説明

脳血管障害に基づく疾患の予防剤又は治療剤、並びに脳血管障害に基づく疾患の予防又は治療用健康食品

【課題】脳血管障害に基づく疾患に対して効果のある、新たな予防剤又は治療剤、並びに予防又は治療用健康食品の提供
【解決手段】(1)メシマコブ(Phellinus linteus)の菌糸体の液体培養液(由来成分)を有効成分とする脳血管障害に基づく疾患の予防又は治療剤。
(2) 脳血管障害が脳梗塞、脳出血、くも膜下出血又は脳浮腫である前記(1)記載の予防又は治療剤。
(3)メシマコブ(Phellinus linteus)の菌糸体の液体培養液(由来成分)を有効成分とする脳血管障害に基づく疾患の予防又は治療用健康食品。
(4)脳血管障害に基づく疾患が脳梗塞、脳出血、くも膜下出血又は脳浮腫である前記(3)記載の脳血管障害に基づく疾患の予防又は治療用健康食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、メシマコブ(Phellinus linteus)の菌糸体の液体培養液を有効成分とする脳血管障害に基づく疾患の予防剤又は治療剤、並びに脳血管障害に基づく疾患の予防又は治療用健康食品に関する。
更に詳しくは、メシマコブの菌糸体の液体培養由来成分を有効成分とする脳血管障害による脳虚血から脳神経細胞を保護し、病巣を縮小し得る、脳血管障害に基づく疾患の予防剤又は治療剤、並びに脳血管障害に基づく疾患の予防又は治療用健康食品に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国の脳梗塞などの脳血管障害による死亡は、急性期治療の向上に伴い、1970年頃を境に減少に転じているが、その発症率に関しては変化はないと考えられ、今後の高齢化を考慮すれば患者数はむしろ増加する危険があると思われる。
【0003】
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血又は脳浮腫等の脳血管障害に関する治療剤に関しては、下記の文献が公知である。
【特許文献1】特開2005−289818
【特許文献2】特開2001−213771
【特許文献3】特開平10−338645
【特許文献4】特開平11−286454
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの治療剤(薬)によっても、いまだ満足な結果が得られていないのが実情である。
発明者等は、新たな脳血管障害に基づく疾患の予防又は治療剤の開発に関し、鋭意研究したところ、メシマコブの菌糸体の液体培養液(成分)に、顕著な脳梗塞縮小効果があることを知り、本発明を完成した。
したがって、本願発明の目的は、前記脳血管障害に伴う疾患に対して効果のある、新たな予防剤又は治療剤、並びに予防又は治療用健康食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、以上見地に立ってなされたもので、下記の請求項1〜請求項4により構成されている。
〔請求項1〕メシマコブ(Phellinus linteus)の菌糸体の液体培養液(由来成分)を有効成分とすることを特徴とする脳血管障害に基づく疾患の予防又は治療剤。
〔請求項2〕脳血管障害に基づく疾患が脳梗塞、脳出血、くも膜下出血又は脳浮腫である請求項1記載の脳血管障害に基づく疾患の予防又は治療剤。
〔請求項3〕メシマコブ(Phellinus linteus)の菌糸体の液体培養液(由来成分)を有効成分とすることを特徴とする脳血管障害に基づく疾患の予防又は治療用健康食品。
〔請求項4〕脳血管障害に基づく疾患が脳梗塞、脳出血、くも膜下出血又は脳浮腫である請求項3記載の脳血管障害に基づく疾患の予防又は治療用健康食品。
【発明の効果】
【0006】
本願発明を以上のように構成する理由は、メシマコブの菌糸体の液体培養液(由来成分)に、顕著な脳梗塞縮小効果が認められるからである。
したがって、これを使用し、必要に応じて加熱、凍結、濃縮、乾燥、抽出、分画等の加工手段を適用すれば、脳血管障害に基づく疾患の予防又は治療に有効な薬剤、並びに健康食品が容易に得られるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<メシマコブ菌糸体の液体培養>
(イ)本願発明に用いたメシマコブは、1998年10月に宮崎県西諸県郡須木村で、子実体を採取し、株式会社アイ・ビー・アイ応用キノコ研究所で菌糸体化した上で、PL−08菌株として保存していたものを使用した。この菌株は、子実体を農林水産省林野庁総合研究所森林生物部森林微生物科 腐朽病害研究室の阿部恭久博士の鑑定により、メシマコブ子実体に特有の黄褐色の剛毛体を持つこと、及び担子胞子の形態、からPhellinus linteusと同定されたものを用いた。供試菌株の前培養は、5℃で低温保存してあった菌糸体を、内径90mmのペトリ皿内のPotato Dextrose Agar培地(Difco 社製)へ接種して、25℃暗黒下で15日間表面培養した。この培養菌糸体を内径5mmのコルクボーラーで切り取り(乾燥菌糸体重量 0.35mgに相当)、試験に供した。
(ロ)液体培養の条件は次のとおりである。
下記の培地300mlを分注して滅菌した500mlの三角フラスコへ、Phellinus linteus(メシマコブ)を接種し、0.22μmフィルターを通した無菌空気を通気した。
(A)培地組成 グルコース:4%,イーストエキス:0.3%,ペプトン:0.3%,KHPO:0.05%,NaHPO:0.05%(pH5.5)
(B)培養条件
(a)培養温度:25℃
(b)培養規模:500mlの三角フラスコ,培地300ml
(c)通気量:0.5l/min
(d)培養日数:45日
(ハ)培養終了後のメシマコブの培養成分を口径20μmの濾紙を用いて菌糸体と液体培養由来成分(培養濾液)に分ける。培養濾液についてはさらに口径5μm,1μmの濾紙を用いて濾過を行った。最後に,無菌的な環境下で0.45μmフィルター,さらに0.2μmフィルターを用いて濾過を行い,ラットへの投与サンプルを調製した。
【0008】
<脳梗塞縮小効果の確認>
(A)実験方法
脳梗塞作成方法:雄Sprague-Dawleyラット(8週齢:270−300g)をphenobarbital sodiumの腹腔内注射による全身麻酔下に脳梗塞を作成する。
脳梗塞の作成方法は、従来の方法を改良した独自のもので、低侵襲である。
開頭にて中大脳動脈を露出し、中枢側をクリップで閉塞した後に末梢側を下大脳静脈の位置まで凝固・切断することにより脳虚血を作成。体温はheating padを使用し37±0.5℃に保つ。また、脳梗塞作成中に血圧、血液ガスなどを測定し、治療群とコントロール群で生理学的条件が同様であることを確認する。
治療剤(メシマコブ菌糸体エキス)投与方法:治療群(n=6)では20%メシマコブ菌糸体培養液(PL−CF)2.5mlを脳梗塞作成30分前に腹腔内投与した。
コントロール群(n=6)では、菌糸体が含まれない培養液を同様のプロトコールにて投与した。
脳梗塞巣の評価:脳梗塞作成24時間後にphenobarbital sodiumの過剰投与下に脳を摘出し、スライスを作成しTTC(2、3、5-Triphenyltetrazolium Chloride)にて染色する。イメージアナライザーにて脳梗塞体積を算出し、両群間での比較を行う。
(B)実験結果(図1及び図2参照)
治療群(20%メシマコブ菌糸体培養液(PL−CF)2.5ml投与)では大脳皮質の脳梗塞体積は対側比で46.2±7.9%であった。一方コントロール群では62.0±9.0%であり、統計学的有意差をもって治療群で脳梗塞縮小効果が得られた(t−検定、p=0.0062)。代表例の梗塞巣写真を図1(治療群)及び図2(コントロール群)に示す。

【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】治療群の脳梗塞巣(白色部)を示す図(断面図)である。
【図2】コントロール群の脳梗塞巣(白色部)を示す図(断面図)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メシマコブ(Phellinus linteus)の菌糸体の液体培養液(由来成分)を有効成分とすることを特徴とする脳血管障害に基づく疾患の予防又は治療剤。
【請求項2】
脳血管障害に基づく疾患が脳梗塞、脳出血、くも膜下出血又は脳浮腫である請求項1記載の脳血管障害に基づく疾患の予防又は治療用剤。
【請求項3】
メシマコブ(Phellinus linteus)の菌糸体の液体培養液(由来成分)を有効成分とすることを特徴とする脳血管障害に基づく疾患の予防又は治療用健康食品。
【請求項4】
脳血管障害に基づく疾患が脳梗塞、脳出血、くも膜下出血又は脳浮腫である請求項3記載の脳血管障害に基づく疾患の予防又は治療用健康食品。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−51789(P2009−51789A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221943(P2007−221943)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(596074568)
【出願人】(505383615)
【出願人】(507290261)
【出願人】(500003165)
【Fターム(参考)】