説明

脱硫器取付装置

【課題】 現状で流通されている使用を異にする高圧燃料ボンベの互換使用を可能として回収・供給と脱硫器の回収・供給とが一元化されて定期的に実施する。
【解決手段】燃料電池装置に供給するLPGを充填した高圧燃料ボンベ2に硫黄成分等を吸着除去する触媒19を内蔵した脱硫器3を直接取り付ける。高圧燃料ボンベ2の外径を異にするバルブ組付部11に内径を調整自在にして固定する固定部20と、アーム部21と、脱硫器3を着脱自在に取り付ける取付部22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置に供給する液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)を充填した高圧燃料ボンベに対して、硫黄成分や硫黄化合物を吸着除去する触媒を内蔵した脱硫器を直接取り付ける脱硫器取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池装置は、省エネルギー化或いはクリーン化を実現するコージェネレーションシステム(電気・熱同時発生システム)の有力手段として積極的な開発が進められている。燃料電池装置においては、業務用或いは一般家庭用として供給システムが確立されている都市ガスやLPGを燃料として水素を取り出す方式が注目されている。
【0003】
ところで、燃料電池装置においては、燃料ガスに天然ガス成分或いは着臭剤として混合された硫黄成分や硫黄化合物が混入しており、これら硫黄成分が装置内部に用いられている各種触媒に対して被毒物質として作用して効率低下等の原因となる。燃料電池装置においては、このために燃料ガスから水素を取り出す改質工程とともに硫黄成分を除去する脱硫工程が必要となる(例えば、特許文献1及び特許文献3を参照。)。
【0004】
燃料電池装置においては、都市ガス方式が先行している状況にあり、燃料電池ユニットを介して屋内に設置された適宜の端末に対して電気エネルギーの供給が行われる。かかる都市ガス方式の燃料電池装置は、ガス管内を280±50mm/Aq程度の圧力で供給されるガスを所定の圧力まで昇圧する昇圧装置が必要となる。都市ガス方式の燃料電池装置は、例えば5年間程度のメンテナンスフリーとするために高価な貴金属系触媒を用いる脱硫器等を必要とする。都市ガス方式の燃料電池装置は、所定期間の経過後に脱硫器を装置内から取り外して新たなものに交換しなければならず、新たなメンテナンスシステムの構築を必要とするとともにユーザに対して大きなメンテナンス費用を負担させる。
【0005】
一方、LPG方式の燃料電池装置は、非都市ガス供給地域での導入が可能であり、LPGが高圧燃料ボンベ内に高圧で充填されていることから、昇圧装置を不要として装置の簡易化、小型化、低コスト化が図られる。また、LPG方式の燃料電池装置においては、所定容量の高圧燃料ボンベに直接脱硫器を取り付けることも可能である(例えば、特許文献3を参照。)。LPG方式の燃料電池装置においては、かかる対応を図ることで高圧燃料ボンベの回収・供給に合わせて脱硫器の交換サービスも行うようにすることで、交換頻度を高めて低廉な触媒を内蔵した廉価な脱硫器を用いることが可能であるとともに新たなメンテナンスシステムの構築が不要である。
【0006】
【特許文献1】特開平6−49469号公報
【特許文献2】特開2001−279256号公報
【特許文献3】特開2002−83623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、LPG方式の燃料電池装置においては、現状において容量ばかりでなく外形についても種々の仕様の高圧燃料ボンベが各ユーザに対して提供されている状況にある。したがって、LPG方式の燃料電池装置においては、脱硫器を直接取り付けるようにすると、現在使用されている膨大な量の高圧燃料ボンベについて、仕様の統一化が必要となってシステム構築を困難とさせるといった問題がある。
【0008】
また、高圧燃料ボンベは、工場等においてLPGの充填が行われて多数個が運搬車に乗せられて各ユーザの元に配送されて設置されるとともに、使用済みのものが回収される。したがって、高圧燃料ボンベは、脱硫器を取り付けた場合でも、運搬車にスペース効率を図って乗せられるとともに作業者の取り扱いも効率よく行われるようにする必要がある。
【0009】
したがって、本発明は、現状で流通されている仕様を異にする種々の高圧燃料ボンベの互換使用を可能として、高圧燃料ボンベの回収・供給と脱硫器の回収・供給とが一元化されて定期的に実施されるLPG方式の燃料電池装置システムの確立を図る脱硫器取付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成する本発明にかかる脱硫器取付装置は、燃料電池装置に供給する液化石油ガスを充填した高圧燃料ボンベに対して、液化石油ガスに混入した硫黄成分や硫黄化合物を吸着除去する触媒を内蔵した脱硫器を直接取り付ける。脱硫器取付装置は、高圧燃料ボンベのバルブ組付部の外周部に嵌合される筒状の固定部と、この固定部に一端を片持ちされたアーム部と、このアーム部の他端に設けられて脱硫器を着脱自在に取り付ける取付部とを備えて構成される。脱硫器取付装置は、固定部に、内径を調整自在とする内径可変構造が設けられる。
【0011】
脱硫器取付装置においては、取付部に脱硫器を取り付けるとともに固定部を高圧燃料ボンベのバルブ組付部の外周部に嵌合することによって高圧燃料ボンベに対して脱硫器を直接取り付けて高圧燃料ボンベを各ユーザに供給し、硫黄成分を除去した液化石油ガスを燃料として燃料電池装置へと供給するようにする。脱硫器取付装置においては、各メーカにより製造されたバルブ組付部の外径を異にする各種の高圧燃料ボンベに対して内径可変構造を介して固定部の内径をバルブ組付部の外径に応じて調整することで、脱硫器を互換使用する。
【発明の効果】
【0012】
以上のように構成された本発明にかかる脱硫器取付装置によれば、現状で使用されているバルブ組付部の仕様を異にする膨大な量の高圧燃料ボンベをそのまま用いて脱硫器を簡易な操作により着脱することを可能とする。したがって、脱硫器取付装置によれば、LPGの供給システムをそのまま利用して高圧燃料ボンベの回収・供給と脱硫器の回収・供給とが一元化されて定期的に実施され、また昇圧装置を不要として装置の簡易化、小型化、低コスト化を図り、さらに廉価な脱硫器が定期的に交換されることによって実用的なLPG方式の燃料電池装置システムの早期確立を図ることを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。脱硫器取付装置1は、図1に示すように、LPGを充填した高圧燃料ボンベ2に対してそれぞれ脱硫器3を直接取り付けて各ユーザに供給することを可能とし、脱硫器3によって硫黄成分や硫黄化合物を除去したLPGをユーザに設置された燃料電池装置4に供給してLPG方式の燃料電池装置システムを効率的に構築する。LPG方式の燃料電池装置システムは、既存のLPG供給システムを通じて、所定の供給元と各ユーザとで供給契約が結ばれ、供給元においてLPGを加圧して液化した状態で充填する充填工程が施された既存の高圧燃料ボンベ2が、各ユーザの使用実績等に応じて定期的に交換される。
【0014】
燃料電池装置4は、各ユーザ毎に設置され、図1に示すようにガス配管5を介して高圧燃料ボンベ2と接続される改質部6と、この改質部6と水素配管7によって接続されるとともに図示しない酸素取入れ部と酸素配管8によって接続される燃料電池部9とから構成される。燃料電池装置4は、図示を省略するが、改質部6が内部にLPGを水素に変換する適宜の触媒が設けられるとともに、LPGを燃焼させるヒータ及びこのヒータによって加熱される水供給管が備えられている。燃料電池装置4は、改質部6において、高圧燃料ボンベ2から供給されたLPGとヒータによって水供給管を加熱して発生させた水蒸気との混合気体から、触媒の作用によって水素を発生させる。
【0015】
燃料電池装置4は、燃料電池部9の内部に、正極と、負極と、電解質としての高分子電解質膜と、水素や酸素の漏れを防止するセパレータと、水素や酸素の供給量を制御する制御部等が設けられている。燃料電池装置4は、燃料電池部9において、改質部6から水素配管7を介して供給された水素と酸素配管8を介して供給された酸素とから直流電力を発生させる。燃料電池装置4は、燃料電池部9で発電した直流電力を変換器によって交流電力に変換して電力供給線を介して図示しない配電盤等に供給する。
【0016】
なお、燃料電池装置4は、燃料電池部9を冷却するラジエータが付設されており、このラジエータを熱源として熱エネルギーが適宜利用されるようにする。燃料電池装置4は、上述した構成に限定されるものではなく、LPGを燃料とする種々の構成の燃料電池装置であってもよいことは勿論である。
【0017】
高圧燃料ボンベ2には、現状において非都市ガス供給地域に流通している既存のLPG供給システムの高圧燃料ボンベがそのまま用いられる。高圧燃料ボンベ2は、詳細を省略するが鋼材等により耐圧容器として形成されたボンベ本体10と、その天井部に一体に形成された円筒状のバルブ組付部11に組み付けられたバルブ構造体12と、台座部13とから構成される。高圧燃料ボンベ2は、運搬車等によって各ユーザに配達されて所定の場所に設置された後に、詳細を後述するように脱硫器3を介してバルブ構造体12とガス配管5とが接続される。
【0018】
高圧燃料ボンベ2には、図2及び図3に示すように詳細を省略するバルブ構造体12からLPG供給管14が突き出されている。高圧燃料ボンベ2は、ハンドル15を操作してバルブ構造体12内のバルブ弁が開放されることにより、ボンベ本体10内からLPGがガス配管5を介して燃料電池装置4へ供給されるようにする。
【0019】
ところで、燃料電池装置4は、高圧燃料ボンベ2からLPGが直接供給されると、このLPGに含まれる着臭剤として添加された硫黄化合物或いは天然ガス原料に含まれる硫黄化合物が改質部6内の触媒に対して悪影響を与えることにより、機能が低下する。高圧燃料ボンベ2は、詳細を後述する脱硫器取付装置1を介して脱硫器3が直接取り付けられることにより、燃料電池装置4に対して脱硫処理を施したLPGを供給する。
【0020】
脱硫器3は、図3に示すように円筒状の缶体16と、この缶体16の一方側の開口部を閉塞して組み合わされたフィルタ部材17と、缶体16の他方側の開口部を閉塞して組み合わされた触媒保持部材18とによって構成され、内部に脱硫触媒19を封入してなる。脱硫器3には、缶体16の触媒保持部材18を組み合わせた側の外周部に六角形状の凸部16aが周回りに形成されるとともに、この凸部16aから先端部位までの外周面に外周ねじ16bが形成されている。
【0021】
脱硫器3は、LPG供給システムを通じて供給元によって高圧燃料ボンベ2が定期的に交換される際に同時に回収されるとともに、各ユーザに対して新たなものが供給される。したがって、脱硫器3は、短期間のスパンで交換されるようになることから、比較的小型であるとともに、廉価な吸着剤を脱硫触媒として用いることが可能である。脱硫器3は、缶体16が高圧燃料ボンベ2の外径よりも短かい長さを以って形成されており、後述するように高圧燃料ボンベ2に取り付けた状態において図3に示すようにボンベ本体10の平面領域(投影面積)内にほぼ収まるようにして外周部に出っ張らないようになる。脱硫器3は、外周部に出っ張りの無い構成とされることから、在庫時、運搬時或いは設置時において隣り合う高圧燃料ボンベ2が互いに外周部を密着した状態で並べることを可能とさせる。
【0022】
脱硫器3には、脱硫触媒19として例えば活性炭やゼオライト(沸石)等を、これらが単体で或いは混合して用いられる。活性炭は、硫黄化合物との反応性が大きい鉄、亜鉛、ニッケル等の金属元素を多く含む椰子殻系と石炭系とが提供されているが、いずれも使用することが可能である。ゼオライトは、硫黄化合物との反応性が大きい遷移金属元素の担持体を構成し、金属元素を含む溶液中に浸漬して乾燥させて形成したり、金属材をスパッタ法等によりコーティングして形成される。
【0023】
脱硫器3は、未使用状態において封緘シート等によって密閉状態で保管されるとともに封緘シートから取り出されて高圧燃料ボンベ2に付設されることで、脱硫触媒19の機能が保持されるようにする。脱硫器3は、図3に示すように脱硫器取付装置1に組み付けられて、触媒保持部材18側を高圧燃料ボンベ2と接続されるとともにフィルタ部材17側を燃料電池装置4と接続されるガス配管5と接続される。
【0024】
脱硫器取付装置1は、耐腐食性の大きいステンレス材等の金属材によって形成され、固定部20と、アーム部21と、取付部22とから構成される。脱硫器取付装置1は、固定部20が、ボンベ本体10に形成されたバルブ組付部11の外周部に嵌合されるリング状を呈している。脱硫器取付装置1は、固定部20に一端を片持ちされたアーム部21に脱硫器3を着脱する取付部22が設けられている。
【0025】
固定部20は、図4に示すように、相対する一端部にヒンジ部23a、24aが一体に形成されるとともに他端部に結合部23b、24bが一体に形成された半円形の第1固定部材23と第2固定部材24とから構成される。固定部20は、ヒンジ部23a、24aに形成した軸孔に嵌合されたヒンジピン25を支点として、第1固定部材23に対して第2固定部材24が回動自在に組み合わされている。
【0026】
固定部20は、結合部23b、24bに軸線を一致させて貫通孔が形成されており、例えば第2固定部材24側の貫通孔につまみねじ26がねじ部を貫通される。つまみねじ26は、第1固定部材23側の貫通孔を貫通されたねじ部にナット27がねじ込まれることにより、第1固定部材23と第2固定部材24とを一体化してリング状の固定部20を構成する。
【0027】
固定部20は、第1固定部材23に対して第2固定部材24を開いた状態で、高圧燃料ボンベ2側のバルブ組付部11の外周部に組み合わされる。固定部20は、第1固定部材23に対して第2固定部材24がバルブ組付部11の外周部に接するように回動操作された後に、ねじ合わせされたつまみねじ26とナット27とにより結合部23b、24b間が結合される。固定部20は、かかる構造によって内径を調整自在とする内径可変構造を構成して外径を異にするバルブ組付部11に対して固定することが可能となる。
【0028】
アーム部21は、一端側を第1固定部材23に固定されるとともに、自由端側が略直角に折曲されて保持壁部28が一体に形成されている。アーム部21には、保持壁部28に幅方向に離間して一対のねじ孔29a、29bが形成され、これらねじ孔29a、29bからそれぞれ取付ねじ30a、30bがねじ込まれる。取付ねじ30a、30bは、取付部22に取り付けられた脱硫器3を固定する。
【0029】
取付部22は、図3及び図4に示すように、アーム部21に固定された受け板部31と、この受け板部31の一端側に組み合わされた第1ホルダ部材32と、受け板部31の他端側に組み合わされた第2ホルダ部材33とから構成される。取付部22は、受け板部31が上述した脱硫器3の缶体16を載置するに足る長さと幅とを有して形成されており、この受け板部31が長さ方向の略中央部においてアーム部21に固定される。取付部22は、第1ホルダ部材32と第2ホルダ部材33とが対向間隔を脱硫器3の全長とほぼ等しくされて受け板部31の両側に設けられている。
【0030】
第1ホルダ部材32は、全体有底筒状を呈する基部32aと、この基部32aの一端部に周回りに一体に形成された六角形状のフランジ部32bとから構成される。第1ホルダ部材32は、基部32aの内部に内径を脱硫器3の外径とほぼ同径とされた脱硫器嵌合凹部32cが形成されるとともに、この脱硫器嵌合凹部32cの内周壁に内周ねじ32dが形成されている。第1ホルダ部材32には、基部32a内にコイルスプリング34が組み合わされるとともに、図3に示すようにフランジ部32bに形成した基部32aに貫通する取付孔にジョイント管部材35が固定されている。第1ホルダ部材32は、後述するように受け板部31に載置した脱硫器3の触媒保持部材18を組み付けた側を保持する。
【0031】
第2ホルダ部材33は、受け板部31の一端側に第1ホルダ部材32と対向するようにして固定される。第2ホルダ部材33には、第1ホルダ部材32の基部32aと対向する側に脱硫器嵌合凹部32cと同軸でかつほぼ同径の脱硫器保持凹部33aが形成されるとともに、他方側面側に脱硫器保持凹部33aに連通する嵌合凹部33bを有する接続筒部33cが一体に形成されている。第2ホルダ部材33は、後述するように受け板部31に載置した脱硫器3のフィルタ部材17を組み付けた側を保持する。
【0032】
なお、脱硫器取付装置1には、詳細を省略するが第1ホルダ部材32の脱硫器嵌合凹部32c或いは第2ホルダ部材33の脱硫器保持凹部33a内に、脱硫器3の缶体16の外周部との間を閉塞する適宜のシーリング部材が設けられ、脱硫器3内を流れるLPGの漏れが防止されるように構成されている。また、脱硫器取付装置1には、第1ホルダ部材32のジョイント管部材35を取り付ける基部32aに設けた取付孔或いは第2ホルダ部材33の嵌合孔33bの内周部にも適宜のシーリング部材が設けられて、LPGの漏れが防止されている。
【0033】
以上のように構成された脱硫器取付装置1は、供給元において、高圧燃料ボンベ2に対して脱硫器3を簡易な作業によって直接取り付けて各ユーザに供給されるようにする。脱硫器取付装置1は、固定部20が高圧燃料ボンベ2のバルブ組付部11の外径に合わせて第1固定部材23に対する第2固定部材24の開き角度を調整されて嵌合され、つまみねじ26とナット27とによりバルブ組付部11の外周部に片持ち状態で固定される。
【0034】
脱硫器取付装置1は、バルブ組付部11の外周部が大きな外径を有する場合に、図4に鎖線で示すように第1固定部材23に対して第2固定部材24が大きな角度で開かれた状態で固定される。脱硫器取付装置1は、固定部20が内径可変構造を有することで、外径を異にするバルブ組付部11を有する各種の高圧燃料ボンベ2に対しても脱硫器3を取り付けることを可能とする。
【0035】
脱硫器取付装置1には、取付部22の受け板部31上に脱硫器3が、缶体16の触媒保持部材18を組み付けた側を第1ホルダ部材32と対向させるとともにフィルタ部材17を組み付けた側を第2ホルダ部材33と対向させて載置される。脱硫器取付装置1は、脱硫器3を第1ホルダ部材32の脱硫器嵌合凹部32c内に強く押し込むことにより、コイルスプリング34を圧縮させる。脱硫器取付装置1は、脱硫器3が、コイルスプリング34の弾性力によって第2ホルダ部材33の脱硫器保持凹部33a側に押圧されることにより取付部22に保持する。脱硫器取付装置1は、この状態で、アーム部21の保持壁部28に形成したねじ孔29a、29bからそれぞれ取付ねじ30a、30bをねじ込むことによって、取付部22上に脱硫器3を固定する。
【0036】
脱硫器取付装置1は、高圧燃料ボンベ2に対して脱硫器3がボンベ本体10の外周部から飛び出さないようにして取り付けている。高圧燃料ボンベ2は、供給元での保管、運搬車による搬送、或いは各ユーザのもとでの設置等に際してボンベ本体10を互いに密着させた状態で多数本が並べられるが、脱硫器取付装置1や脱硫器3が突出して邪魔になることは無くスペース効率が図られて並べられる。
【0037】
高圧燃料ボンベ2は、各ユーザに届けられて、作業員によって設置が行われる。脱硫器取付装置1には、図3に示すように第1ホルダ部材32に設けたジョイント管部材35に対して接続管36の一端が接続されるとともにこの接続管36の他端がバルブ構造体12から突き出されたLPG供給管14と接続される。脱硫器取付装置1には、第2ホルダ部材33の嵌合孔33bに対してガス配管5の一端部が接続される。なお、脱硫器取付装置1は、ジョイント管部材35と接続管36、接続管36とLPG供給管14或いは嵌合孔33bとガス配管5との接続が、従来ガス管接続に一般的に採用されている構造によって行われる。
【0038】
脱硫器3は、脱硫器取付装置1によって高圧燃料ボンベ2に直接取り付けられて高圧燃料ボンベ2と燃料電池装置4との間に介挿される。脱硫器3は、脱硫触媒19によって高圧燃料ボンベ2から供給されるLPGから硫黄化合物等を除去して燃料電池装置4に供給して、燃料電池装置4の触媒が安定した動作を行うようにする。
【0039】
高圧燃料ボンベ2は、各ユーザの使用状況が供給元においてしっかりと管理されており、定期的な交換が行われる。高圧燃料ボンベ2は、脱硫器3とLPG供給管14及びガス配管5の取り外し操作を行った後に、設置場所から古いものの取り外しが行われ、新たなものと交換される。高圧燃料ボンベ2は、各ユーザから回収されると、所定の回収後処理が施された後に、ボンベ本体10の内部に再びLPGが充填される。高圧燃料ボンベ2は、回収後に脱硫器取付装置1から脱硫器3の取り外し操作が行われる。脱硫器取付装置1は、取付ねじ30を取り外して脱硫器3を第1ホルダ部材32と第2ホルダ部材33から取り出すことによって容易に取り外すことを可能とする。
【0040】
なお、脱硫器取付装置1は、上述した構造に限定されず、例えば固定部20の第1固定部材23と、アーム部21と、取付部22の受け板部材31と、第2ホルダ部材33とをその一部或いは全部を一体に形成するようにしてもよい。また、脱硫器取付装置1は、かかる構造に限定されずに高圧燃料ボンベ2や脱硫器3の形状或いはその取付方法により種々に構成される。
【0041】
脱硫器取付装置1によれば、上述したように簡易な操作によって脱硫器3を取付部22に対して着脱自在とするとともに、固定部20を介して現状で使用されている外径を異にするバルブ組付部11の高圧燃料ボンベ2をそのまま使用することを可能とする。脱硫器取付装置1によれば、現状で非都市ガス供給地域に確立されているLPG供給システムをそのまま利用して、高圧燃料ボンベ2の回収・供給と脱硫器3の回収・供給とが一元化されて定期的に実施されるようにする。脱硫器取付装置1によれば、LPG供給システムを利用することで燃料電池装置4に昇圧装置を不要として装置の簡易化、小型化、低コスト化が図られるようにする。脱硫器取付装置1によれば、定期的な回収・供給により廉価な脱硫器3を交換されることにより、実用的な燃料電池システムの早期確立が図られるようにする。
【0042】
図5に第2の実施の形態として示した脱硫器取付装置40は、横長の脱硫器50を高圧燃料ボンベ2に直接取り付けた構成に特徴がある。脱硫器取付装置40は、基本的な構成を上述した脱硫器取付装置1と同様とすることから、対応する部位に同一符号を付すことにより詳細な説明を省略する。脱硫器取付装置40も、第1固定部材23と第2固定部材24とからなる固定部20と、第1固定部材23から一体に突出形成されたアーム部21と、このアーム部21の先端部に形成された取付部41とから構成される。
【0043】
脱硫器取付装置40は、取付部41が、脱硫器50を載置固定する底面部42と、この底面部42の長さ方向の両端部から互いに対向して立ち上がり形成された保持壁部43、44とからなる全体略上向きコ字状に形成されている。脱硫器取付装置40は、保持壁部43、44の対向間隔が脱硫器50の長さとほぼ等しくされ、脱硫器50の両側面を挟み込んで保持する。脱硫器取付装置40は、底面部42に形成した取付孔から取付ねじ45をねじ込むことによって脱硫器50を固定する。
【0044】
脱硫器50は、やや寸胴な缶体51を有し、その内部に長さ方向に並んで複数個の仕切壁52a乃至52dが設けられることによって複数の脱硫空間部53a乃至53eに区割りされており、各脱硫空間部53a乃至53eにそれぞれに脱硫触媒19が充填されている。脱硫器50には、各仕切壁52a乃至52dにそれぞれガス孔54a乃至54dが設けられており、ジョイント管部55から缶体51の内部に供給されたLPGが各ガス孔54a乃至54dを通過して供給管部56から燃料電池装置4へと供給されるようにする。
【0045】
脱硫器50は、各仕切壁52a乃至52dに形成されたガス孔54a乃至54dが、LPGの進行方向に対して千鳥状に配列されている。したがって、脱硫器50は、LPGが同図矢印で示すように各脱硫空間部53a乃至53eを千鳥状に流れることによって脱硫触媒19に充分に触れて硫黄化合物が効率的に除去されるようにする。なお、脱硫器50は、上述した構造によって小型が図られることで、脱硫器取付装置40によって高圧燃料ボンベ2に直接取り付けられた状態においても、高圧燃料ボンベ2のボンベ本体10の外周部から飛び出さないようにして取り付けられる。
【0046】
図6及び図7に第3の実施の形態として示した脱硫器取付装置60は、縦長の脱硫器70を高圧燃料ボンベ2に直接取り付けた構成に特徴がある。脱硫器取付装置60も、基本的な構成を上述した脱硫器取付装置1と同様とすることから、対応する部位に同一符号を付すことにより詳細な説明を省略する。脱硫器取付装置60も、第1固定部材23と第2固定部材24とからなる固定部61と、第1固定部材23から一体に突出形成されたアーム部62と、このアーム部62の先端部に形成された取付部63とから構成される。
【0047】
脱硫器取付装置60は、固定部61とアーム部62と取付部63とが一体の板状部材からなる。脱硫器取付装置60は、第1固定部材23と第2固定部材24とによって高圧燃料ボンベ2にバルブ組付部11に対して固定部61を固定した状態において、取付部63が高圧燃料ボンベ2の外周部からやや突出する長さに形成されている。脱硫器取付装置60は、取付部63がアーム部62の先端に脱硫器70の缶体71の外径とほぼ等しい開口寸法を有して開口された略U字状の嵌合溝64によって構成されている。脱硫器取付装置60は、取付部63に対して脱硫器70の上方部位を嵌め込むことによって脱硫器70を取り付ける。
【0048】
脱硫器70は、やや長軸の缶体71を有しており、この缶体71の内部に脱硫触媒19が充填されている。脱硫器70は、高圧燃料ボンベ2のLPG供給管14と接続されるジョイント管部材35と接続されたLPG導管72が天井部位から引き込まれて底面部に近接した位置まで延在している。脱硫器70には、ジョイント管部材35と略同軸上に位置して接続管36が設けられている。
【0049】
脱硫器70においては、ジョイント管部材35缶体71の内部に供給されたLPGが、底面部から次第に天井部へと流れ、その間で脱硫触媒19に充分に触れて硫黄化合物が効率的に除去されるようにする。脱硫器70においては、脱硫されたLPGが、接続管36から燃料電池装置4へと供給されるようにする。
【0050】
脱硫器取付装置60は、脱硫器70を高圧燃料ボンベ2に直接取り付けた状態において高圧燃料ボンベ2のボンベ本体10の外周部から飛び出させて高さ方向に沿って取り付けている。脱硫器取付装置60は、脱硫器70を嵌合溝64内に嵌合する簡易な作業によって取り付けることから、効率的な取付が行われる。したがって、脱硫器取付装置60は、現場対応によって脱硫器70の取付作業を行うことにより、在庫時や運搬時のぶつかりを解消することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】液化石油ガスを燃料とする燃料電池システムの要部構成図である。
【図2】脱硫器取付装置によって脱硫器を取り付けた高圧燃料ボンベの要部正面図である。
【図3】同高圧燃料ボンベの平面図である。
【図4】脱硫器取付装置の一部切欠き平面図である。
【図5】第2の実施の形態として示す脱硫器取付装置によって脱硫器を取り付けた高圧燃料ボンベの一部切欠き要部正面図である。
【図6】第3の実施の形態として示す脱硫器取付装置によって脱硫器を取り付けた高圧燃料ボンベの要部正面図である。
【図7】同高圧燃料ボンベの要部平面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 脱硫器取付装置、2 高圧燃料ボンベ、3 脱硫器、4 燃料電池装置、5 改質部、9 燃料電池部、10 ボンベ本体、11 バルブ組付部、12 バルブ構造体、14 LPG供給管、16 缶体、19 脱硫触媒、20 固定部、21 アーム部、22 取付部、23 第1固定部材、24 第2固定部材、32 第1ホルダ部材、33 第2ホルダ部材、35 ジョイント管部材、36 接続管、40 脱硫器取付装置、50 脱硫器、60 脱硫器取付装置、70 脱硫器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池装置に供給する液化石油ガスを充填した高圧燃料ボンベに対して、上記液化石油ガスに混入した硫黄成分や硫黄化合物を吸着除去する触媒を内蔵した脱硫器を直接取り付ける脱硫器取付装置であり、
上記高圧燃料ボンベのバルブ組付部の外周部に嵌合される筒状の固定部と、この固定部に一端を片持ちされたアーム部と、このアーム部の他端に設けられて上記脱硫器を着脱自在に取り付ける取付部とを有し、
上記固定部に、内径を調整自在とする内径可変構造が設けられ、外径を異にする上記高圧燃料ボンベのバルブ組付部に応じて内径を調整されることで互換使用されることを特徴とする脱硫器取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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