説明

脱水装置の運転方法

【課題】 水分離膜を用いた脱水装置に採用され、水分離膜の性能を好適に回復又は維持するようにした脱水装置の運転方法を提供する。
【解決手段】 水分離膜より成る水分離膜部2と、該水分離膜部2の外側面と、装置本体内壁とで規定されるシェル部3とを有する水分離膜ユニットを備える脱水装置1の運転方法であって、上記水分離膜2から透過する気体中の漏洩成分の濃度が設定値を超えた際、上記脱水装置1の稼働を停止し、原料液体7に酸を加え、稼働させ、水分離膜を再生することとし、又は原料液体に酸を加えて、稼働させ、水分離膜の性能を維持するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水装置の運転方法に関する。本発明は、特に、水との共沸組成を持つエタノールやプロパノールと水との混合物を効率的に脱水することができる脱水装置について、その運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油燃料を代替する燃料源として、エタノールが注目されており、その市場規模は、2010年に5500万キロリットルと予測されている。しかし、エタノールを燃料として採用するためには、トウモロコシ等のバイオ原料から得た粗製物を蒸留精製し、少なくとも99.7wt%以上に脱水しなければならない。
【0003】
このために、膜分離器を用いたパーベーパレーション法膜分離により、完全に相互溶解する液体混合物から水を分離する方法が知られている(特許文献1:特開平7−124444号公報)。パーベーパレーション法膜分離は、相互溶解する液体混合物の分離において、分離性のよさ、省エネルギーといった利点を有する。
【0004】
ここで、このような膜分離器として、複数本の水分離膜を組み込んだ水分離膜ユニットを用いた脱水装置を本発明者らは開発している。
かかる脱水装置では、使用期間が経過すると、透過されて来る気体中のエタノールの含有量が増大するという傾向があった。すなわち、本来、親水性の特性を持つ水分離膜が親油化し、十分な水分離性能を発揮することができなくなるという傾向があった。
これに対する対策として、新たな水分離膜ユニットを、脱水装置が使用されている場所に工場より搬入し、古い水分離膜ユニットと交換する必要があった。古い水分離膜ユニットは、内部の水分離膜を新しい水分離膜と交換し、次の交換に備えるといったことが行われている。
【0005】
しかし、このように水分離膜ユニットを交換することは、脱水工程に要するコストの増大を招き、ひいては、目的とするエタノール等の製造コストそのものの増大に繋がりかねないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−124444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、水分離膜を用いた脱水装置に採用され、水分離膜の性能を好適に回復又は維持するようにした脱水装置の運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、水分離膜より成る水分離膜部と、該水分離膜部の外側面と、装置本体内壁とで規定されるシェル部とを有する水分離膜ユニットを備える脱水装置の運転方法であって、上記水分離膜から透過する気体中の漏洩成分の濃度が設定値を超えた際、上記脱水装置の稼働を停止し、原料液体に酸を加え、稼働させ、水分離膜を再生することを特徴とする。
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、別の形態として、水分離膜より成る水分離膜部と、該水分離膜部の外側面と、装置本体内壁とで規定されるシェル部とを有する水分離膜ユニットを備える脱水装置の運転方法であって、原料液体に酸を加えて、稼働させ、水分離膜の性能を維持するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水分離膜を用いた脱水装置に採用され、水分離膜の性能を好適に回復又は維持するようにした脱水装置の運転方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(A)は、本発明に係る脱水装置の運転方法の対象となる脱水装置を概念的に説明する模式的な縦断面図である。 (B)は、図1のA−A線による断面図である。
【図2】(A)は、本発明に採用することのできる水分離膜の一実施の形態を上方から見た平面図である。 (B)は、(A)のC−C線による縦断面図である。
【図3】(A)は、本発明に係る脱水装置の運転方法の対象となる脱水装置に採用される水分離膜モジュールの一形態を説明する模式的な縦断面図である。 (B)は、水分離膜モジュール内に水分離膜部110が複数配設された状態を示す上方から見た概念図である。
【図4】本発明が適用される脱水装置の一実施の形態を示す模式図である。
【図5】本発明に係る脱水装置の運転方法のうち、第1の実施の形態を実施した結果を示すグラフである。
【図6】本発明に係る脱水装置の運転方法のうち、第2の実施の形態を実施した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る脱水装置の運転方法について、その実施の形態を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0013】
脱水装置の基本形態
図1に、本発明に係る運転方法の適用される脱水装置の一実施の形態を示す。
図1に示す脱水装置は、主たる構成要素として、脱水装置1本体内に、水分離膜部2と、シェル部3と、加熱手段4と、真空ダクト6とを備え、脱水装置本体には減圧装置5が接続される。
【0014】
図1の(A)、(B)に示すように、水分離膜部2は、水分離膜2dから構成されており、液体の入口2aが下端に、出口2bが上端にあって、その内部には液体の流路2cとして、液体を通すための上下に延びる一以上の中空部が形成されている。シェル部3は、水分離膜部2の側面の周囲に位置する。シェル部3内の上方であって、液体の出口2b付近には、加熱手段4が設けられている。
一方、シェル部3の下方であって、液体の入口2a付近には、真空ダクト6が設けられている。真空ダクト6は減圧装置5に接続されている。
【0015】
水分離膜部2は、液体を無水物と水とに分離する。かかる水分離膜部2としては、様々な形態のものが知られており、市販されている。本実施形態による水分離膜部としては、一例として、モノリス型のものと、チューブラ型の水分離膜部を用いることができる。
【0016】
水分離膜部の実施の形態
図2にモノリス型の水分離膜部110の例を挙げて説明する。
モノリス型の水分離膜部110は、円柱状の水分離膜110dに液体を通すための上下に延びる一以上の中空部である液体の流路110cを複数設けたものである。なお、図1の水分離膜部2も同様に流路を複数設けたものとして構成することができる。
通常、かかる形態の水分離膜部においては、水分離膜内部の液体の流路110cを、膜の一次側、又は供給側といい、水分離膜110dの外側を、膜の二次側、又は透過側とよぶ。
【0017】
このような水分離膜部110を用いたパーベーパレーション法膜分離においては、水分離膜部110を、好ましくは流路の方向が鉛直方向と平行になるように設置する。そして、水分離膜部110の透過側を減圧しながら、鉛直方向下側の入口110aから液体を供給し、重力と逆の向きに流して、鉛直方向上側の出口110bから液体を排出する。かかる操作により、液体中の水が、水蒸気となって、円柱状の水分離膜110dの側面から、透過側に引き抜かれる。その結果、水分離膜部出口110bから回収される液体は、脱水されたものとなっている。
【0018】
図示したモノリス型の水分離膜部110は、概略的なものであるが、一例として、直径が30mmの円柱状の水分離膜に対して、直径が3mmの穴を30個設けた水分離膜部を用いることができる。別の例として、直径が150〜200mmの水分離膜部に対して、直径が2mmの穴を200個設けた水分離膜部を用いることができる。水分離膜部の長さは、所望の膜性能に応じて当業者が適宜決定することができるが、一例として、150mmから1mのものを用いることができる。
【0019】
水分離膜部110を構成する水分離膜の材質としては、無機材でナノオーダー又はそれより小さい孔径が精密に制御された微細孔多孔膜を用いることができる。微細孔多孔膜は、小分子ガスを通し、大分子ガスを排除する分子ふるい効果を発現し、その透過係数は温度上昇とともに増加する活性化拡散の挙動を示す。微細孔多孔膜の例としては、炭素膜、シリカ膜、ゼオライト膜が挙げられる。本実施形態においては、水分離膜としては、細孔径10オングストローム以下のシリカ系又はゼオライト系の無機水分離膜が好適である。
【0020】
また、特許第2808479号記載の無機水分離膜も適用可能である。該特許第2808479号の無機水分離膜は、無機多孔体の細孔内に、エトキシ基又はメトキシ基を含むアルコキシシランの加水分解を経て得られたシリカゲルを担持することによって得られる耐酸性複合分離膜である。
【0021】
水分離膜部110の形態、サイズ、及び材質は、使用目的に応じて当業者が適宜選択することができる。
【0022】
水分離膜ユニットの実施の形態
図3に、水分離膜部110を複数配設し、水分離膜ユニット112として構成した形態を示す。
図示のように、この形態では、複数の水分離膜部を上下の管板で支持し、空間116、118及び120は、水密的に隔絶された空間を形成している。
水分離膜部110の機能は、図2について説明したと同様である。
すなわち、空間116から導入された液体が、水分離膜部110の流路を通って、空間120に流れ、精製された液体として排出される。空間118には、引き抜かれた水蒸気が透過して行く。
【0023】
脱水装置の基本形態に関する追加説明
上記した図2、図3についての説明と一部重複するが、ここで図1に戻って解説する。図2の水分離膜部110は、液体の流路を複数備え、図3の水分離膜部110は、水分離膜ユニット112内に複数配設されている。これに対し、図1では、単一の水分離膜部であって、流路も一のみである。しかし、図2、図3のような形態の水分離膜部、水分離膜ユニットを備えたものとすることができる。
【0024】
図1で、シェル部3は、水分離膜部2の周囲にあって、水分離膜の透過側にあたり、水分離膜部2の側面から放出される水蒸気8の流路となる部分である。本実施形態において、シェル部3は、水分離膜部2の側面と、脱水装置1本体の内壁とにより規定される空間部分である。シェル部3は、水分離膜部2に供給する前の液体、又は水分離膜部2から回収される液体7が流れ込むことがないように構成されている。
【0025】
シェル部3内部の上方であって、水分離膜部2の液体出口2b付近には、加熱手段4が設けられている。出口2b付近とは、水分離膜部2の出口2bを通過する液体を所望の温度に加熱することができる程度に近い場所をいう。加熱手段は、好ましくは出口2b付近の周囲に設置するが、一部に設置してもよい。加熱手段4は、水分離膜部2の出口付近の液体及び、水分離膜部2からシェル部3に放出された水蒸気8を加熱する。加熱手段4としては、電熱ヒータやスチームなどの一般的なものを用いることができる。水分離膜部2を流れる液体7を、共沸点に達しない共沸点付近にまで、又は共沸点のない酢酸などと水の混合物の場合は100〜150℃まで加熱することができるものであればよい。
【0026】
シェル部3の下方であって、水分離膜部2の入口2a付近には、真空ダクト6が設けられる。真空ダクト6は、減圧装置5に接続するための接続口となる。真空ダクト6から、シェル部3に放出された水蒸気8を回収する。真空ダクト6は、図示するように横向きに設けられてもよく、鉛直方向下向きに設けられてもよく、その向きが限定されるものではないが、シェル部3の最下面であって、加熱手段4から遠い箇所に設けられることが好ましい。シェル部3の一番下まで熱を対流させるためである。
【0027】
また、真空ダクト6は、複数ではなく、一つだけ設けることが好ましい。加熱手段4から真空ダクト6への一方向への、水蒸気8及び熱の対流を形成するためである。しかし、実質的に一方向への水蒸気8及び熱の対流を形成することができる位置、向きであれば、複数の真空ダクト6を設けることもできる。
【0028】
減圧装置5は、シェル部3を減圧して、水分離膜部2から放出された水蒸気を吸引する手段である。圧力を、10〜100torr(1333.22〜13332.2Pa)程度にまで減圧するものであればよく、通常の減圧ポンプ等を用いることができる。
【0029】
次に、本実施の形態に係る脱水装置1により液体を脱水する方法の一形態を説明する。
本実施の形態に係る脱水装置1の対象とする液体は、一般的には、水と相互溶解する液体と、水との混合物である。具体的には、エタノールと水との混合物、プロパノールと水との混合物、又は酢酸などの酸と水との混合物が挙げられる。
本実施形態にかかる方法によれば、エタノールの場合、例えば燃料用途に好適な99.7%の無水物にまで脱水し、又は半導体基板洗浄用途の99.99%以上にまで脱水する。液体は、原料となる混合物を、蒸留塔やアルコール選択膜で処理して、アルコール又は酸の濃度を、80〜95wt%としたものである。なお、処理対象となる液体は、加圧した液体であってもよい。加圧した液体を用いることで、本実施の形態に係る脱水装置1に供給する液体をガス化させることなく、液体の温度を上げることができる。この場合、例えば、1.5atmから10atm、好ましくは2atmから3atmに加圧した液体を用いることができる。
以下、燃料として有用なエタノールと水との混合物を液体の一例として脱水方法を説明する。本実施の形態に係る脱水装置に供給する液体におけるエタノール濃度は、95wt%と例示しているが、特に限定される物ではない。
【0030】
図1に示すように、95wt%のエタノールと、5wt%の水との混合物である液体7を熱交換器で昇温した後、水分離膜部2の液体入口2aから供給する。液体7の水分離膜部2への供給流速は、0.5〜1m/secとすることが好ましい。しかし、供給流速は、透過フラックスとの関係で、当業者が適宜決定することができる。また、液体7の供給時の温度は、エタノールと水との共沸点に近いが共沸点(約80℃)未満である70℃から80℃未満とすることが好ましい。液体7の温度が高いほど、透過フラックスが大きくなり、膜性能が上がるいっぽうで、共沸点より高い温度では、液体7の一部が気化し、蒸発潜熱を奪うためである。
【0031】
水分離膜部2に液体7を供給するとき、シェル部3を減圧する。このとき、シェル部3の圧力が、10〜100torr(1333.22〜13332.2Pa)程度となるように減圧することが好ましい。水分離膜の供給側と透過側の差圧により分離を促進するためである。減圧は、シェル部3下方に設けた真空ダクト6より行う。シェル部3の上方では、加熱手段4により水分離膜部2の出口付近を加熱する。液体7が共沸点付近であって共沸点未満になるまで加熱することが好ましい。具体的には、液体が70℃から80℃未満となるように加熱することが好ましい。
【0032】
液体7は、水分離膜部2の下から上へ流路2cを流れる。このあいだに、液体7中の水が、分離膜2dを介してシェル部3へ水蒸気8として取り出される。水の気化により液体7は、随時気化熱を奪われるが、出口2b付近が加熱されているため温度が低下することなく保たれる。したがって、出口2bから回収される液体7は、温度は供給時と同程度で、含有水濃度が低下したものとなっている。
【0033】
シェル部3へ放出された水蒸気8は、シェル部3の上方から下方へと対流する。
これは、シェル部3上方を加熱していると同時に、シェル部3下方から減圧吸引しているためである。水蒸気8は、図1の(B)に示すように、ダクト6に向かって対流しながら、分離膜2dを介して流路2c内の液体7を昇温する。そして、水蒸気8はシェル部3下方の真空ダクト6から回収される。回収された水蒸気8は、その後段で、熱交換器等の冷却器で凝縮される。図1には、二つの加熱手段4が設けられている形態を示したが、ダクト6からいちばん遠い位置、すなわち図1(A)のシェル部3の左上に一つの加熱手段が設置されれば、図1(A)のシェル部3の右下のダクト6まで、熱が対流することとなる。
【0034】
本実施形態では、説明を簡単にするため、一つの水分離膜部2を備える脱水装置1の形態を図示したが、本発明にかかる脱水装置は、図3について上記したように脱水装置本体(水分離膜ユニット)内に複数の水分離膜部を並列に接続して備えるものであってもよい。この場合、複数の水分離膜部は、脱水装置本体内に平行に設置する。すなわち、複数の水分離膜部の液体入口2aが装置本体内で略同じ高さに位置し、同様に、複数の水分離膜部の液体出口2bが略同じ高さに位置することになる。そして、加熱手段は、各水分離膜部の出口付近を、いずれも同じ温度にまで加熱昇温することができるような位置、態様で設けることができる。そして、かかる形態においても、シェル部3は、脱水装置本体の内壁と、複数の水分離膜部2の外側面とで規定される一つの連続した空間となっていて、その内部を熱及び水蒸気が上部から下部に向けて対流することができる。脱水装置本体内に複数の水分離膜部を並列に接続して設けることにより、一つの脱水装置にて一度に処理する液体の量を増やすことができる。
【0035】
図1に示す実施の形態にかかる脱水装置を用いた方法によれば、液体を水分離膜部2の出口付近で加熱することにより、膜性能を上げることができる。
膜性能は、透過フラックスで評価することができ、透過フラックスは温度に比例することが知られている。本実施形態において好ましく用いられる水分離膜は、約40℃から約80℃まで変化させると、透過フラックスが約3倍まで増加する。液体を、水分離膜部2の入口2aから出口2bに至るまで70℃から80℃未満に保持することによって
、水分離膜部2の全ての箇所で、高い透過フラックスを得ることができ、膜性能を高めることができる。具体的には、従来技術と比較して、透過フラックスを約50%上げることができる。そして、液体中のエタノール濃度が、燃料に適する99.7wt%以上となるまで脱水することができる。
【0036】
以上において、本発明に係る運転方法が適用される対象となる脱水装置の実施の形態について説明した。
次に、本発明に係る脱水装置の運転方法について、その実施の形態を説明する。
【0037】
脱水装置の運転方法(第1の形態)
本発明に係る脱水装置の運転方法は、第1の形態として、水分離膜から透過する気体中の漏洩成分の濃度が設定値を超えた際、脱水装置の稼働を停止し、原料液体に酸を加え、稼働させ、水分離膜を再生することとしている。
【0038】
「気体中の漏洩成分の濃度が設定値を超えた」かどうかは、例えば、漏洩成分であるエタノールの透過速度をシェル部で測定することによって判定できる。
エタノールの透過速度は、(原料組成×流量−製品組成×製品流量)として検出することができる。
設定値は、理想的にはゼロであるが、コスト面等を考慮し、適切に設定する。
【0039】
原料液体は、上記したように、一般的には、水と相互溶解する液体と、水との混合物である。具体的には、エタノールと水との混合物、プロパノールと水との混合物、又は酢酸などの酸と水との混合物が挙げられる。
用いることができる酸としては、塩酸、硫酸、酢酸、燐酸、ホウ酸及び硝酸を挙げることができる。酸の濃度は、10〜1,000ppmとすることが好適である。
【0040】
脱水装置の運転方法(第2の形態)
本発明に係る脱水装置の運転方法は、第2の形態として、原料液体に酸を加えて、稼働させ、水分離膜の性能を維持することとしている。
【0041】
原料液体は、上記したように、一般的には、水と相互溶解する液体と、水との混合物である。具体的には、エタノールと水との混合物、プロパノールと水との混合物、又は酢酸などの酸と水との混合物が挙げられる。
用いることができる酸としては、塩酸、硫酸、酢酸、燐酸、ホウ酸及び硝酸を挙げることができる。酸の濃度は、0.1〜10ppmの範囲とすることが好適である。
【0042】
複数の水分離膜ユニットを備えた脱水装置の運転方法
次に、図4について、本発明の適用対象となる脱水装置を、複数の水分離膜ユニットを備えた形態とし、上記第2の形態に係る運転方法として実施するシステムを説明する。
【0043】
本実施の形態に係る脱水装置200では、複数の水分離膜ユニット202が平行に配置されている。
そして、水分離膜ユニット202同士が直列に管204によって接続されている。すなわち、一の水分離膜ユニット202の出口と別の水分離膜ユニット202の入口とが、管204によって直列に接続されている直列処理型である。
各水分離膜ユニット202の入口側には、加熱器206が設けられている。図1の実施の形態では加熱手段を、水分離膜ユニット(脱水装置)内に設けている。本実施の形態でも、このような加熱手段を併設することもできる。
直列に接続する水分離膜ユニット202の数は、例えば、3〜5とすることができる。しかし、各水分離膜ユニット202の仕様や性能、処理対象となる液体の所望の純度によって、当業者が接続する数を適宜決定することができる。
【0044】
さらに、本実施の形態は、原料液体タンク208、酸供給タンク210、製品タンク212を備える。また、供給用ポンプ214、216、218を備える。なお、熱回収用熱交換器220、開閉弁222が設けられている。
【0045】
本実施の形態に係る脱水装置200では、直列に接続された水分離膜ユニット202に原料液体タンク208から原料液体が供給される。原料液体として、例えばエタノールと水の混合液体の脱水する際、原料液体は、加熱器206等で冷却防止し、又は昇温してから水分離膜ユニット202に供給される。これにより、直列に接続された各水分離膜ユニット202を流れる液体は、すべて、エタノールの共沸点付近であって、共沸点未満の温度に保持される。
したがって、各水分離膜ユニット202において図1にかかる実施の形態と同様の効果が得られる。そして、そのような水分離膜ユニット202が直列に複数接続されていることで、全体としてより高い性能が得られ、液体を純度の高いエタノールにまで脱水することができる。
脱水後、液体は、製品タンク212に送られ、貯蔵される。
【0046】
そして、図4の実施の形態では、酸供給タンク210から供給ポンプ216に対し、常時、酸が供給される。上記したように、用いることができる酸としては、塩酸、硫酸、酢酸、燐酸、ホウ酸及び硝酸を挙げることができる。酸の濃度は、0.1〜10ppmの範囲とすることが好適である。
このようにして酸が常時供給されることにより、水分離膜ユニット202の脱水性能を維持することができる。
【0047】
なお、この図4について説明した脱水装置において、第1の形態に係る運転方法を実施することもできる。
この場合、水分離膜ユニット202中で水分離膜部を透過する気体中の漏洩成分の濃度が設定値を超えているかどうかを、例えば、漏洩成分であるエタノールの透過速度をシェル部で測定する。
エタノールの透過速度は、(原料組成×流量−製品組成×製品流量)として検出することができる。
設定値は、理想的にはゼロであるが、コスト面等を考慮し、適切に設定する。
【0048】
水分離膜部を透過する気体中の漏洩成分の濃度が設定値を超えていることを検知した場合には、いったん装置の運転を停止し、酸供給タンク210から酸を供給する。供給する酸としては、塩酸、硫酸、酢酸、燐酸、ホウ酸及び硝酸を挙げることができる。酸の濃度は、10〜1,000ppmとすることが好適である。
【実施例1】
【0049】
図4について説明したと同様の構成を備えた脱水装置について、本発明に係る運転方法のうち、上記した第1の形態を粗エタノール95wt%について実施した。
エタノールの透過速度が25g/hを超えた際に、300ppmの濃度となるように硫酸を加えた。これによって、膜性能が、点線の位置、すなわち、エタノールの透過速度は、約12g/h以下に回復した(図5)。なお、水の透過速度は、約70g/hに維持された。
【実施例2】
【0050】
図4について説明したと同様の構成を備えた脱水装置について、本発明に係る運転方法のうち、上記した第2の形態を粗エタノール95wt%について実施した。
酸供給タンク210から供給ポンプ216に対し、常時、酸を供給した。酸としては、硫酸を用い、濃度を5ppmに維持した。
このようにして酸が常時供給されることにより、エタノールの透過速度は、概ね12g/h以下に維持することができた(図6)。なお、水の透過速度は、約70g/hに維持された。
【符号の説明】
【0051】
1 脱水装置
2 水分離膜部
3 シェル部
5 減圧装置
6 ダクト
7 液体
8 水蒸気
110 水分離膜部
112 水分離膜ユニット
114 管板
200 脱水装置
202 水分離膜ユニット
206 加熱器
208 原料液体タンク
210 酸供給タンク
212 製品タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分離膜より成る水分離膜部と、該水分離膜部の外側面と、装置本体内壁とで規定されるシェル部とを有する水分離膜ユニットを備える脱水装置の運転方法であって、上記水分離膜から透過する気体中の漏洩成分の濃度が設定値を超えた際、上記脱水装置の稼働を停止し、原料液体に酸を加え、稼働させ、水分離膜を再生することを特徴とする脱水装置の運転方法。
【請求項2】
水分離膜より成る水分離膜部と、該水分離膜部の外側面と、装置本体内壁とで規定されるシェル部とを有する水分離膜ユニットを備える脱水装置の運転方法であって、原料液体に酸を加えて、稼働させ、水分離膜の性能を維持するようにしたことを特徴とする脱水装置の運転方法。















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−83694(P2011−83694A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238135(P2009−238135)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】