説明

脱臭フィルタ並びに空気清浄装置

【課題】圧力損失が低く、高い脱臭性能を有する薄型かつ小型の脱臭フィルタ、並びにこの脱臭フィルタを用いた空気清浄装置を得る。
【解決手段】空気清浄装置の構成要素である脱臭フィルタ1を、前記空気中の有害ガスや不快臭を吸着する吸着材3と、前記触媒および前記吸着材を担持する繊維4と、この繊維を収容するフィルタ枠5とで構成し、繊維4の直径を5〜30μmとし、繊維4の目付け量を40〜400g/m2とし、繊維4へ担持される触媒2と吸着材3の担持量を100〜900g/m2とした。また、繊維4をケイ素酸化物、あるいは遷移金属、あるいは炭素を主成分とする無機材料、あるいは高分子有機材料で構成し、繊維上に担持される触媒の主成分を、金属酸化物または貴金属のうち少なくとも1種類以上からなるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧力損失が低く、高い脱臭性能を有する脱臭フィルタ、並びにこの脱臭フィルタを用いた空気清浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の脱臭フィルタは圧力損失を低くした形態として、粒状の活性炭及び吸着材を板状に敷きつめて形成し、これをポリエチレンやポリプロピレンなどの高分子有機材料の袋に収容することにより、フィルタを通過する有害ガスと接触する粒状の活性炭及び吸着材の表面積を増大させて高い脱臭性能を得ている。
【0003】
また、ハニカム状に形成されたペーパやセラミックペーパーやコ−ジェライトに触媒及び吸着材を担持させ、広い表面積を確保し、さらに通気時のフィルタの圧力損失を低く抑えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−120648号公報(図1、段落0019、0028)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粒状の活性炭及び吸着材を敷きつめた構造をもつ従来の脱臭フィルタでは、圧力損失が規定値よりも高くなってしまい、所定の風量を得るには騒音が規定値よりも大きくなってしまうという問題があった。
【0006】
また、特許文献1で示されるハニカム状に形成された従来のフィルタでは、触媒及び吸着材の担持量が多いが有害ガスの流入方向に対して平行な面に触媒及び吸着材が担持されているため、有害ガスと触媒との接触確率は低く、脱臭に寄与する有効な触媒及び吸着材担持面積は小さいという問題があった。
【0007】
上記方式のフィルタにおいて、圧力損失を低くするためには開口面積を増大しなければならない。また、高い脱臭性能を得るためにはフィルタを厚くするか開口面積を増大し、容積を大きくしなければならない。このように、従来の方式では脱臭効率が高く且つ圧力損失が低いフィルタを得るためには、フィルタを大型化する必要があり、それに伴い空気清浄装置も大型化しなければならないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するために為されたものであり、圧力損失が低く、高い脱臭性能を有する薄型かつ小型の脱臭フィルタ、並びにこの脱臭フィルタを用いた空気清浄装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係わる脱臭フィルタは、空気中の有害ガスや不快臭を分解する触媒と、空気中の有害ガスや不快臭を吸着する吸着材と、触媒および吸着材を担持する繊維と、繊維を収容する枠とを備え、枠の容積(以下、フィルタ容積という)をVcm3とし、フィルタ脱臭率をη%としたとき、η≧0.15×Vであり、枠を通過する空気の風速が1m/sの時の圧力損失Pが35Pa以下、フィルタ容積Vが600cm3以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、脱臭フィルタのフィルタ容積V(cm3)に対する脱臭率をηとしたとき、η ≧0.15×Vとなり、また、風速1(m/s)時の圧力損失Pが35Pa以下、フィルタ容積Vが600cm3以下となる脱臭フィルタを空気清浄装置に設置することにより、空気清浄装置の脱臭性能を低下させることなく、空気清浄装置本体の薄型化及び小型化が可能となる。また本発明に係わる脱臭フィルタを用いることで、ハニカム状に形成された従来の脱臭フィルタより少ない触媒量及び吸着材量で高い脱臭性能を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1における脱臭フィルタを示す構成図である。図1に示すように、脱臭フィルタ1は空気中の有害ガスや不快臭を分解する触媒2と、空気中の有害ガスや不快臭を吸着する吸着材3と、触媒2および吸着材3を担持する繊維4と、触媒2および吸着材3を担持した繊維4を収容するフィルタ枠5とから構成されている。吸着材3は吸着作用により空気中の有害ガスや不快臭を触媒2より高速で除去する能力と触媒2で除去できない有害ガスや不快臭を除去する能力を持ち、触媒2は化学反応により吸着材3が除去できない有害ガスや不快臭を分解することで除去する能力を持つ。従って、触媒2と吸着材3を共に繊維に担持することにより、空気中の有害ガスや不快臭を効率よく除去することができる。
【0012】
次に、実施の形態1について説明する。図1は、触媒2と吸着材3と化学添着剤が混合された脱臭材を担持した繊維状の脱臭フィルタである。脱臭材は担持工程において、スラリーの粘性が最適に調製され、フィルタ繊維4に対して均一に担持されている。このため、目詰まりなどの不均一化によるフィルタの圧力損失の増大が抑制でき、さらに脱臭材の有効な表面積が増大して高い脱臭性能が得られる。そのため、繊維表面に担持できる触媒量は増えるので、目付け量が非常に少ないフィルタにおいても十分な脱臭性能を得ることができる。本実施の形態において、フィルタ目付け量の下限値である40g/m2に対して必要最小量である100g/m2の脱臭材を担持することができ、脱臭率80%以上を実現することができる。このように、むらのある担持構造よりも高密度担持が可能な均一な担持を実現することできる。図2は本発明の脱臭フィルタにおける触媒担持量と脱臭率の関係を示すグラフである。従来の脱臭フィルタとして用いられるハニカムフィルタでは、脱臭率80%以上を達成するためには、250g/m2以上の触媒担持量を必要とするが、本発明の脱臭フィルタを用いることにより、100g/m2の触媒担持量で脱臭率80%を達成することができる。図3は、フィルタ容積と脱臭率との関係について、脱臭材の量が同一のときの本発明の脱臭フィルタとハニカムフィルタ及び活性炭フィルタを比較したグラフである。フィルタの脱臭率をη(%)としたとき、本発明のフィルタの脱臭率はη≧0.15×Vとなり、一般に高い脱臭性能を持つといわれる活性炭フィルタやハニカムフィルタでは、フィルタの脱臭率η(%)は、η<0.15×Vとなっている。したがって上記のη≧0.15×Vを満たす本発明の脱臭フィルタはフィルタ容積当たりの脱臭性能が極めて高いことを示している。以上のことより、従来の脱臭フィルタと同一の高い脱臭性能を維持しながら本発明の脱臭フィルタの容積を小さくすることができ、それに伴って空気清浄装置も小型化することができる。さらに、従来のフィルタでは、圧力損失35Pa以下で上記の脱臭性能を得るためには1000cm3以上の容積を必要とし、また、容積600cm3以下で前記の脱臭性能を得るためには50Pa以上の圧力損失となっていたが、本発明の脱臭フィルタを用いることにより、圧力損失が35Pa以下、且つフィルタ容積が600cm3以下となる低い圧力損失の脱臭フィルタを実現できるので、空気清浄装置の動力である送風ファンの直径または厚みを薄くすることができる。このため、空気清浄装置の薄型化が可能である。従って、上記3つの条件を満たすフィルタを空気清浄装置に設置することにより、空気清浄装置本体の薄型化及び小型化が可能となる。本発明の脱臭フィルタを空気清浄装置に設置することにより、空気清浄装置本体の薄型化及び小型化が可能となる。
【0013】
本発明に係わる脱臭フィルタでは、繊維径を5〜30μmとし、繊維の目付け量を40〜400g/m2とし、この繊維へ担持される吸着材と触媒の担持量を100〜900g/m2とした。また、繊維4を、ケイ素酸化物、あるいはニッケル、銅、鉄、コバルトなどの遷移金属あるいは炭素のうち1種類以上を主成分とする無機材料、あるいはポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、アクリル、アラミド、ポリアミドのうち1種類以上の高分子有機材料で構成した。
上記の数値範囲に限定した理由は以下の通りである。
フィルタ容積V(cm3)に対する脱臭率をηV(%)としたとき、ηV≧0.15×Vを満たすフィルタを得るために、図2に示すように全ての繊維の目付け量に対して吸着材及び触媒の担持量を100g/m2以上とする必要があり、900g/m2を超えると、担持量の増加に伴い繊維上に触媒及び吸着材を保持する付着強度が急激に弱くなり、図4に示すように触媒及び吸着材の脱落量(粉落ち量)も急激に増大する。また、経時変化にともなって触媒の繊維からの脱落が起こり、脱臭性能の劣化につながる。また、繊維径が30μm以上では繊維が折れやすくなってしまい、繊維上に担持されている触媒及び吸着材も同時に脱落し、脱臭性能の劣化につながる。さらに繊維径が5μm以下では繊維が軟化するため、フィルタを形成するために使用するバインダ量が多くなってしまい、繊維径も結果として5μm以上となる。また、繊維の目付け量は少なくとも40g/m2未満であると、上記条件を満たすために必要な触媒の担持量100g/m2以上を担持することができず、400g/m2以下でなければ触媒が繊維上に均一に担持することができなくなり、フィルタの目詰まりが発生する。
【0014】
また、上記繊維4には、例えばアクリル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂のうち1種類以上を主成分とする有機化合物、またはシリカ、アルミナのうち1種類以上を主成分とする無機化合物からなるバインダにより保持された金属酸化物、または貴金属、または金属酸化物及び貴金属と吸着材3が担持されている。担持される触媒2の主成分は、マンガン、コバルト、セシウム、銅、亜鉛、ニッケルのうち1種類以上を主成分とする金属酸化物または白金、パラジウム、ルテニウム、金、銀のうち1種類以上を主成分とする貴金属からなる。
【0015】
また、上記触媒2を担持することでアセトアルデヒド、アンモニア、メチルメルカプタン、トリメチルアミンの四大悪臭成分だけでなく、酢酸、二硫化メチル、イソ吉草酸、及び建築溶剤などから揮発するホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの揮発性有機化合物などを有害レベル以下まで低減し、また、同様に担持される吸着材3は5Å〜500Åの細孔径を有するシリカゲル、活性炭、ゼオライト、ポーラスシリカのうち1種類以上を主成分とする多孔質材料からなることで、吸着除去量および吸着速度を向上させることができる。
【0016】
上記繊維フィルタを脱臭フィルタとして用いることで、同一フィルタ容積に対してハニカムより大きい表面積を得ることができ、また、網目構造となることによりフィルタ内で乱流が生じるため、粒子との接触確率も増大する。
【0017】
図5に本発明の実施の形態1におけるハニカム状の脱臭フィルタと本発明の脱臭フィルタとのアセトアルデヒドの除去性能を比較した図を示す。100cm2の脱臭フィルタを設置した風洞をアセトアルデヒド1ppmで満たした1m3箱内に設置し、風速1m/sで通気したときの30分間の1m3箱内におけるアセトアルデヒド濃度の減衰を測定した結果、本発明の脱臭フィルタはハニカム状の脱臭フィルタと比較して2/5倍の触媒及び吸着材量で同等の脱臭性能が得られた。
【0018】
また、上記脱臭フィルタを抗菌フィルタとして用いることで、同一フィルタ容積に対してハニカム状の脱臭フィルタより大きい表面積を得ることができるため、また、図6に示すように網目構造となることにより矢印で示す風向6から流入した空気は脱臭フィルタ内で乱流が生じるため、繊維4と細菌との接触確率も増大し、繊維4は細菌を捕捉しやすくなり、高い抗菌性能が得られる。
【0019】
図7は本発明の脱臭フィルタを適用した空気清浄装置の実施の形態1を示す側面断面図である。図7の空気清浄装置6は、吸い込み口側から順に吸い込み口7と集塵フィルタ8と脱臭フィルタ9と送風ファン10と吹き出し口11で構成される。この脱臭フィルタ9は図1で示す脱臭フィルタ1と同じものである。
【0020】
以下、実施の形態1における空気清浄装置の動作について図7を用いて説明する。
有害ガスや不快臭は吸い込み口7より矢印で示される風向き12の方向に吸引され、集塵フィルタ8を通過したのち、脱臭フィルタ9上で除去されて、送風ファン10を通過して吹き出し口11から風向き13の方向に清浄な空気が排出される。
【0021】
図7に示す空気清浄装置6に用いる脱臭フィルタ9は、網目構造は無秩序に繊維が成形されており、高密度に編んだ編目構造の脱臭フィルタよりも開口面積が広いので、脱臭フィルタの圧力損失もより低くなる。このため、有害ガスや不快臭はフィルタ面に対してどの方位からも流入することが可能となる。これにより、本発明の脱臭フィルタ9を実際に空気清浄装置に組み込むときには、送風ファン10に脱臭フィルタ9を近接してもフィルタ全面を通風することができるため、送風ファン10の吸い込み面積よりも大きい面積をもつ脱臭フィルタ9を配置したときにもフィルタ全面積に相当する脱臭性能を得ることができ、さらに、空気清浄装置6の奥行きを薄くすることができる。
【0022】
また、図6に示すように上記脱臭フィルタ9を構成する全ての繊維がフィルタ開口面に対して平行となる成分を有するように成形されているとなおよい。上記脱臭フィルタ9を構成する全ての繊維4がフィルタ開口面に対して平行となる成分を有するように形成することで、流入する臭気ガス粒子がより多く繊維と接触するので、繊維上に担持されている触媒および吸着材との接触確率が増大し、高い脱臭性能が得られる。また、上記のようにフィルタ繊維4を形成することで、厚さ方向の成分を有する繊維4が少なくなるので、脱臭フィルタ9の厚さを薄くすることができ、空気清浄装置6も薄型化することができる。
【0023】
以上の通り、本実施の形態1によれば、空気清浄装置の構成要素である脱臭フィルタを、前記空気中の有害ガスや不快臭を吸着する吸着材と、前記触媒および前記吸着材を担持する繊維と、この繊維を収容するフィルタ枠とで構成し、繊維の直径を5〜30μmとし、繊維の目付け量を40〜400g/m2とし、繊維へ担持される触媒と吸着材の担持量を100〜900g/m2とした。また、繊維をケイ素酸化物、あるいは遷移金属、あるいは炭素を主成分とする無機材料、あるいは高分子有機材料で構成し、繊維上に担持される触媒の主成分を、金属酸化物または貴金属のうち少なくとも1種類以上からなるようにしたので、従来の脱臭フィルタより少ない触媒量及び吸着材量での高い脱臭性能と低い圧力損失の脱臭フィルタを得ることができる。従って、脱臭性能を低下させずに脱臭フィルタの小型化が可能となり、それに伴い空気清浄装置本体の薄型化及び小型化が可能となる。
【0024】
実施の形態2.
図8は本発明の実施の形態2における空気清浄装置の構成を示す側面断面図であり、実施の形態1における脱臭フィルタはこの実施の形態2でも用いられる。図8の空気清浄装置は、吸い込み口側から順に吸い込み口7、集塵フィルタ8、脱臭フィルタ9、送風ファン10、吹出し口11、送風ファン10の下部に気化エレメント13、貯水タンク14、気化エレメント13及び貯水タンク14の下部に貯水トレイ15より構成される。
【0025】
以下、実施の形態2における空気清浄装置の構成および動作について図8を用いて説明する。
有害ガスや不快臭は吸い込み口7より風向き12の方向に吸引され、集塵フィルタ8を通過したのち、脱臭フィルタ9上で除去されて清浄化されたガスが、送風ファン10を通過するガスと気化エレメント13を通過してから送風ファン10を通過するガスとに分かれて、吹き出し口11手前で乾燥空気と加湿空気が混合された状態で清浄な空気が排出される。送風ファン10は、気化エレメント13の上部に配置され、脱臭フィルタ9から直接流入するガスと、気化エレメント13より流入するガスについてそれぞれ片側から吸い込む、両吸いファンで構成される。貯水トレイ15は気化エレメント13及び貯水タンク14の下に配置され、貯水タンク14から流れ出した水が貯水トレイ15に貯まり、気化エレメント13の下部が浸漬する。このとき、貯水タンク14は空気清浄装置6内部の通風路外に設置される。気化エレメント13は吸湿性を有するシリカ、ゼオライト、のうち1種類以上を主成分とする有機または無機材料からなり、貯水トレイ15に貯まっている水を、浸漬している気化エレメント13の下部からエレメント上面まで吸い上げる吸水力を有するフィルタである。
【0026】
上記構造において、脱臭フィルタ9に担持する吸着材3を疎水性とすることで脱臭フィルタ9を気化エレメント13に近接したときにも脱臭性能の劣化を抑制することができる。
【0027】
また、上記構造により、流入する臭気ガスは脱臭フィルタ9にて除去されるため、清浄化されたガスが気化エレメント13を通過することとなり、吹き出し口11から清浄な加湿空気が排出される。
【0028】
また、清浄な空気が気化エレメント13を通過するので、気化エレメント13上で細菌やカビが繁殖することを抑制でき、また、気化エレメント13上に繁殖した細菌が機外に放出される懸念もなくなり、さらに、気化エレメント13の吸水性の悪化も軽減できる。
【0029】
また、送風ファン10は気化エレメント13の上部に配置されることで、空気清浄装置6を薄くすることができる。
【0030】
以上の通り、本実施の形態2によれば、加湿用の気化エレメントをさらに備え、脱臭フィルタに担持する吸着材を疎水性としたので、脱臭性能の劣化を抑制しつつ実施の形態1の効果を奏することができる。
【0031】
実施の形態3.
図9は本発明の実施の形態3における空気清浄装置の構成を示す側面断面図であり、実施の形態1における脱臭フィルタはこの実施の形態3でも用いられる。空気清浄装置6は吸い込み口側から順に吸い込み口7、集塵フィルタ8、気化エレメント13、脱臭フィルタ9、送風ファン10で構成される。図9に示すように吸い込み口7より左向き(風向き12)の方向に流入したガスは、集塵フィルタ8と気化エレメント13を通過したのち、脱臭フィルタ9を通過して、吹き出し口11から加湿された空気として上方(風向き12)の方向に排出される。気化エレメント13は吸湿性を有するゼオライトまたはシリカを含む不織布からなるフィルタで構成され、底部に溶媒を保持する手段を有し、その溶媒を気化エレメント13の上面まで吸い上げる給水力を有するフィルタである。気化フィルタに保持する溶媒を水、または過酸化水素水または電解水とする。気化フィルタに保持する溶媒過酸化水素水または電解水とすることで、殺菌能力を高めることができる。
【0032】
上記構造において、脱臭フィルタに担持する吸着材を疎水性とすることで脱臭フィルタを気化エレメントに近接したときにも脱臭性能の劣化を抑制することができる。
【0033】
上記構造により、気化エレメント上に保持されている溶媒が脱臭フィルタに噴霧され、脱臭フィルタの洗浄を行なうことができ、脱臭性能を回復することができる。
【0034】
以上の通り、本実施の形態3によれば、吸い込んだ空気はすべて加湿用の気化エレメントを通過し、脱臭フィルタに担持する吸着材を疎水性とし、気化フィルタに保持する溶媒過酸化水素水または電解水としたので、脱臭性能の劣化を抑制しつつ殺菌能力を高めることができる。また、気化エレメント上に保持されている溶媒で脱臭フィルタの洗浄を行なうことにより脱臭性能を回復することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1における脱臭フィルタを示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるハニカム状の脱臭フィルタと本発明の脱臭フィルタとの触媒担持量当たりの脱臭率性能を比較した図である。
【図3】本発明の実施の形態1における従来の脱臭フィルタと本発明の脱臭フィルタとのフィルタ容積当たりの脱臭率性能を比較した図である。
【図4】本発明の実施の形態1における触媒担持量と粉落ち量との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるハニカム状の脱臭フィルタと本発明の脱臭フィルタとのアセトアルデヒドの除去性能を比較した図である。
【図6】本発明の実施の形態1における網目構造の脱臭フィルタと風向との関係を示す図である。
【図7】本発明の脱臭フィルタを適用した空気清浄装置の実施の形態1を示す側面断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2における空気清浄装置の構成を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態3における空気清浄装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 脱臭フィルタ、2 触媒、3 吸着材、4 繊維、5 フィルタ枠、6 空気清浄装置、7 吸い込み口、8 集塵フィルタ、9 脱臭フィルタ、10 送風ファン、11 吹き出し口、12 風向、13 気化エレメント、14 貯水タンク、15 貯水トレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の有害ガスや不快臭を分解する触媒と、
前記空気中の有害ガスや不快臭を吸着する吸着材と、
前記触媒および前記吸着材を担持する繊維と、
この繊維を収容する枠と、を備えた脱臭フィルタにおいて、
前記枠の容積(以下、フィルタ容積という)をVcm3とし、フィルタ脱臭率をη%としたとき、η≧0.15×Vであり、前記枠を通過する空気の風速が1m/sの時の圧力損失Pが35Pa以下であり、フィルタ容積Vが600cm3以下であることを特徴とする脱臭フィルタ。
【請求項2】
空気中の有害ガスや不快臭を分解する触媒と、
前記空気中の有害ガスや不快臭を吸着する吸着材と、
前記触媒および前記吸着材を担持する繊維と、を備え、
前記繊維の径を5〜30μmとし、前記繊維の目付け量を40〜400g/m2とし、前記吸着材と前記触媒の担持量を100〜900g/m2としたことを特徴とする脱臭フィルタ。
【請求項3】
前記繊維は、ケイ素酸化物、遷移金属、若しくは炭素を主成分とする無機材料、又は高分子有機材料からなることを特徴とする請求項2記載の脱臭フィルタ。
【請求項4】
前記触媒の主成分は、金属酸化物、または貴金属、または金属酸化物及び貴金属からなることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の脱臭フィルタ。
【請求項5】
前記吸着材は、ゼオライト、シリカゲル、活性炭、ポーラスシリカのうち少なくとも1種類以上からなることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の脱臭フィルタ。
【請求項6】
前記枠に収容される全ての繊維が前記枠の開口面に対して平行となるように形成されることを特徴とする請求項1記載の脱臭フィルタ。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の脱臭フィルタを備え、
この脱臭フィルタは抗菌フィルタとして用いられることを特徴とする空気清浄装置。
【請求項8】
空気中に浮遊する塵埃を清浄化する集塵フィルタと、
請求項1〜6の何れかに記載の脱臭フィルタと、
空気を吸引して外部へ排気するファンとを備え、
上記脱臭フィルタは上記集塵フィルタと上記ファンとの間に配置されたことを特徴とする空気清浄装置。
【請求項9】
貯水タンクと、
この貯水タンクの水を受けて貯水する貯水トレイと、
この貯水トレイに貯まった水を吸い上げ、吸い上げた水を上記ファンが吸引した空気により気化させる気化エレメントとを備え、
この気化エレメントは、上記脱臭フィルタと上記ファンとの間に配置されたことを特徴とする請求項8記載の空気清浄装置。
【請求項10】
貯水タンクと、
この貯水タンクの水を受けて貯水する貯水トレイと、
この貯水トレイに貯まった水を吸い上げ、吸い上げた水を上記ファンが吸引した空気により気化させる気化エレメントとを備え、
この気化エレメントは、上記集塵フィルタと上記脱臭フィルタとの間に配置され、上記脱臭フィルタに加湿した空気を噴霧することを特徴とする請求項8記載の空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−43580(P2008−43580A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223112(P2006−223112)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】