説明

脱臭システム及び脱臭システムの使用方法

【課題】本発明が解決しようとする課題は、乾燥方式の生ゴミ処理機に代表される多量の水分と混在した悪臭成分を低温で効率良く脱臭するシステムを提供することである。
【解決手段】吸湿剤が含有された多孔質の無機系吸着剤を吸排気が可能なフレーム内部に充填されてなる脱臭剤充填フィルターと、該脱臭フィルターに通風使用した状態で直接照射できる位置に設置されたマイクロ波照射装置が一体となっていることを特徴とする脱臭システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分(蒸気)と一緒に放出される悪臭成分を効率良く脱臭するために用いられる脱臭システム及び脱臭システムの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生ゴミ処理機に代表される水分と一緒に放出される悪臭成分を対象とした脱臭システム機構としては、活性炭等の脱臭剤をフィルター形状とした吸着メカニズムによる脱臭システムや、加熱ヒーターと触媒フィルターを組み合わせることにより、高温で臭気を分解除去する触媒脱臭システム(例えば、特許文献1参照)などがある。しかしながら、活性炭はそのメカニズムから活性炭内部の細孔に臭気成分が一定量吸着してしまうと、極端に吸着能が低下してしまうことが知られている。加えて、活性炭粒子内の細孔における吸着力が臭気成分特有の沸点でほぼ決定してしまうため、温度上昇や風の流れにより、吸着した臭気成分が再放出してしまうという問題がある。また、加熱ヒーターを使用した触媒システムについても、触媒が活性化する温度まで昇温させるのに時間が掛かるため、脱臭効果が感じられ難いなどの実用上の不具合に加えて、電力コストが大きくなることや、ヒーターによって加熱されたガスの冷却機構を設けなければならず、装置設計が難しくなるという課題があった。
【0003】
一方で、乾燥方式の生ゴミ処理機における生ゴミの処理方式として、微生物を利用したものや、マイクロ波を利用したシステム(例えば、特許文献2参照)も実用化されており、生ゴミ処理槽の低温度化という課題は解決できつつある。しかし、生ゴミから発生する臭気の処理に関しては依然、問題は解決されておらず、効率の良い脱臭システムが模索されている。
【0004】
特許文献2のようにマイクロ波を使うシステムは、水分を選択的に加熱し蒸発減量させるのに適している。これを応用して、マイクロ波を脱臭に利用しようとした提案(例えば、特許文献3参照)もなされてはいるが、実際には、脱臭剤や触媒にマイクロ波を照射しただけではフィルター基材を十分に発熱させて活性化させることはできず、この方法もまた課題を残していた。
【0005】
また、脱臭剤が充填されたフィルターにマイクロ波を照射させることにより、脱臭性能を加熱再生させる脱臭システムも提案されている(例えば、特許文献4参照)。このシステムも、特許文献3と同様に、マイクロ波照射のみでは、脱臭剤の再生に十分な加熱を行うことができないため、穏やかな加熱により、吸着剤の内部の細孔から臭気分子を追い出す程度の効果しか得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−89860号公報
【特許文献2】特開2001−296028号公報
【特許文献3】特開平7−227420号公報
【特許文献4】特開平11−19454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、多量の水分と混在している悪臭成分を低温で効率良く脱臭するシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記の脱臭システムを発明した。
(1)吸湿剤が含有された多孔質無機系吸着剤を、吸排気が可能なフレーム内部に充填されてなる脱臭剤充填フィルターと、通風使用した状態の脱臭剤充填フィルターに直接照射できる位置に設置されたマイクロ波照射装置とが一体となっていることを特徴とする脱臭システム。
【0009】
(2)上記(1)の脱臭システムの脱臭剤充填フィルターにマイクロ波を照射しながら、通風することにより臭気除去を行う脱臭システムの使用方法。
【発明の効果】
【0010】
多量の水分が含有された悪臭成分を効率良く脱臭するため、脱臭剤である多孔質無機系吸着剤と吸湿剤とを共存させて、臭気成分と水分を一緒に脱臭剤充填フィルターの中にトラップすることにより、脱臭効果を高めることを特徴としている。マイクロ波が吸着水分に作用することで急速に発熱し、この熱により、同じ吸着サイトに共存していた臭気成分も分解除去できる脱臭システムを発明した。このシステムにより、装置内を必要以上に高温にすることなく、効率の良い脱臭が可能となる。また、通常吸着材料として使用される多孔質無機系吸着剤が反応場として触媒に近い働きをするため、脱臭剤が長期にわたり使用できるという相乗効果も得られることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例及び比較例で使用した脱臭システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の生ゴミ処理機の脱臭システムを具体的に説明する。なお、以下、「脱臭システム」を略して「システム」とも呼ぶ場合がある。
【0013】
本発明における吸湿剤としては、少なくとも水分を吸着できる機能を有するものであれば良いが、特に化学的に水分を吸着するとともに吸湿しても固体状態を維持する化合物が好ましい。このような化合物としては、例えば金属酸化物、金属の無機酸塩・有機酸塩等が挙げられる。金属酸化物の中では、アルカリ土類金属酸化物が好ましく、無機酸塩としては、硫酸塩を用いることが好ましい。
【0014】
アルカリ土類金属酸化物としては、例えば酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ストロンチウム(SrO)が挙げられる。硫酸塩としては、例えば硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸カルシウム(CaSO)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硫酸コバルト(CoSO)、硫酸ガリウム(Ga(SO)、硫酸チタン(Ti(SO)、硫酸ニッケル(NiSO)等が挙げられる。この他にも、本発明の吸湿剤として、シリカゲル、炭酸カルシウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、水酸化リチウム等も好適な材料として使用することができる。
【0015】
本発明に係わる多孔質無機系吸着剤は、水に対して基本的に不溶又は難溶であり、水中に浸漬しても崩壊しない耐水性を有していることが好ましい。このような脱臭剤として、ハイシリカゼオライト、アルミナ等を骨材に使用したセラミック材料などが挙げられる。また、例えば、活性炭、活性白土、ゼオライト、アルミナ、シリカゲル、活性アルミナ、粘土鉱物等も挙げられる。中でも、ゼオライト、アルミナ、活性炭、粘土鉱物が好適に用いられる。
【0016】
活性炭を用いる場合には、その原料としては、例えば木粉、椰子殻などの植物原料、無煙炭、石油ピッチ、コークス等の石炭、石油系原料、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などの合成樹脂系原料などが挙げられるが、中でも、椰子殻から得られる椰子殻炭や無煙炭、石油ピッチ、コークス等の石炭が好適である。これら活性炭原料は、例えば固定床、移動床、流動床などで賦活化される。賦活化は、例えば水蒸気、塩素、塩化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素等を用いるガス賦活、アルカリ、酸又は塩化亜鉛などの薬品を用いる薬品賦活などがあるが、本発明に用いられる活性炭は、その何れによって賦活化されたものでもよい。
【0017】
本発明に係わる多孔質無機系吸着剤としては、粘土鉱物であっても好ましく用いることができ、親水性表面に吸着した臭気物質が水分によって除去され易く、再生にも適した脱臭剤として使用することができる。例えば、化学組成はシリカを主成分としてAl、Fe、Mg、Znなどの構成金属成分を含有し、形状は四面体結晶を形成する層(4配位層)又は八面体結晶を形成する層(6配位層)からなる単位層が積層した層状構造を有する層状ケイ酸塩(フィロケイ酸塩)を主成分とする材料であり、具体的にはタルク、カオリナイト、セピオライト、ベントナイト、活性ベントナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、酸処理モンモリロナイト、活性白土、燐酸添着活性白土、スチブンサイト、アメサイト、フライポンタイトなどを主成分とする多孔質無機系吸着剤が挙げられる。これらは、天然物、変性物、合成物又は複合化物の何れであっても良い。
【0018】
活性白土は、酸性白土あるいはフラースアースと呼ばれる粘土を硫酸処理して得られる多孔質無機系吸着剤であり、モンモリロナイトを主成分とする。また、ゼオライトは、一般に含水アルミノケイ酸塩をいい、ケイ酸ナトリウムなどをシリカ源、水酸化アルミニウム等をアルミナ源として用い、これらと水酸化ナトリウム水溶液から作られるゲルを乾燥して得られる無機系多孔質担体であり、分子篩い作用と極性分子に選択性を有する。また、シリカゲルは、ケイ酸ナトリウム水溶液を硫酸で処理してゲル化し、硫酸ナトリウムを水洗除去して得られる無機系多孔質担体で、極性分子に選択性を有する。活性アルミナはアルミナ三水和物を加熱脱水して得られる多孔質無機系吸着剤で、極性分子に選択性を有する。
【0019】
粘土鉱物は、一般に、二層又は三層構造として表される単位層が数層乃至数十層積層されて存在するが、このように単位層を積層させず、シリカ微粒子などからなるマトリックス中に単位層を分散させ、粘土鉱物の吸着表面積を拡大した粘土鉱物が合成されており、本発明の多孔質無機系吸着剤として好ましいものである。
【0020】
本発明に用いられる多孔質無機系吸着剤は、固体酸性部位と固体塩基性部位を併せ持つ両性吸着剤であっても良く、アンモニアやトリメチルアミンなどの塩基性臭気成分及び硫化水素やイソ吉草酸などの酸性臭気成分の両者を効率良く脱臭することができる。
【0021】
なお、多孔質無機系吸着剤は、粒状、粉末状や、ペレット状、タブレット状、球状、顆粒状に成型して使用することが好ましい。このうち、ペレット状、球状の吸着剤は通気性が得やすく、ファンの動力などのシステム設計上、有利に用いられる。
【0022】
吸湿剤/多孔質無機系吸着剤の質量比率は、1/100〜50/100が好ましく、5/100〜30/100がより好ましく、10/100〜20/100がさらに好ましい。該質量比率が1/100より小さい場合、十分な吸湿性が得られず、マイクロ波の照射による加熱効果が得られない場合がある。また、該質量比率が50/100より大きい場合、担体の強度が十分に得られず、崩れ、粉落ちの原因となる場合がある。
【0023】
吸湿剤を多孔質の無機系吸着剤に担持させる場合には、吸湿剤を分散又は溶解させた液に多孔質の無機系吸着剤を含浸することにより得ることができる。
【0024】
本発明において、脱臭剤充填フィルターは、吸排気が可能なフレームに多孔質の無機系吸着剤が充填されてなる。吸排気が可能なフレームとしては、マイクロ波透過性の材料で製造されることが好ましく、マイクロ波の照射の際、マイクロ波がフレームを透過して内部の脱臭剤に照射される。通風方向に対して、入口側と出口側に相当する2ヶ所の通風断面部には、内部に充填された脱臭剤が脱落しない程度の構造として、できるだけ通気性の高い材料を用いることが好ましい。例えば、ネット状の樹脂や耐熱性の不織布などが用いられる。
【0025】
マイクロ波は、例えば周波数1〜10GHz、出力100〜1000Wのマイクロ波を使用することができる。一般的には、2.45GHzが使用される。マイクロ波が、多孔質無機系吸着剤の全体に均一に照射されるように、マグネトロンを配置することが好ましい。
【0026】
マイクロ波照射装置は、脱臭剤充填フィルターにマイクロ波を照射できさえすれば、どのような構成であってもよく、例えば、マグネトロンとその制御手段からなっていてもよい。また、通風手段も、空気を通風させることができれば、構成は如何なるものでも構わない。例えばファンを使用することができる。
【0027】
本発明の脱臭システムは、少なくとも、脱臭剤充填フィルター、マイクロ波照射装置、通風手段を有することが好ましく、脱臭装置に具備される。図1を用いて、本発明の脱臭システムの一例を説明する。本発明の脱臭システムは、吸排気が可能なフレームに脱臭剤2が充填された脱臭剤充填フィルター3、脱臭剤充填フィルター3に吸排気を行うための回転軸8を備えたファン6、脱臭剤充填フィルター3にマイクロ波を照射するためのマイクロ波照射装置1とから構成される。脱臭剤充填フィルター3の周囲はマイクロ波遮蔽材5で覆われているが、マイクロ波照射装置1と脱臭剤充填フィルター3との間にはマイクロ波透過窓4が設置されていて、マイクロ波が直接照射できるようになっている。脱臭剤充填フィルター3は、風向き7の方向で、通風状態となる。
【0028】
マイクロ波透過窓4としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)などの樹脂材料の他、ガラス、陶磁器、ハイシリカゼオライト、アルミナ等を骨材に使用したセラミック材料等の材料を使用することができる。また、マイクロ波遮蔽材5としては、複合磁性材料、フェライト焼結体、電磁波吸収用シート等の材料を使用することができる。
【0029】
本発明の脱臭システムの使用方法では、本発明の脱臭システムの脱臭剤充填フィルターにマイクロ波を照射しながら、通風することにより臭気除去を行う。マイクロ波を照射して多孔質無機系吸着剤を加熱する際、多孔質無機系吸着剤の温度が500℃以下となるように照射することが好ましい。これ以上の温度となると、多孔質無機系吸着剤自体が変質、燃焼等してしまい、吸着能力が低下する場合がある。また、多孔質無機吸着剤が、炭素を含む場合、350℃以下となるように、マイクロ波を照射することが好ましい。特に好ましい照射時の多孔質無機系吸着剤の温度は、50〜200℃である。
【0030】
マイクロ波の照射時間は、多孔質無機系吸着剤の種類、臭気物質の量、マイクロ波の周波数及び出力等により相違するが、連続的に照射する場合は、例えば1〜20分間の照射時間が好適である。処理時間が長時間になるときは、断続的に照射時間(加熱分解)と、照射停止時間(脱臭剤の吸着による脱臭)を交互に組み合わせて使用することも効果的である。
【実施例】
【0031】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0032】
調製例1
多孔質無機系吸着剤として椰子殻活性炭を使用し、さらに、吸湿剤として酸化カルシウムを使用し、これらが混合された原材料を直径3mmφのペレット形状に押出成形後、焼成されてなる脱臭剤を、通風断面の大きさが60mmφ、通風長さが50mmのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合樹脂製フレーム(容積約130cc)の中に50g充填させることにより、調製例1の脱臭剤充填フィルターとした。焼成後に脱臭剤に含まれる椰子殻活性炭と吸湿剤の質量比は80:20となるよう調製し、椰子殻活性炭は、比表面積が1200m/gの材料を用いた。
【0033】
調製例2
多孔質無機系吸着剤としてハイシリカゼオライトを使用し、さらに、吸湿剤として酸化カルシウムを使用し、これらが混合された原材料を直径3mmφのペレット形状に押出成形後、焼成されてなる脱臭剤を、通風断面の大きさが60mmφ、通風長さが50mmのABS共重合樹脂製フレーム(容積約130cc)の中に50g充填させることにより、調製例2の脱臭剤充填フィルターとした。焼成後に脱臭剤に含まれるハイシリカゼオライトと吸湿剤の質量比は80:20となるよう調製し、ハイシリカゼオライトは、比表面積が1500m/gの材料を使用した。
【0034】
調製例3
多孔質無機系吸着剤として椰子殻活性炭を使用し、この原材料を直径3mmφのペレット形状に押出成形後、焼成されてなる脱臭剤を、通風断面の大きさが60mmφ、通風長さが50mmのABS共重合樹脂製フレーム(容積約130cc)の中に50g充填させることにより、調製例3の脱臭剤充填フィルターとした。椰子殻活性炭は、比表面積が1200m/gの材料を用いた。
【0035】
調製例4
多孔質無機系吸着剤としてハイシリカゼオライトを使用し、この原材料を直径3mmφのペレット形状に押出成形後、焼成されてなる脱臭剤を、通風断面の大きさが60mmφ、通風長さが50mmのABS共重合樹脂製フレーム(容積約130cc)の中に50g充填させることにより、調製例4の脱臭剤充填フィルターとした。ハイシリカゼオライトは、比表面積が1500m/gの材料を用いた。
【0036】
実施例1
調製例1の脱臭剤充填フィルターとマイクロ波発生器とを図1に示す位置関係で配置することにより実施例1の脱臭システムとした。
【0037】
実施例2
調製例2の脱臭剤充填フィルターとマイクロ波発生器とを図1に示す位置関係で配置することにより実施例2の脱臭システムとした。
【0038】
比較例1
調製例3の脱臭剤充填フィルターとマイクロ波発生器とを図1に示す位置関係で配置することにより比較例1の脱臭システムとした。
【0039】
比較例2
調製例4のフィルターとマイクロ波発生器とを図1に示す位置関係で配置することにより比較例2の脱臭システムとした。
【0040】
<脱臭性能の試験方法>
実施例及び比較例で作製された各々の脱臭システムの脱臭性能について、以下に記述する方法で評価を行った。供試ガスの温湿度条件は、生ゴミ処理機の排出ガスに近い、温度60℃、湿度95%の高温度・高湿度の条件とした。さらに、アセトアルデヒドとアンモニアが各々10ppmとなるように混合調製し、試験ガスとして使用した。この試験ガスをSV値が15000(風速:約0.2m/sec)となるように風量調節を行い、フィルターによる脱臭効果を評価する方法とした。なお、試験系の運転システムは、試験ガス供給及びマイクロ波照射を20分間行い、20分経過後からの10分間は、臭気ガスを含まない湿度95%の空気のみ通風させ、このとき、マイクロ波照射もオフとして、クーリング時間として、30分を1サイクルとした。
【0041】
<除去率の初期性能・耐久性能>
上記の試験方法によりフィルターにガス負荷を与えて、1サイクル開始後2分後における各ガスの除去率を初期性能とし、30サイクル後の各ガスの除去率を耐久性能として、実施例及び比較例の各脱臭システムの性能を確認した。各々のガス検出には、ガス検知管(ガステック社製)を用いた。
【0042】
<臭気強度の官能評価>
上記の試験方法により、30サイクル運転開始から5分後の排気口の臭気を人の嗅覚によって6段階臭気強度基準によって臭気強度を評価した。
【0043】
※6段階臭気強度法の判定基準※
判定: 臭気強度レベル
0 : 無臭
1 : やっと感知できるにおい
2 : 何のにおいか判る弱いにおい
3 : 楽に感知できるにおい
4 : 強いにおい
5 : 強烈なにおい
【0044】
【表1】

【0045】
ガス吸着による脱臭であるため、脱臭剤の内部の吸着サイトが十分に存在する初期の評価結果においては、明確な除去率の差異は認められない。しかし、実施例の脱臭システムでは、吸湿剤による水分にマイクロ波が照射されることにより発生する熱で臭気が分解されるため、吸着剤内部の吸着サイトは大部分が新たな臭気を取り込むことが可能な空隙として残る。このため、耐久試験においては、比較例の除去率が大きく落ち込んでいるのに対して、実施例の除去率は初期値よりは低いものの、高い効率を維持していることが分かる。官能評価の結果においても、実施例の検体では、比較例の検体と比較して、発生臭気が小さく感じられる結果となり、除去率のみでなく、人の感覚で感知できる効果も現れている。吸湿剤により取り込まれる水分とマイクロ波の相互作用により、脱臭機能において、相乗効果も得られていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の脱臭システム及び脱臭システムの使用方法は、生ゴミ処理機のみならず、家庭用・業務用の空調関連機器、工場排気処理などの空気清浄分野、空気清浄機、冷蔵庫等の家庭用や畜産業、食品加工業等の業務用の脱臭器又は脱臭装置にも応用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 マイクロ波照射装置
2 脱臭剤
3 脱臭剤充填フィルター
4 マイクロ波透過窓
5 マイクロ波遮蔽材
6 ファン
7 風向き
8 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿剤が含有された多孔質無機系吸着剤を、吸排気が可能なフレーム内部に充填されてなる脱臭剤充填フィルターと、通風使用した状態の脱臭剤充填フィルターに直接照射できる位置に設置されたマイクロ波照射装置とが一体となっていることを特徴とする脱臭システム。
【請求項2】
請求項1の脱臭システムの脱臭剤充填フィルターにマイクロ波を照射しながら、通風することにより臭気除去を行う脱臭システムの使用方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−212539(P2011−212539A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81353(P2010−81353)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】