織標本(脳、肝臓、心臓、腎臓、肺、脾臓、胸腺、リンパ節、膵臓、皮膚)を、Royal Adelaide Hospital Human Ethics Committeeによって示された承認されたガイドラインの下で慣用的な病理学的試験の間にRoyal Adelaide Hospitalで実施した剖検から得た。約0.5cm2の各組織型の小さい標本を、Tissue-Tek II低温鋳型(cryomould)25mm×20mm×5mm(Miles Laboratories;Naperville、IL)中に配置し、液体窒素の浴中にガラスビーカーを吊るすことによって予め冷却したイソ-ペンタン(BDH Chemicals、Poole、England)の150ml〜200mlのパイレックス(登録商標)ガラスビーカー中に浸漬することによってO.C.T.化合物媒体(Miles Laboratories)で埋包した。イソペンタンを冷却し、ガラスの底が白色になった。凍結切片を-80℃で即座に保存した。神経組織および筋肉組織の凍結切片は、Histopathology Department of the I.M.V.S.、South Australiaから得、包皮の切片はImmunology Department of the I.M.V.S.、South Australiaから得た。ホルマリン固定してパラフィン埋包したヒト胎児肢(52日目)の切片は、Department of Histopathology、 Women's and Children's Hospital、Adelaide、South AustraliaからT.J. Khong博士の厚意によって提供された。
【0047】
[コロニー効率アッセイおよび培養]
単細胞懸濁物を低いプレーティング密度(6ウェルプレート中に3連で、1ウェル当たり1,000細胞と10,000細胞との間)でプレートして、異なる免疫選択された細胞画分のコロニー形成効率を評価した。これらの細胞を、20%の胎仔ウシ血清、2mMのL-グルタミン、100μMのL-アスコルビン酸-2-リン酸、100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを補充したα-改変イーグル培地中で5% CO2中37℃で培養した。14日目に培養物を4%のホルマリンで固定し、次いで0.1%のトルイジンブルーで染色した。50個以上の細胞の凝集物を、コロニー形成単位-線維芽細胞(CFU-F)と等価なクローン原性コロニーとしてスコアリングした。
【0048】
[磁気活性化細胞分類(MACS)]
この手順は、他に記載された手順の改変である(25)。簡潔に述べると、約1×108のBMMNCを、STRO-1bri上清(マウス抗ヒトBMSSC、IgM)(29)(1/2)と共に氷上で1時間インキュベートした。次いで、これらの細胞をPBS/5% FBSで洗浄し、1/50希釈のビオチン化ヤギ抗マウスIgM(μ-鎖特異的;Caltag Laboratories、Burlingame、CA)中に氷上で45分間懸濁した。洗浄後、これらの細胞をストレプトアビジンマイクロビーズ(Miltenyi Biotec、BergischGladbach、F.R.G.)と共に氷上で15分間インキュベートし、次いで製造者の推奨にしたがってMini MACS磁気カラム(Miltenyi Biotec)上で分離した。
【0049】
[蛍光活性化細胞分類(FACS)]
STRO-1bri MACS単離した細胞を、ストレプトアビジン-FITCコンジュゲート(1/50;CALTAG Laboratories)と共に氷上で20分間インキュベートし、次いでPBS/5% FBSで洗浄した。単色蛍光活性化細胞分類(FACS)を、FACStarPLUSフローサイトメータ(Becton Dickinson、Sunnyvale、CA)を使用して実施した。二色-FACS分析を、MACS単離したSTRO-1bri BMMNCを、飽和(1:1)レベルのCC9抗体上清(マウス抗ヒトCD146/MUC-18/Mel-CAM、IgG2a、Stan Gronthos博士)と共に氷上で1時間インキュベートすることによって達成した。PBS/5% FBSで洗浄した後、これらの細胞を第2の標識ヤギ抗マウスIgG2a(γ-鎖特異的)フィコエリスリン(PE)コンジュゲート抗体(1/50、CALTAG Laboratories)と共に氷上で20分間インキュベートした。次いでこれらの細胞をFACStarPLUSフローサイトメータの自動細胞堆積ユニット(ACDU)を使用して分類した。限界希釈アッセイ:1ウェル当たり1、2、3、4、5および10個の細胞を播種し、24回反復し、以前に記載されたように10日間にわたって血清除去した培地中で培養した(26)。同様に、新たに調製した分画していないBMMNCを、CC9(IgG2a)抗体および3G5(IgM)抗体、またはアイソタイプが一致した陰性対照抗体と共に、氷上で1時間インキュベートした。PBS/5% FBSで洗浄した後、これらの細胞を第2の標識ヤギ抗マウスIgG2a(γ-鎖特異的)フィコエリスリン(PE)およびIgM(1/50;CALTAG Laboratories)コンジュゲート抗体と共に氷上で30分間インキュベートした。細胞をPBS/5% FBS中で洗浄し、その後FACStarPLUSフローサイトメータを使用して分析した。各抗体に対する陽性の反応性は、アイソタイプが一致した対照抗体の99%より高い蛍光レベルとして規定した。
【0050】
[フローサイトメトリー分析]
ex vivoで増殖させた骨髄MPCの単細胞懸濁物を、トリプシン/EDTA処理によって調製し、次いでニートなSTRO-1上清または異なる細胞系統に関連するマーカーを同定する抗体(10μg/ml)と共に氷上で1時間インキュベートした。次いでこれらの細胞をPBS/5% FBS中で洗浄し、次いで、ヤギ抗マウスIgM-フィコエリスリン(1/50、SouthernBiotechnologies)、ヤギ抗マウスIgG-フィコエリスリンまたはヤギ抗ウサギIgG-フィコエリスリン(Caltag Laboratories)のいずれかと共にインキュベートした。細胞内抗原を同定する抗体について、細胞調製物の細胞膜を透過性にし、その後細胞内マーカーについて染色した。アイソタイプが一致した対照抗体を同一条件下で処理した。フローサイトメトリー分析を、COULTER EPICS装置を使用して実施した。ドットブロットは、5,000リストモード(listmode)の事象を示し、これは、アイソタイプが一致した陰性対照抗体を参照した各系統の細胞マーカーについての蛍光強度のレベルを示す。
【0051】
[免疫組織化学]
ヒト組織切片(μm)をキシレン中で脱ワックス(de-wax)し、PBS中の勾配付エタノールによって再水和した。凍結組織切片(μm)およびサイトスピン調製物を冷アセトンで-20℃で15分間固定し、次いでPBS中で洗浄した。これらのサンプルを引き続いて1.5%の過酸化水素を含むPBSで30分間処理し、洗浄し、次いで5%の非免疫ヤギ血清を用いて室温で1時間ブロッキングした。サンプルを1次抗体と共に室温で1時間インキュベートした。使用した抗体は以下である:マウス(IgG1およびIgG2a)対照(Caltag、Burlingame、CA);ウサギ(Ig)対照、1A4(抗α平滑筋アクチン、IgG1)、2F11(抗神経フィラメント、IgG1)、F8/86(マウス抗フォンビルブランド因子、IgG1)(Dako、Carpinteria、CA);STRO-1;CC9(抗CD146);LF-151(ウサギ抗ヒト象牙質シアロタンパク質(dentinsialoprotein);L. Fisher博士、NIDCR/NIH、MD)。作業希釈:ウサギ血清(1/500)、モノクローナル上清(1/2)および精製した抗体(10μg/ml)。単一の染色を、適切な2次抗体であるビオチン化ヤギ抗マウスIgM、IgG1、IgG2aまたはビオチン化ヤギ抗ウサギ(Caltag Laboratories)と共にサンプルを室温で1時間インキュベートすることによって実施した。次いで、アビジン-ペルオキシダーゼ複合体および基質を製造業者の指示にしたがって添加した(Vectastain ABC Kit standard、Vector Laboratories)。サンプルをヘマトキシリンで対比染色し、水性媒体中に設置した。二重抗体標識を、2次抗体であるヤギ抗マウスIgM-Texas RedおよびIgG-FITC (CALTAG Laboratories)を、室温で45分間添加することによって達成した。洗浄後、これらのサンプルをVECTASHIELD蛍光マウンタント(mountant)中に設置した。
【0052】
[免疫磁気ビーズ選択]
歯髄組織の単細胞懸濁物を、STRO-1(1/2)、CD146(1/2)または3G5(1/2)に対して反応性の抗体と共に氷上で1時間インキュベートした。これらの細胞をPBS/1% BSAで2回洗浄し、次いでヒツジ抗マウスIgGコンジュゲート磁気Dynabeadsまたはラット抗マウスIgMコンジュゲート磁気Dynabeads(1細胞当たり4個のビーズ;Dynal、Oslo、Norway)のいずれかと共に、4℃でロータリーミキサーで40分間インキュベートした。ビーズに結合している細胞を、製造業者の推奨するプロトコルにしたがってMPC-1磁気粒子濃縮器(Dynal)を使用して取り出した。
【0053】
[マトリゲル-細動脈アッセイ]
ex vivoで増殖させた骨髄STRO-1brightMPCの単細胞懸濁物をトリプシン/EDTA処理によって調製し、次いで200μlのマトリゲルを含む48ウェルプレート中に配置した。このSTRO-1brightMPCを、10ng/mlの増殖因子PDGF、EGF、VEGFを補充した無血清培地(Gronthosら、2003)中に、1ウェル当たり20,000細胞でプレートした。5%のCO2中で37℃での24時間の培養後、これらのウェルを洗浄し、次いで4%のパラホルムアルデヒドで固定した。免疫組織化学研究を、上記のように、ヤギ抗マウスIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ抗体/Vectastaining Kitを用いて同定したα-平滑筋アクチンに対して引き続いて実施した。
【0054】
[in vitroでのMPCの骨形成分化、脂肪生成分化および軟骨形成分化]
ex vivoで増殖させた脂肪由来のMPCの単細胞懸濁物を、以前に示されたように、10%のFCS、100μMのL-アスコルビン酸-2-リン酸、デキサメタゾン10-7Mおよび3mMの無機リン酸を補充したαMEM中で培養して、石灰化した骨マトリクスをin vitroで形成するように骨髄MPCを誘導した(Gronthosら、2003)。ミネラルの沈着を、陽性のvon Kossa染色によって同定した。脂肪生成を、以前に記載されたように(Gronthosら、2003)、0.5mMのメチルイソブチルメチルキサンチン、0.5μMのヒドロコルチゾンおよび60μMのインドメタシンの存在下で誘導した。Oil Red O染色を使用して、脂質が堆積した脂肪細胞を同定した。軟骨形成分化を、記載されたように(Pittengerら、1999)、10ng/mlのTGF-β3で処理した凝集培養物中で評価した。
【0055】
[in vivo翻訳研究]
以前に記載されたように(4)、約5.0×106のex vivoで増殖させた細胞(STRO-1bri/CD146+のBMSSCまたはCD146+のDPSCのいずれかに由来する)を、40mgのヒドロキシアパタイト/リン酸三カルシウム(HA/TCP)セラミック粉末(Zimmer Inc、Warsaw、IN)と混合し、次いで10週齢の免疫無防備状態のベージュマウス(NIH-bg-nu-xid、Harlan Sprague Dawley、Indianapolis、IN)の背側表面中に皮下移植した。これらの手順を、承認された動物プロトコル(NIDCR番号00-113)の仕様にしたがって実施した。
【0056】
[逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応]
総RNAを、STRO-1BRI/CD146+で分類したBMMNCおよび対照細胞(10-7Mのデキサメタゾンの存在下で3週間培養された初代BMSSC培養物)から、RNA STAT-60(TEL-TEST Inc.Friendswood TX)を使用して調製した。第1鎖cDNA合成を、オリゴ-dTプライマーを使用して第1鎖cDNA合成キット(GIBCO BRL、Life Technologies)を用いて実施した。第1鎖cDNA(2μl)を、46μlの1×PCRマスター反応ミックス(Roche Diagnostics、Gmbh Mannheim Germany)および10pMolの各ヒト特異的プライマーセット:CBFA1(632bpおよび3つのより小さい選択的スプライス改変体)(27)センス5'-CTATGGAGAGGACGCCACGCCTGG-3'[配列番号1]、アンチセンス、5'-CATAGCCATCGTAGCCTTGTCCT-3'[配列番号2];オステオカルシン(310bp)(4)センス、5'-CATGAGAGCCCTCACA-3'[配列番号3]、アンチセンス、5'-AGAGCGACACCCTAGAC-3'[配列番号4];GAPDH(800bp)(4)センス、5'-AGCCGCATCTTCTTTTGCGTC-3'[配列番号5];アンチセンス5'-TCATATTTGGCAGGTTTTTCT-3'[配列番号6]に添加した。これらの反応を、PCR Express Hybaidサーマルサイクラー(Hybaid、Franklin、MA)中で、95℃で2分間を1サイクル、次いで94℃/(30秒間)、60℃/(30秒間)、72℃/(45秒間)を35サイクル、最後に72℃で7分間の伸長でインキュベートした。増幅後、各反応を1.5%アガロースゲル電気泳動によって分析し、エチジウムブロマイド染色によって可視化した。
【0057】
[結果]
BMSSCおよびDPSCは、in vivoで、脈管関連抗原STRO-1およびCD146を発現する。
本発明者らは、STRO-1抗原の高い発現に基づいて、ヒト髄の吸引物から全ての検出可能なクローン原性コロニーを単離および富化するための、磁気活性化細胞分類(MACS)の有効性を以前に実証している(25、26)。BMSSCをさらに特徴付けるために、本発明者らは、内皮細胞および平滑筋細胞上に存在する細胞表面抗原CD146(MUC-18、Mel-CAMおよびSendo-1としても知られる)を認識する別のモノクローナル抗体CC9(28)と共にSTRO-1bri MACS単離した細胞をインキュベートした。これらの研究は、CC9が、二色FACS分析によって、総STRO-1+集団由来のSTRO-1 brightを発現する画分(STRO-1BRT)に選択的に結合することを実証した(図1A)。ポワソン分布統計を使用するクローニング効率アッセイにより、BMSSCの発生率の顕著な増大(プレートした5個のSTRO-1BRT/CD146+細胞当たり1コロニー)が得られ、分画していない髄と比較してクローン原性コロニー集団の2×103倍の富化が達成された(図1B)。STRO-1BRT/CD146-細胞画分においてはコロニー形成は検出できなかった(データ示さず)。
【0058】
STRO-1BRT/CD146+髄細胞の光散乱特性は典型的に、STRO-1+集団のバルクを含む有核赤血球およびBリンパ球よりも大きくより顆粒状であった(29)(図1C〜E)。STRO-1BRT/CD146+分類した細胞のサイトスピン調製物は、赤血球(グリコホリン-A)関連マーカーおよび白血球(CD45)関連マーカー陰性であることが見出された(データ示さず)。BMSSCが初期骨形成前駆体集団を示したことの確認は、初期および後期の骨形成(それぞれ、マーカーCBFA1およびオステオカルシン)を検出できなかった、高度に精製されたMACS/FACS単離したSTRO-1BRT/CD146+細胞のRT-PCR分析によって得られた(図1F)。しかし、STRO-1BRT/CD146+分類したBMSSCの子孫は、ex vivo増殖の後に、CBFA1およびオステオカルシンの両方を発現することが見出された。免疫局在研究により、CD146抗原が、ヒト骨髄の切片中の血管壁上で優勢に発現されたことが実証された(図1G)。STRO-1およびCD146の両方の局在は、ヒト骨髄トレフィンの凍結切片中の大きい血管に限定された(図1H)。
【0059】
免疫選択プロトコルを引き続いて使用して、ヒトDPSCもまたSTRO-1およびCD146をin situで発現するか否かを決定した。DPSCを単離するためのMACS分析またはFACS分析のいずれかの使用は、処理後に得られた限定的な数の歯髄細胞(歯髄サンプル1つ当たり約105細胞)と混合されたこれらの細胞が稀(プレートした2×103個の細胞当たり1つのコロニー形成細胞)であることに起因して限定的であった。これを回避するために、本発明者らは、1回の実験当たり3個〜4個の異なる第3大臼歯から得たいくつかの歯髄組織をプールし、STRO-1抗原またはCD146抗原のいずれかの発現に基づく、歯髄組織の単細胞懸濁物に対する免疫磁気ビーズ選択を使用した。STRO-1+画分は、総歯髄細胞集団の約6%を示した。比較研究により、個々のコロニーの増殖速度が磁気ビーズの存在下で乱されなかったことが実証された(データ示さず)。コロニー効率アッセイにより、歯髄由来のコロニー形成細胞の大部分(82%)が、BMSSCと同様に小さいSTRO-1+細胞画分中に示されることが示された(図2)。STRO-1陽性画分中のDPSCの平均発生率(プレートした105個の細胞当たり329個のコロニー形成細胞±56 SE、n=3)は、分画していない歯髄細胞(プレートした105個の細胞当たり55個のコロニー形成細胞±14 SE、n=3)の6倍の高さであった。同様のストラテジーを使用して、ヒト歯髄細胞の異なる画分を、抗体CC9との反応性に基づいて選択した。コロニー効率アッセイにより、高い割合(96%)の歯髄由来のクローン原性コロニーもまた、免疫磁気Dynalビーズ選択を使用して、CD146+集団中に存在したことが示された(図2)。CD146+画分中のクローン原性コロニーの平均発生率(プレートした105個の細胞当たり296個のコロニー形成細胞±37 SE、n=3)は、分画していない歯髄細胞(プレートした105個の細胞当たり42個のコロニー形成細胞±9 SE、n=3)の7倍の高さであった。
【0060】
免疫局在研究により、ヒト歯髄組織の凍結切片において、STRO-1発現が血管壁および神経束の周囲の神経周膜に限定され、成熟した象牙芽細胞または線維性組織中には存在しないことが示された(図3A〜B)。さらに、CD146とSTRO-1との同時局在が、周囲の線維性組織、象牙芽細胞層および神経の神経周膜に対する反応性を有さずに、外部血管細胞壁上で検出された(図3C〜D)。重要なことに、ヒト象牙芽細胞特異的分化マーカー象牙芽シアロタンパク質(DSP)の発現は、成熟象牙芽細胞を含む外部歯髄層に限定され(図3E)、線維性組織、神経束および血管には存在しなかった。
【0061】
[BMSSCおよびDPSCによる脈管周囲マーカー3G5の差示的発現]
本研究において、フローサイトメトリー分析により、細胞表面抗原3G5が、大きい割合(54%)の造血髄細胞によって高度に発現されたことが明らかとなった(図4A)。この観察により、ヒト髄の吸引物からBMSSCの直接精製された集団を単離するための候補マーカーとして3G5が排除された。さらに、3G5およびSTRO-1の発現に基づく二重FACS分析は、両方の抗体が同じアイソタイプを共有したので不可能であった。それにもかかわらず、異なる3G5/CD146 FACS分類した部分画分についてのin vitroのコロニー効率アッセイにより、小さい割合(14%)の骨髄クローン原性コロニーだけが低いレベルで3G5抗原を発現したことが実証された(図4B)。逆に、より大きい割合(63%)のクローン原性DPSC(プレートした105個の細胞当たり192個のコロニー形成細胞±18.4 SE、n=3)が、免疫磁気ビーズ選択後の3G5+細胞中に存在した(図2)。3G5は、ヒト歯髄組織の凍結切片中の周皮細胞に対する特異的な反応性を実証した(図3F)。
【0062】
本発明者らは次に、サイトスピン調製物上の内皮細胞のより特異的なマーカー(フォン・ビルブランド因子)および平滑筋細胞/周皮細胞のより特異的なマーカー(α-平滑筋アクチン)の発現を、新たに単離したSTRO-1BRT/CD146+ BMSSCおよびCD146+発現DPSCを使用して分析した。大きい割合の精製されたBMSSC(67%)は、α-平滑筋アクチン(図5A)陽性であるが、フォンビルブランド因子の発現を欠くことが見出された(図5B)。同様に、単離したDPSCの大多数(85%)もまた、α-平滑筋アクチンを発現するがフォン・ビルブランド因子を発現しないことが見出された(図5C、5D)。STRO-1BRT/CD146+ BMSSCおよびCD146+ DPSCの精製された集団を引き続いてin vitroで増殖させ、次いで免疫無防備状態のマウス中に移植して、それらのin vivoでの発生能を評価した。培養されたBMSSCおよびDPSCの子孫は、それぞれ骨髄および歯/歯髄の微小環境を再生することが可能であるという別個の能力を示し(図5E、F)、この能力は、選択されていない複数のコロニーに由来するBMSSCおよびDPSCの発生能と同一のようであった(4)。
【0063】
[考察]
本研究は、その個体発生および発生能が異なる2種の間葉系幹細胞集団が共に、そのそれぞれの組織の微小脈管系に関連するという直接的な証拠を提供している。
【0064】
本発明者らは、BMSSCおよびDPSCが、STRO-1抗原の高い発現に主に基づいて、それぞれ骨髄吸引物および酵素消化した歯髄組織から効率的に回収できることを実証するために、異なる免疫選択プロトコルを使用した。この細胞表面抗原は、ヒトの成人および胎児の骨髄から単離した髄線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞および平滑筋細胞を含む種々の間質細胞型の前駆体上に存在する(29、32〜34)。以前の研究により、骨形成前の集団のマーカーとしてSTRO-1が示されており、ここではその発現は、in vitroでの細胞の増殖および成熟骨芽細胞への分化の後に進行的に失われている(27、35、36)。STRO-1抗原はまた、異なる成体組織(例えば、脳、腸、心臓、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、筋肉、胸腺)中の大きい血管上(毛細血管上ではなく)にSTRO-1が局在化するという以前の研究(6)と一致して、ヒトの骨髄および歯髄の血管の外部細胞壁上に存在することが見出された。したがって、STRO-1は、異なる間葉系幹細胞集団の初期マーカーであるようであるが、in situでのこれらの幹細胞集団のための可能な脈間周囲の適所を推論する。
【0065】
BMSSCおよびDPSCが血管に直接関連するか否かを決定するために、本発明者らは、in situで平滑筋細胞、内皮細胞、心線維芽細胞およびシュワン細胞上に存在し、いくつかのヒト新生物のマーカーでもある(37)ことが公知の免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーCD146(MUC-18/Mel-CAM)を認識する別の抗体(CC9)(28)を利用した。特に、CD146は、骨髄の造血幹細胞によってもそれらの前駆細胞によっても発現されない。CD146の正確な機能は未知であるが、膜を横切るシグナル伝達を介した細胞接着、細胞骨格再構築、細胞の形状、移動および増殖を含む種々の細胞プロセスに関連付けられている。
【0066】
BMSSC集団を分析するために、STRO-1BRT発現髄細胞を、二重FACS分析を使用して、CD146の発現に基づいてSTRO-1+造血細胞(主にグリコホリン-A+の有核赤血球)からさらに識別した。精製されたSTRO-1BRT/CD146+ヒトBMSSCは、大きい顆粒細胞の特徴である光散乱特性を示した。本発明者らの研究は、5-フルオロウラシル(5-FU)処理後のマウス骨髄から部分的に精製されたBMSSCを単離し、高い垂直および前方の光散乱特徴を有するとしてこの集団を同定したVan Vlasselaerおよび共同研究者(1994)(38)の知見を支持している。興味深いことに、新たに単離した5-FU耐性マウスBMSSCもまた、2種の脈管周囲マーカーSab-1およびSab-2陽性であることが見出された(38)。逆に、より最近の研究は、BMSSCがin vitroで培養されると、ほとんどの原始集団が、低い垂直および前方の光散乱特性を示し(39)、したがってin situでBMSSCの真の形態学を反映していない可能性があることを示している。本研究において、STRO-1BRT/CD146+分類されたヒトBMSSCは、それぞれ初期および後期の特化した骨形成集団を同定するCBFA1およびオステオカルシンの発現を欠き(40、41)、このことは、BMSSCがヒト骨髄吸引物において骨形成前の表現型を示すことを示している。本発明者らは、高い割合の新たに単離したSTRO-1BRT/CD146+ BMSSCがα-平滑筋アクチンを発現したが、内皮特異的マーカーのフォン・ビルブランド因子は発現しなかったことを見出しており、これにより、この原始前駆体集団が特徴的な脈管周囲表現型を示すという直接的な証拠が提供された。
【0067】
本研究はまた、STRO-1またはCD146のいずれかの発現に基づいてヒト歯髄組織から直接的にDPSCについて単離および富化するために磁気ビーズ選択を使用することの有効性を実証した。CD146の免疫学的局在決定は、歯髄内の微小脈管に特異的であるようであった。STRO-1およびCD146の両方の、歯髄組織中の大きい血管の外部壁上での同時局在は、DPSCの大部分がこの微小脈管から生じていることを暗示した。しかし、STRO-1抗体は歯髄および末梢神経束中の神経周膜とも反応したので(未刊行の観察)、神経細胞の発生におけるこの抗原の役割を決定するためにはさらなる調査が必要である。
【0068】
BMSSCと同様に、新たに単離したCD146+ DPSCは、α-平滑筋アクチンは発現するがフォン・ビルブランド因子は発現しないことが見出された。DPSCはまた、象牙質形成表面から離れた位置にあることおよび分化した象牙芽細胞を含む外部歯髄層に限定されるヒト象牙芽細胞特異的象牙質シアロタンパク質(DSP)の発現を欠いていることの両方によって、未熟なプレ歯原性集団であることが示された。本発明者らは、ex vivoで増殖させたDPSCが、非誘導条件下で培養した場合、前駆体分子の象牙質シアロホスホタンパク質(dentinsialophosphoprotein)(DSPP)をin vitroで発現しないことを以前に記載している(4)。同様の研究により、DSPP mRNAが、新たに単離した象牙芽細胞/歯髄組織において高度に発現されたが、ラット切歯由来の培養された歯の乳頭細胞においては検出されなかったことが示されている(43、44)。整列された象牙質基質を形成するためにin vitro(45)またはin vivoでの移植のいずれかによってDPSCが誘導されたときだけ、DSPPが発現される(4)。
【0069】
ex vivoで増殖させたBMSSCおよびDPSCのin vitro研究は、それらの子孫が、多角形の内皮様の外観ではなく、二極性の線維芽細胞性の、星状または平坦な形態を有する培養された脈管周囲の細胞と形態学的に類似したという概念を支持した。さらに、本発明者らは、BMSSCおよびDPSCに由来するコロニーの子孫が、CD146およびα-平滑筋アクチンの両方について不均質な染色を示すが、内皮マーカーCD34およびフォン・ビルブランド因子のin vitroでの発現を欠くことを以前に示している(4)。
【0070】
2種の異なる間葉系幹細胞集団(例えば、BMSSCおよびDPSC)が脈間周囲の間隙中に存在するという観察は、他の成体組織中の幹細胞集団を同定するためのさらなる含みを有し得る。最近の知見により、ヒトの胎児および成人のサンプルに由来する骨格筋の結合組織および真皮中でヒト「逆」多能性間葉系幹細胞が同定されている(56)。しかし、これらの幹細胞の正確な位置、発生能および個体発生についてはなお多くが未知である。本研究において、骨髄および象牙質歯髄における間葉系幹細胞の適所の同定は、in vivoでのそれらの発生能を指向するために、原始多能集団をin vitroで選択的に維持および増殖させるために必要な基本的な条件を解明する助けとなり得る。
【0071】
〔実施例2〕
[成人ヒト骨髄MPCは、STRO-1抗原の高い発現およびCD34発現の欠如によって、間質前駆細胞、造血幹細胞および血管芽細胞から識別される。]
生後の骨髄は、血球形成(造血幹細胞)、内皮発生(血管芽細胞)および結合組織/間質分化(間質前駆細胞/骨髄間質幹細胞/間葉系幹細胞)を担う常在の幹細胞型および前駆細胞型の中心であるようである。本発明者らのグループによる最近の研究(Gronthosら、2003;ShiおよびGronthos 2003)は、ヒト多能性骨髄間葉系前駆細胞(MPC)を、STRO-1抗原の高い発現に基づき、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーVCAM-1(CD106)およびMUC-18(CD146)の同時発現によって、初めて精製および特徴付けした。SimmonsおよびTorok-Storb(1991aおよびb)による初期の研究は、in vitroで接着性コロニーを形成する能力を有する骨髄由来のSTRO-1+間質前駆細胞もまた、造血幹細胞マーカーCD34を低いレベルではあるものの発現したことを示している。これらの研究は、髄吸引物中の高い割合の接着性コロニー形成細胞を排除するために、CD34抗体-補体媒介性の細胞溶解を使用した(SimmonsおよびTorok-Storb 1991b)。STRO-1抗体は、ヒトのCD34+骨髄細胞を用いたマウスの免疫後に産生されるが、これは、STRO-1抗原がCD34+/グリコホリン-A+有核赤血球およびCD34+/CD20+ Bリンパ球上でも中程度〜低いレベルで発現されるという事実に起因して生じた可能性があることに留意することが重要である。本発明者らは、洗練された蛍光活性化細胞分類技術を使用して、多能性成人ヒト骨髄MPCが高レベルのSTRO-1を発現するが、間質前駆細胞、造血幹細胞および血管芽細胞のマーカー(CD34)、白血球抗原(CD45)ならびに有核赤血球マーカー(グリコホリン-A)の発現を欠くという直接的な証拠をここに提供する(図6A〜C)。これらのデータは、成人ヒト骨髄由来のMPCが、より成熟した間質前駆細胞、造血幹細胞および血管芽細胞とは別個の新規幹細胞集団であることを実証している(図7)。
【0072】
他に示さない限り、この実施例の材料および方法は実施例1と同じである。
【0073】
図6.STRO-1陽性の骨髄単核細胞上のCD34、CD45およびグリコホリン-Aの発現。磁気活性化分類によって最初に単離し、CD34(A)、CD45(B)またはグリコホリン-A(C)に対する抗体で同時染色したSTRO-1陽性の骨髄単核細胞の典型的な二色フローサイトメトリー分析プロフィールを示す代表的なヒストグラム。このSTRO-1抗体は、ヤギ抗マウスIgM-フルオレセインイソチオシアネートを使用して同定したが、CD34、CD45およびグリコホリン-Aは、ヤギ抗マウスIgG-フィコエリスリンを使用して同定した。クローン原性MPC集団を含む高い発現のSTRO-1画分を、領域R1およびR2に基づく蛍光活性化細胞分類によって単離した。
【0074】
図7.骨髄MPCはSTRO-1 bright、CD34陰性、CD45陰性かつグリコホリン-A陰性である。このグラフは、図6中に示されるような領域R1およびR2に基づく、CD34抗原、CD45抗原またはグリコホリン-A抗原のいずれかの同時発現または欠如により選択された異なる分類されたSTRO-1 bright集団の各々について実施したin vitroの接着性コロニー形成アッセイの結果を示す。これらのデータは、各細胞画分について2つの別個の実験から平均したコロニー形成単位の平均発生率として表す。
【0075】
〔実施例3〕
[異なるヒト組織中の多能性MPCの同定]
異なる組織中のMPCの存在および正確な位置はほぼ未知であるものの、本発明者らは、MPCがヒト骨髄組織および歯髄組織中の脈管周囲の間隙中に存在するようであることを最近実証した(ShiおよびGronthos 2003)。これらの観察は、間葉系幹細胞マーカーSTRO-1、平滑筋および周皮細胞のマーカーCD146、α平滑筋アクチン、ならびに周皮細胞特異的マーカー3G5の発現に基づいて、異なるMPC集団を同定および単離するための免疫組織化学方法および免疫選択方法の組み合わせに基づいていた。本発明者らは、心臓、肝臓、腎臓、皮膚、脾臓、膵臓、リンパ節を含む広範な種々の組織におけるSTRO-1/CD146抗原、STRO-1/α-平滑筋アクチン抗原および3G5/CD146抗原の同時局在を実証するこれらの研究をここで展開した(図8)。
【0076】
MPCが歯髄のような非骨髄組織から誘導可能であるという本発明者らのより初期の知見を確認するために、本発明者らは、成人ヒト末梢脂肪から異なるMPC集団を単離するために蛍光活性化細胞分類を使用した。単細胞懸濁物を、以前に記載されたように(ShiおよびGronthos 2003)、コラゲナーゼおよびディスパーゼによる脂肪組織の消化後に得た。次いで、脂肪由来の細胞を、STRO-1、CD146および3G5に対して反応性の抗体と共にインキュベートした。次いで、細胞集団を、各マーカーに対する陽性さ(領域R3)または陰性さ(領域R2)に基づいてFACSによって選択し、次いで通常の増殖培地(ShiおよびGronthos 2003)中にプレートして、各細胞画分中の接着性のコロニー形成細胞の発生率を評価した(図9)。12日間の培養後、コロニー(50個以上の細胞の凝集物)をスコアリングし、各細胞画分についてプレートした105個の細胞当たりのコロニー数として示した。本発明者らのデータにより、MPCが、STRO-1/3G5/CD146抗原の発現に基づいて脂肪組織から誘導できることが実証された(図10)。二色フローサイトメトリー分析により、小さい割合の脂肪由来の細胞だけがSTRO-1/CD146および3G5/CD146を同時発現したことが確認された(図11)。これらの知見は、MPCが脈管周囲のマーカーの同じセットに基づいて骨髄組織および歯髄組織の両方から単離できるという本発明者らの以前の観察(ShiおよびGronthos 2003)と一致している。さらに、本発明者らは、以前に記載されたように(Gronthosら、2003)、CD146選択によって単離した脂肪由来のMPCが、異なる組織(例えば、骨、脂肪および軟骨)へと分化する能力を有する(図12)ことを実証する証拠を提供する。
【0077】
皮膚のような無関係の組織におけるMPCの存在を試験する最近の知見もまた、本発明者らの仮説をさらに強化するために試験した。単細胞懸濁物を、ヒト脂肪組織について上述したように、コラゲナーゼおよびディスパーゼによる全厚のヒト皮膚の消化後に得た。次いで、皮膚由来の細胞を、STRO-1、CD146および3G5に対して反応性の抗体と共にインキュベートし、ヤギ抗マウスIgMまたはIgG-フィコエリスリンのいずれかを使用して同定した。次いで、細胞集団を、各マーカーに対する陽性さ(領域R3)または陰性さ(領域R2)に基づいてFACSによって選択し、次いで通常の増殖培地(ShiおよびGronthos 2003)中にプレートして、各細胞画分中の接着性のコロニー形成細胞の発生率を評価した(図13)。12日間の培養後、コロニー(50個以上の細胞の凝集物)をスコアリングし、各細胞画分についてプレートした105個の細胞当たりのコロニー数として示した。このデータにより、MPCが、STRO-1/3G5/CD146抗原の発現に基づいて皮膚からも誘導できることが実証された(図10)。合わせて考えると、これらのデータは、多能性MPCが、共通の表現型に基づいて生後のヒト組織に由来する実質的に全ての脈管新生した組織を同定および単離することが可能であることを示唆する。
【0078】
他に示さない限り、この実施例の材料および方法は実施例1と同じである。
【0079】
図8.異なるヒト組織における脈管周囲のマーカーの反応性。血管ならびに脾臓、膵臓(パネルI)、脳、腎臓(パネルII)、肝臓、心臓(パネルIII)および皮膚(パネルIV)上に存在する結合組織に対する、(A)STRO-1およびCD146、(B)STRO-1およびα-平滑筋アクチン、ならびに(C)3G5およびCD146の反応性を実証する二色免疫蛍光染色(20×)。STRO-1抗体および3G5抗体はヤギ抗マウスIgM-Texas Redを使用して同定したが、CD146およびα-平滑筋アクチンはヤギ抗マウスまたはIgG-フルオレセインイソチオシアネートを使用して同定した。同時局在は、黄色およびオレンジ色の蛍光の重複する領域(白の矢印)によって示される。
【0080】
図9.FACSによる脂肪由来のMPCの単離。以前に記載されたように(ShiおよびGronthos 2003)、コラゲナーゼ/ディスパーゼ消化後に生成された末梢脂肪由来の単細胞懸濁物の新たな調製物中のSTRO-1、CD146および3G5の発現を示す代表的なフローサイトメトリーヒストグラム。これらの抗体は、ヤギ抗マウスIgMまたはIgG-フィコエリスリンのいずれかを使用して同定した。次いで、細胞集団を、各マーカーに対する陽性さ(領域R3)または陰性さ(領域R2)に基づいてFACSによって選択し、次いで通常の増殖培地中にプレートして、各細胞画分中の接着性のコロニー形成細胞の発生率を評価した。
【0081】
図10.クローン原性の脂肪由来のMPCはSTRO-1/3G5/CD146陽性である。棒グラフは、STRO-1、CD146および3G5を認識する抗体に対する反応性に基づいて、蛍光活性化細胞分類後の酵素的に消化されたヒト末梢脂肪組織の単細胞懸濁物から回収され(図9)、次いで骨髄組織および歯髄組織について以前に記載されたように標準的な増殖培地中で培養した(ShiおよびGronthos 2003)、クローン原性コロニーの数を示す。これらのデータは、2つの別個の実験から平均した、陽性および陰性の細胞画分中のプレートした105個の細胞当たりの得られたコロニー形成単位の数として表す。
【0082】
図11.脂肪由来MPCの免疫表現型分析。コラゲナーゼ/ディスパーゼ消化後に生成された末梢脂肪由来の単細胞懸濁物の新たな調製物中のSTRO-1およびCD146(A)ならびに3G5およびCD146の同時発現を示す代表的なフローサイトメトリーヒストグラム。STRO-1抗体および3G5抗体はヤギ抗マウスIgM-フィコエリスリンを使用して同定したが、CD146はヤギ抗マウスIgG-フルオレセインイソチオシアネートを使用して同定した。約60%および50%のCD146陽性細胞が、それぞれSTRO-1および3G5を同時発現する。これらのデータは、10%以上のCD146陽性細胞がSTRO-1および3G5を同時発現することを示唆している。
【0083】
図12.精製された脂肪細胞由来のMPCのin vitroでの発生能。STRO-1+/CD146+の脂肪細胞に由来する初代MPC培養物の調製物を、Gronthosら、2003によって以前に記載されたように、標準培養条件(A)、骨形成誘導性培地(B)、脂肪生成誘導性培地(C)または軟骨形成条件(D)のいずれかにおいて再培養した。複数の分化誘導の2週間後、脂肪細胞由来のMPCは、骨(B;アリザリン陽性のミネラル沈着)、脂肪(C;Oil Red O陽性の脂質)および軟骨(D:II型コラーゲンマトリックス)を形成する能力を実証した。
【0084】
図13.FACSによる皮膚由来のMPCの単離。コラゲナーゼ/ディスパーゼ消化後に生成された全厚皮膚由来の単細胞懸濁物の新たな調製物中のSTRO-1、CD146および3G5の発現を示す代表的なフローサイトメトリーヒストグラム。これらの抗体は、ヤギ抗マウスIgMまたはIgG-フィコエリスリンのいずれかを使用して同定した。次いで、細胞集団を、各マーカーに対する陽性さ(領域R3)または陰性さ(領域R2)に基づいてFACSによって選択し、次いで通常の増殖培地中にプレートして、各細胞画分中の接着性のコロニー形成細胞の発生率を評価した。
【0085】
図14.クローン原性の皮膚由来のMPCは、STRO-1bri/3G5/CD146陽性である。棒グラフは、STRO-1、CD146および3G5を認識する抗体に対する反応性に基づいて、蛍光活性化細胞分類後の酵素的に消化されたヒト皮膚の単細胞懸濁物から回収され、次いで骨髄組織および歯髄組織について以前に記載されたように標準的な増殖培地中で培養した(ShiおよびGronthos 2003)、接着性コロニーの数を示す。これらのデータは、2つの別個の実験から平均した、陽性および陰性の細胞画分中のプレートした105個の細胞当たりの得られたコロニー形成単位の数として表す。
【0086】
〔実施例4〕
[ex vivoで増殖させたヒト骨髄間葉系前駆細胞の免疫表現型分析]
本発明者らは、多能性間葉系前駆細胞(MPC)が、表現型STRO-1bright/VCAM-1(CD106)+またはSTRO-1bright/MUC-18(CD146)+に基づいて、成人ヒト骨髄単核細胞から精製できることを以前に報告している(Gronthosら、2003;ShiおよびGronthos 2003)。このMPC集団は、既定された培養条件下でin vitroで容易に増殖させることが可能である(Gronthosら、2003)。本発明者らはここで、逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)およびフローサイトメトリー分析をそれぞれ使用して、mRNAレベルおよびタンパク質レベルの両方で、異なる細胞系統と関連するマーカーに基づいてex vivoで増殖させたMPCの子孫を特徴付けるデータを提示する。
【0087】
第1シリーズの実験において、半定量的RT-PCR分析を使用して、培養されたMPC集団中に存在する種々の系統関連遺伝子の遺伝子発現プロフィールを試験した(図15)。各細胞マーカーについての相対的な遺伝子発現を、ImageQuantソフトウェアを使用して、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDHの発現を参照して評価した(図15B)。さらに、単色フローサイトメトリー分析を使用して、細胞系統関連マーカーの発現に基づいて、ex vivoで増殖させたMPCのタンパク質発現プロフィールを試験した(図15A)。培養されたMPCの遺伝子発現およびタンパク質発現に基づく一般的な表現型の概要を表1中に示す。本明細書中に記載されるMPCの遺伝子発現プロフィールの直接的な比較により、この細胞集団と、Pittengerら、1999によって以前に記載された間葉系幹細胞(MSC)との間の明確な差異が実証された(表1)。
【0088】
他に示さない限り、この実施例の材料および方法は実施例1と同じである。
【0089】
図15A.ex vivoで増殖させた骨髄MPCの免疫表現型発現パターン。ex vivoで増殖させた骨髄MPCの単細胞懸濁物を、トリプシン/EDTA処理で調製し、次いで細胞系統関連マーカーを同定する抗体と共にインキュベートした。細胞内抗原を同定する抗体について、細胞内マーカーについて染色する前に細胞調製物を冷70%エタノールで固定して、細胞膜を透過性にした。アイソタイプが一致した対照抗体を同一条件下で処理した。フローサイトメトリー分析を、COULTER EPICS装置を使用して実施した。ドットブロットは、5,000リストモードの事象を示し、これは、アイソタイプが一致した陰性対照抗体(細い線)を参照した各系統の細胞マーカーについての蛍光強度(太い線)のレベルを示す。
【0090】
図15B.培養したMPCの遺伝子発現プロフィール。ex vivoで増殖させた骨髄MPCの単細胞懸濁物を、トリプシン/EDTA処理で調製し、総細胞RNAを調製した。RNAzolB抽出法を使用して総RNAを単離し、標準手順を使用して調製されるcDNA合成のためのテンプレートとして使用した。種々の転写物の発現を、以前に記載されたような標準プロトコル(Gronthosら、2003)を使用して、PCR増幅によって評価した。この研究において使用したプライマーセットを表2中に示す。増幅後、各反応混合物を1.5%アガロースゲル電気泳動によって分析し、エチジウムブロマイド染色によって可視化した。各細胞マーカーについての相対的遺伝子発現を、ImageQuantソフトウェアを使用して、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDHの発現を参照して評価した。
【0091】
図16.ex vivoで増殖させたSTRO-1bri MPCは、in vitroで細動脈へと発生し得る。ex vivoで増殖させたSTRO-1briおよびSTRO-1dullの骨髄MPCの単細胞懸濁物を、トリプシン/EDTA処理によって調製し、次いで200μlのマトリゲルを含む48ウェルのプレート中にプレートした。STRO-1dull(A)およびSTRO-1bri(B)のMPCを、増殖因子PDGF、EGF、VEGFを10ng/mlで補充した無血清培地(Gronthosら、2003)中で、1ウェル当たり20,000細胞でプレートした。5% CO2中での37℃で24時間の培養後、これらのウェルを洗浄し、次いで4%のパラホルムアルデヒドで固定した。免疫組織科学研究を引き続き実施して、索様構造が、ヤギ抗マウスIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ抗体を用いて同定されたα-平滑筋アクチンを発現したことを実証した。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
(参考文献)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多能および/または多能であり、表面マーカー3G5陽性である、単離した哺乳動物細胞。
【請求項2】
前記細胞が、中胚葉起源の少なくとも3種の分化した細胞型ならびに外胚葉起源および内胚葉起源の少なくとも1種の他の分化した細胞型を形成するように分化する能力を有する、請求項1に記載の単離した細胞。
【請求項3】
前記細胞が間葉系前駆細胞(MPC)である、請求項1に記載の単離した細胞。
【請求項4】
前記細胞がマーカーMUC18/CD146を同時発現する、請求項3に記載の単離したMPC。
【請求項5】
前記細胞がマーカーα平滑筋アクチンを同時発現する、請求項3に記載の単離したMPC。
【請求項6】
前記細胞がマーカーSTRO-1briを同時発現する、請求項3に記載の単離したMPC。
【請求項7】
前記細胞が、THY-1、VCAM-1、ICAM-1、PECAM-1、CD49a/CD49b/CD29、CD49c/CD29、CD49d/CD29、CD29、CD61、インテグリンβ5、6〜19、トロンボモジュリン、CD10、CD13、SCF、STRO-1bri、PDGF-R、EGF-R、IGF1-R、NGF-R、FGF-R、レプチン-R(STRO-2)を含む群から選択されるがこれらに限定されないマーカーを同時発現する、請求項3に記載の単離したMPC。
【請求項8】
前記細胞がマーカーSTRO-1bri、MUC18/CD146およびα平滑筋アクチンを同時発現する、請求項3に記載の単離したMPC。
【請求項9】
前記細胞が造血マーカーCD45、CD34およびグリコホリン-A陰性である、請求項3に記載の単離したMPC。
【請求項10】
前記細胞が、脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靭帯、骨髄、腱および骨格筋を含むがこれらに限定されない群の組織から単離される、請求項1または3に記載の単離した細胞。
【請求項11】
クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能であり、脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靭帯、骨髄、腱および骨格筋を含むがこれらに限定されない群の組織から単離され、表面マーカーSTRO-1bri陽性である、間葉系前駆細胞(MPC)。
【請求項12】
前記MPCがマーカーMUC18/CD146またはα平滑筋アクチンを同時発現する、請求項11に記載の単離した細胞。
【請求項13】
前記MPCが、THY-1、VCAM-1、ICAM-1、PECAM-1、CD49a/CD49b/CD29、CD49c/CD29、CD49d/CD29、CD29、CD61、インテグリンβ5、6〜19、トロンボモジュリン、CD10、CD13、SCF、STRO-1bri、PDGF-R、EGF-R、IGF1-R、NGF-R、FGF-R、レプチン-R(STRO-2)を含む群から選択されるがこれらに限定されないマーカーを同時発現する、請求項11に記載の単離した細胞。
【請求項14】
前記細胞が造血マーカーCD45、CD34およびグリコホリン-A陰性である、請求項11に記載の単離したMPC。
【請求項15】
前記細胞が哺乳動物から単離される、請求項1、3または11に記載の単離した細胞。
【請求項16】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1、3または11に記載の単離した細胞。
【請求項17】
前記細胞が、少なくとも骨芽細胞、象牙芽細胞、象牙質産生、軟骨細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、髄間質、破骨細胞支持間質および造血支持間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、脈管、上皮、神経膠、ニューロン、星状膠細胞または稀突起神経膠細胞の細胞型のうち1種または複数を含む細胞を形成するように分化するよう誘導される能力を有する、請求項1、3または11に記載の単離した細胞。
【請求項18】
少なくとも骨芽細胞、象牙芽細胞、象牙質産生、軟骨細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、髄間質、破骨細胞支持間質および造血支持間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、脈管、上皮、神経膠、ニューロン、星状膠細胞または稀突起神経膠細胞の細胞である、請求項1、3または11に記載の単離した細胞から得られた、分化した子孫細胞。
【請求項19】
請求項3または11に記載の間葉系前駆細胞(MPC)を富化した、増殖していない細胞集団。
【請求項20】
クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能である間葉系前駆細胞(MPC)を富化した増殖していない細胞集団であって、前記MPCが、表面マーカーMUC18/CD146およびα平滑筋アクチンを同時発現する、富化した細胞集団。
【請求項21】
前記MPCがさらにマーカーSTRO-1bri陽性である、請求項20に記載の富化した集団。
【請求項22】
前記MPCがさらにマーカー3G5陽性である、請求項20に記載の富化した集団。
【請求項23】
前記MPCがMUC18/CD146、α平滑筋アクチン、STRO-1briおよび3G5を同時発現する、請求項20に記載の富化した集団。
【請求項24】
前記MPCが造血マーカーCD34、CD45およびグリコホリン-A陰性である、請求項19または20に記載の富化した集団。
【請求項25】
クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能であるMPCを少なくとも0.01%含む、請求項19または20に記載の富化した集団。
【請求項26】
クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能であるMPCを少なくとも0.1%含む、請求項19または20に記載の富化した集団。
【請求項27】
クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能であるMPCを少なくとも1%含む、請求項19または20に記載の富化した集団。
【請求項28】
少なくとも0.01%のSTRO-1briのMPCを含む、請求項19または20に記載の富化した集団。
【請求項29】
少なくとも0.1%のSTRO-1briのMPCを含む、請求項19または20に記載の富化した集団。
【請求項30】
少なくとも1%のSTRO-1briのMPCを含む、請求項19または20に記載の富化した集団。
【請求項31】
少なくとも骨芽細胞、象牙芽細胞、象牙質産生、軟骨細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、髄間質、破骨細胞支持間質および造血支持間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、脈管、上皮、神経膠、ニューロン、星状膠細胞または稀突起神経膠細胞の細胞型のうち1種または複数を含む細胞を形成するように分化するよう誘導される能力を有する、請求項19、20、21、22または23に記載の富化した集団。
【請求項32】
脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靭帯、骨髄、腱および骨格筋を含むがこれらに限定されない群の組織から富化される、請求項19、20、21、22または23に記載の富化した集団。
【請求項33】
少なくとも骨芽細胞、象牙芽細胞、象牙質産生、軟骨細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、髄間質、破骨細胞支持間質および造血支持間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、脈管、上皮、神経膠、ニューロン、星状膠細胞または稀突起神経膠細胞の細胞である、請求項19、20、21、22または23に記載の富化した集団から得られた、分化した子孫細胞。
【請求項34】
前記富化した集団が増殖している、請求項19、20、21、22または23に記載の富化した集団。
【請求項35】
マーカーSTRO-1、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を高レベルで発現する細胞を少なくとも0.1%含む、請求項34に記載の増殖された集団。
【請求項36】
マーカーSTRO-1bri、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を高レベルで発現する細胞を少なくとも1%含む、請求項34に記載の増殖された集団。
【請求項37】
マーカーSTRO-1bri、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を高レベルで発現するMPCを少なくとも2%含む、請求項34に記載の増殖された集団。
【請求項38】
マーカーSTRO-1bri、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を高レベルで発現する細胞を少なくとも5%含む、請求項34に記載の増殖された集団。
【請求項39】
マーカーSTRO-1bri、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を高レベルで発現する細胞を少なくとも10%含む、請求項34に記載の増殖された集団。
【請求項40】
間葉系前駆細胞(MPC)を富化する方法であって、脈管新生した供給源組織から単細胞懸濁物を調製するステップおよび前記脈管新生した供給源組織において脈管周囲の細胞によって発現されるマーカーの存在に基づいて富化するステップを含む、方法。
【請求項41】
前記脈管新生した供給源が、脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靭帯、骨髄、腱および骨格筋を含むがこれらに限定されない群中に存在する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記富化するステップがマーカー3G5の存在に基づく、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記富化するステップがマーカーMUC18/CD146の存在に基づく、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記富化するステップがマーカーSTRO-1briの存在に基づく、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記富化するステップが、1種または複数のマーカーのさらなる存在に基づく、請求項42、43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記富化するステップが、THY-1、VCAM-1、ICAM-1、PECAM-1、CD49a/CD49b/CD29、CD49c/CD29、CD49d/CD29、CD29、CD61、インテグリンβ5、6〜19、トロンボモジュリン、CD10、CD13、SCF、STRO-1bri、PDGF-R、EGF-R、IGF1-R、NGF-R、FGF-R、レプチン-R(STRO-2)を含むがこれらに限定されない群から選択される1種または複数のマーカーのさらなる存在に基づく、請求項42、43または44に記載の方法。
【請求項47】
前記MPCがマーカー3G5、STRO-1bri、MUC18/CD146およびα平滑筋アクチンを同時発現する、請求項40に記載のMPCを富化する方法。
【請求項48】
前記富化するステップが、特化または造血系統分化を示す表面マーカーのさらなる非存在に基づく、請求項42、43または44に記載の方法。
【請求項49】
前記細胞が造血マーカーCD34もCD45もグリコホリン-Aも発現しない、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記富化したMPCが、少なくとも骨芽細胞、象牙芽細胞、象牙質産生、軟骨細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、髄間質、破骨細胞支持間質および造血支持間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、脈管、上皮、神経膠、ニューロン、星状膠細胞または稀突起神経膠細胞の細胞型のうち1種または複数を含む細胞へと分化することが可能である、請求項40に記載の方法。
【請求項51】
MPCの富化のための前記供給源組織が、脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靭帯、骨髄、腱および骨格筋を含むがこれらに限定されない群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項52】
MPCの富化のための前記供給源組織が哺乳動物である、請求項40に記載の方法。
【請求項53】
MPCの富化のための前記供給源組織がヒトである、請求項40に記載の方法。
【請求項54】
前記富化した集団が、クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能であるMPCを少なくとも0.01%含む、請求項40に記載の方法。
【請求項55】
前記富化した集団が、クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能であるMPCを少なくとも0.1%含む、請求項40に記載の方法。
【請求項56】
前記富化した集団が、クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能であるMPCを少なくとも1%含む、請求項40に記載の方法。
【請求項57】
前記富化するステップがマーカー3G5の存在に基づき、富化後に前記集団を増殖するステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項58】
前記富化するステップがマーカーMUC18/CD146の存在に基づき、富化後に前記集団を増殖させるステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項59】
前記富化するステップがマーカーSTRO-1の存在に基づき、富化後に前記集団を増殖するステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項60】
前記増殖された集団が、マーカーSTRO-1bri、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を発現する細胞を少なくとも0.1%含む、請求項57、58または59に記載の方法。
【請求項61】
前記増殖された集団が、マーカーSTRO-1bri、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を発現する細胞を少なくとも1%含む、請求項57、58または59に記載の方法。
【請求項62】
前記増殖された集団が、マーカーSTRO-1bri、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を発現する細胞を少なくとも2%含む、請求項57、58または59に記載の方法。
【請求項63】
前記増殖された集団が、マーカーSTRO-1bri、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を高レベルで発現する細胞を少なくとも5%含む、請求項57、58または59に記載の方法。
【請求項64】
前記増殖された集団が、マーカーSTRO-1bri、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を高レベルで発現する細胞を少なくとも10%含む、請求項57、58または59に記載の方法。
【請求項65】
前記増殖された集団が、少なくとも骨芽細胞、象牙芽細胞、象牙質産生、軟骨細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、髄間質、破骨細胞支持間質および造血支持間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、脈管、上皮、神経膠、ニューロン、星状膠細胞または稀突起神経膠細胞の細胞型のうち1種または複数の細胞を含む、請求項57、58または59に記載の方法。
【請求項66】
増殖因子を補充した培地中で前記細胞を培養することによる、請求項34に記載のMPCを増殖する方法。
【請求項67】
前記増殖因子が、PDGF、EGF、FGF、IGF、VEGFおよびLIFを含むがこれらに限定されない群から選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項1】
多能および/または多能であり、表面マーカー3G5陽性である、単離した哺乳動物細胞。
【請求項2】
前記細胞が、中胚葉起源の少なくとも3種の分化した細胞型ならびに外胚葉起源および内胚葉起源の少なくとも1種の他の分化した細胞型を形成するように分化する能力を有する、請求項1に記載の単離した細胞。
【請求項3】
前記細胞が間葉系前駆細胞(MPC)である、請求項1に記載の単離した細胞。
【請求項4】
前記細胞がマーカーMUC18/CD146を同時発現する、請求項3に記載の単離したMPC。
【請求項5】
前記細胞がマーカーα平滑筋アクチンを同時発現する、請求項3に記載の単離したMPC。
【請求項6】
前記細胞がマーカーSTRO-1briを同時発現する、請求項3に記載の単離したMPC。
【請求項7】
前記細胞が、THY-1、VCAM-1、ICAM-1、PECAM-1、CD49a/CD49b/CD29、CD49c/CD29、CD49d/CD29、CD29、CD61、インテグリンβ5、6〜19、トロンボモジュリン、CD10、CD13、SCF、STRO-1bri、PDGF-R、EGF-R、IGF1-R、NGF-R、FGF-R、レプチン-R(STRO-2)を含む群から選択されるがこれらに限定されないマーカーを同時発現する、請求項3に記載の単離したMPC。
【請求項8】
前記細胞がマーカーSTRO-1bri、MUC18/CD146およびα平滑筋アクチンを同時発現する、請求項3に記載の単離したMPC。
【請求項9】
前記細胞が造血マーカーCD45、CD34およびグリコホリン-A陰性である、請求項3に記載の単離したMPC。
【請求項10】
前記細胞が、脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靭帯、骨髄、腱および骨格筋を含むがこれらに限定されない群の組織から単離される、請求項1または3に記載の単離した細胞。
【請求項11】
クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能であり、脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靭帯、骨髄、腱および骨格筋を含むがこれらに限定されない群の組織から単離され、表面マーカーSTRO-1bri陽性である、間葉系前駆細胞(MPC)。
【請求項12】
前記MPCがマーカーMUC18/CD146またはα平滑筋アクチンを同時発現する、請求項11に記載の単離した細胞。
【請求項13】
前記MPCが、THY-1、VCAM-1、ICAM-1、PECAM-1、CD49a/CD49b/CD29、CD49c/CD29、CD49d/CD29、CD29、CD61、インテグリンβ5、6〜19、トロンボモジュリン、CD10、CD13、SCF、STRO-1bri、PDGF-R、EGF-R、IGF1-R、NGF-R、FGF-R、レプチン-R(STRO-2)を含む群から選択されるがこれらに限定されないマーカーを同時発現する、請求項11に記載の単離した細胞。
【請求項14】
前記細胞が造血マーカーCD45、CD34およびグリコホリン-A陰性である、請求項11に記載の単離したMPC。
【請求項15】
前記細胞が哺乳動物から単離される、請求項1、3または11に記載の単離した細胞。
【請求項16】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1、3または11に記載の単離した細胞。
【請求項17】
前記細胞が、少なくとも骨芽細胞、象牙芽細胞、象牙質産生、軟骨細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、髄間質、破骨細胞支持間質および造血支持間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、脈管、上皮、神経膠、ニューロン、星状膠細胞または稀突起神経膠細胞の細胞型のうち1種または複数を含む細胞を形成するように分化するよう誘導される能力を有する、請求項1、3または11に記載の単離した細胞。
【請求項18】
少なくとも骨芽細胞、象牙芽細胞、象牙質産生、軟骨細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、髄間質、破骨細胞支持間質および造血支持間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、脈管、上皮、神経膠、ニューロン、星状膠細胞または稀突起神経膠細胞の細胞である、請求項1、3または11に記載の単離した細胞から得られた、分化した子孫細胞。
【請求項19】
請求項3または11に記載の間葉系前駆細胞(MPC)を富化した、増殖していない細胞集団。
【請求項20】
クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能である間葉系前駆細胞(MPC)を富化した増殖していない細胞集団であって、前記MPCが、表面マーカーMUC18/CD146およびα平滑筋アクチンを同時発現する、富化した細胞集団。
【請求項21】
前記MPCがさらにマーカーSTRO-1bri陽性である、請求項20に記載の富化した集団。
【請求項22】
前記MPCがさらにマーカー3G5陽性である、請求項20に記載の富化した集団。
【請求項23】
前記MPCがMUC18/CD146、α平滑筋アクチン、STRO-1briおよび3G5を同時発現する、請求項20に記載の富化した集団。
【請求項24】
前記MPCが造血マーカーCD34、CD45およびグリコホリン-A陰性である、請求項19または20に記載の富化した集団。
【請求項25】
クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能であるMPCを少なくとも0.01%含む、請求項19または20に記載の富化した集団。
【請求項26】
クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能であるMPCを少なくとも0.1%含む、請求項19または20に記載の富化した集団。
【請求項27】
クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能であるMPCを少なくとも1%含む、請求項19または20に記載の富化した集団。
【請求項28】
少なくとも0.01%のSTRO-1briのMPCを含む、請求項19または20に記載の富化した集団。
【請求項29】
少なくとも0.1%のSTRO-1briのMPCを含む、請求項19または20に記載の富化した集団。
【請求項30】
少なくとも1%のSTRO-1briのMPCを含む、請求項19または20に記載の富化した集団。
【請求項31】
少なくとも骨芽細胞、象牙芽細胞、象牙質産生、軟骨細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、髄間質、破骨細胞支持間質および造血支持間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、脈管、上皮、神経膠、ニューロン、星状膠細胞または稀突起神経膠細胞の細胞型のうち1種または複数を含む細胞を形成するように分化するよう誘導される能力を有する、請求項19、20、21、22または23に記載の富化した集団。
【請求項32】
脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靭帯、骨髄、腱および骨格筋を含むがこれらに限定されない群の組織から富化される、請求項19、20、21、22または23に記載の富化した集団。
【請求項33】
少なくとも骨芽細胞、象牙芽細胞、象牙質産生、軟骨細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、髄間質、破骨細胞支持間質および造血支持間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、脈管、上皮、神経膠、ニューロン、星状膠細胞または稀突起神経膠細胞の細胞である、請求項19、20、21、22または23に記載の富化した集団から得られた、分化した子孫細胞。
【請求項34】
前記富化した集団が増殖している、請求項19、20、21、22または23に記載の富化した集団。
【請求項35】
マーカーSTRO-1、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を高レベルで発現する細胞を少なくとも0.1%含む、請求項34に記載の増殖された集団。
【請求項36】
マーカーSTRO-1bri、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を高レベルで発現する細胞を少なくとも1%含む、請求項34に記載の増殖された集団。
【請求項37】
マーカーSTRO-1bri、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を高レベルで発現するMPCを少なくとも2%含む、請求項34に記載の増殖された集団。
【請求項38】
マーカーSTRO-1bri、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を高レベルで発現する細胞を少なくとも5%含む、請求項34に記載の増殖された集団。
【請求項39】
マーカーSTRO-1bri、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を高レベルで発現する細胞を少なくとも10%含む、請求項34に記載の増殖された集団。
【請求項40】
間葉系前駆細胞(MPC)を富化する方法であって、脈管新生した供給源組織から単細胞懸濁物を調製するステップおよび前記脈管新生した供給源組織において脈管周囲の細胞によって発現されるマーカーの存在に基づいて富化するステップを含む、方法。
【請求項41】
前記脈管新生した供給源が、脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靭帯、骨髄、腱および骨格筋を含むがこれらに限定されない群中に存在する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記富化するステップがマーカー3G5の存在に基づく、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記富化するステップがマーカーMUC18/CD146の存在に基づく、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記富化するステップがマーカーSTRO-1briの存在に基づく、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記富化するステップが、1種または複数のマーカーのさらなる存在に基づく、請求項42、43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記富化するステップが、THY-1、VCAM-1、ICAM-1、PECAM-1、CD49a/CD49b/CD29、CD49c/CD29、CD49d/CD29、CD29、CD61、インテグリンβ5、6〜19、トロンボモジュリン、CD10、CD13、SCF、STRO-1bri、PDGF-R、EGF-R、IGF1-R、NGF-R、FGF-R、レプチン-R(STRO-2)を含むがこれらに限定されない群から選択される1種または複数のマーカーのさらなる存在に基づく、請求項42、43または44に記載の方法。
【請求項47】
前記MPCがマーカー3G5、STRO-1bri、MUC18/CD146およびα平滑筋アクチンを同時発現する、請求項40に記載のMPCを富化する方法。
【請求項48】
前記富化するステップが、特化または造血系統分化を示す表面マーカーのさらなる非存在に基づく、請求項42、43または44に記載の方法。
【請求項49】
前記細胞が造血マーカーCD34もCD45もグリコホリン-Aも発現しない、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記富化したMPCが、少なくとも骨芽細胞、象牙芽細胞、象牙質産生、軟骨細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、髄間質、破骨細胞支持間質および造血支持間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、脈管、上皮、神経膠、ニューロン、星状膠細胞または稀突起神経膠細胞の細胞型のうち1種または複数を含む細胞へと分化することが可能である、請求項40に記載の方法。
【請求項51】
MPCの富化のための前記供給源組織が、脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靭帯、骨髄、腱および骨格筋を含むがこれらに限定されない群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項52】
MPCの富化のための前記供給源組織が哺乳動物である、請求項40に記載の方法。
【請求項53】
MPCの富化のための前記供給源組織がヒトである、請求項40に記載の方法。
【請求項54】
前記富化した集団が、クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能であるMPCを少なくとも0.01%含む、請求項40に記載の方法。
【請求項55】
前記富化した集団が、クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能であるMPCを少なくとも0.1%含む、請求項40に記載の方法。
【請求項56】
前記富化した集団が、クローン原性コロニーを形成することが可能であり、3種以上の間葉系組織型へと分化することが可能であるMPCを少なくとも1%含む、請求項40に記載の方法。
【請求項57】
前記富化するステップがマーカー3G5の存在に基づき、富化後に前記集団を増殖するステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項58】
前記富化するステップがマーカーMUC18/CD146の存在に基づき、富化後に前記集団を増殖させるステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項59】
前記富化するステップがマーカーSTRO-1の存在に基づき、富化後に前記集団を増殖するステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項60】
前記増殖された集団が、マーカーSTRO-1bri、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を発現する細胞を少なくとも0.1%含む、請求項57、58または59に記載の方法。
【請求項61】
前記増殖された集団が、マーカーSTRO-1bri、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を発現する細胞を少なくとも1%含む、請求項57、58または59に記載の方法。
【請求項62】
前記増殖された集団が、マーカーSTRO-1bri、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を発現する細胞を少なくとも2%含む、請求項57、58または59に記載の方法。
【請求項63】
前記増殖された集団が、マーカーSTRO-1bri、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を高レベルで発現する細胞を少なくとも5%含む、請求項57、58または59に記載の方法。
【請求項64】
前記増殖された集団が、マーカーSTRO-1bri、3G5またはMUC18/CD146のうち1種または複数を高レベルで発現する細胞を少なくとも10%含む、請求項57、58または59に記載の方法。
【請求項65】
前記増殖された集団が、少なくとも骨芽細胞、象牙芽細胞、象牙質産生、軟骨細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、髄間質、破骨細胞支持間質および造血支持間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、脈管、上皮、神経膠、ニューロン、星状膠細胞または稀突起神経膠細胞の細胞型のうち1種または複数の細胞を含む、請求項57、58または59に記載の方法。
【請求項66】
増殖因子を補充した培地中で前記細胞を培養することによる、請求項34に記載のMPCを増殖する方法。
【請求項67】
前記増殖因子が、PDGF、EGF、FGF、IGF、VEGFおよびLIFを含むがこれらに限定されない群から選択される、請求項66に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−72315(P2011−72315A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274732(P2010−274732)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【分割の表示】特願2006−503989(P2006−503989)の分割
【原出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【出願人】(505362089)アンジオブラスト・システムズ・インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【分割の表示】特願2006−503989(P2006−503989)の分割
【原出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【出願人】(505362089)アンジオブラスト・システムズ・インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】
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