説明

脱気装置

【課題】脱気効率の高い脱気装置を提供する。
【解決手段】空調用の冷温水Wを貯蔵する蓄熱槽2と、この蓄熱槽の冷温水を循環させる循環ポンプ11と循環配管10を有する循環系3と、循環ポンプから吐出される冷温水Wに、この冷温水Wの水圧よりも高い圧力の窒素ガスを注入する窒素注入系4と、注入された窒素ガスと冷温水Wを、これらの流路に配設された複数の流路抵抗体により撹拌混合する静止型ミキサ16と、を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調用冷温水中の溶存酸素を除去して配管の腐食防止または抑制を図った脱気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱輸送媒体として水を使用する水方式の空調設備としては、例えば空調用の冷温水を貯蔵する大気開放型の蓄熱槽と、この冷温水を通水して空調する室内ユニットと、これら室内ユニットを介して蓄熱槽の冷温水を循環させる空調系配管等を具備している。
【0003】
従来、この種の空調系配管では、蓄熱槽内の冷温水を複数の室内ユニットの熱交換器を通して再び蓄熱槽へ戻すように再循環させているために日常的な管理が乏しい上、環境保護の見地から冷温水中に防錆用薬剤の投入等をしない無処理運転が実状である。
【0004】
しかし、冷温水がこのように大気開放の蓄熱槽を経て繰り返し循環するために、この冷温水中に大気中の酸素が混入、溶存し、配管に酸化腐食が発生する。この溶存酸素が腐食の最大の原因(例えば95%以上)となる。
【0005】
また、この空調系冷温水の温度差による溶存酸素濃度に差が生ずる濃淡現象や循環ポンプ等により水中の酸素が析出する現象により、一旦腐食した腐食酸化物は、長時間配管内を循環することになる。
【0006】
このために、この腐食酸化物が配管内や熱交換器内に付着し腐食の進行を早めている。
【0007】
なお、冷温水が室温から約80℃までの間は、水温が10℃上昇する毎に腐食速度は2倍になるが、80℃を超えると、溶存酸素量は大幅に減少し、100℃ではほぼゼロに減少するために腐食速度は遅くなる。
【0008】
ところで、一般的に水中の溶存酸素を脱気する脱気装置としては、エゼクタにより減圧して水中に窒素を注入することにより、水中の溶存酸素を窒素に置換する脱気装置や、真空ポンプと膜を利用して水中の酸素と窒素の除去を図った脱気装置が従来から知られている。
【0009】
しかし、これらは管理面に比較的高い技術を要すると共に、運転に多大の電力を消費しコスト高となる課題がある。
【0010】
また、このエジェクタによる脱気装置では、その脱気後、すなわち、溶存酸素が窒素に置換された後、再び大気開放の貯水槽内に戻され、その貯水の水面が空気(外気)に接触すると、酸素の比重の方が窒素よりも重いことと、置換後の窒素の方が外気よりも負圧で水中に溶存しているために、水中の窒素が外気中の酸素に容易に再置換されてしまうので、脱気効率が低いという課題がある。
【0011】
さらに、水中の溶存酸素を窒素に置換する場合、その一部は水中に溶存するが、その余剰分は水中にガス体として単に分散するに過ぎない。しかし、この窒素置換が減圧による場合には、この分散した余剰窒素ガスの気泡同士は干渉しにくく、互いに結合して大きく成長しにくいので、水中から脱気しにくい。このために、余剰分の窒素ガスが循環配管等の系内を循環すると、循環ポンプのポンプ効率の低下や系内のデッドスペースに貯まる等の課題も発生する。
【0012】
また、真空ポンプと膜を使用した脱気装置では、脱気後の戻り水が空気に接触すると、水はもともと所定量のガス吸収容量があるために、空気中の酸素が再び取り込まれてしまうという再吸収率が高い。すなわち、脱気効率が低いという課題がある。
【0013】
また、他の脱気装置としては、大気開放の貯水槽から水を脱気槽内へ流入させ、この脱気槽内が満水に達したときに、脱気槽内の貯水を、流入量よりも多い所定量で排水して満水面を降下させることにより減圧して間欠的に脱気し、この後、貯水槽から貯水が脱気槽内へ流入して上昇する水面により、脱気された酸素を押し上げ、外気へ排気させる脱気装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平4−15282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、この特許文献1記載の脱気装置では、脱気槽内の間欠的減圧により溶存酸素を分離し脱気するので、その脱気された水は、大気開放の貯水槽内へ戻されたときに、その貯水槽等の常圧環境で再び酸素が混合し溶存し易い状態にあり、脱気効率が低いという課題がある。
【0016】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、脱気効率の高い脱気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に係る脱気装置は、空調用の冷温水を貯蔵する蓄熱槽と、この蓄熱槽の冷温水を循環させる循環ポンプと循環配管を有する循環系と、前記循環ポンプから吐出される冷温水に、この冷温水の水圧よりも高い圧力の窒素を注入する窒素注入系と、前記注入された窒素と冷温水を、これらの流路に配設された複数の流路抵抗体により撹拌混合する静止型ミキサと、を具備していることを特徴とする。
【0018】
蓄熱槽は、熱輸送媒体として水を使用する水方式の空調設備の一部を構成するものであり、蓄熱槽内の水を冷暖房運転に応じて所要の温度に加熱または冷却して冷暖房用冷温水にする加熱冷却手段を有する。
【0019】
循環ポンプの吐出側では、この吐出される冷温水に、この冷温水の圧力よりも高い圧力の窒素が窒素注入系により注入され、さらに、静止型ミキサにより混合撹拌される。このために、窒素が高効率で冷温水中へ混合される。このために、ヘンリーの法則により、溶存酸素が高い圧力の窒素に置換されて分離され、再び蓄熱槽内へ戻される。
【0020】
蓄熱槽内へ戻された冷温水は、その水中の酸素が細かい気泡となって上昇し、蓄熱槽の冷温水の水面上に分離し、外気へ放出される。一方、冷温水中の窒素ガスは溶存酸素よりも高い圧力で水中に溶存しているので、その溶存状態は引き続き維持される。
【0021】
このような冷温水の循環を循環ポンプにより繰り返すことにより、時間の経過とともに、溶存酸素の窒素への置換が進行し、溶存酸素の脱気効率を向上させることができる。
【0022】
また、水中に分散された余剰の窒素ガスはその水圧よりも高い圧力で水中に気泡として分散しているので、この窒素ガスの気泡同士が干渉して互いに結合し易い。このために、溶存酸素が窒素に置換された後の戻り水が再び大気開放の蓄熱槽内の貯水に戻されると、その貯水中で、余剰窒素ガス同士の気泡が互いに干渉して結合し大きく成長し易いので、この余剰窒素ガスが水中から気泡として上昇し、外気へ放出される。
【0023】
このために、余剰窒素ガスが循環系を水と共に循環してポンプ効率の低下やデッドスペースへの貯溜を招くという課題を防止または低減できる。
【0024】
請求項2に係る脱気装置は、前記循環配管が、前記循環ポンプの上流側に、前記冷温水の流路およびその流路の外側に配設された電気化学的電位の異なる2種の導電性物質からなる一対の電極を有し、この流路を流れる冷温水をイオン化する自己起電式の流体処理装置を介装していることを特徴とする。
【0025】
流体処理装置は、蓄熱槽内の貯水を通水させることによりこの通水を一対の電極が無電源でイオン化してカルシウムやマグネシウム等のスケールの付着を低減ないし抑制することができる。なお、一対の電極とは、例えば正,負極一対の電極等を示し、正,負の各電極が各々複数個あってもよく、電気化学的電位の異なる2種の導電性物質からなる電極であればよい。
【0026】
請求項3に係る脱気装置は、前記窒素注入系が、外気を取り入れ、その外気から酸素を除去して窒素を発生させる窒素発生装置と、この窒素発生装置からの窒素を前記循環ポンプ吐出側の冷温水の水圧よりも高い所定圧に調整するレギュレータと、を具備していることを特徴とする。
【0027】
請求項4に係る脱気装置は、前記窒素発生装置が、取り入れた外気を、酸素を吸着する吸着剤を内蔵した酸素吸着剤容器内に複数回通気させることにより酸素を吸着させ、窒素を分離させるように構成されていることを特徴とする。
【0028】
請求項5に係る脱気装置は、前記窒素注入系がは、外気を取り入れて圧縮するコンプレッサと、このコンプレッサからの圧縮空気を貯蔵する一方、この圧縮空気を外気として前記窒素発生装置に供給する圧力タンクと、を具備していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
請求項1に係る脱気装置によれば、蓄熱槽内の冷温水が循環系を循環することにより、冷温水中の溶存酸素がこれよりも高い圧力の窒素ガスに置換されて行き、溶存酸素が分離除去される。このために、循環系の循環の繰返しにより冷温水中の殆どの溶存酸素が除去され、窒素に置換される。これにより、冷温水が通水する空調系を含む配管等の流体機器の溶存酸素による酸化、錆を防止または抑制することができる。
【0030】
請求項2に係る脱気装置によれば、蓄熱槽内の冷温水が循環系を循環する際に流体処理装置によりスケールの付着を防止または抑制できる。また、このために、溶存酸素によるスケールの酸化を防止または低減できるので、スケールの腐食酸化物の発生を防止または低減できる。これにより、腐食酸化物の空調系や循環系の配管等への付着に起因する腐食を防止または抑制できる。そのために、脱気効率をさらに向上させることができる。
【0031】
請求項3に係る脱気装置によれば、窒素発生装置により、外気から酸素を分離し窒素を発生させるので、窒素ボンベが不用であり、窒素ボンベの交換が必要である。その分、メンテナンスの容易性を向上させることができる。
【0032】
請求項4に係る脱気装置によれば、窒素発生装置が、外気を酸素吸着剤容器内に複数回通気させることにより、酸素を吸着させて窒素ガスを分離し、窒素ガスを作製するので、高純度の窒素ガスを迅速かつ効率的に発生させることができる。
【0033】
請求項5に係る脱気装置によれば、大量の外気をコンプレッサにより圧縮し、この圧縮空気を圧力タンクにより一旦貯蔵してから窒素発生装置に供給するので、大量の外気を短時間に窒素発生装置に安定的に供給することができる。
【0034】
このために、窒素発生装置による短時間当りの窒素発生量を安定的に増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る脱気装置の全体構成図。
【図2】図1で示す静止型ミキサの一部切欠側面図。
【図3】図1で示す静止型ミキサの一単位である抵抗体エレメントの側断面図。
【図4】図1で示す脱気装置の外観正面図。
【図5】図4で示す脱気装置の正面扉の開扉状態を示す正面図。
【図6】図5で示す脱気装置の要部平面図。
【図7】図1〜図6で示す脱気装置を、循環水量3m/h等により運転実験したときの水中溶存酸素減少曲線Aを示すグラフ。
【図8】図1〜図6で示す脱気装置を、循環水量6m/h等により運転実験したときの水中溶存酸素減少曲線Bを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を複数の添付図面に基づいて説明する。なお、これら添付図面中、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0037】
図1は本発明の一実施形態に係る脱気装置1の全体構成図、図4〜図6はこの脱気装置1の脱気装置本体1Aの外観正面図、同開扉状態の外観正面図、同外観平面図である。
【0038】
図1に示すように脱気装置1は、図4〜図6でも示す脱気装置本体1Aを具備している。脱気装置本体1Aは、角筒状のキャビネット12内に、蓄熱槽2内に貯蔵される冷温水Wを吸い込み、再び蓄熱槽2内へ戻す循環系3と、この循環系3を循環する冷温水W中に窒素を注入する窒素注入系4と、を収容している。
【0039】
蓄熱槽2は、熱輸送媒体として水を使用する水方式の空調設備の一部を構成する蓄熱槽であり、例えば貯蔵水量が1500t、深さ1.5m〜2m、複数の間仕切り9,9,9,…により仕切られている。また、蓄熱槽2は、例えばビル等の建屋の地下等に配設され、冷暖房用の冷温水Wを例えば断熱状態で所要量貯蔵する貯水槽であり、その貯水をビルの冷暖房運転に応じて所要温度に冷却し、または加熱する図示しない冷却加熱装置を具備している。
【0040】
また、蓄熱槽2には、空調設備の空調系配管5とその予備配管6を具備している。空調系配管5は、ラインポンプ7を有し、その吸込側端部を、蓄熱槽2内の冷温水W中に配設する一方、その吐出端側を、図示しない複数の室内ユニットの熱交換器にそれぞれ介装させた後、再び冷温水Wを蓄熱槽2内へ戻すように構成されている。室内ユニットは冷暖房しようとする部屋等の空調空間に配設され、冷温水Wを通水させる熱交換器を具備している。予備配管5も予備のラインポンプ8を具備している。
【0041】
そして、循環系3は、蓄熱槽2内の冷温水Wを循環させる循環配管10を具備しており、後述するようにこの循環配管10の吸込側端部と吐出側端部を共に蓄熱槽2内へ配設している。循環配管10の途中には、例えば2.2kW、自吸式ポンプ(3m/hまたは6m/h)の循環ポンプ11を介装している。循環配管10は、循環ポンプ11の吸込側に、吸込管10aを接続する一方、その吐出側に吐出管10bを接続している。これら吸込管10aと吐出管10bは、その先端部を、吸込側フランジ10aaと吐出側フランジ10bbにそれぞれ形成している。これら吸込側,吐出側フランジ10aa,10bbは、図1中破線で示すキャビネット12の壁面に内外を貫通する状態で固着されている。吸込側フランジ10aaには吸込ライン13が接続され、吐出側フランジ10bbには吐出ライン14が接続されている。これら吸込ライン13と吐出ライン14の一端部(図1では下端部)は蓄熱槽2内の冷温水W中に水没した状態で配設される。吐出ライン14は、その吐出端部14aを、吸込ライン13の吸込端部13aよりも深い位置まで延在されている。
【0042】
そして、吸込管10aは、その途中に、流体処理装置の一例である水処理装置15を介装している。水処理装置15は、冷温水Wを通水する管状部材を有し、その外周面に、電気化学的電位の異なる2種の導電材からなる正極と負極とを電極として離間配置することにより構成され、この管状部材内を冷温水Wが通水することにより、この冷温水Wが電極によりイオン化されてカルシウムやマグネシウム等のスケールの配管等への付着が低減され、または抑制されるものである。この水処理装置15の一例としては特許第3097813号掲載公報に記載された液体処理装置を使用することができる。一方、循環配管10は、その吐出管10bの途中に静止型ミキサ16を介装している。
【0043】
図2は静止型ミキサ16の一部切欠側面図である。このミキサ16は、図3で示す抵抗体エレメント16aの複数個を軸方向に同心状に一体に連成して構成されている。抵抗体エレメント16aは、冷温水Wを図中矢印方向に通水させる円管16bの内周面に、図3中、上下一対の流路抵抗体16b,16cを、ほぼハ字形状をなすように円管16bの互いに対向する内周面から下流側に傾斜した状態で舌状に突出させ、かつその一方の抵抗体、例えば16cが円管16bの中心線Oと交差するように他方の抵抗体16dよりも長くなるように形成されている。
【0044】
そして、図2に示すように、これら複数の抵抗体エレメント16aを、この円管16bの周方向に順次所定角度(例えば45°)ずつずらしながら筒状体の軸線方向に同心状に並べて一体に連結連成している。
【0045】
なお、各抵抗体エレメント16aの軸長の寸法を円管16bの直径Dに対して約0.95Dに形成してもよい。
【0046】
ミキサ16は、円管16b内を図2,図3中、矢印方向に通水する冷温水Wを分散、剪断、スライド重混合、反転させることにより、この冷温水W中に後述する窒素ガスを高効率で混合し、溶存酸素を窒素に高効率で置換させることにより、溶存酸素を除去させるミキサである。
【0047】
また、このミキサ16では、上記抵抗体エレメント16aの接続数を増加させることにより窒素ガスの混合効率を向上させることができる。例えば、抵抗体エレメント16aの数をnとすると、5のn乗(5)で混合効率を向上させることができる。
【0048】
一方、窒素注入系4は、窒素発生装置17とその吐出口側に接続された窒素注入管17aとを有し、この窒素注入管17aの吐出端17aaを、循環配管10の吐出管10bの軸方向途中の連結部cに連結し、この吐出管10bには、例えば0.2MPaの冷温水Wに、これよりも高圧の例えば0.3MPaの窒素を注入させる。
【0049】
窒素発生装置17は、例えば圧縮空気中の酸素を吸着する酸素吸着剤を収容した酸素吸着剤筒内に圧縮空気を通すことにより、空気中の酸素を酸素吸着剤により吸着させて窒素を分離捕集し、高純度の窒素を窒素吐出管17aへ吐出するものである。窒素発生装置17の一例としては、2台の酸素吸着剤筒を有し、圧縮空気をこれら2台の酸素吸着剤筒内に交互にかつ複数回繰返し通気させることにより、空気中から酸素を吸着剤に吸着させて外気へ排気し、窒素を分離捕集することにより高純度(例えば99%〜99.99%)の窒素を窒素吐出管17に吐出するPSA(Pressure Swing Adsorption)式等がある。窒素発生装置17は、その内部で発生したドレンを外部へ自動的に排水するオートドレン装置Daを具備している。
【0050】
窒素吐出管17aは、その途中に、窒素発生装置17側から窒素吐出端17aa側に向けて、フィルタ18、流量調節器19、窒素圧力調整手段であるレギュレータ20、圧力スイッチ21、電磁弁22、チェック弁23を順次この順に介装している。
【0051】
フィルタ18は窒素を通すことにより塵埃等異物を捕捉して窒素を浄化するガスフィルタである。流量調節器19はその弁開度を手動操作等により予め設定しておくことにより、窒素の流量を制御する。
【0052】
圧力スイッチ21は窒素の圧力が予め設定されている過圧を検出したときに、後述するコンプレッサ24の運転を停止させ、電磁弁22を閉弁する。
【0053】
窒素発生装置17は、その空気入口端に、圧縮空気を通す空気管24を介して圧力タンク26の空気出口端を接続している。空気管25の途中にはエアーフィルタ27、圧縮空気の圧力を所要圧に制御するエアーレギュレータ28を介装している。圧力タンク26は、その入口端部に、連結管29を介してコンプレッサ24の圧縮空気出口端部を連結しており、コンプレッサ24から吐出される所要圧の圧縮空気を所要量貯蔵して静圧を回復させてから窒素発生装置17に供給するように構成されている。これら圧力タンク26とコンプレッサ24にも上記オートドレン装置Db,Dcが設けられている。これらオートドレン装置Db,Dcには上記オートドレン装置Daと同様に、排水管30が接続されている。
【0054】
コンプレッサ24は、図示省略の外気取入口から外気を吸い込み、圧縮して所要圧(例えば150気圧)の圧縮空気を圧力タンク26に圧送する、例えばオイルフリーパッケージ型のコンプレッサであり、2.2kWのコンプレッサ用モータとエアードライヤを具備している。これら圧力タンク26とコンプレッサ24は、上記脱気装置本体1Aのキャビネット12とは別体のキャビネット26a,24a内にそれぞれ収容されている。
【0055】
一方、図2に示すように脱気装置本体1Aのキャビネット12は、その正面に、開閉自在の図中左右一対の扉12a,12bを設け、キャビネット12内部には、図3,図4に示すように、上記循環系3と窒素注入系4の機器を収容している。なお、図2中、符号12cは一方の扉12aに形成された窓であり、図3中、符号31は制御盤である。
【0056】
次に、この脱気装置1の作用を説明する。
【0057】
まず、制御盤31に設けた図示省略の運転スイッチがONに投入されると、まずコンプレッサ24が運転され、所定時間経過後、循環ポンプ11が運転される。
【0058】
このために、コンプレッサ24は、外気を吸い込み、圧縮して例えば150気圧の圧縮空気を吐出する。この圧縮空気は図示しないエアードライヤにより除湿、乾燥され、その際に発生するドレンはオートドレン装置Dcにより排水管30へ排水される。
【0059】
コンプレッサ24で圧縮された圧縮空気は連結管29を通して圧力タンク26内に圧送され、ここで所定量、一旦貯蔵されることにより静圧を回復する。この圧力タンク26内で発生したドレンもオートドレン装置Dbにより排水管30へ排水される。
【0060】
圧力タンク26内の圧縮空気は空気管25を通して窒素発生装置17内へ圧送されるが、その前に、エアーフィルタ27を通気する際に圧縮空気中の塵埃等異物が除去されて浄化され、レギュレータ28により圧力が所定圧に制御される。
【0061】
窒素発生装置17では、供給された圧縮空気が、例えば複数台の酸素吸着剤筒内に交互に、かつ複数回繰返し通気される。その際に、空気中の酸素が酸素吸着剤により繰返し吸着され、窒素と分離されて捕集され、高純度(例えば99%)の窒素ガスが生成される。分離された酸素は図示しない排気管により外気へ排気される。
【0062】
窒素発生装置17により生成された窒素ガスは、注入系4のエアーフィルタ18を通気する際に再度浄化され、さらに流量調節器19により所定流量に調節され、レギュレータ20により所定圧に調整される。この所定圧は、循環ポンプ11から吐出される冷温水Wの圧力(例えば0.2MPa)よりも高い圧力(例えば0.3MPa)である。このレギュレータ20を通過した窒素のガス圧が所定の上限値よりも高い過圧を圧力スイッチ21により検出したときは、脱気装置1の保護と安全性確保のためにコンプレッサ24や窒素発生装置17、循環ポンプ11等の運転を停止させる。
【0063】
一方、このとき、循環系3では、循環ポンプ11の運転により、蓄熱槽2内の冷温水Wが吸込ライン13と吸込管10aを通して水処理装置15内を流入される。水処理装置15では、これを通水する冷温水Wが電極によりイオン化されてスケールの付着が抑制され、循環ポンプ11内へ吸い込まれ、ここで所定圧、例えば0.2MPaに昇圧されてから吐出管10bへ吐出される。
【0064】
この吐出管10bの連結部cでは窒素注入管17aから冷温水Wの水圧(例えば0.2MPa)よりも高圧の(例えば0.3MPa)の窒素ガスが所定流量で注入され、静止型ミキサ16で冷温水Wと混合される。
【0065】
この静止型ミキサ16では、その内部を冷温水Wと窒素ガスが通水する際に、これらは複数の流路抵抗体16b,16c,…により分散、剪断、スライド重混合等の種々の作用を受けて高効率で混合される。これにより、冷温水W中の溶存酸素がヘンリーの法則によりガス体気泡化されて分離される一方、窒素ガスが冷温水W中に溶存し、酸素と置換される。
【0066】
こうして溶存酸素が気泡化されて分離され窒素と置換された冷温水Wは吐出管10bと吐出ライン14を通して再び蓄熱槽2内の冷温水W中に戻される。ここで、戻された冷温水W中に分離されて細かく気泡化された酸素が冷温水W中を上昇し、その水面上方の常圧空間へ排気され、外気へ放出される。一方、冷温水W中の窒素ガスは溶存酸素よりも高圧であるので、冷温水W中に溶存した状態を長時間保持する。
【0067】
したがって、以上の脱気装置1の運転を繰り返すことにより、蓄熱槽2内の冷温水W中の溶存酸素の殆どが窒素に置換される。
【0068】
また、水中に分散された余剰の窒素ガスはその水圧よりも高い圧力で水中に気泡として分散しているので、この窒素ガスの気泡同士が干渉して互いに結合し易い。このために、溶存酸素が窒素に置換された後の戻り水が再び大気開放の蓄熱槽内の貯水に戻されると、その貯水中で、余剰窒素ガス同士の気泡が互いに干渉して結合し大きく成長し易いので、この余剰窒素ガスが水中から気泡として上昇し、外気へ放出される。
【0069】
このために、余剰窒素ガスが循環系を水と共に循環してポンプ効率の低下やデッドスペースへの貯溜を防止または低減できる。
【0070】
このために、この蓄熱槽2内の冷温水Wを通水させる空調系の空調系配管5や、その予備配管6、その他脱気装置1の種々の配管等の溶存酸素による酸化、錆の発生を防止または抑制することができる。また、水処理器15により配管へのスケールの付着を防止または抑制することができる。
【0071】
図7はこの脱気装置1を次の条件で実験した場合に、この脱気装置1の運転時間(分)と、水中の溶存酸素量(DOmg/L)の減少との相対関係を曲線Aにより示している。
【0072】
・蓄熱槽2として使用した試験水槽:1000×1000×1200mm/H(有効1000L)
・原水温度:11℃(飽和溶存酸素量10.67mg/L)
・循環水量:3m/h、窒素置換量:8.3L/min
・窒素置換圧力:0.3MPa
【0073】
同じく図8は、図7で示す実験条件を、その中の循環水量を6m/hに、窒素置換量を16.6L/minにそれぞれ変更し、それ以外は同一条件の場合に、脱気装置1の運転時間(分)と水中の溶存酸素量(DOmg/L)の減少との相対関係を曲線Bにより示している。
【0074】
これら実験によれば、脱気装置1を、例えば43分間や22分間運転することにより、水中の溶存酸素を窒素ガスにほぼ置換し、溶存酸素をほぼゼロに減少させることができる。
【0075】
また、蓄熱槽2内の冷温水が循環系3の循環配管10を循環する際に水処理装置15によりスケールの付着を防止または抑制できる。また、このために、溶存酸素によるスケールの酸化を防止または低減できるので、スケールの腐食酸化物の発生を防止または低減できる。これにより、腐食酸化物の空調系や循環系の配管等への付着に起因する腐食を防止または抑制できる。そのために、脱気効率をさらに向上させることができる。
【0076】
さらに、窒素発生装置17により外気から酸素を分離し窒素を発生させるので、窒素ボンベが不用であり、窒素ボンベの交換が必要である。その分、メンテナンスの容易性を向上させることができる。
【0077】
また、窒素発生装置17は、外気を酸素吸着剤容器内に複数回通気させることにより、酸素を吸着させて窒素ガスを分離し、窒素ガスを生成させるので、高純度の窒素ガスを短時間で効率的に発生させることができる。
【0078】
さらに、大量の外気をコンプレッサ24により圧縮し、この圧縮空気を圧力タンク26により一旦貯蔵してから窒素発生装置17に供給するので、大量の外気を短時間に窒素発生装置17に安定的に供給することができる。
【0079】
このために、窒素発生装置17による短時間当りの窒素発生量を安定的に増大させることができる。
【符号の説明】
【0080】
1…脱気装置、1A…脱気装置本体、2…蓄熱槽、3…循環系、4…窒素注入系、5…空調系配管、10…循環配管、11…循環ポンプ、15…水処理装置、16…静止型ミキサ、17…窒素発生装置、24…コンプレッサ、26…圧力タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用の冷温水を貯蔵する蓄熱槽と、
この蓄熱槽の冷温水を循環させる循環ポンプと循環配管を有する循環系と、
前記循環ポンプから吐出される冷温水に、この冷温水の水圧よりも高い圧力の窒素を注入する窒素注入系と、
前記注入された窒素と冷温水を、これらの流路に配設された複数の流路抵抗体により撹拌混合する静止型ミキサと、
を具備していることを特徴とする脱気装置。
【請求項2】
前記循環配管は、前記循環ポンプの上流側に、前記冷温水の流路およびその流路の外側に配設された電気化学的電位の異なる2種の導電性物質からなる一対の電極を有し、この流路を流れる冷温水をイオン化する自己起電式の流体処理装置を介装していることを特徴とする請求項1記載の脱気装置。
【請求項3】
前記窒素注入系は、外気を取り入れ、その外気から酸素を除去して窒素を発生させる窒素発生装置と、この窒素発生装置からの窒素を前記循環ポンプ吐出側の冷温水の水圧よりも高い所定圧に調整するレギュレータと、
を具備していることを特徴とする請求項1または2記載の脱気装置。
【請求項4】
前記窒素発生装置は、取り入れた外気を、酸素を吸着する吸着剤を内蔵した酸素吸着剤容器内に複数回通気させることにより酸素を吸着させ、窒素を分離させるように構成されていることを特徴とする請求項3記載の脱気装置。
【請求項5】
前記窒素注入系は、外気を取り入れて圧縮するコンプレッサと、
このコンプレッサからの圧縮空気を貯蔵する一方、この圧縮空気を外気として前記窒素発生装置に供給する圧力タンクと、
を具備していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−11100(P2011−11100A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154642(P2009−154642)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(391036323)株式会社サンワード (4)
【出願人】(000174529)
【Fターム(参考)】