説明

脱穀機

【課題】脱穀室内の前後両側へ複数個設けて、脱穀処理物の特に藁屑等を切断する前・後切刃の刃縁形状部は、同じ形状であるために、この前・後切刃に掛かる抵抗が異なり、このために、藁屑等が均等に切断されずに、ダンゴ状態になり、異常音が発生したり、こなれが悪いこと等があった。
【解決手段】脱穀室16内で穀稈が脱穀された、脱穀処理物の特に藁屑等を切断する、移送始端部側へ設ける前切刃17aと、移送終端部側へ設ける後切刃17bとの刃縁形状部を異にして設ける構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
脱穀室内で穀稈が脱穀された、脱穀処理物を切断する該脱穀室内の移送始端部側へ設ける前切刃と、移送終端部側へ設ける後切刃とでは、切断する刃縁形状部を変えて設けた技術であり、コンバインへ載置する脱穀機の切刃装置として利用できる。
【背景技術】
【0002】
脱穀機の脱穀室内の移送始端部側と、及び移送終端部側とへ設けて、脱穀処理物を切断する各切刃の刃縁形状部は、特開平6−121613号公報で示すように、同じ形状に形成された各切刃が装着されて、脱穀処理物が切断される。
【特許文献1】特開平6−121613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
脱穀機の脱穀室内の移送始端部側と、移送終端部側とへ設けて、脱穀処理物を切断する各切刃の刃縁形状部は、全て同じ形状に形成された各切刃を装着していることにより、脱穀室内では、藁屑の発生分布は、移送始端部側で多く、又、こなれ具合も移送始端部側では、悪いことにより、扱歯の摩耗具合が異なったり、脱穀室内の移送始端部側で藁屑が固まり、異常音が発生することがあったが、これらの問題を、この発明により、解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このために、この発明は、請求項1に記載の発明においては、穀稈を挟持移送するフィードチェン(6a)と、挟持杆(6b)とを設け、穀稈を脱穀する各種扱歯(16c)を植設した扱胴(16b)を内装軸架した脱穀室(16)と、該脱穀室(16)の下側には、脱穀処理物が漏下する脱穀室網(16d)等を設けた脱穀機において、脱穀処理物を切断する前記脱穀室(16)内の移送始端部側へ設ける前切刃(17a)と、移送終端部側へ設ける後切刃(17b)とは、脱穀処理物を切断する刃縁形状部(イ)を異にして設けたことを特徴とする脱穀機としたものである。
【0005】
フィードチェン(6a)と挟持杆(6b)とで挟持された穀稈は、脱穀室(16)内を移送され、この脱穀室(16)内を挟持移送中に、この脱穀室(16)内へ各種扱歯(16c)を多数個を植設した扱胴(16b)の回転駆動により、脱穀される。又、脱穀された脱穀処理物の内の特に藁屑は、脱穀室(16)内の移送始端部側へ設けた複数個の前切刃(17a)と、移送終端部側へ設けた複数個の後切刃(17b)とにより、切断される。この前・後切刃(17a),(17b)の脱穀処理物の藁屑を切断する刃縁形状部(イ)を異にして設けている。
【0006】
又、脱穀処理された脱穀処理物の内の穀粒と、一部の小藁屑とは、前記脱穀室(16)の下側へ設けた脱穀室網(16d)から漏下し、この漏下中に風選される。
請求項2に記載の発明において、前記前切刃(17a)の刃縁形状部(イ)は、R状の凹形状に形成すると共に、後切刃(17b)の刃縁形状部(イ)は、R状の凸形状に形成して設けたことを特徴とする請求項1に記載の脱穀機としたものである。
【0007】
前記前切刃(17a)の刃縁形状部(イ)は、R状の凹形状に形成した、この前切刃(17a)複数個を脱穀室(16)内の移送始端部側へ設けている。又、後切刃(17b)の刃縁形状部(イ)は、R状の凸形状に形成した、この後切刃(17b)複数個を脱穀室(16)内の移送終端部側へ設けている。脱穀室(16)の前方部の前切刃(17a)部では、藁屑に掛かる抵抗が大きく、このために、この藁屑はよく切断される。又、後方部の後切刃(17b)部では、藁屑に掛かる抵抗が少なく、このために、藁屑が逃げて、この藁屑はよく切断されないことがある。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明においては、穀稈を脱穀する脱穀室(16)内には、脱穀処理物を切断する前切刃(17a)は、移送終端部側へ設け、又、後切刃(17b)は、移送終端部側へ設け、これら前・後切刃(17a),(17b)の刃縁形状部(イ)を異にして設けたことにより、脱穀室(16)の藁屑発生の分布や、藁屑や処理物(穀粒)の量や抵抗具合に対応することができる。この脱穀室(16)内の異音の発生を防止できる。扱歯(16c)の偏摩耗や、変形の防止ができる。脱穀機の消費馬力の低減を図ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明においては、前記前切刃(17a)の刃縁形状部(イ)は、R状の凹形状に形成し、又、後切刃(17b)の刃縁形状部(イ)は、R状の凸形状に形成したことにより、脱穀室(16)の前部側では、扱歯(16c)と、前切刃(17a)とがラップすることにより、積極的に処理物(藁屑)を、この前切刃(17a)の内側へ押し込み切断して、処理能力の向上を図り、藁屑やカギヌ等の分離を促進する。又、脱穀室(16)の後部側では、処理物を後切刃(17b)の刃先側へ逃がすように、処理していることにより、扱歯(16c)の偏摩耗や倒れを防止できる。処理物の持ち廻りによる異常音の発生防止ができる。消費馬力も軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
コンバイン1の走行車台2の上側へ載置する脱穀機5について説明する。コンバイン1の走行装置3の上側へ設けた走行車台2の前方部に設けた刈取機4で刈取りされた穀稈は、この刈取機4で後方上部へ移送され、脱穀機5のフィードチェン6aと挟持杆6bとで引継ぎされ、脱穀機5の脱穀室16内を挟持移送中に、扱胴軸16aで軸支した多種類で多数本の扱歯16cを植設した扱胴16bで脱穀される。脱穀された脱穀処理物は、脱穀室網16dから漏下して、この脱穀室網16dの下側の選別室17内で揺動選別、及び風選別される。
【0011】
前機脱穀室16内の移送始端部側には、脱穀処理物を切断する、切刃装置の前切刃17aを複数個設けると共に、移送終端部側には、脱穀処理物を切断する切刃装置の後切刃17bを複数個を設けている。これら脱穀室16と、この脱穀室16内の前・後切刃17a,17bの脱穀処理物の主として長い藁屑を切断する、刃縁形状部(イ)とを主に図示して説明する。
【0012】
前記コンバイン1の走行車台2の下側には、図7で示すように、土壌面を走行する左右一対の走行クローラ3aを張設した走行装置3を配設し、走行車台2の上側に、脱穀機5を載置した構成である。走行車台2の前方部の刈取機4で立毛穀稈を刈取りして、後方上部へ移送し、脱穀機5のフィードチェン6aと、挟持杆6bとで引継いで挟持移送しながら脱穀する。脱穀済みで選別済みの穀粒は、脱穀機5の右横側へ配設した穀粒貯留タンク7内へ供給され、一時貯留される。
【0013】
前記走行車台2の前方部には、図7で示すように、立毛穀稈を分離するナローガイド8a、及び各分草体8bと、立毛穀稈を引起す各引起装置8cと、引起された穀稈を掻込みする穀稈掻込移送装置9の各掻込装置9aと、掻込された穀稈を刈取る刈刃装置8dと、刈取りされた穀稈を挟持移送して脱穀機5のフィードチェン6aと挟持杆6bとへ受渡しする穀稈掻込移送装置9の根元・穂先移送装置10a・10b等からなる刈取機4を設けている。該刈取機4は、油圧駆動による伸縮シリンダ11により、土壌面に対して昇降する。
【0014】
前記刈取機4の前方下部から後方上部へ傾斜する支持杆12aの上端部に設ける支持パイプ杆12bを走行車台2の上側面に設けた支持装置12cで回動自在に支持させている。伸縮シリンダ11を作動させると、支持杆12aと共に、刈取機4が上下回動する。
【0015】
前記刈取機4の穀稈掻込移送装置9によって形成される穀稈移送経路中には、刈取られて移送される穀稈に接触作用することにより、脱穀機5へ穀稈の供給の有無を検出する穀稈センサ4aを設けている。
【0016】
前記穀粒貯留タンク7側の前部には、図7で示すように、コンバイン1を始動、停止、及び各部を調節等の操作を行う操作装置13aと、操縦席13bとを設け、この操縦席13bの下側にエンジン14を載置している。
【0017】
前記走行車台2の前端部に装架した走行用のミッションケース15内の伝動機構15aの伝動経路中には、その出力に基づいて、走行車速を検出するポテンションメータ方式の車速センサ15bを設けている。
【0018】
前記穀粒貯留タンク7内へ貯留した穀粒を機外へ排出するこの穀粒貯留タンク7の後側には、図7で示すように、縦移送螺旋28aを内装した縦移送筒28を略垂直姿勢で旋回自在に装着して設け、この縦移送筒28の上端部には、その全長がコンバイン1の前後長に亘る機外へ穀粒を排出する排出螺旋29aを伸縮自在に内装した排出オーガ29を伸縮自在、上下回動自在、及び左右旋回自在に前後方向に配設した構成である。
【0019】
前記脱穀機5は、図1、及び図2で示すように、箱形状の箱体に形成して、上方左側には、刈取機4で上部へ移送された穀稈を引継ぎ移送するフィードチェン6aと、挟持杆6bとを設けている。これらフィードチェン6aと、挟持杆6bとにより、挟持された穀稈は、脱穀機5上部に設けた脱穀室16内を挟持移送中に、この脱穀室16内の多種類で、多数本の扱歯16cを外周部に植設して、回転自在な扱胴軸16aで軸支した扱胴16bのこの各扱歯16cによって脱穀する。又、この扱胴16bの各扱歯16cの回転外周下側部には、脱穀処理物が漏下する脱穀室網16dを張設している。脱穀室16の上側には、扱胴カバー16fを設けている。
【0020】
前機脱穀室16内には、図1〜図6で示すように、この脱穀室16内の脱穀処理物の内の特に藁屑、及びカギヌ等を切断処理する。切刃装置である、締付用のボルト17cを固着した、前切刃17aを移送終端部側(前側)で扱胴16bの左右両側へ複数個を、ナット等により、装着している。又、移送終端部側(後側)で扱胴16bの左右両側へ締付用のボルト17cを固着した、複数個の後切刃17bを、ナット等により、装着している。これら前・後切刃17a,17bは、平面視コ字形状に形成し、正面視各扱歯16cへ所定寸法重合させて設けている。更に、これら前切刃17a、及び後切刃17bの脱穀処理物の藁屑等を切断する各刃縁形状部(イ)は異に形成して設けている。
【0021】
前記脱穀室16の藁屑の発生分布や、藁屑や処理物(穀粒)の量や抵抗具合に対応するように、刃縁形状部(イ)や長さの異なる前・後切刃17a,17bを設けることで、この脱穀室16内で発生する異常音の発生を抑制できる。又、扱歯16cの偏摩耗や、倒れ(変形)を防止できる。脱穀機5の消費馬力の低減を行うことができる。
【0022】
前記前切刃17aの刃縁形状部(イ)は、図5で示すように、R状の凹形状に形成して設けると共に、後切刃17bの刃縁形状部(イ)は、図6で示すように、R状の凸形状に形成して設けている。
【0023】
前記脱穀室16の移送始端部位は、扱歯16cと前切刃17aがラップする近傍部では、積極的に脱穀処理物を、この前切刃17a内へ押し込んで切断するようにして、処理効率を高め、藁屑やカギヌ等の分離を促進するようにして、移送終端部位は、脱穀処理物を刃先側に逃げるようにして、処理しているので、脱穀排出口16e近くで、脱穀処理物の充満度合が高い部位においても、後切刃16bでは、負荷(切断負荷)の高すぎ防止で、扱歯16cの偏摩耗や倒れ、脱穀処理物の持廻りによるゴトゴト音(異常音)の発生がおこりにくくなる。脱穀消費動力も軽減できる。
【0024】
前機脱穀室16の左側(フィードチェン6a側)には、図1、図3、及び図4で示すように、前・後切刃17a,17bの締付けの下側には、廻り止め板17dと、ガイド体17eとを、これら前・後切刃17a,17bの締付け用のボルト17cとナットとにより、装着している。又、このガイド体17eには、扱歯16cが通過箇所には、切欠部17fを設けている。更に、前・後切刃17a,17bを設けていない移送終端部側は、回転する扱歯16cが当接しないように、上下方向の長さを短くして設けている。前・後切刃17a,17bを有する箇所のガイド体17eの下端部には、これら前・後切刃17a,17bの下端部より、所定寸法(L1)長く形成して設けている。図5、及び図6で示すように、後切刃17bの刃縁形状部(イ)の全長(L3)は、前切刃17aの刃縁形状部(イ)の全長(L2)より、所定寸法長く形成して設けている。
【0025】
前記ガイド体17eを設けたことにより、脱穀済みで機外へ排出する排藁の株元側へささる穀粒を防止する。又、後切刃17bの刃縁形状部(イ)を前切刃17aの刃縁形状部(イ)より、長くして設けたことにより、脱穀室16の移送終端部では、切断抵抗は低いながらも、短く切断することにより、脱穀室網16dからの漏過効率を向上させることができる。又、脱穀排出口16e部で脱穀処理物の持廻りが低減する。脱穀室16内で異音発生防止ができる。三番口飛散粒の減少を図ることができる。
【0026】
前記脱穀室16内での未脱穀処理物は、図1、及び図2で示すように、この脱穀室16の移送終端部へ設けた、脱穀排出口16eからこの脱穀室16の右側の下部へ設けた排塵処理室30内へ供給されて、再脱穀処理される。この排塵処理室30の前側には、二番処理物が還元供給されて、再脱穀処理される二番処理室31を設けている。
【0027】
前記排塵処理室30内には、排塵処理胴30aを排塵軸30bで回転自在に軸支内装している。この排塵処理胴30aの外周部には、移送始端部側より、脱穀室16の脱穀排出口16dから供給される未脱穀処理物を、再脱穀処理する移送螺旋プレート30cと、多数の排塵処理爪30dと、移送終端部へ複数個の排塵排出爪30eとを設けている。
【0028】
又、前記排塵処理胴30の排塵処理爪30d等の回転外周部の下側には、排塵用漏下具30fを張設し、再脱穀処理物を漏下させて、下側の揺動選別装置19a上へ供給させている。又、排塵処理室30内で再脱穀処理された藁屑等は、この排塵処理室30の移送終端部へ設けた排出口30hから排出されて、吸引ファン25等で吸引されて機外へ排出される。
【0029】
前記排塵処理室30の前側へ設けた二番処理室31内には、二番処理胴31aを排塵軸30bで回転自在に軸支内装している。この二番処理胴31aの外周部には、移送始端部側より、二番還元揚送装置27の二番還元螺旋27aから、供給される二番処理物を、再脱穀処理する多数の二番処理爪31bと、移送終端部へ複数個の二番排出爪31cとを設けている。
【0030】
又、前記二番処理胴31aの二番処理爪31b等の回転外周の下側には、二番室網31dを張設した搬送ガイド板33を設け、この搬送ガイド板33部から、再脱穀処理物を漏下させて、下側の揺動選別装置19a上へ供給させている。又、二番処理室31内で再脱穀処理された藁屑と、漏下しなかった少量の穀粒とは、下側の揺動選別装置19a上へ二番処理室31の移送終端部へ設けた二番排出口31eから排出される。
【0031】
前記脱穀室16の下側には、図1、及び図2で示すように、選別室17を設け、この選別室17内には、脱穀室16の下側部を形成する脱穀室網16dから漏下する脱穀処理物と、排塵処理室30と、二番処理室31との排塵漏下具30fと、二番室網31dと、二番排出口31eとより、漏下、及び排出される再脱穀処理物と、漏下しなかった少量の穀粒等との供給を受けて、揺動移送しながら揺動選別する揺動選別装置19aと、揺動カム装置19bと、ローラ装置19c等とよりなる揺動移送選別装置18を吊り下げ状態に設けている。
【0032】
前記揺動選別装置19aは、図2〜図4で示すように、枠体20a内には、脱穀室16の脱穀室網16dから漏下する脱穀処理物と、排塵処理室30の排塵漏下具30fと、二番処理室31の二番室網31dと、二番排出口31e等とから再脱穀処理物、及び漏下しなかった少量の穀粒等との供給を受けて、揺動移送中に揺動選別する移送始端部側より、順次各種部品を装着して設けている。
【0033】
前記揺動選別装置19aの枠体20a内には、移送始端部側から順に、複数の山形状を形成した移送棚20bと、前後方向に所定間隔で、上下方向に所定長さで、左右方向に複数の略L字形状で、上端部を山形状に形成した前チャフシーブ20cと、左右方向に所定間隔で、前後方向に所定長さで、上下方向の上部を鋸刃形状に形成した複数の前ストローラック21aと、前後方向に所定間隔で、上下方向に所定長さで、左右方向に複数のL字形状で、上端部を山形状に形成した後チャフシーブ20dと、左右方向に所定間隔で、前後方向に所定長さで、上下方向の上部を鋸刃形状に形成した複数の後ストローラック21bと、各後チャフシーブ20dの下方部には、網材等よりなる選別網21cと、各後ストローラック21bの下方部には、後方上部から前方下部へ傾斜する流下棚21d等を設けている。各前ストローラック21aは、図2で示すように、前後方向に短いものと、長いものとの両者を設けている。
【0034】
又、前記揺動選別装置19aの枠体20aの左右両外側面の前部には、揺動カム装置19bを装着して設けると共に、後部には、ローラ装置19cを設けて、揺動選別装置19aを揺動回動させている。
【0035】
前記揺動選別装置19aの下側前部には、図2で示す如く送風機24を設け、この送風機24から発生する起風を送風して、揺動選別装置19aの選別網21cから落下する落下物を穀粒と、藁屑、塵埃、及び稈切等とに風選別する。
【0036】
前記揺動選別装置19aで揺動選別され、送風機24で風選別された穀粒は、一番選別室22へ設けた、一番選別棚22a上を流下中に再度選別されて、一番選別室22へ設けた、一番移送受樋22b内へ供給され、この一番移送受樋22bへ軸支内装した、一番移送螺旋22cにより、いずれか一方側の、例えば、右外側へ設けた揚穀装置26内へ移送供給され、この揚穀装置26へ回転自在に軸支内装した一番揚穀螺旋26aで引継ぎされて、上方へ揚送され、穀粒貯留タンク7内へ供給されて、一時貯留される構成である。
【0037】
前記一番選別室22の後側には、図2で示す如く揺動選別装置19aの移送終端部の流下棚21d等より、落下した二番物を受ける二番選別室23へ設けた、二番選別棚23a上を流下中に再度選別されて、二番選別室23へ設けた、二番移送受樋23b内へ供給され、この二番移送受樋23bへ軸支内装した、二番移送螺旋23cにより、いずれか一方側、例えば、右外側へ設けた二番還元揚送装置27内へ移送供給され、この二番還元揚送装置27内へ回転自在に軸支内装した二番還元螺旋27aで、二番物を再脱穀処理する二番処理室31内へ揚送還元する構成である。
【0038】
前記揺動選別装置19aの移送終端部の上側には、図2で示すように、吸引ファン25を設けた構成である。この吸引ファン25により、揺動選別装置19a上を揺動移送中に、選別された藁屑、塵埃、及び稈切等を吸引して、機外へ排出する構成である。
【0039】
前記穀粒貯留タンク7内に貯留した穀粒を機外へ排出するこの穀粒貯留タンク7の後側には、図7で示すように、縦移送螺旋28aを内装した縦移送筒28を略垂直姿勢で旋回自在に装着して設け、この縦移送筒28の上端部には、その全長がコンバイン1の前後長に亘る機外へ穀粒を排出する排出螺旋29aを伸縮自在に内装した排出オーガ29を伸縮自在、上下回動自在、及び左右旋回自在に前後方向に配設した構成である。
【0040】
前記二番処理室31へ内装軸支した二番処理胴31aは、図8〜図12で示すように、この二番処理胴31aの外周部へ装着する複数個の二番処理爪31cは、図9で示すように、搬送リード角度(θ2)で装着すると共に、二番処理爪31cは、図8で示すように、外径側部を移送始端部側へ向けて倒れるように、後退角度(θ1)で装着している。又、この二番処理爪31cは、図8、及び図9で示すように、所定の後退量(h1)で装着している。これら搬送リード角度(θ2)を後退角度(θ1)より大きくして設ける。搬送リード角度(θ2)>後退角度(θ1)である。
【0041】
前記二番処理室31内で二番処理胴31aの上側には、図9〜図12で示すように、仕切板32を下端部から所定上部位置で移送始端部へ向けて、所定角度で折曲して設けている。又、二番処理胴31aの二番処理爪31bの回転外周の下側には、板状の搬送ガイド板33を半円形状に形成している。又は、この搬送ガイド板33を枠体に形成して、上側面に二番室網31dを張設してもよい。
【0042】
これにより、再脱穀処理物をより、二番処理胴31aの外方向へ跳ね出すことができ、処理物を下方の搬送ガイド板33へ押し付けつつ、移送するようにすることで、こなれが良好になり、枝梗の単粒化が促進できる。
【0043】
前記二番処理胴31aの二番処理爪31bの移送上手方向への後退角度(θ1)より、二番処理胴31aの移送下手方向の搬送リード角度(θ2)を、図8、及び図9で示すように、大きくしている。
【0044】
これにより、前記仕切板32の追加により、搬送しながら乱反射による処理物の打撃回数を拡大することができるので、二番処理爪31bの後退角度(θ1)の追加による未脱穀処理物の二番処理胴31aの外方の乱反射の促進と合わせて、枝梗やカギヌの分離を促進することができる。又、この二番処理胴31aの搬送ガイド板33上でも未脱穀処理物がより、このガイド板33上に押し付けられることにより、同じように処理が促進される。
【0045】
前記二番処理室31内へ設けた複数個の仕切板32の先端部を、図13〜図16で示すように、回動連結板32aへ装着し、この回動連結板32aの前後操作により、各仕切板32の取付部を回動中心として、未脱穀処理物へ抵抗を負荷する、移送始端部側へ傾斜回動移動、又は送り側の移送終端部側へ傾斜回動移動する。
【0046】
これにより、前記二番処理31内での脱穀処理物の移送速度を変えることにより、枝梗やカギヌの分離性能の向上を図ることができる。又、作がら、及び作業速度による対応を容易に行うことができる。
【0047】
前記仕切板32の回動支点部32bの回動支点(ロ)(縦方向の軸心)は、図17〜図19で示すように、脱穀機5の右側板5aの近傍部へ位置させて設け、仕切板32の大半部分が前後へこの仕切板32の回動支点部32bの回動支点(ロ)を回動中心として回動する。
【0048】
これにより、前記仕切板32の大半部分が回動することにより、調整効果を大きくすることができる。回動支点(ロ)が側板5aへ近接させて設けていることにより、強度アップを図ることができる。
【0049】
前記仕切板32の回動移動は、図18で示すように、二番処理胴31内の未脱穀処理物(還元物)を移送阻止する方向への回動移動角度範囲(θ4)より、移送を促進する方向への回動移動角度範囲(θ3)を大きくしている。
【0050】
これにより、前記二番処理室31の未脱穀処理物を速やかに行うことができる。
前記揺動選別装置19aの各後チャフシーブ21c間の隙間(開度)と、二番処理室31へ設けた仕切板32の角度調節とを連動させている。
【0051】
前記二番処理室31の各仕切板32へ設けた回動連結板32aには、図1、図18、図19、及び図20で示すように、アーム軸34aで回動自在に軸支したへ字形状のアーム34の一方側の端部を装着している。又、右側板5aへ設けた取付板35に支持ピン35aを設け、この支持ピン35aと、アーム34とは、スプリング35bを設けて接続している。
【0052】
脱穀機5には、図18、及び図19で示すように、取付ピン36aへ回動レバー36を回動自在に軸支して設け、この回動レバー36は、調節板36bへ上下方向に設けた調節用溝36cの所定位置へ挿入する構成であり、調節用溝36cの位置により、処理物を移送側、及び抵抗を掛ける側へ調節できる。又、回動レバー36と、アーム34の他方側端部とは、仕切板用ワイヤ36dを設けて接続している。更に、回動レバー36と、揺動選別装置19aの各後チャフシーブ21cの間の隙間を調節用の調節用アーム21eとは、シーブ用ワイヤ19dを設けて接続している。回動レバー36の回動操作位置により、各仕切板32の回動位置操作と、各後チャフシーブ21c間の隙間(開度)調節とを、同時に行うことができる。
【0053】
前記回動レバー36の回動操作位置と、仕切板32の回動位置、及び各後チャフシーブ21c間の隙間(開度)は、図20で示すように調節できる。
前記二番処理室31の始端部側の仕切板32の近傍部には、図17、及び図19で示すように、詰りセンサ37を設け、この詰りセンサ37が処理物の詰りを検出すると、センサモータ38が始動制御され、このセンサモータ38へ設けたモータギャー38aが回転駆動され、このモータギャー38aと噛合する回動ギャー39aが回転駆動され、この回転ギャー39aを軸支した支持軸39bが回転され、この支持軸39aへ設けたアーム39cと、このアーム39cへ設けた各支持ピン39d,39dへ装着した仕切板用ワイヤ36dと、シーブ用ワイヤ19dとが引作動され、各仕切板32を処理物の移送が促進される方向へ回動移動されると共に、各後チャフシーブ21c間の隙間が最大になるように、この各チャフシーブ21cが回動移動される。
【0054】
これにより、前記回動レバー36を設けて、この回動レバー36の操作により、各仕切板32が移動促進側、又は抵抗を掛ける側へ作動操作されると共に、揺動選別装置19aの各後チャフシーブ20d間の隙間を調節することにより、二番処理室31内を移送される処理物の処理と、揺動選別装置19a上を移送される脱穀処理物の処理とのバランスが良好になり、脱穀性能が向上する。又、二番処理室31内が詰り状態になると、自動で各仕切板32が処理物の移送を促進する側へ制御され、処理物の移送が向上することにより、詰り状態で自動で解消することができる。
【0055】
前記揺動選別装置19aの後チャフシーブ20dの上方部には、図2、及び図19で示すように、この後チャフシーブ20d上を移送される脱穀処理物の層厚みを検出する層厚センサ40を設けている。
【0056】
前記層厚センサ40が所定層厚以上の検出により、図19で示すセンサモータ38が回転駆動制御され、回動ギャー39aのアーム39cにより、シーブ用ワイヤ19dと、仕切用ワイヤ36dとの両者が引き作動され、揺動選別装置19aの後チャフシーブ20d間の隙間が広くなるように開制御されると共に、二番処理室31内の仕切板32が未脱穀処理物の移送が促進する側へ開制御される。
【0057】
これにより、前記二番処理室31内の未脱穀処理物と、揺動選別装置19a上の脱穀処理物とのバランスが良好になる。又、三番口の穀粒ロスと、選別性能の向上を図ることができる。
【0058】
図18、及び図19で示すように、前記二番処理室31の下側へ設けた搬送ガイド板33の移送終端部と、二番処理胴31aの二番排出爪31cの移送始端部との間には所定の隙間(L4)を設けている。又、回動レバー36へ設けた仕切用ワイヤ36dをアーム34へ装着した近傍部には、この仕切用ワイヤ36dの全長関係を調節するナット等よりなる調節具36eを設けている。
【0059】
これにより、二番処理室31の各仕切板32で未脱穀処理物へ移送抵抗を負荷したときであっても、損傷粒の発生防止、及び詰り防止ができる。又、仕切用ワイヤ36dの全長関係を調節できることにより、各仕切板32の移送角度の調節ができることにより、枝梗、カギヌ、損傷粒の低減を図ることができる。又、三番口の飛散粒の減少と、選別性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】脱穀機の拡大平断面図
【図2】脱穀機の拡大側断面図
【図3】図2のA−A拡大正面図
【図4】図2のB−B拡大正面図
【図5】前切刃の拡大側面、及び平面図
【図6】後切刃の拡大側面、及び平面図
【図7】コンバインの左側全体側面図
【図8】二番処理胴と排塵処理胴との拡大側面図
【図9】二番処理胴と排塵処理胴との拡大展開図
【図10】脱穀機の拡大正断面図
【図11】脱穀機の拡大平断面図
【図12】二番処理胴部の拡大側断面図
【図13】二番処理胴と排塵処理胴との拡大展開図
【図14】脱穀機の拡大正断面図
【図15】脱穀機の拡大平断面図
【図16】脱穀機の二番処理胴部の拡大側断面図
【図17】脱穀機の二番処理胴部の拡大正断面図
【図18】脱穀機の二番処理胴部の拡大平断面図
【図19】脱穀機の二番処理胴部の拡大側断面図
【図20】仕切板角度と、後チャフシーブ間の隙間との関係図
【符号の説明】
【0061】
(6a) フィードチェン
(6b) 挟持杆
(16) 脱穀室
(16b)扱胴
(16c)扱歯
(16d)脱穀室網
(17a)前切刃
(17b)後切刃
(イ) 刃縁形状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を挟持移送するフィードチェン(6a)と、挟持杆(6b)とを設け、穀稈を脱穀する各種扱歯(16c)を植設した扱胴(16b)を内装軸架した脱穀室(16)と、該脱穀室(16)の下側には、脱穀処理物が漏下する脱穀室網(16d)等を設けた脱穀機において、脱穀処理物を切断する前記脱穀室(16)内の移送始端部側へ設ける前切刃(17a)と、移送終端部側へ設ける後切刃(17b)とは、脱穀処理物を切断する刃縁形状部(イ)を異にして設けたことを特徴とする脱穀機。
【請求項2】
前記前切刃(17a)の刃縁形状部(イ)は、R状の凹形状に形成すると共に、後切刃(17b)の刃縁形状部(イ)は、R状の凸形状に形成して設けたことを特徴とする請求項1に記載の脱穀機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−143536(P2007−143536A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346154(P2005−346154)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】