説明

脱穀装置

【課題】通過用スリットの形状を合理的に形成することで、扱胴を駆動するときの駆動負荷を軽減させるようにしながら、脱穀処理物が刈取穀稈に入り込みささり粒となることを回避することが可能となる脱穀装置を提供する。
【解決手段】扱胴9の回転に伴って刈取穀稈の株元側に向けて流下する脱穀処理物を扱胴9に向けて案内するガイド板30に、扱歯32が通過するための通過用スリット33の切り欠き幅方向での中心線Lが、扱歯32の回転軌跡に沿うように、挟持搬送機構による穀稈搬送方向に対して斜め姿勢になる形態で、且つ、スリット入口側部分33Aの横幅W1をスリット奥側部分33Bの横幅W2よりも広くする形態で、ガイド板30に通過用スリット33が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取穀稈の株元側を挟持して刈取穀稈を搬送する挟持搬送機構と、回転駆動されることで前記挟持搬送機構で搬送される刈取穀稈の穂先側に脱穀処理を施す扱胴と、前記扱胴の回転に伴って刈取穀稈の株元側に向けて流下する脱穀処理物を前記扱胴に向けて案内するガイド板とを備えて構成され、前記ガイド板が、前記扱胴の回転軸芯に対して穀稈搬送上手側が下側に位置し穀稈搬送下手側ほど上側に位置するように斜め姿勢となる状態で設けられ、且つ、前記扱胴の回転に伴って前記扱胴に備えた扱歯が通過するための通過用スリットが切り欠き形成されている脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記ガイド板は、扱胴の回転に伴って扱胴に備えた扱歯により連れ回りしながら扱室内部で飛散して、株元側が挟持搬送機構により挟持して扱室内部を搬送される刈取穀稈における株元側箇所に向けて流下する枝付き穀粒や単粒化された穀粒等の脱穀処理物を扱胴に向けて案内することにより、その脱穀処理物が挟持搬送機構により搬送される刈取穀稈の株元側に入り込む所謂ささり粒の発生を防止するためのものであり、このようなガイド板を備えることにより、脱穀処理により得られた穀粒がささり粒となって脱穀処理後の刈取穀稈とともに機外に排出されることを防止して穀粒回収効率の向上を図ることができるようにしたものである。
【0003】
そして、従来の脱穀装置では、扱胴に備えた扱歯が通過するための通過用スリットが、扱歯の回転軌跡に沿うようにガイド板の穀稈搬送方向に沿って延びる延設方向に対して斜め姿勢になる形態で形成され、且つ、その通過用スリットの横幅がスリット入口側部分からスリット奥側部分の最奥部に至るまで略同じ横幅であってしかも脱穀処理物の案内機能を発揮するために幅狭となる形態で、ガイド板に通過用スリットが形成されていた(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−83456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来構成のように通過用スリットの横幅がスリット入口側部分からスリット奥側部分の最奥部に至るまで略同じ横幅となる形態で形成されるものでは、脱穀処理物が扱歯と共に連れ回りしながら回動していると、扱歯が通過用スリットを通過する際に、通過用スリットにおけるスリット入口側部分からスリット奥側部分の最奥部に至る広い範囲で詰まりが発生して扱胴を駆動するときの駆動負荷が大きくなるおそれがある。特に、枝付き穀粒など扱歯に絡みつき易い脱穀処理物であれば、扱歯に滞留した脱穀処理物に起因して扱歯が通過用スリットを通過する際に駆動負荷が大きなものになる虞がある。
【0006】
そこで、このような扱胴の駆動負荷を軽減させるために、通過用スリットにおけるスリット入口側部分からスリット奥側部分の最奥部に至る広い範囲にわたり、スリットの横幅を広くさせることが考えられるが、この場合には、脱穀処理物が刈取穀稈に入り込むことを防止する機能が低下する不利がある。
【0007】
本発明の目的は、通過用スリットの形状を合理的に形成することで、扱胴を駆動するときの駆動負荷を軽減させるようにしながら、脱穀処理物が刈取穀稈に入り込みささり粒となることを回避することが可能となる脱穀装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る脱穀装置は、刈取穀稈の株元側を挟持して刈取穀稈を搬送する挟持搬送機構と、回転駆動されることで前記挟持搬送機構で搬送される刈取穀稈の穂先側に脱穀処理を施す扱胴と、前記扱胴の回転に伴って刈取穀稈の株元側に向けて流下する脱穀処理物を前記扱胴に向けて案内するガイド板とを備えて構成され、前記ガイド板が、前記扱胴の回転軸芯に対して穀稈搬送上手側が下側に位置し穀稈搬送下手側ほど上側に位置するように斜め姿勢となるように前記挟持搬送機構による穀稈搬送方向に沿って延設される状態で設けられ、且つ、前記扱胴の回転に伴って前記扱胴に備えた扱歯が通過するための通過用スリットが切り欠き形成されているものであって、その第1特徴構成は、前記通過用スリットの切り欠き幅方向での中心線が、前記扱歯の回転軌跡に沿うように、前記挟持搬送機構による穀稈搬送方向に対して斜め姿勢になる形態で、且つ、前記扱歯の基端側箇所が通過するスリット入口側部分の横幅を前記扱歯の先端側箇所が通過するスリット奥側部分の横幅よりも広くする形態で、前記ガイド板に前記通過用スリットが形成されている点にある。
【0009】
第1特徴構成によれば、扱胴が回転駆動されると、扱歯が通過用スリット内を通過する状態で回転するが、この通過用スリットは、扱歯の基端側箇所が通過するスリット入口側部分の横幅が扱歯の先端側箇所が通過するスリット奥側部分の横幅よりも広くなっている。
【0010】
その結果、扱歯の先端側箇所が通過するスリット奥側部分の横幅が狭いので、扱歯の先端側箇所にて連れ回りしている脱穀処理物が幅狭のスリットを通過する際に、ガイド板にて受止められて扱歯から分離してガイド板により扱胴に向けて案内され易いものとなり、ささり粒の発生を防止することができる。
【0011】
一方、扱歯の基端側箇所が通過するスリット入口側部分の横幅が広くなるので、扱歯の基端側箇所にて連れ回りしながら回動している脱穀処理物は、ガイド板にて受止められずに通過用スリットを扱歯と共に通過し易いものとなるから、脱穀処理物が連れ回りしている状態で扱歯が通過用スリットを通過するときの駆動負荷を軽減させることができる。そして、扱歯の基端側箇所は挟持搬送機構により搬送される刈取穀稈の株元側箇所から穂先側に寄った箇所に対して扱き作用するので、扱歯の基端側箇所にて連れ回りしている脱穀処理物は、挟持搬送機構により搬送される刈取穀稈の株元側に入り込む虞は少なく、扱室内を飛散しながら扱胴の下方側に設けられる選別部に向けて落下し易いものとなる。
【0012】
又、通過用スリットの切り欠き幅方向での中心線が、扱歯の回転軌跡に沿うように、前記ガイド板の穀稈搬送方向に沿って延びる延設方向に対して斜め姿勢になる形態で、ガイド板が備えられるから、扱歯が通過用スリットを通過するときに、扱歯が通過用スリットの切り欠き幅方向での中心付近を通過することになる。
その結果、扱歯と通過用スリットの切り欠き幅方向の内側端縁との間の隙間を、左右両側部において夫々同じように確保することができて、例えば、扱歯の基端側箇所と片側の内側端縁との間が狭くなってスリット入口側部分の横幅を広くしたにもかかわらず駆動負荷が大きくなるという不利を回避して、駆動負荷を軽減できるものとなる。
【0013】
従って、通過用スリットの形状を合理的に形成することで、扱胴を駆動するときの駆動負荷を軽減させるようにしながら、脱穀処理物が刈取穀稈に入り込みささり粒となることを回避することが可能となる脱穀装置を提供できるに至った。
【0014】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記通過用スリットが刈取穀稈の搬送経路に沿って長尺状に形成された前記ガイド板に間隔をあけて複数形成され、前記複数の通過用スリットにおける前記スリット奥側部分の最奥部が前記扱歯の先端部の回転軌跡に近付くように円弧状の軌跡を描いて並ぶ形態で、前記ガイド板に前記通過用スリットが形成されている点にある。
【0015】
前記ガイド板は、扱胴の回転軸芯に対して搬送上手側が下側に位置し搬送下手側ほど上側に位置するように斜め方向に延びる形態で備えられるものであるが、第2特徴構成によれば、複数の通過用スリットにおけるスリット奥側部分の最奥部が扱歯の先端部の回転軌跡に近付くように円弧状の軌跡を描いて並ぶ形態で、ガイド板に通過用スリットが形成されることになるから、複数の通過用スリットにおけるスリット奥側部分の最奥部の夫々を、扱歯の先端部が通過する回転軌跡にできるだけ近付けることができる。
【0016】
このように構成することで、複数の通過用スリットの並び方向における略全範囲において、脱穀処理物をガイド板にて受止めて扱歯から分離して扱胴に向けて案内し易いものとなる。
【0017】
説明を加えると、扱胴の外周面は円筒状であり複数の扱歯の先端部が通過する軌跡も回転軸芯に沿って円筒状に形成されるものであるから、例えば、複数の通過用スリットにおけるスリット奥側部分の最奥部を、直線状の軌跡を描いて並ぶ状態でガイド板に通過用スリットが形成されるものであれば、複数の通過用スリットの並び方向の中間部ではスリット奥側部分の最奥部に扱歯の先端部の回転軌跡が最も近付き、並び方向における搬送上手側箇所及び搬送下手側箇所ではスリット奥側部分の最奥部が扱歯の先端部の回転軌跡から離間する状態となる。その結果、複数の通過用スリットの並び方向の中間部では、扱歯の先端側箇所において連れ回りしている脱穀処理物がガイド板にて受止められて扱歯から分離してガイド板により扱胴に向けて案内され易いものとなるが、複数の通過用スリットの並び方向における搬送上手側箇所及び搬送下手側箇所では、スリット奥側部分の最奥部が扱歯の先端部から離間するので、脱穀処理物がガイド板にて分離され難いものとなる。
【0018】
これに対して、第2特徴構成では、複数の通過用スリットにおけるスリット奥側部分の最奥部が扱歯の先端部の回転軌跡に近付くように円弧状の軌跡を描いて並ぶ形態で通過用スリットが形成されるから、前記並び方向における搬送上手側箇所及び搬送下手側箇所においてもスリット奥側部分の最奥部に扱歯の先端部が近付くことになって、複数の通過用スリットの並び方向におけるすべての範囲において、脱穀処理物をガイド板にて受止めて扱歯から分離して扱胴に向けて案内し易いものとなるのである。
【0019】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記通過用スリットが刈取穀稈の搬送経路に沿って長尺状に形成された前記ガイド板に間隔をあけて複数形成され、前記複数の通過用スリットにおける前記スリット入口側部分の最先部同士の間に位置する前記ガイド板の端縁部が前記扱胴の外周面に近付くように円弧状の軌跡を描いて並ぶ形態で、前記ガイド板が形成されている点にある。
【0020】
前記ガイド板は、扱胴の回転軸芯に対して搬送上手側が下側に位置し搬送下手側ほど上側に位置するように斜め方向に延びる形態で備えられるものであるが、第3特徴構成によれば、複数の通過用スリットにおけるスリット入口側部分の最先部同士の間に位置するガイド板の端縁部が扱胴の外周面に近付くように円弧状の軌跡を描いて並ぶ形態で、ガイド板が形成されているから、ガイド板を扱胴の外周面にできるだけ近付けることができる。
【0021】
このように構成することで、複数の通過用スリットの並び方向における略全範囲において、脱穀処理物をガイド板にて受止めて扱歯から分離して扱胴に向けて案内し易いものとなる。
【0022】
説明を加えると、上述したように扱胴の外周面は円筒状であり、例えば、複数の通過用スリットにおけるスリット入口側部分の最先部同士の間に位置するガイド板の端縁部を、直線状の軌跡を描いて並ぶ状態で、ガイド板が形成されたものであれば、その並び方向の中間部ではガイド板の端縁部に扱胴の外周面が最も近付き、並び方向における搬送上手側箇所及び搬送下手側箇所では、ガイド板の端縁部が扱胴の外周面から離間する状態となる。その結果、複数の通過用スリットの並び方向の中間部では、扱胴の外周面にガイド板が近付いた状態で脱穀処理物がガイド板にて受止められて扱胴に向けて案内され易いものとなるが、複数の通過用スリットの並び方向における搬送上手側箇所及び搬送下手側箇所では、ガイド板の端縁部が扱胴の外周面から離間するので、脱穀処理物がガイド板にて分離され難いものとなる。
【0023】
これに対して、第3特徴構成では、複数の通過用スリットにおけるスリット入口側部分の最先部同士の間に位置するガイド板の端縁部が扱胴の外周面に近付くように円弧状の軌跡を描いて並ぶ形態で、ガイド板が形成されるから、前記並び方向における搬送上手側箇所及び搬送下手側箇所においてもガイド板の端縁部が扱胴の外周面に近付くことになって、複数の通過用スリットの並び方向におけるすべての範囲において、脱穀処理物をガイド板にて受止めて扱歯から分離して扱胴に向けて案内し易いものとなるのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】脱穀装置の縦断側面図
【図2】脱穀装置の縦断背面図
【図3】挟持レールを示す側面図である。
【図4】挟持レールの構成を示す横断平面図である。
【図5】ガイド板の配置状態を示す側面図である。
【図6】ガイド板の配置状態を示す縦断背面図である。
【図7】ガイド板の要部の側面図である。
【図8】別実施形態のガイド板を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明にかかる脱穀装置を自脱型コンバインの脱穀装置に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1には自脱型コンバインに搭載される脱穀装置1の縦断側面が、図2にはその縦断背面がそれぞれ示されており、この脱穀装置1は、機体フレーム(図示せず)に連結される下部ケース2と、その下部ケース2に開閉揺動可能に連結された上部ケース3とで形成される処理空間に、刈取穀稈を後方に向けて搬送しながら刈取穀稈の穂先側に脱穀処理を施す脱穀部4、その脱穀処理で得た処理物に選別処理を施す選別部5、及び、その選別処理で得た1番物と2番物とを回収する回収部6を備えて構成されている。
【0027】
脱穀部4は、刈取穀稈の株元側を挟持して刈取穀稈を横向きの姿勢で搬送する挟持搬送機構7、前後向きの支軸8を中心にして回転駆動されることで刈取穀稈の穂先側に脱穀処理を施す扱胴9、及び、この脱穀処理で得られた処理物を下方の選別部5に向けて漏下させる受網10を備えて構成されている。受網10の後方には、受網10から漏下しなかっ
た処理物を下方の選別部5に向けて流下させる送塵口11が形成されている。
【0028】
この脱穀部4での脱穀処理によって、単粒化穀粒や枝付きの穀粒などの含有量の多い脱穀処理物が受網10から選別部5の選別方向上手側(前部側)に向けて漏下し、又、切れワラやワラ屑などの含有量の多い処理物が送塵口11から選別部5の選別方向下手側(後部側)に向けて流下する。
【0029】
選別部5は、脱穀部4からの処理物を揺動選別する揺動選別機構12及び選別風を生起する唐箕13を備えて、処理物に対する揺動選別及び風力選別によって、脱穀部4の受網10を漏下した処理物を、1番物としての単粒化した穀粒、2番物としての枝梗付き穀粒やワラ屑などの混在物、及び、3番物としての切れワラやワラ屑に選別するように構成されている。
【0030】
回収部6は、揺動選別機構12の選別方向上手側の下方に形成した1番回収部14、及び、揺動選別機構12の選別方向下手側の下方に形成した2番回収部15を備えて構成され、1番回収部14は、選別部5で選別された1番物(穀粒)を回収するとともに、回収した1番物をその底部に左右向きに配備した1番スクリュー16によって、その右端に連通接続した図外の揚送スクリューに向けて搬送するように構成されている。揚送スクリューは、1番スクリュー16によって搬送された1番物を揚送し、脱穀装置1の横外側方に並設した図外の穀粒タンクに供給して貯留するように構成されている。
【0031】
2番回収部15は、選別部5で選別された2番物を回収するとともに、回収した2番物を、その底部に左右向きに配備した2番スクリュー17によって、その右端に連通接続した2番還元スクリュー17Aに向けて搬送するように構成されている。2番還元スクリュー17Aは、2番スクリュー17によって搬送された2番物に再脱穀処理を施した後、揚送して揺動選別機構12に還元する。
【0032】
図2に示すように、下部ケース2の左上部には下唇板18が配備され、上部ケース3の左下部には上唇板19が配備され、それらの間に、挟持搬送機構7で挾持搬送される刈取穀稈の扱胴9と受網10との間への供給を可能にする扱口20が形成されている。
【0033】
挟持搬送機構7は、下唇板18に沿って刈取穀稈を搬送すべく下部ケース2の左側部に配備されたフィードチェーン21、上唇板19に装備したレール台22、そのレール台22の下部に上下変位可能に支持された挟持レール23、及び、挟持レール23をフィードチェーン21に向けて下降付勢する複数の押しバネ24を備えて構成されている。
【0034】
説明を加えると、図3及び図4に示すように、挟持レール23は、断面形状が略コの字形の複数のレール単位体25同士を連結ピン26で枢支連結して構成されており、連結ピン26を押しバネ24により下方に向けて下降付勢する構成となっている。そして、押しバネ24に内装され且つレール台22に対してスライド移動自在なロッド27の上端の規制部28がレール台22に接当して下方移動が規制されることにより挟持レール23が穀稈を待機する待機状態(図3参照)になり、搬送する穀稈による押し操作により押しバネ24の付勢力に抗して挟持レール23が上方に後退変位可能に構成されている。
【0035】
図2及び図4に示すように、挟持レール23の複数のレール単位体25の夫々について、装置外方側に位置する縦面部分に対して、その内面側の箇所に磨耗を防止するための磨耗防止板29が一体的に固定される状態で設けられている。このように内面側の箇所に磨耗防止板29を設けることで、例えば、前記縦面部分の外面側の箇所に磨耗防止板29を設けた場合に比べて、挟持レール23と反対側に位置する揺動支点Xの軸芯周りで上部ケース3を揺動させて脱穀部4を開放させるときに、フィードチェーン21と挟持レール23(磨耗防止板29)とが干渉する虞が少ないものとなる。
【0036】
図6に示すように、上唇板19には、扱胴9の回転に伴って扱胴9の上部から刈取穀稈の株元側に向けて流下する脱穀処理物を扱胴9に向けて案内する帯板状のガイド板30が取り付けられている。このガイド板30は、図1及び図5に示すように、側面視において扱胴9の回転軸芯Pに対して穀稈搬送上手側が下側に位置し穀稈搬送下手側ほど上側に位置するように斜め姿勢となるように挟持搬送機構7による穀稈搬送方向に沿って延設される状態で設けられている。ちなみに、ガイド板30は所定の硬度を有する耐熱ゴムにて構成されている。
【0037】
説明を加えると、ガイド板30は、挟持搬送機構7における搬送始端側箇所を除き、挟持搬送機構7によって挟持搬送される刈取穀稈に対する上方の位置に刈取穀稈の搬送方向に沿って延びる状態で配備されており、挟持搬送機構7は、扱口20に沿って配備され、扱胴9の回転軸芯Pに対して搬送上手側が下側に位置し搬送下手側ほど上側に位置するように斜め方向に延びる形態で備えられるものである。その結果、ガイド板30は、図5に示すように、扱胴9の回転軸芯Pに対して搬送上手側が下側に位置し搬送下手側ほど上側に位置するように斜め方向に延びる形態で備えられることになる。
【0038】
前記ガイド板30が挟持搬送機構7における搬送始端側箇所に設けられていないのは、次のような理由による。つまり、挟持搬送機構7における搬送始端側箇所においては、脱穀部5に搬送されてくる全ての刈取穀稈は着粒状態であり、扱胴9の扱き作用による脱穀処理に大きな駆動負荷が掛かる場所であり、このような場所において、ガイド板30を位置させておくと、扱胴9の駆動負荷が過大になるおそれがあるからである。
【0039】
図6に示すように、ガイド板30は、その上部側箇所が上唇板19と押さえ板31との間に挟み込まれた状態でボルト連結されて固定され、下部側箇所が上唇板19の縦面に対して約45度の角度αで傾斜して扱胴9に近づくように延びる状態で設けられている。
図6に示す背面視で、ガイド板30は、扱胴9の回転軸芯Pよりも下側の部分で扱歯32の先端回動軌跡と交差し、ガイド板30の先端は下唇板18の上端と略同じ高さ又は下唇板18の上端よりも下側に位置する。
【0040】
そして、このガイド板30には、扱胴9の回転に伴って扱胴9に備えた扱歯32が通過するための通過用スリット33が切り欠き形成されている。この通過用スリット33は刈取穀稈の搬送経路に沿って長尺状に形成されたガイド板30に間隔をあけて複数形成されており、通過用スリット33の切り欠き幅方向での中心線Lが、扱歯32の回転軌跡に沿うように(重なるように)、挟持搬送機構7の穀稈搬送方向Qに対して、より具体的には、ガイド板30の挟持搬送機構7に沿って直線状に延びる下部側箇所の扱胴側の端縁部34に対して斜め姿勢になる形態で、ガイド板30に通過用スリット33が形成されている。
【0041】
又、扱歯32の基端側箇所が通過するスリット入口側部分33Aの横幅W1を扱歯32の先端側箇所が通過するスリット奥側部分33Bの横幅W2よりも広くする形態で、ガイド板30に通過用スリット33が形成されている。
【0042】
つまり、図5及び図7に示すように、通過用スリット33は、スリット入口側部分33Aの横幅W1が広く、スリット奥側部分33Bの横幅W2が狭くなるように、内奥側ほど狭くなる先細状になるように形成されている。そして、通過用スリット33の中心線Lが扱歯32の回転軌跡と同じになるように(重なるように)、挟持搬送機構7の穀稈搬送方向Q(ガイド板30の挟持搬送機構7に沿って直線状に延びる下部側箇所の扱胴側の端縁部34)に対して斜め姿勢になる形態でガイド板30に通過用スリット33が形成されている。
【0043】
このようなガイド板30を備えることにより、扱胴9の回転に伴って扱胴9の上部から刈取穀稈の株元側に向けて流下する穀粒は、ガイド板30によって扱胴9に向けて案内されるようになり、これによって、その穀粒が挾持搬送機構7で搬送される刈取穀稈の株元側に入り込むささり粒の発生を防止することができ、刈取穀稈の株元側に入り込んだ穀粒が脱穀処理後の刈取穀稈とともに機外に排出される不都合の発生を阻止することができる。
【0044】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、複数の通過用スリット33におけるスリット奥側部分の最奥部33Cが直線状に並び、且つ、ガイド板30の扱胴側の端縁部34が直線状に形成されるものを示したが、次のように構成するものでもよい。
【0045】
図8に示すように、複数の通過用スリット33におけるスリット奥側部分の最奥部33Cが、円筒形状となる扱歯32の先端部の回転軌跡に近付くように、円弧状の軌跡Z1を描いて並ぶ形態でガイド板30に通過用スリット33を形成する構成とし、さらに、ガイド板30の扱胴側の端縁部34、すなわち、複数の通過用スリット33におけるスリット入口側部分の最先部同士の間に位置するガイド板30の端縁部が、扱胴9の外周面9Aに近付くように円弧状の軌跡Z2を描いて並ぶ形態で、ガイド板30を形成する構成としてもよい。
【0046】
又、上記構成に代えて、複数の通過用スリット33におけるスリット奥側部分の最奥部33Cが、円筒形状となる扱歯32の先端部の回転軌跡に近付くように、円弧状の軌跡Z1を描いて並ぶ形態でガイド板30に通過用スリット33を形成する構成とし、ガイド板30の前記扱胴側の端縁部34が直線状に並ぶ状態で、ガイド板30を形成する構成としてもよい。
【0047】
又、上記構成に代えて、ガイド板30における前記扱胴側の端縁部34が、円筒形状である扱胴9の外周面9Aに近付くように円弧状の軌跡Z2を描くように形成され、複数の通過用スリット33におけるスリット奥側部分の最奥部33Cが直線状に並ぶ状態で、ガイド板30に通過用スリット33を形成する構成としてもよい。
【0048】
(3)上記実施形態では、ガイド板30として耐熱ゴムを用いるものと例示したが、例えば、ガイド板30としては板金製のものであってもよく、また、帆布などに樹脂コーティングを施して構成されたものであってもよい。
【0049】
(4)上記実施形態では、コンバインに搭載される脱穀装置を示したが、脱穀装置としてはハーベスタに搭載されるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、刈取穀稈を株元を挟持して搬送しながら扱室内で穂先側を扱いて脱穀処理を行う脱穀装置に適用できる。
【符号の説明】
【0051】
7 挟持搬送機構
9 扱胴
9A 外周面
30 ガイド板
32 扱歯
33 通過用スリット
33A スリット入口側部分
33B スリット奥側部分
33C 最奥部
L 中心線
Q 穀稈搬送方向
W1 横幅
W2 横幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取穀稈の株元側を挟持して刈取穀稈を搬送する挟持搬送機構と、回転駆動されることで前記挟持搬送機構で搬送される刈取穀稈の穂先側に脱穀処理を施す扱胴と、前記扱胴の回転に伴って刈取穀稈の株元側に向けて流下する脱穀処理物を前記扱胴に向けて案内するガイド板とを備えて構成され、
前記ガイド板が、前記扱胴の回転軸芯に対して穀稈搬送上手側が下側に位置し穀稈搬送下手側ほど上側に位置するように斜め姿勢となるように前記挟持搬送機構による穀稈搬送方向に沿って延設される状態で設けられ、且つ、前記扱胴の回転に伴って前記扱胴に備えた扱歯が通過するための通過用スリットが切り欠き形成されている脱穀装置であって、
前記通過用スリットの切り欠き幅方向での中心線が、前記扱歯の回転軌跡に沿うように、前記挟持搬送機構による穀稈搬送方向に対して斜め姿勢になる形態で、且つ、前記扱歯の基端側箇所が通過するスリット入口側部分の横幅を前記扱歯の先端側箇所が通過するスリット奥側部分の横幅よりも広くする形態で、前記ガイド板に前記通過用スリットが形成されている脱穀装置。
【請求項2】
前記通過用スリットが刈取穀稈の搬送経路に沿って長尺状に形成された前記ガイド板に間隔をあけて複数形成され、
前記複数の通過用スリットにおける前記スリット奥側部分の最奥部が前記扱歯の先端部の回転軌跡に近付くように円弧状の軌跡を描いて並ぶ形態で、前記ガイド板に前記通過用スリットが形成されている請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記通過用スリットが刈取穀稈の搬送経路に沿って長尺状に形成された前記ガイド板に間隔をあけて複数形成され、
前記複数の通過用スリットにおける前記スリット入口側部分の最先部同士の間に位置する前記ガイド板の端縁部が前記扱胴の外周面に近付くように円弧状の軌跡を描いて並ぶ形態で、前記ガイド板が形成されている請求項1又は2記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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