説明

脱臭装置

【課題】水蒸気、粉塵及び悪臭成分を含む気体から粉塵を効率よく捕捉でき、悪臭成分と反応する薬品を含浸させた媒体の寿命が長くなり、高い脱臭能力を有する脱臭装置を提供すること。
【解決手段】気体中の水蒸気及び粉塵が衝突するバッフル34と、気体に対して水を噴霧する噴霧ノズル36と、気体中の粉塵を捕捉する樹脂フィルタ38と、気体中の悪臭成分と反応する薬品が含浸されている薬品含浸媒体40と、排水口46と、を有する脱臭槽24によって脱臭装置22を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気、粉塵及び悪臭成分を含む気体を処理する脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の汚泥処理では、汚泥を脱水してから焼却し、焼却物を埋設することが一般的であった。このような汚泥処理は相当の処理費用がかかるとともに、焼却物の埋設地を確保する必要がある。そこで、汚泥から肥料を製造し、汚泥の有効利用を図る技術が提唱されている(特許文献1を参照)。図2に示すように、この技術に係る肥料製造装置10は、脱水機12、造粒装置14、貯留装置16を有する。汚泥を脱水機12によって脱水して脱水ケーキとし、脱水ケーキに生石灰を添加して造粒装置14に通し、造粒装置14によって脱水ケーキを粒状の肥料とし、製造した肥料を貯留装置16に蓄え、適宜袋詰め等して製品として出荷する。肥料製造装置10によって製造される肥料は保存可能であり、肥料の粒径を所定の大きさとすることができる。
【0003】
脱水ケーキの乾燥を促進するために、空気を造粒装置14に供給し、造粒装置14内の空気を排気している。造粒装置14の排気中には、脱水ケーキから発生する水蒸気と、脱水ケーキ、生石灰及び肥料から発生する粉塵と、汚泥に由来する悪臭成分とが含まれている。このため、造粒装置14の排気を大気放散するには、排気を脱臭処理し、排気中から粉塵と悪臭成分を除去しなければならない。
【0004】
造粒装置14の排気を脱臭処理する技術として、図2に示す脱臭装置が提唱されている(特許文献2を参照)。この脱臭装置80は、冷却器82、脱臭容器84を有し、上流側から冷却器82と脱臭容器84が直列に配置されている。冷却器82は造粒装置14の排気が通る配管と、配管外部に設けられた放熱用フィン86を有し、配管中の排気を空冷可能に構成されている。脱臭容器84は、その内部に繊維質又は多孔質の薬品含浸媒体88が封入されており、薬品含浸媒体88には造粒装置14の排気中の悪臭成分と反応する薬品が含浸されている。
【0005】
吸引機48が脱臭装置80の下流に設置されており、造粒装置14の排気を脱臭装置80を介して吸引可能に構成されている。
肥料製造装置10を稼動させるときは、吸引機48によって排気を造粒装置14から脱臭装置80に吸引する。脱臭装置80に吸引された排気は、まず、冷却器82に流入する。冷却器82において放熱用フィン86が排気の熱を奪い、排気が冷却され、排気中の水蒸気が凝縮して水滴となり、水滴が排気中の粉塵を捕捉し、粉塵が排気中から除去される。粉塵を捕捉した水は冷却器82の底部に集められ排水口82aから排出される。
【0006】
次いで、粉塵が除去された排気が冷却器82から脱臭容器84に流入し、脱臭容器84内の薬品含浸媒体88中を通る。排気中の悪臭成分が薬品含浸媒体88に含浸されている薬品と接触して反応し、悪臭成分が排気中から除去される。脱臭容器84を出た排気は、粉塵及び悪臭成分を除去されて大気放散可能な状態となっている。薬品含侵媒体88から漏出した薬液は脱臭容器84の底部に集められ排水口84aから排出される。
【特許文献1】特許第2980877号公報
【特許文献2】特許第3100938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の脱臭装置80の冷却器82では、排気の冷却を空冷によって行うので、冷却効率が高いとは言えず、排気中の水蒸気から凝縮する水滴の量が少ない。凝縮する水滴の量が少ないので、水滴に付着して排気中から除去される粉塵の量も少なくなり、脱臭容器84に流入する排気中に粉塵が残留してしまう。このため、排気とともに粉塵が薬品含浸媒体88を通ることとなり、薬品含浸媒体88が粉塵によって目詰りし、薬品含浸媒体88の寿命が短くなる。
本発明は、上記問題を解決するものであり、その目的とするところは、粉塵と悪臭成分を含む気体から粉塵を効率よく捕捉でき、悪臭成分と反応する薬品を含浸させた媒体の寿命が長くなり、高い脱臭能力を有する脱臭装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明に係る脱臭装置は、水蒸気、粉塵及び悪臭成分を含む気体を処理する脱臭装置であって、気体が衝突するバッフルと、バッフルと衝突した気体に対して水を噴霧する噴霧ノズルと、水を噴霧された気体中の粉塵を捕捉する樹脂フィルタと、粉塵を除去した気体中の悪臭成分と反応する薬品が含浸されている薬品含浸媒体と、排水口と、を有する脱臭槽によって構成されている。
【0009】
請求項1の発明によれば、水蒸気、粉塵及び悪臭成分を含む気体を脱臭装置の脱臭槽に通すと、気体がバッフルに衝突する。気体中の粉塵のうち粒径が大きいものは、バッフルに衝突してその勢いが減じられてその一部分が気体中から除去される。
バッフルと衝突した気体に水を噴霧すると、気体の温度が低下し、気体中の水蒸気が凝縮して水滴となる。バッフルで捕捉しきれずに気体中に残った粉塵が、噴霧した水と凝縮した水滴によって捕捉され、さらに気体中から除去される。
水を噴霧した気体を樹脂フィルタに通すと、気体中の粉塵が樹脂フィルタによって捕捉される。気体中の粉塵の量は減少しているので、樹脂フィルタにかかる負荷は小さい。また、気体に噴霧した水によって樹脂フィルタを洗浄でき、樹脂フィルタが捕捉した粉塵を洗い流すことができるので、樹脂フィルタの寿命が長くなる。
【0010】
気体中の粉塵を除去したら、気体を薬品含浸媒体に通す。気体中の悪臭成分が薬品含浸媒体の薬品に接触して反応し、気体中から悪臭成分が除去される。気体中の粉塵は既に除去されているので薬品含浸媒体が粉塵によって目詰りすることはなく、薬品含浸媒体の寿命が長くなる。
脱臭槽を出た気体は粉塵と悪臭成分を除去されて大気放散可能な状態となる。
脱臭槽内には、気体から除去された粉塵、凝縮した水、噴霧された水、薬品含侵媒体から漏出した薬液が廃水として溜まるが、適宜、溜まった廃水を排水口から脱臭槽外に排出する。
【0011】
請求項2の発明に係る脱臭装置は、請求項1記載の脱臭槽が複数直列に配置されている。
気体を脱臭槽に一回通しただけでは、粉塵及び悪臭成分を所定量まで除去できない場合であっても、複数の脱臭槽を直列に配置して気体を脱臭槽に複数回通すことによって、気体から粉塵及び悪臭成分を所定量まで除去できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る脱臭装置は、粉塵と悪臭成分を含む気体から粉塵を効率よく捕捉でき、悪臭成分と反応する薬品を含浸させた媒体の寿命が長くなり、高い脱臭能力を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を図1を参照しつつ説明する。図1は本発明に係る脱臭装置の構成図である。
脱臭装置22が肥料製造装置10に併設されている。肥料製造装置10は汚泥と生石灰から肥料を製造する公知のものである。肥料製造装置10は脱水機12、造粒装置14及び貯留装置16を有し、脱水機12が汚泥を脱水して脱水ケーキとし、造粒装置14が生石灰を添加した脱水ケーキを粒状の肥料とし、貯留装置16が製造された肥料を蓄えて袋詰めし製品として出荷する構成となっている。造粒装置14は給気ライン18と排気ライン20を有し、排気ライン20が造粒装置14から脱臭装置22に接続されている。
【0014】
脱臭装置22は脱臭槽24を有する。脱臭槽24は底が漏斗状をなす容器である。脱臭槽24内は垂直な仕切板26が設置されており、仕切板26が脱臭槽24内を除塵室28と脱臭室30に分けている。仕切板26は脱臭槽24の底まで達してはおらず、除塵室28の底部分と脱臭室30の底部分とが互いに接続されている。除塵室28の上部分には前室32が形成されている。前室32の一方の端部分が入口42となって排気ライン20が繋ぎこまれており、前室32の他方の端部分が除塵室28につながっている。前室32内には複数枚のバッフル34が設置されており、入口42から流入する排気がバッフル34に衝突しつつ前室32内を流れて除塵室28に流出する構成となっている。
【0015】
除塵室28は噴霧ノズル36と樹脂フィルタ38を有する。噴霧ノズル36は除塵室28の天井部分に設置されており、除塵室28の下方に向って水を噴霧可能に構成されている。噴霧ノズル36よりも下方の除塵室28の中間部分に樹脂フィルタ38が設置されている。樹脂フィルタ38は、排気中の粉塵を捕捉可能な能力を有する。
脱臭室30は多孔質又は繊維質の薬品含浸媒体40を有する。薬品含浸媒体40は脱臭室30の中間部分に設置されており、造粒装置14から排出される排気中の悪臭成分と反応する薬品が含浸されている。脱臭室30の上部分には出口44が形成されている。
脱臭槽24の底中央部分には排水口46が形成されており、除塵室28の底部分及び脱臭室30の底部分に溜まる廃水を適宜排出可能に構成されている。
吸引機48が脱臭室30の出口44に接続されており、造粒装置14から排気を排気ライン20及び脱臭装置22を介して吸引し、大気放散可能に構成されている。
【0016】
次に、作用について説明する。
肥料製造装置10が汚泥と生石灰から肥料を製造する。給気ライン18から造粒装置14に空気が供給され、造粒装置14内で脱水ケーキの乾燥が促進される。吸引機48を稼動させて、造粒装置14内の空気を排気として脱臭装置22に吸引する。排気中には脱水ケーキから発生する水蒸気と、脱水ケーキ、生石灰及び肥料から発生する粉塵と、汚泥に由来する悪臭成分が含まれている。
【0017】
排気が排気ライン20を通って入口42から脱臭槽24の前室32に流入してバッフル34に衝突する。排気中の粉塵のうち粒が大きいものはバッフル34に衝突して勢いが減じられ、その一部分が排気中から除去される。
バッフル34と衝突しつつ前室32を通った排気が除塵室28に流入する。除塵室28に流入した排気に噴霧ノズル36から水が噴霧される。水を噴霧された排気の温度が低下し、排気中の水蒸気が凝縮して水滴となる。バッフル34によって捕捉されずに排気中に残った粉塵の一部が、噴霧された水と凝縮した水滴によって捕捉される。噴霧された水、凝縮した水滴及びこれらに捕捉された粉塵が脱臭槽24の底部分に流れ落ちる。
【0018】
水を噴霧された気体が樹脂フィルタ38を通って除塵室28の底部分に流入する。排気中に残存する粉塵は樹脂フィルタ38によって捕捉される。排気中の粉塵の量は既に減少しているので樹脂フィルタ38の負担は小さい。樹脂フィルタ38に捕捉された粉塵は噴霧ノズル36から噴霧されて流れ落ちる水によって洗い流される。
排気が除塵室28の底部分から脱臭室30の底部分に流入し、薬品含浸媒体40を通って脱臭室30の出口44に流れる。薬品含浸媒体40の薬品が排気中の悪臭成分と接触して反応し、排気中から悪臭成分が除去される。排気中の粉塵は既に除去されているので、薬品含浸媒体40が粉塵によって目詰りすることは防止されている。
【0019】
脱臭室30の出口44に流れた排気は、吸引機48によって吸引されて大気放散される。大気放散される排気からは粉塵、悪臭成分が除去されているので、そのまま大気放散できる。
脱臭槽24の底には、排気から捕捉された粉塵、凝縮した水、噴霧された水、薬品含浸媒体40から漏出した薬液が廃水として溜まる。溜まった廃水は排水口46から適宜排出される。
排気を脱臭装置22の脱臭槽24に一回通しただけでは排気中の粉塵や悪臭成分を所定量以下にできない場合、複数の脱臭槽24を直列に配置し、排気を脱臭槽24に複数回通す。排気を脱臭槽24に複数回通すことによって、大気放散する排気中の粉塵、悪臭成分を所定量以下にできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る脱臭装置の構成図である。
【図2】従来の脱臭装置の構成図である。
【符号の説明】
【0021】
10 肥料製造装置
12 脱水機
14 造粒装置
16 貯留装置
18 給気ライン
20 排気ライン
22 脱臭装置
24 脱臭槽
26 仕切板
28 除塵室
30 脱臭室
32 前室
34 バッフル
36 噴霧ノズル
38 樹脂フィルタ
40 薬品含浸媒体
42 入口
44 出口
46 排水口
48 吸引機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気、粉塵及び悪臭成分を含む気体を処理する脱臭装置であって、
気体が衝突するバッフルと、
バッフルと衝突した気体に対して水を噴霧する噴霧ノズルと、
水を噴霧された気体中の粉塵を捕捉する樹脂フィルタと、
粉塵を除去した気体中の悪臭成分と反応する薬品が含浸されている薬品含浸媒体と、
排水口と、を有する脱臭槽によって構成されることを特徴とする脱臭装置。
【請求項2】
請求項1記載の脱臭槽が複数直列に配置されていることを特徴とする脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−100135(P2008−100135A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282854(P2006−282854)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(505328085)古河産機システムズ株式会社 (66)
【Fターム(参考)】