説明

脱穀装置

【課題】ささり粒回収室内での扱ぎ残しされたささり粒の除去性能の向上並びに回収効果の高揚を図る。
【解決手段】扱胴(5)を軸架した扱室(3)の終端に排塵口(8)を開口し、排塵口(8)よりも後方の位置にささり粒を回収するささり粒回収室(9)を設け、ささり粒回収室(9)内には、外周面に単数又は複数の切欠溝(12)を形成した数個の溝付扱歯(11)を配設し扱胴(5)と共に回転する4番処理胴(10)を軸架する。溝付扱歯(11)を4番処理胴(10)の軸芯方向に対して傾斜させて設ける。溝付扱歯(11)の切欠溝部(12)には、この回転方向前面部に凹凸部(12a)を形成する。4番処理胴(10)の外周面上に、前記溝付扱歯(11)と、4番処理胴(10)の軸芯方向に対して所定角度に傾斜させて設けた板体からなるソリッド扱歯(13)とを、円周方向に交互に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脱穀処理後の排藁中に混入するささり粒を扱き落として回収する4番処理胴を備えた脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、前側板と中側板との間に形成した扱室の後側には、中側板と後側板との間においてささり粒回収室を設け、このささり粒回収室内の後端部まで扱室内の扱胴を延長させて設けた構成の脱穀装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−312733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ささり粒の処理作用を行う回収室内では、扱胴の延長端部に設けられた扱歯が中抜きされた通常の山型扱歯であるため、ささり粒をしごき落す効果が少なく、回収効果もあまり期待できないものであった。
【0005】
本発明の課題は、ささり粒の除去性能の向上並びに回収効果の高揚を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
【0007】
すなわち、請求項1記載の発明は、扱胴(5)を軸架した扱室(3)の終端に排塵口(8)を開口し、該排塵口(8)よりも後方の位置にささり粒を回収するささり粒回収室(9)を設け、このささり粒回収室(9)内には、外周面に単数又は複数の切欠溝(12)を形成した数個の溝付扱歯(11)を配設し前記扱胴(5)と共に回転する4番処理胴(10)を軸架したことを特徴とする脱穀装置とする。
【0008】
扱室(3)内を通過する穀稈は扱胴(5)の回転によって脱穀処理され、扱室(3)後部のささり粒回収室(9)内では、脱穀処理後の排藁中に混入するささり粒が強制回転する4番処理胴(10)の溝付扱歯(11)により叩き落とされる。
【0009】
特に、この溝付扱歯(11)による場合は、穂ごと切欠溝部(12)に挟み込んでしごくようになり、ささり粒および扱ぎ残り粒の除去作用が確実に行える。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記溝付扱歯(11)を4番処理胴(10)の軸芯方向に対して傾斜させて設けたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置とする。
【0011】
排藁を挟んでのしごき作用がより確実に行え、扱歯(11)の傾斜によってしごき落されたささり粒が後方に跳ね飛ばされて下方の揺動選別棚上へ広く分散される。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記溝付扱歯(11)の切欠溝部(12)には、この回転方向前面部に凹凸部(12a)を形成してあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀装置とする。
【0013】
しごき面の凹凸により挟まれた穂首のしごき作用がより確実に行え、ささり粒除去性能が向上する。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記4番処理胴(10)の外周面上に、前記溝付扱歯(11)と、4番処理胴(10)の軸芯方向に対して所定角度に傾斜させて設けた板体からなるソリッド扱歯(13)とを、円周方向に交互に配設してあることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の脱穀装置とする。
【0015】
溝付扱歯(11)によりしごき落されたささり粒及び藁屑類をソリッド扱歯(13)によって拡散することができ、揺動選別棚(30)上への分散効果がより高められる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、ささり粒回収室(9)内の4番処理胴10に溝付扱歯(11)を設けることによって、扱ぎ残し粒を穂ごと切欠溝(12)に挟み込んでしごき落すことができ、扱ぎ残り粒の除去作用を確実に行うことができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、排藁を挟んでのしごき作用がより確実に行え、ささり粒の分散効果も高めることができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2記載の発明の効果を奏するものでありながら、しごき面の凹凸により挟まれた穂首のしごき作用がより確実に行え、ささり粒除去性能の向上を図ることができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、請求項1又は請求項2又は請求項3記載の発明の効果を奏するものでありながら、溝付扱歯(11)によりしごき落されたささり粒及び藁屑類をソリッド扱歯によって拡散することができ、揺動選別棚(30)上への分散効果をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】脱穀装置の側断面図
【図2】脱穀装置の一部破断せる平面図
【図3】脱穀装置の要部の縦断正面図
【図4】溝付扱歯の正面図
【図5】扱胴及び4番処理胴の平面図
【図6】脱穀装置の従来構成要部の側面図
【図7】脱穀装置の改良例要部の側面図
【図8】同上別例要部の側面図
【図9】同上別例要部の側面図
【図10】脱穀装置要部の一部破断せる平面図
【図11】同上要部の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
【0022】
図1は、脱穀装置の側断面図を示すものであり、次のような構成になっている。
【0023】
すなわち、脱穀装置(脱穀部)1は、脱穀フィードチェン2により株元を挟持しながら搬送される穀稈の穂先部を扱室3内で駆動回転する扱歯4付扱胴5により脱穀処理するよう構成している。扱室3の下半周部には受網6が張設され、扱胴5の上部を覆う扱胴カバー7は、扱室の一側を支点として揺動開閉する構成である。扱室3の終端側には多量の藁屑や未処理物を含む排塵処理物を下方に落下させる排塵口8が設けられている。扱室3終端の排塵口8より後方部には、排藁中のささり粒をしごき落して回収するささり粒回収室9を構成して設け、このささり粒回収室9には、前記扱胴5と略同径で同一軸芯回りに強制回転する外周に溝付扱歯11及びソリッド扱歯13を有した4番処理胴10を内装軸架している。4番処理胴10は、実施例では前記扱胴5と一体構成としてあり、該扱胴を扱室終端より長く延出させた構成としている。
【0024】
溝付扱歯11は、数個の切欠溝12を櫛歯状に切欠形成し、各切欠溝12の回転方向前面側には凹凸部12aを設けた構成であり、そして、処理胴10の円周方向に所定間隔置きに配設すると共に、処理胴軸芯方向に対して所定の傾斜角(θ)を保持させて設けた構成になっている。また、ソリッド扱歯13は、板体からなる構成で、前記溝付扱歯11と同様に4番処理胴軸芯方向に対して所定角度(傾斜角θ)に傾斜して設け、各溝付扱歯11,11との間でそれぞれ交互に配設した構成としている。
【0025】
扱室3始端側の前側板14と中仕切板15との間に受網6が張設され、扱室の中仕切板15から扱室終端の後仕切板16間に排塵口8が開口して設けられ、後仕切板16と後側板17との間にささり粒回収室9が構成されている。
【0026】
ささり粒回収室9の穀稈通過部略全域にわたり、且つ、4番処理胴10の下側位置において穀稈を下から受けて支持するガイド体18を設けている。このガイド体18は、溝付扱歯11(ソリッド扱歯13)先端との隙間を、扱歯4と受網6との隙間と略同一としているが、やや大き目に構成しても良い。また、このガイド体18の穀稈通過部における穂先側部には、しごき落されたささり粒を下方に漏下させるための数個の濾過孔19が左右斜め方向に傾斜して設けられている。回収室9のガイド体18より排塵処理胴25側は下方に開放されてあり、ささり粒の回収を容易にするための回収空間Kを設けた構成としている。
【0027】
前記扱室3のフィードチェン2側とは反対側一側には2番処理胴22を内装軸架した2番処理室23を並設している。また、前記2番処理胴22の後方にはこれと同一軸芯上において外周に排塵処理歯24を備えた排塵処理胴25を内装軸架した排塵処理室26を構成して設けている。前記扱室終端の排塵口8に対応する部位から排塵処理室26始端への送塵路27には、排塵処理胴25の始端部に固着されたスパイラー形状の取込羽根28が介入するように設けて、排塵処理室内への排塵物の取込みが容易に行えるようにしている。排塵処理胴25の終端には排出羽根29が設けられ、処理室終端まで送られてきた排塵処理物を前記排出羽根29によって処理室終端の横側部の排出口から下方の揺動選別棚30上に向けて排出する構成としている。
【0028】
揺動選別棚30は、脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別する構成であり、選別方向上手側から移送棚31、チャフシ−ブ32、ストロ−ラック33の順に配置し、且つ、前記チャフシ−ブ32の下方にグレンシ−ブ34を配置して設けた構成としている。また、揺動選別棚30の下方には選別方向の上手側から順に、唐箕35と、1番移送螺旋36、2番移送螺旋37と、その上方に排塵フアン38を設けて選別室を構成している。
【0029】
フィードチェン上側に対設する挟持レールの上方(扱ぎ口上縁部)部位に設けた櫛状の4番ささり防止プレート40において、従来は、図6に示すように、扱歯4の通過軌道数とプレート40の櫛状凹溝部41の数を同数にしていたが、本例では、図7に示すように、櫛状凹溝部の数を扱歯の通過軌道数よりも少なくする(つまり、その分、溝幅を大きくする)ことによって、4番ささり防止効果を大きく低下させることなく、消費馬力を抑制することができ、且つ、作物条件によっては籾の損傷発生も抑制することができる。
【0030】
また、扱歯の通過軌道数とプレートの櫛状凹溝部数が同数であっても、図8に示すように、プレート40を扱胴の前半分のみに設置する構成、若しくは、図9に示すように、扱胴の後半部のみに設置する構成であっても同等の効果を奏することができる。
【0031】
図10、図11に示す実施例について説明すると、扱胴軸(4番処理胴軸)5aからベルト伝動機構42、排藁ギヤケース43内のギヤ伝動機構、排藁伝動軸44を介して排藁搬送装置45を駆動する構成のものにおいて、前記排藁ギヤケース43は、脱穀装置の右側に張り出した箇所で、排塵処理胴25の上方に配置して設けた構成としている。また、グレンタンク46への揚穀筒47及び2番還元筒48の後方で前記グレンタンク46の左側面部に配置した構成としている。
【0032】
扱胴の後部にささり粒回収用の4番処理胴を追加した構成のものでは、従来型の脱穀機枠に対して左右方向の幅が小さくなるため、排藁ギヤケースを脱穀機枠内に内装することができないものであった。本例では、上記のように、空いているスペースに排藁ギヤケースを有効配置することができ、排藁搬送部への伝動機構すべての部品を共用化することができる。
【符号の説明】
【0033】
3 扱室
5 扱胴
8 排塵口
9 ささり粒回収室
10 4番処理胴
11 溝付扱歯
12 切欠溝
12a 凹凸部
13 ソリッド扱歯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(5)を軸架した扱室(3)の終端に排塵口(8)を開口し、該排塵口(8)よりも後方の位置にささり粒を回収するささり粒回収室(9)を設け、このささり粒回収室(9)内には、外周面に単数又は複数の切欠溝(12)を形成した数個の溝付扱歯(11)を配設し前記扱胴(5)と共に回転する4番処理胴(10)を軸架したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記溝付扱歯(11)を4番処理胴(10)の軸芯方向に対して傾斜させて設けたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記溝付扱歯(11)の切欠溝部(12)には、この回転方向前面部に凹凸部(12a)を形成してあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記4番処理胴(10)の外周面上に、前記溝付扱歯(11)と、4番処理胴(10)の軸芯方向に対して所定角度に傾斜させて設けた板体からなるソリッド扱歯(13)とを、円周方向に交互に配設してあることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−200173(P2011−200173A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71179(P2010−71179)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】