説明

脱臭機能付きの便器装置

【課題】 温水洗浄装置の前端部位のボウル部への張り出し量を大きくしないでも、吸気口の開口面積を広げて脱臭能力の向上を図ることのできる便器装置を提供する。
【解決手段】 便器2のボウル部5の後部上面6に脱臭装置4を内装した温水洗浄装置3を載設してなる脱臭機能付きの便器装置1である。便器2のボウル部5の開口後縁部にボウル部5内に連通する凹没部7を形成する。温水洗浄装置3の下面3aを凹没部7の底面7aに載置する。温水洗浄装置3の下面3aの前端部位に上方に凹ませて前方に開口せる凹部8を設ける。この凹部8の立上り面8aに設けた前方吸気口10aと、凹部8の天井面8bに設けた下方吸気口10bとで脱臭装置4の吸気口10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭機能付きの便器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、局部洗浄を行う温水洗浄装置には脱臭装置を内装したものがある。便器のボウル部の上面と面一の便器のボウル部の後部上面に載設した温水洗浄装置は、その前端部分をボウル部に張り出すようにして配置される。ここで、温水洗浄装置の脱臭装置の吸込口としては、この温水洗浄装置の前端部分の下面にボウル部内に臨むように下方に開口せる下方吸込口を設けてある。このように、脱臭装置を内装した温水洗浄装置を便器に配設することで、ボウル部内の脱臭を行える脱臭機能付きの便器装置を得ていた(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、温水洗浄装置の前端部位には洗浄ノズルなどの局部洗浄にかかる部材も配設されるのであるから、下方吸込口の開口面積は充分に大きくとることができなく、そのため、充分な脱臭が行われていないのが現状であった。なお、温水洗浄装置の前端部位のボウル部への張り出し寸法を大きくした場合には、下方吸気口の開口面積を広げることができるのであるが、相対的にボウル部の開口面積が小さくなって便器の使用性が悪くなると共に、ボウル部に張り出した温水洗浄装置の前端部位に汚水などが跳ねて付着して逆にトイレの悪臭を助長させることとなる。
【特許文献1】特開平8−113970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、温水洗浄装置の前端部位のボウル部への張り出し量を大きくしないでも、吸気口の開口面積を広げて脱臭能力の向上を図ることのできる便器装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明の請求項1に係る脱臭機能付きの便器装置にあっては、便器2のボウル部5の後部上面6に脱臭装置4を内装した温水洗浄装置3を載設してなる脱臭機能付きの便器装置1にあって、便器2のボウル部5の開口後縁部にボウル部5内に連通する凹没部7を形成し、温水洗浄装置3の下面3aを凹没部7の底面7aに載置し、温水洗浄装置3の下面3aの前端部位に上方に凹ませて前方に開口せる凹部8を設け、この凹部8の立上り面8aに設けた前方吸気口10aと、凹部8の天井面8bに設けた下方吸気口10bとで脱臭装置4の吸気口10を構成したことを特徴とする。
【0006】
これによると、便器2のボウル部5の開口後縁部にボウル部5内に連通する凹没部7を形成し、この凹没部7の底面7aに温水洗浄装置3の下面3aを載置し、温水洗浄装置3の前端部分に上方に凹ませて前方に開口せる凹部8を設けたので、凹没部7の凹没深さ分の凹部8の立上り面8aを得ることができ、しかして、凹部8の天井面8bに設けた下方吸気口10bに加えて凹部8の立上り面8aに設けた前方吸気口10aによって脱臭装置4の吸気口10を構成することができ、したがって、温水洗浄装置3の前端部位のボウル部5への張り出し量を大きくしないでも、吸気口10の開口面積を広げて脱臭能力の向上を図ることができる。また、脱臭装置4の吸気口10を下方吸気口10bと前方吸気口10aとで構成したことによると、前方吸気口10aによってボウル部5の前方域から吸気できると共に下方吸気口10bによってボウル部5の下方域から吸気できるから、ボウル部5の広い範囲の空気を吸気できて脱臭効果を向上できる。
【0007】
また、請求項2に係る脱臭機能付きの便器装置1にあっては、請求項1において、便器の凹没部7に温水洗浄装置3の凹部8を収納して凹没部7の底面7aと凹部8の立上り面8aと凹部8の天井面8bとで囲まれた空所9を形成し、便器2の凹没部7の前縁にボウル部5の内面に連なる汚水侵入防止壁11を立設し、この汚水侵入防止壁11を上記空所9の前方開口付近に位置させたことを特徴とする。
【0008】
これによると、便器2の凹没部7に温水洗浄装置3の凹部8を収納して温水洗浄装置3の前端部位と便器2との間にボウル部5内に連通する空所9を形成したことから、温水洗浄装置3の前端部位の便器2のボウル部5への張り出し量を小さくできて便器2の使用性を向上でき、また、空所9の前方開口付近に位置された汚水侵入防止壁11によってボウル部5から跳ねた汚水の空所9内への侵入を防止でき、ボウル部5の内面に連なる汚水侵入防止壁11に汚水が付着してもこの汚水をボウル部5に流下させることができるから、便器装置1を清潔に保つことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、温水洗浄装置の前端部位のボウル部への張り出し量を大きくしないでも、吸気口の開口面積を広げて脱臭能力の向上を図ることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0011】
本例の脱臭機能付きの便器装置1は、脱臭装置4を内装した温水洗浄装置3を便器2に配設したことで構成される。便器2は前部に上方に開口せるボウル部5が設けられており、ボウル部5の後部上面6に温水洗浄装置3が載置される。温水洗浄装置3は、上記脱臭装置4のほかに局部洗浄にかかる洗浄ノズルなどの洗浄装置12が内臓されており、その前部には便蓋13や便座14が上下に回動自在に取り付けられている。この温水洗浄装置3では、洗浄装置12は温水洗浄装置3の左右方向の中央部分に内装され、洗浄装置12を構成する局部洗浄のための洗浄ノズルは温水洗浄装置3の前端部分における左右方向の中央部に配設されており、また、脱臭装置4は温水洗浄装置3の一方の側端部(本例では右端部)に内装され、脱臭装置4の吸気口10は温水洗浄装置3の前端部分における一方の側端部(本例では右端部)に設けられている。ここで、本例の脱臭装置4は、図3,6のように、吸気口10から排気口15に至る空気流路20内に、空気を脱臭するための脱臭フィルター16や脱臭ハニカム17、空気を吸気口10から吸入して排気口15に排出するためのファン18が前方から順に備えられて構成されている。なお、吸気口10から脱臭フィルター16に至るダクト19は、温水洗浄装置3のハウジングを構成する下部ハウジング19aと、この下部ハウジング19aのダクト形成部分に上方から取り付けられる上部ハウジング19bとで形成されている。
【0012】
便器2のボウル部5の開口縁には、強度向上のためやボウル洗浄水をボウル部5の内部全体に行き渡らせるための周回リブ状のリム部21が形成されている。また、便器2のボウル部5の開口後縁部には、便器2のボウル部5の開口後縁部にあるべきリム部21の上部を切除するようにして、ボウル部5の左右後域部を構成するリム部21aの上面よりも一段低くなるように形成された凹没部7が設けられている。この凹没部7は、前方に開口してボウル部5内に連通しており、また温水洗浄装置3が載置されるボウル部5の後部上面6の前域部を構成している。つまり、温水洗浄装置3をボウル部5の後部上面6に配設した際には、温水洗浄装置3の前部の下面3aが凹没部7の底面7aに載置されるようにして温水洗浄装置3の前部が凹没部7に収納されるのである。詳しくは、ボウル部5の上方開口は上面視で略前後に長い楕円形状であり、温水洗浄装置3は上面視で矩形形状を有しているので、温水洗浄装置3をボウル部5の後部上面6に配設した状態では、温水洗浄装置3の前端部分の左右中央部がボウル部5に張り出すようになっており、温水洗浄装置3の前端部分の左右端部は比較的ボウル部5に張り出さずに上記凹没部7に収納されるようになっている。
【0013】
この凹没部7に収納される温水洗浄装置3の前端部分の一方の左右端部(本例では右端部)には、脱臭装置4の吸気口10が設けられている。詳しくは、図1,5のように、脱臭装置4の吸気口10が設けられる温水洗浄装置3の下面3aの前端部位には上方に凹ませて前方に開口せる凹部8が形成されており、温水洗浄装置3の前端部位を凹没部7に収納した際には、凹没部7の底面7aと凹部8の立上り面8aと凹部8の天井面8bとで囲まれた空所9が形成されるようになっている。また、上記のように空所9は凹部8と凹没部7とで形成されるのであるが、温水洗浄装置3の凹部8が前方に開口して形成されると共に便器2の凹没部7が前方に開口してボウル部5に連通するようにされているので、上記空所9はボウル部5に連通するように前方に開口せる空間とされている。そして、脱臭装置4の吸気口10は、凹部8の天井面8bに開口して上記空所9に臨む下方吸気口10bと、凹部8の立上り面8aに開口して上記空所9に臨む前方吸気口10aとで構成されているのである。
【0014】
なお、図7のように、温水洗浄装置3の凹部8は、上部カバー22と共に温水洗浄装置3のハウジングを構成する下部ハウジング19aに形成されており、上部ハウジング19bは下部ハウジング19aのダクト形成部分を上方から覆うように取付けられる。そして、凹部8の立上り面8aや天井面8bはそれぞれ下部ハウジング19aの壁状部位にて構成されており、前方吸気口10aや下方吸気口10bは各凹部8の立上り面8aや天井面8bを構成する各壁状部位に貫通して形成されている。この前方吸気口10aや下方吸気口10bは下部ハウジング19aと上部ハウジング19bとで囲まれたダクト19内部と上記空所9とを連通しているのである。つまり、ボウル部5の内部の臭気成分を含んだ空気は、脱臭装置4のファン18の駆動によって、矢印A,Bのように前方吸気口10aや下方吸気口10bからダクト19内に吸引され、脱臭フィルター16や脱臭ハニカム17にて脱臭処理がなされて、排気口15から排気されるようになっている。
【0015】
このように本例の便器装置1にあっては、便器2のボウル部5の開口後縁部にボウル部5内に連通する凹没部7を形成し、凹没部7の底面7aに温水洗浄装置3の下面3aを載置し、温水洗浄装置3の前端部分に上方に凹ませて前方に開口せる凹部8を設けたので、凹没部7の凹没深さ分の凹部8の立上り面8aを得ることができ、しかして、凹部8の天井面8bに設けた下方吸気口10bに加えて凹部8の立上り面8aに設けた前方吸気口10aによって脱臭装置4の吸気口10を構成することができ、したがって、温水洗浄装置3の前端部位のボウル部5への張り出し量を大きくしないでも、吸気口10の開口面積を広くとることができ、吸気量を増大させて脱臭能力の向上が図られているのである。つまり、従来の便器装置1では脱臭装置4の吸気口10が下方吸気口10bでのみ構成されていたのに対し、本例の便器装置1では脱臭装置4の吸気口10が下方吸気口10bに加えて前方吸気口10aによって構成できたものであり、吸気口10の開口面積が広くなって吸気量が増大し、脱臭能力の向上が図られているのである。また、脱臭装置4の吸気口10を下方吸気口10bと前方吸気口10aとで構成したことによると、前方吸気口10aによってボウル部5の前方域から吸気することができ(矢印A)、下方吸気口10bによってボウル部5の下方域から吸気することができるから(矢印B)、すなわち、ボウル部5の広い範囲の空気を吸気できるといった利点も有しており、脱臭効果の向上が図られているのである。
【0016】
更に言うと、本例では、便器2の凹没部7に温水洗浄装置3の凹部8を収納させたことで、温水洗浄装置3の前端部位と便器2との間にはボウル部5内に連通する空所9が形成されていることから、本例のように、ボウル部5の後端に前端部位を位置させて温水洗浄装置3を便器2に配設しても(温水洗浄装置3の前端部位をボウル部5にほとんど張り出さないようにしても)、上記前方吸気口10aと下方吸気口10bとで構成した吸気口10による脱臭能力の向上効果を得ることができる。また、このように温水洗浄装置3の前端部位をボウル部5にほとんど張り出さないようにして温水洗浄装置3を便器2に配設できた場合には、相対的にボウル部5の開口面積を大きく残すことができるので、便器の使用性を向上させることができるのである。
【0017】
なお、本例では、上記温水洗浄装置3の凹部8は、温水洗浄装置3を便器2に配設した際に便器2の凹没部7の左右端部(本例では右端部)に位置するように、温水洗浄装置3の前端部分の左右端部(本例では右端部)に形成されており、つまり、温水洗浄装置3の凹部8を便器2の凹没部7に収納して形成される空所9は、便器2の凹没部7の左右端部(本例では右端部)に位置して形成されている。ここで、便器2の凹没部7の左右端部にあってはボウル部5の左右後域部を構成するリム部21aが凹没部7の底面7aから立ち上がるように隣接している。したがって、便器2の凹没部7の左右端部(本例では右端部)に形成された空所9には、ボウル部5の左右後域部(本例では右後域部)を構成するリム部21aが隣接している。また、本例の便器2の凹没部7の前縁における左右端部には、ボウル部5の左右後域部(本例では右後域部)を構成するリム部21aから延設された汚水侵入防止壁11が、凹没部7の左右中央部に向けて形成されている。なお、この汚水侵入防止壁11は、空所9の高さ寸法よりは低い高さ寸法を有すると共にリム部21同様にボウル部5の内面に連なるように形成された壁状部位である。しかして、本例の空所9には図1のように汚水侵入防止壁11が空所9の前方開口付近に位置するように収容されている。空所9の前方開口付近に位置された汚水侵入防止壁11によると、ボウル部5から跳ねた汚水の空所9内への侵入が防止されるのである。また、汚水侵入防止壁11に汚水が付着しても、この汚水侵入防止壁11はボウル部5の内面に連なるように形成されているため、上記汚水はボウル部5にすみやかに流下されるようになっている。このように、上記空所9は汚水侵入防止壁11によって汚水の侵入が有効に防止されているのであり、また汚水侵入防止壁11に付着した汚水もすみやかにボウル部5に流すことができるので、便器装置1を清潔に保ち得るように図られているのである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態の例の便器装置における吸気口付近の縦断面図(図4(a)のX−X線縦断面図)である。
【図2】同上の便器装置の分解斜視図である。
【図3】同上の便器装置の断面斜視図である。
【図4】(a)は同上の便器装置の上面図であり、(b)は同上の便器装置の側面図である。
【図5】図4(b)のY−Y線水平断面図である。
【図6】同上の便器装置の要部の縦断面図である。
【図7】同上の便器装置における温水洗浄便座の上部カバーと洗浄装置を外した状態の斜視図である。
【図8】同上の便器装置における温水洗浄便座を下部ハウジングのみの状態にしたときの図7の矢印C方向から見た斜視図である。
【図9】同上の便器装置における温水洗浄便座を下部ハウジングのみの状態にしたときの図7の矢印D方向から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
1 便器装置
2 便器
3 温水洗浄装置
3a 下面
4 脱臭装置
5 ボウル部
6 後部上面
7 凹没部
7a 底面
8 凹部
8a 立上り面
8b 天井面
9 空所
10 吸気口
10a 前方吸気口
10b 下方吸気口
11 汚水侵入防止壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器のボウル部の後部上面に脱臭装置を内装した温水洗浄装置を載設してなる脱臭機能付きの便器装置にあって、便器のボウル部の開口後縁部にボウル部内に連通する凹没部を形成し、温水洗浄装置の下面を凹没部の底面に載置し、温水洗浄装置の下面の前端部位に上方に凹ませて前方に開口せる凹部を設け、この凹部の立上り面に設けた前方吸気口と、凹部の天井面に設けた下方吸気口とで脱臭装置の吸気口を構成したことを特徴とする脱臭機能付きの便器装置。
【請求項2】
便器の凹没部に温水洗浄装置の凹部を収納して凹没部の底面と凹部の立上り面と凹部の天井面とで囲まれた空所を形成し、便器の凹没部の前縁にボウル部の内面に連なる汚水侵入防止壁を立設し、この汚水侵入防止壁を上記空所の前方開口付近に位置させたことを特徴とする請求項1記載の脱臭機能付きの便器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−2488(P2006−2488A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181641(P2004−181641)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】