説明

脱穀装置

【課題】二番穀粒の処理を向上させて、扱室の前方部における穀粒(単粒率)の回収効率を向上させる脱穀装置の提供である。
【解決手段】脱穀装置15の扱室66内に備えられた扱胴69を、被処理物の搬送方向始端部側に位置する第1扱胴69aと、被処理物の搬送方向終端部側に位置し、揚穀筒87から搬送される二番物を処理すると共に第1扱胴69aにおいて発生したササリ粒を除去する第2扱胴69bから構成し、第1扱胴69aと第2扱胴69bの間に板材81を設けることで、二番穀粒が板材81に当たり搬送方向始端部側へ流出することを防ぐ。また、第2扱胴69bの回転数を第1扱胴69aの回転数よりも大きくすれば、低速回転の第1扱胴69aにより脱穀装置15内に導入直後の穀桿の大部分を脱穀処理した後、高速回転の第2扱胴69bにより穂切れの処理や藁桿に介入したササリ粒や枝梗粒の枝梗を離脱させて除去でき、三番穀粒や四番穀粒が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等に搭載される脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは穀稈の刈取装置と、脱穀装置と、脱穀後の穀粒を一時的に貯留するグレンタンクと、グレンタンクに貯留されている穀粒を排出するオーガなどから構成される。
脱穀装置の主脱穀部である扱室には刈取装置で刈り取った穀稈が挿入され、穀稈は扱室に軸架された扱胴の表面に多数設けられた扱歯と扱網との相互作用により脱穀される。穀稈から分離された被処理物(穀粒や藁くず)は扱網を通過して、選別室の揺動棚で受け止められ二番穀粒や藁屑などを分離して穀粒のみをグレンタンクに搬送する。
【0003】
二番穀粒は扱室の側方に設けられた二番処理室に送られ二番処理胴により穀粒、枝梗粒などに分離され、再び揺動棚に落下して穀粒、藁屑などに分離される。扱室で発生した藁くずなど短尺のものは排塵処理室に搬送され、排塵処理胴により処理される。
【0004】
脱穀装置の中で最初に穀稈が挿入される扱室においては、被処理物が搬送されながら扱胴が回転することで穀稈の大部分が脱穀される。この主脱穀部である扱室における脱穀処理が十分なされることで、脱穀効率が向上する。そのため、扱室において、高能率に脱穀処理を行うために、下記特許文献1によれば、扱歯を植設した扱胴を前後に分割して、前部のものを第1扱胴、後部のものを第2扱胴とし、第2扱胴を第1扱胴よりも高速回転するようにした脱穀機において、第2扱胴の扱歯の植設密度を第1扱胴の扱歯の植設密度よりも大きくした工夫がなされている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−354417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の構成により、穂切れや引き込まれた長藁は、高速回転する高密度の扱歯により脱粒又は細断処理されて藁稈に介入したササリ粒は梳き取られてササリ粒が除去できる。
【0006】
しかし、上記特許文献1記載の構成によれば、第1扱胴と第2扱胴において処理された被処理物の中の二番物(穀粒(整粒)、枝梗粒、細かい藁屑等が混在したもの)は、下部に二番螺旋を有する二番揚穀筒により搬送された後、二番処理胴には還元されず、揺動棚上に還元されるため、脱穀処理が不十分であり、枝梗粒の処理などの二番穀粒の処理能率が向上しない。また、二番穀粒が二番処理胴に還元される場合でも、扱室の側方に二番処理胴を設けた従来の構成では、二番処理室に搬送された二番穀粒が、二番処理胴から扱胴の前方(搬送方向始端部側)下部へ流出する場合がある。扱室の前方の領域で漏下する脱穀初期に脱粒した穀粒は単粒であり夾雑物も含んでいないが、このような場合は扱室の前方部に二番穀粒が混入し、穀稈から分離された処理物(穀粒や藁くず)のうち、必要とされる単粒率の向上が期待できなくなる。
本発明の課題は、上記問題点を解決することであり、二番穀粒の処理を向上させて、扱室の前方部における穀粒(単粒率)の回収効率を向上させる脱穀装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は次の解決手段により解決できる。
請求項1記載の発明は、穀桿から穀粒を分離処理するための扱歯(69c、69d)を設けた扱胴(69a、69b)を軸架した扱室(66)と、前記扱胴(69a、69b)の穀稈の搬送始端部から搬送終端部に穀稈を供給するフィードチェーン(14)と、扱室(66)を通過した穀稈を処理して得られる被処理物中の正常な穀粒や藁の中に正常な穀粒が刺さっているササリ粒を含む混合物である二番物を再び扱胴(69a、69b)の搬送方向終端部側に搬送する揚穀筒(87)とを設けた脱穀装置において、前記扱胴(69a、69b)は、被処理物の搬送方向始端部側に位置する第1扱胴(69a)と、被処理物の搬送方向終端部側に位置し、前記揚穀筒(87)から搬送される前記二番物を処理するとともに、フィードチェーン(14)により搬送されながら前記第1扱胴(69a)において脱穀された後で引き続きフィードチェーン(14)により搬送される穀稈中の脱穀されなかった穀稈を脱穀すると同時に穀粒に藁が刺さったササリ粒を処理する第2扱胴(69b)からなり、前記第1扱胴(69a)と第2扱胴(69b)の間で扱室(66)を仕切り、該第1扱胴(69a)及び第2扱胴(69b)の軸と直交する方向に平面部を有する板材(81)を設けた脱穀装置である。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記第2扱胴(69b)の回転数を前記第1扱胴(69a)の回転数よりも大きい回転数とした請求項1記載の脱穀装置である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、第1扱胴(69a)において穀稈を処理して得られる被処理物の中の二番物を、更に第2扱胴(69b)において処理するため、二番穀粒の処理能率が向上する。また、第1扱胴(69a)と第2扱胴(69b)の間で扱室(66)を仕切る板材(81)を設けることで、第2扱胴(69b)で処理される二番穀粒が板材(81)に当たり、搬送方向始端部側に位置する第1扱胴(69a)の方へ流出することを防ぐため、扱室(66)の前方部における単粒率を向上させることができる。
【0010】
また、フィードチェーン(14)により搬送されながら前記第1扱胴(69a)において脱穀された後で、引き続きフィードチェーン(14)により搬送される脱穀仕切れていない穀稈が第2扱胴(69b)に達すると脱穀される。なお第1扱胴(69a)において処理された正常な穀粒が藁と連れ回ることで藁に刺さってササリ粒が発生するが、このササリ粒が揚穀筒(87)から第2扱胴(69b)に搬送され、第2扱胴(69b)で叩かれて処理されるため、その間に前記排藁の中に存在するササリ粒が回収可能となる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、更に第2扱胴(69b)の回転数を前記第1扱胴(69a)の回転数よりも大きい回転数とすることで、前方に位置する低速回転の第1扱胴(69a)により、脱穀装置(15)内に導入直後の穀桿の大部分を脱穀処理した後、後方に位置する高速回転の第2扱胴(69b)により、穂切れの処理や藁桿に介入したササリ粒や枝梗粒の枝梗を離脱させて除去でき、三番穀粒や四番穀粒が低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1には本発明の実施の形態の穀類の収穫作業を行うコンバインの左側面図を示し、図2には図1のコンバインの平面図を、図3には図1のコンバインの脱穀装置の一部切り欠き側面断面図を示す。なお、本実施の形態ではコンバインの前進方向に向かって前側と後側をそれぞれ前、後といい、左側と右側をそれぞれ左、右ということにする。
【0013】
図1ないし図2に示すコンバイン1の走行フレーム2の下部には、ゴムなどの可撓性材料を素材として無端帯状に成型した左右一対のクローラ4を持ち、乾田はもちろんのこと、湿田においてもクローラ4が若干沈下するだけで自由に走行できる構成の走行装置3を備え、走行フレーム2の前部には刈取装置6を搭載し、走行フレーム2の上部には図示しないエンジンならびに脱穀装置15、操縦席20およびグレンタンク30を搭載する。
【0014】
刈取装置6は、図示しない刈取昇降シリンダの伸縮作用により刈取装置6全体を昇降して、圃場に植生する穀稈を所定の高さで刈取りができる構成としている。刈取装置6の前端下部に分草具7を、その背後に傾斜状にした穀稈引起し装置8を、その後方底部には刈刃(図示せず)を配置している。刈刃と脱穀装置15のフィードチェーン14の始端部との間に、図示しない前部搬送装置、扱深さ調節装置、供給搬送装置などを順次穀稈の受継搬送と扱深さ調節とができるように配置している。
【0015】
コンバイン1の刈取装置6の作動は次のように行われる。まず、エンジンを始動して変速用、操向用などの操作レバーをコンバイン1が前進するように操作し、刈取・脱穀クラッチ(図示せず)を入り操作して機体の回転各部を伝動しながら、走行フレーム2を前進走行させると、刈取、脱穀作業が開始される。圃場に植立する穀稈は、刈取装置6の前端下部にある分草具7によって分草作用を受け、次いで穀稈引起し装置8の引起し作用によって倒伏状態にあれば直立状態に引起こされ、穀稈の株元が刈刃に達して刈取られ、前部搬送装置に掻込まれて後方に搬送され、扱深さ調節装置、供給搬送装置に受け継がれて順次連続状態で後部上方に搬送される。
【0016】
穀稈は供給搬送装置からフィードチェーン14の始端部に受け継がれ、脱穀装置15に供給される。脱穀装置15は、上側に扱胴69を軸架した扱室66を配置し、扱室66の下側に選別部50を一体的に設け、供給された刈取穀稈を脱穀、選別する。
【0017】
脱穀装置15に供給された穀稈は、後で詳細に説明するが、主脱穀部である扱室66に挿入され、扱室66に軸架され回転する扱胴69の多数の扱歯69c、69dと、フィードチェーン14による移送と、扱網74との相互作用により脱穀され、被処理物(穀粒や藁くず)は脱穀装置15内の選別部50の揺動棚51で受け止められ、上下前後方向に揺動する揺動棚51上を移動しながら、唐箕79からの送風を受けて風力選別され、比重の重い穀粒はシーブ53および選別網63を通過し、一番螺旋65aから、搬送螺旋(図示せず)を内蔵している一番揚穀筒65を経てグレンタンク30へ搬送され、グレンタンク30に一時貯留される。一番揚穀筒65の長手方向の軸芯上にグレンタンク30の籾排出口を設けている。
【0018】
脱穀装置15の扱室66の終端に到達した脱穀された残りの穀稈で長尺のままのものは、排藁チェーン80(図4)および排藁穂先ラグ80aに挟持されて搬送され、脱穀装置15の後部の藁用カッターに投入されて切断され、圃場に放出される。
【0019】
グレンタンク30内の底部に穀粒移送用のグレンタンク螺旋(図示せず)を設け、グレンタンク螺旋を駆動する螺旋駆動軸(図示せず)に縦オーガ18および横オーガ19からなる排出オーガを連接し、グレンタンク30内に貯留した穀粒を排出オーガの排出口からコンバイン1の外部に排出する。グレンタンク螺旋、縦オーガ螺旋(図示せず)および横オーガ螺旋(図示せず)は、エンジンの動力の伝動を受けて回転駆動され、それぞれのラセン羽根のスクリュウコンベヤ作用により貯留穀粒を搬送する。
【0020】
図4には図3の脱穀装置15内部の扱胴69付近の平面図を示し、図5には、第1扱胴69aと第2扱胴69bの関係を表した斜視図を示し、図6には図3の扱胴69付近の簡略正面図を示す。また、図7(a)には図4のA−A線矢視、図7(b)には図4のB−B線矢視の扱胴69付近の簡略図を示す。更に図8には扱胴69付近の伝動機構図を示す。
【0021】
刈取装置6で刈り取った穀稈は刈取装置6に装着された穀稈搬送、調節装置で扱深さが調節され、脱穀装置15の主脱穀部である扱室66内に挿入される。扱室66に軸架された扱胴69は、図3から図8に示すように、処理物の搬送方向始端部側の第1扱胴69aと搬送方向終端部側の第2扱胴69bに分割されており、それぞれの扱胴(69a、69b)の表面に多数の扱歯69c、69dが設けられている。そして、エンジンからの動力を伝動して駆動機構により、図6及び図8の矢印B方向に回転する。伝動機構については、後で詳細に説明する。
【0022】
扱室66に挿入された穀粒の付いた穀稈は、移動するフィードチェーン14により図3の矢印A方向に移送されながら、矢印B方向に回転する搬送方向始端部側の第1扱胴69aの扱歯69cと扱網74との相互作用により脱穀される。図3に示すように、フィードチェーン14から移送される穀稈の大部分は、搬送方向始端部側の第1扱胴69aに搬送されるが、第1扱胴69aに搬送されなかった分の穀稈は、搬送方向終端部側の第2扱胴69bへ搬送されて、第2扱胴69bの扱歯69dと扱網74との相互作用により脱穀される。そして穀稈から分離された被処理物(穀粒や藁くず)は扱網74を矢印C1方向(図6)に通過して、揺動棚51で受け止められる。
【0023】
揺動棚51は扱室66の扱網74の下方に配置した移送棚とその後方に配置した上方のシーブ53とその下方の選別網63と最後端部に配置したストローラック62から構成されている。そして揺動棚51には複数個の三角形状の選別板51aを備えており、揺動棚51はシーブ53の前方に配置されている。そして揺動棚51は扱胴69の下方に配置して二番処理物を受け止め得る構成になっている。
【0024】
扱網74(図3)の前方の領域で漏下する脱穀初期に脱粒した穀粒は単粒であり夾雑物も含んでいないのでシーブ53上で粗選別する必要が無く、直接選別網63で後述する唐箕79からの送風により風選することができ、シーブ53の負荷を軽くし、能率的な脱穀が可能となる。
【0025】
また、揺動棚51は図示しない揺動棚駆動機構の作動により上下前後方向に揺動するので、被処理物は矢印D方向(図3)に移動しながら、揺動棚51上に漏下した比重の重い穀粒は選別網63を矢印E方向に通過し、一番棚板64で集積され、一番螺旋65aから一番揚穀筒65を経てグレンタンク30へ搬送される。グレンタンク30に貯留された穀粒は、オーガ18、19を経由してコンバイン1の外部へ搬送される。
【0026】
揺動棚51の上の被処理物のうち軽量のものは、揺動棚51の揺動作用と唐箕79のファン79aによる送風に吹き飛ばされて揺動棚51からシーブ53に向けて矢印D方向に移動し、ストローラック62の上で大きさの小さい二番穀粒は矢印G方向に漏下して二番棚板85に集められ、二番螺旋86で二番揚穀筒87へ搬送される(図3)。
【0027】
二番穀粒(二番物ということがある)は、正常な穀粒、枝梗粒、藁くずおよび藁くずの中に正常な穀粒が刺さっているササリ粒などの混合物であり、二番揚穀筒87の中を二番揚穀筒ラセン86により揚送されて、図4(又は図6)の矢印X方向に搬送され、第2扱胴69bの上方へ放出される。第2扱胴69bは駆動装置(図8)により矢印Bに回転する。二番穀粒は第2扱胴69bに植設してある多数の扱歯69dに衝突しながら矢印I方向(図3)に進行する間に二番穀粒の分離と枝梗粒の枝梗の除去を行い、被処理物の一部は第2扱胴69bの下方に設けられた扱網74を通り抜けて選別室50に漏下し、被処理物の大部分は揺動棚51からシーブ53方向に送られ、穀粒はシーブ53と選別網63を通り、一番螺旋65aに集められる。
このように二番物を揺動棚51上に回収してシーブ53による再処理をすることにより、穀粒と藁くずとの分離が良好になる。
一方、扱室66の終端に到達した被処理物の中の脱穀された穀稈で長尺のままのものは、排藁処理室95に投入される。
【0028】
そして、図3及び図4に示すように、処理物の搬送方向始端部側の第1扱胴69aと搬送方向終端部側の第2扱胴69bの間、すなわち扱胴69の分割部には、扱室66を前後に二分して仕切る処理物の搬送方向とは直交する方向に平面部を有する板材81を設けている。なお、扱胴69付近の簡略正面図を示す図6では、第1扱胴69aと第2扱胴69bの関係を分かり易くするために、板材81の図示を省略しているが、図7(b)には板材81を斑点部分として示している。
【0029】
通常、扱室66の側部には、二番処理胴を軸架した二番処理室を配しており、二番物にササリ粒が発生すると、そのササリ粒が扱胴69の前方側へ流出することがある。扱胴69の前方の領域で漏下する脱穀初期に脱粒した穀粒は単粒であり夾雑物も含んでいないが、このように二番物が扱胴69の前方側へ流出すると、単粒率が向上しない。
【0030】
しかし、本構成によれば、従来の二番処理胴に相当する第2扱胴69bを、第1扱胴69aの後方に配置しており、更に第1扱胴69aと第2扱胴69bの間に板材81を設けることで、第2扱胴69bで処理される二番穀粒が板材81に当たり、搬送方向始端部側に位置する第1扱胴69aの方へ流出することを防ぐため、扱室66の前方部における単粒率を向上させることができる。そして、扱室66の前方の下部から選別部50の揺動棚51に落ちていた二番物をなくすことが可能になる。また、本構成を採用することにより、第1扱胴69aにおいて処理した被処理物の中の二番物を、更に第2扱胴69bにおいて処理するため、二番穀粒の処理能率が向上する。また、従来の二番処理胴を有する構成と比べて、二番処理胴がないことで脱穀装置15の横幅方向がコンパクトな構成になる。
【0031】
また、第2扱胴69bの回転数を第1扱胴69aの回転数よりも大きくしても良い。
例えば図8に示すように、プーリ93に、エンジンから駆動力の入力がある場合は、プーリ93に伝動された動力によって駆動軸97が駆動して、第2扱胴69bは矢印B方向に回転する。そして、駆動軸96と駆動軸97の間には、ギア82、83、84が設けられており、それぞれの歯車が噛合していることでエンジンからの動力が伝達される。これらのギアは、ギア83、ギア82、ギア84の順に歯車の径が大きくなり、歯車の歯数が多くなるので、駆動軸97と駆動軸96の回転速度はギア比に応じて減速される。すなわちギア84に連結している駆動軸96は、ギア83に連結している駆動軸97よりも低速で回転し、ギア83に連結している駆動軸97は、ギア84に連結している駆動軸96よりも高速で回転する。したがって、第1扱胴69aよりも第2扱胴69bの方が回転数が大きくなる。なお、図8の(E)で示すように、プーリ92にエンジンから駆動力の入力をしても良い。
【0032】
本構成を採用することにより、扱室66に導入直後の穀桿の大部分を第1扱胴69aにより脱穀処理した後、後方に位置する高速回転の第2扱胴69bにより穂切れの処理や藁桿に介入したササリ粒や枝梗粒の枝梗を離脱させて枝梗を取り除く枝梗処理を行うことができ、三番穀粒や四番穀粒が低減される。
【0033】
更に、図3から図6に示すように、第2扱胴69bの直径を第1扱胴69aの直径よりも大きくした構成としても良い。第2扱胴69bは、二番揚穀筒87から搬送される二番粒の処理を行うが、二番粒中のササリ粒も叩いてササリ粒の除去も行う。すなわち、フィードチェーン14に搬送されながら第1扱胴69aにより脱穀処理された穀稈は、引続きフィードチェーン14によって搬送終端部側の第2扱胴69bの方へ搬送されて脱穀されなかった穀稈を脱穀する。
【0034】
また、第1扱胴69aが回転するうちに藁と正常な穀粒が連れ回ることで生じる正常な穀粒が藁に刺さった状態のササリ粒が二番揚穀筒87から第2扱胴69bに搬送されてくるので、このササリ粒が第2扱胴69bにおいて叩かれて処理されるため排藁の中に存在するササリ粒が回収可能となる。また第2扱胴69b部分で生じたササリ粒も第2扱胴69bにおいて叩かれて回収される。
【0035】
この場合に搬送される排藁の長さは様々であるが、長いものは、第2扱胴69bに巻き付く場合もある。第2扱胴69bの直径が比較的小さいとフィードチェーン14から外れた排藁が第2扱胴69bに巻き付きやすいが、本構成を採用することにより、第2扱胴69bの直径を大きくすることによって排藁が巻き付きにくくなり、第2扱胴69bへの排藁の巻き付きを防止する。また、第2扱胴69bの直径が大きいことで、搬送後端部側の周速を増大させて穀粒の脱穀処理能力を増大させることができる。また、第1扱胴69aの直径を小さくすることで、搬送方向始端部側の第1扱胴69aに隣接している操縦席20のスペースが確保できる。
【0036】
また、図6に示すように、第2扱胴69bの直径を第1扱胴69aの直径よりも大きくした構成において、第1扱胴69aと第2扱胴69bの下方の位置を水平方向の同一接線(P)上に設定しても良い。すなわち、第2扱胴69bと第1扱胴69aの下端部(最下位置)を同じ高さに配置した構成である。
【0037】
本構成を採用することにより、第1扱胴69aよりも直径が大きい第2扱胴69bの下方の位置を接線(P)上に設定することで、すなわち第2扱胴69bの下端部は接線(P)よりも上方には位置しないため、第2扱胴69bと第1扱胴69aを備えた扱室66の上限変化をなくすことができる。
【0038】
また、第2扱胴69bのフィードチェーン14側の外周部(ラインS)の方が第1扱胴69aのフィードチェーン14側の外周部(ラインT)よりも上方に位置するため、フィードチェーン14から穀稈が投入された場合に第2扱胴69bに引き込まれにくい。フィードチェーン14から投入される穀桿は、まず第1扱胴69aにおいてほぼ脱穀処理されて第2扱胴69bに搬送される時点では排藁状態となる。したがって、第2扱胴69bに搬送される際に穀稈が引き込まれると、藁屑が発生してしまう。一方、仮に第1扱胴69aに穀稈が引き込まれても第1扱胴69aは選別部50の揺動棚51の前方に位置するため選別工程に余裕があり、穀粒を回収可能である。
【0039】
本構成によれば、フィードチェーン14から搬送される穀桿と扱胴69との距離が第1扱胴69a(距離La)よりも第2扱胴69b(距離Lb)の方が長いため(Lb>La)、排藁は第2扱胴69bに引き込まれにくい。したがって、藁の引き込まれを防止することができる。
【0040】
更に、第1扱胴69aと第2扱胴69bのフィードチェーン14側の左右どちらかの端部の位置を鉛直方向の同一接線上に配置しても良い。図6では、コンバイン1の正面から見て右端部にフィードチェーン14が位置しているので、右端部の位置を揃えて接線(Q)を一致させた場合を示している。
【0041】
第1扱胴69aと第2扱胴69bの二つの扱胴69の右端部もしくは左端部の位置がずれていると、フィードチェーン14から扱室66内へ入ってくる穀稈が扱胴69の搬入口で大きく曲がることになり、いわゆる穀稈の扱深さが変わってしまう。例えば第2扱胴69bが図6の一点鎖線で示すU位置にある場合は丸で囲んだVの部分の扱ぎ残しが発生してしまう。
しかし、本構成を採用することにより、フィードチェーン14から搬送される穀稈が第1扱胴69aと第2扱胴69bの側方の同じ位置に搬入されるため、第1扱胴69aと第2扱胴69bにおける扱ぎ深さが一定に保て、扱ぎ残しが発生することもない。また、このように同じ位置に搬入されるため、フィードチェーン14の形状を複雑にしなくても、直線状の簡易な形状で構成できるので、脱穀装置15の構成を簡素化でき、経済的である。
【0042】
更に、図4から図7に示すように、第2扱胴69bの処理物の搬送方向終端部で扱室66の出口付近に第2扱胴69bの回転方向と直交する方向に平面部を有するガイド板88を設けても良い。
図6に示すように、第2扱胴69bが矢印B方向に回転することで上方へ搬送される処理物がガイド板88に当たり、矢印C2方向から矢印C1方向に落下して揺動棚51上に漏下する。ガイド板88がない場合は、処理物がそのまま第2扱胴69bの周囲を一回転して第2扱胴69b上に滞積し、処理物中の穀粒が藁に混入してササリ粒が発生してしまい、三番穀粒、四番穀粒が発生する場合がある。
しかし、本構成を採用することにより、脱穀処理の効率が向上し、三番穀粒や四番穀粒の発生を防ぐことが可能となる。
【0043】
また、図4に示すように、板材81の内部に第1扱胴69aと第2扱胴69bの駆動伝動部を収納した構成としても良い。先に説明した図8に示すギア82、83、84などの伝動機構を板材81の内部に設ければ、扱胴69周辺の構造がコンパクト化され、脱穀装置15全体の構造もコンパクトになる。また、本構成を採用することにより、駆動伝動部の構成部品であるギア82、83、84などが板材81の柱や梁、すなわち骨のような役割をするため、板材81の強度も確保される。
【0044】
また、図9には本発明の別実施形態のコンバインの脱穀装置の一部切り欠き側面断面図を示し、図10には図9のコンバインの脱穀装置15内部の扱胴69付近の平面図を示し、図11には図10のA1−A1線矢視の処理胴70付近の立面断面図を示し、図12にはB1−B1線矢視の排塵処理胴71付近の立面断面図を示す。なお、図11、図12においては板材81の図示を省略している。
本実施形態は、扱胴69の下部に処理胴70を備えた処理室67及び排塵処理胴71を備えた排塵処理室68を設けている点で、図3から図6などに示したコンバインと相違するが、その他の構成は同様であるので、共通する部分の説明は省略する。
【0045】
本実施形態によれば、第1扱胴69aと第2扱胴69bの下方には扱網74を介して処理胴70が設けられており、更に、処理胴70の下方には処理胴受け網75が設けられている。そして第1扱胴69aと第2扱胴69bで処理された穀粒が扱網74を通って処理胴70側に流入し、矢印J方向に回転する処理胴70に植設してある多数の扱歯70aに衝突しながら図9の矢印I方向に搬送され、処理胴受け網75を通り抜けて矢印R方向(図11)に落下し、選別室50に漏下する。
【0046】
また、二番螺旋86で二番揚穀筒87へ搬送された二番物は二番揚穀筒螺旋87aにより矢印Y方向(図11)に搬送されて処理室67内に入り、処理胴70において処理され、処理胴70の下方に設けられた処理胴受け網75(図11)を通り抜けて矢印R方向に落下し、選別室50に漏下して被処理物の大部分は揺動棚51からシーブ53方向に送られ、穀粒はシーブ53と選別網63を通り、一番螺旋65aに集められる。
【0047】
一方、二番螺旋86で二番揚穀筒87へ搬送された二番物は矢印Z方向にも搬送されて、第2扱胴69bにおいて二番穀粒の分離と枝梗粒の枝梗の除去が行われる。そして二番揚穀筒螺旋87aの上方に羽根87bを設けると、羽根87bが回転することで、被処理物は矢印Z方向に流れやすくなり、すなわち被処理物は処理胴70側よりも第2扱胴69b側の方に多く流れる。そして、被処理物は、先に説明したように板材81に当たり、搬送方向始端部側の第1扱胴69aの方へは流出せずに揺動棚51上に落下する。また、第2扱胴69bで処理された穀粒の残りの一部は、第2扱胴69bから扱網74を通って処理胴70において処理され、処理胴70の下方に設けられた処理胴受け網75を通り抜けて矢印R方向に落下し、選別室50に漏下し、被処理物の大部分は揺動棚51からシーブ53方向に送られ、穀粒はシーブ53と選別網63を通り、一番螺旋65aに集められる。
このように二番物を揺動棚51上に回収してシーブ53による再処理をすることにより、穀粒と藁くずとの分離が良好になる。
【0048】
扱室66の被処理物搬送方向終端部に到達した被処理物の中で、藁くずなど短尺のものは、排塵処理室入口68aから矢印A2(図10)方向に投入されて、扱室66からの取り込みを良好にする螺旋71bの作用により排塵処理室68に入り、排塵処理室68では回転する排塵処理胴71の処理歯71aにより矢印K方向(図10)に搬送されながら処理される。なお、排塵処理胴71の上手側に螺旋71bが設けられ、排塵処理胴71の下手側に処理歯71aが設けられている。
【0049】
排塵処理室68に入った少量の穀粒を含む藁くずを主体とする被処理物の中の漏下物(穀粒)は受け網76(図9)から揺動棚51上に漏下し、揺動棚51に設けられたストローラック62に誘導されて二番棚板85から二番揚穀筒87を経由して第2扱胴69bに送られる。
なお、本実施形態によれば、図11、図12に示すように、扱胴69の下部前方側に処理胴70を、後方側に排塵処理胴71を設けている。そして、図9及び図10に示すように、処理胴70と排塵処理胴71は同軸上に位置し、これら処理胴70と排塵処理胴71の駆動は図示しないがエンジンから駆動力をプーリを介して行われる。
【0050】
そして、図9に示すように、脱穀装置15の後部に横断流ファン91を設け、排塵処理室68を含む脱穀装置15内で発生する排塵のうち、比重の軽い藁くず、枝梗および塵埃を含む空気を横断流ファン91の回転による送風で吸引し、横断流ファン出口から矢印L方向へ吹き出して、コンバイン1の外部へ放出する。
排塵処理室68から揺動棚51の終端部に矢印M(図9)のように落ちた排塵のうち二番穀粒、三番穀粒など小径で比重の重いものは、揺動棚51の終端部のストローラック62あるいはシーブ53を矢印G方向へ通過して二番棚板85に漏下し、再び第2扱胴69bにおいて処理される。
【0051】
二番揚穀筒87の第2扱胴69b側入り口部に図11に点線で示すフタ87bを設けると、被処理物は第2扱胴69b側には流れず、処理胴70において処理される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の脱穀装置はコンバインなどの収穫した穀粒の処理装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態の穀類の収穫作業を行うコンバインの左側面図である。
【図2】図1のコンバインの平面図である。
【図3】図1のコンバインの脱穀装置の一部切り欠き側面断面図である。
【図4】図3の脱穀装置内部の扱胴付近の平面図である。
【図5】図3の第1扱胴と第2扱胴の関係を表した斜視図である。
【図6】図3の扱胴付近の簡略正面図である。
【図7】図7(a)は図4のA−A線矢視、図7(b)は図4のB−B線矢視の扱胴付近の簡略図である。
【図8】図1のコンバインの扱胴付近の伝動機構図である。
【図9】本発明の別実施形態のコンバインの脱穀装置の一部切り欠き側面断面図である。
【図10】図9のコンバインの脱穀装置内部の扱胴付近の平面図である。
【図11】図9のA1−A1線矢視の処理胴付近の立面断面図である。
【図12】図9のB1−B1線矢視の排塵処理胴付近の立面断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 コンバイン 2 走行フレーム
3 走行装置 4 クローラ
6 刈取装置 7 分草具
8 穀稈引き起こし装置 14 フィードチェーン
15 脱穀装置 18 縦オーガ
19 横オーガ 20 操縦席
30 グレンタンク 50 選別部
51 揺動棚 51a 選別板
53 シーブ 62 ストローラック
63 選別網 64 一番棚板
65 一番揚穀筒 65a 一番螺旋
66 扱室 67 処理室
68 排塵処理室 68a 排塵処理室入口
69 扱胴 69a 第1扱胴
69b 第2扱胴 69c 第1扱胴の扱歯
69d 第2扱胴の扱歯 70 処理胴
70a 処理歯 71 排塵処理胴
71a 処理歯 71b 螺旋
74 扱網 75 処理胴受け網
76 受け網 79 唐箕
79a 唐箕ファン 80 排藁チェーン
80a 排藁穂先ラグ 81 板材
82、83、84 ギア 85 二番棚板
86 二番螺旋 87 二番揚穀筒
87a 二番揚穀筒螺旋 87b 羽根
87c フタ 88 ガイド板
91 横断流ファン 92、93 プーリ
95 排藁処理室 96、97 駆動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀桿から穀粒を分離処理するための扱歯(69c、69d)を設けた扱胴(69a、69b)を軸架した扱室(66)と、
前記扱胴(69a、69b)の穀稈の搬送始端部から搬送終端部に穀稈を供給するフィードチェーン(14)と、
扱室(66)を通過した穀稈を処理して得られる被処理物中の正常な穀粒や藁の中に正常な穀粒が刺さっているササリ粒を含む混合物である二番物を再び扱胴(69a、69b)の搬送方向終端部側に搬送する揚穀筒(87)とを設けた脱穀装置において、
前記扱胴(69a、69b)は、被処理物の搬送方向始端部側に位置する第1扱胴(69a)と、被処理物の搬送方向終端部側に位置し、前記揚穀筒(87)から搬送される前記二番物を処理するとともにフィードチェーン(14)により搬送されながら前記第1扱胴(69a)において脱穀された後で引き続きフィードチェーン(14)により搬送される穀稈中の脱穀されなかった穀稈を脱穀すると同時に穀粒に藁が刺さったササリ粒を処理する第2扱胴(69b)からなり、
前記第1扱胴(69a)と第2扱胴(69b)の間で扱室(66)を仕切り、該第1扱胴(69a)及び第2扱胴(69b)の軸と直交する方向に平面部を有する板材(81)を設けたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記第2扱胴(69b)の回転数を前記第1扱胴(69a)の回転数よりも大きい回転数としたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−319033(P2007−319033A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150349(P2006−150349)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】