脱気装置
【課題】脱気エレメントを真空チャンバに確実に固定する。
【解決手段】脱気装置100は、真空チャンバ3、脱気エレメント4、コネクタ9および緩み止め部材14を備えている。コネクタ9は、真空チャンバ3の接続口2に嵌め込まれた第1部分9aと、接続口2から突出している第2部分9bとを含む。第2部分9bの外周面は非円形の断面プロファイルを有する。脱気エレメント4は、気体透過性チューブ6と、気体透過性チューブ6の端部を被覆している接合片8とを有する。接合片8とコネクタ9とに跨る形で溶着部20が形成されている。緩み止め部材14は、コネクタ9の第2部分9bに対応した形状の保持孔18を有する。保持孔18に第2部分9bを差し込んだ状態で、緩み止め部材14が真空チャンバ3に固定されている。
【解決手段】脱気装置100は、真空チャンバ3、脱気エレメント4、コネクタ9および緩み止め部材14を備えている。コネクタ9は、真空チャンバ3の接続口2に嵌め込まれた第1部分9aと、接続口2から突出している第2部分9bとを含む。第2部分9bの外周面は非円形の断面プロファイルを有する。脱気エレメント4は、気体透過性チューブ6と、気体透過性チューブ6の端部を被覆している接合片8とを有する。接合片8とコネクタ9とに跨る形で溶着部20が形成されている。緩み止め部材14は、コネクタ9の第2部分9bに対応した形状の保持孔18を有する。保持孔18に第2部分9bを差し込んだ状態で、緩み止め部材14が真空チャンバ3に固定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体中の溶存ガスは、配管の腐食、圧力損失の増大、熱交換率の低下、液体の塗布ムラなどの原因になる。そのため、液体の使用方法や使用目的に応じて、液体から溶存ガスを除去する必要がある。液体から溶存ガスを除去する脱気装置として、例えば、図9に示すものが存在する。脱気装置101によれば、真空チャンバ102内に配置した脱気エレメント103に液体を流す。これにより、液体から溶存ガスを除去できる。
【0003】
脱気エレメント103は、典型的には、気体透過性を有する多数の中空糸で作られている。脱気エレメント103の両端部には、それぞれ、接合片106が設けられている。真空チャンバ102の上蓋には、接続部材104が固定されている。フェルール107を介して、接続部材104に脱気エレメント103の接合片106が嵌められている。接合片106が接続部材104から外れないように、接続部材104、フェルール107および接合片106をナット108で一体的に締め付けている。このような構造により、接続部材104を介して、脱気エレメント103が真空チャンバ102に固定されている。
【0004】
ナット108の締め付け力(トルク)が弱すぎると、脱気エレメント103が接続部材104から外れるおそれがある。逆に、ナット108の締め付け力が強すぎると、ナット108が破損するおそれがある。また、フェルール107およびナット108を使用したいわゆるカシメ構造で脱気エレメント103と接続部材104とが締結されているため、接合片106や接続部材104に高い寸法精度が要求される。このことは、部品コストの削減や製品歩留まりの向上の妨げとなる。
【0005】
一方、特許文献2には、熱融着性を有する樹脂粉末を用いて接続部材と接合片とを接合するとともに、接続部材を真空チャンバに熱溶着して、脱気エレメントを真空チャンバに固定する技術が記載されている。この技術によると、カシメ構造を採用せずに、脱気エレメント、接続部材および真空チャンバを相互に固定できる。各部品に要求される精度も、カシメ構造で要求されるほど高くはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3585077号公報
【特許文献2】特開2007−319854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ただし、特許文献2に記載された脱気装置の接続構造には、更なる改良の余地がある。本発明は、脱気エレメントを真空チャンバに確実に固定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、
接続口を有する真空チャンバと、
前記接続口に嵌め込まれた第1部分と、前記真空チャンバの外側で前記接続口から突出している第2部分とを含み、前記第2部分の外周面が非円形の断面プロファイルを有している、前記接続口に取り付けられた筒状のコネクタと、
気体透過性チューブと、前記気体透過性チューブの端部を被覆しているとともに前記コネクタを介して前記真空チャンバに固定された接合片とを有し、前記真空チャンバ内に配置された脱気エレメントと、
前記接合片と前記コネクタとに跨る形で形成された溶着部と、
前記非円形の断面プロファイルに対応した形状の保持孔を有し、前記接続口に対する前記第1部分の姿勢の変化を阻止するように前記保持孔に前記第2部分を差し込んだ状態で前記真空チャンバに固定された緩み止め部材と、
を備えた、脱気装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明によれば、脱気エレメントの接合片を保持しているコネクタが、真空チャンバの接続口に嵌め込まれている。脱気エレメントの接合片は、コネクタに溶着されている。コネクタは、真空チャンバの接続口に嵌め込まれた第1部分と、接続口から突出している第2部分とを含む。第2部分の外周面は、非円形の断面プロファイルを有している。コネクタが真空チャンバから外れないように、真空チャンバの外側に緩み止め部材が設けられている。この緩み止め部材は、非円形の断面プロファイルに対応した形状の保持孔を有している。保持孔にコネクタの第2部分を差し込んだ状態で、緩み止め部材が真空チャンバに固定されている。これにより、接続口に対する第1部分の姿勢の変化を阻止する、つまり、コネクタが接続口から外れるのを防止する。このような構造によれば、カシメ構造を用いることなく、脱気エレメントを真空チャンバに確実に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態にかかる脱気装置の縦断面図
【図2A】真空チャンバの上蓋の平面図
【図2B】上蓋の縦断面図
【図2C】上蓋の側面図
【図3A】第1コネクタの側面図
【図3B】第1コネクタの横断面図
【図4A】緩み止め部材の平面図
【図4B】緩み止め部材の縦断面図
【図5】脱気エレメントの接合片の斜視図
【図6】溶着部の概略拡大図
【図7】第2コネクタの側面図
【図8】溶着方法を示す工程図
【図9】従来の脱気装置の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の脱気装置100は、真空チャンバ3、脱気エレメント4、第1コネクタ9、第2コネクタ12および緩み止め部材14を備えている。脱気エレメント4の端部が第1コネクタ9に溶着されており、第1コネクタ9を介して、脱気エレメント4が真空チャンバ3に固定されている。真空チャンバ3に対する第1コネクタ9の取り付け状態を維持するために、緩み止め部材14が設けられている。真空ポンプ等の減圧装置で真空チャンバ3内を排気しながら脱気エレメント4に液体を流す。これにより、液体から溶存ガスを除去できる。
【0013】
真空チャンバ3は、円筒状の本体3a、下蓋3bおよび上蓋3cで構成されている。真空チャンバ3内の気密を保持しうるように、下蓋3bおよび上蓋3cによって、本体3aの両端の開口部が閉じられている。図2Aおよび2Bに示すように、上蓋3cには、当該上蓋3cを厚み方向に貫通している接続口2が2箇所に設けられている。一方の接続口2が脱気すべき液体の流入口であり、他方の接続口2が脱気された液体の流出口である。これらの接続口2には、それぞれ、真空チャンバ3の内部側から脱気エレメント4の一端と他端とが接続されている。
【0014】
上蓋3cには、さらに、吸引口5、凹部11およびねじ孔16が設けられている。吸引口5には、真空引きのための減圧装置が接続される。凹部11は、緩み止め部材14を収容するための部分であり、2つの接続口2のそれぞれに対応して設けられている。ねじ孔16は、緩み止め部材14を上蓋3cにねじ止めするのに使用される。図2Cに示すように、上蓋3cの外周面には、おねじ17(テーパーねじ)が形成されている。真空チャンバ3内の気密が保持されるように、本体3aに上蓋3cが螺合している。この構造は、下蓋3bに関しても同様である。なお、蓋3bおよび3cを本体3aに固定するための構造に限定はなく、例えば蓋3bおよび3cが本体3aに溶着されていてもよい。
【0015】
真空チャンバ3の材料として、樹脂、好適にはフッ素樹脂やポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂を使用できる。真空チャンバ3の一部または全部が他の材料、例えば金属やガラスでできていてもよい。好適な金属としては、ステンレスが挙げられる。
【0016】
図1および5に示すように、脱気エレメント4は、チューブ束10および接合片8を有する。チューブ束10は、複数の気体透過性チューブ6で構成されている。接合片8は、チューブ束10の端部を被覆している。チューブ束10における気体透過性チューブ6の本数は、通常、数本〜数百本程度の範囲である。液体は、各気体透過性チューブ6の中を流れる。図1では、脱気エレメント4がU字の形状を有しているが、脱気エレメント4が他の形状を有していてもよい。例えば、脱気エレメント4がコイル状に巻かれていてもよい。
【0017】
気体透過性チューブ6には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレンなどのフッ素樹脂でできたチューブや、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンでできたチューブを使用できる。典型的には、気体透過性チューブ6として、樹脂多孔質膜でできた中空糸が用いられる。気体透過性チューブ6は、通常、数十μm〜数mmの範囲の内径を有する。なお、脱気エレメント4は、少なくとも1本の気体透過性チューブ6を備えていればよい。
【0018】
複数の気体透過性チューブ6は、公知の方法に従って束ねることができる。例えば、熱融着性を有する熱可塑性樹脂を用いて、気体透過性チューブ6の端部を互いに結着すれば、チューブ束10を形成できる。熱融着性を有する熱可塑性樹脂として、PFA、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ETFEなどのフッ素樹脂を使用できる。
【0019】
接合片8は、チューブ束10の端部を被覆する役割と、脱気エレメント4を第1コネクタ9に固定する役割とを担う。本実施形態では、接合片8として、円筒の形状を有する部材が使用されている。接合片8の材料として、熱可塑性樹脂を好適に使用できる。熱可塑性樹脂としては、PTFE、PFA、ETFE、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などのフッ素樹脂が挙げられる。熱収縮性を有するためにチューブ束10の被覆が容易であり、かつ、チューブ束10を確実に保持できることから、PFAが推奨される。
【0020】
図1に示すように、第1コネクタ9は、円筒状の内周面を有する部材である。脱気エレメント4の接合片8は、第1コネクタ9に差し込まれ、第1コネクタ9によって保持されている。第1コネクタ9には、真空チャンバ3の内部側から接合片8が差し込まれている。接合片8は、熱溶着により第1コネクタ9に固定されている。接合片8が差し込まれた状態を維持しながら、第1コネクタ9は接続口2に取り付けられている。つまり、第1コネクタ9を介して、脱気エレメント4が真空チャンバ3に固定されている。このような構造によれば、カシメ構造やO−リングを使用せずに、脱気エレメント4を真空チャンバ3に確実に固定できる。なお、カシメ構造やO−リングが必須でないだけで、これらが設けられていてもよい。
【0021】
具体的に、第1コネクタ9は、第1部分9aおよび第2部分9bを含む。第1部分9aは接続口2に嵌め込まれた部分であり、第2部分9bは真空チャンバ3の外側で接続口2から突出している部分である。詳細には、第2部分9bは、緩み止め部材14を突き抜けて、緩み止め部材14よりも上に突出している。図3Aに示すように、第1部分9aの外周面にはおねじが形成されている。このおねじに対応するめねじが上蓋3cの接続口2の内周面13(図2B参照)に形成されている。つまり、第1コネクタ9が接続口2に螺合されており、これにより、第1コネクタ9が上蓋3cに固定されている。
【0022】
本実施形態において、第1部分9aの外周面に形成されたおねじ、および、上蓋3cの接続口2の内周面13に形成されためねじは、それぞれ、テーパーねじである。第1コネクタ9の第1部分9aと接続口2との間に、フッ素樹脂製のシールテープが介在していてもよい。テーパーねじとシールテープとを組み合わせて使用すれば、より確実に空気漏れを防げる。また、テーパーねじはストレートねじよりも緩み易いので、緩み止め部材14を設ける意義が増す。
【0023】
他方、図3Bに示すように、第2部分9bの外周面は、非円形の断面プロファイルを有する。第2部分9bがこのような形状を有している場合、緩み止め部材14の保持孔18に第2部分9bを嵌め込むだけで、第1コネクタ9の回転を阻止できる。つまり、第1コネクタ9が回転して第1部分9aが緩むのを防止できる。
【0024】
第1コネクタ9の回転を阻止できる限りにおいて、第2部分9bの外周面の形状は特に限定されない。具体的には、「非円形」として、多角形、楕円形、互いに異なる曲率半径を有する複数の曲線の組み合わせによる形状、および、直線と曲線の組み合わせによる形状からなる群より選ばれる1つの形状を採用しうる。本実施形態では、第2部分9bの外周面が、小判形の断面プロファイルを有している。小判形は、直線と曲線の組み合わせによる形状の一例であり、円筒状の部材の一部を切削して簡単に形成できる利点がある。
【0025】
図4Aおよび4Bに示すように、緩み止め部材14は、円板状の部材で構成されている。緩み止め部材14には、第1コネクタ9の第2部分9bにおける非円形の断面プロファイルに対応した形状の保持孔18が形成されている。保持孔18の大きさは、第1コネクタ9の第2部分9bを差し込めるように、第2部分9bよりも僅かに大きく調整されている。図1に示すように、接続口2に対する第1部分9aの姿勢の変化を阻止するように保持孔18に第2部分9bを差し込んだ状態で、緩み止め部材14が真空チャンバ3に固定されている。ねじ7で緩み止め部材14を上蓋3cに固定できるように、緩み止め部材14にもねじ孔19が形成されている。ねじ7に代えて、ボルト、キーなどの他の止め具も使用できる。また、緩み止め部材14が上蓋3cに溶着されていてもよい。
【0026】
図1に示すように、第2コネクタ12は、径大部12aと径小部12bとを含む。径大部12aは、第1コネクタ9に接合された部分である。径小部12bは、脱気するべき液体を脱気エレメント4に供給するための管、または、脱気された液体を脱気エレメント4から回収するための管を接続するための部分である。径大部12aは、第1コネクタ9の端面に熱溶着されている。詳細には、第2コネクタ12は、第1コネクタ9の第2部分9bに突き合わせ溶着されている。このようにすれば、カシメ構造やO−リングを使用せずに、第2コネクタ12を第1コネクタ9に容易に接合できる。なお、第2コネクタ12を省略して、上述の管を第1コネクタ9に直接接続することも可能である。
【0027】
本実施形態では、脱気エレメント4が第1コネクタ9に熱溶着されるとともに、第2コネクタ12も第1コネクタ9に熱溶着されている。詳細には、図6に示すように、脱気エレメント4は、第2部分9bの端面と接合片8の端面とが面一となる位置まで、第1コネクタ9に差し込まれている。そして、第1コネクタ9の径方向に関して、脱気エレメント4の接合片8と第1コネクタ9の第2部分9bとに跨る形で、溶着部20が形成されている。さらに、溶着部20は、第1コネクタ9の軸方向(長手方向)に関して、第1コネクタ9と第2コネクタ12との間にも跨っている。つまり、溶着部20が、第2部分9bの端面、接合片8の端面および第2コネクタ12の端面に跨っている。このようにすれば、脱気エレメント4、第1コネクタ9および第2コネクタ12を互いに強固に接合できる。
【0028】
本実施形態において、第1コネクタ9および第2コネクタ12は、それぞれ、樹脂(詳細には熱可塑性樹脂)でできている。溶着部20を形成できる限り、第1コネクタ9および第2コネクタ12に樹脂以外の材料が含まれていてもよい。第1コネクタ9および第2コネクタ12を構成する樹脂の種類は特に限定されず、接合片8の樹脂として先に列挙したものの中から選んで使用できる。例えば、第1コネクタ9および第2コネクタ12の材料として、フッ素樹脂を好適に使用できる。
【0029】
すなわち、第1コネクタ9を構成する樹脂、第2コネクタ12を構成する樹脂、および、接合片8を構成する樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つとして、フッ素樹脂を好適に使用できる。これらの樹脂は、互いに異なっていても構わないが、同一の樹脂(例えばPFA)を使用することにより、熱溶着による強固な接合が可能となる。
【0030】
本実施形態では、第1コネクタ9の内径および外径は、それぞれ、第2コネクタ12の径大部12bの内径および外径に等しい。このようにすれば、精度の高い突き合わせ溶着が可能となる。ただし、これらが互いに相違していてもよい。例えば、第2コネクタ12の径大部12bの内径を第1コネクタ9の内径よりも大きくしうる。
【0031】
なお、図7に示すように、溶着前の第2コネクタ12の端面に凸部12cを設けておくと、第2コネクタ12を第1コネクタ9に突き合わせ溶着しやすくなる。さらに、凸部12cを設けておくと、図6に示すように、その凸部12cが溶融および固化することに基づき、厚肉の溶着部20(いわゆる肉盛溶着部)を形成できるので、接合強度が向上する。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【0033】
まず、気体透過性チューブ6として、内径0.95mm、厚み0.11mm、長さ300mmのPTFEチューブを4本準備した。4本のPETFチューブの両端部の外周面にPFA粉末を塗布した後、両端部を金型で挟んで370℃で5分間加熱および加圧した。これにより、4本のPTFEチューブを相互に接着してチューブ束10を得た。次に、接合片8として、熱収縮性を有する円筒形のPFAパイプ(外径6mm)を準備した。PFAパイプの内周面にPFA粉末を塗布した後、このPFAパイプをチューブ束10の端部に取り付けた。チューブ束10の端部およびPFAパイプを加熱して、チューブ束10にPFAパイプを一体化させた。このようにして、外径6mm、有効長さ200mmの脱気エレメント4を得た。
【0034】
図3Aおよび3Bを参照して説明した第1コネクタ9(内径6mm)を作製した。第1コネクタ9の材料には、PFAを用いた。第1部分9aの外周面には、PT1/8のテーパーおねじを形成した。外周面の断面プロファイルが小判形になるように、第2部分9bを形成した。
【0035】
内径52mm、長さ130mmのポリプロピレン製の円筒パイプを本体3aとして準備した。本体3aの開口部の近傍の内周面に、テーパー角度60°、ピッチ2.0mmのテーパーめねじを形成した。次に、ポリプロピレン製の板を押出成形および切削加工し、下蓋3bおよび上蓋3cを作製した。各蓋の外周面には、本体3aと同じテーパー角度およびねじピッチを有するテーパーおねじを形成した。上蓋3cには、図2Aおよび2Bを参照して説明したように、接続口2、吸引口5、凹部11およびねじ孔16を設けた。接続口2の内周面には、Rc1/8のテーパーめねじを形成した。吸引口5の内周面にも、Rc1/8のテーパーめねじを形成した。
【0036】
図7を参照して説明した第2コネクタ12を作製した。第2コネクタ12の材料には、PFAを使用した。径大部12aの内径を6mmに設定した。
【0037】
ポリプロピレン製の板を用いて、切削加工により、図4Aおよび4Bを参照して説明した緩み止め部材14(固定板)を作製した。
【0038】
第1コネクタ9にシールテープ(日東電工社製No.95)を巻き付けて上蓋3cに螺合させた。真空チャンバの内部側から脱気エレメント4の接合片8を第1コネクタ9に差し込んだ後、上蓋3cおよび下蓋3bを本体3aに組み付けた。接合片8の端面と第1コネクタ9の端面とを面一とした。次に、第1コネクタ9が緩まないように、緩み止め部材14を上蓋3cに嵌め込み、ステンレス製のねじ7で固定した。
【0039】
次に、図8に示すように、板状の遠赤外線ヒータ24を介して、第1コネクタ9と第2コネクタ12とを向かい合わせに配置した。ヒータ24に通電して、第1コネクタ9、接合片8および第2コネクタ12の各端面を2分間かけて溶融させた。なお、通電時には、真空チャンバ3および緩み止め部材14を断熱材22で被覆した。その後、ヒータ24を外して、第1コネクタ9に第2コネクタ12を突き当てた。室温で2分間徐冷し、第1コネクタ9、脱気エレメント4の接合片8および第2コネクタ12を相互に接合した。このようにして、図1に示す構造の脱気装置100を製造した。
【0040】
製造した脱気装置100を用いて脱気実験を行った。まず、脱気装置100の真空チャンバ3内を真空ポンプにより4kPaの圧力まで排気した。この圧力を維持しつつ、第2コネクタ12を通じて脱気エレメント4に水圧0.3MPaで水を10秒間供給した後に、水の供給を60秒間停止するサイクルを10万回繰り返した。10万回のサイクルの後、真空ポンプを停止し、真空チャンバ3の内部の真空度の変化を調べた。真空ポンプの停止後も真空チャンバ3内の真空度は殆ど変化せず、第1コネクタ9と真空チャンバ3との接合状態は良好であった。さらに、真空チャンバ3を開いて水漏れの有無を調べた。その結果、真空チャンバ3内に水は漏れていなかった。
【符号の説明】
【0041】
2 接続口
3 真空チャンバ
3c 上蓋
4 脱気エレメント
6 気体透過性チューブ
7 ねじ
8 接合片
9 第1コネクタ
9a 第1部分
9b 第2部分
10 チューブ束
12 第2コネクタ
14 緩み止め部材
18 保持孔
20 溶着部
100 脱気装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体中の溶存ガスは、配管の腐食、圧力損失の増大、熱交換率の低下、液体の塗布ムラなどの原因になる。そのため、液体の使用方法や使用目的に応じて、液体から溶存ガスを除去する必要がある。液体から溶存ガスを除去する脱気装置として、例えば、図9に示すものが存在する。脱気装置101によれば、真空チャンバ102内に配置した脱気エレメント103に液体を流す。これにより、液体から溶存ガスを除去できる。
【0003】
脱気エレメント103は、典型的には、気体透過性を有する多数の中空糸で作られている。脱気エレメント103の両端部には、それぞれ、接合片106が設けられている。真空チャンバ102の上蓋には、接続部材104が固定されている。フェルール107を介して、接続部材104に脱気エレメント103の接合片106が嵌められている。接合片106が接続部材104から外れないように、接続部材104、フェルール107および接合片106をナット108で一体的に締め付けている。このような構造により、接続部材104を介して、脱気エレメント103が真空チャンバ102に固定されている。
【0004】
ナット108の締め付け力(トルク)が弱すぎると、脱気エレメント103が接続部材104から外れるおそれがある。逆に、ナット108の締め付け力が強すぎると、ナット108が破損するおそれがある。また、フェルール107およびナット108を使用したいわゆるカシメ構造で脱気エレメント103と接続部材104とが締結されているため、接合片106や接続部材104に高い寸法精度が要求される。このことは、部品コストの削減や製品歩留まりの向上の妨げとなる。
【0005】
一方、特許文献2には、熱融着性を有する樹脂粉末を用いて接続部材と接合片とを接合するとともに、接続部材を真空チャンバに熱溶着して、脱気エレメントを真空チャンバに固定する技術が記載されている。この技術によると、カシメ構造を採用せずに、脱気エレメント、接続部材および真空チャンバを相互に固定できる。各部品に要求される精度も、カシメ構造で要求されるほど高くはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3585077号公報
【特許文献2】特開2007−319854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ただし、特許文献2に記載された脱気装置の接続構造には、更なる改良の余地がある。本発明は、脱気エレメントを真空チャンバに確実に固定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、
接続口を有する真空チャンバと、
前記接続口に嵌め込まれた第1部分と、前記真空チャンバの外側で前記接続口から突出している第2部分とを含み、前記第2部分の外周面が非円形の断面プロファイルを有している、前記接続口に取り付けられた筒状のコネクタと、
気体透過性チューブと、前記気体透過性チューブの端部を被覆しているとともに前記コネクタを介して前記真空チャンバに固定された接合片とを有し、前記真空チャンバ内に配置された脱気エレメントと、
前記接合片と前記コネクタとに跨る形で形成された溶着部と、
前記非円形の断面プロファイルに対応した形状の保持孔を有し、前記接続口に対する前記第1部分の姿勢の変化を阻止するように前記保持孔に前記第2部分を差し込んだ状態で前記真空チャンバに固定された緩み止め部材と、
を備えた、脱気装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明によれば、脱気エレメントの接合片を保持しているコネクタが、真空チャンバの接続口に嵌め込まれている。脱気エレメントの接合片は、コネクタに溶着されている。コネクタは、真空チャンバの接続口に嵌め込まれた第1部分と、接続口から突出している第2部分とを含む。第2部分の外周面は、非円形の断面プロファイルを有している。コネクタが真空チャンバから外れないように、真空チャンバの外側に緩み止め部材が設けられている。この緩み止め部材は、非円形の断面プロファイルに対応した形状の保持孔を有している。保持孔にコネクタの第2部分を差し込んだ状態で、緩み止め部材が真空チャンバに固定されている。これにより、接続口に対する第1部分の姿勢の変化を阻止する、つまり、コネクタが接続口から外れるのを防止する。このような構造によれば、カシメ構造を用いることなく、脱気エレメントを真空チャンバに確実に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態にかかる脱気装置の縦断面図
【図2A】真空チャンバの上蓋の平面図
【図2B】上蓋の縦断面図
【図2C】上蓋の側面図
【図3A】第1コネクタの側面図
【図3B】第1コネクタの横断面図
【図4A】緩み止め部材の平面図
【図4B】緩み止め部材の縦断面図
【図5】脱気エレメントの接合片の斜視図
【図6】溶着部の概略拡大図
【図7】第2コネクタの側面図
【図8】溶着方法を示す工程図
【図9】従来の脱気装置の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の脱気装置100は、真空チャンバ3、脱気エレメント4、第1コネクタ9、第2コネクタ12および緩み止め部材14を備えている。脱気エレメント4の端部が第1コネクタ9に溶着されており、第1コネクタ9を介して、脱気エレメント4が真空チャンバ3に固定されている。真空チャンバ3に対する第1コネクタ9の取り付け状態を維持するために、緩み止め部材14が設けられている。真空ポンプ等の減圧装置で真空チャンバ3内を排気しながら脱気エレメント4に液体を流す。これにより、液体から溶存ガスを除去できる。
【0013】
真空チャンバ3は、円筒状の本体3a、下蓋3bおよび上蓋3cで構成されている。真空チャンバ3内の気密を保持しうるように、下蓋3bおよび上蓋3cによって、本体3aの両端の開口部が閉じられている。図2Aおよび2Bに示すように、上蓋3cには、当該上蓋3cを厚み方向に貫通している接続口2が2箇所に設けられている。一方の接続口2が脱気すべき液体の流入口であり、他方の接続口2が脱気された液体の流出口である。これらの接続口2には、それぞれ、真空チャンバ3の内部側から脱気エレメント4の一端と他端とが接続されている。
【0014】
上蓋3cには、さらに、吸引口5、凹部11およびねじ孔16が設けられている。吸引口5には、真空引きのための減圧装置が接続される。凹部11は、緩み止め部材14を収容するための部分であり、2つの接続口2のそれぞれに対応して設けられている。ねじ孔16は、緩み止め部材14を上蓋3cにねじ止めするのに使用される。図2Cに示すように、上蓋3cの外周面には、おねじ17(テーパーねじ)が形成されている。真空チャンバ3内の気密が保持されるように、本体3aに上蓋3cが螺合している。この構造は、下蓋3bに関しても同様である。なお、蓋3bおよび3cを本体3aに固定するための構造に限定はなく、例えば蓋3bおよび3cが本体3aに溶着されていてもよい。
【0015】
真空チャンバ3の材料として、樹脂、好適にはフッ素樹脂やポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂を使用できる。真空チャンバ3の一部または全部が他の材料、例えば金属やガラスでできていてもよい。好適な金属としては、ステンレスが挙げられる。
【0016】
図1および5に示すように、脱気エレメント4は、チューブ束10および接合片8を有する。チューブ束10は、複数の気体透過性チューブ6で構成されている。接合片8は、チューブ束10の端部を被覆している。チューブ束10における気体透過性チューブ6の本数は、通常、数本〜数百本程度の範囲である。液体は、各気体透過性チューブ6の中を流れる。図1では、脱気エレメント4がU字の形状を有しているが、脱気エレメント4が他の形状を有していてもよい。例えば、脱気エレメント4がコイル状に巻かれていてもよい。
【0017】
気体透過性チューブ6には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレンなどのフッ素樹脂でできたチューブや、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンでできたチューブを使用できる。典型的には、気体透過性チューブ6として、樹脂多孔質膜でできた中空糸が用いられる。気体透過性チューブ6は、通常、数十μm〜数mmの範囲の内径を有する。なお、脱気エレメント4は、少なくとも1本の気体透過性チューブ6を備えていればよい。
【0018】
複数の気体透過性チューブ6は、公知の方法に従って束ねることができる。例えば、熱融着性を有する熱可塑性樹脂を用いて、気体透過性チューブ6の端部を互いに結着すれば、チューブ束10を形成できる。熱融着性を有する熱可塑性樹脂として、PFA、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ETFEなどのフッ素樹脂を使用できる。
【0019】
接合片8は、チューブ束10の端部を被覆する役割と、脱気エレメント4を第1コネクタ9に固定する役割とを担う。本実施形態では、接合片8として、円筒の形状を有する部材が使用されている。接合片8の材料として、熱可塑性樹脂を好適に使用できる。熱可塑性樹脂としては、PTFE、PFA、ETFE、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などのフッ素樹脂が挙げられる。熱収縮性を有するためにチューブ束10の被覆が容易であり、かつ、チューブ束10を確実に保持できることから、PFAが推奨される。
【0020】
図1に示すように、第1コネクタ9は、円筒状の内周面を有する部材である。脱気エレメント4の接合片8は、第1コネクタ9に差し込まれ、第1コネクタ9によって保持されている。第1コネクタ9には、真空チャンバ3の内部側から接合片8が差し込まれている。接合片8は、熱溶着により第1コネクタ9に固定されている。接合片8が差し込まれた状態を維持しながら、第1コネクタ9は接続口2に取り付けられている。つまり、第1コネクタ9を介して、脱気エレメント4が真空チャンバ3に固定されている。このような構造によれば、カシメ構造やO−リングを使用せずに、脱気エレメント4を真空チャンバ3に確実に固定できる。なお、カシメ構造やO−リングが必須でないだけで、これらが設けられていてもよい。
【0021】
具体的に、第1コネクタ9は、第1部分9aおよび第2部分9bを含む。第1部分9aは接続口2に嵌め込まれた部分であり、第2部分9bは真空チャンバ3の外側で接続口2から突出している部分である。詳細には、第2部分9bは、緩み止め部材14を突き抜けて、緩み止め部材14よりも上に突出している。図3Aに示すように、第1部分9aの外周面にはおねじが形成されている。このおねじに対応するめねじが上蓋3cの接続口2の内周面13(図2B参照)に形成されている。つまり、第1コネクタ9が接続口2に螺合されており、これにより、第1コネクタ9が上蓋3cに固定されている。
【0022】
本実施形態において、第1部分9aの外周面に形成されたおねじ、および、上蓋3cの接続口2の内周面13に形成されためねじは、それぞれ、テーパーねじである。第1コネクタ9の第1部分9aと接続口2との間に、フッ素樹脂製のシールテープが介在していてもよい。テーパーねじとシールテープとを組み合わせて使用すれば、より確実に空気漏れを防げる。また、テーパーねじはストレートねじよりも緩み易いので、緩み止め部材14を設ける意義が増す。
【0023】
他方、図3Bに示すように、第2部分9bの外周面は、非円形の断面プロファイルを有する。第2部分9bがこのような形状を有している場合、緩み止め部材14の保持孔18に第2部分9bを嵌め込むだけで、第1コネクタ9の回転を阻止できる。つまり、第1コネクタ9が回転して第1部分9aが緩むのを防止できる。
【0024】
第1コネクタ9の回転を阻止できる限りにおいて、第2部分9bの外周面の形状は特に限定されない。具体的には、「非円形」として、多角形、楕円形、互いに異なる曲率半径を有する複数の曲線の組み合わせによる形状、および、直線と曲線の組み合わせによる形状からなる群より選ばれる1つの形状を採用しうる。本実施形態では、第2部分9bの外周面が、小判形の断面プロファイルを有している。小判形は、直線と曲線の組み合わせによる形状の一例であり、円筒状の部材の一部を切削して簡単に形成できる利点がある。
【0025】
図4Aおよび4Bに示すように、緩み止め部材14は、円板状の部材で構成されている。緩み止め部材14には、第1コネクタ9の第2部分9bにおける非円形の断面プロファイルに対応した形状の保持孔18が形成されている。保持孔18の大きさは、第1コネクタ9の第2部分9bを差し込めるように、第2部分9bよりも僅かに大きく調整されている。図1に示すように、接続口2に対する第1部分9aの姿勢の変化を阻止するように保持孔18に第2部分9bを差し込んだ状態で、緩み止め部材14が真空チャンバ3に固定されている。ねじ7で緩み止め部材14を上蓋3cに固定できるように、緩み止め部材14にもねじ孔19が形成されている。ねじ7に代えて、ボルト、キーなどの他の止め具も使用できる。また、緩み止め部材14が上蓋3cに溶着されていてもよい。
【0026】
図1に示すように、第2コネクタ12は、径大部12aと径小部12bとを含む。径大部12aは、第1コネクタ9に接合された部分である。径小部12bは、脱気するべき液体を脱気エレメント4に供給するための管、または、脱気された液体を脱気エレメント4から回収するための管を接続するための部分である。径大部12aは、第1コネクタ9の端面に熱溶着されている。詳細には、第2コネクタ12は、第1コネクタ9の第2部分9bに突き合わせ溶着されている。このようにすれば、カシメ構造やO−リングを使用せずに、第2コネクタ12を第1コネクタ9に容易に接合できる。なお、第2コネクタ12を省略して、上述の管を第1コネクタ9に直接接続することも可能である。
【0027】
本実施形態では、脱気エレメント4が第1コネクタ9に熱溶着されるとともに、第2コネクタ12も第1コネクタ9に熱溶着されている。詳細には、図6に示すように、脱気エレメント4は、第2部分9bの端面と接合片8の端面とが面一となる位置まで、第1コネクタ9に差し込まれている。そして、第1コネクタ9の径方向に関して、脱気エレメント4の接合片8と第1コネクタ9の第2部分9bとに跨る形で、溶着部20が形成されている。さらに、溶着部20は、第1コネクタ9の軸方向(長手方向)に関して、第1コネクタ9と第2コネクタ12との間にも跨っている。つまり、溶着部20が、第2部分9bの端面、接合片8の端面および第2コネクタ12の端面に跨っている。このようにすれば、脱気エレメント4、第1コネクタ9および第2コネクタ12を互いに強固に接合できる。
【0028】
本実施形態において、第1コネクタ9および第2コネクタ12は、それぞれ、樹脂(詳細には熱可塑性樹脂)でできている。溶着部20を形成できる限り、第1コネクタ9および第2コネクタ12に樹脂以外の材料が含まれていてもよい。第1コネクタ9および第2コネクタ12を構成する樹脂の種類は特に限定されず、接合片8の樹脂として先に列挙したものの中から選んで使用できる。例えば、第1コネクタ9および第2コネクタ12の材料として、フッ素樹脂を好適に使用できる。
【0029】
すなわち、第1コネクタ9を構成する樹脂、第2コネクタ12を構成する樹脂、および、接合片8を構成する樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つとして、フッ素樹脂を好適に使用できる。これらの樹脂は、互いに異なっていても構わないが、同一の樹脂(例えばPFA)を使用することにより、熱溶着による強固な接合が可能となる。
【0030】
本実施形態では、第1コネクタ9の内径および外径は、それぞれ、第2コネクタ12の径大部12bの内径および外径に等しい。このようにすれば、精度の高い突き合わせ溶着が可能となる。ただし、これらが互いに相違していてもよい。例えば、第2コネクタ12の径大部12bの内径を第1コネクタ9の内径よりも大きくしうる。
【0031】
なお、図7に示すように、溶着前の第2コネクタ12の端面に凸部12cを設けておくと、第2コネクタ12を第1コネクタ9に突き合わせ溶着しやすくなる。さらに、凸部12cを設けておくと、図6に示すように、その凸部12cが溶融および固化することに基づき、厚肉の溶着部20(いわゆる肉盛溶着部)を形成できるので、接合強度が向上する。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【0033】
まず、気体透過性チューブ6として、内径0.95mm、厚み0.11mm、長さ300mmのPTFEチューブを4本準備した。4本のPETFチューブの両端部の外周面にPFA粉末を塗布した後、両端部を金型で挟んで370℃で5分間加熱および加圧した。これにより、4本のPTFEチューブを相互に接着してチューブ束10を得た。次に、接合片8として、熱収縮性を有する円筒形のPFAパイプ(外径6mm)を準備した。PFAパイプの内周面にPFA粉末を塗布した後、このPFAパイプをチューブ束10の端部に取り付けた。チューブ束10の端部およびPFAパイプを加熱して、チューブ束10にPFAパイプを一体化させた。このようにして、外径6mm、有効長さ200mmの脱気エレメント4を得た。
【0034】
図3Aおよび3Bを参照して説明した第1コネクタ9(内径6mm)を作製した。第1コネクタ9の材料には、PFAを用いた。第1部分9aの外周面には、PT1/8のテーパーおねじを形成した。外周面の断面プロファイルが小判形になるように、第2部分9bを形成した。
【0035】
内径52mm、長さ130mmのポリプロピレン製の円筒パイプを本体3aとして準備した。本体3aの開口部の近傍の内周面に、テーパー角度60°、ピッチ2.0mmのテーパーめねじを形成した。次に、ポリプロピレン製の板を押出成形および切削加工し、下蓋3bおよび上蓋3cを作製した。各蓋の外周面には、本体3aと同じテーパー角度およびねじピッチを有するテーパーおねじを形成した。上蓋3cには、図2Aおよび2Bを参照して説明したように、接続口2、吸引口5、凹部11およびねじ孔16を設けた。接続口2の内周面には、Rc1/8のテーパーめねじを形成した。吸引口5の内周面にも、Rc1/8のテーパーめねじを形成した。
【0036】
図7を参照して説明した第2コネクタ12を作製した。第2コネクタ12の材料には、PFAを使用した。径大部12aの内径を6mmに設定した。
【0037】
ポリプロピレン製の板を用いて、切削加工により、図4Aおよび4Bを参照して説明した緩み止め部材14(固定板)を作製した。
【0038】
第1コネクタ9にシールテープ(日東電工社製No.95)を巻き付けて上蓋3cに螺合させた。真空チャンバの内部側から脱気エレメント4の接合片8を第1コネクタ9に差し込んだ後、上蓋3cおよび下蓋3bを本体3aに組み付けた。接合片8の端面と第1コネクタ9の端面とを面一とした。次に、第1コネクタ9が緩まないように、緩み止め部材14を上蓋3cに嵌め込み、ステンレス製のねじ7で固定した。
【0039】
次に、図8に示すように、板状の遠赤外線ヒータ24を介して、第1コネクタ9と第2コネクタ12とを向かい合わせに配置した。ヒータ24に通電して、第1コネクタ9、接合片8および第2コネクタ12の各端面を2分間かけて溶融させた。なお、通電時には、真空チャンバ3および緩み止め部材14を断熱材22で被覆した。その後、ヒータ24を外して、第1コネクタ9に第2コネクタ12を突き当てた。室温で2分間徐冷し、第1コネクタ9、脱気エレメント4の接合片8および第2コネクタ12を相互に接合した。このようにして、図1に示す構造の脱気装置100を製造した。
【0040】
製造した脱気装置100を用いて脱気実験を行った。まず、脱気装置100の真空チャンバ3内を真空ポンプにより4kPaの圧力まで排気した。この圧力を維持しつつ、第2コネクタ12を通じて脱気エレメント4に水圧0.3MPaで水を10秒間供給した後に、水の供給を60秒間停止するサイクルを10万回繰り返した。10万回のサイクルの後、真空ポンプを停止し、真空チャンバ3の内部の真空度の変化を調べた。真空ポンプの停止後も真空チャンバ3内の真空度は殆ど変化せず、第1コネクタ9と真空チャンバ3との接合状態は良好であった。さらに、真空チャンバ3を開いて水漏れの有無を調べた。その結果、真空チャンバ3内に水は漏れていなかった。
【符号の説明】
【0041】
2 接続口
3 真空チャンバ
3c 上蓋
4 脱気エレメント
6 気体透過性チューブ
7 ねじ
8 接合片
9 第1コネクタ
9a 第1部分
9b 第2部分
10 チューブ束
12 第2コネクタ
14 緩み止め部材
18 保持孔
20 溶着部
100 脱気装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続口を有する真空チャンバと、
前記接続口に嵌め込まれた第1部分と、前記真空チャンバの外側で前記接続口から突出している第2部分とを含み、前記第2部分の外周面が非円形の断面プロファイルを有している、前記接続口に取り付けられた筒状のコネクタと、
気体透過性チューブと、前記気体透過性チューブの端部を被覆しているとともに前記コネクタを介して前記真空チャンバに固定された接合片とを有し、前記真空チャンバ内に配置された脱気エレメントと、
前記接合片と前記コネクタとに跨る形で形成された溶着部と、
前記非円形の断面プロファイルに対応した形状の保持孔を有し、前記接続口に対する前記第1部分の姿勢の変化を阻止するように前記保持孔に前記第2部分を差し込んだ状態で前記真空チャンバに固定された緩み止め部材と、
を備えた、脱気装置。
【請求項2】
前記第1部分の外周面におねじ、前記接続口の内周面にめねじが形成されており、
前記コネクタが前記接続口に螺合されている、請求項1に記載の脱気装置。
【請求項3】
前記おねじおよび前記めねじが、それぞれ、テーパーねじであり、
前記第1部分と前記接続口との間にフッ素樹脂製のシールテープが介在している、請求項2に記載の脱気装置。
【請求項4】
前記真空チャンバが、筒状の本体と、前記本体の開口部を閉じている蓋とを含み、
前記接続口が前記蓋に設けられており、
前記緩み止め部材が円板状の部材で構成されるとともに、ボルト、ねじ等の止め具によって前記蓋に固定されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱気装置。
【請求項5】
前記コネクタの前記第2部分に突き合わせ溶着された第2コネクタをさらに備えた、請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱気装置。
【請求項6】
前記第2部分の端面と前記接合片の端面とが面一であり、
前記溶着部が、前記第2部分の端面、前記接合片の端面および前記第2コネクタの端面に跨っている、請求項5に記載の脱気装置。
【請求項7】
前記非円形の断面プロファイルが、多角形、楕円形、互いに異なる曲率半径を有する複数の曲線の組み合わせによる形状、および、直線と曲線の組み合わせによる形状からなる群より選ばれる1つの形状の断面プロファイルである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の脱気装置。
【請求項8】
前記接合片および前記コネクタが、それぞれ、熱可塑性樹脂でできている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の脱気装置。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂がテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体である、請求項8に記載の脱気装置。
【請求項1】
接続口を有する真空チャンバと、
前記接続口に嵌め込まれた第1部分と、前記真空チャンバの外側で前記接続口から突出している第2部分とを含み、前記第2部分の外周面が非円形の断面プロファイルを有している、前記接続口に取り付けられた筒状のコネクタと、
気体透過性チューブと、前記気体透過性チューブの端部を被覆しているとともに前記コネクタを介して前記真空チャンバに固定された接合片とを有し、前記真空チャンバ内に配置された脱気エレメントと、
前記接合片と前記コネクタとに跨る形で形成された溶着部と、
前記非円形の断面プロファイルに対応した形状の保持孔を有し、前記接続口に対する前記第1部分の姿勢の変化を阻止するように前記保持孔に前記第2部分を差し込んだ状態で前記真空チャンバに固定された緩み止め部材と、
を備えた、脱気装置。
【請求項2】
前記第1部分の外周面におねじ、前記接続口の内周面にめねじが形成されており、
前記コネクタが前記接続口に螺合されている、請求項1に記載の脱気装置。
【請求項3】
前記おねじおよび前記めねじが、それぞれ、テーパーねじであり、
前記第1部分と前記接続口との間にフッ素樹脂製のシールテープが介在している、請求項2に記載の脱気装置。
【請求項4】
前記真空チャンバが、筒状の本体と、前記本体の開口部を閉じている蓋とを含み、
前記接続口が前記蓋に設けられており、
前記緩み止め部材が円板状の部材で構成されるとともに、ボルト、ねじ等の止め具によって前記蓋に固定されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱気装置。
【請求項5】
前記コネクタの前記第2部分に突き合わせ溶着された第2コネクタをさらに備えた、請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱気装置。
【請求項6】
前記第2部分の端面と前記接合片の端面とが面一であり、
前記溶着部が、前記第2部分の端面、前記接合片の端面および前記第2コネクタの端面に跨っている、請求項5に記載の脱気装置。
【請求項7】
前記非円形の断面プロファイルが、多角形、楕円形、互いに異なる曲率半径を有する複数の曲線の組み合わせによる形状、および、直線と曲線の組み合わせによる形状からなる群より選ばれる1つの形状の断面プロファイルである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の脱気装置。
【請求項8】
前記接合片および前記コネクタが、それぞれ、熱可塑性樹脂でできている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の脱気装置。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂がテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体である、請求項8に記載の脱気装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2010−264405(P2010−264405A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118967(P2009−118967)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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