説明

脱穀装置

【課題】 排藁搬送装置のメンテナンス性の向上および作動円滑化のための注油構造の簡素化。
【解決手段】 扱室(2)のフィードチェン(5)側とは反対側側部に、排藁搬送装置(7)への排藁入力軸(17)を扱胴軸芯と略平行に架設すると共に穀稈搬送方向下手側に延出して、この延出端部を排藁搬送装置の中間部位若しくはその終端部近くに配設される排藁伝動軸(21)に連動させ、排藁搬送装置(7)は排藁入力軸(17)を回動支点として上下に揺動開閉可能に構成してあると共に、この排藁搬送装置に潤滑油を供給するための注油ノズル(12)を排藁搬送装置の回動軸芯(P)近くに配置して、排藁搬送終端部付近に注油すべく構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに搭載する脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に開示されているように、脱穀装置の後部に配置された脱穀済の排藁を搬出処理する排藁搬送装置には、回転する搬送チェンに潤滑油を供給するための注油装置が設けられ、注油ノズルを排藁搬送チェンの始端部に臨ませて注油するようにした構成のものがある。
【特許文献1】特開2002−305958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
最近、メンテナンス性を高めるため、排藁搬送装置も扱胴カバーと共に揺動開閉する手段が採用されている。このような構造によると、揺動開放時には搬送チェンの始端側が上方に大きく移動するため、搬送チェンの始端側に注油ノズルを臨ませたものでは、刈取部側から延出させた注油パイプを大きく伸縮移動させなければならず、注油パイプが途中から折れて注油詰まりを生じさせたり、円滑な潤滑油の流れを阻害する問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上述した課題を解決するために、次の如き技術手段を講じた。
すなわち、一側にフィードチェン(5)を張設した扱室(2)の後方に脱穀処理後の排藁を後方に向けて搬出する排藁搬送装置(7)を設け、扱室(2)のフィードチェン(5)側とは反対側の側部に該排藁搬送装置(7)へ伝動する排藁入力軸(17)を扱胴軸芯と略平行に配置し、該排藁入力軸(17)の後端部を排藁搬送装置(7)の中間部若しくは終端部近くに駆動入力する排藁伝動軸(21)に連動させ、前記排藁搬送装置(7)を排藁入力軸(17)の軸芯回りに上下に揺動開閉可能に軸支し、該排藁搬送装置(7)に潤滑油を供給するための注油ノズル(12)を前記排藁入力軸(17)の軸芯の後方延長線(P)近くに配置し、該注油ノズル(12)から排藁搬送装置(7)の排藁搬送終端部付近に注油する構成としたことを特徴とする脱穀装置としたものである。
【0005】
排藁搬送装置7への動力伝達は、扱室の反フィードチエン側に配置した排藁入力軸17、排藁伝動軸21を経て動力伝達される。
排藁搬送装置7は、排藁入力軸17を回動支点として上方に揺動開放することができ、排藁の詰まり等によるトラブル解消を簡単に行うことができる。
【0006】
排藁搬送装置への注油は、揺動開閉支点近くに配置された注油ノズルから排藁搬送終端近くに注油されることになり、排藁搬送チェンが終端部位から始端側まで移動する間に潤滑油の充分な浸透が可能となる。また、排藁搬送装置を上方に揺動開放しても、注油ノズル12に連通する注油パイプ13の大きな移動がなくなり、注油パイプが折れて円滑な潤滑油の流れを阻害することがなくなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、排藁搬送装置7が、該排藁搬送装置7に動力伝達する排藁入力軸17の軸芯回りに上下に揺動開閉する構成であるから、簡単な動力伝達構成でありながら、この排藁搬送装置7を上方に揺動開放することができるので、メンテナンスや排藁詰まり等によるトラブル解消が容易にできる。
【0008】
特に、排藁搬送装置7に潤滑油を供給するための注油装置は、その注油ノズル12を排藁搬送装置7の揺動開閉支点近くに配置するため、排藁搬送装置7を上方に揺動開放しても、注油パイプの大きな移動がなく、円滑な潤滑油の流れを確保でき、注油パイプの配策も簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、図1に示すコンバインの構成について述べる。
走行クロ−ラWを具備する車体上には、前部に昇降可能な刈取部Hを、後部に脱穀装置(脱穀部)Dを搭載している。刈取部Hの横側部には運転部を備えたキャビンCが設置され、その後方にはグレンタンクGが装備されている。
【0010】
つぎに、脱穀装置Dの構成につき説明する。扱胴1を内装軸架した扱室2の下半周部に沿って受網3を張設している。4は扱室2の上方部を覆う扱胴カバ−であって、扱胴軸方向に平行な軸芯Q回りに揺動開閉可能に構成している。
【0011】
扱室2の扱口側には穀稈を挟持搬送するフイ−ドチェン5とこの上側に対設する挟持レ−ル5aを配設している。この挟持レ−ル5aは扱胴カバ−4側に装着して該カバ−と共に揺動開閉する構成である。扱室2の反フィードチェン側には、前側の2番処理胴6aと後側の排塵処理胴6bとからなる処理胴6が並設軸架されている。
【0012】
また、扱室2の後方には、脱穀後の排藁の株元側と穂先側の2箇所を挟持して後方に搬送する搬送チェン7a,7bからなる排藁搬送装置7が配設され、前記フィードチェン5から送られてくる排藁を受け取って排藁カッターまで搬出処理するようになっている。
【0013】
処理胴6の処理室上方空間部には、前記排藁搬送装置7への排藁入力軸17を配置して架設してあり、扱室2の前側板25、中側板26及び後側板27を貫通して軸受保持させた構成としている。そして、この排藁入力軸17から排藁搬送装置7への駆動系は、扱室2の後側板27に支持させたベベルギヤケース19内のベベルギヤ機構18、ベベルギヤケース19より斜め後方に延出する排藁伝動軸21及び排藁搬送装置の中間部に設けた排藁駆動スプロケット8,8を介して排藁搬送チエン7a,7bを回転駆動すべく連動連結している。排藁搬送装置7をこの中間部から駆動するので、始端側から駆動するものに比べ、後側板より後方部に開放空間を構成することができ、排藁の詰りが防止できフィードチェンから排藁搬送装置始端への引継ぎが良好に行える。
【0014】
ベベルギヤケース19は、扱室の後側板27に支承させた軸受ケース20に対し排藁入力軸17の軸芯(後方延長線)P回りに回動自在に軸受保持させている。軸受ケース20は後側板27に対し締付ボルト等で一体的に締付固定した構成としている。
【0015】
前記排藁入力軸17、扱胴1の扱胴軸30及び処理胴6の処理胴軸31は、前後方向に沿う同一方向軸とし、側面視で排藁入力軸17が最も上方に位置し、扱胴軸30は前記排藁入力軸17と下方の処理胴軸31との上下中間に位置するよう配置している。そして、これら排藁入力軸17、扱胴軸30及び処理胴軸31は、扱室の前側板25より前方側に突設し、排藁入力軸17の前端に設けた排藁入力プーリ22からカウンタ軸32プーリ33を介して処理胴軸プーリ34をベルト35伝動し、カウンタ軸32から別の伝動装置36を介して扱胴軸30を回転駆動すべく連動構成している。
【0016】
前記排藁入力軸17によって扱胴軸とは別に排藁搬送装置14を直接駆動するので、扱胴の負荷が増大して扱胴の回転数が低下しても排藁搬送装置の駆動力が低下することがなくなる。
【0017】
前記ベベルギヤケース19から前部排藁支持アーム38を突設し、排藁入力軸17の後方延長線上に支持させて設けた支軸39から後部排藁支持アーム40を突設し、前部排藁支持アーム38は中間支持部材41を介して排藁搬送フレーム42に連結保持させ、後部排藁支持アーム40は支持ステー43を介して排藁搬送フレーム42の中間近くに連結保持させてあり、前部排藁支持アーム38がベベルギヤケース19と一体となって前記排藁入力軸芯P回りに上下回動し、後部排藁支持アーム40が支軸39回りに上下回動する構成としている。前部排藁支持アーム38の下方向き折曲下端部は、扱室後側板を補強する脱穀側補強フレーム44上に載せて支持するようにし、且つ、該補強フレーム43側から上向きに突設する係止突起45に係脱自在に嵌合させて位置決め支持する構成としている。
【0018】
なお、排藁搬送装置7の扱胴カバー4の開閉による吊り下げ支持構成については、図5に示すように、前部排藁支持アーム38を長穴48aを有する支持プレート48で扱胴カバー4と連結し、扱胴カバー4の上方への揺動開放によって排藁搬送装置を吊り上げて開放する構成としている。
【0019】
要するに、扱胴カバー4を扱胴カバー支持用ダンパ49を介して軸芯Q回りに揺動開放すると、排藁搬送装置7が排藁入力軸17の軸芯P回りに回動し、支持プレート48の長穴48a分だけ遅れて開放し始め、閉鎖時は排藁搬送装置よりあとに扱胴カバーが閉鎖されるようになっている。なお、この開閉時の排藁搬送装置7は、始端側が上下方向に大きく移動するが、終端側は回動軸芯Pに近いため、上下の動きは極めて小さい
注油装置は、図示しない注油ポンプに接続した可撓性の注油パイプ13と、この注油パイプに連通する注油ノズル12とからなり、そして、注油ノズル12は、図6に示すように、排藁搬送チェン7a,7bの終端側で、排藁搬送装置の揺動開閉支点である排藁入力軸17の軸芯P近くに配置すると共に、チェンレール11の後端部付近上方から注油すべく臨設し、排藁搬送フレーム42から突設する支持部材14に取り付けた構成としている。注油パイプ13は、脱穀機体フレーム23に連結したタンク側補強フレーム24に沿わせて配管支持する構成としている。
【0020】
株元側排藁搬送チェン7b上に配置する注油ノズル12は、図7に示すように、搬送チェン終端のテンションローラ9に向けて注油するよう配置構成することもできる。穂先側排藁搬送チェン7a側もテンションローラ9に向けて注油するものであってもよい。また、上記チェンレール11の後端付近への注油に加えて、テンションローラ9を支持するテンションスライド軸10aとこのスライド軸を摺動自在に嵌合保持する軸受筒体10bとからなるテンション摺動部10にも注油できるように構成しておくとよい。
【0021】
図10、図11及び図12は、排藁搬送チェンのテンション構造の他の実施例を示すもので、テンションスライド軸10aの中間部の一定範囲L間を切り欠いて小径の段差を設けてグリース溜り部Sとし、グリースの潤滑性を高めるように構成している。従来は軸受筒体10bに対するテンションスライド軸10aの摺動抵抗が大きく、グリースが枯渇してテンションローラが動かなくなる問題があったが、本例では、上記のようなグリース溜り部を設けることによって解消することができた。また、軸受筒体10bにはスライド軸のグリース溜り部Sに通ずるグリースニップルを設けておくとグリースの注入容易化が図れる。図中15はテンションスプリング、16はテンション調整ボルトで、チェンの伸びに伴いその調整ボルト16を回してテンション調節する。
【0022】
前記テンションローラ9は、従来では静音化のために鉄製ローラの外周部に樹脂材を埋め込んで構成するものであったが、加工工数がかかりコスト高となっている。本例では、図13に示すように、従来の樹脂材に代えて、ローラの外周部2箇所に環状の切欠溝9a,9aを設けると共に、この切欠溝にOリング9b,9bを嵌め込み構成するようにしたもので、静音化を維持しながら、加工工数がかからず、製作容易でコストダウンとなる。
【0023】
扱室2の下側には揺動可能な揺動選別装置が設けられ、更に、その下方には選別方向の上手側から順に、唐箕50と、1番移送螺旋51と、2番移送螺旋52と、その上方に吸引排塵ファン53を設けて選別室を構成している。
【0024】
なお、1番揚穀筒54は1番移送螺旋51で回収された穀物を揚送してグレンタンクG内に収容する。また、2番揚穀筒55は2番移送螺旋52で回収された2番物を2番処理胴6aの室内へ還元するようになっている。
【0025】
そして、前記揺動選別装置は、扱室からの脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別する構成であり、選別方向上手側から移送棚56、チャフシーブ57、ストローラック58の順に配置し、且つ、前記チャフシーブ57の下方にグレンシーブ59を配置して設け、前記唐箕50及び吸引排塵ファン53による選別風と揺動との共同作用によって扱室2から漏下してきた処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別処理するように構成している。
【0026】
図14は、走行フレームの構成例を示す側面図で、走行フレーム60のエンジンEを搭載する位置より後部位置にはグレンタンクGへの動力伝達用伝動ケースを設置する支持ステー61を上方に突設させ一体的に支持させている。そして、支持ステー61上には、図15、図16及び図17に示すように、ギヤ伝動機構を内装したグレンタンクGへの動力伝達用伝動ケース62を設置し、ボルト63等で締付固定している。エンジン出力プーリ64、伝動ベルト65、テンションプーリ66、入力プーリ67、伝動ケース62に内装軸架せる入力軸68、ベベルギヤG1,G2、出力軸69、出力プーリ70、ベルト71、テンションクラッチプーリ72、伝動プーリ73、伝動軸74等の動力伝達経路を経てグレンタンク底部の穀粒搬送螺旋75の軸76(図19参照)を駆動するよう連動構成している。
【0027】
テンションクラッチプーリ72は、これを軸支するテンションアーム77を前記支持スレー61にスイング可能に枢着支持してあり、クラッチプーリ72をベルト71に押し付けてクラッチ「入」とし、クラッチプーリ72をベルト71から離間させてクラッチ「切」とするよう操作連動機構78を介して連動構成している。また、図18に示すように、前記テンションプーリ66においても、このテンションアーム79を支持ステー61に対し揺動可能に枢着し、伝動ベルト65を常時張り状態に押圧保持させている。テンションプーリ66による常時張り状態でのベルトテンションライン下には防護体80を設けることにより、防護体80の下方に位置するラジエータホース81などの破損を防ぐように構成している。つまり、この防護体によってベルト切損時の二次破損を未然に防止する構成としている。
【0028】
また、図15に示すように、グレンタンクGは、後部の揚穀オーガ83側の縦軸芯Yを回動支点として内外に揺動開閉する構成になっており、このグレンタンクの前端側(エンジン側)で脱穀部側に面した部分には機体に対するロック及びロック解除自在の係脱ロック部が設けられている。
【0029】
グレンタンクの上記係脱ロック部では、作業中にロックが外れてタンクが外方に開く場合があった。このタンクのロック外れを防止するため、本例では、図19及び図20に示すように、走行フレーム60上のタンクスライド部84の上側に、二次的にタンクのロック外れを防止するロックピン85を設ける。このロックピン85はグレンタンクロック用の上下方向規制の規制部材86に取り付けた構成としている。ロックピンを抜き差しするだけの簡単な構成にて、ロックが外れかかった時にタンクの開きを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】コンバインの側面図
【図2】脱穀装置の側断面図
【図3】脱穀装置の平面図
【図4】脱穀装置の要部の正面図
【図5】同上要部の正面図
【図6】排藁搬送装置の平面図
【図7】排藁搬送装置の一部の平面図
【図8】穂先側排藁搬送装置の側面図
【図9】株元側排藁搬送装置の側面図
【図10】排藁テンション支持構造を示す側面図
【図11】同上切断背面図
【図12】同上要部の側面図
【図13】テンションローラの断面図
【図14】走行フレームの要部の側面図
【図15】グレンタンク及び動力伝達経路を示す平面図
【図16】グレンタンクへの動力伝達装置を示す平面図
【図17】同上要部の背面図
【図18】同上要部の側面図
【図19】グレンタンクの正面図
【図20】同上要部の側面図
【符号の説明】
【0031】
1 扱胴 2 扱室
5 フィードチェン 7 排藁搬送装置
12 注油ノズル 13 注油パイプ
17 排藁入力軸 21 排藁伝動軸
P 排藁入力軸芯(後方延長線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側にフィードチェン(5)を張設した扱室(2)の後方に脱穀処理後の排藁を後方に向けて搬出する排藁搬送装置(7)を設け、扱室(2)のフィードチェン(5)側とは反対側の側部に該排藁搬送装置(7)へ伝動する排藁入力軸(17)を扱胴軸芯と略平行に配置し、該排藁入力軸(17)の後端部を排藁搬送装置(7)の中間部若しくは終端部近くに駆動入力する排藁伝動軸(21)に連動させ、前記排藁搬送装置(7)を排藁入力軸(17)の軸芯回りに上下に揺動開閉可能に軸支し、該排藁搬送装置(7)に潤滑油を供給するための注油ノズル(12)を前記排藁入力軸(17)の軸芯の後方延長線(P)近くに配置し、該注油ノズル(12)から排藁搬送装置(7)の排藁搬送終端部付近に注油する構成としたことを特徴とする脱穀装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2008−271845(P2008−271845A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118787(P2007−118787)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】