脱穀機
【課題】穀稈を扱胴と前記扱胴の周方向及び扱胴回転軸芯方向に沿った受網との間で扱胴回転軸芯方向に移送して脱穀処理する脱穀機において、脱穀粒の塵埃混入や穀粒損失の抑制も、高処理能率での脱穀処理も可能にできるものでありながら優れた受網強度を得ることができるようにする。
【解決手段】受網11の扱胴前端部10aに対応する前領域Fに、受網11の前領域Fよりも穀稈移送方向下手側に位置する後領域Rにおける処理物落下用の目合い37よりも大きい面積を有した処理物落下用の大目合い36と、後領域Rにおける目合い37よりも小さい面積を有した処理物落下用の小目合い35とを設けてある。
【解決手段】受網11の扱胴前端部10aに対応する前領域Fに、受網11の前領域Fよりも穀稈移送方向下手側に位置する後領域Rにおける処理物落下用の目合い37よりも大きい面積を有した処理物落下用の大目合い36と、後領域Rにおける目合い37よりも小さい面積を有した処理物落下用の小目合い35とを設けてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀稈を扱胴と前記扱胴の周方向及び扱胴回転軸芯方向に沿った受網との間で扱胴回転軸芯方向に移送して脱穀処理する脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した脱穀機として、従来、たとえば特許文献1に示されるものがあった。
特許文献1に記載された脱穀機は、扱胴3と受網20とを備えている。受網20では、前端側での処理物漏下用目合いの大きさが、終端側での目合いの大きさよりも大になっている。(各符号は、公報に記載されたものである。)
【0003】
【特許文献1】特開平11−253044号公報(段落〔0027〕、〔0028〕、図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した脱穀機において、受網の扱胴前端部に対応する前領域に、この前領域よりも穀稈移送方向下手側に位置する後領域に設ける処理物落下用の目合いよりも面積が大きい処理物落下用の目合いを設けると、受網から落下した脱穀粒の塵埃混入や、穀粒が脱穀排ワラにささり込んで脱穀機体外に排出される穀粒損失を抑制しながらの脱穀処理を高処理能率で行うことが可能となる。
つまり、受網の前領域における処理物落下用の目合いの面積を大にすると、前領域で多量に発生する脱穀粒が受網から迅速に落下しやすくなり、前領域に滞留する脱穀処理物の量が多くなって脱穀効率が悪くなる問題や、排ワラにささり込む穀粒が多くなる問題を回避しやすくなる。
受網の後領域における処理物落下用の目合いの面積を小にすると、後領域で多く発生するワラ屑などの塵埃が受網から落下しにくくなり、回収される脱穀粒の塵埃混入を抑制しやすくなる。
【0005】
上記した従来の技術を採用することにより、受網の前領域における目合いの面積が大となり、後領域における目合いの面積が小となった脱穀機を得ると、受網の強度面での問題が発生しがちであった。
つまり、従来の技術を採用すると、受網の前領域では、受網を構成する部材の配列ピッチが前領域の全体にわたって大となり、殊に曲げ強度が低下しがちであった。
【0006】
本発明の目的は、脱穀粒の塵埃混入や穀粒損失の抑制も、高処理能率での脱穀処理も可能にできるものでありながら優れた受網強度を得ることができる脱穀機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本第1発明は、穀稈を扱胴と前記扱胴の周方向及び扱胴回転軸芯方向に沿った受網との間で扱胴回転軸芯方向に移送して脱穀処理する脱穀機において、
前記受網の扱胴前端部に対応する前領域に、前記受網の前記前領域よりも穀稈移送方向下手側に位置する後領域における処理物落下用の目合いよりも大きい面積を有した処理物落下用の大目合いと、前記後領域における目合いよりも小さい面積を有した処理物落下用の小目合いとを設けてある。
【0008】
本第1発明の構成によると、受網の前領域では、後領域の目合いよりも面積が大きい大目合いを設けてあることにより、この大目合いによって脱穀粒を受網から迅速に落下させることができ、しかも後領域の目合いよりも面積が小さい目合いを設けてあることにより、受網を構成する部材の配列ピッチが小になる部分を存在させて優れた受網強度を備えさせることができる。受網の後領域では、前領域の大目合よりも小さい面積の目合いを備えていることにより、塵埃を受網から落下しにくくできる。
【0009】
したがって、受網の前領域での穀粒の穀稈へのささり込みを抑制して穀粒損失を抑制することができ、かつ後領域における塵埃落下を抑制して塵埃混入が少ない高品質の脱穀粒を得ることができるものでありながら、受網の前領域における脱穀粒の迅速な落下によって前領域における多量な脱穀処理物の滞留を防止して、かつ受網の前領域に優れた強度を備えさせて穀稈に脱穀力を効果的に作用させることができて、能率よく脱穀処理することが可能となる。
【0010】
本第2発明では、前記受網の前記小目合いが前記大目合いよりも穀稈移送方向上手側に位置している。
【0011】
本第2発明の構成によると、本第1発明の構成による作用、効果を備えるに加え、次の作用、効果を備える。
【0012】
受網の前領域における前端側では、多い着粒量のために大ボリューム状態となっている穀稈を脱穀処理することから受網に掛かる負荷が大になる。この前端側では、受網の小目合いのために受網構成部材のピッチが小になることから優れた強度を備えさせることができ、大脱穀負荷に抗して脱穀力を効果的に作用させて脱穀処理を能率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る脱穀機の縦断側面図である。この図に示すように、本発明の実施例に係る脱穀機は、脱穀機体1と、この脱穀機体1の前端側における上部の内側に設けた扱室2を有した脱穀部Aと、前記脱穀機体1の内部の前記扱室2の下方に設けた揺動選別装置3を有した選別部Bと、前記脱穀機体1の内部の前記扱室2の後方に駆動回転自在に設けた処理回転体8と、前記脱穀機体1の内側の底部に設けた1番スクリューコンベヤ4および2番スクリューコンベヤ5と、前記脱穀機体1の内部の前記扱室2の後方に設けた排ワラ搬送装置6と、前記脱穀機体1の後部に連結された排ワラ処理装置7とを備えている。
【0014】
この脱穀機は、コンバインの走行機体に搭載されてコンバインの刈取り部からの刈取り穀稈を脱穀処理し、かつ脱穀排ワラを細断処理して放出したり、長ワラ状態で放出したりする。
【0015】
すなわち、前記脱穀部Aは、前記扱室2を備える他、この扱室2に脱穀機体前後向きの扱胴回転軸芯Pまわりに駆動自在に設けた扱胴10と、前記扱室2の下部に扱胴10の周方向と扱胴回転軸芯方向とに沿わせて設けた受網11と、前記脱穀機体1の横外側に駆動自在に設けた脱穀フィードチェーン12とを備えている。
【0016】
つまり、脱穀部Aは、コンバインの刈取り部からの刈取り穀稈の株元側を前記脱穀フィードチェーン12によって挟持して脱穀機体1の扱き口D(図3参照)に沿わせて脱穀機体後方向きに搬送し、これによって刈取り穀稈の穂先側を脱穀機体1の穀稈供給口Cから前記扱室2に供給して扱室2の扱胴10と受網11との間を扱胴回転軸芯方向に移送しながら扱胴10と受網11とによって脱穀処理し、脱穀粒などの脱穀処理物を受網11から落下させ、脱穀排ワラを扱室2の後端部に位置する送塵口13から排出する。
【0017】
前記処理回転体8は、扱室2から排出された脱穀排ワラに掻き出し爪8aを作用させて、脱穀排ワラにささり込んでいる穀粒を掻き出す。
【0018】
前記選別部Bは、前記揺動選別装置3を備える他、この揺動選別装置3の前端部の下方に設けた唐箕16と、前記揺動選別装置3の後端部の上方に設けた排塵ファン17とを備えている。
つまり、選別部Bは、前記受網11から落下した脱穀処理物を前記揺動選別装置3によって受け止め、この揺動選別装置3による揺動選別と、前記唐箕16によって脱穀機体後方向きに供給される選別風とによって穀粒と塵埃とに選別し、穀粒を揺動選別装置3から落下させ、塵埃を選別風と共に排塵ファン17を内装した排塵ケースの排出口18あるいは脱穀機体1の後部に位置する排塵口19から脱穀機体外に排出する。
【0019】
前記1番スクリューコンベヤ4は、揺動選別装置3からの穀粒のうちの1番物を受け入れて脱穀機体横方向に搬送して脱穀機体1の横外側に搬出する。前記2番スクリューコンベヤ5は、揺動選別装置3からの穀粒のうちの2番物を受け入れて脱穀機体横方向に搬送して脱穀機体1の横外側に搬出する。2番スクリューコンベヤ5からの2番物は、スクリューコンベヤ等で成る還元装置20によって脱穀機体1の横壁の上部に位置する還元口に揚送し、この還元口から脱穀機体内に投入して揺動選別装置3の始端側に還元する。
【0020】
前記排ワラ搬送装置6は、前記脱穀フィードチェーン12から脱穀排ワラを受け継ぎ、受け継いだ脱穀排ワラを横倒れ姿勢で穂先側を脱穀機体1の横壁側に寄せながら脱穀機体後方側に搬送し、脱穀機体1の後部に位置する排ワラ搬出口21から脱穀機体1の外部に搬出して前記排ワラ処理装置7のカッタケース25の上に落下させる。
【0021】
前記排ワラ処理装置7は、カッタケース25の上部に設けた排ワラ受け入れ口26と、この排ワラ受け入れ口26を開閉する揺動開閉自在な蓋板27と、前記カッタケース25の内部に駆動自在に設けた一対の回転カッター28,28とを備えている。
【0022】
つまり、前記排ワラ処理装置7は、前記蓋板27が上昇開放操作されると、前記排ワラ搬送装置6から落下した脱穀排ワラを排ワラ受け入れ口26からカッタケース25の内部に落下させ、カッタケース25に入った脱穀排ワラを回動する前記一対の回転カッター28,28によって稈身方向に細断し、細断ワラをカッタケース25の下部から脱穀機体1の後方に落下させる。
【0023】
前記排ワラ処理装置7は、前記蓋板27が下降閉じ操作されると、前記排ワラ搬送装置6から落下した脱穀排ワラを蓋板27の上に落下させて長ワラのままで蓋板27からカッタケース25の後方に落下させる。
【0024】
図2は、前記脱穀部Aの縦断側面図である。図3は、前記脱穀部Aの縦断正面図である。図4は、前記受網11の展開状態での平面図である。これらの図に示すように、前記受網11は、扱室2の前端側と後端側とに設けた支持レール22に扱胴周方向に並べて支持された二つの分割受網11a,11aによって構成されている。前記受網11の扱胴10における前端部10aに対応する前領域Fは、二つの分割受網11a,11aの前部11afによって構成されている。前記受網11の扱胴10における後端側部(前記前端部10aよりも扱胴後端側に位置する部分)に対応する後領域Rは、二つの分割受網11a,11aの後部11arによって構成されている。
【0025】
前記各分割受網11aは、受網前後方向(扱胴回転軸芯方向)に並んだ複数本の横桟30と、受網横方向(扱胴周方向)に並んだ複数本の線材31と、分割受網11aの両横端部に位置した受網前後向きの枠体32とを備えて構成してある。
【0026】
前記各横桟30は、扱胴回転軸芯方向に沿った方向視で扱胴周面に沿った円弧形の帯板によって構成してある。前記各線材31は、丸棒材によって構成してある。各横桟30と各線材31と各枠体32とは、各線材31が各横桟30を貫通し、枠体32が各横桟30の受網横方向での端部に連結した組み合わせ状態になっており、隣り合う一対の線材31,31どうしの間隔は、横桟30によって設定間隔に保持され、隣り合う一対の横桟30,30どうしの間隔は、枠体32によって設定間隔に保持される。
【0027】
各分割受網11aは、線材31の受網横方向での配列ピッチとして、前部11afにおいても後部11arにおいても同一の大きさに設定された配列ピッチPを備えている。二つの分割受網11a,11aにおける線材31の前記配列ピッチPは、同一の大きさの配列ピッチになっている。
【0028】
各分割受網11aは、前記前部11afにおける前記横桟30の配列ピッチとして、前部11afの前端側に位置する横桟30に対応させた設定した第1配列ピッチP1と、前部11afの後端側に位置する横桟30に対応させて設定した第2配列ピッチP2,第3配列ピッチP3,第4配列ピッチP4,第5配列ピッチP5、第6配列ピッチP6とを備えている。一方の分割受網11aにおける前記第1配列ピッチP1、前記第2配列ピッチP2,第3配列ピッチP3,第4配列ピッチP4,第5配列ピッチP5、第6配列ピッチP6と、他方の分割受網11aにおける前記第1配列ピッチP1、前記第2配列ピッチP2,第3配列ピッチP3,第4配列ピッチP4,第5配列ピッチP5、第6配列ピッチP6とは、同一の大きさの配列ピッチになっている。
【0029】
各分割受網11aは、前記後部11arにおける前記横桟30の配列ピッチとして、後部11arに位置する全ての横桟30に対応させて設定した第7配列ピッチP7を備えている。一方の分割受網11aにおける前記第7配列ピッチP7と、他方の分割受網11aにおける前記第7配列ピッチP7とは、同一の大きさの配列ピッチになっている。
【0030】
前記第1〜第7配列ピッチP1,P2,P3,P4,P5,P6,P7の大きさの関係は、「第1配列ピッチP1<第7配列ピッチP7<第6配列ピッチP6<第5配列ピッチP5<第4配列ピッチP4<第2配列ピッチP2<第3配列ピッチP3」という関係になっている。
【0031】
したがって、受網11は、格子型受網になっており、前記前領域Fおよび前記後領域Rに横桟30と線材31とによって形成された処理物落下用の目合い35,36,37を備えている。
【0032】
前記前領域Fに位置する処理物落下用の目合い35,36のうち、穀稈移送方向下手側に穀稈移送方向に五列に並んで位置する目合い36は、前記後領域Rに位置する目合い37よりも大きい面積を有した大目合い36になっている。前記前領域Fに位置する処理物落下用の目合い35,36のうち、前記大目合い36よりも穀稈移送方向上手側に穀稈移送方向に二列に並んで位置する目合い35は、前記後領域Rに位置する目合い37よりも小さい面積を有した小目合い35になっている。
【0033】
つまり、前記受網11は、前記前領域Fの前記小目合い35による横桟30の小配列ピッチによって優れた受網強度を前領域Fに有し、この前領域Fにおいて着粒量が多い状態にある穀稈を脱穀処理して脱穀粒を大目合い36によって受網11から迅速に揺動選別装置3に落下させ、後領域Rにおいて着粒量が少なくなった状態の穀稈を脱穀処理して前領域Fの大目合い36よりも面積が小さい目合い37によって塵埃を受網11から落下しにくくしながら脱穀粒を受網11から揺動選別装置3に落下させる。
【0034】
図5は、前記唐箕16に駆動力を伝達する唐箕伝動構造の正面図である。図6は、前記唐箕伝動構造の側面図である。これらの図に示すように、前記唐箕伝動構造は、脱穀機体1の下端部の脱穀機体前方側に配置して走行機体の機体フレームに支持された伝動ケース40を備え、この伝動ケース40の脱穀機体横方向での一端側に設けた入力プーリ41によってエンジン(図示せず)から伝動ケース40に入力された駆動力を、前記伝動ケース40の脱穀機体横方向での他端側に設けた出力プーリ42から伝動ベルト43を介して唐箕駆動プーリ44に伝達する。唐箕駆動プーリ44は、唐箕16の回転支軸16aに一体回転自在に支持されている。
【0035】
図7は、唐箕駆動プーリ44の断面図である。この図に示すように、前記唐箕駆動プーリ44は、唐箕16の回転支軸16aに一体回転自在に固定された固定側半割りプーリ44aと、前記回転支軸16aに摺動自在に支持された可動側半割りプーリ44bとを備えて構成してあり、唐箕16を変速駆動する。
【0036】
すなわち、前記可動側半割プーリ44bに、これのボス部にベアリングを介して相対回転自在に取り付けた変速カム45を備えてある。脱穀機体1の唐箕駆動プーリ44が位置する側とは反対側の横側壁の上部に設けた変速レバー51を備えた変速操作装置50(図5,8参照)によって前記変速カム45を回転支軸16aの軸芯まわりに回転操作する。すると、変速カム45は、脱穀機体1に取り付けプレート46を介して固定された固定カム47によるカム作用によって回転支軸16aの軸芯方向に移動して可動側半割プーリ44bを固定側半割プーリ44aが備える連動ピン48に沿わせて固定側半割プーリ44aに対して接近側あるいは離間側に移動操作し、唐箕駆動プーリ44の前記伝動ベルト43が掛かる半径(ベルト巻回径)が変化して唐箕駆動プーリ44の回転速度が変化する。
【0037】
前記伝動ベルト43は、唐箕駆動プーリ44のベルト巻回径が変化しても、テンションアーム60による張り操作によって伝動用の緊張状態に維持される。図6,7に示すように、前記テンションアーム60は、前記取り付けプレート46に支軸61を介して揺動自在に支持されており、テンションアーム60に連結されたテンションスプリング62によって揺動付勢されている。前記テンションアーム60は、これの遊端部に取り付けられた外れ止め体63を備えている。この外れ止め体63は、前記伝動ベルト43がテンションアーム60に設けたテンション輪体64から外れることを防止する。
【0038】
図9は、前記外れ止め体63の側面図である。図10は、前記外れ止め体63の平面図である。図11は、前記外れ止め体63の斜視図である。これらの図に示すように、外れ止め体63は、折り曲げ棒材によって構成してあり、止着用屈曲部63aと、この止着用屈曲部63aから延出した回り止めアーム63bと、前記止着用屈曲部63aから延出するとともに途中で折れ曲がった支持アーム63cと、この支持アーム63cの延出端部に連結したベルト係止部63dとを備えている。
【0039】
図12(a)は、外れ止め体63の装着状態での側面図である。この図に示すように、外れ止め体63は、回り止めアーム63bがテンションアーム60の長孔65に挿入され、止着用屈曲部63aがテンションアーム60のボルト孔66に装着された連結ボルト67によってテンションアーム60に締め付けられることによって取り付け状態になる。外れ止め体63は、取り付け状態において、回り止めアーム63bのテンションアーム60との当接によって外れ止め体全体の連結ボルト67のまわりでのテンションアーム60に対する回転を阻止してベルト係止部63dをテンション輪体64の近くに保持し、ベルト係止部63dによって伝動ベルト43をテンション輪体64から外れないように係止する。
【0040】
図12(b)は、外れ止め体63の脱着要領の側面図である。この図に示すように、外れ止め態3を、テンションアーム60の前記長孔65に挿入されている回り止めアーム63bを回転軸芯にして回転操作すると、支持アーム63cがテンション輪体64とテンションアーム60との間に対して出入りし、回り止めアーム63bを長孔65でスライドさせると、回り止めアーム63bがテンション輪体64とテンションアーム60との間に対して出入りし、外れ止め体63をテンションアーム60に対して脱着できる。
【0041】
図5,6,7,8に示すように、前記変速操作装置50は、前記変速レバー51を備える他、変速レバー51に上端側が連結された脱穀機体上下向きの押し引きロッド52と、この押し引きロッド52の下端側に連結された揺動リンク53と、この揺動リンク53に一端側が一体回転自在に連結された脱穀機体横向きの回転連動軸54と、この回転連動軸54の他端側に一体回転自在に連結された揺動リンク55と、この揺動リンク55を前記変速カム45のアーム部45aに連結している連動ロッド56とを備えている。
【0042】
つまり、変速操作装置50は、変速レバー51がレバー支軸57の軸芯まわりに脱穀機体上下方向に揺動操作されることにより、押し引きロッド52が押し引き操作されて揺動リンク53と回転連動軸54とを介して揺動リンク55を揺動操作し、この揺動リンク55が連動ロッド56を介して変速カム45のアーム部45aを揺動操作して変速カム45を回転操作する。
【0043】
前記変速操作装置50は、前記押し引きロッド52の引き操作によって、唐箕駆動プーリ44をベルト巻回径が大きくなる側に変速操作し、前記押し引きロッド52の押し操作によって、唐箕駆動プーリ44をベルト巻回径が小さくなる側に変速操作し、押し引きロッド52の曲げ変形を回避している。
つまり、押し引きロッド52の押し操作によってベルト巻回径を大きくする側の変速を行なうと、伝動ベルト43が張り付勢されていることにより、押し引きロッド52に強い押し荷重が掛かって押し引きロッド52の曲げ変形が発生しやすくなる。このことを考慮し、ベルト巻回径を小さくする側の変速操作の際に押し引きロッド52に押し荷重が掛かり、ベルト巻回径を大きくする側の変速操作の際に押し引きロッド52に引き荷重が掛かるようにして変速レバー51と変速カム42とを連動させている。
【0044】
図13は、前記脱穀機体1の下部の側面図である。図14は、図13のXIV−XIV断面矢視図である。これらの図に示すように、脱穀機体1の前記扱き口Dを有した横側壁1aは、下唇板70の下方で横側壁1aの外面側に溶接された前後一対の補強部材71,71と、この補強部材71に連設されたカバー72とを備えている。
【0045】
前記前後一対の補強部材71,71は、唐箕16の前端部の上方に位置する箇所から処理回転体8の下方に位置する箇所にわたる範囲に設けてある。この補強部材71は、横側壁1aから脱穀機体横外側に脱穀機体下方向きに延出した上傾斜板部71aと、横側壁1aから脱穀機体横外側に脱穀機体上方向きに延出して前記上傾斜板部71aの延出端に連なった下傾斜板部71bとを備え、前記上傾斜板部71aと前記下傾斜板部71bと横側壁1aとによって脱穀機体前後方向視で三角形の中空フレームを構成し、これによって横側壁1aの強度アップを図っている。前記上傾斜板部71aは、下唇板支持材73の下端側に連結している。
【0046】
前記カバー72は、前記補強部材71に前記下傾斜板部71bから延出させて設けた支持板74に支持されている。このカバー72は、これの脱穀機体前後方向での中間部に設けた連結部72aを備えている。この連結部72aは、前記前後一対の補強部材71,71の間に入り込んだ状態で横側壁1aに連結されている。
【0047】
前記カバー72は、前記補強部材71の前記上傾斜板部71aに対してこの上傾斜板部71aと同一の傾斜角を有した状態で連なった傾斜ガイド部72bを備えており、穀稈や扱き口Dから出たワラ屑を傾斜ガイド部72bによってカバー72の下方に位置するベルト伝動機構よりも脱穀機体横外側に移動して落下するように案内する。
【0048】
〔別実施例〕
本発明は、上記した脱穀用の構成に替え、刈取り穀稈を株元から穂先までの全体にわたって扱室に投入して脱穀処理する構成を備えた脱穀機にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】脱穀機の縦断側面図
【図2】脱穀部の縦断側面図
【図3】脱穀部の縦断正面図
【図4】受網の展開状態での平面図
【図5】唐箕伝動構造と変速操作装置の正面図
【図6】唐箕伝動構造と変速操作装置の側面図
【図7】唐箕駆動プーリの断面図
【図8】変速操作装置の側面図
【図9】外れ止め体の側面図
【図10】外れ止め体の平面図
【図11】外れ止め体の斜視図
【図12】(a)は、外れ止め体の装着状態での側面図、(b)は、外れ止め体の脱着要領の側面図
【図13】脱穀機体の下部の側面図
【図14】図13のXIV−XIV断面矢視図
【符号の説明】
【0050】
10 扱胴
10a 扱胴の前端部
11 受網
35 小目合い
36 大目合い
37 後領域の目合い
F 受網の前領域
R 受網の後領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀稈を扱胴と前記扱胴の周方向及び扱胴回転軸芯方向に沿った受網との間で扱胴回転軸芯方向に移送して脱穀処理する脱穀機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した脱穀機として、従来、たとえば特許文献1に示されるものがあった。
特許文献1に記載された脱穀機は、扱胴3と受網20とを備えている。受網20では、前端側での処理物漏下用目合いの大きさが、終端側での目合いの大きさよりも大になっている。(各符号は、公報に記載されたものである。)
【0003】
【特許文献1】特開平11−253044号公報(段落〔0027〕、〔0028〕、図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した脱穀機において、受網の扱胴前端部に対応する前領域に、この前領域よりも穀稈移送方向下手側に位置する後領域に設ける処理物落下用の目合いよりも面積が大きい処理物落下用の目合いを設けると、受網から落下した脱穀粒の塵埃混入や、穀粒が脱穀排ワラにささり込んで脱穀機体外に排出される穀粒損失を抑制しながらの脱穀処理を高処理能率で行うことが可能となる。
つまり、受網の前領域における処理物落下用の目合いの面積を大にすると、前領域で多量に発生する脱穀粒が受網から迅速に落下しやすくなり、前領域に滞留する脱穀処理物の量が多くなって脱穀効率が悪くなる問題や、排ワラにささり込む穀粒が多くなる問題を回避しやすくなる。
受網の後領域における処理物落下用の目合いの面積を小にすると、後領域で多く発生するワラ屑などの塵埃が受網から落下しにくくなり、回収される脱穀粒の塵埃混入を抑制しやすくなる。
【0005】
上記した従来の技術を採用することにより、受網の前領域における目合いの面積が大となり、後領域における目合いの面積が小となった脱穀機を得ると、受網の強度面での問題が発生しがちであった。
つまり、従来の技術を採用すると、受網の前領域では、受網を構成する部材の配列ピッチが前領域の全体にわたって大となり、殊に曲げ強度が低下しがちであった。
【0006】
本発明の目的は、脱穀粒の塵埃混入や穀粒損失の抑制も、高処理能率での脱穀処理も可能にできるものでありながら優れた受網強度を得ることができる脱穀機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本第1発明は、穀稈を扱胴と前記扱胴の周方向及び扱胴回転軸芯方向に沿った受網との間で扱胴回転軸芯方向に移送して脱穀処理する脱穀機において、
前記受網の扱胴前端部に対応する前領域に、前記受網の前記前領域よりも穀稈移送方向下手側に位置する後領域における処理物落下用の目合いよりも大きい面積を有した処理物落下用の大目合いと、前記後領域における目合いよりも小さい面積を有した処理物落下用の小目合いとを設けてある。
【0008】
本第1発明の構成によると、受網の前領域では、後領域の目合いよりも面積が大きい大目合いを設けてあることにより、この大目合いによって脱穀粒を受網から迅速に落下させることができ、しかも後領域の目合いよりも面積が小さい目合いを設けてあることにより、受網を構成する部材の配列ピッチが小になる部分を存在させて優れた受網強度を備えさせることができる。受網の後領域では、前領域の大目合よりも小さい面積の目合いを備えていることにより、塵埃を受網から落下しにくくできる。
【0009】
したがって、受網の前領域での穀粒の穀稈へのささり込みを抑制して穀粒損失を抑制することができ、かつ後領域における塵埃落下を抑制して塵埃混入が少ない高品質の脱穀粒を得ることができるものでありながら、受網の前領域における脱穀粒の迅速な落下によって前領域における多量な脱穀処理物の滞留を防止して、かつ受網の前領域に優れた強度を備えさせて穀稈に脱穀力を効果的に作用させることができて、能率よく脱穀処理することが可能となる。
【0010】
本第2発明では、前記受網の前記小目合いが前記大目合いよりも穀稈移送方向上手側に位置している。
【0011】
本第2発明の構成によると、本第1発明の構成による作用、効果を備えるに加え、次の作用、効果を備える。
【0012】
受網の前領域における前端側では、多い着粒量のために大ボリューム状態となっている穀稈を脱穀処理することから受網に掛かる負荷が大になる。この前端側では、受網の小目合いのために受網構成部材のピッチが小になることから優れた強度を備えさせることができ、大脱穀負荷に抗して脱穀力を効果的に作用させて脱穀処理を能率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る脱穀機の縦断側面図である。この図に示すように、本発明の実施例に係る脱穀機は、脱穀機体1と、この脱穀機体1の前端側における上部の内側に設けた扱室2を有した脱穀部Aと、前記脱穀機体1の内部の前記扱室2の下方に設けた揺動選別装置3を有した選別部Bと、前記脱穀機体1の内部の前記扱室2の後方に駆動回転自在に設けた処理回転体8と、前記脱穀機体1の内側の底部に設けた1番スクリューコンベヤ4および2番スクリューコンベヤ5と、前記脱穀機体1の内部の前記扱室2の後方に設けた排ワラ搬送装置6と、前記脱穀機体1の後部に連結された排ワラ処理装置7とを備えている。
【0014】
この脱穀機は、コンバインの走行機体に搭載されてコンバインの刈取り部からの刈取り穀稈を脱穀処理し、かつ脱穀排ワラを細断処理して放出したり、長ワラ状態で放出したりする。
【0015】
すなわち、前記脱穀部Aは、前記扱室2を備える他、この扱室2に脱穀機体前後向きの扱胴回転軸芯Pまわりに駆動自在に設けた扱胴10と、前記扱室2の下部に扱胴10の周方向と扱胴回転軸芯方向とに沿わせて設けた受網11と、前記脱穀機体1の横外側に駆動自在に設けた脱穀フィードチェーン12とを備えている。
【0016】
つまり、脱穀部Aは、コンバインの刈取り部からの刈取り穀稈の株元側を前記脱穀フィードチェーン12によって挟持して脱穀機体1の扱き口D(図3参照)に沿わせて脱穀機体後方向きに搬送し、これによって刈取り穀稈の穂先側を脱穀機体1の穀稈供給口Cから前記扱室2に供給して扱室2の扱胴10と受網11との間を扱胴回転軸芯方向に移送しながら扱胴10と受網11とによって脱穀処理し、脱穀粒などの脱穀処理物を受網11から落下させ、脱穀排ワラを扱室2の後端部に位置する送塵口13から排出する。
【0017】
前記処理回転体8は、扱室2から排出された脱穀排ワラに掻き出し爪8aを作用させて、脱穀排ワラにささり込んでいる穀粒を掻き出す。
【0018】
前記選別部Bは、前記揺動選別装置3を備える他、この揺動選別装置3の前端部の下方に設けた唐箕16と、前記揺動選別装置3の後端部の上方に設けた排塵ファン17とを備えている。
つまり、選別部Bは、前記受網11から落下した脱穀処理物を前記揺動選別装置3によって受け止め、この揺動選別装置3による揺動選別と、前記唐箕16によって脱穀機体後方向きに供給される選別風とによって穀粒と塵埃とに選別し、穀粒を揺動選別装置3から落下させ、塵埃を選別風と共に排塵ファン17を内装した排塵ケースの排出口18あるいは脱穀機体1の後部に位置する排塵口19から脱穀機体外に排出する。
【0019】
前記1番スクリューコンベヤ4は、揺動選別装置3からの穀粒のうちの1番物を受け入れて脱穀機体横方向に搬送して脱穀機体1の横外側に搬出する。前記2番スクリューコンベヤ5は、揺動選別装置3からの穀粒のうちの2番物を受け入れて脱穀機体横方向に搬送して脱穀機体1の横外側に搬出する。2番スクリューコンベヤ5からの2番物は、スクリューコンベヤ等で成る還元装置20によって脱穀機体1の横壁の上部に位置する還元口に揚送し、この還元口から脱穀機体内に投入して揺動選別装置3の始端側に還元する。
【0020】
前記排ワラ搬送装置6は、前記脱穀フィードチェーン12から脱穀排ワラを受け継ぎ、受け継いだ脱穀排ワラを横倒れ姿勢で穂先側を脱穀機体1の横壁側に寄せながら脱穀機体後方側に搬送し、脱穀機体1の後部に位置する排ワラ搬出口21から脱穀機体1の外部に搬出して前記排ワラ処理装置7のカッタケース25の上に落下させる。
【0021】
前記排ワラ処理装置7は、カッタケース25の上部に設けた排ワラ受け入れ口26と、この排ワラ受け入れ口26を開閉する揺動開閉自在な蓋板27と、前記カッタケース25の内部に駆動自在に設けた一対の回転カッター28,28とを備えている。
【0022】
つまり、前記排ワラ処理装置7は、前記蓋板27が上昇開放操作されると、前記排ワラ搬送装置6から落下した脱穀排ワラを排ワラ受け入れ口26からカッタケース25の内部に落下させ、カッタケース25に入った脱穀排ワラを回動する前記一対の回転カッター28,28によって稈身方向に細断し、細断ワラをカッタケース25の下部から脱穀機体1の後方に落下させる。
【0023】
前記排ワラ処理装置7は、前記蓋板27が下降閉じ操作されると、前記排ワラ搬送装置6から落下した脱穀排ワラを蓋板27の上に落下させて長ワラのままで蓋板27からカッタケース25の後方に落下させる。
【0024】
図2は、前記脱穀部Aの縦断側面図である。図3は、前記脱穀部Aの縦断正面図である。図4は、前記受網11の展開状態での平面図である。これらの図に示すように、前記受網11は、扱室2の前端側と後端側とに設けた支持レール22に扱胴周方向に並べて支持された二つの分割受網11a,11aによって構成されている。前記受網11の扱胴10における前端部10aに対応する前領域Fは、二つの分割受網11a,11aの前部11afによって構成されている。前記受網11の扱胴10における後端側部(前記前端部10aよりも扱胴後端側に位置する部分)に対応する後領域Rは、二つの分割受網11a,11aの後部11arによって構成されている。
【0025】
前記各分割受網11aは、受網前後方向(扱胴回転軸芯方向)に並んだ複数本の横桟30と、受網横方向(扱胴周方向)に並んだ複数本の線材31と、分割受網11aの両横端部に位置した受網前後向きの枠体32とを備えて構成してある。
【0026】
前記各横桟30は、扱胴回転軸芯方向に沿った方向視で扱胴周面に沿った円弧形の帯板によって構成してある。前記各線材31は、丸棒材によって構成してある。各横桟30と各線材31と各枠体32とは、各線材31が各横桟30を貫通し、枠体32が各横桟30の受網横方向での端部に連結した組み合わせ状態になっており、隣り合う一対の線材31,31どうしの間隔は、横桟30によって設定間隔に保持され、隣り合う一対の横桟30,30どうしの間隔は、枠体32によって設定間隔に保持される。
【0027】
各分割受網11aは、線材31の受網横方向での配列ピッチとして、前部11afにおいても後部11arにおいても同一の大きさに設定された配列ピッチPを備えている。二つの分割受網11a,11aにおける線材31の前記配列ピッチPは、同一の大きさの配列ピッチになっている。
【0028】
各分割受網11aは、前記前部11afにおける前記横桟30の配列ピッチとして、前部11afの前端側に位置する横桟30に対応させた設定した第1配列ピッチP1と、前部11afの後端側に位置する横桟30に対応させて設定した第2配列ピッチP2,第3配列ピッチP3,第4配列ピッチP4,第5配列ピッチP5、第6配列ピッチP6とを備えている。一方の分割受網11aにおける前記第1配列ピッチP1、前記第2配列ピッチP2,第3配列ピッチP3,第4配列ピッチP4,第5配列ピッチP5、第6配列ピッチP6と、他方の分割受網11aにおける前記第1配列ピッチP1、前記第2配列ピッチP2,第3配列ピッチP3,第4配列ピッチP4,第5配列ピッチP5、第6配列ピッチP6とは、同一の大きさの配列ピッチになっている。
【0029】
各分割受網11aは、前記後部11arにおける前記横桟30の配列ピッチとして、後部11arに位置する全ての横桟30に対応させて設定した第7配列ピッチP7を備えている。一方の分割受網11aにおける前記第7配列ピッチP7と、他方の分割受網11aにおける前記第7配列ピッチP7とは、同一の大きさの配列ピッチになっている。
【0030】
前記第1〜第7配列ピッチP1,P2,P3,P4,P5,P6,P7の大きさの関係は、「第1配列ピッチP1<第7配列ピッチP7<第6配列ピッチP6<第5配列ピッチP5<第4配列ピッチP4<第2配列ピッチP2<第3配列ピッチP3」という関係になっている。
【0031】
したがって、受網11は、格子型受網になっており、前記前領域Fおよび前記後領域Rに横桟30と線材31とによって形成された処理物落下用の目合い35,36,37を備えている。
【0032】
前記前領域Fに位置する処理物落下用の目合い35,36のうち、穀稈移送方向下手側に穀稈移送方向に五列に並んで位置する目合い36は、前記後領域Rに位置する目合い37よりも大きい面積を有した大目合い36になっている。前記前領域Fに位置する処理物落下用の目合い35,36のうち、前記大目合い36よりも穀稈移送方向上手側に穀稈移送方向に二列に並んで位置する目合い35は、前記後領域Rに位置する目合い37よりも小さい面積を有した小目合い35になっている。
【0033】
つまり、前記受網11は、前記前領域Fの前記小目合い35による横桟30の小配列ピッチによって優れた受網強度を前領域Fに有し、この前領域Fにおいて着粒量が多い状態にある穀稈を脱穀処理して脱穀粒を大目合い36によって受網11から迅速に揺動選別装置3に落下させ、後領域Rにおいて着粒量が少なくなった状態の穀稈を脱穀処理して前領域Fの大目合い36よりも面積が小さい目合い37によって塵埃を受網11から落下しにくくしながら脱穀粒を受網11から揺動選別装置3に落下させる。
【0034】
図5は、前記唐箕16に駆動力を伝達する唐箕伝動構造の正面図である。図6は、前記唐箕伝動構造の側面図である。これらの図に示すように、前記唐箕伝動構造は、脱穀機体1の下端部の脱穀機体前方側に配置して走行機体の機体フレームに支持された伝動ケース40を備え、この伝動ケース40の脱穀機体横方向での一端側に設けた入力プーリ41によってエンジン(図示せず)から伝動ケース40に入力された駆動力を、前記伝動ケース40の脱穀機体横方向での他端側に設けた出力プーリ42から伝動ベルト43を介して唐箕駆動プーリ44に伝達する。唐箕駆動プーリ44は、唐箕16の回転支軸16aに一体回転自在に支持されている。
【0035】
図7は、唐箕駆動プーリ44の断面図である。この図に示すように、前記唐箕駆動プーリ44は、唐箕16の回転支軸16aに一体回転自在に固定された固定側半割りプーリ44aと、前記回転支軸16aに摺動自在に支持された可動側半割りプーリ44bとを備えて構成してあり、唐箕16を変速駆動する。
【0036】
すなわち、前記可動側半割プーリ44bに、これのボス部にベアリングを介して相対回転自在に取り付けた変速カム45を備えてある。脱穀機体1の唐箕駆動プーリ44が位置する側とは反対側の横側壁の上部に設けた変速レバー51を備えた変速操作装置50(図5,8参照)によって前記変速カム45を回転支軸16aの軸芯まわりに回転操作する。すると、変速カム45は、脱穀機体1に取り付けプレート46を介して固定された固定カム47によるカム作用によって回転支軸16aの軸芯方向に移動して可動側半割プーリ44bを固定側半割プーリ44aが備える連動ピン48に沿わせて固定側半割プーリ44aに対して接近側あるいは離間側に移動操作し、唐箕駆動プーリ44の前記伝動ベルト43が掛かる半径(ベルト巻回径)が変化して唐箕駆動プーリ44の回転速度が変化する。
【0037】
前記伝動ベルト43は、唐箕駆動プーリ44のベルト巻回径が変化しても、テンションアーム60による張り操作によって伝動用の緊張状態に維持される。図6,7に示すように、前記テンションアーム60は、前記取り付けプレート46に支軸61を介して揺動自在に支持されており、テンションアーム60に連結されたテンションスプリング62によって揺動付勢されている。前記テンションアーム60は、これの遊端部に取り付けられた外れ止め体63を備えている。この外れ止め体63は、前記伝動ベルト43がテンションアーム60に設けたテンション輪体64から外れることを防止する。
【0038】
図9は、前記外れ止め体63の側面図である。図10は、前記外れ止め体63の平面図である。図11は、前記外れ止め体63の斜視図である。これらの図に示すように、外れ止め体63は、折り曲げ棒材によって構成してあり、止着用屈曲部63aと、この止着用屈曲部63aから延出した回り止めアーム63bと、前記止着用屈曲部63aから延出するとともに途中で折れ曲がった支持アーム63cと、この支持アーム63cの延出端部に連結したベルト係止部63dとを備えている。
【0039】
図12(a)は、外れ止め体63の装着状態での側面図である。この図に示すように、外れ止め体63は、回り止めアーム63bがテンションアーム60の長孔65に挿入され、止着用屈曲部63aがテンションアーム60のボルト孔66に装着された連結ボルト67によってテンションアーム60に締め付けられることによって取り付け状態になる。外れ止め体63は、取り付け状態において、回り止めアーム63bのテンションアーム60との当接によって外れ止め体全体の連結ボルト67のまわりでのテンションアーム60に対する回転を阻止してベルト係止部63dをテンション輪体64の近くに保持し、ベルト係止部63dによって伝動ベルト43をテンション輪体64から外れないように係止する。
【0040】
図12(b)は、外れ止め体63の脱着要領の側面図である。この図に示すように、外れ止め態3を、テンションアーム60の前記長孔65に挿入されている回り止めアーム63bを回転軸芯にして回転操作すると、支持アーム63cがテンション輪体64とテンションアーム60との間に対して出入りし、回り止めアーム63bを長孔65でスライドさせると、回り止めアーム63bがテンション輪体64とテンションアーム60との間に対して出入りし、外れ止め体63をテンションアーム60に対して脱着できる。
【0041】
図5,6,7,8に示すように、前記変速操作装置50は、前記変速レバー51を備える他、変速レバー51に上端側が連結された脱穀機体上下向きの押し引きロッド52と、この押し引きロッド52の下端側に連結された揺動リンク53と、この揺動リンク53に一端側が一体回転自在に連結された脱穀機体横向きの回転連動軸54と、この回転連動軸54の他端側に一体回転自在に連結された揺動リンク55と、この揺動リンク55を前記変速カム45のアーム部45aに連結している連動ロッド56とを備えている。
【0042】
つまり、変速操作装置50は、変速レバー51がレバー支軸57の軸芯まわりに脱穀機体上下方向に揺動操作されることにより、押し引きロッド52が押し引き操作されて揺動リンク53と回転連動軸54とを介して揺動リンク55を揺動操作し、この揺動リンク55が連動ロッド56を介して変速カム45のアーム部45aを揺動操作して変速カム45を回転操作する。
【0043】
前記変速操作装置50は、前記押し引きロッド52の引き操作によって、唐箕駆動プーリ44をベルト巻回径が大きくなる側に変速操作し、前記押し引きロッド52の押し操作によって、唐箕駆動プーリ44をベルト巻回径が小さくなる側に変速操作し、押し引きロッド52の曲げ変形を回避している。
つまり、押し引きロッド52の押し操作によってベルト巻回径を大きくする側の変速を行なうと、伝動ベルト43が張り付勢されていることにより、押し引きロッド52に強い押し荷重が掛かって押し引きロッド52の曲げ変形が発生しやすくなる。このことを考慮し、ベルト巻回径を小さくする側の変速操作の際に押し引きロッド52に押し荷重が掛かり、ベルト巻回径を大きくする側の変速操作の際に押し引きロッド52に引き荷重が掛かるようにして変速レバー51と変速カム42とを連動させている。
【0044】
図13は、前記脱穀機体1の下部の側面図である。図14は、図13のXIV−XIV断面矢視図である。これらの図に示すように、脱穀機体1の前記扱き口Dを有した横側壁1aは、下唇板70の下方で横側壁1aの外面側に溶接された前後一対の補強部材71,71と、この補強部材71に連設されたカバー72とを備えている。
【0045】
前記前後一対の補強部材71,71は、唐箕16の前端部の上方に位置する箇所から処理回転体8の下方に位置する箇所にわたる範囲に設けてある。この補強部材71は、横側壁1aから脱穀機体横外側に脱穀機体下方向きに延出した上傾斜板部71aと、横側壁1aから脱穀機体横外側に脱穀機体上方向きに延出して前記上傾斜板部71aの延出端に連なった下傾斜板部71bとを備え、前記上傾斜板部71aと前記下傾斜板部71bと横側壁1aとによって脱穀機体前後方向視で三角形の中空フレームを構成し、これによって横側壁1aの強度アップを図っている。前記上傾斜板部71aは、下唇板支持材73の下端側に連結している。
【0046】
前記カバー72は、前記補強部材71に前記下傾斜板部71bから延出させて設けた支持板74に支持されている。このカバー72は、これの脱穀機体前後方向での中間部に設けた連結部72aを備えている。この連結部72aは、前記前後一対の補強部材71,71の間に入り込んだ状態で横側壁1aに連結されている。
【0047】
前記カバー72は、前記補強部材71の前記上傾斜板部71aに対してこの上傾斜板部71aと同一の傾斜角を有した状態で連なった傾斜ガイド部72bを備えており、穀稈や扱き口Dから出たワラ屑を傾斜ガイド部72bによってカバー72の下方に位置するベルト伝動機構よりも脱穀機体横外側に移動して落下するように案内する。
【0048】
〔別実施例〕
本発明は、上記した脱穀用の構成に替え、刈取り穀稈を株元から穂先までの全体にわたって扱室に投入して脱穀処理する構成を備えた脱穀機にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】脱穀機の縦断側面図
【図2】脱穀部の縦断側面図
【図3】脱穀部の縦断正面図
【図4】受網の展開状態での平面図
【図5】唐箕伝動構造と変速操作装置の正面図
【図6】唐箕伝動構造と変速操作装置の側面図
【図7】唐箕駆動プーリの断面図
【図8】変速操作装置の側面図
【図9】外れ止め体の側面図
【図10】外れ止め体の平面図
【図11】外れ止め体の斜視図
【図12】(a)は、外れ止め体の装着状態での側面図、(b)は、外れ止め体の脱着要領の側面図
【図13】脱穀機体の下部の側面図
【図14】図13のXIV−XIV断面矢視図
【符号の説明】
【0050】
10 扱胴
10a 扱胴の前端部
11 受網
35 小目合い
36 大目合い
37 後領域の目合い
F 受網の前領域
R 受網の後領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を扱胴と前記扱胴の周方向及び扱胴回転軸芯方向に沿った受網との間で扱胴回転軸芯方向に移送して脱穀処理する脱穀機であって、
前記受網の扱胴前端部に対応する前領域に、前記受網の前記前領域よりも穀稈移送方向下手側に位置する後領域における処理物落下用の目合いよりも大きい面積を有した処理物落下用の大目合いと、前記後領域における目合いよりも小さい面積を有した処理物落下用の小目合いとを設けてある脱穀機。
【請求項2】
前記受網の前記小目合いが前記大目合いよりも穀稈移送方向上手側に位置している請求項1記載の脱穀機。
【請求項1】
穀稈を扱胴と前記扱胴の周方向及び扱胴回転軸芯方向に沿った受網との間で扱胴回転軸芯方向に移送して脱穀処理する脱穀機であって、
前記受網の扱胴前端部に対応する前領域に、前記受網の前記前領域よりも穀稈移送方向下手側に位置する後領域における処理物落下用の目合いよりも大きい面積を有した処理物落下用の大目合いと、前記後領域における目合いよりも小さい面積を有した処理物落下用の小目合いとを設けてある脱穀機。
【請求項2】
前記受網の前記小目合いが前記大目合いよりも穀稈移送方向上手側に位置している請求項1記載の脱穀機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−104294(P2010−104294A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279972(P2008−279972)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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