脱穀選別装置
【課題】二番流量制御の異常状態が発生したとき、オペレータの操作負担を増加させることなく、所定の異常回避処理により二番流量制御の異常状態を積極的に解消し、異常状態による被害の拡大を防止する。
【解決手段】二番還元物の流量を検出する二番流量センサSと、フィン開度を変更可能なチャフシーブと、二番流量制御を行う制御部45とを備え、二番流量制御では、二番流量センサSの検出値が所定の目標値範囲内となるようにチャフシーブのフィン開度を自動的に制御するコンバインにおいて、制御部45は、二番流量センサSの検出値に基づいて、二番流量制御の異常状態を判断する異常判断手段と、該異常判断手段が異常状態であると判断したとき、所定の異常回避処理を実行し、二番流量制御を続行させる異常回避処理手段とを備える。
【解決手段】二番還元物の流量を検出する二番流量センサSと、フィン開度を変更可能なチャフシーブと、二番流量制御を行う制御部45とを備え、二番流量制御では、二番流量センサSの検出値が所定の目標値範囲内となるようにチャフシーブのフィン開度を自動的に制御するコンバインにおいて、制御部45は、二番流量センサSの検出値に基づいて、二番流量制御の異常状態を判断する異常判断手段と、該異常判断手段が異常状態であると判断したとき、所定の異常回避処理を実行し、二番流量制御を続行させる異常回避処理手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインなどの脱穀選別装置に関し、特に、二番流量センサの検出値に基づいてチャフシーブのフィン開度を自動的に制御する二番流量制御機能を備えた脱穀選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、チャフシーブのフィン開度を変更可能に構成すると共に、処理状況に応じてチャフシーブのフィン開度を自動的に制御する脱穀選別装置が知られている。例えば、特許文献1、2に示されるコンバインでは、二番還元物の流量を二番流量センサで検出すると共に、二番流量センサの検出値に基づいてチャフシーブのフィン開度を自動制御する二番流量制御が行われるようになっている。このような二番流量制御によれば、材料条件等に拘わらず二番流量を適正化することができるので、高効率で精度の高い脱穀選別処理を行うことが可能になる。
【特許文献1】特開昭61−5725号公報
【特許文献2】実開昭60−168346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような脱穀選別装置では、二番流量制御の異常状態、つまり、二番流量を制御しきれない状態が発生する可能性がある。例えば、二番流量制御を実行しているにも拘わらず、二番流量センサの検出値が目標値範囲の上限を超える状態が所定時間以上続くことがある。このような二番物の過剰循環状態が続くと、二番流量センサが破損したり、三番飛散が増大する可能性があるため、何らかの対策が必要となる。
【0004】
そこで、特許文献1に示されるコンバインでは、二番流量制御が異常状態であると判断したとき、警報を発するようになっている。また、特許文献2に示されるコンバインでは、二番流量制御が異常状態であると判断したとき、警報を発すると共に、二番流量制御を停止させ、その後、二番還元物量が所定範囲内となったら、二番流量制御を再開するようになっている。
【0005】
しかしながら、上記のような異常対策では、警報に応じてオペレータが何らかの異常回避操作(例えば、手動フィン開度調整)を行わない限り、積極的に異常状態を回避することはできないため、オペレータの操作負担が増加してしまい、また、オペレータが適切な異常回避操作を行わない場合には、異常状態が回避されないため、異常状態による被害が拡大する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、二番還元物の流量を検出する二番流量センサと、フィン開度を変更可能なチャフシーブと、二番流量制御を行う制御部とを備え、二番流量制御では、二番流量センサの検出値が所定の目標値範囲内となるようにチャフシーブのフィン開度を自動的に制御する脱穀選別装置において、前記制御部は、二番流量センサの検出値に基づいて、二番流量制御の異常状態を判断する異常判断手段と、該異常判断手段が異常状態であると判断したとき、所定の異常回避処理を実行し、二番流量制御を続行させる異常回避処理手段とを備えることを特徴とする。このようにすると、二番流量制御の異常状態を判断した場合に、所定の異常回避処理を実行し、二番流量制御を続行させるので、オペレータの操作負担を増加させることがないだけでなく、所定の異常回避処理により二番流量制御の異常状態を積極的に解消し、異常状態による被害の拡大を防止することができる。
また、前記異常判断手段は、二番流量センサの検出値が目標値範囲の上限を超える状態が所定時間続いたとき、及び/又は、二番流量センサの検出値が目標値範囲を超えて上下する変動回数が単位時間あたりで所定回数以上となったとき、異常状態であると判断することを特徴とする。このようにすると、二番流量センサの検出値が目標値範囲の上限を超える状態が所定時間続いたときだけでなく(二番物の過剰循環状態)、二番流量センサの検出値が目標値範囲を超えて上下する変動回数が単位時間あたりで所定回数以上となったときにも(オーバーシュートを繰り返す脈動状態)、異常状態であると判断し、適切な異常回避処理を実行することができる。
また、前記異常回避処理手段は、異常判断手段が異常状態であると判断したとき、チャフシーブのフィン開度を一度全開にし、二番流量制御を続行させることを特徴とする。このようにすると、チャフシーブにおける穀粒のオーバーフローを防止し、三番飛散を減らすことができるだけでなく、二番物の過剰循環状態を迅速に解消し、過剰循環による二番流量センサの破損を防止できる。
また、前記異常回避処理手段は、異常判断手段が異常状態であると判断したとき、二番流量制御の制御感度を変更し、二番流量制御を続行させることを特徴とする。このようにすると、二番流量制御の制御感度が自動的に適正化されるので、オペレータによる感度調整が不要になるだけでなく、制御感度の不適合に基づく、脈動状態などの不安定な制御状態や、処理精度の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[第一実施形態]
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1はコンバイン(脱穀選別装置)であって、該コンバイン1は、茎稈を刈取る前処理部2と、刈取茎稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀選別部3と、脱穀済みの排稈を後処理する後処理部4と、選別した穀粒を貯留する穀粒タンク5と、オペレータが乗車する操作部6と、クローラ式の走行部7とを備えて構成されている。
【0008】
前処理部2は、未刈り茎稈の分草及び引起しを行いつつ、茎稈の株元を刈り取り、刈り取った茎稈を脱穀選別部3に向けて搬送する。脱穀選別部3への搬送過程では、稈長に応じた茎稈の挟持位置調整が行われ、脱穀選別部3における扱深さが適正に保たれるようになっている。また、前処理部2は、その全体が走行機体の前端部に昇降自在に連結されており、非刈取走行時には上昇操作され、刈取走行時には下降操作される。
【0009】
図2に示すように、脱穀選別部3は、茎稈を扱室8に沿って搬送する脱穀フィードチェン9と、脱穀済みの茎稈を後処理部4まで搬送する排藁搬送装置10と、扱室8に回転自在に内装され、搬送茎稈から処理物(混合物を含む穀粒)を脱穀する扱胴11と、ここで脱穀された処理物を漏下する第一受網12と、第一受網12から漏下せずに扱室8の終端まで達した処理物を単粒化処理する処理胴13と、ここで単粒化された処理物を漏下させる第二受網14と、第一受網12や第二受網14から漏下した処理物を揺動選別する揺動選別体15と、該揺動選別体15の前方で選別風を起風する圧風ファン16と、一番物を回収する一番ラセン17と、二番物を回収する二番ラセン18と、二番ラセン18の前方で二番選別風を起風する二番選別ファン19と、揺動選別体15の終端部上方に設けられる排塵室20と、該排塵室20に回転自在に内装される排塵ファン21とを備えて構成されている。そして、一番ラセン17によって回収された一番物は、揚穀筒22を介して穀粒タンク5に貯留され、二番ラセン18によって回収された二番物は、二番還元筒23を介して揺動選別体15上に還元されるようになっている。
【0010】
揺動選別体15は、第一受網12から漏下した処理物を後方へ順次搬送する揺動流板24と、該揺動流板24から搬送される処理物を篩い選別するチャフシーブ25と、該チャフシーブ25から漏下した処理物をさらに篩い選別するグレンシーブ26と、チャフシーブ25の後方に配置されるストロラック27とを備える揺動アッセンブリであり、図示しない駆動機構(クランク機構、カム機構など)によって所定の周期で連続的に往復揺動される。
【0011】
チャフシーブ25は、前後方向に所定間隔を存して並列する複数のフィン25aを備えて構成されている。各フィン25aは、前低後高状に傾斜しており、揺動選別体15の揺動に伴って処理物を後方へ移送しつつ、フィン25a間の隙間から穀粒を漏下させる。チャフシーブ25におけるフィン25a間の隙間(フィン開度)は変更可能であり、このフィン開度変更に基づいて二番還元物の流量が適正化されるようになっている。具体的には、二番還元筒23の二番還元口Kに、二番還元物の流量を検出する二番流量センサSを設けると共に、該二番流量センサSの検出値が所定の目標値範囲内となるように、チャフシーブ25のフィン開度を自動制御する二番流量制御が行われるようになっている。
【0012】
図3〜図5に示すように、二番還元筒23は、二番ラセン18の終端から二番還元口Kに至る二番還元用の穀粒流路を形成しており、その内部には、二番物を揚上搬送するラセン搬送体28が回転自在に内装されている。また、ラセン搬送体28の上端部には、二番物を外周方向に投擲する放出板29と、投擲された二番物を二番還元口Kに向けて放出ガイドする円弧状の放出ガイド30とが設けられており、二番還元筒23の上端部まで搬送された二番物は、放出板29の投擲作用並びに放出ガイド30のガイド作用を受けて、二番還元口Kから積極的に放出されるようになっている。
【0013】
図3〜図6に示すように、本実施形態の二番流量センサSは、二番還元筒23の終端部に形成される穀粒流路(二番物放出流路)において穀粒の流量を検出するように設けられており、穀粒流路の内部で穀粒と衝突する衝突板31と、衝突板31に作用する衝突力が回動力として伝達される回動部材32と、回動部材32を回動自在に支持する支点軸33と、穀粒流路の外部で回動部材32の回動力を検出する感圧センサ34とを備えて構成され、該感圧センサ34の検出値を二番物の検出流量として出力するようになっている。
【0014】
具体的に説明すると、二番還元筒23の天板23aには、二番流量センサSの取付孔(図示せず)が形成されており、この取付孔を塞ぐように二番流量センサSの取付プレート35が取り付けられる。取付プレート35は、長孔35aを貫通する取付ボルト36で天板23aに取付けられており、取付ボルト36を緩めると、長孔35aに沿った取付プレート35の位置変更により、二番流量センサSの取付角度を調節することが可能になる。
【0015】
取付プレート35には、回動部材32が貫通可能な貫通孔35bが形成されると共に、その周縁から複数の支持プレート38が角筒状に立設されている。角筒状に立設された支持プレート38の内部には、回動部材32が挿通されると共に、側方から支持プレート38及び回動部材32を貫く支点軸33により、回動部材32が回動自在に支持される。本実施形態の支点軸33は、支点軸ベース39及び支点軸ベース取付ボルト40を介して支持プレート38に取り付けられており、支点軸33の位置調節が容易である。
【0016】
衝突板31は、穀粒流路の内部に位置する回動部材32の一端部に一体的に設けられる。本実施形態では、放出ガイド30の延長線に沿って衝突板31を配置することにより、比較的流れ方向が安定した穀粒を衝突板31に衝突させるようになっている。尚、放出ガイド30の裏側には、送風装置41が設けられており、この送風装置41の送風により、衝突板31の裏側に溜まった物が選別室内に向けて吹き飛ばされるようになっている。
【0017】
感圧センサ34は、穀粒流路の外部に位置する回動部材32の他端部に当接するように配置されている。本実施形態の感圧センサ34は、センサベース42及びセンサベース取付ボルト43を介して支持プレート38に取り付けられており、感圧センサ34の位置調節や交換が容易である。回動部材32における感圧センサ34との当接面は、衝突板31の取付面と同じ面である。また、その反対側の面には、調整ボルト44が当接しており、その進退操作により回動部材32の微小回動範囲調整(ガタ取り調整)が可能となっている。
【0018】
図7に示すように、コンバイン1は、マイコン(CPU、ROM、RAMなどを含む)からなる制御部45を備えている。制御部45の入力側には、車軸回転に基づいて車速を検出するT/M回転センサ46と、チャフシーブ25のフィン開度を検出するフィン開度ポテンショメータ47と、三番飛散を検出する三番センサ48と、前述した二番流量センサSとが接続されており、また、制御部45の出力側には、チャフシーブ25のフィン開度を変更するフィン開度調節モータ49が接続されている。
【0019】
そして、制御部45においては、二番流量センサSの検出値が所定の目標値範囲内となるように、チャフシーブ25のフィン開度を自動制御する二番流量制御が実行される。具体的には、二番流量センサSの検出値が目標値範囲上限を超えた場合は、二番還元物の流量を減らすべく、チャフシーブ25のフィン開度を大きくする一方、二番流量センサSの検出値が目標値範囲下限に満たない場合は、二番還元物の流量を増やすべく、チャフシーブ25のフィン開度を小さくするが、このような制御手順は、従来の二番流量制御とほぼ同様であるため、二番流量制御の詳細フロー及び説明は省略する。
【0020】
本発明に係る制御部45は、二番流量センサSの検出値に基づいて、二番流量制御の異常状態を判断する異常判断手段と、該異常判断手段が異常状態であると判断したとき、所定の異常回避処理を実行し、二番流量制御を続行させる異常回避手段とを備える点に特徴がある。このようにすると、二番流量制御の異常状態を判断した場合に、所定の異常回避処理を実行し、二番流量制御を続行させることができるので、オペレータの操作負担を増加させることがないだけでなく、所定の異常回避処理により二番流量制御の異常状態を積極的に解消し、異常状態による被害の拡大を防止することができる。
【0021】
異常判断手段は、二番流量センサSの検出値が目標値範囲の上限を超える状態が所定時間続いたときや(図8参照)、二番流量センサSの検出値が目標値範囲を超えて上下する変動回数が単位時間あたりで所定回数以上となったとき(図9参照)、異常状態であると判断するようになっている。このようにすると、二番流量センサSの検出値が目標値範囲の上限を超える状態が所定時間続いたときだけでなく(二番物の過剰循環状態)、二番流量センサSの検出値が目標値範囲を超えて上下する変動回数が単位時間あたりで所定回数以上となったときにも(オーバーシュートを繰り返す脈動状態)、異常状態であると判断し、適切な異常回避処理を実行することができる。
【0022】
異常回避処理手段は、異常判断手段が異常状態(特に、二番物の過剰循環状態)であると判断したとき、チャフシーブ25のフィン開度を一度全開にし、二番流量制御を続行させる。このようにすると、チャフシーブ25における穀粒のオーバーフローを防止し、三番飛散を減らすことができるだけでなく、二番物の過剰循環状態を迅速に解消し、過剰循環による二番流量センサSの破損を防止できる。
【0023】
また、異常回避処理手段は、異常判断手段が異常状態(特に、脈動状態)であると判断したとき、二番流量制御の制御感度(ゲイン)を変更し、二番流量制御を続行させる。このようにすると、二番流量制御の制御感度が自動的に適正化されるので、オペレータによる感度調整が不要になるだけでなく、制御感度の不適合に基づく、脈動状態などの不安定な制御状態や、処理精度の低下を防止することができる。
【0024】
次に、上記のような各種手段を実現する制御部45の具体的な制御手順について、図10及び図11を参照して説明する。図10に示すように、制御部45は、二番過剰循環防止制御を実行する。この制御では、まず、二番流量センサSの検出値に基づいて二番流量測定を行うと共に(S11)、二番流量が過剰であるか否かを判断する(S12)。この判断結果がYESの場合は、過剰循環状態の継続時間を測定すると共に(S13)、この測定時間が規定時間以上となったか否かを判断する(S14)。この判断結果がYESの場合は、二番物の過剰循環状態、すなわち、二番流量制御の異常状態であると判断し、チャフシーブ25のフィン開度を一度全開にする(S15)。そして、チャフシーブ25を一度全開させた後は、フィン開度を初期位置にセットして二番流量制御を続行させる(S16)。また、チャフシーブ25を一度全開させた場合は、所定時間内における全開動作回数を把握すると共に(S17)、この回数が規定回数を超えたか否かを判断し(S18)、該判断結果がYESになったら、所定の警報を発する(S19)。つまり、二番過剰循環防止制御では、二番物の過剰循環状態が発生した場合、チャフシーブ25を一度全開にすることにより、過剰循環状態の解消を試みるが、何度全開にしても過剰循環状態が解消しない場合は、警報によりオペレータに対応を求めるようになっている。なお、図10に示す二番過剰循環防止制御では、S11〜S14が異常判断手段であり、S15が異常回避処理手段である。
【0025】
図11に示すように、制御部45は、二番流量脈動防止制御を実行する。この制御では、まず、二番流量センサSの検出値に基づいて二番流量を測定すると共に(S21)、脈動発生の有無を判定する(S22)。具体的には、二番流量センサSの検出値が目標値範囲を超えて上下する変動回数をカウントする。そして、単位時間あたりの変動回数が規定回数以内であるか否かを判断し(S23)、該判断結果がNOの場合は、脈動状態であると判定し、二番流量制御の制御感度(ゲイン)を変更する(S24)。具体的には、二番流量制御の制御感度を落すことにより、脈動状態を解消する。なお、図11に示す二番流量脈動防止制御では、S21〜S23が異常判断手段であり、S24が異常回避処理手段である。
【0026】
尚、本実施形態では、二番流量センサSの検出値に基づいて二番流量制御の異常状態を判断しているが、さらに、三番センサ48の検出値に基づいて二番流量制御の異常状態を判断し、所定の異常回避処理を実行するようにしてもよい。このとき、シート状の感圧センサを排塵室20の後部壁に設置し、三番センサ48として機能させることができる。具体的に説明すると、図12に示すように、籾は、屑に比べて比重(かさ密度)が高く、抗力が低いため、揺動選別体15の振動により運動が与えられた状態で籾が飛散しようするとき、排塵室20の後部壁に衝突する。これに対して屑は、抗力が大きく、風の影響を多分に受けるので、排塵室20の後部壁には到達できず、排塵ファン21に吸引される。従って、排塵室20の後部壁に感圧センサからなる三番センサ48を設置すると、三番飛散粒のみを精度良く検出することができる。
【0027】
ただし、三番センサ48として用いる感圧センサの検出精度が高い場合は、三番飛散粒の衝突だけでなく、機体振動なども検出してしまうため、何らかの対策が必要となる。本実施形態では、三番センサ48と同等の感圧センサからなる補正用センサ50を穀粒が衝突しない位置に設置し、三番センサ48及び補正用センサ50の出力を比較・演算することにより、機体振動などによるノイズを除去し、三番飛散粒のみを正確に検出する。具体的には、排塵室20の後部壁前面に設置される三番センサ48に対し、補正用センサ50を排塵室20の後部壁後面に設置し、三番センサ48の出力と補正用センサ50の出力との差分により、三番飛散粒の衝突を検出する。
【0028】
また、図13に示すように、本実施形態の制御部45は、初期値決定制御を実行する。この制御は、刈り始めのフィン開度(初期値)を圃場の収量に応じて自動的に決定する制御であり、まず、チャフシーブ25を全閉にして全量を二番ラセン18に流し(S31)、二番流量センサS及びT/M回転センサ46の検出値に基づいて、その圃場の平均収量を推定する(S32、S33)。具体的には、二番流量が規定流量を超えたら、単位時間あたりの二番流量を積算し、これに車速を加味してその圃場の平均収量を算出する。次に、平均収量に基づいてフィン開度の初期値を決定すると共に(S34)、決定した初期値をフィン開度にセットする(S35)。
【0029】
このような初期値決定制御によれば、オペレータによる初期値設定操作が不要になるだけでなく、初期値設定操作具を不要にしてコストダウンを図ることができる。また、オペレータが平均収量を判断するための試し刈り区間が不要になると共に、精度の高い初期値設定を行うことができるので、藁屑の混入や三番飛散の発生も抑制することができる。
【0030】
尚、本実施形態では、二番流量に基づいて平均収量を算出しているが、一番流量センサ(例えば、揚穀筒22の排出口に設置される二番流量センサSと同等のセンサ)を備えるコンバインでは、図14に示すように、一番流量に基づいて平均収量を算出してもよい。具体的に説明すると、図14に示す初期値決定制御では、まず、チャフシーブ25を全開にして全量を一番ラセン17に流し(S41)、一番流量センサ及びT/M回転センサ46の検出値に基づいて、その圃場の平均収量を推定する(S42、S43)。具体的には、一番流量が規定流量を超えたら、単位時間あたりの一番流量を積算し、これに車速を加味してその圃場の平均収量を算出する。次に、平均収量に基づいてフィン開度の初期値を決定すると共に(S44)、決定した初期値をフィン開度にセットする(S45)。このようにしても、図13に示す初期値決定制御と同等の作用効果が得られる。また、図14に示す初期値設定制御では、チャフシーブ25を全開にして全量を一番ラセン17に流すので、刈り始めにおける三番飛散の発生を大幅に低減することができる。
【0031】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、二番還元物の流量を検出する二番流量センサSと、フィン開度を変更可能なチャフシーブ25と、二番流量制御を行う制御部45とを備え、二番流量制御では、二番流量センサSの検出値が所定の目標値範囲内となるようにチャフシーブ25のフィン開度を自動的に制御するコンバイン1において、制御部45は、二番流量センサSの検出値に基づいて、二番流量制御の異常状態を判断する異常判断手段と、該異常判断手段が異常状態であると判断したとき、所定の異常回避処理を実行し、二番流量制御を続行させる異常回避処理手段とを備えるので、オペレータの操作負担を増加させることがないだけでなく、所定の異常回避処理により二番流量制御の異常状態を積極的に解消し、異常状態による被害の拡大を防止することができる。
【0032】
また、異常判断手段は、二番流量センサSの検出値が目標値範囲の上限を超える状態が所定時間続いたときや、二番流量センサSの検出値が目標値範囲を超えて上下する変動回数が単位時間あたりで所定回数以上となったとき、異常状態であると判断するので、二番物の過剰循環状態だけでなく、二番流量の脈動状態においても異常状態であると判断し、適切な異常回避処理を実行することができる。
【0033】
また、異常回避処理手段は、異常判断手段が異常状態であると判断したとき、チャフシーブ25のフィン開度を一度全開にし、二番流量制御を続行させるので、チャフシーブ25における穀粒のオーバーフローを防止し、三番飛散を減らすことができるだけでなく、二番物の過剰循環状態を迅速に解消し、過剰循環による二番流量センサSの破損を防止できる。
【0034】
また、異常回避処理手段は、異常判断手段が異常状態であると判断したとき、二番流量制御の制御感度を変更し、二番流量制御を続行させるので、二番流量制御の制御感度が自動的に適正化されることになる。これにより、オペレータによる感度調整が不要になるだけでなく、制御感度の不適合に基づく、脈動状態などの不安定な制御状態や、処理精度の低下を防止することができる。
【0035】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る制御部の処理手順について、図15を参照して説明する。この図に示すように、第二実施形態の二番過剰循環防止制御では、二番物の過剰循環状態を判断した場合に、チャフシーブ25のフィン開度を一度全開にするのではなく、二番流量制御の制御感度(ゲイン)を変更する点が第一実施形態の二番過剰循環防止制御と相違している。このようにしても、二番物の過剰循環状態を積極的に解消し、二番流量制御を正常な状態に戻すことができる。
【0036】
具体的に説明すると、第二実施形態の二番過剰循環防止制御では、まず、二番流量センサSの検出値に基づいて二番流量測定を行うと共に(S51)、二番流量が過剰であるか否かを判断する(S52)。この判断結果がYESの場合は、過剰循環状態の継続時間を測定すると共に(S53)、この測定時間が規定時間以上となったか否かを判断する(S54)。この判断結果がYESの場合は、二番物の過剰循環状態、すなわち、二番流量制御の異常状態であると判断し、二番流量制御の制御感度を変更する(S55)。具体的には、制御感度を上げることにより、二番の過剰循環状態を迅速に解消する。なお、図15に示す二番過剰循環防止制御では、S51〜S54が異常判断手段であり、S55が異常回避処理手段である。
【0037】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論である。例えば、二番流量制御の異常状態を判断した場合に、最初の対策としてチャフシーブ25を一度全開にし、それでも異常状態が解消されない場合は、次の対策として二番流量制御の制御感度を変更し、それでも異常状態が解消されない場合は、警報を発するといった複合的な異常回避処理を実行してもよい。また逆に、二番流量制御の異常状態を判断した場合に、最初の対策として二番流量制御の制御感度を変更し、それでも異常状態が解消されない場合は、次の対策としてチャフシーブ25を一度全開にし、それでも異常状態が解消されない場合は、警報を発するといった複合的な異常回避処理を実行してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】脱穀選別部の内部側面図である。
【図3】二番還元筒の側面図である。
【図4】二番還元筒のA矢視図である。
【図5】二番還元筒のA矢視断面図である。
【図6】二番流量センサの側面図である。
【図7】制御部の入出力を示すブロック図である。
【図8】二番物の過剰循環状態を示す波形図である。
【図9】二番流量の脈動状態を示す波形図である。
【図10】二番過剰循環防止制御のフローチャートである。
【図11】二番流量脈動防止制御のフローチャートである。
【図12】脱穀選別部における籾、屑及び風の流れを示す模式図である。
【図13】初期値決定制御のフローチャートである。
【図14】初期値決定制御の他例を示すフローチャートである。
【図15】二番過剰循環防止制御の他例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1 コンバイン
2 前処理部
3 脱穀選別部
23 二番還元筒
25 チャフシーブ
45 制御部
S 二番流量センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインなどの脱穀選別装置に関し、特に、二番流量センサの検出値に基づいてチャフシーブのフィン開度を自動的に制御する二番流量制御機能を備えた脱穀選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、チャフシーブのフィン開度を変更可能に構成すると共に、処理状況に応じてチャフシーブのフィン開度を自動的に制御する脱穀選別装置が知られている。例えば、特許文献1、2に示されるコンバインでは、二番還元物の流量を二番流量センサで検出すると共に、二番流量センサの検出値に基づいてチャフシーブのフィン開度を自動制御する二番流量制御が行われるようになっている。このような二番流量制御によれば、材料条件等に拘わらず二番流量を適正化することができるので、高効率で精度の高い脱穀選別処理を行うことが可能になる。
【特許文献1】特開昭61−5725号公報
【特許文献2】実開昭60−168346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような脱穀選別装置では、二番流量制御の異常状態、つまり、二番流量を制御しきれない状態が発生する可能性がある。例えば、二番流量制御を実行しているにも拘わらず、二番流量センサの検出値が目標値範囲の上限を超える状態が所定時間以上続くことがある。このような二番物の過剰循環状態が続くと、二番流量センサが破損したり、三番飛散が増大する可能性があるため、何らかの対策が必要となる。
【0004】
そこで、特許文献1に示されるコンバインでは、二番流量制御が異常状態であると判断したとき、警報を発するようになっている。また、特許文献2に示されるコンバインでは、二番流量制御が異常状態であると判断したとき、警報を発すると共に、二番流量制御を停止させ、その後、二番還元物量が所定範囲内となったら、二番流量制御を再開するようになっている。
【0005】
しかしながら、上記のような異常対策では、警報に応じてオペレータが何らかの異常回避操作(例えば、手動フィン開度調整)を行わない限り、積極的に異常状態を回避することはできないため、オペレータの操作負担が増加してしまい、また、オペレータが適切な異常回避操作を行わない場合には、異常状態が回避されないため、異常状態による被害が拡大する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、二番還元物の流量を検出する二番流量センサと、フィン開度を変更可能なチャフシーブと、二番流量制御を行う制御部とを備え、二番流量制御では、二番流量センサの検出値が所定の目標値範囲内となるようにチャフシーブのフィン開度を自動的に制御する脱穀選別装置において、前記制御部は、二番流量センサの検出値に基づいて、二番流量制御の異常状態を判断する異常判断手段と、該異常判断手段が異常状態であると判断したとき、所定の異常回避処理を実行し、二番流量制御を続行させる異常回避処理手段とを備えることを特徴とする。このようにすると、二番流量制御の異常状態を判断した場合に、所定の異常回避処理を実行し、二番流量制御を続行させるので、オペレータの操作負担を増加させることがないだけでなく、所定の異常回避処理により二番流量制御の異常状態を積極的に解消し、異常状態による被害の拡大を防止することができる。
また、前記異常判断手段は、二番流量センサの検出値が目標値範囲の上限を超える状態が所定時間続いたとき、及び/又は、二番流量センサの検出値が目標値範囲を超えて上下する変動回数が単位時間あたりで所定回数以上となったとき、異常状態であると判断することを特徴とする。このようにすると、二番流量センサの検出値が目標値範囲の上限を超える状態が所定時間続いたときだけでなく(二番物の過剰循環状態)、二番流量センサの検出値が目標値範囲を超えて上下する変動回数が単位時間あたりで所定回数以上となったときにも(オーバーシュートを繰り返す脈動状態)、異常状態であると判断し、適切な異常回避処理を実行することができる。
また、前記異常回避処理手段は、異常判断手段が異常状態であると判断したとき、チャフシーブのフィン開度を一度全開にし、二番流量制御を続行させることを特徴とする。このようにすると、チャフシーブにおける穀粒のオーバーフローを防止し、三番飛散を減らすことができるだけでなく、二番物の過剰循環状態を迅速に解消し、過剰循環による二番流量センサの破損を防止できる。
また、前記異常回避処理手段は、異常判断手段が異常状態であると判断したとき、二番流量制御の制御感度を変更し、二番流量制御を続行させることを特徴とする。このようにすると、二番流量制御の制御感度が自動的に適正化されるので、オペレータによる感度調整が不要になるだけでなく、制御感度の不適合に基づく、脈動状態などの不安定な制御状態や、処理精度の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[第一実施形態]
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1はコンバイン(脱穀選別装置)であって、該コンバイン1は、茎稈を刈取る前処理部2と、刈取茎稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀選別部3と、脱穀済みの排稈を後処理する後処理部4と、選別した穀粒を貯留する穀粒タンク5と、オペレータが乗車する操作部6と、クローラ式の走行部7とを備えて構成されている。
【0008】
前処理部2は、未刈り茎稈の分草及び引起しを行いつつ、茎稈の株元を刈り取り、刈り取った茎稈を脱穀選別部3に向けて搬送する。脱穀選別部3への搬送過程では、稈長に応じた茎稈の挟持位置調整が行われ、脱穀選別部3における扱深さが適正に保たれるようになっている。また、前処理部2は、その全体が走行機体の前端部に昇降自在に連結されており、非刈取走行時には上昇操作され、刈取走行時には下降操作される。
【0009】
図2に示すように、脱穀選別部3は、茎稈を扱室8に沿って搬送する脱穀フィードチェン9と、脱穀済みの茎稈を後処理部4まで搬送する排藁搬送装置10と、扱室8に回転自在に内装され、搬送茎稈から処理物(混合物を含む穀粒)を脱穀する扱胴11と、ここで脱穀された処理物を漏下する第一受網12と、第一受網12から漏下せずに扱室8の終端まで達した処理物を単粒化処理する処理胴13と、ここで単粒化された処理物を漏下させる第二受網14と、第一受網12や第二受網14から漏下した処理物を揺動選別する揺動選別体15と、該揺動選別体15の前方で選別風を起風する圧風ファン16と、一番物を回収する一番ラセン17と、二番物を回収する二番ラセン18と、二番ラセン18の前方で二番選別風を起風する二番選別ファン19と、揺動選別体15の終端部上方に設けられる排塵室20と、該排塵室20に回転自在に内装される排塵ファン21とを備えて構成されている。そして、一番ラセン17によって回収された一番物は、揚穀筒22を介して穀粒タンク5に貯留され、二番ラセン18によって回収された二番物は、二番還元筒23を介して揺動選別体15上に還元されるようになっている。
【0010】
揺動選別体15は、第一受網12から漏下した処理物を後方へ順次搬送する揺動流板24と、該揺動流板24から搬送される処理物を篩い選別するチャフシーブ25と、該チャフシーブ25から漏下した処理物をさらに篩い選別するグレンシーブ26と、チャフシーブ25の後方に配置されるストロラック27とを備える揺動アッセンブリであり、図示しない駆動機構(クランク機構、カム機構など)によって所定の周期で連続的に往復揺動される。
【0011】
チャフシーブ25は、前後方向に所定間隔を存して並列する複数のフィン25aを備えて構成されている。各フィン25aは、前低後高状に傾斜しており、揺動選別体15の揺動に伴って処理物を後方へ移送しつつ、フィン25a間の隙間から穀粒を漏下させる。チャフシーブ25におけるフィン25a間の隙間(フィン開度)は変更可能であり、このフィン開度変更に基づいて二番還元物の流量が適正化されるようになっている。具体的には、二番還元筒23の二番還元口Kに、二番還元物の流量を検出する二番流量センサSを設けると共に、該二番流量センサSの検出値が所定の目標値範囲内となるように、チャフシーブ25のフィン開度を自動制御する二番流量制御が行われるようになっている。
【0012】
図3〜図5に示すように、二番還元筒23は、二番ラセン18の終端から二番還元口Kに至る二番還元用の穀粒流路を形成しており、その内部には、二番物を揚上搬送するラセン搬送体28が回転自在に内装されている。また、ラセン搬送体28の上端部には、二番物を外周方向に投擲する放出板29と、投擲された二番物を二番還元口Kに向けて放出ガイドする円弧状の放出ガイド30とが設けられており、二番還元筒23の上端部まで搬送された二番物は、放出板29の投擲作用並びに放出ガイド30のガイド作用を受けて、二番還元口Kから積極的に放出されるようになっている。
【0013】
図3〜図6に示すように、本実施形態の二番流量センサSは、二番還元筒23の終端部に形成される穀粒流路(二番物放出流路)において穀粒の流量を検出するように設けられており、穀粒流路の内部で穀粒と衝突する衝突板31と、衝突板31に作用する衝突力が回動力として伝達される回動部材32と、回動部材32を回動自在に支持する支点軸33と、穀粒流路の外部で回動部材32の回動力を検出する感圧センサ34とを備えて構成され、該感圧センサ34の検出値を二番物の検出流量として出力するようになっている。
【0014】
具体的に説明すると、二番還元筒23の天板23aには、二番流量センサSの取付孔(図示せず)が形成されており、この取付孔を塞ぐように二番流量センサSの取付プレート35が取り付けられる。取付プレート35は、長孔35aを貫通する取付ボルト36で天板23aに取付けられており、取付ボルト36を緩めると、長孔35aに沿った取付プレート35の位置変更により、二番流量センサSの取付角度を調節することが可能になる。
【0015】
取付プレート35には、回動部材32が貫通可能な貫通孔35bが形成されると共に、その周縁から複数の支持プレート38が角筒状に立設されている。角筒状に立設された支持プレート38の内部には、回動部材32が挿通されると共に、側方から支持プレート38及び回動部材32を貫く支点軸33により、回動部材32が回動自在に支持される。本実施形態の支点軸33は、支点軸ベース39及び支点軸ベース取付ボルト40を介して支持プレート38に取り付けられており、支点軸33の位置調節が容易である。
【0016】
衝突板31は、穀粒流路の内部に位置する回動部材32の一端部に一体的に設けられる。本実施形態では、放出ガイド30の延長線に沿って衝突板31を配置することにより、比較的流れ方向が安定した穀粒を衝突板31に衝突させるようになっている。尚、放出ガイド30の裏側には、送風装置41が設けられており、この送風装置41の送風により、衝突板31の裏側に溜まった物が選別室内に向けて吹き飛ばされるようになっている。
【0017】
感圧センサ34は、穀粒流路の外部に位置する回動部材32の他端部に当接するように配置されている。本実施形態の感圧センサ34は、センサベース42及びセンサベース取付ボルト43を介して支持プレート38に取り付けられており、感圧センサ34の位置調節や交換が容易である。回動部材32における感圧センサ34との当接面は、衝突板31の取付面と同じ面である。また、その反対側の面には、調整ボルト44が当接しており、その進退操作により回動部材32の微小回動範囲調整(ガタ取り調整)が可能となっている。
【0018】
図7に示すように、コンバイン1は、マイコン(CPU、ROM、RAMなどを含む)からなる制御部45を備えている。制御部45の入力側には、車軸回転に基づいて車速を検出するT/M回転センサ46と、チャフシーブ25のフィン開度を検出するフィン開度ポテンショメータ47と、三番飛散を検出する三番センサ48と、前述した二番流量センサSとが接続されており、また、制御部45の出力側には、チャフシーブ25のフィン開度を変更するフィン開度調節モータ49が接続されている。
【0019】
そして、制御部45においては、二番流量センサSの検出値が所定の目標値範囲内となるように、チャフシーブ25のフィン開度を自動制御する二番流量制御が実行される。具体的には、二番流量センサSの検出値が目標値範囲上限を超えた場合は、二番還元物の流量を減らすべく、チャフシーブ25のフィン開度を大きくする一方、二番流量センサSの検出値が目標値範囲下限に満たない場合は、二番還元物の流量を増やすべく、チャフシーブ25のフィン開度を小さくするが、このような制御手順は、従来の二番流量制御とほぼ同様であるため、二番流量制御の詳細フロー及び説明は省略する。
【0020】
本発明に係る制御部45は、二番流量センサSの検出値に基づいて、二番流量制御の異常状態を判断する異常判断手段と、該異常判断手段が異常状態であると判断したとき、所定の異常回避処理を実行し、二番流量制御を続行させる異常回避手段とを備える点に特徴がある。このようにすると、二番流量制御の異常状態を判断した場合に、所定の異常回避処理を実行し、二番流量制御を続行させることができるので、オペレータの操作負担を増加させることがないだけでなく、所定の異常回避処理により二番流量制御の異常状態を積極的に解消し、異常状態による被害の拡大を防止することができる。
【0021】
異常判断手段は、二番流量センサSの検出値が目標値範囲の上限を超える状態が所定時間続いたときや(図8参照)、二番流量センサSの検出値が目標値範囲を超えて上下する変動回数が単位時間あたりで所定回数以上となったとき(図9参照)、異常状態であると判断するようになっている。このようにすると、二番流量センサSの検出値が目標値範囲の上限を超える状態が所定時間続いたときだけでなく(二番物の過剰循環状態)、二番流量センサSの検出値が目標値範囲を超えて上下する変動回数が単位時間あたりで所定回数以上となったときにも(オーバーシュートを繰り返す脈動状態)、異常状態であると判断し、適切な異常回避処理を実行することができる。
【0022】
異常回避処理手段は、異常判断手段が異常状態(特に、二番物の過剰循環状態)であると判断したとき、チャフシーブ25のフィン開度を一度全開にし、二番流量制御を続行させる。このようにすると、チャフシーブ25における穀粒のオーバーフローを防止し、三番飛散を減らすことができるだけでなく、二番物の過剰循環状態を迅速に解消し、過剰循環による二番流量センサSの破損を防止できる。
【0023】
また、異常回避処理手段は、異常判断手段が異常状態(特に、脈動状態)であると判断したとき、二番流量制御の制御感度(ゲイン)を変更し、二番流量制御を続行させる。このようにすると、二番流量制御の制御感度が自動的に適正化されるので、オペレータによる感度調整が不要になるだけでなく、制御感度の不適合に基づく、脈動状態などの不安定な制御状態や、処理精度の低下を防止することができる。
【0024】
次に、上記のような各種手段を実現する制御部45の具体的な制御手順について、図10及び図11を参照して説明する。図10に示すように、制御部45は、二番過剰循環防止制御を実行する。この制御では、まず、二番流量センサSの検出値に基づいて二番流量測定を行うと共に(S11)、二番流量が過剰であるか否かを判断する(S12)。この判断結果がYESの場合は、過剰循環状態の継続時間を測定すると共に(S13)、この測定時間が規定時間以上となったか否かを判断する(S14)。この判断結果がYESの場合は、二番物の過剰循環状態、すなわち、二番流量制御の異常状態であると判断し、チャフシーブ25のフィン開度を一度全開にする(S15)。そして、チャフシーブ25を一度全開させた後は、フィン開度を初期位置にセットして二番流量制御を続行させる(S16)。また、チャフシーブ25を一度全開させた場合は、所定時間内における全開動作回数を把握すると共に(S17)、この回数が規定回数を超えたか否かを判断し(S18)、該判断結果がYESになったら、所定の警報を発する(S19)。つまり、二番過剰循環防止制御では、二番物の過剰循環状態が発生した場合、チャフシーブ25を一度全開にすることにより、過剰循環状態の解消を試みるが、何度全開にしても過剰循環状態が解消しない場合は、警報によりオペレータに対応を求めるようになっている。なお、図10に示す二番過剰循環防止制御では、S11〜S14が異常判断手段であり、S15が異常回避処理手段である。
【0025】
図11に示すように、制御部45は、二番流量脈動防止制御を実行する。この制御では、まず、二番流量センサSの検出値に基づいて二番流量を測定すると共に(S21)、脈動発生の有無を判定する(S22)。具体的には、二番流量センサSの検出値が目標値範囲を超えて上下する変動回数をカウントする。そして、単位時間あたりの変動回数が規定回数以内であるか否かを判断し(S23)、該判断結果がNOの場合は、脈動状態であると判定し、二番流量制御の制御感度(ゲイン)を変更する(S24)。具体的には、二番流量制御の制御感度を落すことにより、脈動状態を解消する。なお、図11に示す二番流量脈動防止制御では、S21〜S23が異常判断手段であり、S24が異常回避処理手段である。
【0026】
尚、本実施形態では、二番流量センサSの検出値に基づいて二番流量制御の異常状態を判断しているが、さらに、三番センサ48の検出値に基づいて二番流量制御の異常状態を判断し、所定の異常回避処理を実行するようにしてもよい。このとき、シート状の感圧センサを排塵室20の後部壁に設置し、三番センサ48として機能させることができる。具体的に説明すると、図12に示すように、籾は、屑に比べて比重(かさ密度)が高く、抗力が低いため、揺動選別体15の振動により運動が与えられた状態で籾が飛散しようするとき、排塵室20の後部壁に衝突する。これに対して屑は、抗力が大きく、風の影響を多分に受けるので、排塵室20の後部壁には到達できず、排塵ファン21に吸引される。従って、排塵室20の後部壁に感圧センサからなる三番センサ48を設置すると、三番飛散粒のみを精度良く検出することができる。
【0027】
ただし、三番センサ48として用いる感圧センサの検出精度が高い場合は、三番飛散粒の衝突だけでなく、機体振動なども検出してしまうため、何らかの対策が必要となる。本実施形態では、三番センサ48と同等の感圧センサからなる補正用センサ50を穀粒が衝突しない位置に設置し、三番センサ48及び補正用センサ50の出力を比較・演算することにより、機体振動などによるノイズを除去し、三番飛散粒のみを正確に検出する。具体的には、排塵室20の後部壁前面に設置される三番センサ48に対し、補正用センサ50を排塵室20の後部壁後面に設置し、三番センサ48の出力と補正用センサ50の出力との差分により、三番飛散粒の衝突を検出する。
【0028】
また、図13に示すように、本実施形態の制御部45は、初期値決定制御を実行する。この制御は、刈り始めのフィン開度(初期値)を圃場の収量に応じて自動的に決定する制御であり、まず、チャフシーブ25を全閉にして全量を二番ラセン18に流し(S31)、二番流量センサS及びT/M回転センサ46の検出値に基づいて、その圃場の平均収量を推定する(S32、S33)。具体的には、二番流量が規定流量を超えたら、単位時間あたりの二番流量を積算し、これに車速を加味してその圃場の平均収量を算出する。次に、平均収量に基づいてフィン開度の初期値を決定すると共に(S34)、決定した初期値をフィン開度にセットする(S35)。
【0029】
このような初期値決定制御によれば、オペレータによる初期値設定操作が不要になるだけでなく、初期値設定操作具を不要にしてコストダウンを図ることができる。また、オペレータが平均収量を判断するための試し刈り区間が不要になると共に、精度の高い初期値設定を行うことができるので、藁屑の混入や三番飛散の発生も抑制することができる。
【0030】
尚、本実施形態では、二番流量に基づいて平均収量を算出しているが、一番流量センサ(例えば、揚穀筒22の排出口に設置される二番流量センサSと同等のセンサ)を備えるコンバインでは、図14に示すように、一番流量に基づいて平均収量を算出してもよい。具体的に説明すると、図14に示す初期値決定制御では、まず、チャフシーブ25を全開にして全量を一番ラセン17に流し(S41)、一番流量センサ及びT/M回転センサ46の検出値に基づいて、その圃場の平均収量を推定する(S42、S43)。具体的には、一番流量が規定流量を超えたら、単位時間あたりの一番流量を積算し、これに車速を加味してその圃場の平均収量を算出する。次に、平均収量に基づいてフィン開度の初期値を決定すると共に(S44)、決定した初期値をフィン開度にセットする(S45)。このようにしても、図13に示す初期値決定制御と同等の作用効果が得られる。また、図14に示す初期値設定制御では、チャフシーブ25を全開にして全量を一番ラセン17に流すので、刈り始めにおける三番飛散の発生を大幅に低減することができる。
【0031】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、二番還元物の流量を検出する二番流量センサSと、フィン開度を変更可能なチャフシーブ25と、二番流量制御を行う制御部45とを備え、二番流量制御では、二番流量センサSの検出値が所定の目標値範囲内となるようにチャフシーブ25のフィン開度を自動的に制御するコンバイン1において、制御部45は、二番流量センサSの検出値に基づいて、二番流量制御の異常状態を判断する異常判断手段と、該異常判断手段が異常状態であると判断したとき、所定の異常回避処理を実行し、二番流量制御を続行させる異常回避処理手段とを備えるので、オペレータの操作負担を増加させることがないだけでなく、所定の異常回避処理により二番流量制御の異常状態を積極的に解消し、異常状態による被害の拡大を防止することができる。
【0032】
また、異常判断手段は、二番流量センサSの検出値が目標値範囲の上限を超える状態が所定時間続いたときや、二番流量センサSの検出値が目標値範囲を超えて上下する変動回数が単位時間あたりで所定回数以上となったとき、異常状態であると判断するので、二番物の過剰循環状態だけでなく、二番流量の脈動状態においても異常状態であると判断し、適切な異常回避処理を実行することができる。
【0033】
また、異常回避処理手段は、異常判断手段が異常状態であると判断したとき、チャフシーブ25のフィン開度を一度全開にし、二番流量制御を続行させるので、チャフシーブ25における穀粒のオーバーフローを防止し、三番飛散を減らすことができるだけでなく、二番物の過剰循環状態を迅速に解消し、過剰循環による二番流量センサSの破損を防止できる。
【0034】
また、異常回避処理手段は、異常判断手段が異常状態であると判断したとき、二番流量制御の制御感度を変更し、二番流量制御を続行させるので、二番流量制御の制御感度が自動的に適正化されることになる。これにより、オペレータによる感度調整が不要になるだけでなく、制御感度の不適合に基づく、脈動状態などの不安定な制御状態や、処理精度の低下を防止することができる。
【0035】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る制御部の処理手順について、図15を参照して説明する。この図に示すように、第二実施形態の二番過剰循環防止制御では、二番物の過剰循環状態を判断した場合に、チャフシーブ25のフィン開度を一度全開にするのではなく、二番流量制御の制御感度(ゲイン)を変更する点が第一実施形態の二番過剰循環防止制御と相違している。このようにしても、二番物の過剰循環状態を積極的に解消し、二番流量制御を正常な状態に戻すことができる。
【0036】
具体的に説明すると、第二実施形態の二番過剰循環防止制御では、まず、二番流量センサSの検出値に基づいて二番流量測定を行うと共に(S51)、二番流量が過剰であるか否かを判断する(S52)。この判断結果がYESの場合は、過剰循環状態の継続時間を測定すると共に(S53)、この測定時間が規定時間以上となったか否かを判断する(S54)。この判断結果がYESの場合は、二番物の過剰循環状態、すなわち、二番流量制御の異常状態であると判断し、二番流量制御の制御感度を変更する(S55)。具体的には、制御感度を上げることにより、二番の過剰循環状態を迅速に解消する。なお、図15に示す二番過剰循環防止制御では、S51〜S54が異常判断手段であり、S55が異常回避処理手段である。
【0037】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論である。例えば、二番流量制御の異常状態を判断した場合に、最初の対策としてチャフシーブ25を一度全開にし、それでも異常状態が解消されない場合は、次の対策として二番流量制御の制御感度を変更し、それでも異常状態が解消されない場合は、警報を発するといった複合的な異常回避処理を実行してもよい。また逆に、二番流量制御の異常状態を判断した場合に、最初の対策として二番流量制御の制御感度を変更し、それでも異常状態が解消されない場合は、次の対策としてチャフシーブ25を一度全開にし、それでも異常状態が解消されない場合は、警報を発するといった複合的な異常回避処理を実行してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】脱穀選別部の内部側面図である。
【図3】二番還元筒の側面図である。
【図4】二番還元筒のA矢視図である。
【図5】二番還元筒のA矢視断面図である。
【図6】二番流量センサの側面図である。
【図7】制御部の入出力を示すブロック図である。
【図8】二番物の過剰循環状態を示す波形図である。
【図9】二番流量の脈動状態を示す波形図である。
【図10】二番過剰循環防止制御のフローチャートである。
【図11】二番流量脈動防止制御のフローチャートである。
【図12】脱穀選別部における籾、屑及び風の流れを示す模式図である。
【図13】初期値決定制御のフローチャートである。
【図14】初期値決定制御の他例を示すフローチャートである。
【図15】二番過剰循環防止制御の他例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1 コンバイン
2 前処理部
3 脱穀選別部
23 二番還元筒
25 チャフシーブ
45 制御部
S 二番流量センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二番還元物の流量を検出する二番流量センサと、
フィン開度を変更可能なチャフシーブと、
二番流量制御を行う制御部とを備え、
二番流量制御では、二番流量センサの検出値が所定の目標値範囲内となるようにチャフシーブのフィン開度を自動的に制御する脱穀選別装置において、
前記制御部は、
二番流量センサの検出値に基づいて、二番流量制御の異常状態を判断する異常判断手段と、
該異常判断手段が異常状態であると判断したとき、所定の異常回避処理を実行し、二番流量制御を続行させる異常回避処理手段と
を備えることを特徴とする脱穀選別装置。
【請求項2】
前記異常判断手段は、二番流量センサの検出値が目標値範囲の上限を超える状態が所定時間続いたとき、及び/又は、二番流量センサの検出値が目標値範囲を超えて上下する変動回数が単位時間あたりで所定回数以上となったとき、異常状態であると判断することを特徴とする請求項1記載の脱穀選別装置。
【請求項3】
前記異常回避処理手段は、異常判断手段が異常状態であると判断したとき、チャフシーブのフィン開度を一度全開にし、二番流量制御を続行させることを特徴とする請求項1又は2記載の脱穀選別装置。
【請求項4】
前記異常回避処理手段は、異常判断手段が異常状態であると判断したとき、二番流量制御の制御感度を変更し、二番流量制御を続行させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の脱穀選別装置。
【請求項1】
二番還元物の流量を検出する二番流量センサと、
フィン開度を変更可能なチャフシーブと、
二番流量制御を行う制御部とを備え、
二番流量制御では、二番流量センサの検出値が所定の目標値範囲内となるようにチャフシーブのフィン開度を自動的に制御する脱穀選別装置において、
前記制御部は、
二番流量センサの検出値に基づいて、二番流量制御の異常状態を判断する異常判断手段と、
該異常判断手段が異常状態であると判断したとき、所定の異常回避処理を実行し、二番流量制御を続行させる異常回避処理手段と
を備えることを特徴とする脱穀選別装置。
【請求項2】
前記異常判断手段は、二番流量センサの検出値が目標値範囲の上限を超える状態が所定時間続いたとき、及び/又は、二番流量センサの検出値が目標値範囲を超えて上下する変動回数が単位時間あたりで所定回数以上となったとき、異常状態であると判断することを特徴とする請求項1記載の脱穀選別装置。
【請求項3】
前記異常回避処理手段は、異常判断手段が異常状態であると判断したとき、チャフシーブのフィン開度を一度全開にし、二番流量制御を続行させることを特徴とする請求項1又は2記載の脱穀選別装置。
【請求項4】
前記異常回避処理手段は、異常判断手段が異常状態であると判断したとき、二番流量制御の制御感度を変更し、二番流量制御を続行させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の脱穀選別装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−199995(P2008−199995A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42097(P2007−42097)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
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