説明

脱穀機

【課題】 脱穀済み茎稈の量が少なくても円滑な排ワラの受け渡しを簡単な構造で行えるようにする。
【解決手段】 フィードチェーン6から排ワラ搬送装置9への排ワラ受け渡し箇所に、排ワラ搬送装置9の搬送ガイド8の始端側をフィードチェーン6側に延長して、フィードチェーン6側から送り込まれた茎稈を排ワラ用無端回動チェーン7が存在する上方側へ案内する受け渡しガイド部8cが設けられ、フィードチェーン6から排ワラ搬送装置9への排ワラ受け渡し箇所に、搬送ガイド8とは別部材で構成された補助ガイド23が、搬送ガイド8よりも排ワラ挟持方向への付勢力を小さく設定して、かつ自由状態で前記受け渡しガイド部8cよりも排ワラ用無端回動チェーン7に近接するように配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀フィードチェーンから受け渡された脱穀済み茎稈を後方の排ワラ処理装置に向けて挟持搬送する排ワラ搬送装置を備えた脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
脱穀機の一例である自脱型コンバインでは、排ワラ搬送のための構造として、脱穀装置から搬出されてきた横倒れ姿勢の排ワラを、チェーンの下側に搬送径路を形成した穂先係止搬送機構と株元挟持搬送機構とを並列配備してなる排ワラ搬送装置に受け渡して、排ワラを後方および排ワラ穂先側に向けて斜め搬送するよう構成したものが多用されている(例えば、特許文献1参照)。
この従来の脱穀機では、フィードチェーンに対して排ワラ搬送装置が斜めに交差する方向に向けて配設されている。 そして、この排ワラ搬装置は、フィードチェーン側から受け渡される茎稈のボリュームが多いときにも、排ワラ搬送装置の始端側で茎稈が滞留して詰まり発生の原因となるようなことがないように、フィードチェーンの脱穀用無端回動チェーンの搬送面よりも上方側に設けられる排ワラ搬送経路の経路幅を充分広くしている。具体的には、排ワラ用無端回動チェーンの位置を脱穀用無端回動チェーンに対して上下方向で離れた充分高い位置に設定して、排ワラ用無端回動チェーンの下方側の排ワラ搬送経路の上下幅を充分大きく確保できるようにしている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−238537号公報(段落番号〔0014〕、及び、図3,図5,図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の従来技術では、排ワラ用無端回動チェーンの位置を脱穀用無端回動チェーンに対して上下方向で離れた充分高い位置に設定して、排ワラ用無端回動チェーンの下方側の排ワラ搬送経路の上下幅を充分大きく確保できるようにしているので、フィードチェーンの脱穀用無端回動チェーンの搬送面と、排ワラ搬送装置の排ワラ用無端回動チェーンの挟持搬送面との間には、排ワラ搬送経路の上下幅に相当する程度の段差がある。
このため、フィードチェーン側から排ワラ搬送装置側へ引き渡される茎稈の量が通常の量から大きく変動しない範囲であれば、支障なく受け渡しが行えるものであるが、搬送される茎稈の量が極端に少なくなると、フィードチェーンによる搬送が終了してその搬送力が失われた後でも後続の排ワラ搬送装置に挟持される位置まで茎稈が到達できず、排ワラ搬送姿勢が大きく乱れてしまう等の不具合があった
【0005】
本発明の目的は、脱穀済み茎稈の量が少なくなっても円滑な排ワラの受け渡しを行えるようにした脱穀機を簡単な構造で提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために講じた本発明の技術手段は、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
【0007】
〔解決手段1〕
本発明の脱穀機は、請求項1に記載のように、脱穀部のフィードチェーンから脱穀済み茎稈を引き継いで後方搬送する排ワラ搬送装置を備えた脱穀機において、
前記フィードチェーンが、脱穀用無端回動チェーンの上側に挟扼レールを対向配置したアンダーチェーン型式で構成されているとともに、前記排ワラ搬装置は、排ワラ用無端回動チェーンの下側に搬送ガイドを対向させたアッパーチェーン型式の挟持搬送装置を備えて構成され、
前記フィードチェーンから排ワラ搬送装置への排ワラ受け渡し箇所に、前記排ワラ搬送装置の搬送ガイドの始端側をフィードチェーン側に延長して、フィードチェーン側から送り込まれた茎稈を排ワラ用無端回動チェーンが存在する上方側へ案内する受け渡しガイド部が設けられているとともに、
前記フィードチェーンから排ワラ搬送装置への排ワラ受け渡し箇所に、搬送ガイドとは別部材で構成された補助ガイドが、前記搬送ガイドよりも排ワラ挟持方向への付勢力を小さく設定して、前記受け渡しガイド部よりも排ワラ用無端回動チェーンに近接するように配設されている。
【0008】
〔作用効果〕
上記構成によると、脱穀済み茎稈の量が、通常の量、もしくはそれから大きく変動しない量であれば、フィードチェーン側から送り込まれる茎稈の量が適度に排ワラ搬送装置の排ワラ搬送経路に送り込まれて挟持搬送される。このとき、排ワラガイド杆は挟持した搬送排ワラのボリュームによって押し下げられ、脱穀用無端回動チェーンの搬送面との段差も少なくなっており、円滑な排ワラ搬送が行われることとなる。
脱穀済み茎稈の量が極端に少なくなると、排ワラガイド杆が上方の排ワラ用無端回動チェーンの搬送面に近く位置し、フィードチェーン側の脱穀用無端回動チェーンの搬送面との段差が大きくなるので、このまでは円滑な受け渡しが行い難くなるのであるが、本発明では、その少なくなった脱穀済み茎稈を補助ガイドの弾性付勢力で持ち上げ方向に案内して、排ワラガイド杆と排ワラ用無端回動チェーンの搬送面との間に形成される排ワラ搬送経路に円滑に脱穀済み茎稈を送り込むことが可能となる利点がある。
【0009】
〔解決手段2〕
本発明の脱穀機は、請求項2に記載のように、排ワラ搬送装置は、株元側の排ワラ用無端回動チェーンが駆動され、穂先側では駆動搬送手段が省略されたものによって構成されている。
【0010】
〔作用効果〕
上記構成によると、茎稈の穂先側には駆動搬送手段を装備しないので、排ワラ搬送装置全体の構造を簡素化することができる。
そして、このように穂先側に駆動搬送手段を装備していない場合には、穂先側でも搬送力が存在しないので、補助ガイドでの案内作用中に穂先側が搬送されて茎稈が抜け落ちるなどの不具合を回避する点でも有効である
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
〔脱穀機の全体構成〕
図1に、本発明に係る脱穀機としてのコンバインの左側面が示されている。
このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の前部に横軸心P周りに昇降自在に構成した刈取前処理装置3を装備し、刈取前処理装置3の右横側部に搭乗運転部を配備し、走行機体2の左側部に脱穀装置4を搭載し、この脱穀装置4の後部に排ワラ処理部5を設けてコンバインを構成してある。
前記脱穀装置4では、機体横側部に備えたフィードチェーン6で刈り取り穀稈を挟持搬送しながら、図示しない扱胴で脱穀処理するように構成してあり、前記排ワラ処理部5では、フィードチェーン6から受け渡された脱穀済み茎稈を後方搬送して細断放出もしくは長藁状態のままで放出するように構成されている。
【0012】
〔排ワラ処理部〕
図2〜図4に示すように、排ワラ処理部5は、フィードチェーン6からの脱穀済み茎稈を受け渡される排ワラ搬送装置9と、排ワラ搬送装置9で搬送される排ワラを切断処理する排ワラ細断装置10と、排ワラ搬送装置の終端から放出された排ワラを一時的に保持して、所定量に達するごとに排ワラを長藁のままで間歇的に放出するドロッパー装置11とを備えている。
前記排ワラ細断装置10への排ワラ供給とドロッパー装置11への排ワラ供給との切換は、後述する排ワラ搬送装置9における排ワラ搬送距離の変更によって行われる。
図中12は、後ろ側の横軸心O周りに上下揺動開放するカバーであり、排ワラ搬送装置9の搬送ガイド8が短縮したときに揺動開放して排ワラを排ワラ細断装置10側に導入し、伸長したときに閉じて排ワラをドロッパー装置11側に案内するようになっている。
【0013】
〔排ワラ搬送装置〕
前記排ワラ搬送装置9は、排ワラ用無端回動チェーン7と、その排ワラ用無端回動チェーン7の下側に搬送ガイド8を対向させたアッパーチェーン型式の挟持搬送装置によって構成されている。
前記搬送ガイド8は、搬送始端側を形成する丸パイプ材の前側円筒レール8aと、その前側円筒レール8aに内嵌させて出退自在に構成した搬送終端側を形成する丸棒材の後側レール8bとで構成されており、前記円筒レール8aの両端部が機体側の固定部14,15に対して、案内ロッド16とスプリング17とを介して排ワラ用無端回動チェーン7側へ押圧するように弾性付勢されている。
前記後側レール8bを前側円筒レール8aに対してその長手方向で摺動自在に構成し、前側円筒レール8aの後端部からの前記後側レール8bの突出長さを変更調整自在に、後側レール8bを前側円筒レール8aに対して位置保持をする位置保持手段13を設けて構成して、前側円筒レール8aの後端側からの後側レール8bの突出長さを変更調整することで、排ワラ搬送の終端位置を変更して、前述のように、排ワラを前部の排ワラ細断装置10に供給する状態と、後部の排ワラドロッパ11に供給する状態とに、排ワラ搬送距離を切り換え可能に構成してある。
図2に示す符号19は、排ワラ用無端回動チェーン7と搬送ガイド8とで株元側を搬送される排ワラの穂先側を案内する棒状の穂先ガイドであり、この実施形態では、穂先ガイド19を含めて排ワラ搬送装置9を構成しているが、排ワラ処理部5の内部カバーなどで、穂先側を案内できるときは省略しても差し支えない。
【0014】
前記位置保持装置13は、図3及び図4に示すように、後側レール8bの長手方向の2箇所に係合凹部18A,18Bを形成するとともに、前側円筒レール8aの後端部に、前記係合凹部18に係合する先端が球状の係止体20を、付勢手段としての内装されているスプリングを介して前記係合凹部18側に突出付勢される状態に設け、後側レール8bの押引き操作に伴って、係止体20が係合状態の係合凹部18A,18Bからスプリングに抗しながら係合を解除して、別の係合凹部18B,18Aに前記付勢力により係合するよう構成してある。
【0015】
〔受け渡し箇所の構造〕
脱穀装置4のフィードチェーン6は、脱穀用無端回動チェーン21と、その脱穀用無端回動チェーン21の上側に挟扼レール22を対向配置したアンダーチェーン型式で構成されている。
そして、図3及び4に示すように、前記フィードチェーン6から排ワラ搬送装置9への排ワラ受け渡し箇所には、前記排ワラ搬送装置9の搬送ガイド8の始端側をフィードチェーン6側に延長することにより、フィードチェーン6側から送り出された茎稈を排ワラ用無端回動チェーン7が存在する上方へ向けて案内する受け渡しガイド部8cが設けられている。
この受け渡しガイド部8cは、図4に示すように、通常量の排ワラが供給されている状態と、図3に示すように、排ワラが供給されていないか、極端に供給量が少ない状態とに、前記排ワラガイド8を弾性付勢するスプリング17の付勢力で、排ワラ用無端回動チェーン7の搬送面7aとの間隔が変更されるように構成されている。その結果、前記搬送ガイド8と排ワラ用無端回動チェーン7との間に、隔幅の変化する排ワラ搬送経路Rが形成されるのであり、前述のように通常量の排ワラが供給されている状態では、図4に示すように搬送ガイド8の搬送案内部分がフィードチェーン6側の脱穀用無端回動チェーン21の搬送面21aとほぼ同レベルとなり、排ワラが供給されていない状態、もしくは排ワラの供給量が極端に少ない場合には、搬送ガイド8の搬送案内部分と脱穀用無端回動チェーン21の搬送面との間に図3に示すように段差hが生じることとなる。
【0016】
そこで本発明では、前記フィードチェーン6側のチェーンガイド25部分に次のように構成された補助ガイド23を付設したものである。
この補助ガイド23は、ピアノ線などのバネ鋼で構成され、前記搬送ガイド8が排ワラ用無端回動チェーン7側へ付勢される際の付勢力よりも弱い付勢力で、排ワラ用無端回動チェーン7の搬送面に近づく側へ弾性付勢されており、その上限位置は、排ワラ用無端回動チェーン7の搬送爪の回転軌跡内に達するように、前記チェーンガイド25に設けたストッパ24で規制されている。
したがって、フィードチェーン6からの脱穀済み茎稈の排出量が少ないと、図3に示すように。この補助ガイドが少ない量の脱穀済み茎稈を滑らかに案内しながら、上方位置の排ワラ搬送経路Rへ送りこむように構成されている。
この補助ガイド23は、搬送排ワラの量が通常量である場合には、図4に示すように、仮想線に示す状態から実線で示す状態に変位して支障なく排ワラの通過を許容し得るように、その弾性復帰力を設定されている。
【0017】
〔他の実施形態〕
上記の実施形態では、補助ガイド23をピアノ線で構成したが、その他の組成の弾性線材や板バネなど、他のバネ鋼材で構成したり、合成樹脂材等で構成してもよく、要は、搬送ガイド8による付勢力よりも弱い付勢力で、少ない量の排ワラを排ワラ搬送経路Rに誘導できる程度の弾性付勢力を有したものであればよい。
また補助ガイド23を複数本の部材で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】コンバイン全体の側面図
【図2】排ワラ処理部内の平面図
【図3】排ワラ処理部内の側面図
【図4】排ワラ処理部内の側面図
【符号の説明】
【0019】
4 脱穀装置
5 排ワラ処理部
6 フィードチェーン
7 排ワラ用無端回動チェーン
8 搬送ガイド
8c 受け渡しガイド部
9 排ワラ搬送装置
21 脱穀用無端回動チェーン
22 挟扼レール
23 補助ガイド
h 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀部のフィードチェーンから脱穀済み茎稈を引き継いで後方搬送する排ワラ搬送装置を備えた脱穀機であって、
前記フィードチェーンが、脱穀用無端回動チェーンの上側に挟扼レールを対向配置したアンダーチェーン型式で構成されているとともに、前記排ワラ搬装置は、排ワラ用無端回動チェーンの下側に搬送ガイドを対向させたアッパーチェーン型式の挟持搬送装置を備えて構成され、
前記フィードチェーンから排ワラ搬送装置への排ワラ受け渡し箇所に、前記排ワラ搬送装置の搬送ガイドの始端側をフィードチェーン側に延長して、フィードチェーン側から送り込まれた茎稈を排ワラ用無端回動チェーンが存在する上方側へ案内する受け渡しガイド部が設けられているとともに、
前記フィードチェーンから排ワラ搬送装置への排ワラ受け渡し箇所に、搬送ガイドとは別部材で構成された補助ガイドが、前記搬送ガイドよりも排ワラ挟持方向への付勢力を小さく設定して、前記受け渡しガイド部よりも排ワラ用無端回動チェーンに近接するように配設されている脱穀機。
【請求項2】
排ワラ搬送装置は、株元側の排ワラ用無端回動チェーンが駆動され、穂先側では駆動搬送手段が省略されたものによって構成されている請求項1記載の脱穀機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−267678(P2007−267678A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97740(P2006−97740)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】