説明

脱穀機

【課題】脱穀室からの脱穀処理物とを、揺動選別する揺動選別装置で穀粒と、藁屑とに確実に揺動移送中に分離させて、選別性能の向上、及び三番飛散粒の減少を図ろうとするものである。
【解決手段】脱穀処理物等の供給を受けて、揺動移送しながら揺動選別する揺動選別装置19aへ設ける、前チャフシーブ20cの上下方向の長さL1を、後チャフシーブ20dの上下方向の長さL2より、短くして設けると共に、前チャフシーブ20cの装着間隔P1を、後チャフシーブ20dの装着間隔P2より、狭くして設けた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
脱穀処理物等を受けて、揺動移送しながら揺動選別する揺動選別装置に設ける、前チャフシ−ブの長さを後チャフシーブの長さより短くすると共に、前チャフシーブの装着間隔を、後チャフシーブの装着間隔より狭くして設けた脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
脱穀選別装置は、特開昭60−149318号公報で示す如く穀稈の供給を受けて、移送中に脱穀する脱穀室の藁屑排出口部の下側で、脱穀室の下周に張設した脱穀網から漏下する脱穀物を受けて、揺動移送しながら選別する選別棚の上に、藁屑排出口から排出される藁屑を受けて、揺動選別する藁屑選別棚を脱着自在に設け、この藁屑選別棚の上部に設けたストローラックと、下部のグレンシーブとにより、脱穀室の藁屑排出口から排出される脱穀物の穀粒の一部と、藁屑とは、穀粒と、藁屑とに揺動選別される。
【特許文献1】特開昭60−149318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
脱穀室の藁屑排出口から排出される脱穀物の穀粒の一部と、藁屑とを確実に揺動移送中に分離させて、穀粒の選別性能の向上、及び三番飛散粒の減少を図ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このために、この発明は、請求項1に記載の発明においては、穀稈を脱穀する扱胴16bを軸支内装した脱穀室16と、該脱穀室16から脱穀処理物等の供給を受けて、揺動移送しながら揺動選別する選別室17内には、移送始端部側から順次移送棚20bと、前後方向に所定間隔で左右方向の複数の前チャフシーブ20cと、左右方向に所定間隔で前後方向の上部を鋸刃状に形成した複数の前ストローラック21aと、前後方向に所定間隔で左右方向の複数の後チャフシーブ20dと、左右方向に所定間隔で前後方向の上部を鋸刃形状に形成した複数の後ストローラック21bと、各後チャフシーブ20dの下側には、選別網21cと、各後ストローラック21bの下側には、流下棚21dとを設けた揺動選別装置19a等とよりなる脱穀機において、前記揺動選別装置19aの前チャフシーブ20cの上下方向の長さ(L1)を、後チャフシーブ20dの上下方向の長さ(L2)より短くし、又、前チャフシーブ20cの装着間隔(P1)を、後チャフシーブ20dの装着間隔(P2)より狭くして設けたことを特徴とする脱穀機としたものである。
【0005】
前記脱穀室16内へ供給された穀稈は、この脱穀室16へ軸支内装した扱胴16bで脱穀処理され、脱穀室16から下側の選別室17内へ内装した揺動選別装置19aへ脱穀処理物が供給され、この揺動選別装置19aで揺動移送中に穀粒と、藁屑、塵埃、及び稈切等とに揺動選別される。
【0006】
前記揺動選別装置19a上へ脱穀室16内から漏下した脱穀処理物と、この脱穀室16から漏下せず、移送終端部まで移送されて、この脱穀室16の移送終端部から一部の小量の穀粒と、多量の藁屑等とが供給される。
【0007】
揺動選別装置19aの移送始端部より、順次設けた移送棚20bと、前後方向に所定間隔で、左右方向の複数の前チャフシーブ20cと、左右方向に所定間隔で、前後方向の上部を鋸刃形状に形成した複数の前ストローラック21aと、前後方向に所定間隔で左右方向の複数の後チャフシーブ20dと、左右方向に所定間隔で、前後方向の上部を鋸刃形状に形成した複数の後ストローラック21b等との上側へ供給される。これらにより、揺動移送中に揺動選別され、穀粒と、一部の小量の藁屑、及び塵埃とが選別網21cから漏下し、漏下中に風選別されて、機外へ排出される。前チャフシーブ20cの上下方向の長さ(L1)を、後チャフシーブ20dの上下方向の長さ(L2)より短くして設けると共に、前チャフシーブ20cの装着間隔(P1)を、後チャフシーブ20dの装着間隔(P2)より狭くして設け、移送始端部側で漏下を押さえて、選別性能の向上を図っている。
【0008】
又、前記揺動選別装置19aの移送終端部側の後ストローラック21a部から漏下した未脱穀処理の二番物と、小量の藁屑等とは、流下棚21d上を流下中に風選別され、二番物は、脱穀室16内へ還元されて、再脱穀処理される。
【0009】
更に、前記揺動選別装置19aの移送終端部側の後ストローラック21b部まで、移送された藁屑は、吸引されて機外へ排出される。
請求項2に記載の発明において、前記脱穀室16の未脱穀処理物である排塵物等を排出する扱室排出口16eの下側へ設けて揺動選別する前ストローラック21aの装着間隔(P3)は、後ストローラック21bの装着間隔(P4)より狭くして設けたことを特徴とする請求項1に記載の脱穀機としたものである。
【0010】
前記脱穀室16内で脱穀されて、この脱穀室16から漏下しなかった未脱穀処理物である排塵物等を排出する。この脱穀室16の移送終端部に設けた扱室排出口16eの下側へ位置させて設けた、揺動移送中に穀粒と、藁屑等とに揺動選別する揺動選別装置19aの前ストローラック21aの装着間隔(P3)は、後ストローラック21bの装着間隔(P4)より狭くして設けて、移送始端部側で藁屑等の漏下を押さえて、選別性能の向上を図っている。
【0011】
請求項3に記載の発明においては、前記揺動選別装置19aの移送棚20bの上側面には、複数の寄板20eを設けると共に、該各寄板20eの後方下部面は、前チャフシーブ20cの上側面で後端部を、移送終端部の該前チャフシーブ20cまで延長して設けたことを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の脱穀機としたものである。
【0012】
前記脱穀室16内で脱穀されて、この脱穀室16から漏下して、揺動選別装置19aへ設けた移送棚20b上へ供給される脱穀処理物は、この移送棚20bの上側面へ複数の寄板20eを設けると共に、この各寄板20eの後方下部面は、前チャフシーブ20cの上側面で後端部を、移送終端部の該前チャフシーブ20cまで延長して設けて、移送棚20b上へ供給された脱穀処理物を、各寄板20eにより、均等になるように、均分しながら揺動移送され、揺動選別される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明においては、脱穀機5の脱穀室16内で穀稈は脱穀され、脱穀済み脱穀処理物は、揺動選別装置19aへ供給されて、この揺動選別装置19aで揺動移送中に揺動選別される。この揺動選別装置19aへ設ける。複数の前チャフシーブ20cの上下方向の長さ(L1)を、複数の後チャフシーブ20dの上下方向の長さ(L2)より短くし、又、各前チャフシーブ20cの装着間隔(P1)を、各後チャフシーブ20dの装着間隔(P2)より、狭くして設けたことにより、移送棚20bから引継ぎする脱穀処理物が、直接選別網21c部へ移送されないことで、各前チャフシーブ20cで粗選別され、これにより、作業条件、脱穀処理物の流量が変わっても、選別性能にはあまり影響されないことで、良好な選別性能を得ることができる。
【0014】
又、前記各前チャフシーブ20cの上下方向の長さ(L1)を短くすることで、この前チャフシーブ20cの枚数を多くすることができて、選別長さを長くでき、穀粒と、藁屑等との分離ができて、穀粒のろ過が良好になり、三番飛散粒の減少を図ることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明においては、前記脱穀室16内で、未脱穀処理物である排塵物等を排出する扱室排出口16eの下側へ揺動選別する各前ストローラック21aの装着間隔(P3)は、各後ストローラック21bの装着間隔(P4)より、狭くして設けたことにより、脱穀室16から供給される脱穀処理物は、各前ストローラック21a上で、穀粒と、藁屑とにほぐされながら分離されることにより、前部から移送される脱穀処理物と、直接交じ合うことがないことにより、固まりとならず、このために、分離回収が容易であり、選別が良好となる。又、三番飛散粒が減少を図ることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明においては、前記脱穀室16内で脱穀された脱穀処理物は、揺動選別装置19aの移送棚20b上側面で、後部を各チャフシーブ20cの上側で、移送終端部の前チャフシーブ20cまで延長して、複数の寄板20eを設けたことにより、移送棚20b上へ供給される脱穀処理物は、この各寄板20eで均等になるように、均分しながら揺動移送され、揺動選別される。これにより、選別性能の向上、及び三番飛散粒の減少を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
コンバイン1の走行車台2の上側へ載置する脱穀機5について説明する。コンバイン1の走行装置3の上側へ設けた走行車台2の前方部に設けた刈取機4で刈取りされた刈取り穀稈は、この刈取機4で後方上部へ移送され、脱穀機5のフィードチェン6aと、挟持杆6bとで引継ぎされ、脱穀機5の脱穀室16内を挟持移送中に、扱胴軸16aで軸支した扱胴16bで脱穀される。脱穀された脱穀処理物等は、脱穀室網16dから漏下して、この脱穀室網16dの下側の選別室17へ内装して、揺動移送しながら揺動選別する揺動移送選別装置18は、揺動選別装置19aと、揺動カム装置19bと、ローラ装置19c等とよりなる構成である。この揺動選別装置19aの枠体20a内には、移送始端部より、移送棚20bと、前チャフシーブ20cと、前ストローラック21aと、後チャフシーブ20dと、後ストローラック21bと、後チャフシーブ20dの下側へ選別網21cと、後ストローラック21bの下側へ流下棚21dを設けた構成である。揺動移送選別装置18を主に図示して説明する。
【0018】
前記コンバイン1の走行車台2の下側には、図5で示す如く土壌面を走行する左右一対の走行クローラ3aを張設した走行装置3を配設し、走行車台2の上側には、脱穀機5を載置した構成である。走行車台2の前方部の刈取機4で立毛穀稈を刈取りし、この刈取り穀稈は、この刈取機4で後方上部へ移送され、脱穀機5のフィードチェン6aと、挟持杆6bとで引継ぎされて、挟持移送されながら脱穀される。脱穀済みで選別済み穀粒は、脱穀機5の右横側に配設した穀粒貯留タンク7内へ一時貯留される。
【0019】
前記走行車台2の前方部には、図5で示す如く前端位置から立毛穀稈を分離するナローガイド8a、及び各分草体8bと、立毛穀稈を引起す各引起装置8cと、引起された穀稈を掻込みする穀稈掻込移送装置9の各掻込装置9aと、掻込された穀稈を刈取る刈刃装置8dと、刈取りされた穀稈を挟持移送して、脱穀機5のフィードチェン6aと、挟持杆6bとへ受渡しする穀稈掻込移送装置9の根元・穂先移送装置10a・10b等からなる刈取機4を設けている。該刈取機4は、油圧駆動による伸縮シリンダ11により、土壌面に対して、昇降自在に移動する構成である。
【0020】
前記刈取機4の前方下部から後方上部へ傾斜する支持杆12aの上端部には、左右方向に支持パイプ杆12bを設け、この支持パイプ杆12bを走行車台2の上側面に設けた支持装置12cで回動自在に支持させて、伸縮シリンダ11の作動により、刈取機4は支持パイプ杆12bを回動中心として、上下に回動する構成である。
【0021】
前記刈取機4の穀稈掻込移送装置9によって形成される穀稈移送経路中には、刈取られて移送される穀稈に接触作用することにより、脱穀機5へ穀稈の供給の有無を検出する穀稈センサ4aを設けた構成である。
【0022】
前記穀粒貯留タンク7側の前部には、図5で示す如くコンバイン1を始動、停止、及び各部を調節等の操作を行う操作装置13aと、これら操作を行う作業者が搭乗する操縦席13bとを設け、この操縦席13bの下側で、走行車台2の上側面には、エンジン14を載置すると共に、後方部には、穀粒貯留タンク7を配設する。これら走行装置3と、刈取機4と、脱穀機5と、エンジン14等により、コンバイン1の機体1aを形成した構成である。
【0023】
前記走行車台2の前端部に装架した走行用のミッションケース15内の伝動機構15aの伝動経路中には、その出力に基づいて、走行車速を検出するポテンションメータ方式の車速センサ15bを設けた構成である。
【0024】
前記走行車台2の前方部の刈取機4で刈取りされて、上部へ移送された穀稈を引継ぎ脱穀する脱穀機5は、走行車台2の左側へ載置すると共に、右側には、穀粒貯留タンク7を載置して設け、脱穀機5で脱穀した脱穀済みで、選別済み穀粒を、揚穀装置26で揚送して穀粒貯留タンク7内へ供給して、一時貯留する構成である。
【0025】
前記脱穀機5は、図1、及び図2で示す如く箱形状の箱体に形成して、上方左側には、刈取機4で上部へ移送された穀稈を引継ぎ移送するフィードチェン6aと、挟持杆6bとを設けた構成である。これらフィードチェン6aと、挟持杆6bとにより、挟持された穀稈は、脱穀機5上部に設けた脱穀室16内を挟持移送中に、この脱穀室16内の多種類で、多数本の扱歯16cを外周部に植設して、回転自在な扱胴軸16aで軸支した扱胴16bのこの各扱歯16cにより、脱穀する構成である。又、この扱胴16bの各扱歯16cの回転外周下側部には、脱穀処理物が漏下する脱穀室網16dを張設した構成である。
【0026】
前記脱穀室16の下側には、図1で示す如く選別室17を設け、この選別室17内には、脱穀室16を形成する脱穀室網16dから漏下する脱穀処理物と、脱穀室16の移送終端部の扱室排出口16eから排出される。脱穀室16内で未脱穀処理物である排塵物との供給を受けて、揺動移送しながら揺動選別する揺動選別装置19aと、揺動カム装置19bと、ローラ装置19c等とによりなる揺動移送選別装置18を吊り下げ状態に設けた構成である。
【0027】
前記揺動選別装置19aは、図1、及び図2で示す如く枠体20a内には、脱穀室16の脱穀室網16dから漏下する脱穀処理物と、脱穀室16の扱室排出口16eから排出される排塵物との供給を受けて、揺動移送中に揺動選別する移送始端部側より、順次各種部品を装着して設けた構成である。
【0028】
前記揺動選別装置19aの枠体20a内には、移送始端部側から順に、複数の山形状を形成した移送棚20bと、前後方向に所定間隔で、上下方向に所定長さで、左右方向に複数の略L字形状で、上端部を山形状に形成した前チャフシーブ20cと、左右方向に所定間隔で、前後方向に所定長さで、上下方向の上部を鋸刃形状に形成した複数の前ストローラック21aと、前後方向に所定間隔で、上下方向に所定長さで、左右方向に複数のL字形状で、上端部を山形状に形成した後チャフシーブ20dと、左右方向に所定間隔で、前後方向に所定長さで、上下方向の上部を鋸刃形状に形成した複数の後ストローラック21bと、各後チャフシーブ20dの下方部には、網材等よりなる選別網21cと、各後ストローラック21bの下方部には、後方上部から前方下部へ傾斜する流下棚21d等を設けた構成である。各前ストローラック21aは、図1、及び図2で示す如く前後方向に短いものと、長いものとの両者を設けた構成である。
【0029】
又、前記揺動選別装置19aの枠体20aの左右両外側面の前部には、揺動カム装置19bを装着して設けると共に、後部には、ローラ装置19cを設けて、揺動選別装置19aを揺動回動させる構成である。
【0030】
前記前・後チャフシーブ20c,20dの上下方向の略中央部、又は下端部には、図1で示す如く前・後回動軸20f,20hを設け、この前・後回動軸20f,20hを回動用モータ(図示せず)を設け、回転駆動させて、前・後チャフシーブ20c,20dを回動させ、傾斜角度を変更し、揺動移送中の脱穀処理物の漏下量を調節可能とした構成とするもよい。
【0031】
前記揺動選別装置19aの前・後チャフシーブ20c,20dは、図1で示す如くこの前チャフシーブ20cの上下方向の長さ(L1)を、後チャフシーブ20dの上下方向の長さ(L2)より、所定長さ短くして設けると共に、又、前チャフシーブ20cの装着間隔(取付ピッチ)(P1)を、後チャフシーブ20dの装着間隔(取付ピッチ)(P2)より、所定間隔狭くして設けた構成である。
【0032】
前記揺動選別装置19aの前チャフシーブ20cの上下方向の長さ(L1)は、後チャフシーブ20dの上下方向の長さ(L2)より、所定長さ短くして設けると共に、又、前チャフシーブ20cの装着間隔(P1)を、後チャフシーブ20dの装着間隔(P2)より、所定間隔狭くして設けたことにより、移送棚20bから移送される脱穀処理物が、直接選別網21cへ揺動移送されずに、各前チャフシーブ20cにより、粗選別されることにより、移送棚20bから移送される脱穀処理物が直接選別網21cへ揺動移送されずに、各前チャフシーブ20cにより、粗選別されることにより、作物条件、脱穀処理物の流量が変わったときであっても、揺動選別には、大きく影響されることがない。又、この各前チャフシーブ20cの装着間隔を狭くすることにより、枚数を多くすることができ、選別長さを長く取ることができて、穀粒と、藁屑等との分離が良好になり、穀粒ろ過が良くなり、選別性能の向上、三番飛散粒の減少を図ることができる。
【0033】
前記脱穀室16内で、未処理の未脱穀処理物である排塵物等を排出する。この脱穀室16の移送終端部の扱室排出口16eの下側には、図1、及び図2で示す如く揺動選別装置19aの各前ストローラック21aを位置させて設け、この各前ストローラック21aの装着間隔(P3)は、各後ストローラック21bの装着間隔(P4)より、所定間隔狭くして設けた構成である。
【0034】
前記脱穀室16の扱室排出口16eの下側へ位置させて設けた。揺動選別装置19aの各前ストローラック21aの装着間隔(P3)は、各後ストローラック21bの装着間隔(P4)より、所定間隔狭くして設けたことにより、脱穀室16の扱室排出口16eから排出される排塵物は、各前ストローラック21a上で、穀粒と、藁屑とにほぐされながら分離され、前部から移送される脱穀処理物と、直接交じ合うことがないので、固まりとならずに、各後チャフシーブ20dでの分離回収が容易にできて、選別性能の向上と、三番飛散粒の減少とを図ることができる。
【0035】
前記揺動選別装置19aの移送棚20bの上側面には、図1、及び図2で示す如く複数個の寄板20eを、右前外側から左後内側へ向けて所定角度で、傾斜させて設けると共に、この各寄板20eは、上下方向に所定高さで、後方下部面は、各前チャフシーブ20cの上側部で、後端部を移送終端部の該前チャフシーブ20cの位置まで延長して設け、移送棚20b、及び各前チャフシーブ20c上の右側部へ多く漏下する脱穀処理物を、早く左側部へ寄せて、移送棚20b、及び各前チャフシーブ20c上を揺動移送される脱穀処理物を均等に均分させる構成である。
【0036】
前記揺動選別装置19aの移送棚20bの上側面には、複数の寄板20eを設け、この各寄板20eは、上下方向に所定高さで、後方下部面は各前チャフシーブ20cの上側部で、後端部を移送終端部のこの前チャフシーブ20cの位置まで延長して設けたことにより、移送棚20b、及び各前チャフシーブ20c上の脱穀処理物を均等に均分できる。
【0037】
又、各寄板20eで脱穀処理物を寄せるときに、この脱穀処理物へ抵抗が掛かることにより、各前チャフシーブ20cでの穀粒の分離回収が促進され、選別性能の向上、及び三番飛散粒の減少を図ることができる。
【0038】
前記揺動選別装置19aの移送棚20bの上側面へ設けた複数個の寄板20eは、図1、及び図2で示す如く右前外側から左後内側へ所定角度で傾斜させて設けると共に、この各寄板20eは、上下方向に所定高さで、後方下部は、移送始端部の各前チャフシーブ20cの上側面部と、寄板20eの下部面部との隙間(L3)を狭く形成し、移送終端部の該前チャフシーブ20cの上側面部と、寄板20eの下側面部との隙間(L4)を広く形成して、各寄板20eの下部面を、前部から後部へ所定角度により、傾斜させて設けた構成である。
【0039】
これにより、前記各寄板20eの下部面を、前部から後方上部へ向けて上り傾斜させて設けたことにより、各前チャフシーブ20c上を揺動移送される脱穀処理物を均一に移送することができて、この各前チャフシーブ20cを全面利用できることにより、脱穀作業の効率の向上と、脱穀能力の向上を図ることができる。
【0040】
前記揺動選別装置19aの下側前部には、図1で示す如く送風機24を設け、この送風機24から発生する起風を送風して、揺動選別装置19aの選別網21cから落下する落下物を穀粒と、藁屑、塵埃、及び稈切等とに風選別する構成である。
【0041】
前記揺動選別装置19aで揺動選別され、送風機24で風選別された穀粒は、一番選別室22へ設けた、一番選別棚22a上を流下中に再度選別されて、一番選別室22へ設けた、一番移送受樋22b内へ供給され、この一番移送受樋22bへ軸支内装した、一番移送螺旋22cにより、いずれか一方側の、例えば、右外側へ設けた揚穀装置26内へ移送供給され、この揚穀装置26へ回転自在に軸支内装した一番揚穀螺旋26aで引継ぎされて、上方へ揚送され、穀粒貯留タンク7内へ供給されて、一時貯留される構成である。
【0042】
前記一番選別室22の後側には、図1で示す如く揺動選別装置19aの移送終端部の流下棚21d等より、落下した二番物を受ける二番選別室23へ設けた、二番選別棚23a上を流下中に再度選別されて、二番選別室23へ設けた、二番移送受樋23b内へ供給され、この二番移送受樋23bへ軸支内装した、二番移送螺旋23cにより、いずれか一方側、例えば、右外側へ設けた二番還元揚送装置27内へ移送供給され、この二番還元揚送装置27内へ回転自在に軸支内装した二番還元螺旋27aで、二番物を再脱穀する脱穀室16内へ揚送還元する構成である。
【0043】
前記揺動選別装置19aの移送終端部の上側には、図1、及び図2で示す如く吸引ファン25を設けた構成である。この吸引ファン25により、揺動選別装置19a上を揺動移送中に、選別された藁屑、塵埃、及び稈切等を吸引して、機外へ排出する構成である。
【0044】
前記穀粒貯留タンク7内に貯留した穀粒を機外へ排出するこの穀粒貯留タンク7の後側には、縦移送螺旋26cを内装した排出支持筒26bを略垂直姿勢で旋回自在に装着して設け、この排出支持筒26bの上端部には、その全長がコンバイン1の前後長に亘る機外へ穀粒を排出する排出螺旋27cを伸縮自在に内装した排出オーガ27bを伸縮自在、上下回動自在、及び左右旋回自在に前後方向に配設した構成である。
【0045】
前記脱穀機5の後側には、図3、及び図4で示す如く脱穀済み排藁を移送する排藁移送装置28を設けると共に、この排藁移送装置28の後側の下側には、排藁を切断するカッタ装置28bを設けた構成である。脱穀機5の上部に設けた扱胴カバー5aと、排藁移送装置28とは、リンク機構28aで接続した構成である。扱胴カバー5aを上方へ開操作に連動して、排藁移送装置28は、リンク機構28aを介して、上方へ回動移動する構成である。
【0046】
前記脱穀機5の後側板5bの外側には、出力プーリ5cを設けると共に、二段溝のカウンタプーリ5dを設けた構成である。出力プーリ5cと、カウンタプーリ5dの内側溝とには、ベルト5eを掛け渡し、このベルト5eには、テンション装置5fを設けて、ベルト5eを伸張した構成である。カウンタプーリ5dの外側溝と、排藁ギャーケース29へ設けた排藁入力プーリ29aとには、ベルト29bを掛け渡した構成である。
【0047】
前記排藁ギャーケース29の後側には、排藁穂先移送装置31を設けると共に、この排藁穂先移送装置31の後側には、排藁根元移送装置30を設けた構成である。
前記排藁ギャーケース29へ後へ突出させて設けた伝動軸29cの前部には、前スプロケット31aを軸支して設け、この前スプロケット31aで排藁穂先移送装置31の所定間隔に移送ラグ31cを装着した、排藁穂先移送チェン31bを回転駆動する構成である。又、後部には、後スプロケット30aを軸支して設け、この後スプロケット30aで排藁根元移送装置30の排藁根元移送チェン30bを回転駆動する構成である。
【0048】
前記排藁穂先・排藁根元移送装置31,30を接続板32cで接続し、この接続板32cには、アーム32bを回動軸32aへ装着して設け、この回動軸32aは、支持メタル32で回動自在に軸支した構成である。この回動軸32aの回動により、排藁移送装置28の排藁穂先・排藁根元移送装置31,30を上下回動移動する構成である。
【0049】
これにより、前記排藁入力プーリ29aを脱穀機5の後外側へ設けて、コンパクトな構成でありながら、排藁移送装置28を上下回動移動させることができる。又、この排藁移送装置28のベルト29bを取り外すことなく、上下回動移動ができる。更に、扱胴カバー5aの開操作に連動することにより、メンテナンスが容易である。
【0050】
前記脱穀機5に、この脱穀機5内で脱穀できなかった未脱穀処理物である排塵物を、再脱穀処理する回転自在な排塵軸33aへ多数の処理爪33cを装着した排塵胴33bを軸支した構成であると、これら排塵胴33bと、回転自在な扱胴軸16aを軸支した扱胴16bとの伝動機構は、図6、及び図7で示す如く設けた構成である。
【0051】
前記エンジン14の回転動力は、エンジン軸14aへ軸支したエンジンプーリ14bと、脱穀機5の一側へ設けた伝動ケース34へ伝動機構34aを内装して設けた、この伝動機構34aの一方側の入力伝動軸34bへ軸支した入力プーリ34cとには、ベルト14cを掛け渡して、エンジンの回転動力を伝動ケース34へ入力する構成である。伝動ケース34は、図7で示す如く入口漏斗16jの上方へ装着して設けると共に、排塵胴33bより、右側へ位置させて設け、扱胴16a、及び排塵胴33b等を回転駆動する構成である。
【0052】
前記伝動ケース34の伝動機構34aの出力伝動軸34dには、二段溝の出力プーリ34eを軸支して設け、この出力プーリ34eの内側溝と、排塵軸33aの軸端部へ軸支した排塵プーリ33dとには、ベルト33eを掛け渡して、排塵胴33bを回転駆動した構成である。
【0053】
前記伝動ケース34の出力伝動軸34dの出力プーリ34eの外側溝と、扱胴軸16aの一方側端部へ軸支した扱胴プーリ16fとには、ベルト16hを掛け渡して、扱胴16bを回転駆動する構成である。
【0054】
これにより、伝動構成が簡単でコスト低減になる。又、従来は伝動ケース34のべベルギャー方式の伝動機構34aで直接排塵軸33aを伝動していたために、衝撃に対して弱かったが、これを解消することができた。
【0055】
図6で示す如く伝動機構図の扱胴16bを回転駆動するベルト16hを、図8で示す如く排塵胴33bを回転駆動するベルト33eより、内側へ位置させて設けた構成とするもよい。
【0056】
これにより、前記扱胴16cのベルト16hを、カバーする扱胴安全カバーを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】脱穀機の拡大側断面図
【図2】脱穀機の拡大平断面図
【図3】脱穀機の排藁移送装置部の拡大平面図
【図4】脱穀機の扱胴カバー開閉部拡大背面図
【図5】コンバインの左側全体側面図
【図6】他の実施例を示す図で、脱穀機の扱胴と、排塵胴との伝動機構の拡大平面図
【図7】他の実施例を示す図で、脱穀機の扱胴と、排塵胴との伝動機構の拡大側面図
【図8】他の実施例を示す図で、脱穀機の扱胴と、排塵胴との伝動機構の拡大平面図
【符号の説明】
【0058】
16 脱穀室
16b 扱胴
16e 扱室排出口
17 選別室
19a 揺動移送装置
20b 移送棚
20c 前チャフシーブ
20d 後チャフシーブ
20e 寄板
21a 前ストローラック
21b 後ストローラック
21c 選別棚
21d 流下棚
L1 長さ
L2 長さ
P1 装着間隔
P2 装着間隔
P3 装着間隔
P4 装着間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を脱穀する扱胴(16b)を軸支内装した脱穀室(16)と、該脱穀室(16)から脱穀処理物等の供給を受けて、揺動移送しながら揺動選別する選別室(17)内には、移送始端部側から順次移送棚(20b)と、前後方向に所定間隔で左右方向の複数の前チャフシーブ(20c)と、左右方向に所定間隔で前後方向の上部を鋸刃状に形成した複数の前ストローラック(21a)と、前後方向に所定間隔で左右方向の複数の後チャフシーブ(20d)と、左右方向に所定間隔で前後方向の上部を鋸刃形状に形成した複数の後ストローラック(21b)と、各後チャフシーブ(20d)の下側には、選別網(21c)と、各後ストローラック(21b)の下側には、流下棚(21d)とを設けた揺動選別装置(19a)等とよりなる脱穀機において、前記揺動選別装置(19a)の前チャフシーブ(20c)の上下方向の長さ(L1)を、後チャフシーブ(20d)の上下方向の長さ(L2)より短くし、又、前チャフシーブ(20c)の装着間隔(P1)を、後チャフシーブ(20d)の装着間隔(P2)より狭くして設けたことを特徴とする脱穀機。
【請求項2】
前記脱穀室(16)の未脱穀処理物である排塵物等を排出する扱室排出口(16e)の下側へ設けて揺動選別する前ストローラック(21a)の装着間隔(P3)は、後ストローラック(21b9の装着間隔(P4)より狭くして設けたことを特徴とする請求項1に記載の脱穀機。
【請求項3】
前記揺動選別装置(19a)の移送棚(20b)の上側面には、複数の寄板(20e)を設けると共に、該各寄板(20e)の後方下部面は、前チャフシーブ(20c)の上側面で後端部を、移送終端部の該前チャフシーブ(20c)まで延長して設けたことを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の脱穀機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−174762(P2006−174762A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371595(P2004−371595)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】