説明

脱墨パルプの製造方法

【課題】脱墨性の悪い特殊な一部の中性新聞を含む印刷古紙から製造される脱墨パルプのダートを大幅に減少させて高品質な脱墨古紙パルプを製造する。
【解決手段】印刷古紙を離解する離解工程、除塵するスクリーニング工程、脱墨処理するフローテーション工程、漂白及びソーキング処理をする漂白工程、分散処理するニーディング工程、洗浄処理する洗浄工程の組み合わせからなる高白色度脱墨パルプ製造設備から構成される古紙のパルプ化工程において、前記ニーディング工程が三段からなり、少なくとも一段以上がディスクタイプの分散機で95℃〜130℃の高温処理であり、三段のニーディング処理後にフローテーションによる脱墨処理を行なう印刷古紙からなるダートの少ない脱墨パルプの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
印刷古紙からなる古紙パルプのチリ低減方法に関し、さらに詳しくは新聞古紙を主体とする印刷古紙を脱墨再生する際に、ダートを効率よく低減させ、脱墨パルプの品質を向上させることを目的とする。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷古紙を脱墨再生させるには、離解・除塵・漂白・分散・脱墨・洗浄の工程の組み合わせからなる方法で製造を行ってきた。また、特に脱墨パルプのダートを低減させるためには、スクリーン、クリーナー等の除塵機を高性能化するか、分散工程でニーディングを強化する事が必要であったが、最近、印刷古紙の中に灰分が多く、表面処理剤により極端に脱墨性の劣る中性新聞が混入するようになり、これまで通常に行われていた脱墨パルプフローではインクを主体とするダートを十分に除去する事が困難となってきた。
【0003】
一方、ダートを極力低減させ、BKPと同等もしくはそれに準ずる品質を有するDIPが望まれてきたが、これまで、新聞古紙や雑誌古紙をはじめとする印刷古紙からこれに該当する古紙パルプを製造することは極めて困難であった。
【0004】
従来のダートを低減させる技術には、マイカープロセッサーをはじめとする、一軸のローター集面に送り刃と戻り刃が配置され、かつステーターの刃と各刃間に十分な間隙を有したミキサーを用いることを特徴とするもの(例えば、特許文献1)、パルプ濃度20〜35%にして酸化型漂白剤を添加した後、機械的に攪拌して酸化漂白するとともに、漂白した後の繊維懸濁液をパルプ濃度10〜30%にして、還元漂白剤を添加した後、機械的に攪拌して還元漂白しているもの(例えば、特許文献2参照)があるが、三段以上のディスパーザーが必要であると同時に一段以上は高温のディスクタイプのディスパーザーで処理しなければ、十分なダートの減少効果は望めない。
【0005】
また、インキ剥離工程において、二酸化チオ尿素を添加し、ニーダーの如く100〜1000rpm、処理時間1〜30分であるような混練機を用いて処理後、ただちにパルプを希釈する技術が公開されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、ダート減少を狙ったものではないため、ディスクタイプは適さないと明記されている。
【特許文献1】特開平4−050391号公報
【特許文献2】特開2005−281914号公報
【特許文献3】特開2002−69877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記のような問題を解消させ、脱墨性の悪い一部の中性新聞を含む印刷古紙から製造される脱墨パルプのダートを大幅に低減させて、高品質の脱墨古紙パルプを製造させることができる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)印刷古紙を離解する離解工程、除塵するスクリーニング工程、脱墨処理するフローテーション工程、漂白及びソーキング処理をする漂白工程、分散処理するニーディング工程、洗浄処理する洗浄工程の組み合わせからなる高白色度脱墨パルプ製造設備から構成される古紙のパルプ化工程において、前記ニーディング工程が三段からなり、少なくとも一段以上がディスクタイプの分散機で95℃〜130℃の高温処理であり、三段のニーディング処理後にフローテーションによる脱墨処理を行なう事を特徴とする印刷古紙からなるダートの少ない脱墨パルプの製造方法である。
【0008】
(2)前記(1)記載の方法で製造された0.05〜5.0mmのダート個数が5〜200個/100gである古紙パルプである。
【0009】
(3)前記(2)記載の古紙パルプを10〜100%配合した紙である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、原料古紙の品質によらず、脱墨パルプのチリが低減し、品質が向上することにより、紙製品へ、クラフトパルプ、メカニカルパルプ等より安価な脱墨パルプを高配合する事が可能となり、古紙の利用範囲が広がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
原料となる印刷古紙の例としては新聞紙、微塗工紙、高灰分の塗工紙、非塗工紙等、灰分を7%〜35%含む古紙があげられる。本発明は、多量の表面処理剤により脱墨性が悪い一部の中性新聞紙を含む印刷古紙に特に効果的である。
【0012】
本発明での離解工程について特に制限は無いが、好ましい処理として原料印刷古紙を固形分濃度12〜18%になるように稀釈水を入れる、更に薬品(水酸化ナトリウム)を対パルプ0〜3.0質量%、好ましくは0.1〜2.5質量%添加する。脱墨剤を添加する場合には、パルプ繊維への浸透性が強く、インキの剥離性の強いものが好ましく、脱墨剤を対パルプ0.01〜0.5質量%、好ましくは0.03〜0.3質量%加える。離解時間は、10〜30分、好ましくは10〜25分、更に好ましくは10〜18分、離解温度は10〜50℃、好ましくは30〜50℃で離解することが好ましい。
【0013】
インキの剥離性の強い脱墨剤としては、高級アルコール系脱墨剤があり、例えば、花王(株)社製のDI−7020、DI−7030、DI−767、DI−7282、日新化学研究所(株)社製のDIA−Z−100、DIA−Z−5000、東邦化学(株)社製のネオスコアFW−780、ネオスコアFW−790、ネオスコアFW−795、FT−467、FT−470、FT−487、FT−511、FT−513、FT−514、FT−515、B−B剤、第一工業製薬(株)社製ダイホープ940、ダイホープ960、日華(株)社製リポブライトDP−810等があるがこの限りではない。
【0014】
本発明では、除塵工程としては特に制限は無い。スクリーン・クリーナーで原料中の異物を取り除くことが可能であればよいが、スリットスクリーン(1段目0.15mmスリット以下、2段目0.15mmスリット以下)を使用することが好ましい。クリーナーは重量異物を効率良く取り除くことが可能であればいずれでもよい。
【0015】
また、洗浄工程で使用する洗浄装置としてはエキストラクター、フォールウオッシャー(栄工機製)、ダブルニップシックナー(石川島産業機械製)等があるが、洗浄装置は、原料中の灰分を優先的に除去し、繊維分のロスを最小限に止める洗浄機であることが好ましい。中でもワイヤー洗浄機が好ましく、目穴は、20〜200メッシュ程度までが考えられるが、好ましくは40〜100メッシュが良く、更に好ましくは、50〜80メッシュが適している。
【0016】
古紙再生の漂白薬品としては過酸化水素、ハイドロサルファイド、二酸化チオ尿素、ハイポ等が使用される。本発明では過酸化水素を使用する。また、本発明ではアルカリ過酸化水素漂白を行うが、過酸化水素は対パルプ0.5〜5.0質量%添加する。これ以上添加量を増やしても白色度上昇はサチュレーションする傾向にある。苛性ソーダは、対パルプ1.5〜3.0質量%、珪酸ソーダは、対パルプ1.5〜3.5質量%添加し、漂白時間は10分間〜5時間、好ましくは1.5〜3時間で行う。漂白時間が短すぎると過酸化水素が十分に反応しきらないため好ましくない、また5時間より長くしても逆に過酸化水素の消費が進み、残過酸化水素がなくなった時点からパルプの黄色化が起きるため、適切ではない。漂白パルプ濃度は15〜35%、好ましくは25〜30%、濃度が15%より低くなると過酸化水素の反応性が悪くなる。また、35%より高い濃度にするとディスパーザーでの薬品との混合に斑ができるため、好ましくない。また、漂白時のpHは、10.5〜12.0が好ましく、この範囲を外れると過酸化水素の漂白性が劣る。漂白温度は50〜120℃で行うことが効果的である。
【0017】
また、フローテーション前に脱墨剤がパルプに均一に混合できれば、漂白工程に脱墨剤を添加してもよい。インキ凝集性の強い脱墨剤としては、脂肪酸あるいは、脂肪酸誘導体系の脱墨剤があるが、例えば、脂肪酸の場合、花王(株)社製のDI−254(オレイン酸)、DI−268、第一工業製薬(株)社製のK−4004−D等がある。また、脂肪酸誘導体系の場合、花王(株)社製のDI−1120、DI−1050、日新化学研究所(株)社製のDIY−23543、第一工業製薬(株)社製のペーパーエイドW等があるがこのかぎりではない。
【0018】
本発明で行う3段の分散機処理には低速・高濃度用軸タイプの分散機または、ディスクタイプの分散機が適している。低速・高濃度用軸タイプの分散機としては、一軸型または二軸型のニーダータイプのディスパーザーが好ましい。軸状のローターに取り付けられた回転刃と、ケーシングに取り付けられた固定刃を有し、回転数50〜300rpmの低速で、処理濃度20%〜50%(以下パルプ濃度%は質量%を意味する)の高濃度、好ましくは、25%〜40%、温度は25℃〜100℃、好ましくは40〜90℃で処理する。軸タイプの分散機では、繊維間の摩擦作用が主体となって、インキ剥離・ダートの分散が起こる。処理濃度が20%未満では、機械的負荷がかかりにくく、インキ剥離・ダートの分散性が低下する上、温度上昇に必要なエネルギーが莫大となるため、適さない。また、処理濃度50%を越えて高濃度にすると機械的に搾水するのは困難である。
【0019】
一般的には、一軸型ニーダーとして、ニーディング・ディスパージャーKD(商品名:アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー社製)、ディスパーザー(商品名:相川鉄工社製)、ディスパーザー(商品名:アセック社製)、ディスパーザー(商品名:三栄レギュレーター社製)、CCE型ニーディングマシン(商品名:新浜ポンプ製作所社製)、ニーダー(商品名:山本百馬製作所社製)などが使用され、また、二軸型ニーダーとして、新浜ポンプ製作所社製、山本百馬製作所製のものなどが使用されるが、特定の機種に限定するものではない。しかし、10〜25%の処理濃度で、1200〜1800rpの高速で、空転動力負荷を差し引いた実動力負荷が5〜30kW/t程度で、弱い機械力を与えながら撹拌処理を行う、いわゆるマイカプロセッサーのような高速撹拌装置では高いダート減少効果や高い剥離効果が得られないため本発明では適さない。
【0020】
また、ディスクタイプの分散機とは、ディスク型ディスパーザーまたはコニカル型ディスパーザーであれば特に制限はない。構造的にはディスクリファイナーと似ているが、ディスクプレートの構造が異なっている。また、コニカル型ディスパーザーは回転刃がコニカル状になっている。回転数300rpm〜2500rpm、処理濃度20%以上で処理する。軸タイプの分散機と異なる点は、繊維と刃の衝突作用が主体となってインキ剥離・ダートの分散が起こる点である。一般的には、ディスク型ディスパーザーとして、ディスパージャーHTD(商品名:アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー社製)、KRIMAホットディスパージョン設備(商品名:Cellwood社製)などが使用され、また、コニカル型ディスパーザーとして、コニディスク(商品名:相川鉄工社製)、コニカルディスパージョンシステム/HIプリヒーター/OptiFinerディスパーザー(商品名:メッツォ SHI社製)などが使用されるが、特定の機種に限定するものではない。
【0021】
分散機の組み合わせとして特に好ましいものは、低速・高濃度用軸タイプの分散機で2回、ディスクタイプの分散機で1回、この順に処理を行うことが効率的且つ効果的である。1回目若しくは2回目の分散処理である低速・高濃度用軸タイプの分散機による分散処理は、処理濃度20%〜50%の高濃度、好ましくは、25%〜40%、温度は25℃〜100℃、好ましくは40〜90℃で処理する。軸タイプの分散機では、繊維間の摩擦作用が主体となって、インキ剥離・ダートの分散が起こる。処理濃度が20%未満では、機械的負荷がかかりにくく、インキ剥離・ダートの分散性が低下する上、温度上昇に必要なエネルギーが莫大となるため、適さない。また、処理濃度50%を越えて高濃度にすると機械的に搾水するのは困難である。また、次の過酸化水素漂白工程での漂白効果を高めるため、温度は25℃以上に高める必要があるが、100℃を超えると過酸化水素の分解が生じるため、好ましくない。
【0022】
本発明のディスク型の分散機による分散処理時の温度は、95〜130℃である。95℃未満の処理では、十分なダート減少効果と二酸化チオ尿素の漂白効果が得られず、一方、130℃を超えるとパルプの黄変が生じるため適さない。ディスク型分散機には、過酸化水素、二酸化チオ尿素のほかにアルカリ薬品を添加してもよい。アルカリ薬品としては、水酸化ナトリウムが好ましい。過酸化水素添加量は、絶乾パルプ質量に対して0.05〜3質量%、二酸化チオ尿素の添加量は、絶乾パルプ質量に対して0.1〜2質量%で、特に好ましくは0.2〜1.0質量%である。
【0023】
本発明では三段以上のディスパーザー処理後に続きフローテーション工程を行う。デスパーザー処理により剥離したインクをフローテーター工程で除去することが効率的である。洗浄工程で除去する方法の場合には、洗浄慮液とともに白水内を循環し、パルプの完成白色度に影響を与える恐れがあるので好ましくない。フローテーション工程でのフローテーターの形式に制限はないが、処理濃度は0.7〜1.5%、フローテーター処理温度は10〜55℃、好ましくは30〜50℃で行うことが好ましい。
【0024】
フローテーション工程の後の洗浄工程は、フローテーターで取り除けなかった微細なインキを脱水洗浄する工程であり、洗浄装置に特に制限は無いが、0.6〜1.5%のパルプスラリーを清水または抄紙機のクリア白水で希釈した後、15〜35%まで脱水洗浄することが好ましい。
【0025】
本発明により得られたパルプは、0.05〜5.0mmのダート個数が5〜200個/100gであることが好ましい。ダート個数200個以上では、BKPに比べて見劣りする。また、ダート個数5個/100g以下とするには、莫大な薬品、エネルギーが必要となるため好ましくない。また、本発明は上記パルプを10質量%〜100質量%配合した紙を含む。10%未満の配合率では抄紙時に上記効果が消失してしまうため、好ましくない。本発明で得られたパルプは白色度さえ適度に合わせれば、ダートが少ないため50質量%以上配合することが可能である。
【0026】
本発明により、新聞古紙を主体とした印刷古紙より製造される脱墨パルプのISO白色度は50%〜85%まで幅広く製造できるが、いずれもダートの低減された品質を達成することが可能となる。
【0027】
(実施例)
次に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、実施例は本発明をなんら限定するものではない。本実施例中では、百分率(%)は白色度以外すべて質量%を意味し、また、薬品添加率は、対絶乾パルプあたりの質量%で示した。古紙パルプの品質は、以下に示したダート評価方法によるダート個数で評価した。特にことわりが無い限り原料濃度は灰分込みの固形分濃度、薬品添加率は質量%である。本発明の実施は、完成パルプ60ADT/Dの脱墨パルプ製造設備を使用した。
【0028】
<ダート評価方法>
坪量を100g/mとしたこと、シートプレスを行わなかったこと、風乾しなかったこと以外は全てJIS P 8222に示される試験用手すき紙の調製方法に準じて、手すき紙を30枚作製した。濡れたままの手すき紙30枚中に含まれる0.05〜5.0mmのダートを計測した。計測には透過光を使用し、ダートサイズの見本として、財団法人印刷局朝陽会より購入したJISP8202記載の夾雑物計測図表を参照した。測定結果はパルプ100gあたりの個数に換算し、ダート個数とした。
【0029】
実施例1
新聞紙及びチラシを主体とする古紙(灰分含有量13.5%)の原料をパルパーに仕込み原料濃度15%、水酸化ナトリウム添加率対パルプ0.3%、高級アルコール系脱墨剤(花王社製、DI−7020)添加率対パルプ0.15%、離解時間15分、離解温度35℃で離解した、離解後離解原料を除塵工程にて処理し、1.0%に濃度調整後、フローテーター(王子エンジニアリング(株)製)にて処理した。フローテーター脱墨条件は、フローテーター処理濃度1.1%、フローテーター処理温度37℃で行った。
【0030】
フローテーター後のパルプスラリーは、エキストラクター、ディスクシックナーで洗浄後、スクリュープレスで脱水し、加温ミキサーで75℃まで昇温後、軸タイプの分散機として、相川鉄工社製ディスパーザーで一段目の分散処理(パルプ濃度約27%、電力原単位約40kwh/パルプT)をし、その後漂白を行なった。漂白条件は過酸化水素添加率対パルプ3.5%、水酸化ナトリウム添加率対パルプ2.3%、珪酸ナトリウム添加率対パルプ水酸化ナトリウム換算0.7%、パルプ濃度約26.7%で、漂白時間150分で行った。次いで、温度、濃度を保持したまま、分散機として、相川鉄工社製ディスパーザーで二段目の分散処理(電力原単位約20kwh/パルプT)をし、連続して温度110℃まで昇温後、ディスクタイプの分散機として、Cellwood社製のKRIMAホットディスパーザーを用いて3段目の分散処理を行なった。その後王子エンジニアリング社製のフローテーター処理を行なった。フローテーター脱墨条件は、特殊脂肪酸誘導体(花王社製、DI−1120)添加率0.12%、フローテーター処理濃度1.1%、フローテーター処理温度39℃で行った。ディスクシックナーにて脱水洗浄後、製品パルプのダート数を表1に示す。
【0031】
実施例2
ディスクタイプの分散処理を95℃で行なう以外は、実施例1と同様に処理し、製品パルプを製造した。製品パルプのダート数を表1に示す。
【0032】
実施例3
ディスクタイプの分散処理を125℃で行なう以外は、実施例1と同様に処理し、製品パルプを製造した。製品パルプのダート数を表1に示す。
【0033】
実施例4
第二段目の分散を110℃でCellwood社製のKURIMAホットディスパーザーにて処理し、処理パルプをスクリュープレスで脱水後、濃度28.2%、温度75℃で軸タイプの相川鉄工社製ディスパーザーにて三段目の分散処理を行なった以外は、実施例1と同様に処理し、製品パルプを製造した。製品パルプのダート数を表1に示す。
【0034】
実施例5
第一段目の分散を110℃でCellwood社製のKURIMAホットディスパーザーにて処理し、二段目、三段目の分散処理を温度92℃で軸タイプの相川鉄工社製ディスパーザーにて行なった以外は、実施例1と同様に処理し、製品パルプを製造した。製品パルプのダート数を表1に示す。
【0035】
比較例1
ディスクタイプの分散処理を80℃で行なう以外は、実施例1と同様に処理し、製品パルプを製造した。製品パルプのダート数を表1に示す。
【0036】
比較例2
ディスクタイプの分散処理後にフローテーター処理を行はない以外は、実施例1と同様に処理し、製品パルプを製造した。製品パルプのダート数を表1に示す。
【0037】
比較例3
第二段目の分散を110℃でCellwood社製のKURIMAホットディスパーザーにて処理し、三段目の分散処理を行なわない以外は、実施例1と同様に処理し、製品パルプを製造した。製品パルプのダート数を表1に示す。
【0038】
比較例4
実施例1と同様に相川鉄工社製ディスパーザーで二段目の分散処理まで行い、その後、工程内白水で希釈し、フローテーター処理を行い、ディスクシックナーで脱水後、110℃でCellwood社製のKURIMAホットディスパーザーにて三段目の分散処理したのち、製品パルプとした。製品パルプのダート数を表1に示す。
以上の結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
実施例1〜3及び比較例1を比較すると明らかなように三段目にディスク型ディスパーザーを用いても温度が80℃では、ダートが減少せず効果が低い。また、実施例1及び比較例2を比較すると明らかなようにディスパーザーを用いて剥離してもパルプ繊維から遊離したインキをフローテーターを用いて脱墨しなければ、やはりダートの数値は低減しない。
【0041】
また、実施例1〜5及び比較例3を比較すると明らかなように高温でディスクディスパーザーを使用しても二段の処理では、やはりダートを低減させる効果は低い。
【0042】
更に実施例1〜5及び比較例4を比較すると明らかなように二段目の分散処理後にフローテーター処理を行っても、三段目の分散処理で遊離インクが発生するため、ダートは低減しない。三段の分散処理後にフローテーター処理する方法が最もチリを低減させる効果が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷古紙を離解する離解工程、除塵するスクリーニング工程、脱墨処理するフローテーション工程、漂白及びソーキング処理をする漂白工程、分散処理するニーディング工程、洗浄処理する洗浄工程の組み合わせからなる高白色度脱墨パルプ製造設備から構成される古紙のパルプ化工程において、前記ニーディング工程が三段からなり、少なくとも一段以上がディスクタイプの分散機で95℃〜130℃の高温処理であり、三段のニーディング処理後にフローテーションによる脱墨処理を行なう事を特徴とする印刷古紙からなるダートの少ない脱墨パルプの製造方法。
【請求項2】
請求項1の記載の方法で製造された0.05〜5.0mmのダート個数が5〜200個/100gである古紙パルプ。
【請求項3】
請求項2記載の古紙パルプを10〜100%配合した紙。

【公開番号】特開2008−169507(P2008−169507A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3153(P2007−3153)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】