説明

脱穀扱胴

【課題】 扱胴ドラムに優れた強度を備えさせながら、扱胴ドラムの点検開口を利用した作業が行いやすい脱穀扱胴を提供する。
【解決手段】 扱胴ドラム30の周壁31に近接し合った状態で設けた複数の点検開口42を備えてある。複数の点検開口42に各別に閉じ作用する複数の蓋部51を有した一枚の蓋板50を備えてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀扱胴に関する。
【背景技術】
【0002】
脱穀扱胴では、扱胴ドラムの周壁に点検開口を設け、扱胴製作時において扱胴ドラムに扱歯を植設する作業や、扱胴の使用に伴って摩滅した扱歯を交換する作業に点検開口を利用することを可能にされる。
この種の脱穀扱胴として、従来、たとえば特許文献1に記載された扱胴があった。
特許文献1に記載された扱胴では、扱胴ドラムにおける外周面の前後中間箇所に点検口が形成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−253388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の技術を採用した場合、扱胴ドラムの強度に関する問題、あるいは点検開口を介しての作業に関する問題が発生しやすくなっていた。
つまり、従来の技術を採用すると、扱歯の組み付けや交換などの作業のための開口を、一つの点検開口によって形成することになる。すると、作業が容易となる面積を有した作業開口としての点検開口を備えさせるには、その面積を備えた一つの切り欠きを扱胴ドラムに備えさせる必要があり、扱胴ドラムの点検開口の形成に起因する強度低下が大になりがちであった。
【0005】
本発明の目的は、扱胴ドラムに優れた強度を備えさせながら、扱胴ドラムの点検開口を利用した作業が行いやすい脱穀扱胴を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明による脱穀扱胴は、扱胴ドラムの周壁に近接し合った状態で設けた複数の点検開口と、前記複数の点検開口に各別に閉じ作用する複数の蓋部を有した一枚の蓋板とを備えてある。
【0007】
本第1発明の構成によると、上記した作業が容易となる面積を有した作業開口を複数の点検開口の合計によって形成し、扱胴ドラムに一つの点検開口として設ける切り欠きを小形で済ませて扱胴ドラムの開口形成による強度低下を抑制することができる。
さらに、一枚の蓋板が複数の点検開口にわたって閉じ作用し、蓋板が扱胴ドラムに対して点検開口間での屈曲を発生しにくいように補強作用するなど、蓋体による扱胴ドラムの補強を効果的に行わせることができる。その分、点検開口全体としての大きさをより大きくすることができる。
【0008】
従って、扱胴ドラムに優れた強度を備えさせることができながら、点検開口全体としての開口面積を大きくして扱歯交換などの作業を容易にかつ能率よく行える脱穀扱胴を得ることができる。
【0009】
本第2発明では、前記蓋板に、前記点検開口よりも扱胴ドラム回転方向下手側で扱胴ドラムの周壁外面に重合する下手側端部と、前記点検開口よりも扱胴ドラム回転方向上手側で扱胴ドラムの周壁外面に重合する上手側端部とを備え、
前記下手側端部の扱胴ドラム回転方向での長さを、前記上手側端部の扱胴ドラム回転方向での長さよりも大に設定してある。
【0010】
本第2発明の構成によると、蓋板の下手側端部が扱胴ドラムの周壁の外面に位置し、かつ点検開口よりも扱胴ドラム回転方向での下手側に位置することから、下手側端部に脱穀穀稈の稈身や穀粒との接触による摩滅が発生しやすい。下手側端部の扱胴ドラム回転方向での長さを上手側端部のその長さよりも大に設定してあるから、下手側端部の摩滅が進んでも、蓋板の使用が不能に至るまでには時間が掛かるようにできる。
【0011】
従って、蓋板を扱胴ドラムの外面側に取り付けるものでありながら、蓋板を摩滅発生にかかわらず長期にわたって使用できるよう耐久性に優れた脱穀扱胴を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る脱穀扱胴1が備えられたコンバイン用脱穀機の縦断側面図である。この図に示すように、コンバイン用脱穀機は、脱穀機体2の前側内部に位置する扱室10を有した脱穀部3と、前記扱室10の後方に駆動回動自在に設けた無端回動チェーンで成る排ワラ搬送装置4と、前記扱室10の下方に前端側が位置する揺動選別装置20を備えた選別部5とを備えている。
【0013】
前記脱穀部3は、前記扱室10を備える他、この扱室10に脱穀機体前後向きの回転軸芯まわりに駆動回転自在に設けた本発明の実施例に係る脱穀扱胴1と、前記扱室10に脱穀扱胴1の外周囲に位置させて設けた受網11と、脱穀機体2の外部に駆動回動自在に設けた脱穀フィードチェーン12とを備えている。
【0014】
脱穀部3は、脱穀フィードチェーン12によって刈取り穀稈の株元側を挟持して脱穀機体後方向きに搬送し、この刈取り穀稈の穂先側を扱室10の脱穀扱胴1と受網11との間に供給して脱穀処理し、脱穀排ワラを脱穀フィードチェーン12によって扱室10の後部に位置する送塵口13から搬出する。
【0015】
図2,3に示すように、脱穀部3は、扱口14にこれの全長にわたって設けた飛散防止片15を備えている。この飛散防止片15は、脱穀扱胴1の回転によって飛散した穀粒を脱穀穀稈の株元側に向けて飛ばないように受けて止めて扱室内に戻す。すなわち、穀粒が脱穀フィードチェーン12によって搬送される穀稈の株元側に飛んでささり込むことを防止する。飛散防止片15は、上唇板16に支持された帆布によって構成してある。飛散防止片15は、摩滅した際の交換が容易となるよう、扱口14の脱穀機体前後方向での中間位置に位置する分割線で機体前方側に位置する分割片と機体後方側に位置する分割片とに分割された二枚の分割帆布によって構成してある。
【0016】
前記排ワラ搬送装置4は、扱室10から搬出された脱穀排ワラを脱穀フィードチェーン12から受け継いで脱穀機体後方向きに搬送し、脱穀機体2の後部に位置する排出口から脱穀機体外に排出する。
【0017】
前記選別部5は、前記揺動選別装置20を備える他、この揺動選別装置20の前端部の下方に設けた唐箕21と、扱室10の後方に設けた排塵ファン22とを備え、選別室の底部に揺動選別装置20の前後方向に並べて設けた一番スクリューコンベヤ23と二番スクリューコンベヤ24とを備えている。
【0018】
選別部5は、扱室10から受網11を介して落下した脱穀処理物を揺動選別装置20による揺動選別と、唐箕21が供給する選別風とによって一番処理物と二番処理物と塵埃とに選別し、一番処理物を一番スクリューコンベヤ23に落下させ、二番処理物を二番スクリューコンベヤ24に落下させ、塵埃を選別風と共に排塵ファン22の排出口から、あるいは脱穀機体2の後部に位置する排塵口から機体外に排出する。
一番スクリューコンベヤ23は、揺動選別装置20から落下した一番処理物を脱穀機体2の横外側に搬出する。二番スクリューコンベヤ24は、揺動選別装置20から落下した二番処理物を脱穀機体2の横外側に搬出する。二番スクリューコンベヤ24からの二番処理物は、脱穀機体2の横外側に設けた搬送装置6によって脱穀機体2の横壁部に設けた還元口に揚送され、この還元口から脱穀機体2の内部に投入されて揺動選別装置20の前端側に還元される。
【0019】
次に、前記脱穀扱胴1について詳述する。
図4は、前記脱穀扱胴1の縦断側面図である。図5は、前記脱穀扱胴1の横断面図である。これらの図に示すように、前記脱穀扱胴1は、扱胴ドラム30と、この扱胴ドラム30の周壁31の外面側に扱胴ドラム30の周方向と回転軸芯方向とに並べて植設された複数の扱歯32,33とを備えて構成してある。
【0020】
前記扱歯32,33のうち、扱胴ドラム30の扱室前端側に位置する部位に植設された扱歯32は、整そ歯であり、その他の部位に植設された扱歯33は、並歯である。
【0021】
脱穀扱胴1は、前記扱胴ドラム30に貫設された支軸34を備えており、この支軸34によって扱室10に回転自在に取り付けられる。
【0022】
前記扱胴ドラム30は、前記周壁31を構成する円筒形のドラム本体35と、このドラム本体35の両端部に連結された側壁36,37とを備えて構成してある。
【0023】
図6は、前記ドラム本体35の展開状態での平面図である。この図と図4,5とに示すように、前記ドラム本体35は、一枚の板金を円筒形に曲げ成形し、板金のドラム本体周方向での両側の端部35aをドラム本体35(扱胴ドラム30)の半径方向に重ね合わせて連結することによって作製してある。
これにより、扱胴ドラム30は、板金製になっている。扱胴ドラム30は、周壁31を構成する板金が扱胴ドラム30の周方向での一箇所で接合している接合部38を備えている。接合部38は、ドラム本体35を構成する板金の前記両側の端部35aが接合しているものである。
【0024】
図7に示すように、扱胴ドラム30は、前記周壁31の扱胴ドラム回転軸芯方向での両端部の一箇所に扱胴ドラム周方向に設けた補強リブ40(以下、端補強リブ40と呼称する。)と、前記周壁31の扱胴ドラム回転軸芯方向での中間部の扱胴ドラム回転軸芯方向に並ぶ二箇所に扱胴ドラム周方向に設けた補強リブ41(以下、中補強リブ41と呼称する。)とを備えている。図3に示すように、前記各補強リブ40,41は、前記周壁31を構成する板金をプレス成形することによって周壁31に設けた突条によって構成してある。各補強リブ40,41を構成する突条は、周壁31の外面側に突出している。
【0025】
図4、図5に示すように、脱穀扱胴1は、扱胴ドラム30の前記周壁31に扱胴ドラム1の回転軸芯方向に並べて設けた一対の点検開口42,42を備えている。
【0026】
図7は、前記一対の点検開口42,42の閉じ状態での平面図である。図8は、図7のVIII−VIII断面矢視図である。図9は、図7のIX−IX断面矢視図である。これらの図に示すように、一対の点検開口42,42は、前記周壁31の表面側に一枚の蓋板50を取り付けることによって閉じ状態になる。蓋板50は、これの表面側に突出した複数本の扱歯33(並歯)を備えている。
【0027】
図10は、前記蓋板50の平面図である。この図と図7,8,9とに示すように、蓋板50は、蓋板50の裏面側に扱胴ドラム回転軸芯方向に並んで突出した一対の蓋部51,51と、蓋板50の扱胴ドラム回転方向Aでの上手側の端部に位置した上手側端部52と、蓋板50の回転ドラム回転方向Aでの下手側の端部に位置した下手側端部53と、蓋板50の扱胴ドラム回転軸芯方向での両端部に位置した横側端部54とを備えて構成してある。
【0028】
前記下手側端部53のうち、この下手側端部53の端と前記蓋部51の扱胴ドラム回転方向下手側での端との間隔が最も小となる部位での扱胴ドラム回転方向での長さL1を、前記上手側端部52の扱胴ドラム回転方向での長さL2よりも大に設定してある。
【0029】
つまり、図7,8,9に示すように、蓋板50を、前記上手側端部52が前記点検開口42よりも扱胴ドラム回転方向Aでの上手側で周壁31の外面に重合し、前記下手側端部53が前記点検開口42よりも扱胴ドラム回転方向Aでの下手側で周壁31の外面に重合した取り付け姿勢にして周壁31に取り付ける。蓋板50の周壁31への取り付けは、前記上手側端部52と下手側端部53と前記横側端部54とに設けたボルト孔55に装着した連結ボルトと、一対の蓋本体部51,51の間に設けたボルト孔55に装着した連結ボルトとによって行う。すると、蓋板50は、一対の蓋部51,51を一対の点検開口42,42に各別に作用させて一対の点検開口42,42を閉じる。
【0030】
図9に示すように、前記下手側端部53を周壁31に連結する連結ボルト56は、この連結ボルト56の軸芯と、前記下手側端部53の扱胴ドラム回転方向下手側での端との間隔がD1となった配置になっている。前記上手側端部52を周壁31に連結する連結ボルト57は、この連結ボルト57の軸芯と、前記上手側端部52の扱胴ドラム回転方向上手側での端との間隔がD2となった配置になっている。前記下手側端部53の連結ボルト56の前記間隔D1は、前記上手側端部52の連結ボルト57の前記間隔D2よりも大に設定してある。
【0031】
つまり、前記下手側端部53が周壁31の外面に位置し、下手側端部53が上手側端部52よりも扱胴ドラム回転方向Aでの下手側に位置することにより、下手側端部53に脱穀穀稈の稈身や穀粒との接触による摩滅が発生しやすい。下手側端部53の連結ボルト56から端までの間隔D1が大になり、下手側端部53に摩滅が発生しても、摩滅が連結ボルト56まで到達して蓋板50の取り付け不良が発生するまでに時間が掛かるようになっている。
【0032】
図6は、前記一対の点検開口42,42の開き状態を示している。この図に示すように、一対の点検開口42,42は、前記蓋板50を取り外されることによって開き状態となり、扱歯32,33を植設や交換するなどの作業を行う際、扱胴内部に手や工具を差し入れる開口を扱胴ドラム30に形成する。一対の点検開口42,42は、両方の点検開口42から手を差し入れて作業できるよう近接し合った配置になっている。
【0033】
図7,9に示すよう、前記一対の点検開口42,42は、前記接合部38の近くに位置し、かつ前記中補強リブ41に近接して位置し、さらに前記二つの中補強リブ41を挟んで扱胴ドラム30の回転軸芯方向に並んで位置した配置になっている。
これにより、一対の点検開口42,42は、扱胴ドラム30の開口形成による強度低下を前記接合部38が発揮する補強作用と、前記中補強リブ41による補強作用とによって抑制させた状態で扱胴ドラム30の作業用開口を形成する。
【0034】
図2に示すように、脱穀扱胴1は、扱胴ドラム30の前記周壁31の内面側に設けたバランスウエイト60を備えている。前記バランスウエイト60は、脱穀扱胴1を前記蓋板50や前記接合部38の存在にかかわらず回転バランスが良い状態で回転させるよう脱穀扱胴1の回転バランスを図る。
【0035】
図11は、前記排ワラ搬送装置4の側面図である。この図に示すように、前記排ワラ搬送装置4は、この排ワラ搬送装置4の搬送終端側に設けた揺動支点4aを備えている。
図11に二点鎖線で示す排ワラ搬送装置4は、下降搬送状態での排ワラ搬送装置であり、図11に実線で示す排ワラ搬送装置4は、上昇揺動状態での排ワラ搬送装置である。
つまり、排ワラ詰まりが発生した場合、脱穀機体2の上蓋2aを上昇揺動開放する。すると、排ワラ搬送装置4に対するストッパー40が、上蓋2aの上昇揺動によって上昇して、排ワラ搬送装置4を搬送ガイド杆41に接近した下降搬送状態に保持する作用を解除する。すると、排ワラ搬送装置4に詰まり排ワラによる上昇操作力が作用していることにより、排ワラ搬送装置4の搬送始端側が揺動支点4aのまわりに、固定ガイド42と案内レール43とによって案内されて上昇揺動する。これにより、排ワラ搬送装置4と搬送ガイド杆41との間隔が広くなるとともに排ワラ搬送装置4と搬送ガイド杆41とによる詰まり排ワラの強い挟持が解除され、詰まりワラの取り除きが行いやすくなる。
【0036】
〔別実施例〕
上記した実施例の如く一対の点検開口によって必要な大きさの開口を確保するに替え、三つ以上の点検開口によって必要な大きさの開口を確保する構成を採用して実施してもよい。この場合も、本発明の目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】コンバイン用脱穀機の縦断側面図
【図2】脱穀機の扱口配設部での側面図
【図3】脱穀機の扱口配設部での縦断後面図
【図4】脱穀扱胴の縦断側面図
【図5】脱穀扱胴の横断正面図
【図6】ドラム本体の展開状態での平面図
【図7】点検開口の閉じ状態での平面図
【図8】図7のVIII−VIII断面矢視図
【図9】図7のIX−IX断面矢視図
【図10】蓋板の平面図
【図11】排ワラ搬送装置の側面図
【符号の説明】
【0038】
30 扱胴ドラム
31 周壁
42 点検開口
50 蓋板
51 蓋部
52 上手側端部
53 下手側端部
L1 下手側端部の長さ
L2 上手側端部の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴ドラムの周壁に近接し合った状態で設けた複数の点検開口と、前記複数の点検開口に各別に閉じ作用する複数の蓋部を有した一枚の蓋板とを備えてある脱穀扱胴。
【請求項2】
前記蓋板に、前記点検開口よりも扱胴ドラム回転方向下手側で扱胴ドラムの周壁外面に重合する下手側端部と、前記点検開口よりも扱胴ドラム回転方向上手側で扱胴ドラムの周壁外面に重合する上手側端部とを備え、
前記下手側端部の扱胴ドラム回転方向での長さを、前記上手側端部の扱胴ドラム回転方向での長さよりも大に設定してある請求項1記載の脱穀扱胴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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