説明

脱穀装置の揺動選別装置

【課題】脱穀装置の揺動選別装置の選別精度の向上。
【解決手段】扱室の下方の後側に向けて選別風の流れる選別風路には揺動選別棚を揺動自在に設け、揺動選別棚の上側部には前側から後側に向けてグレンパン、グレンシーブ、チャフシーブ及びストローラックを、下側部には前側から後側に向けて下部グレンパン及び網状の下部グレンシーブを設け、選別風路の底部前側部には一番受樋を、底部後側部には二番受樋を設ける。揺動選別棚のチャフシーブ及び下部グレンシーブの後部下方で、且つ、二番受樋の上方に位置するように、一体的に揺動する後上り傾斜状の下方棚板及び上方棚板を配設し、下方棚板の上方に所定の風路幅を介して上方棚板を配設し、下部グレンシーブの後側端部と上方棚板との間に所定幅の風路を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバイン等における脱穀装置の揺動選別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインの揺動選別装置において、揺動選別棚のチャフシーブ及び下部グレンシーブの下方に一番受樋を配設し、この一番受樋の後方に二番受樋を配設し、一番受樋の棚板の傾斜角度を緩急に調節するものは公知である(特許文献1)。
【特許文献1】実開昭60−38541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来技術にあっては、一番受樋の棚板を急傾斜に調節すると、被選別物は選別風により吹き出されにくくなり一番穀粒の二番受樋への飛散を抑制できるが、下部グレンシーブと一番受樋の棚板との間隔が狭くなり、被選別物が詰まり気味となる不具合が発生し、また、一番受樋の棚板を緩傾斜に調節すると、一番穀粒が二番受樋32に飛散し、二番選別物が増加するという不具合が発生していた。そこで、この発明はこのような不具合を解消し、揺動選別棚のチャフシーブ及び下部グレンシーブ下方の選別精度を向上させようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、扱室(11)の下方の後側に向けて選別風の流れる選別風路(28)には揺動選別棚(29)を揺動自在に設け、該揺動選別棚(29)の上側部には前側から後側に向けてグレンパン(29a)、グレンシーブ(29b、)チャフシーブ(29c)及びストローラック(29d)を、下側部には前側から後側に向けて下部グレンパン(29e)及び網状の下部グレンシーブ(29f)をそれぞれ設け、前記選別風路(28)の底部前側部には一番受樋(31)を、底部後側部には二番受樋(32)をそれぞれ設け、前記揺動選別棚(29)のチャフシーブ(29b)及び下部グレンシーブ(29f)の後部下方で、且つ、二番受樋(32)の上方に位置するように、一体的に揺動する後上り傾斜状の下方棚板(41)及び上方棚板(42)を配設し、前記下方棚板(41)の上方に風路を介して前記上方棚板(42)を配設し、前記下部グレンシーブ(29f)の後側端部と上方棚板(42)上面との間に風路を形成したことを特徴とする脱穀装置の揺動選別装置とする。
【0005】
前記構成によると、揺動選別棚(29)のチャフシーブ(29b)後部及び下部グレンシーブ(29f)後部から落下した被選別物は、揺動選別棚(29)と一体的に揺動する上方棚板(42)及び下方棚板(41)に落下して風選別及び揺動比重選別され、また、上方棚板(42)の後側端部から落下した被選別物は下方棚板(41)に導かれて再度の風選別及び揺動比重選別され、穀粒は下方棚板(41)の前側端部から一番受樋(31)に導かれ、二番物は下方棚板(41)の後側端部から二番受樋(32)に導かれ分離選別される。
【0006】
請求項2の発明は、下方棚板(41)の後側端部を上方棚板(42)の後側端部よりも後方に延長し二番受樋(32)の上方まで延出したことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置の揺動選別装置とする。
【0007】
前記構成によると、請求項1の発明の前記作用に加えて、上方棚板(42)の後側端部から後方に導かれた被選別物は、下方棚板(41)の後側部に落下して風選及び揺動比重選別される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明は、下部グレンシーブ(29f)から上方棚板(42)に導かれた被選別物は風選及び揺動比重選別され、更に、上方棚板(42)から下方棚板(41)に導かれた被選別物は再度風選及び揺動比重選別されるので、一番受樋(31)への一番穀粒の回収効率、及び、二番受樋(32)への二番物の回収効率を高めることができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明の前記効果に加えて、上方棚板(42)の後側端部から後方に導かれた被選別物は、下方棚板(41)の後側部に導かれて更に風選及び揺動比重選別され、一番受樋(31)への一番穀粒の回収効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に示すこの発明の実施例の形態について説明する。
図1にはコンバイン1の全体側面図が図示されている。コンバイン1の走行車台2の下方には、土壌面を走行する左右一対の走行クローラ3,3を配設し、走行車台2上には、右側前部に操縦席4を、左側前部に脱穀部5を、操縦席4の後方にグレンタンク6を、脱穀部5及びグレンタンク6の後方に排稾処理装置7をそれぞれ配設している。脱穀部5の前方には、植立穀稈を引越しながら刈り取り後方の脱穀部5に向けて搬送する刈取搬送部8を昇降自在に設けている。
【0011】
次に、図2〜図9に基づき脱穀部5の構成について説明する。図2は脱穀部5の右側面図、図3は脱穀部5の左側面図、図4は脱穀部5の後側部の切断正面図、図5は脱穀部5の前側部の切断正面図、図6は脱穀部5の正面図、図7は脱穀部5の後側部の切断正面図、図8は脱穀部5の切断平面図、図9は揺動選別棚の平面図である。
【0012】
扱室11内には前後方向の扱胴軸12aを介して扱胴12を軸架し、扱胴12の周面には多数の扱歯13,…を取り付け、扱胴12の下部外周を受網14で覆っている。扱室11の右側方には二番処理室16を設け、二番処理室16には前後方向の二番処理胴軸17aを介して二番処理胴17を軸架し、二番処理胴17の外周面に多数の二番処理歯18,…を取り付け、二番処理胴17の扱室11に近い側を下側に向けて回転するように構成している。扱室11の左側方には脱穀用穀稈を移送するフィードチエン19を設け、フィードチエン19の搬送下手側には排藁搬送装置21を設けて脱穀済み排藁を後方の排稾処理装置7に搬送するように構成している。
【0013】
また、前記二番処理室16の後方に排塵処理室22を設け、排塵処理室22には前後方向の排塵処理胴軸23aを介して排塵処理胴23を軸架し、扱室11の後端部と排塵処理室22の前端部とを連通口を介して連通し、扱室11から連通口を介して送り込まれた藁屑類を排塵処理胴23の処理歯23b,…により後側に送りながら脱穀処理するように構成している。
【0014】
また、扱室11の下方から後方にかけて選別部26を設けている。選別部26の前側部の唐箕27から選別風路28に後側に向けて選別風を送り、選別風路28には前後方向に往復揺動自在に揺動選別棚29を設けている。揺動選別棚29の上側部には前側から後側に向けてグレンパン29a、グレンシーブ29b、チャフシーブ29c及びストローラック29dからなる粗選別部を構成し、揺動選別棚29の下側部には前側から後側に向けて下部グレンパン29e及び網体の下部グレンシーブ29fからなる精選別部を構成し、扱室11、二番処理室16及び排塵処理室22からの脱穀処理物を受けて後側に揺動移送しながら比重選別するように構成している。
【0015】
選別風路28の底部前側部に選別一番穀粒を受ける一番ラセン31a付きの一番受樋31を設け、底部後側部に選別二番物を受ける二番ラセン32a付きの二番受樋32を設け、また、選別風路28の後側終端部で且つ揺動選別棚29の終端側上方における排塵処理室22の排塵口と対向する左側部に、例えば遠心式プレートファン型の排塵ファン33を配設し、揺動選別棚29で選別され後側に送られた軽い藁屑類、及び、排塵処理室22から排出された脱穀処理物を機外に吸引排出するように構成している。なお、34は一番揚穀機、35は二番揚穀機である。
【0016】
次に、図10に基づき揺動選別棚29後部の選別構成について説明する。
揺動選別棚29のチャフシーブ29cの後部下方、及び、下部グレンシーブ29fの後部下方で、且つ、二番受樋32の上方に位置するように、下方棚板41及び上方棚板42を配設し、揺動選別棚29の後側部左右両側に取り付けた左右取付板43,43に、これら下方棚板41及び上方棚板42を取り付け、一体的に揺動するよう構成している。そして、この下方棚板41は一番受樋31の棚板31bから後側に向けてあたかも延長するように略同様の後上り傾斜状に後方に向けて延出し、その後側部分は二番受樋32の前側部上方に位置し、下方棚板41により二番ラセン32aを覆うように構成している。
【0017】
また、この下方棚板41の前後方向中途部上方には、所定の風路幅を介して上方棚板42を配設し、この上方棚板42を後上り傾斜状で、且つ、下方棚板41よりもやや急傾斜となるように構成し、これら棚板41,42の後側端部を上方に屈折起立させる起立部41a,42aに構成している。
【0018】
前記構成によると、揺動選別棚29のチャフシーブ29cの後部及び下部グレンシーブ29fの後部から落下した被選別物は、一体的に揺動する上方棚板42及び下方棚板41に受けられ風選別及び揺動比重選別される。そして、上方棚板42からの被選別物は前後方向に長い下方棚板41の後側部に導かれて再度風選別及び揺動比重選別され、その後に穀粒は一番受樋31に導かれ、二番物は二番受樋32に導かれ、藁屑類は後方に排出される。
【0019】
例えば、実開昭60−38541号公報に示すように、揺動選別棚のチャフシーブ及び下部グレンシーブの下方に一番受樋を配設し、この一番受樋の後方に二番受樋を配設し、一番受樋の棚板の傾斜角度を緩急に調節するものは公知である。
【0020】
このような構成にあっては、一番受樋の棚板を急傾斜に調節すると、選別風により被選別物を吹き出しにくくなり穀粒は飛散しにくいが、被選別物が詰まり気味となり、また、緩傾斜に調節すると、一番穀粒が飛散して二番受樋に選別され二番選別物が増加するという不具合が発生する。
【0021】
しかし、前記構成とすることにより、上方棚板42の棚先の起立部42aにより選別風を立ち上げ送風しながら再選別するので、一番穀粒や二番物の機外排出を抑制することができ、また、上方棚板42から被選別物を下方棚板41に導き再選別するので、一番受樋31への一番穀粒の回収効率及び二番受樋32への二番物の回収効率を高め選別精度を高めることができる。
【0022】
また、上方棚板42の後側端部の起立部42aよりも下方棚板41の起立部41aを後方で且つ下方に位置させ、二番受樋32の二番ラセン32aの上方まで延出している。このように構成することにより、上方棚板42の起立部42aから二番受樋32側に導かれた被選別物は、下方棚板41の後側部で落差を大きくしながら風選及び揺動比重選別され、一番受樋31への一番穀粒の回収比率を高めることができる。
【0023】
また、上方棚板42の後側端部の起立部42aよりも下方棚板41の起立部41aを後方に位置させ二番受樋32の二番ラセン32aの上方まで延出し、また、上方棚板42の起立部42aの高さに対して、下方棚板41の起立部41の高さを略同じか、あるいは、少し低く構成している。
【0024】
前記構成とすることにより、被選別物中の一番受樋31に回収不要な夾雑物やカギ又、穀稈切れ等が上方棚板42から下方棚板41に落差を大きくし上下方向に拡がりながら導かれて風選され二番物の後方移動が円滑になり、下方棚板41から二番受樋32に円滑に回収され選別精度を高めることができる。
【0025】
また、上方棚板42の前側端部の下端縁を揺動選別棚29における網状の下部グレンシーブ29fの後端部下方に位置させ、下方棚板41の前側部の傾斜下端縁を揺動選別棚29における網体の下部グレンシーブ29fの中途部下方に位置するように前側に延出している。
【0026】
前記構成とすることにより、揺動選別棚29の下部グレンシーブ29fの後側端部から上方棚板32に落下した被選別物は、上方棚板42上を後方に移動しながら起立部42aで跳ね上げられて風選と揺動比重選別を受けながら下方棚板41に落下し、穀粒は夾雑物と分離されながら下方棚板41上を低い前側に流動し一番受樋31に良好に回収される。
【0027】
また、揺動選別棚29の網状の下部グレンシーブ29fの中途部から下方棚板41の前側部に漏下した比較的夾雑物の付着の少ない穀粒は、風選されながら前側部の傾斜下端部に導かれて一番受樋31に回収され、穀粒の二番受樋32への選別を少なくし選別精度を高めることができる。
【0028】
次に、図6、図9及び図10に基づき揺動選別棚29の揺動構成について説明する。
選別部26の選別箱体46の前側部には、揺動アーム47の下部を左右方向の軸で軸支し、揺動アーム47の上端部にブラケット51を介して揺動選別棚29の前側部を枢支連結している。選別箱体46の前側部には揺動軸48を左右方向に軸架すると共に、揺動軸48の偏心輪48aに揺動ロッド49の後側部を嵌合支持し、揺動ロッド49の前側部を揺動アーム47の中途部にピン連結している。また、選別箱体46の後側部左右両側には左右揺動ガイド52,52を後上り傾斜状に取り付け、この左右揺動ガイド52,52の後上り傾斜方向を一番受樋31の棚板及び下方棚板41の傾斜方向に沿わせている。揺動選別棚29の後側部左右両側に左右支架軸53,53を取り付け、この左右支架軸53,53に支持した左右ベアリング54,54を左右揺動ガイド52,52に嵌合支持している。
【0029】
しかして、図10に示す揺動軸48が時計方向に回転すると、揺動選別棚29は矢印方向に揺動し、揺動選別棚29の後側部は下方棚板41の傾斜方向に沿って往復揺動する。従って、下方棚板41上の穀粒の弾きが少なくなり、下方棚板41と上方棚板42の間の空間が狭くても被選別物の詰まりが少なくなり円滑に選別することができる。また、上方棚板42の傾斜角度を下方棚板41の傾斜角度よりも急傾斜にしているので、被選別物を高く揺上げて下方棚板41に落下させることができて風選効果を高め、また、一番受樋31の棚板先端と下方棚板41との間からの穀粒の飛散を少なくすることができる。
【0030】
また、図10に示すように、上方棚板42の終端側位置を二番受樋32の二番ラセン32aの軸心よりも前方に位置させ、下方棚板41の終端側位置を二番受樋32の二番ラセン32aの軸心よりも後方に位置するように配設している。前記構成とすることにより、被選別物中の一番穀粒の回収比率を高めて穀粒の二番処理室16への還元率を少なくすることができる。
【0031】
また、図11に示すように、揺動選別棚29の後側部の揺動方向となる揺動ガイド52の水平面に対する傾斜角度をθ1、上方棚板42の傾斜角度をθ2、下方棚板41の傾斜角度をθ3とすると、これらの角度をθ1≦θ2、θ1≧θ3、θ2≧θ3になるように設定しても、前記実施例と略同様の作用効果が期待できる。
【0032】
また、図4及び図10に示すように、揺動選別棚29の左右揺動ガイド52,52、左右支架軸53,53及び左右ベアリング54,54に対して、上方棚板42を上方に配置し、下方棚板41を左右揺動ガイド62,52の上端部近傍に略同じ傾斜角度になるように配置している。前記構成により、上方棚板42及び下方棚板41が選別風路28における左右揺動ガイド52,52、左右支架軸53,53及び左右ベアリング54,54の上方に配置されることとなり、選別風の乱れを抑制し円滑に選別することができる。なお、58は揺動選別棚29の後側端部から一番受樋32の棚板上に垂下したシール板で、二番受樋32の穀粒等の飛散を防止している。
【0033】
また、図10に示すように、揺動選別棚29の上方棚板42と下部グレンシーブ29fとの間に上下方向に広い風路幅を設け、上方棚板42と下方棚板41との間を上下方向に狭い風路幅を設けている。前記構成とすることにより、多量の選別風が上方棚板42と下部グレンシーブ29fとの間を通過することになり、上方棚板42を急傾斜にしても選別が悪化することがなく、漏下量の多い被選別物を円滑に風選することができ、また、被選別物が下方棚板41を飛び越し二番受樋32への直接落下を抑制し選別精度を高めることができる。
【0034】
また、上方棚板42と下方棚板41との間の選別風は下方棚板41に吹き付けられながら後上りに上昇していくので、上下方向の風路幅が狭くても風量不足を来すこともなく、また、下方棚板41を上方棚板42よりも緩傾斜にしているので、上方棚板42に比べて下方棚板41への一番穀粒の回収割合は少なく、選別風量が少なくても十分に一番穀粒を選別することができる。
【0035】
また、図10に示すように、揺動選別棚29の上方棚板42及び下方棚板41の後方上部にストローラック29dを配設し、このストローラック29dの前側端部には左右全幅にわたり排塵ガイド板56を後上り傾斜状に取り付け、ストローラック29dの前側端部を覆っている。そして、下方棚板41の起立部41aの延長線よりも排塵ガイド板56を後側上方に配設している。
【0036】
前記構成により、揺動選別棚29の終端側に流れた選別風は上方棚板42の起立部42a及び下方棚板42の起立部41aにより上向きに方向変換され、チャフシーブ29c及びストローラック29dに向けて流れ排塵物が排塵ファン33に導かれ排塵物を円滑に機外に排出することができる。
【0037】
また、図10に示すように、上方棚板42と下方棚板41とを所定の風路幅を介して上下に配設するにあたり、下方棚板41の前後方向中途部上方に上方棚板42を配置し、下方棚板41における上方棚板42の前方部位を緩やかに屈曲した山型状41bに構成し、下方棚板41の前側部を急傾斜に、後側部を緩傾斜に構成し、上方棚板42と下方棚板42との間隔を後側ほど広くなるように構成している。
【0038】
前記のように、上方棚板42と下方棚板42間の風路幅を後側ほど広くなるように構成し、下方棚板41の後側部を緩傾斜にしているので、選別風量を確保して被選別物の流れを円滑にすることができる。また、下方棚板41の前側部を急傾斜に後側部を緩傾斜に構成したので、被選別物の増加する下方棚板51の後側部での選別落差が大きくなり一番穀粒の回収が円滑化する。また、下方棚板41における急傾斜の前側部に沿って流れた選別風は上方棚板42の下面に沿って流れて、上方棚板42から落下する被選別物に作用し良好な選別をすることができる。
【0039】
また、図10に示すように、上方のチャフシーブ29cの後側端と下方棚板41の後側端部とを上下方向に略揃え、上方棚板42の終端側部をチャフシーブ29cの後側端部よりも前方に配置している。しかして、上方棚板42の起立部42a及び下方棚板41の起立部41aにより上方に導かれた選別風がチャフシーブ29cの後側端部に良好に作用し、また、チャフシーブ29cのチャフシーブ板の傾斜角度を緩く調節することにより、上方棚板42及び下方棚板41への長い藁切れ類の落下を少なくし、一番穀粒への穀稈切れ類の混入を少なくすることができる。
【0040】
また、揺動選別棚29の下部グレンシーブ29c、上方棚板42及び下方棚板41を図12及び図13に示すように構成してもよい。即ち、揺動選別棚29の下部グレンシーブ29fの後側端部下方に所定風路幅を介して上方棚板42の前側端部を配置し、上方棚板42の後側端部にこれと同幅の後方グレンシーブ57を設け、下部グレンシーブ29fと後方グレンシーブ57の傾斜角度を略同じの後上り緩傾斜に構成し、後方グレンシーブ57の後側端部とチャフシーブ29cの後側端部とを上下方向に略揃えると共に、後方グレンシーブ57の後側端部を下方棚板41の後側端部よりも前方に位置するようにし、下方棚板41の棚先を前後方向に調節可能に構成している。なお、上方棚板42の後側端部下面に後方グレンシーブ57の前側端部を取り付け、上方棚板42から後方グレンシーブ57への被選別物の引継ぎを円滑にしている。
【0041】
前記構成とすることにより、上方棚板42から後方グレンシーブ57に導かれた被選別物を篩選別及び風選別しながら、粗大な穀稈切れや藁屑類やカギ又などの下方棚板41への落下を抑制しながら二番受樋32に導き、選別精度を高め、また、上方棚板42と下方棚板41間の被選別物の詰まりを抑制し円滑に選別することができる。また、下部グレンシーブ29fと後方グレンシーブ57の傾斜角度を略同じの後上り状緩傾斜に設定したで、後方グレンシーブ57上に被選別物が停滞し下部グレンシーブ29f側に逆流するようなこともなく、円滑に選別することができる。
【0042】
また、チャフシーブ29cの下方に下部グレンシーブ29f及び後方グレンシーブ57を配置しているので、上下方向の長い藁や粗大な穀稈切れが下部グレンシーブ29f及び後方グレンシーブ57に落下するようなことも少なく、選別精度を高めることができる。
【0043】
また、チャフシーブ29cの下方に下部グレンシーブ29f及び後方グレンシーブ57を配置し、チャフシーブ29cの後上り傾斜角度よりも下部グレンシーブ29fの後上り傾斜角度を急傾斜にし、下部グレンシーブ29fの後側端部と上方棚板42間には所定風路幅を介在させ、下部グレンシーブ29fの後方に後方グレンシーブ57を同じ後上り傾斜状で且つ段差を持たせて下方に配置するように構成している。
【0044】
前記構成によると、下部グレンシーブ29fから後側グレンシーブ57への被選別物の移動が円滑となり、また、チャフシーブ29cと下部グレンシーブ29fとの間隔は後側ほど狭くなるが、チャフシーブ29cの後側端部には下方に段差を設けて後方グレンシーブ57を配置し、且つ、下部グレンシーブ29fの後側端部と上方棚板42間に所定の風路幅を介在させているので、選別風量を確保して被選別物の詰まりを回避しながら円滑に選別することができる。
【0045】
また、下方棚板41の棚先を前後方向に調節することにより、下方棚板41の先端部から二番受樋32への被選別物の落下量を調節することができ、選別精度を高めることができる。
【0046】
また、下方棚板41の棚先を前後方向に調節するにあたり、図14のように調節してもよい。即ち、下部グレンシーブ29fの後側端部と上方棚板42の後側部との間の風路幅をAとし、後方グレンシーブ57の後側端部と下方棚板41の後側端部との間隔をBとすると、下方棚板41の棚先を前後方向に調節し、A>Bの関係、あるいは、A≒Bの関係になるように調節できる。しかして、被選別物が少ない場合には、前記A>Bの関係になるように調節し、また、被選別物が多い場合には、A≒Bの関係になるように調節することにより、選別精度を高めながら円滑に選別することができる。
【0047】
また、下方棚板41の棚先を前後方向に調節するにあたり、図15のように構成してもよい。即ち、下部グレンシーブ29fの後側端部と上方棚板42の後側部との間の風路幅をAとし、上方棚板42の後側端部と下方棚板41の後側端部との間隔をCとすると、下方棚板41の棚先を最も短くなるように調節した状態でも、A<Cの関係になるように構成している。しかして、間隔Cを間隔Aよりも長く構成することにより、間隔C部分ではその前側部にある後方グレンシーブ57からの穀稈切れや藁屑類の落下を抑制し、穀粒の回収精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】脱穀部の右切断側面図
【図3】脱穀部の左切断側面図
【図4】脱穀部後側部の切断正面図
【図5】脱穀部前側部の切断正面図
【図6】脱穀部前側部の切断正面図
【図7】脱穀部後側部の切断正面図
【図8】脱穀部上側部の平面図
【図9】脱穀部下側部の平面図
【図10】揺動選別棚の右側面図
【図11】揺動選別棚の右側面図
【図12】揺動選別棚の右側面図
【図13】揺動選別棚の背面図
【図14】揺動選別棚の右側面図
【図15】揺動選別棚の右側面図
【符号の説明】
【0049】
1 コンバイン
2 走行車台
3 走行クローラ
5 脱穀部
11 扱室
12 扱胴12
26 選別部
27 唐箕
28 選別風路
29 揺動選別棚
29a グレンパン
29b グレンシーブ
29c チャフシーブ
29d ストローラック
29e 下部グレンパン
29f 下部グレンシーブ
31 一番受樋
32 二番受樋
41 下方棚板
42 上方棚板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(11)の下方の後側に向けて選別風の流れる選別風路(28)には揺動選別棚(29)を揺動自在に設け、該揺動選別棚(29)の上側部には前側から後側に向けてグレンパン(29a)、グレンシーブ(29b、)チャフシーブ(29c)及びストローラック(29d)を、下側部には前側から後側に向けて下部グレンパン(29e)及び網状の下部グレンシーブ(29f)をそれぞれ設け、前記選別風路(28)の底部前側部には一番受樋(31)を、底部後側部には二番受樋(32)をそれぞれ設け、前記揺動選別棚(29)のチャフシーブ(29b)及び下部グレンシーブ(29f)の後部下方で、且つ、二番受樋(32)の上方に位置するように、一体的に揺動する後上り傾斜状の下方棚板(41)及び上方棚板(42)を配設し、前記下方棚板(41)の上方に風路を介して前記上方棚板(42)を配設し、前記下部グレンシーブ(29f)の後側端部と上方棚板(42)上面との間に風路を形成したことを特徴とする脱穀装置の揺動選別装置。
【請求項2】
下方棚板(41)の後側端部を上方棚板(42)の後側端部よりも後方に延長し二番受樋(32)の上方まで延出したことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置の揺動選別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−89463(P2007−89463A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282546(P2005−282546)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】