説明

脱臭抗菌剤、及びその製造方法

【課題】本発明は、脱臭抗菌作用の持続性があり、多目的に使用でき、さらに、生成工程がより簡易で、生成コストの安い脱臭抗菌剤を提供する。
【解決手段】ポリスチレン及びポリエチレンのうちのいずれかの樹脂と、水素化ホウ素ビス(トリフェニルホスフィン)ナトリウム、水素化トリス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)ホウ素ナトリウム、水素化トリス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムビス(トリフェニルホスフィン)リチウム、及び水素化ホウ素(ビス−ジエチルチオカルバモイルジスルフィド)アルミニウムからなる群より選ばれた有機複合金属水素化物と、金属アルミニウム粉末と、金属鉄粉末または還元鉄粉末とからなる金属粉末と、を含む脱臭抗菌剤により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を分解して得られた高活性の水素やイオン及びラジカルの還元力を利用することによる、トイレの尿石分解及び脱消臭、女性生理の悪臭分解消臭、殺菌、食品の防腐及び乾燥防止、酸化防止等の効果を奏する脱臭抗菌剤、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚物除去、異臭消臭、殺菌など行う場合、地球環境の汚染防止の観点から洗剤、薬剤などの代替として、酸化還元電位(以下「ORP」という。)の高い水(以下「酸化水」という。)、及びORPの低い水(以下「還元水」という。)を利用することが多くなってきた。還元水は水素の含有量が高くかつ還元力が強い。そのため、還元水を飲料水として体内に取り込むと、体内に存在する余剰の活性酸素と反応して、活性酸素を還元して無害化させるということで注目されている。
【0003】
酸化水、還元水とは、水の分解によって得られる水溶液であり、一般にORPが約+200mV以上の水を酸化水、ORPが約+200mV以下の水を還元水と呼んでいる。
さて、本願の発明者は以前より、水の分解によって生成される水素を用いて還元水を生成することに注目していた(例えば、特許文献1、特許文献2。)。
【0004】
特許文献1では、水と、ポリビニルアルコール、スクロース、シュウ酸、カルバゾール、アスコルビン酸とを混合させる第1の処理と、金属マグネシウムと、無水ホウ酸、金属アルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム、メチオニン、シリカゲル、グルタミン酸ナトリウム、尿素よりなる群から選ばれた1以上の化合物とを混合させる第2の処理と、前記第1の処理による混合物と前記第2の処理による混合物とを混合させることにより酸化還元反応を開始させる第3の処理と、前記第3の処理により酸化還元反応が開始した混合物を冷却することにより前記酸化還元反応を停止させる第4の処理とを行うことで、水素による尿石分解・脱臭殺菌作用を有するペレットを製造している。このペレットは、常温・常圧下で水と反応して活性水素を発生させ、高還元性を有する水を生成する。
【0005】
特許文献2では、水素化物(水素化ナトリウム、水素化カルシウム、及び水素化リチウムからなる群から少なくとも1つ)、金属酸化物(酸化亜鉛、及び二酸化ケイ素からなる群から少なくとも1つ)、及び金属元素(金属亜鉛、金属マグネシウム、金属アルミニウム、金属ケイ素、及び金属リチウムからなる群から少なくとも1つ)のうち少なくともいずれか1つと、ポリスチレン樹脂と、複合金属水素化物(テトラヒドロホウ酸ナトリウム、テトラヒドロホウ酸カリウム、テトラヒドロホウ酸アルミニウム、またはテトラヒドロホウ酸リチウムからなる群から少なくとも1つ)とからなる脱臭抗菌剤が開示されている。
【0006】
特許文献1では脱臭抗菌作用の持続性に問題があったが、特許文献2は、その問題を解決したものである。しかしながら、特許文献2は、水素の発生にムラがあった。
【特許文献1】特開2003−334569号公報
【特許文献2】特開2005−253547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明は、水素の発生にムラがなく、生成工程がより簡易で、生成コストの安い脱臭抗菌剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水を分解して水素を発生させることを可能とする脱臭抗菌剤である。この脱臭抗菌剤を水に入れると、水を分解して水素が発生し、この水素の還元力(酸化還元反応)により酸化を抑制し、悪臭の脱消臭、抗菌、尿石除去、防腐等を目的とする。これを実現するために以下の手段を提供する。
【0009】
本発明にかかる脱臭抗菌剤は、ポリスチレン及びポリエチレンのうちのいずれかの樹脂と、水素化ホウ素ビス(トリフェニルホスフィン)ナトリウム(Na[(C6H5)3P]2BH4)、水素化トリス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)ホウ素ナトリウム(C15H25BN6Na)、水素化トリス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)アルミニウムリチウム(C15H25AlN6Li)、水素化アルミニウムビス(トリフェニルホスフィン)リチウム(Li[(C6H5)3P]2AlH4)、及び水素化ホウ素(ビス−ジエチルチオカルバモイルジスルフィド)アルミニウムからなる群より選ばれた有機複合金属水素化物と、金属アルミニウム粉末と、金属鉄粉末または還元鉄粉末とからなる金属粉末と、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明にかかる脱臭抗菌剤は、水に接触させることにより抗菌作用を発現することを特徴とする。
本発明にかかる脱臭抗菌剤の製造方法は、ポリスチレン及びポリエチレンからなる群より選ばれた樹脂と、水素化ホウ素ビス(トリフェニルホスフィン)ナトリウム(Na[(C6H5)3P]2BH4)、水素化トリス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)ホウ素ナトリウム(C15H25BN6Na)、水素化トリス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)アルミニウムリチウム(C15H25AlN6Li)、水素化アルミニウムビス(トリフェニルホスフィン)リチウム(Li[(C6H5)3P]2AlH4)、及び水素化ホウ素(ビス−ジエチルチオカルバモイルジスルフィド)アルミニウムからなる群より選ばれた有機複合金属水素化物と、を混合して焼成し、さらに、金属アルミニウム粉末と、金属鉄粉末または還元鉄粉末とからなる金属粉末を加えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る脱臭抗菌剤を用いることで、水分解反応で発生する常温常圧下での水素ガスにより、悪臭の還元分解、脱消臭、抗菌、及び防腐等をすることができる。また、本発明に係る脱臭抗菌剤を水に入れることで生成されるアルカリ性還元水素水の作用により、尿石の分解水溶性化、脱臭、抗菌、油の水溶性化、及び洗浄作用等の効果が得られる。
【0012】
また、本発明に係る脱臭抗菌剤は、特許文献2より水素の発生にムラがなく、用途の幅も広がり、さらに、生成工程がより簡易で、生成コストも低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、水を分解して水素を発生させることを可能とする脱臭抗菌剤である。この脱臭抗菌剤を水に入れると、水を分解して水素が発生し、大気中においてこの水素の還元力(酸化還元反応)により対象物(悪臭の基となる物質やよごれ)を還元させる。
【0014】
また、その使用した水は、アルカリ性であって、ORPがマイナス値であって、水素が溶解した水(アルカリ性還元水素水、または還元水素水という)となっているので、この水も還元力がある。
【0015】
ここで、本発明を用いた水の分解について説明する。樹脂に含まれる水素化金属化合物が水に接することにより、水が分解され水素が発生する。このとき、使用する水素化金属化合物や金属元素、樹脂等の種類や量を調整することで、発生する水素の発生期間、発生量等をコントロールするものである。それでは、以下に本発明の詳細を説明する。
【0016】
表1は、本発明に係る脱臭抗菌剤の組成物を示している。
【0017】
【表1】

【0018】
本発明に係る脱臭抗菌剤は、大きくA材とB材から構成されている。A材は、樹脂(高分子化合物)からなる材料であり、ポリスチレン(P.S)またはポリエチレンが好ましい。B材は、少なくとも有機複合金属水素化物からなる材料であり、さらに、金属元素(ルイス酸)を含んでもよい。
【0019】
B材の有機複合金属水素化物としては、水素化ホウ素ビス(トリフェニルホスフィン)ナトリウム(Na[(C6H5)3P]2BH4)、水素化トリス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)ホウ素ナトリウム(C15H25BN6Na)、水素化トリス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)アルミニウムリチウム(C15H25AlN6Li)、水素化アルミニウムビス(トリフェニルホスフィン)リチウム(Li[(C6H5)3P]2AlH4)、または水素化ホウ素(ビス−ジエチルチオカルバモイルジスルフィド)アルミニウム等を用いることができる。これらは単一で用いてもよいし、または複数組み合わせても良い。
【0020】
B材の金属元素(ルイス酸)として、金属アルミニウム粉末、還元鉄粉末、または電解鉄粉末等を用いることができる。これらは単一で用いてもよいし、または複数組み合わせても良い。
【0021】
さらに、B材の各材料について詳述する。複合金属水素化物について詳述すると、BH4-、AlH4などのヒドリド錯体の1分子は4個の極端に強い反応をするH-原子を持ち、2分子のH2OのH+を還元して、H2を生成し、O2-はB−O,Al−Oを生成する。Na+BH4-、Li+AlH4-などの複合金属水素化物は、水中において水のH+を引き抜き、H2を生成する。同時にNa+、B3+、Li+、Al3+などの金属はルイス酸であり、水の酸素の非共有電子対と配位結合し、酸化物、水酸化物を生成する。
【0022】
次に、水素化物について詳述する。水分子は極性があり、酸素原子には2つの孤立電子対があるために、陽イオンとも陰イオンとも配位結合性が高く、特にルイス酸(Li+,Na+,K+,Mg2+,Ca2+,Al3+,Si4+,AlH3,BH3,MoO33+)と配位結合が強いため、水の構造を破壊し、H2は水中に、OH-及びO2はルイス酸に結合して、金属酸化物か金属水酸化物を生成し、水中にはH2が増大する。すなわち、B材の材料の1つとして水素化物を使用することにより、水素の発生を促進させることができる。
【0023】
次に、金属元素について詳述する。金属元素は、ルイス酸として用いる。水(H2O)は、硬いルイス塩基性溶媒で硬いルイス酸の金属類のLi+,Na+,Mg2+,Ca2+,Al3+,Si4+などの電子対受容体とは強く溶媒和する。複合金属水素化物、水素化物なども水中においてヒドリドイオン(H-)を脱離するとルイス酸であり、電子不足化合物(空孔)となる。
【0024】
ルイス酸、及び電子不足化合物は、水分子の電子を引き抜き、受容し、水分子を分解して、水素イオン(H+)及び水酸化物イオン(OH-)を生成する。有機複合金属水酸化物などのヒドリドイオン(H-)は脱離基であり、水分解時の水素イオン(H+)とH2を生成する(H+ + H- → H2)。水はドナー(供与体DN数18)であり、ルイス塩基であり、ルイス酸及び電子不足化合物はアクセプター(受容体AN)として働き、水分子の共有結合の電子を引き抜き分解する。
【0025】
さらに、ルイス酸、例えばリチウムLiについて説明する。Li原子は水中において、イオン化ポテンシャル5.39eVと小さく、電子供与体であるので電子を放出しやすく、水中に電子を与える。イオン化によって水中に放出された電子の一部が多数の水分子のH原子中心に電子を取り囲み、溶媒和電子(水和電子e-aq)となる。残りの電子は、水分子と反応して発生した水素イオンH+と水和電子e-aqと結合して水和水素Haqを生成する(H+ + e-aq → Haq)。Hは等核ニ分子原子分子H2aqとなり、水中で安定なH2aqとなる。よって、B材の材料の1つとして金属原子を使用することにより、水素を水中に留めておくことができる。
【0026】
A材として使用する樹脂は、上記のB材を保持、また製造した脱臭抗菌剤としての取り扱い上の便宜、脱臭抗菌剤内のB材が水と接触する面積を調整する等の目的のために使用するのであるから、基本的には何でもよい。しかし、実際は、製造過程で180〜250℃に加熱すること、撥水性であること、また実用的、コスト的な面からポリスチレン、ポリエチレンを用いるのが好ましい。
【0027】
それでは、本発明に係る脱臭抗菌剤の製造方法の概要を説明する。なお、以下において%は、重量%を示す。合成は、常温常圧下で行った。まず、A材(P.SまたはP.E樹脂(粉末))にB材を容器に入れる。A材及びB材は共に固体(粉状体)であり、この状態で均一に混合するまで攪拌する。攪拌後、電気炉又は乾燥機を用いて焼成する。この焼成の時間を調整することにより、生成した脱臭抗菌剤の用途によって、その効果の持続時間を制御するためである。なお、これらの合成は、常湿下で行ったが、水素化物等を取り扱うため、乾燥気流化で行うのが好ましい。
【0028】
焼成後、炉より取り出し、冷却のため約30分間放置した後、真空パックする(脱臭抗菌剤は、吸湿性があるために空気中の水分を吸収しやすく長期保存するために真空パックする。)。
【0029】
なお、上述の焼成時間について補足すると、焼成時間が短ければ、重合した樹脂間の隙間が大きいので、脱臭抗菌剤を水に入れたとき、B材が水と接触する確率は高くなるため、その分、水分解が急速に起こる。そのため、水素が大量に発生するが、その分持続時間は短くなる。
【0030】
一方、焼成時間が長ければ、重合した樹脂間の隙間が小さくなるので、脱臭抗菌剤を水に入れたとき、B材が水と接触する確率は低くなるため、その分、水分解がゆっくり起こる。そのため、水素が少量発生するが、その分持続時間は長くなる。このようなことがら、使用目的、使用期間等に応じて、焼成時間を決定することができる。
【0031】
また、焼成温度を低く設定すれば、樹脂間の結合及び樹脂とB材との密着度が低下するので、脱臭抗菌剤を水に入れたとき、B材が水と接触する確率は高くなるため、その分、水分解が急速に起こる。そのため、水素が大量に発生するが、その分持続時間は短くなる。
【0032】
一方、焼成温度を高く設定すれば、樹脂間の結合及び樹脂とB材との密着度が高くなるので、脱臭抗菌剤を水に入れたとき、B材が水と接触する確率は低くなるため、その分、水分解がゆっくり起こる。そのため、水素が少量発生するが、その分持続時間は長くなる。このようなことからも、使用目的、使用期間等に応じて、焼成温度を決定することができる。
【0033】
それでは、以下でB材の組成、及び、脱臭抗菌剤の効果等について説明する。
【実施例1】
【0034】
<水素化ホウ素ビス(トリフェニルホスフィン)ナトリウムの生成>
トリフェニルホスフィン((C6H5)P)(融点:79℃、沸点360℃)と水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を2:1の割合(重量%)で混合した後、焼成して(焼成温度:180℃〜200℃、焼成時間:4〜6時間)、ホウ素ビス(トリフェニルホスフィン)ナトリウム(Na[(C6H5)3P]2BH4)を生成した。その生成物を粉砕し、その粉砕した生成物と粉末ポリスチレン樹脂(粉末P.S)を20:80〜80:20の割合(重量%)で混合して焼成した(焼成温度:180℃〜240℃、焼成時間:4〜6時間)。その後、成型して、タブレット状の水素化ホウ素ビス(トリフェニルホスフィン)ナトリウム(Na[(C6H5)3P]2BH4)を得た。
【実施例2】
【0035】
<水素化トリス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)ホウ素ナトリウムの生成>
3,5-ジメチル-1-ピラゾール(C5H8N2)(融点:108℃、沸点:218℃)と水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)を3:1の割合(重量%)で混合した後、焼成して(焼成温度:180℃、焼成時間:4〜6時間)、水素化トリス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)ホウ素ナトリウム(C15H25BN6Na)を生成した。その生成物を粉砕し、その粉砕した生成物と粉末ホリスチレン樹脂(粉末P.S)を20:80〜80:20の割合(重量%)で混合して焼成した(焼成温度:180℃、焼成時間:4〜6時間)。その後、成型して、タブレット状の水素化トリス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)ホウ素ナトリウム(C15H25BN6Na)を得た。
【実施例3】
【0036】
<水素化トリス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)アルミニウムリチウムの生成>
3,5-ジメチルピラゾール(C5H8N2)(融点:108℃、沸点:218℃)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)(沸点:125℃)を3:1の割合(重量%)で混合した後、焼成して(焼成温度:110℃、焼成時間:1〜2時間)、水素化トリス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)アルミニウムリチウム(C15H25AlN6Li)を生成した。その生成物を粉砕し、その粉砕した生成物と粉末ポリエチレン樹脂(粉末P.E)を20:80〜80:20の割合(重量%)で混合して焼成した(焼成温度:100〜120℃、焼成時間:1〜4時間)。その後、成型して、タブレット状の水素化トリス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)アルミニウムリチウム(C15H25AlN6Li)を得た。
【実施例4】
【0037】
<水素化アルミニウムビス(トリフェニルホスフィン)リチウム(Li[(C6H5)3P]2AlH4)の生成>
トリフェニルホスフィン((C6H5)P)(融点:79℃、沸点360℃)と水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)(沸点125℃)を2:1の割合(重量%)で混合した後、焼成して(焼成温度:110℃、焼成時間:1〜2時間)、水素化アルミニウムビス(トリフェニルホスフィン)リチウム(Li[(C6H5)3P]2AlH4)を生成した。その生成物を粉砕し、その粉砕した生成物と粉末ポリエチレン樹脂(粉末P.E)(ポリエチン低密度500〜1000atm)を20:80〜80:20の割合(重量%)で混合して焼成した(焼成温度:100℃〜120℃、焼成時間:1〜4時間)。その後、成型して、タブレット状の水素化アルミニウムビス(トリフェニルホスフィン)リチウム(Li[(C6H5)3P]2AlH4)を得た。
【実施例5】
【0038】
<水素化ホウ素(ビス−ジエチルチオカルバモイルジスルフィド)アルミニウムの生成>
水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)とAlCl3を3:1の割合(重量%)で混合した後、焼成して(焼成温度:170℃、焼成時間:2〜1時間)、水素化ホウ素アルミニウム(Al(BH4)3)を生成した。その生成物を冷却後に粉砕し、その粉砕した生成物とビスジエチルチオカルバモイルジスルフィド([(C2H5)2NS]2S2)を1:1の割合(重量%)で混合して焼成した(焼成温度:70℃〜80℃、焼成時間:2〜1時間)。その後、生成した水素化ホウ素(チオカルバマト)アルミニウムを冷却して、粉砕した。
【0039】
その粉砕した生成物と粉末ポリスチレン樹脂(粉末P.S)90:10〜10:90の割合(重量%)で混合して焼成した(焼成温度:140℃〜120℃、焼成時間:2〜4時間)。その後、成型して、タブレット状の水素化ホウ素ビス(ジエチルカルバモイルジスルフィド)アルミニウムを得た。
【実施例6】
【0040】
<金属元素の調製>
金属アルミニウム粉末(Al)と、金属鉄粉末(Fe)(または還元鉄粉末でもよい)とを2:1の割合(重量%)で混合する。本実施例では、金属アルミニウム粉末(Al):金属鉄粉末(Fe)=10〜20g:5〜10gで混合した。その混合したものを、ティーバッグに入れて封をした。
【実施例7】
【0041】
<発生する水素ガス量の測定>
実施例6で作成したティーバッグと、実施例1〜実施例5で生成した各タブレットとを同封して真空パックした(空気中の水分などと反応するのを防止するためである。)。
【0042】
実施例1と実施例6、実施例2と実施例6、実施例3と実施例6、実施例4と実施例6、実施例5と実施例6を組み合わせた。実施例1〜5の生成物に対して加える実施例6の金属元素の割合は、用途、すなわち水の量によって異なる。
【0043】
実施例1〜5の生成物と施例6の金属元素を組み合わせて、水に接触させることにより、水素ガスが長期間(2〜3ヶ月)及び安定した量(爆発しない不爆量)が発生した。
図1は、本実施例における発生ガス量測定装置を示す。本実施例では、実施例1のタブレット1つ(20g)と実施例6のティーバッグ(Al:10g、Fe:5g)(粉末状)とを同一のティーバック1袋に入れて、脱臭抗菌剤Kとした。そして、次の実験では、1袋に含まれる脱臭抗菌剤Kの1/4の量(実施例1のタブレット:5g、実施例6の金属粉粉末:3.75)を用いて測定を行った(以下、1片の脱臭抗菌剤Kという)。
【0044】
水道水が満たされた500mL洗浄瓶内に脱臭抗菌剤K(1片)を入れて蓋をし、それを70℃に温度制御した温水の中に放置し、1000mLメスシリンダーを使用して、発生するガスを水上捕集した。
【0045】
発生したガスの量を測定する条件を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
このような条件の下、次の手順を行った。500mL洗浄瓶を水道水で満たし、その洗浄瓶を70℃に温度制御した温水の中に上端が浸かるようにして置いた。洗浄瓶の口先にチューブ、三口配管、ピンチコックを取り付けた。洗浄瓶の口先に繋いだチューブは三口配管を通って、2本の逆さに立てて水道水で満たされた1000mLメスシリンダーの底に繋いだ。
【0048】
洗浄瓶の中に脱臭抗菌剤(1片)を入れて蓋をし、時間の経過とメスシリンダーに捕集されるガス量を測定した。その結果を表3に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
発生ガス量は24時間(1440分)で飽和したので、この時間で測定を中止した。脱臭抗菌剤1袋(4片入り)の発生ガス量は、1袋の発生ガス実測値を4倍して求めた(図2参照。)。約72℃の温水中では、脱臭抗菌剤1袋の全発生ガス量は16.8Lと考えられる。
【実施例8】
【0051】
<ガス爆発試験用ガスの採取>
図3は、本実施例におけるガス爆発試験用の採取方法を示す。まず、500mL洗浄瓶の底を切断したものと漏斗をそれぞれ切断して加工したものを重ねた部材を、水道水で満たした水槽内に入れ、漏斗のなかに脱臭抗菌剤K(1袋)を入れた。発生したガスを洗浄瓶蓋の口からピンチコックを使用して、100mLシリンジに所定量採取した。ガス爆発の測定は以下の手順で行った。
【0052】
(1)試験容器をボルト、ナットで密閉し、配管、熱電対、圧力センサーを取り付け、試験容器内を空気で加圧して試験容器及び配管のリークの有無を確認した。
(2)リークが無いことを確認した後、真空ポンプで試験容器内を真空引きにして圧力変化のないことを確認した。
【0053】
(3)試験容器内を常圧に戻して再度真空ポンプで真空引きした。
(4)圧力表示計の値が0g/cm2であることを確認して、バルブ操作で試験装置内を密閉にした。
【0054】
(5)上記でガスを採取したシリンジを試験容器に取り付け、所定量のガスを試験容器内に注入し、圧力表示計の値を記録した。
(6)試験容器内に圧力表示計が約1033g/cm2になるまで空気を注入した。
【0055】
(7)記録装置に温度、圧力データが入力可能なことを確認した。
(8)点火器具のリード線を試験容器下部の電極に取り付け、点火装置を操作して試験容器内をスパーク放電させた。
【0056】
(9)記録装置で温度、圧力の変化を確認しデータDを保存した。
(10)試験容器内に窒素ガスを注入して内部のガスを追い出した。
(11)試験容器内を真空ポンプで真空引きして次の試験に備えた。
【0057】
(「爆」、「不爆」の判断について)
上記で保存したデータDを解析して、温度上昇2.0℃以上、圧力上昇率5.0%以上の両方を満たす場合を「爆」、それ以外を「不爆」と判断した。
【0058】
試料濃度は、圧力センサー(PHS−10KA)の読み値から以下の式より求めた。
試料濃度(vol%)=(試料仕込み/空気仕込み)×100
反応圧力(g/cm2)は、圧力センサー(PHS−20KA)の圧力に対して得られた電圧の割合から換算して求めた。
【0059】
(ガス爆発測定試験結果)
実施例7で求められた16.8Lのガスが自動車内に放出された場合のガス爆発の危険性について検討する。ガス爆発試験装置の試験容器内容積は、2.247Lである。軽自動車の室内容積は安全率50%を見積もり、1500Lとする。よって、ガス爆発試験装置に注入する脱臭抗菌剤から発生したガスの量は次の様になる。
【0060】
16.8×2.247/1500=0.0252(L)=25.2(mL)
26mLのガスを注入して(ガス濃度1.08〜1.18vol%)、ガス爆発試験を行い、その結果を表4に示した。
【0061】
【表4】

【0062】
表4より、1回につき3回のスパーク放電を試みて3回試験を実施し、全て「不爆」を確認した。脱臭抗菌剤Kから発生したガスが軽自動車内に放出されたとしてもそのガス爆発の可能性は低いと考えられる。但し、220mLのガスを注入した場合(ガス濃度11.27vol%)は「爆」を確認したので、このガスには爆発範囲が存在する。
【0063】
想定外の大量のガスが発生した場合、または局所的にガス濃度の高い領域が存在する場合は爆発する可能性があるので非常に注意が必要である。
以上より、本発明によれば、実施例1〜5の水素化物を含む生成物に実施例6の金属粉末を組み合わせることにより、水素ガスの発生が飽和し、その状態が持続する。よって、水素ガスの発生量にムラがないので、一定期間、有効に脱臭抗菌機能を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例7における発生ガス量測定装置を示す。
【図2】実施例7における発生ガス量測定結果のグラフを示す。
【図3】実施例8におけるガス爆発試験用の採取方法を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン及びポリエチレンのうちのいずれかの樹脂と、
水素化ホウ素ビス(トリフェニルホスフィン)ナトリウム、水素化トリス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)ホウ素ナトリウム、水素化トリス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムビス(トリフェニルホスフィン)リチウム、及び水素化ホウ素(ビス−ジエチルチオカルバモイルジスルフィド)アルミニウムからなる群より選ばれた有機複合金属水素化物と、
金属アルミニウム粉末と、金属鉄粉末または還元鉄粉末とからなる金属粉末と、
を含むことを特徴とする脱臭抗菌剤。
【請求項2】
請求項1に記載の脱臭抗菌剤と接触させた水。
【請求項3】
ポリスチレン及びポリエチレンからなる群より選ばれた樹脂と、水素化ホウ素ビス(トリフェニルホスフィン)ナトリウム、水素化トリス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)ホウ素ナトリウム、水素化トリス(3,5-ジメチル-1-ピラゾリル)アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムビス(トリフェニルホスフィン)リチウム、及び水素化ホウ素(ビス−ジエチルチオカルバモイルジスルフィド)アルミニウムからなる群より選ばれた有機複合金属水素化物と、を混合して焼成し、さらに、金属アルミニウム粉末と、金属鉄粉末または還元鉄粉末とからなる金属粉末を加える
ことを特徴とする脱臭抗菌剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−11934(P2008−11934A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183881(P2006−183881)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(504093799)有限会社木村研究所 (2)
【Fターム(参考)】